去年はサボテンやアロエ類の新種の情報を記事にしましたが、先日サボテンについては記事を更新しました。あれから1年に見つかった新種の情報と、いくつか抜けていた種を追加しました。
さて、一般的には論文が出た=科学的な証明がなされたと解釈されがちですが、それは正確ではありません。論文の内容はまだ仮説のようなもので、沢山の科学者が読み内容を吟味します。場合によっては試験を再試し確認されることもあります。ですから、新種についても、まだ論文で新種が説明されただけでは駄目で、他の知られている種ではないのか、記載内容は科学的に正確かが吟味されます。
去年の8月に記事を書いた時点では、まだ論文で主張されただけで新種と認められていないものもありました。というわけで、アロエ類についても最新版の記事に改訂します。以下、去年の記事のコピーです。変わった部分は【追記】としています。いくつかの新種には画像リンクを貼りました。
先日、ここ10年ちょいくらいの、サボテンの新種についての記事を書きました。サボテンは巨大なグループで分布も広く、新種が見つかる余地はまだまだありそうです。その他の多肉植物では、何と言ってもアロエは新種が見つかる可能性が高いと言えます。アロエの新種を説明した論文を探してみたので、少し見てみましょう。まあ、サボテンの時と同じく、すべての新種を調べた訳ではなく、簡単に調べて出てきたものだけです。一応、アロエと近縁なAstrolobaやHaworthia、Gasteriaと、GonialoeやAloidendronなどの旧・アロエ属についても一部の情報を追加しました。
2010年
★モザンビークから南アフリカのKwaZulu-Natalにかけての地域より、新種のAloe tongaensisが記載されました。しかし、2013年にAloidendron属に移され、Aloidendron tongaenseとなりました。
https://pza.sanbi.org/aloidendron-tongaense
★【追記】南アフリカのKuwaZulu-Natal州中部から、新種のLeptaloeであるAloe nicholsiiが記載されました。
http://redlist.sanbi.org/species.php?species=2206-827
2011年
★エチオピアから4種類の新種のアロエが記載されました。Aloe benishangulana、Aloe ghibensis、Aloe weloensis、Aloe welmelensisです。
https://powo.science.kew.org/taxon/77110966-1
★【追記】ケニアより新種の2種類のアロエが記載されました。ケニア南西部に自生するAloe springatei-neumanniiは、Aloe wallastoniiに近縁なアロエです。ケニア北部の山地よりAloe tegetiformisが記載されました。枝分かれの多い匍匐茎を持ち、岩や土の上に密集したマット状に育ちます。
★【追記】ウガンダより新種の2種類のアロエが記載されました。ウガンダ西部のアルバート湖平原に自生するAloe butiabanaと、ウガンダ東部のElgon山の尾根の断崖から下垂するAloe wanalensisです。
https://uk.inaturalist.org/taxa/1417652-Aloe-butiabana
2012年
★北ソマリアから新種のAloe nugalensisが記載されました。
★マダガスカルから新種の3種類のアロエが記載されました。Aloe beankaensis、Aloe ivakoanyensis、Aloe analavelonensisです。
★ナミビアのBaynes山から新種のAloe huntleyanaが記載されました。
https://pza.sanbi.org/aloe-huntleyana
★南アフリカのMpumalngaから新種のAloe condyaeが記載されました。
https://uk.inaturalist.org/taxa/1239374-Aloe-condyae
★アンゴラ南西部のナミブ砂漠から新種のAloe mocamedensisが記載されました。
2014年
★マダガスカル北部から新種のAloe gautieriが記載されました。
★南アフリカのMpumalangaから新種のAloe andersoniiが記載されました。
https://pza.sanbi.org/aloe-andersonii
★南アフリカの東ケープ州から新種のAloe liliputanaが記載されました。
★南アフリカの東ケープ州から新種のGasteria loedolffiaeが記載されました。
https://pza.sanbi.org/gasteria-loedolffiae
★南アフリカの西ケープ州新種のからGasteria barbaeが記載されました。
★【追記】エリトリアのナブロ山東斜面とマブラ平原より新種であるAloe montis-nabroが記載されました。散在する低木に守られた軽石上や溶岩の隙間に育ちます。
2015年
★ウガンダから新種のAloe lukeanaが記載されました。
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Aloe_lukeana
★南アフリカの西ケープ州から新種のAstroloba cremnophilaが記載されました。
2017年
★マダガスカル北西部から新種のAloe belitsakensisが記載されました。
https://inaturalist.nz/taxa/746185-Aloe-belitsakensis
★マダガスカルから新種のLomatophyllum類である、Aloe maningoryensis、Aloe alaotrensisが記載されました。
★ケニアから新種のAloe zygorabaiensis、Aloe uncinataが記載されました。
★南アフリカから新種のAstroloba tenax、Astroloba robustaが記載されました。
https://www.inaturalist.org/taxa/580780-Astroloba-robusta
★南アフリカの西ケープ州から新種のHaworthia grenieriが記載されました。
★南アフリカの西ケープ州から新種のGasteria koelniiが記載されました。
https://www.janvandorpe.be/gasteria/gasteria-koenii
★【追記】ケニアより新種のAloe mangeaensisが記載されました。
2018年
★南アフリカのCape Provから新種のHaworthia dura、Haworthia ernstii、Haworthia vitrisが記載されました。
2019年
★ソマリランドから新種のAloe sanguinalisが記載されました。
https://www.sci.news/biology/aloe-sanguinalis-06915.html
2020年
★マダガスカル東部の湿潤林から新種のAloe vatovavensis、Aloe rakotonasoloiが記載されました。
★南アフリカの東ケープ州から新種のGasteria visseriiとGasteria camillaeが記載されました。
https://pza.sanbi.org/gasteria-camillae
★【追記】ケニア南東部より新種のAloe ngutwaensisが記載されました。
★【追記】インドより新種のAloe trinervisが記載されました。
2021年
★アンゴラ北西部から新種のAloe uigensis が記載されました。
2022年
★南アフリカ北部から新種のLeptaloe類であるAloe hankeyiが記載されました。
https://uk.inaturalist.org/photos/272064040
★【追記】南アフリカ北部州よりAloiampelos temuior var. erntrtiiが記載されました。オレンジ色の花を咲かせます。
2023年
★アンゴラ南部からの新種としてGonialoe borealisが説明されました。まだ、キュー王立植物園のデータベースには記載されていません。【追記】The International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants 2024. により新種として記載されました。
★【追記】ケニアより新種であるAloe nderianaが説明されました。まだ、キュー王立植物園のデータベースには記載されていません。
★【追記】ソマリランドのアカシアが優占する乾燥地で、新種であるAloe kayseiが説明されました。まだ、キュー王立植物園のデータベースには記載されていません。
最後に
と言う訳で、近年のアロエ類の新種でした。基本的に調べたのは名前だけで、そのすべてについて画像検索はしていないため、園芸的な重要度は分かりません。ところで、1753年にAloe L.と言う学名がつけられてから270年ほど経ちますが、まだ新種が続々と発見されていることに驚きます。おそらく、これからも沢山の新種が発見されることでしょう。しかし、残念ながら自生地の破壊により絶滅の危機に瀕しているアロエも沢山あります。また、発見される前に自生地の破壊により絶滅するものも出てくるはずで、既に人知れず絶滅しているものも少なくないはずです。新種の記載は不道徳なコレクターや業者による盗掘の危険性を高めてしまいますが、自生地の保護には多少の力が働く可能性もあります。知られていなければ保護の算段すらつかないため、科学者たちの奮闘に期待したいところです。
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さて、一般的には論文が出た=科学的な証明がなされたと解釈されがちですが、それは正確ではありません。論文の内容はまだ仮説のようなもので、沢山の科学者が読み内容を吟味します。場合によっては試験を再試し確認されることもあります。ですから、新種についても、まだ論文で新種が説明されただけでは駄目で、他の知られている種ではないのか、記載内容は科学的に正確かが吟味されます。
去年の8月に記事を書いた時点では、まだ論文で主張されただけで新種と認められていないものもありました。というわけで、アロエ類についても最新版の記事に改訂します。以下、去年の記事のコピーです。変わった部分は【追記】としています。いくつかの新種には画像リンクを貼りました。
先日、ここ10年ちょいくらいの、サボテンの新種についての記事を書きました。サボテンは巨大なグループで分布も広く、新種が見つかる余地はまだまだありそうです。その他の多肉植物では、何と言ってもアロエは新種が見つかる可能性が高いと言えます。アロエの新種を説明した論文を探してみたので、少し見てみましょう。まあ、サボテンの時と同じく、すべての新種を調べた訳ではなく、簡単に調べて出てきたものだけです。一応、アロエと近縁なAstrolobaやHaworthia、Gasteriaと、GonialoeやAloidendronなどの旧・アロエ属についても一部の情報を追加しました。
2010年
★モザンビークから南アフリカのKwaZulu-Natalにかけての地域より、新種のAloe tongaensisが記載されました。しかし、2013年にAloidendron属に移され、Aloidendron tongaenseとなりました。
https://pza.sanbi.org/aloidendron-tongaense
★【追記】南アフリカのKuwaZulu-Natal州中部から、新種のLeptaloeであるAloe nicholsiiが記載されました。
http://redlist.sanbi.org/species.php?species=2206-827
2011年
★エチオピアから4種類の新種のアロエが記載されました。Aloe benishangulana、Aloe ghibensis、Aloe weloensis、Aloe welmelensisです。
https://powo.science.kew.org/taxon/77110966-1
★【追記】ケニアより新種の2種類のアロエが記載されました。ケニア南西部に自生するAloe springatei-neumanniiは、Aloe wallastoniiに近縁なアロエです。ケニア北部の山地よりAloe tegetiformisが記載されました。枝分かれの多い匍匐茎を持ち、岩や土の上に密集したマット状に育ちます。
★【追記】ウガンダより新種の2種類のアロエが記載されました。ウガンダ西部のアルバート湖平原に自生するAloe butiabanaと、ウガンダ東部のElgon山の尾根の断崖から下垂するAloe wanalensisです。
https://uk.inaturalist.org/taxa/1417652-Aloe-butiabana
2012年
★北ソマリアから新種のAloe nugalensisが記載されました。
★マダガスカルから新種の3種類のアロエが記載されました。Aloe beankaensis、Aloe ivakoanyensis、Aloe analavelonensisです。
★ナミビアのBaynes山から新種のAloe huntleyanaが記載されました。
https://pza.sanbi.org/aloe-huntleyana
★南アフリカのMpumalngaから新種のAloe condyaeが記載されました。
https://uk.inaturalist.org/taxa/1239374-Aloe-condyae
★アンゴラ南西部のナミブ砂漠から新種のAloe mocamedensisが記載されました。
2014年
★マダガスカル北部から新種のAloe gautieriが記載されました。
★南アフリカのMpumalangaから新種のAloe andersoniiが記載されました。
https://pza.sanbi.org/aloe-andersonii
★南アフリカの東ケープ州から新種のAloe liliputanaが記載されました。
★南アフリカの東ケープ州から新種のGasteria loedolffiaeが記載されました。
https://pza.sanbi.org/gasteria-loedolffiae
★南アフリカの西ケープ州新種のからGasteria barbaeが記載されました。
★【追記】エリトリアのナブロ山東斜面とマブラ平原より新種であるAloe montis-nabroが記載されました。散在する低木に守られた軽石上や溶岩の隙間に育ちます。
2015年
★ウガンダから新種のAloe lukeanaが記載されました。
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Aloe_lukeana
★南アフリカの西ケープ州から新種のAstroloba cremnophilaが記載されました。
2017年
★マダガスカル北西部から新種のAloe belitsakensisが記載されました。
https://inaturalist.nz/taxa/746185-Aloe-belitsakensis
★マダガスカルから新種のLomatophyllum類である、Aloe maningoryensis、Aloe alaotrensisが記載されました。
★ケニアから新種のAloe zygorabaiensis、Aloe uncinataが記載されました。
★南アフリカから新種のAstroloba tenax、Astroloba robustaが記載されました。
https://www.inaturalist.org/taxa/580780-Astroloba-robusta
★南アフリカの西ケープ州から新種のHaworthia grenieriが記載されました。
★南アフリカの西ケープ州から新種のGasteria koelniiが記載されました。
https://www.janvandorpe.be/gasteria/gasteria-koenii
★【追記】ケニアより新種のAloe mangeaensisが記載されました。
2018年
★南アフリカのCape Provから新種のHaworthia dura、Haworthia ernstii、Haworthia vitrisが記載されました。
2019年
★ソマリランドから新種のAloe sanguinalisが記載されました。
https://www.sci.news/biology/aloe-sanguinalis-06915.html
2020年
★マダガスカル東部の湿潤林から新種のAloe vatovavensis、Aloe rakotonasoloiが記載されました。
★南アフリカの東ケープ州から新種のGasteria visseriiとGasteria camillaeが記載されました。
https://pza.sanbi.org/gasteria-camillae
★【追記】ケニア南東部より新種のAloe ngutwaensisが記載されました。
★【追記】インドより新種のAloe trinervisが記載されました。
2021年
★アンゴラ北西部から新種のAloe uigensis が記載されました。
2022年
★南アフリカ北部から新種のLeptaloe類であるAloe hankeyiが記載されました。
https://uk.inaturalist.org/photos/272064040
★【追記】南アフリカ北部州よりAloiampelos temuior var. erntrtiiが記載されました。オレンジ色の花を咲かせます。
2023年
★アンゴラ南部からの新種としてGonialoe borealisが説明されました。まだ、キュー王立植物園のデータベースには記載されていません。【追記】The International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants 2024. により新種として記載されました。
★【追記】ケニアより新種であるAloe nderianaが説明されました。まだ、キュー王立植物園のデータベースには記載されていません。
★【追記】ソマリランドのアカシアが優占する乾燥地で、新種であるAloe kayseiが説明されました。まだ、キュー王立植物園のデータベースには記載されていません。
最後に
と言う訳で、近年のアロエ類の新種でした。基本的に調べたのは名前だけで、そのすべてについて画像検索はしていないため、園芸的な重要度は分かりません。ところで、1753年にAloe L.と言う学名がつけられてから270年ほど経ちますが、まだ新種が続々と発見されていることに驚きます。おそらく、これからも沢山の新種が発見されることでしょう。しかし、残念ながら自生地の破壊により絶滅の危機に瀕しているアロエも沢山あります。また、発見される前に自生地の破壊により絶滅するものも出てくるはずで、既に人知れず絶滅しているものも少なくないはずです。新種の記載は不道徳なコレクターや業者による盗掘の危険性を高めてしまいますが、自生地の保護には多少の力が働く可能性もあります。知られていなければ保護の算段すらつかないため、科学者たちの奮闘に期待したいところです。
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