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カテゴリ:植物園 > 東京薬科大学薬用植物園

9月に行った東京薬科大学の薬用植物園の記事の続きです。灼熱の温室を出て、少し周囲を散策しました。珍しいことにヤマノイモ属(Dioscorea)が沢山ありましたから、本日はヤマノイモ属特集です。しかし、これほど沢山のヤマノイモを見たのは初めてです。そういえば、『栽培植物と農耕の起源』で知られる中尾佐助は、東南アジアでの調査中に様々な野生のヤマノイモを見つけ、すり下ろして食べてみたとのことですが、中には有毒なものもありそうですが、しかし昔の研究者は豪気な人も多かったように思います。


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ヤマノイモ(山の芋) Dioscorea japonica
一般的にヤマイモと呼ばれている芋ですが、ヤマイモは日本で食用となるヤマノイモ科食用の芋の総称です。一般的に売られているのは実は別種のナガイモ(D. polystachya)で、ヤマノイモは稀に自然薯という名前で販売されます。ヤマノイモはすり下ろすとナガイモより粘り気が強いのが特徴です。アッサム、中国、韓国、台湾、日本の原産。



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ナガイモ(長芋) Dioscorea polystachya
流通量が多いヤマイモと言えば、この長芋です。D. batatasの名前で知られていましたが、現在はD. polystachyaとされているようです。長芋はすり下ろすとやや水っぽいので、個人的には柵状に切って食感よく生で食べたり、火を通した方が美味しいような気がします。中国、韓国、台湾の原産。



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ダイジョ(大薯) Dioscorea alata
南アジア、東南アジア、ニューギニア島あたりの原産ですが、日本でも南方で栽培されており、沖縄では大薯をヤマイモと呼んでいるそうです。長芋より粘り気が強く、紫色のものもあります。


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ニガカシュウ(苦荷首烏) Dioscorea bulbifera
大きなムカゴがつくため、エアーポテトとか宇宙芋の名前で観賞用に園芸植物として販売されています。名前の通りニガカシュウの芋は苦いのですが、アフリカでは茹でて苦味を除去して食用としているそうです。アフリカ、マダガスカル、南アジア、東南アジア、中国、ニューギニア島、オーストラリア、韓国、台湾、日本の原産。


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ミツバドコロ Dioscorea hispida
南アジア、東南アジア、ニューギニア島、オーストラリア、台湾の原産。芋は食用とされますが、毒があるため水に晒して毒を除去するそうです。また、熱帯アメリカ原産のD. trifidaをミツバドコロと呼ぶこともあるようですが、基本的に葉は5裂します。



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アケビドコロ Dioscorea pentaphylla
南方では芋を食用とするそうです。芋は有毒ですが煮ることにより毒を除去するそうです。南アジア、東南アジア、ニューギニア島、オーストラリア、中国南部、台湾、沖縄北部の原産。



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ハリイモ Dioscorea aculeata
ヒマラヤ、東南アジア、ニューギニア島の原産。食用ヤムの1種。トゲドコロ(棘野老)という名前の方が一般的なようです。
ネームプレートには「D. aculeata L.」とあり、Syn.(異名)として「D. esculenta (Lour.) Burkill」とありました。しかし、D. aculeataは同じ名前の植物が3つもあります。von LinneによるD. aculeata L.はバングラデシュやインドの原産でこれは別種です。D. esculentaを指すD. aculeataは、「D. aculeata Roxb.」にあたります。そして、D. aculeata L.が認められた名前であるならば、当然ながら同名のD. aculeata Roxb.は認められません。ですから、ハリイモの学名は「Dioscorea esculenta」が正しいということになります。ハリイモやトゲドコロという名前の通り、ツタや根にトゲがありますが、まさに「D. aculeata var. spinosa」という異名があります。ちなみに、もう1つのD. aculeataは「D. aculeata Balb. ex Kunth」で、アフリカ原産のD. cayenensis subsp. cayenensisの異名です。



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Dioscorea kalkapershadii
バングラデシュやインド原産ですが、あまり情報が出てきません。珍しい種なのかも知れませんね。


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9月に行った東京薬科大学の薬用植物園の記事の続きです。当時の最高気温が38度でしたが、温室内は地獄と化していました。拭いても汗が止まらず、全身から汗が滴る始末でした。堪らずに温室から出ましたが、風もなく容赦ない直射日光で逃げ場がありません。これは、本当に日射病になる危険があるため、早々と逃げ出す始末でした。


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イエローピタヤ Selenicereus megalanthus
ボリビア原産。一般的なドラゴンフルーツ(S. undatus)とは異なり黄色の実を付けます。ドラゴンフルーツにも黄色の実を付ける品種がありますが、イエローピタヤは実にトゲがあるため区別されます。とは言え、イエローピタヤをイエロードラゴンフルーツとも呼ぶためややこしい感じがします。ブラジルの原産。
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古い実が転がっていました。


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ケープアロエ Aloe ferox
青鰐の名前で流通している巨大アロエ。南アフリカ、レソトの原産。


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Aloe africana
南アフリカ原産の大型アロエ。


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Aloe spicata
スピカタは初めて見ました。南アフリカ、モザンビーク、ジンバブエの原産。



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テキーラリュウゼツラン Agave tequilana
商業的にテキーラを生産するために利用されているアガヴェ。Blue Agaveとも呼ばれます。2004年にA. angustifoliaの亜種とする意見もありました。


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蘇鉄(Cycas revoluta)もなかなかよいサイズです。


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コロシントウリ Citrullus colocynthis
茂る葉を見て西瓜かと思いましたが違いました。コロシントウリです。

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小さい西瓜のようですが、苦く食べると下痢をしてしまいます。砂漠に生えていますから、喉が渇いたからといって西瓜様のコロシントウリを食べると、下痢をして脱水症状になってしまうという罠のような植物です。


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9月に行った東京薬科大学の薬用植物園の続きです。熱帯の樹木を見ていますが、スパイスや食用の樹木が沢山あります。


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ムユウジュ(無憂樹) Saraca indica
ブッダ三聖樹の1つで、ブッダの生誕に関わる樹。夢の島熱帯植物館でも見かけましたが、東京薬用植物園ではS. indicaと同種とも言われるA. asocaの花を見ています。ミャンマー、タイ、ベトナム、マレーシア、スマトラ島の原産。マメ科。


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カカオ Theobroma cacao
植物園の温室にはつきもののカカオノキです。興奮作用のあるテオブロミンを含みますが、カフェインほど強い作用はありません。南米北部の原産。アオイ科。
余談ですが、テオブロミンはカフェインとまったく同じ骨格で官能基だけが違うだけとのことです。これは、近年の違法薬物に対する法規制のイタチごっこを思い起こします。官能基が違うから規制の対象じゃないため、脱法ハーブなんて呼ばれてましたね。

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今回は花と果実を同時に見ることが出来ました。カカオの花は筑波実験植物園で見た以来です。
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カカオの若い果実。果実は新宿御苑と夢の島熱帯植物館、東京都薬用植物園で見かけています。
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見上げると大きな果実がなっていました。


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ベンガルコーヒー Coffea bengalensis
Psilanthusとされることもあります。コーヒーとしての品質はアラビカ種に劣ります。インド、アッサム、ミャンマー、ネパール、タイ、ベトナムの原産。アカネ科。


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オールスパイス Pimenta officinalis
果実や葉を香辛料とします。シナモン、グローブ、ナツメグの香りを併せ持つと言われます。現在、学名はP. dioicaとなっています。中米原産。フトモモ科。


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ポンデローザ Citrus pyriformis
これは巨大な果実がなるレモンで、オオミレモンとも呼ばれます。C. pyriformisは交配種であることから、C. × 
pyriformisとなっており、現在はC. × lumiaの異名とされています。交配の組み合わせは、C. maxima(ブンタンやザボン) × C. medica(シトロン)とのことです。
ちなみに、筑波実験植物園では「Citrus limon 'Ponderosa'」という名前でした。こちらはレモンの1種であるとされるからかも知れません。レモンの学名は、やはり交配種なので、C. × limonとなっています。レモンはC. maxima(ブンタン、ザボン) × C. medica(シトロン) ×C. reticulata(マンダリンオレンジ)との交配と言われています。
他にも柚子とレモンの交配であるとも言われます。柚子はC. × junosと言われており、C. cavaleriei(中国原産の柑橘、Ichang papeda) × C. maxima × C.reticulataと言われています。
何れにせよ、柑橘系は複雑に交配されており、本当のことは分からないような気がします。


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まだ青い実がなっていました。


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ニオイタコノキ Pandanus amaryllifolius
ニオイタコノキは初めて見ました。葉に香りがあり、料理の香り付けに利用されるそうです。モルッカ諸島の原産と言われていますが、栽培が古く広い地域で栽培されるため、本来の自生地であるかはわかりません。タコノキ科。



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9月に行った東京薬科大学の薬用植物園の続きです。コショウ属やショウガ科を中心に見てきましたが、本日は熱帯果樹を見ていきます。


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クスノハガシワ Mallotus philippensis
カシワ(Quercus dentata)の葉には似ていませんが、クスノキ(Camphora offichinarum)のような葉のアカメガシワ(M. japanicus)という意味なのでしょう。インド、ネパールから台湾、中国南部、広く東南アジア、ニューギニア島、オーストラリアの原産。



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マンゴー Mangifera indica
なかなか立派なマンゴーの木がありました。日本でもマンゴーは暖地で栽培されますが、最大の栽培地域のインドであり紀元前から栽培されていたそうです。インド、ミャンマー、タイ、中国南部の原産。
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実に立派な株です。


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アボカド Persea americana
アボカドは糖類が少なく脂肪分が多い変わった果樹です。人間以外の動物には毒性が高いので注意が必要です。アボカドを含むPersea(ワニナシ属)は、111種もあるそうです。中米の原産。


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バナナ Musa paradisiaca var. sapientum
バナナがなっていました。植物園の温室ではバナナはよく見かけます。しかし、一般的によく見かけるバナナは自然交雑種ですから、学名は「Musa  × paradisiaca」となっています。組み合わせは、マレーヤマバショウ(M. acuminata)とリュウキュウバショウ(M. balbisiana)とのことです。ちなみに、異名は沢山ありますが、代表的にはM. paradisiaca系とM. sapientum系があり、sapientumの亜種や変種のparadisiacaだったり、paradisiacaの亜種のsapientumなどの名前もあります。しかし、これらはすべて異名扱いとされています。マレーシア、フィリピンの原産。
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なかなかに立派なバナナがなっています。


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ユカン(油甘) Phyllanhus emblica
一見してネムノキの仲間に見えますが、コミカンソウ科とのこと。果実は食用とされるそうです。インド、バングラデシュから台湾、中国南部、東南アジアの原産。


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コーラノキ Cola nitida
コラの種子にはカフェインを含みます。ニティダは代表的なコラで、種子はコーラ・ナッツと呼び、カフェインの1種であるコラチンやテオブロミンを含みます。古くからアフリカでは興奮剤とされてきました。コカ・コーラにコラの種子が用いられていたのは有名な話ですが、コラの実は高価なため使用されなくなりました。アフリカ西海岸沿いおよびマリ、コンゴの原産。


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シクンシ(使君子) Quisqualis indica
かつて種子を駆虫薬としたそうです。シクンシの花は夕方に開く白い花で香りがあり、明らかに蛾媒でどうもスズメガ媒花とされているようです。しかし、やがて花色はピンク色になり最終的には赤色となります。これは、花粉媒介者をスズメガから蜂や鳥に変えているということのようです。複数の花粉媒介者による確実な受粉、あるいは花粉媒介者の増減に関わらず受粉可能性を残す策かも知れません。
インド、ネパールから台湾、中国南部、東南アジア、ニューギニア島、オーストラリア、タンザニアの原産。分布がとても広いのですが、これは種子が浮いて海を漂流するからでしょう。しかし、それでもタンザニアに飛び地があるのが不思議です。やはり分布が広く種子が漂流する
モモタマナ(Terminalia catappa)も、似たような分布でマダガスカルに飛び地があります。海流なのか古代の人流なのか気になりますね。



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9月に行った東京薬科大学の薬用植物園の続きです。温室内にいますが、本日はショウガ科を中心に見ていきます。そういえば、今まで植物園ではショウガ科の植物をあまり見かけたことがありません。注目していないから気が付かないだけかも知れませんが、とにかく東京薬科大学の薬用植物園では様々なショウガ科植物を見ることが出来ました。これからはショウガ科植物にも注目していきたいですね。


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ブラックカルダモン Amomum subulatum
スパイスとして知られるカルダモンは同じショウガ科のグリーンカルダモン(ショウズク、Elettaria cardamomum)とブラックカルダモンがあります。インド、チベットから中国南部の原産。ショウガ科。


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カルダモン Elettaria cardamomum
香辛料として有名なカルダモンですが、これは香辛料として利用する種子の名前で、植物自体は「ショウズク(小荳蔲、小豆蔲)」と言うそうです。インドの原産。ショウガ科。



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ナンキョウ(南姜) Alpinia galanga
タイやインドネシアでは根茎を食用としています。アーユルヴェーダでは鎮痛剤としているそうです。アッサムから東南アジアに広く分布します。ショウガ科。


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ガジュツ(莪朮) Curcuma zedoaria
紫ウコンとも呼ばれます。生薬とされているそうです。ヒマラヤ、アッサム、バングラデシュの原産。ショウガ科。



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ウコン(鬱金) Curcuma longa
ウコンの花が咲いていました。香辛料のターメリックとして有名です。料理だけではなく、生薬や染料とします。インドの原産。ショウガ科。


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クスリウコン Curcuma zanthorrhiza
ジャワジンジャー、あるいはジャワウコンとも呼ばれます。どういうわけかC. xanthorrhizaという記載されていない名前が広く流通しているようです。生薬や香辛料などに利用されます。インドの原産。ショウガ科。


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オオキンバイバサ Curculigo capitulata
キンバイザサ科は初めて見ました。
キンバイザサの仲間はクルクリンを含みます。クルクリンは酸味を甘味に感じる作用があり、ミラクルフルーツに含まれるミラクリンと似ていますが、クルクリン自体に甘味がある点が異なります。葉は切り花に使用されるそうです。しかし、東南アジアからニューギニア島、オーストラリアの原産。
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整った脈が美しいですね。
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枯れかけの花穂があり、花も咲いていました。



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9月に行った東京薬科大学の薬用植物園の続きです。前回は熱帯の材をとる樹木などを見ました。今回はコショウ属(Piper)を中心に見ていきます。フウトウカズラやキンマなど、植物園の温室でコショウ属植物は見られますが、如何せん地味な存在で気が付かれないのが常です。


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コショウ(胡椒) Piper nigrum
ちょうど、胡椒の実がなっていました。収穫後の加工により黒胡椒や白胡椒となります。インド原産。コショウ科。


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インドナガコショウ(ヒハツ、畢撥) Piper longum
ヒハツの花が咲いていました。英語のpepper はサンスクリット語の「pippali」に由来しますか、これは本来ヒハツを指しており、取り違えがあった模様です。ですから、ヒハツが本来のペッパーだったということになります。インド、バングラデシュから中国南部、タイベトナムあたりの原産。コショウ科。



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フウトウカズラ(風藤葛) Piper kadsura
常緑のつる植物。全体に香りがありますが、コショウによく似た果実は辛みがないそうです。台湾、日本、韓国の原産。コショウ科。


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ヒハツモドキ(ジャワナガコショウ)
Piper retrofractum

バングラデシュから中国南部、フィリピンあたりの原産。果実は辛みがあり香辛料とされ、沖縄でも栽培され「島胡椒」などと呼ばれているそうです。コショウ科。


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キンマ Piper betle
ビンロウ(ヤシ科)の実をキンマの葉で包み、石灰をまぶして噛む習慣が東南アジアを中心に広くあります。コショウ科。


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タイワンフタリシズカ Chloranthus oldhamii
台湾、フィリピン原産のヒトリシズカの仲間。


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ナツメヤシ(棗椰子) Phoenix dactylifera
最近、日本でもデーツの名前で、ナツメヤシの干した果実がたまに見かけます。販売されているデーツの種子を蒔くと実生が得られますが、ナツメヤシは乾燥には強いものの寒さには弱いため育てるのは大変そうです。ちなみに、高さ15〜25mになります。サウジアラビアやオマーン、パキスタン、イランあたりの原産と言われていますが、古代から栽培されてきたため、厳密な本来の自生地は分からないかも知れませんね。



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9月に行った東京薬科大学の薬用植物園の記事の続きです。熱々の温室で蒸されながらトロピカル植物を見ています。


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Cyclanthus bipartitus
キクラントゥスは初めて見ました。キクラントゥス属は2種からなる
パナマソウ科の植物です。ビパルティトゥスは中南米の原産。


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チャボイランイランノキ
Cananga odorata var. fruticosa

イランイランノキの変種です。高木のイランイランノキの矮性変種で、高さ2mほどの低木となります。イランイランノキと同じく、大変香りの良い花を咲かせます。東南アジアの原産。


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ショウベンノキ Turpinia ternata
日本と台湾の原産ですが、日本では高知県南西部、大分県以南から琉球列島に分布します。植物園の温室では割りと見かけ、新宿御苑や東京都薬用植物園で見かけています。ちなみに、学名は2018年にStaphylea ternataとなっています。ミツバウツギ科。


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マホガニー Swietenia mahagoni
高級木材として有名なマホガニーです。薬用植物園には他にもチークやインドシタンなどの材木用樹木を見ることが出来るのは珍しいですね。センダン科。フロリダ半島からカリブ海地域の原産。



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インドシタン Pterocarpus indicus
心材はビャクダンあるいはバラのような香りがあると言います。カリン(花梨)という名前で呼ばれるのが一般的なようですが、庭木や果実をのど飴に配合したりするバラ科のカリンとは別種です。伐採により急激に減少している樹木で、花梨材の名前で材とします。中国南部、台湾から広く東南アジア、ニューギニア島まで分布します。



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チーク Tectona grandis
マホガニーに並ぶ高級木材です。チークには3種あります。グランディスはCommon Teakと呼ばれるからには一番一般的なのでしょうか。インドからカンボジア、タイ、ラオス、ベトナム、ミャンマーあたりの原産。シソ科。



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ベンガルボダイジュ Ficus benghalensis
インドやバングラデシュ、ヒマラヤ地域、ネパール、スリランカあたりの原産。イチジク科の樹木で、気根を伸ばし地面に着くと新たな幹(支柱根)と化すため、1株で巨大な面積を占めることがあります。絞め殺し植物としても有名です。インドボダイジュは仏教三霊樹の1つですが、ベンガルボダイジュは菩薩心や輪廻の象徴などとされ、インドの寺院では聖なる樹とされているそうです。


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9月に行った東京薬科大学の薬用植物園の記事の続きです。まだ温室の入口付近でウロウロしています。


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マチン Strychnos nux-vomica
毒性の高さで有名なストリキニーネを含有する樹木。ストリキニーネは医療用にも利用されますが、中毒量と薬効量が近いため使いにくいようです。インド、スリランカからベトナム、マレーシアあたりの原産。


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パナマソウ Carludovica palmata
パナマ帽の原料のパナマソウです。分類がよく分からない謎めいた植物でしたが、遺伝的にはタコノキに近縁とのこと。植物園でパナマソウを見るのは4カ所目になります。中南米の原産。



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トンキンニッケイ Cinnamomum cassia
いわゆるシナモンですが、使われているのは上物であるセイロンニッケイではなく、トンキンニッケイ=シナニッケイが一般的です。
あと、今更ですがシナニッケイの学名がよく分からないことに気が付きました。実はC. cassiaという名前の植物は複数あり、非合法名です。一般的にはC. cassia (L.) J. Presl.ですが、これはスリランカシナモン(Neolistea cassia)の異名です。スリランカシナモンはスリランカとインドの原産ですから、シナニッケイとは関係がなさそうです。ちなみに、Wikipediaや日本薬学会はこの表記でした。次にC. cassia Nees ex Blumeですが、現在ではインドネシアンシナモン(C. burmanni)の異名となっています。東京薬科大学の薬用植物園の名札ではC. cassia Blumeとなっていましたが、おそらくこれを指しているのでしょう。最後はC. cassia (L.) D. Don.です。これは、熊本大学薬学部など、いくつかのサイトで見かけました。しかし、これはキュー王立植物園のデータベースに名前がありません。GBIF(地球規模生物多様性情報機構)では、N. cassia (L.) Kosterm.の異名としています。要するに、これらはvon Linneが1753年に命名したLaurus cassia L.から来ているのでしょう。しかし、流通しているシナモンは「真のシナモン」たるC. verumと代替品であるC. cassiaが代表的でしょう。スリランカシナモン(N. cassia)が大量に流通しているとは思えません。
さて、Pei Chenらの2014年の論文では、シナモンの成分を分析していますが、この手の論文には珍しくシナモンの種について言及があります。流通するシナモンは主に4種で、C. verumと偽って他種が混ぜものというか、逆に少しだけC. verumが入れてあるというようなことが書いてありました。C. verum以外の他の3種とは、C. cassia、C. burmanni、C. loureiroiです。このC. cassiaはC. aromaticumのことで、Chinese cinnamonと呼ばれるとありました。まあ、流通量と分布から考えると、C. burmanniかC. aromaticumですが、論文では明確に区別していますからシナニッケイの正体はC. aromaticumなのでしょうね。


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コウトウノボタン(マルバルノボタン)
Melastoma malabathricum
ノボタンの仲間。残念ながら花はありませんでした。コウトウノボタンはアルミニウムを過剰に蓄積するため、土壌汚染の処理に利用出来るかも知れません。インドから中国南部、東南アジア、ニューギニア島、オーストラリアあたりの原産。



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サチャインチ Plukenetia volubilis
果実はナッツとして食用ですが、葉や果実は有毒で加熱する必要があります。現在はP. verrucosaの異名となっているようです。南米の原産。



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レンブ Syzygium samaragense
面白い果実がなりますが、まだ見たことがありません。フトモモ属はオーストラリア原産のものが多いため、近縁のオージープランツブームでも園芸店で見かける機会が増えたかも知れません。インド、東南アジア、ニューギニア島あたりの原産。


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ホシアザミ Hippobroma longiflora
ホシアザミの花が咲いていました。ジャマイカの原産ですが、世界中の熱帯に帰化しています。白い乳液には強烈な毒性があるとされ、ネームプレートにも赤字で「猛毒」の表記がありました。




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9月の始め頃に夏休みを取り、またまた植物園に行って参りました。今回は東京薬科大学の薬用植物園です。薬用植物は八王子キャンパスにあります。見学自由ではなくてちゃんと入館手続きをしてから校内に入ります。見学出来る施設が決まっていますから、勝手に校内をうろつくのは厳禁です。
さて、朝イチで到着したものの、その日は最高気温38℃という炎天下でした。開園時間に入りましたが既に35℃近い気温になっており、流石に熱中症の危険がある雰囲気がしていましたね。



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薬用植物園の入口付近に池があります。


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何はさて置き、まずは温室です。


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入口にトンキンニッケイの枯れ葉がありました。枯れ葉でも折るとシナモンの素晴らしい香りが漂います。ニッケイ、つまりCinnamomum、シナモンの仲間です。トンキンニッケイとはC. cassiaのことです。シナニッケイという名前の方が一般的かも知れません。


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トウワタ(唐綿) Asclepias curassavica
果実に綿がありますが、主な用途は観賞用ですから、産業化するレベルの量や品質ではないのでしょう。トウワタは旅をする蝶として有名なオオカバマダラの食草です。オオカバマダラは毒蝶ですが、トウワタ由来の毒を持ちます。旧ガガイモ科。中南米の原産。
何でも、トウワタ属の花はラン科に並ぶほどの複雑な構造で、小型の蜂などは花に閉じ込められてしまうそうです。小さな花なので実際に見ても構造はよく分かりませんが…



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Euphorbia resinifera
いわゆる白角キリンと呼ばれるユーフォルビア。日焼け気味ですね。白角キリンはモロッコ産ハチミツの重要な原料です。ちなみに、ユーフォルビアのハチミツは薬用として用いられます。



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ラカンカ(羅漢果) Siraitia grosvenorii
ラカンカの塊茎。つる性で果実は非常に甘く甘味料などとされます。含まれるモグロシドVはショ糖の300から400倍の甘さがあります。ウリ科。中国の原産。


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マニホットゴム Manihot glaziovii
マニホットといえばタピオカの原料のキャッサバ(M. esculenta)を思い浮かべますが、こちらは食用ではありません。名前の通りゴムが採れますが、採取量はあまり多くはないようで、現在はあまり栽培されていないようです。というより勝手に増えて侵略的外来種となっています。デンプンをリューマチや汗止、消毒、さらには賦形剤として利用するそうです。トウダイグサ科。ブラジル原産。

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独特の荒れた幹肌。


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Polygonatum kingianum
植物園には知らない植物が沢山ありますから。このような雑草然とした植物も気になります。一見してよく分からない植物でしたが、
Polygonatumですからナルコユリ(P. falcatum)の仲間ですね。アマドコロ属、あるいはナルコユリ属とも言います。P. kingianumはナルコユリやカギクルマバナルコユリ(P. sibiricum)と共に塊茎をオウセイ(黄精)の名前で漢方とするそうです。滋養強壮や病後の虚弱などに使用するようです。中国、ミャンマー、タイ、ベトナムの原産。


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ビワモドキ Dillenia indica
植物分類表を見ていると必ず出てくるビワモドキ科のビワモドキです。以前から気になっていましたが、板橋区立熱帯環境植物館や夢の島熱帯植物館でも見ています。インドから中国、ボルネオ島まで広く分布します。

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大きな蕾がありました。花はまだ見たことがないので、タイミングが合わず残念です。


というわけで東京薬科大学の薬用植物園に行ってきましたが、まだ記事は続きます。とは言え、温室に入った途端、全身から汗が噴き出て汗が止まらなくなりました。最高気温となる12時を避けて、早々に退却した次第です。ですから、温室に長居は出来ませんでしたから、いつもより撮影した写真は少な目です。



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