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カテゴリ: 多肉植物の論文

かつてのHaworthia sensu lato(広義のハウォルチア属)は2013年に分割され、Haworthia sensu stricto(狭義のハウォルチア属)、Haworthiopsis、Tulistaになりました。その中でもツリスタ属はたった4種類から構成されています。その4種類とはTulista marginata、Tulista pumila、Tulista kingiana、Tulista minorです。ただし、Tulista minorはTulista minimaと呼ばれることもあります。
ここからが本題です。私には以前から疑問に思っていたことがあります。それは、T. minorとT. minimaのどちらを選択するべきかということです。どうやら、近年ではT. minorで統一する流れのようですが、その根拠が今一つわからなかったのです。なぜならば、T. minorもT. minimaも、1789年にAloe margaritiferaの変種として、スコットランドのWilliam Aitonにより命名されました。本来ならば、先に命名された種小名が優先されますが、この場合は同時に命名されています。どちらを優先すべきなのでしょうか? なぜ、T. minorが認めているのでしょうか?
しかし、なんとその答えが書かれた論文を見つけました。是非ご紹介したいのですが、その前にT. minorとT. minimaの命名年表を下記に示します。


1789年 Aloe margaritifera var. minor Aiton
              Aloe margaritifera var. minima Aiton
1809年 Haworthia minor (Aiton) Duval
1812年 
Haworthia minima (Aiton) Haw.
1821年 Apicra minor (Aiton) Steud.
1829年 Aloe minor (Aiton) Schult. & Schult.f.
1891年 
Catevala minima (Aiton) Kuntze
1997年 
Haworthia pumila subsp. minima
                                     (Aiton) Halda
2014年 
Tulista minima
              (Aiton) Boatwr. & J.C.Manning

2018年 Tulista minor
              (Aiton) Gideon F.Sm. & Molteno

DSC_1801
Tulista minor

さて、今日ご紹介する論文は、Gideon F. Smith, Estrela Figueiredo & Steven Moltenoによる2018年の『A new combination in Tulista, T. minor (Alooideae, Asphodelaceae)』です。
1789年にAloe margaritifera var. minorとAloe margaritifera var. minimaを命名したAitonは"minor"と"minima"を別種と認識していました。しかし、どうやら同じ論文の中で命名されたようです。この場合、先に命名された学名を優先するという「先取権の原理」ではどちらを優先すべきか判断出来ません。フランスのHenri August Duvalが"minor"をハウォルチアとしたのは1809年、イギリスのAdrian Hardy Haworthが"minima"をハウォルチアとしたのは1812年ですから、ハウォルチアへの移行は3年の差があります。著者はこの事を重視しているようです。調べたところ、どちらかに正式な学名とすることを初めて公表した著者の意見が優先されるそうです。これは「第一校訂者の原理」と呼ばれます。"minor"の場合はDuvalが第一校訂者となります。よって、ツリスタ属に変更する場合でも、その基礎となる種小名は"minor"となります。

話をまとめます。著者らが主張する学名に使われる種小名"minor"は、1789年にAitonによりAloe margaritifera var. minor Aiton(※Basionym)と命名されました。1809年にDuvalによりHaworthia minor (Aiton) Duval(※Homotypic synonym)とされましたが、著者らはDuvalを第一校訂者として、H. minorを根拠とする
Tulista minor (Aiton) Gideon F.Sm. & Molteno, comb. nov.(※comb. nov.=所属が変更された)としました。ちなみに、他にも種小名"minor"を使用した異名(Homotypic synonym)として、1821年のApicra minor (Aiton) Steudel、1829年の Aloe minor (Aiton) Schult. & Schult.f.が知られています。
また、正統性がなく無効とされる異名(Heterotypic synonym)として、1789年の
Aloe margaritifera var. minima Aiton、 1812年のHaworthia minima (Aiton) Haworth、2014年のTulista minima (Aiton) Boatwright & J.C.Manningが知られています。

補記1 : 同じ著者らの2017年の論文では、ツリスタ属はT. opalinaを含め5種類としていました。しかし、今回ご紹介した2018年の論文ではツリスタ属は4種類とし、T. opalinaを認めるかは議論のあるところであるとしています。T. opalinaを認めるか否か、2017年から2018年の1年で情勢が変わったのかもしれませんね。

補記2 : "minor"は「ミノー」と読むことが一般的ですが、ラテン語の読み方では「ミノル」です。個人的な好みでラテン語読みにこだわっている関係上、「ミノル」と読ませていただきました。
そういえば、"minima"は「小さな」、"minor"は「より小さな」という意味です。初めに"minor"と"minima"を命名したAitonは、大小2つの個体を見て、大きい個体は他種より小さいから"minima"として、それより小さい個体を"minor"と命名したのでしょうかね? 名前のミステリーはまだ未解決かもしれません。



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個人的にツリスタ属が好みでチマチマ集めていますが、現在ツリスタ属は4種類なので全種類簡単に集まりました。あとは変種やフィールドナンバー付きを集めるくらいです。Haworthia pumilaとHaworthia marginataは、2013年にGordon Douglas RowleyによりTulista pumilaとTulista marginataとされました。しかしその後にGideon F.Sm & Moltenoにより2017年にはTulista kingiana、2018年にはTulista minorがツリスタ属に追加されました。そのため、海外のサイトではT. marginataやT. pumilaはツリスタ属としていても
、T. minorやT. kingianaはハウォルチア属としていることもあります。国内では残念ながらツリスタ属自体に対する認識がそもそもあまり無いのが現状で、4種類すべてがハウォルチア属としていることが多いように思われます。

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Tulista kingiana

さてそんな中、今年の7月初めにT.kingianaを入手したことにより全4種類が集まりましたが、その都度学名などの情報を調べて記事にしました。この時、学名の情報はイギリス王立植物園のデータベースを参考としましたが、その根拠は特に意識していませんでした。しかし、最近多肉植物の論文を漁っているため、キンギアナをツリスタ属とした論文を見つけました。早速読んでみたところ、何やら意外なことが書かれており、単純に属名の変更というどちらかと言えば地味な論文にしては面白い内容でしたのでご紹介します。

ご紹介する論文は2017年のGideon F. Smith, Estrela Figueiredo & Steven Moltenoによる『A new combination in Tulista, T. kingiana (Asphodeloideae, Xanthorrhoeaceae / Alooideae, Asphodelaceae)』です。早速簡単にご紹介しましょう。
2003年のTreulein et al.や2013年のGrace et al.、2014年のManning et al.によるアロエ類の系統発生研究により、Haworthia s.l.(sensu lato=広義の)は3分割されることが示されました。Haworthiaは、Haworthia s.s.(sensu stricto=狭義の)、Haworthiopsis G.D.Rowley、Tulista Rafinesqueの3グループが確立され広く受け入れられました。
このうち、Tulistaは5種類を含むと考えられています。つまり、T. marginata (Lamarck, 1783) G.D.Rowley, 2013、T. minima (Aiton, 1789) Boatwr. & J.C.Manning, 2014、T. opalina (Hayashi, 2001) Breuer, 2016、T. pumila (Linnaeus, 1753) G.D.Rowley, 2013です。しかし、5番目の種であるHaworthia kingiana Von Poellnitz, 1936については、ツリスタ属として命名はされていますが、その学名が有効ではないと言います。どういうことなのでしょうか?
2013年のG.D.Rowleyや2016年のBreuerの論文では、H. kingianaをツリスタ属としました。しかし、これらはVon Poellnitzの1936年の報告を引用してそれを基に命名しました。しかし、Von Poellnitzの1936年の報告は国際命名規約(ICN)に乗っ取ったものではありませんでした。つまり、G.D.RowleyやBreuerにより命名されたTulista kingianaは、引用元に誤りがあるため正式には認められないというのです。これは、ICNの第41.5条に基づいて有効ではないとされるそうです。
そこで著者はHaworthia kingianaが規約に乗っ取り正式に報告されたVon Poellnitz, 1937を引用して、Tulista kingiana (Poelln.) Gideon F.Sm. & Molteno, comb. nov.として新たに記載しました。
※comb.nov.=combination nova、他の所属になったことを示す。
学名の根拠となった元になった学名(Basionym)は、Haworthia kingiana Von Poellnitz, 1937で、Tulista kingiana (Poelln.) G.D.Rowley, 2013やTulista kingiana (Poelln.) Breuer, 2016は規約に従わない無効名です。

ここまでが論文の内容です。私はG.D.Rowleyが2013年にツリスタ属を復活させた時に、T. kingianaは含まれていなかったものだと勘違いしていましたが、実は命名自体はされていたわけです。しかし、このような経緯は学名を調べただけではわかりませんから、個人的には非常に面白い話でした。


補記 : 論文ではツリスタ属は5種類としていますが、現在学術的に認められているツリスタ属は4種類です。T. opalinaはT.minorの異名とされています。しかし、将来的にT. opalinaが認められる可能性はあります。
また、T. minimaは現在ではT. minorが正しい学名となっています。これについては個人的に前々から頭を悩ます問題でした。T. minorが正式な学名であることは知っていますが、その理由や根拠となると全く説明出来ないのです。そんな中、そこら辺について書かれた論文を見つけましたので、私が何にそんなに悩んでいたのかを含め明日ご紹介したいと思います。



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本日は2013年に発表された論文『Gymnocalycium mostii aggregate : Taxonomy in the northern part of its distribution area including newly described taxa』をご紹介します。著者はチェコの植物学者であるRadomír Řepka & Peter Kouteckyです。
論文の趣旨は、Gymnocalycium prochazkianum、Gymnocalycium simile、Gymnocalycium simplexの3種について、その形態や分布、ゲノムサイズの調査により、3種の関係性を考察しています。

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Gymnocalycium prochazkianum

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Gymnocalycium prochazkianum
                                    subsp. simile
            (=G. simile)


ここで、タイトルにあります"Gymnocalycium mostii aggregate"、つまりは「ギムノカリキウム・モスティイ集群」とは何かという話をしましょう。G. mostiiとはいわゆる「紅蛇丸」のことですが、現在G. mostiiには亜種や変種が認められておりません。つまりは、黒豹丸G. mostii var. kurtzianumも、ただのG. mostiiと同一視されています。さらには、G. bicolorやG. prochazkianum、G. simile(G. prochazkianum subsp. simile)、G. simplex(G. prochazkianum subsp. simplex)も、現在ではG. mostiiに集約されてしまっているのです。気を付けなければならないのは、紅蛇丸と言った場合はG. mostiiのことですが、G. mostiiと言った場合は紅蛇丸を示すとは限らないことです。単にG. mostiiと言った場合には、G. bicolorやG. prochazkianumなども含んだ学名だからです。ただ、その場合のG. mostiiはかなりの変異幅を持っていますから、「集群」という表現となっているのでしょう。しかし、研究者は論文でもG. prochazkianumやG. bicolorの学名を使用しています。やはり、不便なのでしょうか? 必ずしもG. mostiiとする統一見解があるわけではないのかもしれません。まあ、学名なんてそのうち変わるかもしれませんけどね。
※集群 : 亜属内の何らかの集合。

さて、内容に入る前にギムノカリキウム属について、簡単に解説します。2011年の論文でPablo H. Demaioはギムノカリキウム属を7つの亜属に分けました。その1つであるScabrosemineum亜属は共通する種子の特徴があるそうです。この特徴はG. mostiiグループにも見られますが、種子の色や葯やフィラメントの色の違いにより、G. mostiiグループは8つに分けられるとされます。
G. mostii sensu stricto
        ※狭義のG. mostii
G. mostii f. kurtzianum
G. mostii var. miradorense
G. mostii subsp. valnicekianus
G. bicolor nom.inval.
        ※nom.inval.=規約に従わない無効名
    =G. mostii subsp. bicolor
G. genseri nom.nud.
        ※nom.nud.=裸名
G. prochazkianum
    =G. mostii subsp. prochazkianum
G. bicolor var. simplex nom.prov.
       ※nom.prov.=正名がつくまで有効な学名

G. mostiiグループはアルゼンチンのコルドバ州とサンティアゴ・デル・エステロ州に分布します。
G. bicolor var. simplexは"Northern bicolor"とも呼ばれ、G. bicolor(s.str.)やG. prochazkianumとは形態が異なります。しかし、種子リストではG. prochazkianumとG. bicolor var. simplexの中間的な移行形態も見られるそうです。

さて、論文では形態的な比較もしており、例えば全体のサイズはprochazkianum<simile ≦simplex、稜の数はp
rochazkianum<simile <simplex、トゲの数はprochazkianum<simile<simplex、トゲの長さはprochazkianum<simile<simplex、果実のサイズはprochazkianum>simile >simplexなど、G. simileはG. prochazkianumとG. simplexの中間的な特徴を示し、G. simileの交雑により誕生した可能性を示唆しています。ただし、種内の特徴の変動幅を見た場合、意外にも交雑を疑われるG. simileよりG. prochazkianumの方が変動幅が高いことがわかりました。
次にG. prochazkianumは太く長い貯蔵根があり、G. simileも似たような根を持つことがありますが、G. simplexはわずかに肥厚することはありますが根は分岐します。

自生地ではG. simplexは平らな球形から半球形で土壌に1/2ほど埋まりますが、古い個体は完全に地上に露出します。G. prochazkianumは古い個体でも最大3/4は土壌に埋まります。G. simileは自生地の集団により、土壌に埋まったり露出したりします。
また、種子の形状ではG. simileとG. simplexはほぼ同じなんだそうです。


ここで、ゲノムサイズの解析について解説します。どうやらフローサイトメトリーにより解析を行ったようです。フローサイトメトリーはフローサイトメーター(FACS)という機器を用います。これは細胞にレーザーを当てて、その特徴を分析する機器です。FACSが優れているのは、数千~数万という細胞を短時間で解析可能であることです。
このFACSを用いた解析では、G. prochazkianum、G. simile、G. simplexは、すべて二倍体であることがわかりました。Scabrosemineum亜属は基本的に二倍体ですが、四倍体も知られていたため確認したみたいです。これは異なる倍数体同士では交配しない可能性があるため、同じ二倍体であることが交雑可能性の否定的要素の除外として重要だったみたいですね。


分布域を比較すると、G. prochazkianum、G. simile、G. simplexのそれぞれ離れており、連続していません。3種の中ではG. prochazkianumが最南端に分布します。
①G. prochazkianumはアカシアが優勢である低木地帯に生えます。低木により遮光される環境に育つことがあります。土壌は瓦礫地で花崗岩と花崗岩の崩壊物からなり、非常に低栄養で強く乾燥します。G. prochazkianumはこの極端な環境によく適応しています。太く長い貯蔵根は環境への適応により発達したのかもしれませんね。
②G. simplexはG. prochazkianumよりも北に分布し、比較的大きな分布域を持ちます。花崗岩の崩壊による砂質の土壌に育ちます。G. simplexはあまり埋まらず、直射日光にさらされます。G. simplexはG. prochazkianumと同様に栄養素の乏しい土壌です。
③G. simileはG. prochazkianumとG. simplexの生息域の間に分布し、生息域は繋がっておりません。石の多い斜面の低木地帯に生えるためG. prochazkianumに地質学的条件は似ています。岩石は花崗岩質で、花崗岩が崩壊して出来た砂質の土壌でも育ち、生態学的にはG. simplexに似ています。


ここまでの内容の結論としましては、G. simileはG. prochazkianumとG. simplexの自然交雑種である可能性が高いということです。
考えたこととして、これはただの雑種ではないかもし知れないということです。通常は雑種を防ぐ生態的あるいは発生学的な防壁があり、近縁種が混ざって生えていても、交雑は起きません。もし雑種が出来ても不捻と言って、雑種には発芽可能な種子が出来ないことが多いようです。しかし、ギムノカリキウム属は簡単に雑種が出来てしまい、雑種でも種子を作り増えることが出来ます。どうも自然交雑がギムノカリキウム属の進化に深く関わっているように思えます。交雑しても地理学的な隔離があれば、独立種としての道筋を辿るのではないでしょうか。そもそも、ギムノカリキウム属は短期間に進化したらしく、遺伝子解析による分離がいまいちなグループです(Demaio, 2011)。自然交雑が進化の起爆剤となっているのかもしれません。


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以前、笹蟹丸と紅キリンの関係について記事にしました。

この記事では、笹蟹丸Euphorbia pulvinataと紅キリンEuphorbia aggregataは同種であり、E. aggregataという学名はE. pulvinataの異名であるというものでした。
これは、海外のサイトを色々探った時に出てきた情報です。園芸サイトだけではなく、学術的な植物のデータを収集しているような幾つかのサイトでも、やはり2種は同種であるとありました。最終的には、『GBIF』(Global Biodiversity Information Facility)という学術的な情報に基いて、学名を収集しているサイトの情報を確認しました。
しかし、『World Checklist of Vascular Plants』というイギリス王立植物園が主宰するサイトの情報においては、E. pulvinataとE. aggregataはそれぞれ別種とされています。このサイトの情報は、正式な学名と異名について、出されている学術論文を参考にして検討する学術雑誌を出しており、新しい情報があれば改定されたりします。GBIFもWorld Checklist of Vascular Plantsを根拠としていますから、GBIFは情報が古いのかもしれません。

DSC_1726
笹蟹丸
Euphorbia pulvinata Marloth, 1910

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紅キリン
Euphorbia aggregata A.Berger, 1907 publ. 1906


ここで、疑問が湧きます。では、E. pulvinataとE. aggregataが同種であるという情報はどこから来たのでしょうか? 調べたところ、2012年に南アフリカの植物学者であるPeter Vincent Bruynsによる『Nomenclature and typification of southern African species of Euphorbia』という論文から来ているようです。驚いたことに、実は既に読んだことがある論文でした。World Checklist of Vascular Plantsでもこの論文を根拠としているユーフォルビアもありますから、内容をチェックしたことがあったのです。この論文の内容は、南アフリカに分布するユーフォルビアの種類と学名の妥当性を検討するというものです。問題のE. aggregataは"除外された名前"とされています。一体どういう意味なのでしょうか?
この論文においてE. aggregataは、E. pulvinataやE. feroxと同種ではないかを確認する必要があるとあります。あるいは、E. aggregataはカルー東部の広い範囲に分布し、E. pulvinataやE. feroxとの中間体である懸念を指摘しています。果たしてこの擬義が如何にして解消されたのかは私にはわかりませんが、とにかくこの論文のE. aggregataに関する記述は認められていません。その根拠を探して論文を探してみましたが、残念ながら見つけられませんでした。様々なサイトではE. aggregataについて異名の疑いを示してはいるものの、現在ではE. aggregataを承認する形となっています。

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勇猛閣
Euphorbia ferox Marloth, 1913

それでも気になるのは、やはりその根拠です。Bruynsの論文の当該部分を否定するならば、当然ながら議論があるはずです。しかし、よくよく考えて見ると、Bruynsの"懸念"が何らかの根拠に基づいているのか、その考え方の妥当性自体に誤りがないのかはわかりません。そもそもこの懸念が議論に値するものであるのかどうかすらわかりません。単純に妥当性なしとされただけのことかもしれません。とはいえ、それも確証はないため気になっている部分ですから、今後も論文の調査は行っていくつもりです。



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硬葉系ハウォルチアはハウォルチア属のHexangulares亜属とされてきました。しかし、硬葉系ハウォルチアは2013年にGordon Douglas Rowleyによりハウォルチオプシス属とツリスタ属として、ハウォルチア属から独立しました。しかし、そのハウォルチオプシス属内部をどう分類するのかという問題も出てきました。また、遺伝子解析結果からは、思いもよらぬ難問が提出されました。そこで、本日はハウォルチオプシス属の新しい分類を提案している、2016年に発表された論文『A synoptic review and new iofrageneric classification for the genus Haworthiopsis (Xanthorrhoeaceae : Asphodeloideae)』をご紹介いたします。著者は近年のアロエ類研究を先導する、南アフリカのSean D.Gildenhuys & Ronell R.Klopperです。

Haworthia henriquesiiが2019年にハウォルチオプシス属とされましたが、論文は2016年ですからHaworthiopsis henriquesiiを含まない18種類について述べられております。
問題はコエルマニオルム(H. koelmaniorum)の立ち位置です。コエルマニオルムは分布はリミフォリア(H. limifolia)に近いものの、形態的にはテセラタ節(H. granulata、H. tessellata、H. venosa、H. woolleyi)に近いようにも見えます。しかし、下に示した遺伝子解析による分子系統では、ハウォルチオプシス属はガステリア属と姉妹群ですが、コエルマニオルムはむしろガステリア属よりもハウォルチオプシス属と離れて見えます。

            ┏━━━━━Gasteria
            ┃
            ┃        ┏━━Haworthiopsis
            ┃        ┃     Section Trifariae
            ┃    ┏╋━━Haworthiopsis
            ┃    ┃┃     Section Haworthiopsis
            ┃┏┫┗━━Haworthiopsis
            ┃┃┃         Section Haworthiopsis
            ┣┫┗━━━Haworthiopsis
            ┃┃             Section Virescentes
        ┏┫┗━━━━Haworthiopsis
        ┃┃                 Section Haworthiopsis
        ┃┣━━━━━Haworthiopsis
        ┃┃                 Section Limifoliae
        ┃┣━━━━━Haworthiopsis
        ┃┃                 Section Tessellatae
        ┃┗━━━━━Haworthiopsis
    ┏┫                     Section Attenuatae
    ┃┣━━━━━━Haworthiopsis
    ┃┃                     Section koelmaniorum
    ┃┃┏━━━━━Tulista
    ┃┃┃
    ┃┃┣━━━━━Aristaloe
┏┫┗┫
┃┃    ┣━━━━━Gonialoe
┃┃    ┃
┃┃    ┗━━━━━Astroloba
┃┃
┃┣━━━━━━━Aloe
┃┃
┫┗━━━━━━━Aloiampelos

┣━━━━━━━━Haworthia

┣━━━━━━━━Kumara

┗━━━━━━━━Aloidendron

ハウォルチオプシスを分割していますが、ガステリア属を含めて1つのグループを形成しています。同様にツリスタ属、アリスタロエ属、ゴニアロエ属、アストロロバ属を1つのグループとしています。要するに、①ハウォルチオプシス+ガステリア、②コエルマニオルム、③ツリスタ+アリスタロエ+ゴニアロエ+アストロロバという、3群に分けられるのです。ガステリア属は非常にまとまりのあるグループなので、独立した属とされています。このように、コエルマニオルムはハウォルチオプシスとすべきか微妙な立ち位置にいます。
さらに言うならば、Trifariae節、Haworthiopsis節、Virescentes節はまとまりがありますが、Limifoliae節、Tessellatae節、Attenuatae節は必ずしも単系統にはなっていません。ハウォルチオプシス属自体のまとまりのなさがうかがえます。
ただし、慎重にも論文ではさらに詳細な解析が必要であるとしています。完全決着などではなく、現時点においての評価ということなのでしょう。
では、論文におけるハウォルチオプシス属の分類と、私の各Sectionの解説を示します。

①Section Attenuatae
・H. attenuata
・白い結節(イボ)がつくタイプです。結節の大きさや密度、白さには個体差があります。
・アテヌアタは東ケープ州に分布します。
・日本では「十二の巻」という名前の白い結節があるハウォルチオプシスが昔から販売されており、これをファスキアタとすることが多いのですが、「十二の巻」はアテヌアタ系交配種です。最近、「特アルバ」の名前で販売されている結節が目立つタイプのハウォルチオプシスはアテヌアタです。同様に結節が細かくつき繋がらない「松の雪」はやはりアテヌアタです。このように、アテヌアタ系はよく見かけますが、ファスキアタは基本的に販売しておりません。たまに専門店に並ぶくらいです。ネットでは十二の巻をファスキアタの名前で販売されていることが多いので注意が必要です。

②Section Haworthiopsis
・H. coarctata, H. fasciata, H. glauca, H.longiana, H. reinwardtii
・白
い結節(イボ)がつくタイプです。結節の大きさや密度、白さには個体差があります。白い結節を持ちロゼットを作るファスキアタ、白い結節を持ち縦長に育つコアルクタタとレインワルドティイ、結節に白くならないか結節がないグラウカ、結節がない場合もあり葉が長くなるロンギアナからなります。
・Haworthiopsis節はすべて東ケープ州に分布します。
コアルクタタをレインワルドティイに含める考え方もあります。

③Section Limifolia
・H. limifolia
・遺伝子解析では独立して見えますが、他種との関係に対する解析が不十分とのことで暫定的にリミフォリア節を設定しています。
・リミフォリアはMpumalanga州とKuwaZulu-Natal州に分布します。

④Section koelmaniorum
・H. koelmaniorum
・コエルマニオルムはLimpopo州とMpumalanga州に分布します。Limpopo州に分布するハウォルチオプシスはコエルマニオルムのみです。

⑤Section Tessellata
・H. granulata, H. tessellata, H. venosa, H. woolleyi
・テセラタは北西州と自由州唯一のハウォルチオプシスです。テセラタは北ケープ州や西ケープ州、東ケープ州にも広く分布します。グラヌラタは北ケープ州と西ケープ州に分布します。ヴェノサは西ケープ州に固有です。ウォオレイは東ケープ州に固有です。
・Tessellata節は小型で窓のあるグループです。グラヌラタはヴェノサの亜種とされてきました。同様にウォオレイはヴェノサの亜種あるいは変種とされて来ましたから、販売苗のラベルではそのような表記が多いでしょう。

⑥Section Trifariae
・H. pungens, H. nigra, H. scabra, H. viscosa
・縦長に積み重なるタイプです。ヴィスコサやニグラは三方向に葉を出して積み重なります。プンゲンスは6あるいは3方向に積み重なります。スカブラはロゼットを形成します。
・プンゲンスは東ケープ州に固有です。スカブラとヴィスコサは東ケープ州と西ケープ州に分布します。ニグラは東ケープ州と西ケープ州、さらに北ケープ州にも分布します。

⑦Section Virescentes
・H. bruynsii, H. sordida
・Virescentes節は東ケープ州に固有です。
・ブルインシイは一見して軟葉系のHaworthia retusaに似ていますが類縁関係はなく、平行進化と考えられています。

ちなみに、ハウォルチオプシス全種類の変種や異名については下記の記事にありますので、ご参照して下さい。



さて、論文の内容につきまして簡単に解説してきましたが、実は私も読んでいてモヤモヤする内容でした。まず、Tessellatae節やLimifoliae節の関係がよく分からないことです。これはさらに詳しく解析をすればわかることでしょうから今後に期待します。次にHaworthiopsis節ですが、Trifariae節やVirescentes節と入れ子状になってしまっています。どうみても、単系統ではありません。結節があるなどの特徴から分けるのは間違いなのかもしれません。

2014年のJohn C. Manning & James S. Boatwrightの
A Molecular Phylogeny and Generic Classification of Asphodelaceae Subfamily Alooideae : A Final Resolution of the Prickly Issue of Polyphyly in the Alooids?』という論文では、12種類のハウォルチオプシスの遺伝子解析をしています。ここでもコエルマニオルムはハウォルチオプシスの中には収まっていないため、下記の分子系統には入っていません。この論文では、コエルマニオルムはツリスタ+アストロロバ+アリスタロエ+ゴニアロエと姉妹群とされ、むしろハウォルチオプシスからは近縁ではありません。

┏━━━━━━━Gasteria

┃                    ┏━H. reinwardtii
┃                ┏┫
┃                ┃┗━H. nigra
┃            ┏┫
┃            ┃┗━━H. coarctata
┃        ┏┫
┃        ┃┗━━━H. glauca
┃    ┏┫
┃    ┃┣━━━━H. bryunsii
┃    ┃┃  
┃┏┫┗━━━━H. sordida
┃┃┃
┃┃┃┏━━━━H. fasciata
╋┫┗┫
┃┃    ┗━━━━H. longiana
┃┃
┃┗━━━━━━H. limifolia

┃┏━━━━━━H. venosa
┗┫
    ┗━━━━━━H. attenuata

Haworthiopsis節は2つに別れます。ファスキアタとロンギアナは近縁です。残りのレインワルドティイ、コアルクタタ、グラウカは、Trifariae属のニグラと近縁です。他のTrifariae節はわかりません。Limifolia節はここでも独立しています。Tessellata節のヴェノサはアテヌアタと近縁に見えます。
ただし、この2つの論文は分離がいまいちだったり、調べた種類が少ないため、まだ確実なことは言えないでしょう。また、調べた遺伝子によっても、解析結果に若干の違いが出るようです。更なるデータの蓄積が必要でしょう。
というわけで、わかったようなわからないような結果です。はっきりしないのは残念です。しかし、コエルマニオルムはハウォルチオプシスとは近縁とは言えないという結果だけは共通します。将来、コエルマニオルムはハウォルチオプシスから独立するかもしれませんね。


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ポエルニッチア属は、かつてアストロロバ・ルブリフロラにつけられた旧・学名です。私もそのことについて何ら疑問を抱かなかったわけですが、アストロロバ属について調べていた際に衝撃的な論文を見つけてしまいました。Gideon F. Smithらが2018年に発表した『Proposal to conserve the name Astroloba against Poellnitzia (Asphodelaceae : Alooideae)』です。

DSC_0982
Astroloba rubriflora
          =Poellnitzia rubricflora

とりあえず、その内容に入る前に簡単にことの経緯を説明します。ルブリフロラは1920年にアピクラ属として命名されたアロエ類です。種小名はルブリフロラとヤコブセニアナ(ジャコブセニアナ)が命名されましたが、学名は先に命名された方が優先されますから、ルブリフロラが採用されます。下の年表はルブリフロラの学名の変遷を示したものです。現在では2000年に命名されたアストロロバ属の所属となっています。


1920年 Apicra rubriflora L.Bolus
1939年 Apicra jacobseniana Poelln.
1940年 Poellnitzia rubriflora

                    (L.Bolus) Uitewaal
1955年 Poellnitzia rubriflora
                          var. jacobseniana
                              (Poelln.) Uitewaal
1971年 Haworthia rubriflora
                                    (L.Bolus) Parr

1981年 Aloe rubriflora 
                             (L.Bolus) G.D.Rowley

2000年 Astroloba rubriflora (L.Bolus)
              Gideon F.Sm. & J.C.Manning
2013年 Tulista rubriflora
                             (L.Bolus) G.D.Rowley

さて、それではいったい何が問題かと言いますと、属名はアストロロバで良いのか? ということです。アピクラ属は現存しない属ですし、アロエやハウォルチアに関しては、遺伝子解析結果からも否定されています。Gordon Dougles Rowleyがルブリフロラを他のアストロロバと共にツリスタ属の所属としましたが、これは確かに遺伝子解析結果では近縁でしたが、アストロロバ属はまとまりのある群として独立させる意見が認められています。ここまでは問題ありません。
ポエルニッチア属は1940年にルブリフロラのためにオランダの植物学者であるAntonius Josephus Adrianus Uitewaalにより提唱されました。しかし、1947年に同じくUitewaalにより、アストロロバ属が提唱されました。Uitewaalはポエルニッチアとアストロロバを別属としました。アストロロバ属は白花で虫媒花ですが、ルブリフロラ(rubri=赤、flora=花)の名前の通り赤花で鳥媒花です。現在ではルブリフロラは鳥を引き付けるために特殊化したアストロロバと見なされています。しかし、その特殊性ゆえ、ルブリフロラをアストロロバから分離する考え方はいまだに健在のようです。しかし、遺伝子解析からはやはりアストロロバに含まれるという結果でした。
さて、次からが最大の問題です。良く考えたら、1940年に命名されたポエルニッチア属と1947年に命名されたアストロロバ属を比較した場合、ポエルニッチア属の方が早く命名されていますから、アストロロバ属は本来使用されるべき属名ではないというのです。つまりは、現在アストロロバ属とされている種はすべてポエルニッチア属とするのが正しいというわけです。私はポエルニッチア属はルブリフロラのためだけに創設されたため、ポエルニッチア属を基準とすべきとは考えませんでしたが、確かに言われてみればその通りです。何故そのことに気が付かなかったのか、私自身迂闊でした。では、今後はアストロロバ属を廃して、すべての旧・アストロロバをポエルニッチア属に移動させるべきなのでしょうか?

しかし、著者はこの考え方に否定的です。アストロロバ属は1947年の命名以降一貫して使用されてきましたし、非常にまとまりのあるグループです。論文をはじめとする世界的な文献においても定着しています。そのため、アストロロバ属をポエルニッチア属に置き換えることは、決して望ましいことではなく、命名学的な安定性の観点からも利益にはならないと述べています。やはり、ポエルニッチアという1種に対応する属名をすでに確立した学名であるアストロロバ属に対応させることは、不必要な混乱と不確実性を生じるとしています。
植物の学名はある程度は見直されており、チェックを受けています。最新のチェックでは、アストロロバ属は1995年の『World Checklist of Seed Plants』により承認されており、ポエルニッチア属は2011年の『World checklist of selected plant families published update Facilitated』によりアストロロバ属の同義語であるとしています。今後もこのように見直しは行われますから、著者の意見が認められるのか、それともアストロロバ属が消滅するのか、大変気になるところです。私も注視しついきたいと思っています。



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Gymnocalycium esperanzaeは2011年に命名された、割と発見が新しいサボテンです。しかし、G. esperanzaeの命名者であるRadomír Řepkaが2012年に発表した『GYMNOCALYCIUM ESPERANZAE : A NOTHOSPECIES?』という論文では、交雑種の可能性があるという指摘をしています。

DSC_1747
Gymnocalycium esperanzae

論文では遺伝子解析をしていますが、その前にギムノカリキウムの分類について簡単に説明します。ギムノカリキウム属の分類は必ずしも統一見解があるわけではないようですが、ギムノカリキウム属全体の遺伝子を解析した2011年のPablo H.Demaioの論文『MOLECULAR PHYLOGENY OF GYMNOCALYCIUM (CACTACEAE) : ASSESSMENT OF ALTERNATIVE INFRAGENERIC SYSTEMS, A NEW SUBGENUS, AND TRENDS IN THE EVOLUTION OF THE GENUS』によると、以下の様な分子系統となっているようです。ギムノカリキウム属は7亜属に分けられています。今まではギムノカリキウム属は種子の特徴から分類されてきましたが、遺伝子解析の結果と一致していました。ちなみに、このDemaioの論文はŘepkaも参照としています。

            ┏━━Subgenus Gymnocalycium
        ┏┫
    ┏┫┗━━Subgenus Trichomosemineum
    ┃┃
┏┫┗━━━Subgenus Macrosemineum
┃┃
┃┗━━━━Subgenus Scabrosemineum

┫┏━━━━Subgenus Muscosemineum
┣┫
┃┗━━━━Subgenus Pirisemineum

┗━━━━━Subgenus Microsemineum

さて、それでは『GYMNOCALYCIUM ESPERANZAE : A NOTHOSPECIES?』の内容に戻ります。種子の特徴からは、G. esperanzaeはScabrosemineum亜属とされます。Scabrosemineum亜属の種子は0.6-1mmと小さく褐色、植物はしばしば大型で根はnapiform(かぶら状)とされています。
しかし、著者はG. esperanzaeは、G. bodenbenderianumとG. castellanosiiの自然交雑種ではないかと推測しています。G. castellanosiiはScabrosemineum亜属ですが、G. bodenbenderianumはTrichomosemineum亜属であり、驚くべきことにあまり近縁ではありません。G. castellanosiiとG. bodenbenderianumは広い分布域を持ちますが、その分布が重なる点にG. esperanzaeが生じているようです。
しかし、自然交雑は植物の進化において一般的なこと(Ellstrand et al.2008)であり、環境に適応して種分化の機会を生み出す力である(Anderson 1949, Arnold 1997, Rieseberg 1995, 1997, Rieseberg & Carney 1998)とする意見が多いそうです。サボテン科の進化には、自然交雑による倍数体化(遺伝子が重複)が重要とされています(Friedrich 1974, Pinkava 2002, Machado 2008, Mottram 2008)。ですから、G. esperanzaeはただの雑種ではなく、新種が生まれつつあるのかも知れないということです。交雑自体は割と新しく起きた可能性があります。

では、実際の①G. castellanosii(subsp. armillatum)、②G. esperanzae、③G. bodenbenderianumの特徴を比較してみましょう。

種                   ①                ②                ③
根                   枝分かれ    かぶら状    かぶら状
中央の棘       1-3本           0本              0本
若い棘           黒                黒                 褐色
雄しべ           ピンク        淡い緑色     淡い緑色
種子の形       丸~卵形    丸~卵形     帽子形
種子の色       黒                黒                 褐色
種子の光沢   +                  +                   +++    
種子の表面   少し凸状    少し凸状     平ら
Elaiosome    -                -                  +

G. esperanzaeの種子の特徴はG. castellanosiiと似ていますから、Scabrosemineum亜属とされたわけですが、根や棘、雄しべの色はG. bodenbenderianumに似ています。しかし、遺伝子解析の結果ではG. bodenbenderianum、G. ochoterenae、quehlianum、G. intertextumなどのTrichomosemineum亜属と近縁であることがわかりました。
つまり、伝統的な種子の分類ではScabrosemineum亜属なのに、遺伝子的にはTrichomosemineum亜属であるということです。面白いですね。
ちなみに、Elaiosomeとは種子に付いている蟻を呼ぶための栄養分のことです。これはサボテンに限らず植物の種子に広く見られるもので、蟻がElaiosomeを目的に種子を巣に運び込みます。種子は土中に入ることにより発芽しやすくなります。
生態的にはG. bodenbenderianumは砂質の平野部の低木の陰に生えますが、G. castellanosiiは低い丘の荒い砂利状に生えます。G. esperanzaeは丘や山の尾根、岩や砂利質など、G. castellanosiiに近いということです。

以上でGymnocalycium esperanzaeについての論文紹介は終了です。種子の特徴からはScabrosemineum亜属ですが、遺伝的にはTrichomosemineum亜属というちぐはぐさからは、確かに交雑を疑いたくなります。しかし、遺伝子解析も2種類の遺伝子をみただけですから、交雑を調査するための解析はしていません。ですから、まだこの結論は確実とは言えないでしょう。まだ、議論すべき点は残っているように思われます。


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2013年に発表された『A molecular phylogeny and classification of the largely succulent and mainly African Euphorbia subg. Athymalus (Euphorbiaceae)』という論文の紹介の続きです。今日はアンタカンタ節の残り3亜節、メデュセア、ブセウデウフォルビウム、ダクティランテスを紹介します。メデュセア亜節はいわゆる「タコもの」で、ユーフォルビアの中でも特に変わった姿をしています。

Subgenus Athymalusの分子系統
            ┏━━★Section Anthacanthae
        ┏┫
        ┃┗━━Section Balsamis
        ┃
    ┏┫┏━━Section Somalica
    ┃┃┃
    ┃┗┫┏━Section Crotonoides
┏┫    ┗┫
┃┃        ┗━Section Lyciopsis
┃┃
┫┗━━━━Section Pseudacalypha

┗━━━━━Section Antso

Section Anthacanthaeの分子系統

    ┏━━★①Subsection Medusea
    ┃
┏┫┏━★②Subsection Pseudeuphorbium
┃┗┫
┫    ┗━★③Subsection Dactylanthes

┃┏━━Subsection Florispinae
┗┫
    ┗━━Subsection Platycephalae

①Subsection Medusea
分子系統を見て感じるのは、種数の割に分岐が少ないことです。これは、メデュセア亜節が最近分岐したからかもしれません。論文はアティマルス亜属のそれぞれ節の関係性、あるいはアンタカンタ節の中の亜節の関係性を見ることを目的としていますから、種ごとの分離はいまいちとなることもあります。例えるなら、大きい定規で測ってみるものの、目盛りが大きすぎて細かい部分は測れないようなものです。
メデュセア亜節は、その姿から「タコもの」とか「メデュソイド」などと呼ばれます。

E. namaquensisは南アフリカ原産の亜低木で
太い幹から短い枝が伸びて枯れて残ります。E. namibensisはナミビア原産で、「蛮童子」と呼ばれます。太い幹から多肉質の園芸を伸ばします。E. filiferaは南アフリカ原産で、「魔女の簪」と呼ばれます。太い幹から多肉質の枝を伸ばし、先端からは細長い葉を出します。E. caput-medusaeは南アフリカ原産で、「天荒竜」と呼ばれます。大型のタコもので、太く長い多肉質の枝を伸ばします。
DSC_1568
荒天竜 Euphorbia caput-medusae

E. restitutaは南アフリカ原産で、縦長に育ち細い多肉質の枝を伸ばします。E. fasciculataは南アフリカ原産で、「歓喜天」と呼ばれます。「闘牛角」と似ていますが、枯れ枝はやがて脱落します。E. schoenlandiiは南アフリカ原産で、「闘牛角」と呼ばれます。棍棒状に育ち、枯れた枝が長く残ります。
DSC_1497
闘牛角 Euphorbia schoenlandii

E. braunsiiは南アフリカ、ナミビア原産で、「仏面キリン」と呼ばれます。塊根から卵型の多肉質の枝が群生し、枯れた花柄が残ります。E. crassipesは南アフリカ原産で、「倶利伽羅玉」と呼ばれます。縦長に育つタコものです。E. deceptaは南アフリカ原産で、「緑鬼王」と呼ばれます。枝の短いタコものです。E. flanaganiiは南アフリカ原産で、「孔雀丸」と呼ばれます。細い多肉質の枝を伸ばす小型のタコものです。
DSC_0446
孔雀丸 Euphorbia flanaganii

E. hypogaeaは南アフリカ原産で、「螺髪竜」と呼ばれます。細長いイボに被われた縦長の多肉植物で、先端から葉を出します。E. procumbensは南アフリカ原産で、枝が長く伸びるタコものです。E. anbipolliniferaは南アフリカ原産で、小型のタコものです。E. breviramaは南アフリカ原産で、小型で枝が短いタコものです。E. haliiは南アフリカ原産で、縦長に育つ鱗片状の幹を持ちたす。葉は細長い鞭のようです。E. aridaは南アフリカ原産で、「白仏塔」と呼ばれます。タコものですが、下部が木質化して縦長に育ちます。E. davyiは南アフリカ原産で、「蛇鱗丸」と呼ばれます。小型のタコもので、塊根性です。E. esculentaは南アフリカ原産で、「閻魔キリン」と呼ばれます。太く枝を出す大型のタコものです。E. friedrichiaeは南アフリカ、ナミビア原産で、「白鬼塔」と呼ばれます。棍棒状の幹から尖った短い枝を伸ばし、枯れた後残ります。E. melanohydrataは南アフリカ、ナミビア原産で、「多宝塔」と呼ばれます。短い枝が密につきます。E. multicepsは南アフリカ原産で、「多頭キリン」と呼ばれます。本体が見えないほど丸い枝が密につきます。E. dregeanaは南アフリカ原産で、棒状で枝分かれしてブッシュ状となります。

                ┏━E. namaquensis 2
            ┏┫
            ┃┗━E. namibensis
        ┏┫
        ┃┗━━E. filiflora
    ┏┫
    ┃┗━━━E. caput-medusae 2
    ┃
    ┃┏━━━E. caput-medusae 1
┏╋┫
┃┃┗━━━E. restituta
┃┃
┃┃┏━━━E. fasciculata
┃┗┫
┃    ┗━━━E. schoenlandii

┃        ┏━━E. braunsii
┃    ┏┫
┃    ┃┗━━E. crassipes 1
┃┏┫
┃┃┗━━━E. decepta 2
┃┃
┃┃┏━━━E. flanaganii
┣┫┃
┃┣╋━━━E. hypogaea 2
┃┃┃
┃┃┗━━━E. procumbens
┃┃
┃┗━━━━E. albipollinifera

┃┏━━━━E. brevirama
┣┫
┃┗━━━━E. crassipes 2

┃┏━━━━E. hallii
┣┫
┃┗━━━━E. namaquensis 1

┣━━━━━E. arida

┣━━━━━E. braunsii

┣━━━━━E. clavarioides

┣━━━━━E. davyi 2

┣━━━━━E. davyi 1

┣━━━━━E. esculenta

┣━━━━━E. friedrichiae

┣━━━━━E. hypogaea 1

┣━━━━━E. melanohydrata

┣━━━━━E. multiceps 2

┃┏━━━━E. multiceps 1
┗┫
    ┃┏━━━E. decepta 1
    ┗┫
        ┗━━━E. dregeana

②Subsection Pseudeuphorbia
③Subsection Dactylanthes

プセウデウフォルビア亜節は高度に多肉化した低木です。
E. celataは南アフリカ、ナミビア原産で、塊根性でわずかに地上に枝を出します。E. quadrataは南アフリカ、ナミビア原産で、やや幹が太る低木です。E. hamataは南アフリカ、ナミビア原産で、「鬼棲木」と呼ばれます。幹が太り、多肉質の枝を伸ばす低木です。E. pedemontanaは南アフリカ原産です。E. gariepinaは南アフリカ、ナミビア、アンゴラ原産で、「鬼ヶ島」と呼ばれます。多肉質の枝は枝分かれしてブッシュ状となります。E. indurescensはアンゴラ原産です。E. monteiroiは南アフリカ、ナミビア、アンゴラ、ジンバブエ、ボツワナ原産で、「柳葉キリン」と呼ばれ、棍棒状の幹を持ち細長い葉を出します。
E. lignosaは南アフリカ、アンゴラ、ナミビア原産で、多肉質の枝は叢生します。

ダクティランテス亜節は、塊根あるいは地下根茎です。
E. bruynsiiは南アフリカ原産です。E. patulaは南アフリカ原産で、短い多肉質の枝が密集します。E. polycephalaは南アフリカ原産で、塊根から多肉質の枝を伸ばします。E. globosaは南アフリカ原産で、球状の多肉質の枝を重ねます。E. wilmaniaeは南アフリカ原産で、現在ではE. patula subsp. wilmaniaeとされています。「海蜘蛛」と呼ばれることもあります。E. pseudotuberosaは南アフリカ、ボツワナ原産で、やや多肉質の葉を出します。E. trichadeniaは南アフリカ、ナミビア、アンゴラ、ボツワナ、スワジランド、ジンバブエ原産で、塊根から葉を出します。
  
                ┏━━E. celata 1
            ┏┫
            ┃┗━━E. quadrata
        ┏┫
        ┃┃┏━━E. hamata 1
        ┃┗┫
        ┃    ┗━━E. pedemontana
        ┃
        ┃    ┏━━E. gariepina
        ┃    ┃
┏②┫┏╋━━E. indurescens
┃    ┃┃┃
┃    ┣┫┗━━E. monteiroi
┃    ┃┃
┃    ┃┗━━━E. lignosa
┃    ┃
┃    ┃┏━━━E. celata 2
┃    ┗┫
┃        ┗━━━E. hamata 2

┃                ┏━E. bruynsii
┃                ┃
┫            ┏╋━E. patula
┃            ┃┃
┃            ┃┗━E. polycephala
┃            ┃
┃        ┏╋━━E. globosa
┃        ┃┃
┃        ┃┣━━E. wilmaniae 1
┃    ┏┫┃
┃    ┃┃┗━━E. wilmaniae 2
┃    ┃┃
┗③┫┗━━━E. pseudotuberosa
        ┃
        ┗━━━━E. trichadenia


最近、ユーフォルビアの系統分類①~⑨という記事を書きましたが、情報が不足していました。その不満があった部分について、ユーフォルビアの系統分類⑩~⑫という形で追加で記事にすることが出来て、モヤモヤとしていた心残りが消えました。一安心です。しかし、また論文を見つけてしまったら記事にするかも知れないなんて考えていたら、なんと情報が少なかったカマエシケ亜属の系統分類について書かれた論文を見つけてしまいました。しかし、カマエシケ亜属は基本的に草本で多肉植物ではありません。世界中に分布しますが、主に雑草とされるものが多く、記事を書く私も楽しくありませんが、記事を読む方々もおそらくは楽しくはないでしょう。というわけで、カマエシケ亜属についての記事化は断念しました。
DSC_1732
日本の代表的なカマエシケ亜属のユーフォルビアであるコニシキソウ。コンクリートの隙間やひび割れから生えてくる、踏みつけに強い雑草。

多肉植物については、最近パキポディウム属とアロエ類(アロエ属、ハウォルチア属、ガステリア属等)、ユーフォルビア属の系統分類を調べた論文を紹介してきました。しかし、多肉植物はまだまだ沢山の種類があり所属する分類群も多岐にわたります。論文もそれぞれの分類群を調べたものがあります。もし、面白い論文を見つけましたら、また記事にしていきたいと思います。



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2013年に発表された『A molecular phylogeny and classification of the largely succulent and mainly African Euphorbia subg. Athymalus (Euphorbiaceae)』という論文紹介の続きです。今日は、アンタカンタ節についてですが、記事が長くなりすぎるため、2つに分けました。フロリスピナ亜節とプラティケファラ亜節についてですが、この2つは姉妹群である程度まとまったグループのようです。

Subgenus Athymalusの分子系統
            ┏━━★Section Anthacanthae
        ┏┫
        ┃┗━━Section Balsamis
        ┃
    ┏┫┏━━Section Somalica
    ┃┃┃
    ┃┗┫┏━Section Crotonoides
┏┫    ┗┫
┃┃        ┗━Section Lyciopsis
┃┃
┫┗━━━━Section Pseudacalypha

┗━━━━━Section Antso

Section Anthacanthaeの分子系統
    ┏━━Subsection Medusea
    ┃
┏┫┏━Subsection Pseudeuphorbium
┃┗┫
┫    ┗━Subsection Dactylanthes

┃┏━━★Subsection Florispinae
┗┫
    ┗━━★Subsection Platycephalae

Subsection Florispinaeの分子系統
Subsection Florispinaeは有名な多肉ユーフォルビアが沢山含まれます。ホリダや紅彩閣のようにトゲのあるもの、花柄が残りトゲのように見えるバリダ、トゲがなく高度に多肉化したオベサ、多肉化した茎から大きな葉を伸ばす鉄甲丸、塊根から多肉質の茎を出す稚子キリン、塊根から多肉質ではない葉を出すシレニフォリアなど形態は様々です。基本的には南アフリカ原産で、乾燥に耐えるために高度に多肉化しています。

E. pentagonaは「大王閣」と呼ばれ、南アフリカ原産です。トゲのあるサボテンのような多肉植物で、高さ3mになり叢生します。E. pulvinataは「笹蟹丸」と呼ばれ、レソト、スワジランド原産です。高さ1.5mの叢生してクッション状となります。紅キリンE. aggregataと笹蟹丸は同種とされる向きもありましたが、現在ではそれぞれ独立種とされているようです。
DSC_1726
笹蟹丸 Euphorbia pulvinata

E. meloformisは南アフリカ原産の、枯れた花柄が残りトゲのように見える球状の多肉植物です。E. meloformisの亜種あるいは変種として、有名なバリダはE. meloformisに吸収されました。ちなみに、「貴青玉」はE. meloformis系と言われる由来不明の交配種です。
DSC_0444
Euphorbia meloformis

E. cumulataは南アフリカ原産で、トゲのあるサボテンのような多肉植物で叢生します。E. mammillarisは「鱗宝」と呼ばれ、南アフリカ原産です。まばらにトゲのあるサボテンのような多肉植物で叢生します。ちなみに、鱗宝の白化個体を「白樺キリン(ミルクトロン)」と呼び、こちらの方がよく見かけます。
DSC_0671
白樺キリン(ミルクトロン) Euphorbia mammillaris cv.

E. obesa subsp. symmetricaは南アフリカの球状の多肉植物で、現在はオベサの亜種ではなくE. symmetricaとして独立しました。E. obesa subsp. obesaは南アフリカ原産の多肉植物です。この場合のsubsp. obesaはsubsp. symmetricaと区別するための名前ですが、subsp. symmetricaが亜種ではなくなった以上はsubsp. obesaも役目を終えました。現在はただのE. obesaです。
DSC_1387
Euphorbia obesa

E. feroxは「勇猛閣」あるいは「金碧塔」と呼ばれ、南アフリカ原産です。トゲのあるサボテンのような多肉植物ですが、トゲが強いことが特徴です。
DSC_1013
勇猛閣 Euphorbia ferox

E. jansenvillensisは南アフリカ原産で、トゲはありませんが、多肉質で叢生します。E. tubiglansと同種とされることもあるようです。E. polygonaは南アフリカ原産で、変種ホリダE. polygona var. horridaの方が有名です。大なり小なり白い粉に被われ、トゲのある太い幹を持つ多肉植物です。
DSC_1664
ホリダ Euphorbia polygona var. horrida

E. stellispinaは「群星冠」と呼ばれ、南アフリカ原産です。独特の先端が星形の花柄が特徴です。
DSC_0816
群星冠 Euphorbia stellispina

E. pillansiiは南アフリカ原産の多肉植物で、E. meloformis系交配種と呼ばれる「貴青玉」によく似ています。枯れた花柄が残りますが、先端で分岐します。E. pseudoglobosaは「稚児キリン」と呼ばれ、南アフリカ原産です。楕円を重ねたように育ち、塊根性です。
DSC_1323
稚児キリン Euphorbia pseudoglobosa

E. heptagonaは「紅彩閣」と呼ばれ、南アフリカ原産です。一般的にはE. enoplaと呼ばれていますが、E. heptagonaが正式な学名です。トゲがあり、叢生します。
DSC_0716
紅彩閣 Euphorbia heptagona

E. susannaeは「瑠璃晃」と呼ばれ、南アフリカ原産です。トゲはなく球状でやがて群生します。
DSC_1620
瑠璃晃 Euphorbia susannae

E. clandestineは「逆鱗竜」と呼ばれ、南アフリカ原産です。棍棒状のトゲのない多肉植物で、頂点から細長い葉を出します。E. pubiplans、E. bubalina(昭和キリン)、E. clava(式部)、E. multifolia、E. loricata(炉裡火)は共に南アフリカ原産で、逆鱗竜によく似ています。
DSC_0186
逆鱗竜 Euphorbia clandestine

E. bupleurifoliaは「鉄甲丸」と呼ばれ、南アフリカ原産です。鱗片状の多肉質の茎から葉を出します。
DSC_1532
鉄甲丸 Euphorbia bupleurifolia

E. tuberosaは「鬼縮」あるいは「羊玉」と呼ばれる塊根性植物で、南アフリカ原産です。E. sileniforiaは南アフリカの塊根植物で、細長い葉を出します。
DSC_0824
Euphorbia sileniforia

                                ┏━E. pentagona
                            ┏┫
                            ┃┗━E. pulvinata
                        ┏┫
                        ┃┗━━E. meloformis 1
                    ┏┫
                    ┃┣━━━E. cumulata
                ┏┫┃
                ┃┃┗━━━E. mammillaris 1
                ┃┃
                ┃┗━━━━E. meloformis 2
                ┃
                ┃┏━━━━E. obesa
                ┣┫                     subsp. obesa
                ┃┗━━━━E. obesa 
            ┏┫                          subsp. symmetrica
            ┃┗━━━━━E. ferox
        ┏┫
        ┃┗━━━━━━E. jansenvillensis 1
        ┃
    ┏┫        ┏━━━━E. polygona 2
    ┃┃    ┏┫
    ┃┃    ┃┗━━━━E. polygona 1
    ┃┃┏┫
    ┃┃┃┗━━━━━E. stellispina
    ┃┗┫
    ┃    ┗━━━━━━E. jansenvillensis 2
    ┃
    ┃        ┏━━━━━E. pillansii
    ┃    ┏┫
    ┃    ┃┗━━━━━E. pseudoglobosa 2
    ┃┏┫
    ┃┃┃┏━━━━━E. pseudoglobosa 1
    ┃┃┗┫
    ┃┃    ┗━━━━━E. mammillaris 2
    ┃┃
    ┣┫    ┏━━━━━E. heptagona 2
    ┃┃┏┫
    ┃┃┃┗━━━━━E. heptagona 1
    ┃┣┫
┏┫┃┗━━━━━━E. susannae
┃┃┃
┃┃┃┏━━━━━━E. clandestina
┃┃┗┫
┃┃    ┗━━━━━━E. pubiglans
┃┃
┃┃┏━━━━━━━E. bubalina 2
┃┃┃
┃┣╋━━━━━━━E. bubalina 1
┃┃┃
┃┃┗━━━━━━━E. clava
┃┃
┃┃    ┏━━━━━━E. tuberosa 2
┃┃┏┫
┃┃┃┗━━━━━━E. tuberosa 1
┫┗┫
┃    ┗━━━━━━━E. silenifolia

┃    ┏━━━━━━━E. multifolia
┃┏┫
┃┃┗━━━━━━━E. loricata 2
┣┫
┃┗━━━━━━━━E. loricata 1

┣━━━━━━━━━E. bupleurifolia

┗━━━━━━━━━E. oxystegia

系統の分岐を見ていると、思いもよらぬことがあります。例えば、勇猛閣E. ferox、大王閣E. pentagona、笹蟹丸E. pulvinataはトゲがあり叢生する生態の共通性から、近縁であることはわかります。しかし、やはり良く似た紅彩閣E. heptagonaとは特に近縁ではなく、E. obesaやE. meloformisの方が近縁という驚くべき結果でした。また、紅彩閣E. heptagonaは瑠璃晃E. susannaeと近縁というのも不思議ですね。

そう言えば、E. jansenvillensisは2個体を調べていて、それぞれの位置は離れているように見えます。しかし、良く見ると両個体とも分岐の根元にあり、実は近縁であることがわかります。これはむしろ図の配置とか書き方の問題です。
困惑するのは鱗宝E. mammillarisの立ち位置です。鱗宝も2個体を調べていますが、完全に異なる枝に乗っています。これは大変な驚きで、解析の分離が良くなかったという理由でなければ、鱗宝は2種類あることになります。

E. pillansiiはバリダというか、E. meloformis系交配種と言われる貴青玉に良く似ていますが、なんと稚児キリンと近縁とあります。共通点がないようにも思えますから、面白い結果です。


Subsection Platycephalaeの分子系統
半多肉植物で高さ9mまでの低木、あるいは塊根植物です。ボツワナとジンバブエから西アフリカとエチオピアまで、サハラ以南に分布します。
E. omarianaはエチオピア原産で、塊根性(?)です。E. platycephalaはマラウイ、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ原産の塊根植物です。E. grantiiはブルンジ、ルワンダ、タンザニア、ウガンダ、ザイール、ザンビア原産の樹木です。

    ┏━E. omariana
┏┫
┃┗━E. platycephala

┗━━E. grantii


そう言えば、フロリスピナ亜節は形態的に4グループに分けられてきました。E. multifolia、E. loricata、E. bupleurifolia、E. oxystegiaはSeries Hystrixとされてきましたが、分子系統でもまとまったグループです。塊根性のE. tuberosaとE. sileniforiaはSeries Rhizanthiumですが、分子系統でも近縁です。外見的に良く似たE. clandestine、E. bubalina、E. pubiplans、E. clavaはSeries Treisiaですが、特徴の異なる旧来はSeries MeleuphorbiaとされたE. heptagona、E. susannae、E. pillansii、E. pseudoglobosaも分子系統では近縁です。それ以外の種はSeries Meleuphorbiaですが、同じ枝に乗っており、ある程度まとまったグループです。
というわけで、旧分類はおおよそは正しいみたいですが、異なる部分も出て来ているようです。

本日はここまでです。明日はタコものと呼ばれるSubsection Meduseaを中心にご紹介します。



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私はユーフォルビアが好きでチマチマ集めていますが、とにかくユーフォルビアは種類が多く多様なので、今一つ掴み所がないような気がしていました。ではユーフォルビアとは何かと聞かれると、具体的な種類を挙げてみだり、毒があります位しか言えないことに気が付きました。そこで、最近ではユーフォルビアについた書かれた論文を少しずつ読んだりしています。
先週、というか8月22日から30日までの9日間に渡り、ユーフォルビアについての論文の長い紹介をしました。この時紹介したのは、2013年に発表された『
Phylogenetics, morphological evolution, and classification of Euphorbia subgenus Euphorbia』という論文でした。

ただし、この論文はユーフォルビア節(柱サボテン状のユーフォルビア)を中心としたものでしたから、園芸店でよく目にするホリダE. polygona var. horridaや瑠璃晃E. susannae、オベサE. obesa、孔雀丸E. flanaganiiなどのユーフォルビアについては、わずか4種類を調べただけでした。ですからこの部分、つまりはリザンチウム亜属について調べた論文を探していました。
それが、2013年に発表された『A molecular phylogeny and classification of the largely succulent and mainly African Euphorbia subg. Athymalus (Euphorbiaceae)』という論文です。調べているのは、Subgenus Athymalus、つまりアティマルス亜属です。この場合のSubgenus Athymalus=Subgenus Rhizanthiumのことです。学者によりAthymalusだったりRhizanthiumだったりしますが、この論文ではAthymalusを採用しています。
さて、今日からこの論文の内容を何回かに分けて紹介しようと思います。「ユーフォルビアの系統分類」はその⑨の続きとして、その⑩というナンバリングから開始したいと思います。

では、実際の論文の内容を見てみましょう。
Subgenus Athymalusは約150種で、ほとんどが多肉植物ですが樹木もあります。旧世界の乾燥地に限定して分布します。ほとんどがサハラ以南のアフリカ原産で、マカロネシアと西アフリカ、いくつかはアラビア半島、マダガスカル、23種はアフリカの角付近に固有、72種は南部アフリカ原産です。そのうち、60種は南アフリカの固有種ということです。この論文では、Subgenus Athymalusのうち88種類について、核リボソームITSと葉緑体のndhF領域を分析しました。

Subgenus Athymalusの分子系統
            ┏━━Section Anthacanthae
        ┏┫
        ┃┗━━★⑥Section Balsamis
        ┃
    ┏┫┏━━★⑤Section Somalica
    ┃┃┃
    ┃┗┫┏━★④Section Crotonoides
┏┫    ┗┫
┃┃        ┗━★③Section Lyciopsis
┃┃
┫┗━━━━★②Section Pseudacalypha

┗━━━━━★①Section Antso

一応、用語を説明しておきますが、"Subgenus"は「亜属」のことで、ユーフォルビア属はEsula亜属、Athymalus(=Rhizanthium)亜属、Chamaesyce亜属、Euphorbia亜属にわかれます。"Section"とは「節」をあらわしますが、属の下には亜属、節、亜節、列、亜列と小分類があります。「列」は"Series"ですが、今回の論文では出てきません。

系統図を見るとわかりますが、Section Antsoが根元にあります。Section Somalica、Section Crotonoides、Section Lyciopsisは一つのグループを形成します。Section Anthacanthaeは非常に多様で、5亜節からなります。本日はAnthacanthae節以外について解説させていただきます。


            ┏━━━━━Section Anthacanthae
            ┃
            ┃                ┏E. larica
            ┃            ┏┫
            ┃            ┃┗E. masirahensis
        ┏┫        ┏┫
        ┃┃        ┃┗━E. rubrisemminalis
        ┃┃    ┏┫
        ┃┃    ┃┃┏━E. balsamifera
        ┃┃    ┃┗┫            subsp. adenensis
        ┃┗⑥┫    ┗━E. balsamifera
        ┃        ┃                    subsp. balsamifera
        ┃        ┗━━━E. meuleniana
        ┃
    ┏┫            ┏━━E. hamaderoensis
    ┃┃            ┃
    ┃┃        ┏╋━━E. marie-cladieae
    ┃┃        ┃┃
    ┃┃┏⑤┫┗━━E. socotrana
    ┃┃┃    ┃
    ┃┃┃    ┗━━━E. scheffleri
    ┃┃┃
    ┃┃┃            ┏━E. benthamii
    ┃┗┫        ┏┫
    ┃    ┃        ┃┗━E. crotonoides
    ┃    ┃┏④┫
    ┃    ┃┃    ┣━━E. caperonioides
    ┃    ┃┃    ┃
    ┃    ┃┃    ┗━━E. insarmentosa
    ┃    ┃┃
    ┃    ┗┫        ┏━E. cuneata
    ┃        ┃    ┏┫
    ┃        ┃    ┃┗━E. smithii
┏┫        ┃    ┃
┃┃        ┗③┫┏━E. bongensis
┃┃                ┃┃
┃┃                ┗╋━E. matabelensis
┃┃                    ┃
┃┃                    ┗━E. oatesii
┃┃
┃┃            ┏━━━E. acalyphoides
┫┃        ┏┫
┃┃        ┃┗━━━E. species
┃┃    ┏┫
┃┃    ┃┗━━━━E. hadramautica
┃┗②┫
┃        ┗━━━━━E. longituberculosa

┗━━━━━━①━E. antso


①Section Antso
E. antsoはマダガスカル原産の、半多肉質の樹木です。高さ4-15mとなり、時にわずかに塊茎状となります。

②Section Pseudocalypha
Section Pseudocalyphaはほとんどの種が北東アフリカとアラビア半島原産です。多肉植物を含みます。
E. acalyphoidesはアンゴラ、チャド、ジブチ、エリトリア、エチオピア、ケニア、サウジアラビア、ソマリア、スーダン、タンザニア、イエメンの原産です。一年草または亜低木ということです。E. speciesは何のことを言っているのか良くわかりません。"species"はそのまま「種」という意味ですから種小名としては違和感があります。E. hadramauticaはエチオピア、オマーン、ソマリア、ソマリア、イエメンの原産です。ケニアには移入された可能性があります。多肉質の亜低木で、多肉質の幹から波打つ葉を出し、まるでドルステニアのようです。E. longituberculosaは、確かにその名前で流通していますが、『World Checklist of Vascular Plants』ではヒットしません。おそらくは、E. longetuberculosaのことを言っているものと推測します。E. longetuberculosaはジブチ、エチオピア、ケニア、オマーン、ソマリア、イエメンの原産です。多肉質の茎から枝分かれする細い枝を伸ばします。

③Section Lyciopsis
Section Lyciopsisは高さ0.1-5mの低木が多く、北東アフリカとアラビア半島に分布します。
E. cuneataはベナン、チャド、ジブチ、エジプト、エリトリア、エチオピア、ケニア、ギニア、モザンビーク、ナイジェリア、オマーン、サウジアラビア、ソマリア、スーダン、タンザニア、トーゴ、イエメンの原産です。細い幹の樹木ですが、塊根があります。E. smithiiはオマーン原産の樹木です。E. bongensisはケニア、ルワンダ、スーダン、タンザニア、ウガンダ、ザンビアの原産の塊根植物です。E. matabelensisはアンゴラ、ボツワナ、ケニア、マラウイ、モザンビーク、ソマリア、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ原産の樹木です。E. oatesiiはザンビア、ジンバブエ原産の塊根植物です。

④Section Crotonoides
Section Crotonoidesは高さ0.5-1.5mの一年草で、茎はたまに木質またはわずかに多肉質です。東アフリカ原産です。
E. benthamiiはアンゴラ、マラウイ、ナミビア、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ原産の一年草です。E. crotonoidesはアンゴラ、ボツワナ、エチオピア、ケニア、マラウイ、モザンビークナミビア、南アフリカ、スーダン、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ原産の一年草です。E. caperonioidesとE. insarmentosaはナミビア原産ですが、情報がありません。

⑤Section Somalica
0.2-8mの樹木で、東アフリカ原産です。
E. hamaderoensisはソコトラ原産ですが、情報がありません。E. marie-cladieaeはソコトラ原産の樹木です。E. socotranaはソコトラ原産の樹木です。E. scheffleriはエチオピア、ケニア、タンザニア、原産の樹木です。ソマリアでは移入された可能性があります。

⑥Section Balsamis
E. laricaはイラン、オマーン、イエメンの原産で、多肉質の棒状の茎を持つ植物(Pencil-stem)で、枝分かれして叢生します。E. masirahensisは調べたところ、現在ではE. laricaと同種とされているようです。E. rubrisemminalisはイエメンの亜低木で、Pencil-stemとされています。E. balsamifera subsp. adenensisは現在では、E. adenensisとして独立しました。オマーン、サウジアラビア、ソコトラ、ソマリア、スーダン、イエメン原産の半多肉植物です。幹が太る。E. balsamifera subsp. balsamiferaはカナリア諸島、モロッコ、西サハラ原産で幹が太る。E. meulenianaはイエメン原産の低木です。E. laricaとE. rubrisemminalisは良く似たPencil-stemですが、非常に系統的に近縁です。葉は非常に小さいのですが、葉の大きいE. balsamiferaやE. meulenianaから進化した可能性があります。

前の論文では園芸店で見る有名種がなかったことから、今回の論文はそこを紹介すると言っておきながら、今日の内容はどうにもそぐわない感じになってしまいました。しかし、切のいいところでまとめようとすると、どうしてもこうなってしまいます。どうか、ご容赦の程を。
明日はオベサやホリダ、バリダ、笹蟹丸などのお馴染みのユーフォルビアが登場します。



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スペクタビリスは非常に大型になるアロエです。しかし、スペクタビリスは昔から他のアロエと混同されてきました。その経緯について調べましたので、ひとつ記事とさせていただきます。2010年のKlopper & Gideon F.Sm.『Asphodelaceae : Alooideae : Reinstatement of Aloe spectabilis Reynolds』と、2021年のColin C.Walker『Aloe spectabilis - a splend South African species』というスペクタビリスについてのレビューを参照にして、ことの経緯を見てみましょう。

著名な植物学者であるAlwin Bergerは、1908年に権威のあるアロエについてのモノグラフを出版しました。これは、数十年にわたりアロエの分類の標準的な作品でした。Bergerはスペクタビリスを、Aloe ferox Mill.に含めました。しかし、1937年にGilbert Westacott Reynoldsはスペクタビリスを識別し、Bergerの見解は間違いであること、そして新種としました。つまり、Aloe spectabilis Reynoldsです。

それからなんと63年後の2000年にGlen & D.S.Hardyは、スペクタビリスをAloe marlothiiと同種であるとしました。確かにスペクタビリスはマルロシイによく似ており、分布も類似します。スペクタビリスはこのまま吸収されて消えてしまうのでしょうか?

しかし、2010年にRonell R. Klopper & Gideon F. Smithが『アロエ・スペクタビリスの復活』と称して、Aloe marlothiiとAloe spectabilisの特徴を比較しています。Klopper & Gideon F.Sm.と言えば、Aloianpelos属やAloidendron属を創設した研究者ですね。スペクタビリスとマルロシイの特徴を比較すると以下のようになります。

Aloe marlothii
花序 : 斜めから水平、30-50cm、20-30本
花柄の色 : 緑色から赤褐色
内側の花被片の頂点 : 淡~深紫色
フィラメントの伸長部 : 淡~深紫色

Aloe spectabilis
花序 : ほぼ直立、25cm前後、10-14本
花柄の色 : 暗褐色からほぼ黒色
内側の花被片の頂点 : くすんだ光沢のある黒色
フィラメントの伸長部 : オレンジ色

 花が咲かないと、マルロシイとスペクタビリスは区別出来ないと言われていますが、確かに花の特徴が決め手なようです。

DSC_0662
昨年の12月に千葉で開催された木更津Cactus & Succulentフェアで、例によってラフレシア・リサーチさんで激安のAloe pegleraeを購入した際、おまけでいただいたAloe spectabilisの抜き苗です。アロエを買っておまけでアロエを貰うというのも、何やら不思議な感じがします。
直ぐ
に植え付けましたが非常に丈夫で、真冬に植えたにも関わらずあっという間に根が張ったことには驚きました

DSC_1678
2022年8月。葉が旋回を始めました。アロエは若い時は葉は二列性(左右に葉が並ぶ)ですが、生長すると葉はぐるぐる回りながら生えます。

DSC_1679

DSC_1680
トゲはかなり強いみたいです。そういえば、マルロシイは「鬼切丸」と呼ばれますが、スペクタビリスは「鬼王錦」という名前もあるそうです。サボテンでは名前に「錦」とついた場合は斑入り品種を指しますが、アロエでは斑入り品種のことではなく、斑入り品種ではなくても普通に「○○錦」という名前がつきます。

スペクタビリスは巨大アロエで、高さ5mに達します。幹は木質となりますが、有名な巨大アロエであるAloidendron属とは異なり、枝分かれせず単幹で葉は巨大になり頭でっかちな見た目になります。花は枝分かれして巨大で、鳥や昆虫の蜜源として重要です。
スペクタビリスはKwaZulu-Natalの固有種です。冬は氷点下まで下がる可能性があるそうです。面白いことに、1900年に自由州の農場にスペクタビリスが3本植えられたそうですが、現在では3万本以上に増えてしまったそうです。

今回の記事に出てくる3種類のアロエの学名と記載年について一応記しておきます。
1768年 Aloe ferox Mill.
1905年 Aloe marlothii A.Berger
1937年 Aloe spectabilis Reynolds



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ギラウミニアナはマダガスカル原産の花キリンの仲間です。花は地味で花キリン感は薄いのですが、木質の幹からトゲが出るあたりはいかにも花キリンです。私は入手してからまだ2年ですが、いまだに育て方に迷いがあります。ネットの情報では、ギラウミニアナの育て方と言いながら多肉植物の基本的な育て方が記載されており、ギラウウミニアナの育て方ではないように見受けられます。

そういえば、私は"guillauminiana"を「グイラウミニアナ」とラテン語読みしてしまいますが、なんで「ギラウミニアナ」と呼ばれているのでしょう? この種小名はフランスの植物学者であるAndré Louis Joseph Edmond Armand Guillauminに対する献名ですが、このGuillauminはフランス語ではおそらく「ギヨマン」と読むみたいですから、名前の読みかたならば「ギヨマニアナ」ですね。まあ、読み方なんて本来はどうでもいい話ですから、なんと読んでも一緒なんですけどね。以降、個人的なこだわりで、例によってラテン語読みのグイラウミニアナでいかせていただきます。

DSC_0202
2020年3月。園芸店で冬を越した苗で、根鉢が崩れて用土が半分くらいしかない状態でした。しかし、大特価の半額お値引き品という札に釣られて、ついつい購入してしまいました。今にして思えば危険な賭けでした。グイラウミニアナは寒さに弱いと聞きますから、そのままお亡くなりになる可能性も大でしたからね。

DSC_0324
2020年6月。購入時、すぐに植え替えましたが、それからわずか3ヶ月で開花しました。葉色も良く順調です。

DSC_1702
2022年8月。2年経って枝分かれしていますが、葉色の薄さが気になります。今年は異常な暑さで日差しが強すぎて多肉たちにもダメージがありましたが、おそらくはグイラウミニアナもその影響があったのでしょう。

DSC_1703
ただし、水やりについては良くわかりません。花キリンはやや水多めの方がいいような気もしますが、グイラウミニアナはどうでしょうか? 枝のつまった形の良いグイラウミニアナにするためには、あまりじゃぶじゃぶ水やりしない方がいいような気もしますが…

そういえば、グイラウミニアナは花キリンEuphorbia miliiの仲間と言われています。2013年にユーフォルビア属の遺伝子解析したPhylogenetics, morphological evolution, and classification of Euphorbia subgenus Euphorbia』という論文では、花キリン類はゴニアステマ節に分類されています。そこでは20種類ほど花キリン類を調べているようですが、残念ながらグイラウミニアナは調べていません。一応の証拠が欲しいので、マダガスカルのユーフォルビアを調べた2014年の『Insights on the Evolution of Plant Succulence from a Remarkable in Madagascar (Euphorbia)』という論文では、グイラウミニアナは噴火竜Euphorbia viguieriと近縁とあります。むしろ、近縁に見えるEuphorbia milii系とはそれほど近縁ではないようです。面白いですね。しかし、いずれにせよグイラウミニアナは花キリン類=ゴニオステマ節であることは間違いないと言えます。

グイラウミニアナの学名は1942年に命名されたEuphorbia guillauminiana Boiteauです。Boiteauはフランスの植物学者であるPierre Louis Boiteauのことです。Boiteauはマダガスカルのハンセン病療養所で働いていましたが、やがて現地語を学んだことにより、現地の伝統医療を知り薬草を研究しました。やがて、かつてマダガスカルに存在したメリナ王国の女王の親類の植物学者であるAlbert Rakoto Ratsimamangaと協力し、マダガスカルの薬草の研究所であるIMRAを設立しました。Boiteauは戦乱によりフランスに帰国しましたが、IMRAは現在も活動しているそうです。



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2013年に発表された『Phylogenetics, morphological evolution, and classification of Euphorbia subgenus Euphorbia』という論文の紹介です。昨日に引き続きOld World Clade II②の、Section Euphorbiaを解説します。

ユーフォルビア属の分子系統
┏━━━━━━Subgenus Esula

┫┏━━━━━Subgenus Rhizanthium
┃┃
┃┃┏━━━━Subgenus Chamaesyce
┗┫┃
    ┃┃    ┏━━Pacific Clade
    ┗┫┏┫
        ┃┃┗━━New World Clade
        ┗┫
            ┃┏━━Old World Clade I
            ┗┫
                ┃┏━Old World Clade II①
                ┗┫
                    ┗━★Old World Clade II②

Old World Clade II②の分子系統
                    ┏━★Section Euphorbia VI
                ┏┫
                ┃┗━★Section Euphorbia V
            ┏┫
            ┃┗━━━Section Euphorbia IV
        ┏┫
        ┃┗━━━━Section Euphorbia III
    ┏┫
    ┃┗━━━━━Section Euphorbia II (アジア原産種)
┏┫
┃┗━━━━━━Section Euphorbia I

┗━━━━━━━Section Monadenium

Old World Clade II②
Section Euphorbia V
Section Euphorbia Vはアフリカ大陸東側の南部に分布するグループです。基本的には根元から叢生する柱サボテン状の多肉植物で、トゲがあり幹は多肉質です。
E. ledieniiは「蛮鬼閣」と呼ばれることもあり、南アフリカ原産です。E. curiviramaは「蒼蛮閣」と呼ばれ、南アフリカ原産です。実はE. curiviramaは自然交雑種とされていて、学名はEuphorbia ×curiviramaと表記します。交雑親は、Euphorbia caerulercens × Euphorbia triangularisとされているようで、系統的に近い種同士で交雑がおきたことがわかります。E. caerulercensは南アフリカ原産ですが、ガイアナに移入されているとのことです。E. triangularisは「大纏」と呼ばれ、南アフリカ、モザンビーク、スワジランド原産です。E. keithiiはモザンビーク、スワジランド原産です。E. perangustaは南アフリカ原産です。E. limpopoanaは南アフリカ、ジンバブエ、モザンビーク、ボツワナ原産です。E. avasmontanaは「角キリン」あるいは「婆羅門閣」と呼ばれ、南アフリカ、ナミビア原産です。E. ammakは「大戟閣」と呼ばれ、サウジアラビア、イエメン原産です。分布がE. ammakだけ離れていますが、系統的にも他の種とは距離があります。昨日解説したSection EuphorbiaIVのE. fruticosaなどアラビア半島原産のユーフォルビアと近縁なのかもしれません。


    ┏━━━━━━Section Euphorbia VI
    ┃
    ┃                ┏━E. ledienii
    ┃            ┏┫
    ┃            ┃┗━E. curvirama
    ┃        ┏┫
    ┃        ┃┗━━E. caerulercens 1
┏┫    ┏┫
┃┃    ┃┃┏━━E. triangularis
┃┃    ┃┗┫
┃┃┏┫    ┗━━E. caerulercens 2
┃┃┃┃
┃┃┃┗━━━━E. keithii
┃┗┫
┫    ┃    ┏━━━E. perangusta
┃    ┃┏┫
┃    ┃┃┗━━━E. limpopoana
┃    ┗┫
┃        ┗━━━━E. avasmontana

┗━━━━━━━E. ammak

Section Euphorbia VI
Section Euphorbia VIはアフリカ東側から南部原産。柱サボテン状で、根元から叢生するタイプが多いようです。
E. grandicornisは「キリン冠」と呼ばれ、南アフリカ、モザンビーク、スワジランド原産です。E. pseudocactusは「春駒」と呼ばれ、南アフリカ原産です。E. breviarticulataはエチオピア、ケニア、ソマリア、スーダン、タンザニア、ウガンダ原産です。E. pseudoburuanaはケニア、タンザニア原産です。E. bougheyiはモザンビーク原産です。E. busseiはケニア、タンザニア原産です。E. brevitortaはケニア原産です。E. lividifloraはマラウイ、モザンビーク、タンザニア、ジンバブエ原産です。E. cooperiは「瑠璃塔」と呼ばれ、ボツワナ、南アフリカ、マラウイ、モザンビーク、スワジランド、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ原産です。E. groenewaldiiは南アフリカ、モザンビーク原産で塊根性です。E. enormisは南アフリカ原産で塊根性です。E. cactusはエリトリア、エチオピア、オマーン、サウジアラビア、スーダン、イエメン原産です。E. fractiflexaはサウジアラビア、イエメン原産ですが、スーダンは移入の可能性があります。E. longispinaはエチオピア、ソマリア原産です。E. エチオピア、ケニア、ソマリア、タンザニア原産ですが、ジブチは移入の可能性があります。

                           
                                    ┏━E. grandicornis 2
                                ┏┫
                                ┃┗━E. pseudocactus
                            ┏┫
                            ┃┗━━E. grandicornis 1
                        ┏┫
                        ┃┗━━━E. breviarticulata
                    ┏┫
                    ┃┗━━━━E. pseudoburuana
                    ┃
                    ┃        ┏━━E. bougheyi
                ┏┫    ┏┫
                ┃┃    ┃┗━━E. bussei 1
                ┃┃┏┫
                ┃┃┃┗━━━E. brevitorta
            ┏┫┗┫
            ┃┃    ┗━━━━E. bussei 2
            ┃┃
        ┏┫┗━━━━━━E. lividiflora
        ┃┃
        ┃┗━━━━━━━E. cooperi
    ┏┫
    ┃┃┏━━━━━━━E. groenewaldii
    ┃┗┫
┏┫    ┗━━━━━━━E. enormis
┃┃
┃┃┏━━━━━━━━E. cactus
┃┗┫
┫    ┗━━━━━━━━E. fractiflexa

┃┏━━━━━━━━━E. longispina
┗┫
    ┗━━━━━━━━━E. robecchii

以上でPhylogenetics, morphological evolution, and classification of Euphorbia subgenus Euphorbia』という論文の紹介は終了となります。なんと9日間に渡り長々と論文の内容を紹介し続けた記事でした。また、論文に出てくる学名を検索して、原産地などを調べるのは思った以上に時間がかかり、記事を書くのも中々に疲れました。とりあえずは書き終わってほっとしていますが、まだ気掛かりはあります。それは、初日に紹介したリザンチウム亜属です。リザンチウム亜属は、オベサやホリダなど園芸店でよく見かけるユーフォルビアの大半が含まれます。しかし、論文ではたった4種類を調べたに過ぎないのです。この論文のメインがユーフォルビア亜属なので仕方がないでしょう。しかし、タコものユーフォルビアや鉄甲丸、瑠璃晃など有名なユーフォルビアが出てこないことは、流石に不満があります。ですから、リザンチウム亜属について調べたところ、割とあっさり論文が見つかりました。しかし、記事にするにはそれなりに労力がいりますから、少し間を空けます。解説を挟むのに、色々と調べる時間も必要ですからね。という訳でそのうち続きを記事にしようと思います。



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2013年発表された『Phylogenetics, morphological evolution, and classification of Euphorbia subgenus Euphorbia』という論文の紹介です。昨日に引き続きOld World Clade II②の、Section Euphorbiaについて解説します。

ユーフォルビア属の分子系統
┏━━━━━━Subgenus Esula

┫┏━━━━━Subgenus Rhizanthium
┃┃
┃┃┏━━━━Subgenus Chamaesyce
┗┫┃
    ┃┃    ┏━━Pacific Clade
    ┗┫┏┫
        ┃┃┗━━New World Clade
        ┗┫
            ┃┏━━Old World Clade I
            ┗┫
                ┃┏━Old World Clade II①
                ┗┫
                    ┗━★Old World Clade II②

Old World Clade II②の分子系統
                    ┏━Section Euphorbia VI
                ┏┫
                ┃┗━Section Euphorbia V
            ┏┫
            ┃┗━★Section Euphorbia IV
        ┏┫
        ┃┗━━★Section Euphorbia III
    ┏┫
    ┃┗━━━Section Euphorbia II (アジア原産種)
┏┫
┃┗━━━━Section Euphorbia I

┗━━━━━Section Monadenium

Old World Clade II②
Section Euphorbia III
Section Euphorbia IIIは、○、■、◇の3つに分けて解説します。

○このグループは、基本的に塊根から多肉質でトゲのある枝を伸ばすタイプです。
E. stellataは「飛竜」の名前で知られ、国内でもそこそこ流通しています。南アフリカ原産で、枝は平たい形です。E. micracanthaは「怒竜頭」と呼ばれ、南アフリカ原産です。E. persistentifoliaはザンビア、ジンバブエ原産です。E. griseolaは「龍尾閣」と呼ばれ、ボツワナ、マラウイ、モザンビーク、ザンビア、ザイール、ジンバブエに広く分布します。柱サボテン状で、枝分かれしてブッシュを作ります。E. deciduaは「蓬莱島」と呼ばれ、マラウイ、タンザニア、ザンビア、ザイール、ジンバブエ原産です。E. fanshaweiはザンビア原産です。

■このグループは、柱サボテン状で巨大に育ちます。幹は木質化し、盛んに枝分かれしてします。
E. ingensは「沖天閣」の名前で知られ、高さ12mになります。アンゴラ、ボツワナ、ブルンジ、エリトリア、エチオピア、ケニア、南アフリカ、マラウイ、モザンビーク、ルワンダ、ソマリア、スワジランド、タンザニア、ウガンダ、ザンビア、ザイール、ジンバブエに広く分布します。E. abyssinicaは「巒岳」の名前で知られ、高さ9mになります。ジブチ、エリトリア、エチオピア、ソマリア、スーダン原産。

◇このグループは、柱サボテン状ですが先端付近に大きな葉をつけ、枝は分岐します。
E. desmondiiはカメルーン、チャド、ガーナ、ニジェール、ナイジェリア原産です。E. drupiferaは高さ12-22mになるそうです。ベナン、中央アフリカ、チャド、コンゴ、ガボン、ガーナ、ギニア、ギニアビサウ、コートジボワール、リベリア、ニジェール、ナイジェリア、シエラレオネ、トーゴ、ウガンダに広く分布します。


            ┏━━━━━Section Euphorbia V, VI
        ┏┫
        ┃┗━━━━━Section Euphorbia IV
        ┃
        ┃                ┏━○E. micracantha
        ┃            ┏┫
        ┃            ┃┗━○E. stellata
    ┏┫        ┏┫
    ┃┃        ┃┗━━○E. persistentifolia
    ┃┃    ┏┫
    ┃┃    ┃┗━━━○E. griseola
    ┃┃┏┫
┏┫┃┃┗━━━━○E. decidua
┃┃┗┫
┃┃    ┗━━━━━○E. fanshawei
┃┃
┃┃┏━━━━━━■E. ingens
┃┗┫
┫    ┗━━━━━━■E. abyssinica

┃    ┏━━━━━━◇E. desmondii
┃┏┫
┃┃┗━━━━━━◇E. drupifera 2
┗┫
    ┗━━━━━━━◇E. drupifera 1

Section Euphorbia IV
Section Euphorbia IVは、◎、▲、▽、●の4つに分けて解説します。
◎このグループは、根元から分岐して小さい多肉質のブッシュを作ります。
E. clivicolaは南アフリカ、スワジランド原産です。短い太い枝を沢山伸ばします。E. lenewtoniiは、タンザニア原産です。E. ambroseaeはマラウイ、モザンビーク原産で、細長く伸びます。あまり情報がないようです。E. cuprispinaはケニア原産で、細い枝が枝分かれします。E. parciramulosaはサウジアラビア、イエメン原産で、アラビア半島に進出した種類です。太い柱サボテン状で叢生します。大型。

▲このグループは柱サボテン状です。E. heterospinaはケニア、ウガンダ原産で、高さ3.5mになります。E. heterochromaはケニア、タンザニア原産で、細長く伸びて分岐します。高さ2mになるそうです。E. elegantissimaはタンザニア原産で細長く伸びます。

▽このグループは、木質の幹から大きな葉を頂点につけます。あまり枝分かれはしません。
E. sudanicaはトゲのある幹を持ちます。ブルキナファソ、チャド、ギニア、コートジボワール、マリ、モーリタニア、ニジェール、ナイジェリア、セネガル、スーダン、トーゴに広く分布します。E. venenificaはトゲのない幹を持ちます。チャド、スーダン、エチオピア、エジプト原産で、高さ2-5mになるそうです。E. unispinaはトゲのある幹を持ち、高さ3mになります。ベナン、ブルキナファソ、カメルーン、チャド、コンゴ、ガーナ、コートジボワール、マリ、ナイジェリア、スーダン、トーゴ原産です。E. sapiniiはトゲのある幹を持ちます。カメルーン、中央アフリカ、チャド、ガボン、ザイール原産です。E. resiniferaは「白角キリン」と呼ばれ。モロッコ原産です。高さ2mのクッション状で、葉のありません。柱サボテン状です。

●このグループは、トゲがあり柱サボテン状ですが、それほど大きくなりません。
E. fruticosaはサウジアラビア、イエメン原産で、高さ70cmになります。E. seibanicaはイエメン原産です。E. classeniiはケニア原産で、細長く60-90cmほどになります。


                    ┏━━━◎E. clivicola
                ┏┫
                ┃┗━━━◎E. lenewtonii
            ┏┫
            ┃┗━━━━◎E. ambroseae
        ┏┫
        ┃┃┏━━━━◎E. cuprispina
        ┃┗┫
        ┃    ┗━━━━◎E. parciramulosa
        ┃
        ┃            ┏━━▲E. heterospina 1
    ┏┫        ┏┫
    ┃┃        ┃┗━━▲E. heterochroma 1
    ┃┃    ┏┫
    ┃┃    ┃┗━━━▲E. heterospina 2
    ┃┃┏┫
    ┃┃┃┗━━━━▲E. elegantissima
    ┃┗┫
    ┃    ┗━━━━━▲E. heterochroma 2
    ┃
┏┫                    ┏━▽E. sudanica 3
┃┃                ┏┫
┃┃                ┃┗━▽E. venenifica
┃┃            ┏┫
┃┃            ┃┗━━▽E. sudanica 1
┃┃        ┏┫
┃┃        ┃┗━━━▽E. sudanica 2
┃┃    ┏┫
┫┃    ┃┗━━━━▽E. unispina
┃┃┏┫
┃┃┃┗━━━━━▽E. sapinii
┃┗┫
┃    ┗━━━━━━▽E. resinifera

┃    ┏━━━━━━●E. fruticosa
┃┏┫
┃┃┗━━━━━━●E. seibanica
┗┫
    ┗━━━━━━━●E. classenii

本日はここまでです。明日はいよいよこの長い論文紹介のラストです。Section Euphorbia V, VIはよく市販されている柱サボテン状のユーフォルビアが沢山含まれています。



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2013年に発表された『Phylogenetics, morphological evolution, and classification of Euphorbia subgenus Euphorbia』という論文の紹介です。昨日はOld World Clade II②の、Section Monadeniumについて解説しました。本日はSection Euphorbia、つまりはユーフォルビア列となります。Section Euphorbiaはその多くがアフリカ大陸産ですが、アジアにも分布します。この論文はこのSection Euphorbiaについては割と細かく調べていますから、扱われる種類が多いため、便宜的に6分割して解説します。ただし、この分割方法は私が記事を書くための都合上のものですから、学術的に意味があるものではありません。
本日はSection Monadeniumとの分岐点に近い、Section Euphorbia IとSection Euphorbia IIについて解説します。

ユーフォルビア属の分子系統
┏━━━━━━Subgenus Esula

┫┏━━━━━Subgenus Rhizanthium
┃┃
┃┃┏━━━━Subgenus Chamaesyce
┗┫┃
    ┃┃    ┏━━Pacific Clade
    ┗┫┏┫
        ┃┃┗━━New World Clade
        ┗┫
            ┃┏━━Old World Clade I
            ┗┫
                ┃┏━Old World Clade II①
                ┗┫
                    ┗━★Old World Clade II②

Old World Clade II②の分子系統
                    ┏━Section Euphorbia VI
                ┏┫
                ┃┗━Section Euphorbia V
            ┏┫
            ┃┗━━Section Euphorbia IV
        ┏┫
        ┃┗━━━Section Euphorbia III
    ┏┫
    ┃┗━━━━━★Section Euphorbia II
    ┃                             (アジア原産種)
┏┫
┃┗━━━━━━★Section Euphorbia I

┗━━━━━━━Section Monadenium

Old World Clade II②
Section Euphorbia I
Section Euphorbia Iは基本的にはアフリカ大陸産です。2つのグループに分けられる様に見えますから、●と◇に分けて解説します。

●このグループはアフリカ南部の原産です。外見は若いうちは柱サボテンのように見えますが、やがて幹は木質化して多肉質の枝を沢山伸ばします。自生地ではかなり大型になるものもあります。
E. evansiiは南アフリカ、スワジランド原産です。E. grandidensは南アフリカ、モザンビーク原産で、「隅田の雪」と呼ばれます。E. ramipressaはマダガスカル原産で、枝は平たく多肉質です。E. tanaensisはケニア原産で、高さ30mになるそうです。「タナガワトウダイグサ」と呼ばれることもあります。E. confinalisはスワジランド原産で、亜種のE. confinalis subsp. rhodesiacaは「白雲巒岳」の名前で知られています。E. tetragonaは南アフリカ原産で、E. trigonaとは別種です。

◇このグループはアジア系の原産です。
E. abdelkuriはソコトラ島原産で、トゲのない柱状の多肉植物です。E. laceiはアジア原産で、ラオス、ミャンマー、フィリピン、タイ、マレーシアに分布します。インドでは本来の自生地ではない移入種として分布します。

        ┏━━━━Section Euphorbia III, IV, V, VI
    ┏┫
    ┃┗━━━━Section Euphorbia II
    ┃
    ┃            ┏━●E. evansii
    ┃        ┏┫
┏┫        ┃┗━●E. grandidens
┃┃    ┏┫
┃┃    ┃┗━━●E. ramipressa
┃┃┏┫
┃┃┃┃┏━━●E. tanaensis
┃┃┃┗┫
┃┗┫    ┗━━●E. confinalis
┫    ┃
┃    ┃┏━━━●E. sekukuniensis
┃    ┗┫
┃        ┗━━━●E. tetragona

┃┏━━━━━◇E. abdelkuri
┗┫
    ┗━━━━━◇E. lacei

Section Euphorbia II
Section Euphorbia IIは基本的にはアジア産です。2つのグループに分けられる様に見えますから、◎と▲に分けて解説します。

◎このグループは、若いうちはモナデニウムに似ています。葉は多肉質ではなく、多肉質の太ったトゲのない幹を持ちます。
E. nivuliaはバングラデシュ、インド、ミャンマー、パキスタン、スリランカに分布します。E. neriifoliaはインド、イラン、ミャンマー、パキスタン、ベトナムに分布します。中国やインドネシア、東南アジアの島嶼部などに移入されているようです。「キリン角」とも呼ばれます。この、E. nivuliaとE. neriifoliaは分子系統が入り交じっています。解析の精度が低いせいなのか、遺伝的に交雑しているのか、隠蔽種があるのかはわかりません。
E. caducifoliaはインド、パキスタン原産です。根元より分岐して巨体なブッシュ状になります。多肉質の茎にはトゲがあり、葉は目立ちません。E. tekeはアフリカ大陸産で、カメルーン、中央アフリカ、チャド、コンゴ、スーダン、タンザニア、ウガンダ、ザイールに広く分布します。

▲このグループは、一見して柱サボテン様のトゲのあるタイプです。葉は目立ちません。
E. antiquorumはインド、バングラデシュ、カンボジア。マレーシア、パキスタン、スリランカ、タイ、ベトナムに広く分布します。E. lacteaはスリランカ原産ですが、移入種としてカリブ海地域やハワイ、南アジア、太平洋島嶼部などに広く見られます。綴化した斑入りのE. lacteaが継木されて「マハラジャ」などの名前でよく売られています。E. vajraveluiはインド原産です。


                    ┏━◎E. nivulia 2
                ┏┫
                ┃┗━◎E. neriifolia 1
            ┏┫
            ┃┗━━◎E. nivulia 1
        ┏┫
        ┃┗━━━◎E. nivulia 3
    ┏┫
    ┃┗━━━━◎E. neriifolia 2
┏┫
┃┃┏━━━━◎E. caducifolia
┃┗┫
┃    ┗━━━━◎E. teke

┃            ┏━━▲E. sp. 16
┫        ┏┫
┃        ┃┗━━▲E. sp. 15
┃    ┏┫
┃    ┃┗━━━▲E. antiquorum 1
┃┏┫
┃┃┃┏━━━▲E. antiquorum 2
┗┫┗┫
    ┃    ┗━━━▲E. lactea
    ┃
    ┗━━━━━▲E. vajravelui

今日解説したのは、Section Euphorbiaの分子系統の根元にある2グループですが、アフリカ原産種とアジア原産種があります。どのように分布を拡大して進化したのでしょうか? その道筋を考えてみたいと思います。
Section EuphorbiaはSection Monadeniumと姉妹群ですが、Section MonadeniumもSection Euphorbia Iもアフリカ原産ですから、Section Euphorbiaはアフリカ大陸が起源で間違いないでしょう。Section Monadeniumの多くは、ケニアを中心としたアフリカ大陸東岸のインド洋側です。Section Euphorbia Iの◇印は最初に分岐したグループですが、E. abdelkuriはアラビア半島沖のソコトラ島、つまりはインド洋側の分布ですから、Section Monadeniumとの共通祖先がいたケニア付近から北上した様に見えます。同じく◇印のE. laceiは本格的に熱帯アジアに進出しています。この◇印のグループが、Section Euphorbia IIのアジア進出の契機なのでしょうか? 
あるいは、Section Euphorbia IIはアジア原産ですが、◎印のE. tekeのみがアフリカ原産ですから、そこから来ている可能性もあります。

さて、本日はここまでです。明日はSection Euphorbiaの続きです。



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2013年に発表された『Phylogenetics, morphological evolution, and classification of Euphorbia subgenus Euphorbia』という論文の紹介です。昨日はOld World Clade II①の残り、Section Denisophorbia、Section Deuterocalli、Section Rubellaeについて解説しました。本日はSection Monadeniumについてです。
Section Monadeniumは、かつてはユーフォルビア属に近縁なモナデニウム属として独立していましたが、ユーフォルビア属に吸収されました。しかし、それでもSection Monadeniumはまとまった群として存在します。
とはいえ、現在でもモナデニウムはユーフォルビア属ではなく、モナデニウム名義で販売されていますから、論文の内容は我々趣味家には縁のない話かもしれません。むしろ、モナデニウムがユーフォルビアとして販売された場合、それはそれでややこしいので、販売名はモナデニウム名義でいて欲しいと思ってしまいます。

ユーフォルビア属の分子系統
┏━━━━━━Subgenus Esula

┫┏━━━━━Subgenus Rhizanthium
┃┃
┃┃┏━━━━Subgenus Chamaesyce
┗┫┃
    ┃┃    ┏━━Pacific Clade
    ┗┫┏┫
        ┃┃┗━━New World Clade
        ┗┫
            ┃┏━━Old World Clade I
            ┗┫
                ┃┏━Old World Clade II①
                ┗┫
                    ┗━★Old World Clade II②

Old World Clade IIの分子系統
    ┏━Section Euphorbia(Old World Clade II②)

┫┗━★Section Monadenium(Old World Clade II②)

┗━━Old World Clade II①

Old World Clade II② 
Section Monadeniumは主にアフリカ大陸産で、東アフリカのケニアを中心にタンザニア、エチオピアに多いようです。
ここで注意が必要なのは、モナデニウム属がユーフォルビア属へ移動した際、名前が変更になった種が多いことです。ですから、モナデニウムを育てていても、どれがどれやらわからないもかもしれません。残念ながら、論文ではモナデニウム属時代の学名は併記しておりません。ですから、解説部分で旧・学名も示します。


Section Monadeniumの分子系統
┏━━━━Section Euphorbia

┫    ┏━★Section Monadenium I 
┃┏┫
┗┫┗━★Section Monadenium II
    ┃
    ┗━━★Section Monadenium III

①Section Monadenium I
Section Monadenium Iは一見して最低4グループあります。○、▲、◎、■の記号でグループ分けしました。

○モナデニウムに特有の緑色の太った多肉質を持ち、茎の頂点に大きな葉を出すタイプが多いようです。E. rhizophora以外はこういうタイプです。
E. kimberleyana(=Monadenium kimberleyanum)はあまり情報はありません。E. lugardiae(=Monadenium lugardiae)はボツワナ、ザンビア、モザンビーク、スワジランド、南アフリカ原産。E. schubei(=Monadenium schubei)はタンザニア原産です。E. guentheri(=Monadenium guentheri)はケニア原産です。E. heteropoda(=Monadenium heteropodum)はあまり情報がありません。E. rhizophora(=Monadenium rhizophorum)はケニア原産で、塊根性で多肉質の茎を伸ばします。E. succulenta(=Monadenium succulentum)はケニア、タンザニア、ウガンダ原産です。

▲このグループはすべて塊根性です。
E. neomontana(=Monadenium montanum)はケニア、タンザニア原産です。E. neostolonifera(E. stoloniferum)はケニア原産です。E. neorubellae(=Monadenium rubellum)はケニア原産です。E. invenusta(=Monadenium invenustum)はケニア原産です。E. pseudolaevis(Monadenium laeve)はタンザニア、マラウイ原産です。

◎このグループのうち3種類はモナデニウム特有のタイプで系統的にも近縁です。他の3種類は緑色の棒状の多肉植物と塊根植物です。
E. pseudostellata(=Monadenium stellatum)はソマリア原産で、
緑色の太った多肉質を持ち、茎の頂点に大きな葉を出します。E. bisellenbeckii(=Monadenium ellenbeckii)はエチオピア、ケニア原産で、緑色の太った多肉質を持ち、茎の頂点に大きな葉を出します。E. neoreflexa(=Monadenium reflexum)はエチオピア、ケニア原産で、緑色の太った多肉質を持ち、茎の頂点に大きな葉を出します。
E. lindenii(=Monadenium lindenii)はソマリア原産で、棒状の多肉質の茎を持ちます。E. major(=Monadenium majus、=Monadenium erubescens)はエチオピア、ソマリア原産で、塊根性の多肉植物です。E. neovirgata(=Monadenium virgatum)はケニア原産で、棒状の多肉質の茎を持ちます。


■一番根元はE. pseudotrinervis(=Monadenium trinerve)はケニア原産の塊根のある多肉植物です。

                        ┏━○E. kimberleyana
                    ┏┫
                    ┃┗━○E. lugardiae
                ┏┫
                ┃┗━━○E. schubei
            ┏┫
            ┃┃┏━━○E. guentheri
            ┃┗┫
        ┏┫    ┗━━○E. heteropoda
        ┃┃
        ┃┃┏━━━○E. rhizophora
        ┃┗┫
        ┃    ┗━━━○E. succulenta
        ┃
        ┃        ┏━━▲E. neomontana
    ┏┫    ┏┫
    ┃┃    ┃┗━━▲E. neostolonifera
    ┃┃┏┫
    ┃┃┃┗━━━▲E. neorubella
    ┃┗┫
    ┃    ┃┏━━━▲E. invenusta
    ┃    ┗┫
    ┃        ┗━━━▲E. pseudolaevis
    ┃
┏┫        ┏━━━◎E. pseudostellata
┃┃    ┏┫
┃┃    ┃┗━━━◎E. bisellenbeckii
┃┃┏┫
┃┃┃┗━━━━◎E. neoreflexa
┃┃┃
┃┗┫    ┏━━━◎E. lindenii
┫    ┃┏┫
┃    ┃┃┗━━━◎E. major
┃    ┗┫
┃        ┗━━━━◎E. neovirgata

┃┏━━━━━━■E. pseudotrinervis
┗┫
    ┗━━━━━━■E. sp. 13

②Section Monadenium II
Section Monadenium IIは2つのグループがあるように見えます。◇、●の記号でグループ分けしました。

◇このグループは多肉植物ではない低木が多いようです。旧・モナデニウム属だけではなく、旧・Synadenium属も入ります。
E. bicompacta(=Synadenium compactum)はエチオピア、ケニア、エリトリア、ルワンダ原産の低木です。E. pseudomollis(=Synadenium molle)はケニア、タンザニア原産の低木です。E. umbellata(=Synadenium umbellatum、=Synadenium grantii)はスーダン、ブルンジ、タンザニア原産の低木です。E. neospinescensはトゲのあるコーデックスで、一見してパキポディウムのようです。E. neogossweileri(=Monadenium gossweileri、=Endadenium gossweileri)はアンゴラ原産の低木です。

●このグループはタンザニア原産でトゲのあるグループです。
E. magnifica(=Monadenium magnificum)はタンザニア原産で、トゲのある緑色の幹を持ちます。E. spectabilis(=Monadenium spectabile)はタンザニア原産で、トゲのある緑色の幹を持ちます。E. neococcinea(=Monadenium coccineum)はタンザニア原産で塊根性です。

                ┏━━◇E. bicompacta
            ┏┫
            ┃┗━━◇E. pseudomollis
        ┏┫
        ┃┗━━◇E. umbellata
    ┏┫
    ┃┃┏━━◇E. torrei
    ┃┗┫
┏┫    ┗━━◇E. neospinescens
┃┃
┃┗━━━━◇E. neogossweileri

┃            ┏━●E. neoarborescens 2
┃        ┏┫
┫        ┃┗━●E. magnifica
┃    ┏┫
┃    ┃┗━━●E. neoarborescens 1
┃┏┫
┃┃┗━━━●E. spectabilis
┗┫
    ┗━━━━●E. neococcinea

③Section Monadenium III
E. neogracilis(=Monadenium gracile)はタンザニア原産で塊根性です。

Section Monadeniumは以上です。しかし、ユーフォルビア属は多様ですが、モナデニウムはSection Monadenium内でも様々な姿をとります。大変面白いグループです。
さて、明日はついにSection Euphorbiaです。本論文はSection Euphorbiaを中心に調べていますから、割と種数が多くなっています。




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2013年に発表された『Phylogenetics, morphological evolution, and classification of Euphorbia subgenus Euphorbia』という論文の紹介です。昨日はOld World Clade IIのSection Goniostemaについて解説しました。本日はSection Denisophorbia、Section Deuterocalli、Section Rubellaeについてです。Section DenisophorbiaとSection Deuterocalliは花キリン類Section Goniostemaから出てきたグループですが、Section RubellaeはOld World Clade II全体の根元にあるグループです。

ユーフォルビア属の分子系統
┏━━━━━━Subgenus Esula

┫┏━━━━━Subgenus Rhizanthium
┃┃
┃┃┏━━━━Subgenus Chamaesyce
┗┫┃
    ┃┃    ┏━━Pacific Clade
    ┗┫┏┫
        ┃┃┗━━New World Clade
        ┗┫
            ┃┏━━Old World Clade I
            ┗┫
                ┃┏━★Old World Clade II①
                ┗┫
                    ┗━Old World Clade II②

Old World Clade IIの分子系統
    ┏━━━━━Old World Clade II②
    ┃
    ┃            ┏━★Section Denisophorbia
    ┃        ┏┫ 
┏┫        ┃┗━★Section Deuterocalli
┃┃    ┏┫
┃┃┏┫┗━━Section Goniostema I
┃┃┃┃
┫┗┫┗━━━Section Goniostema II
┃    ┃
┃    ┗━━━━Section Goniostema III

┗━━━━━━★Section Rubellae

Old World Clade II①
①Section Denisophorbia
②Section Deuterocalli
・Section Denisophorbia
E. hedyotoidesは太い塊根から細いトゲのない枝を伸ばします。葉は細長い。あとは、すべて未記載種のようです。

・Section Deuterocalli
Section Deuterocalliは緑色の棒状の多肉質な枝を伸ばすタイプで、この論文ではE. famatamboay、E. alluaudii、E. cedrorumを調べています。
今回、論文を読みながら色々調べたのですが、ユーフォルビア属はSection Deuterocalliのようなタイプの多肉植物が、あちこちのグループで現れるということです。以前、私はE. alluaudiiなどのマダガスカル原産の種とE. phosphorea(夜光キリン)のような南米原産の種は形状は似ていても分布が異なり、また外見的特徴も異なるように見えましたから、別グループなのではないかと考察しましたが、どうやら正解だったようです。E. phosphoreaはNew World Cladeですから、Old World Clade IIのE. alluaudiiとはまったく近縁ではありません。
さらに、どちらかと言えばSection Deuterocalliによく似た同じマダガスカル原産のE. tirucalli(ミルクブッシュ)はOld World Clade Iですから、やはりそれほど近縁ではありませんでした。私は近縁と考えていましたが、どうも他人のそら似だったようです。他にも、あちこちのグループで類似の形態が見受けられます。これは、ユーフォルビア属が多肉植物化するときに、進化しやすい方向性なのでしょう。


            ┏━E. sp. 14
        ┏┫
    ┏┫┗━E. sp. 11
    ┃┃
    ┃┗━━E. hedyotoides
┏┫
┃┃    ┏━E. sp. 9
┃┃┏┫
┃┗┫┗━E. sp. 10
┃    ┃
┫    ┗━E. sp. 8

┃    ┏━E. famatamboay
┃┏┫
┗┫┗━E. alluaudii
    ┃
    ┗━━E. cedrorum

③Section Rubellae
Section Rubellaeは、E. rubellaとE. brunelliiを調べています。E. rubellaやE. brunelliiは太い塊根からトゲのない短い枝が出ます。葉は頂点にのみつきます。E. rubellaはエチオピア原産で、E. brunelliiはエチオピア、ケニア、スーダン、ウガンダ原産です。

本日はここまでです。明日はSection Monadeniumについて解説させていただきます。



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2013年に発表された『Phylogenetics, morphological evolution, and classification of Euphorbia subgenus Euphorbia』という論文の紹介です。昨日はOld World Clade Iについて解説しました。本日はOld World Clade IIについて解説しますが、論文で扱われている種類が多いため分割します。本日はSection Goniostemaについてです。Section Goniostemaとは、いわゆる花キリンの仲間です。

ユーフォルビア属の分子系統
┏━━━━━━Subgenus Esula

┫┏━━━━━Subgenus Rhizanthium
┃┃
┃┃┏━━━━Subgenus Chamaesyce
┗┫┃
    ┃┃    ┏━━Pacific Clade
    ┗┫┏┫
        ┃┃┗━━New World Clade
        ┗┫
            ┃┏━━Old World Clade I
            ┗┫
                ┃┏━★Old World Clade II①
                ┗┫
                    ┗━Old World Clade II②


Old World Clade IIの分子系統
    ┏━━━━━Old World Clade II②
    ┃
    ┃            ┏━Section Denisophorbia
    ┃        ┏┫ 
┏┫        ┃┗━Section Deuterocalli
┃┃    ┏┫
┃┃┏┫┗━━★Section Goniostema I
┃┃┃┃
┫┗┫┗━━━★Section Goniostema II
┃    ┃
┃    ┗━━━━★Section Goniostema III

┗━━━━━━Section Rubellae

Old World Clade II①
Section Goniostemaは花キリンの仲間です。花を観賞するために販売される花キリンE. milii系の品種はよく見かけますが、他の花キリンの仲間である噴火竜E. viguieriや筒葉チビ花キリンE. cylindrifoliaとの関係はどうなっているのか以前から気になっていました。

①Section Goniostema I
・E. viguieri系
E. viguieriは他の花キリン類とは離れた位置にあります。E. viguieriは「噴火竜」と呼ばれ、強いトゲがあり大きな葉は頂点にのみつきます。一見似ているE. neohumbertiiや
E. caproniiとは、それほど近縁ではありません。

・E. milii系
E. milii系の枝は、8種類が調べられました。E. miliiとよく似たE. lophogonaは、見た目通りE. miliiに近縁です。E. miliiは「花キリン」、E. lophogonaは「摩利支天」と呼ばれます。ともに、目立つ花を咲かせます。lophogonaのトゲは弱く突起物のようなものです。E. croizatiiはE. milii系の花を咲かせますが、トゲは非常に強いようです。E. didiereoidesはトゲは強く見た目はE. milii系ですが、花は小さく集合しややE. viguieriのようです。E. pedilanthoidesは塊根性でトゲのある細い枝からやや細長い葉を出します。花は小さくあまり開かないので、E. viguieriによく似ています。E. caproniiは一見してE. viguieriに似た強いトゲと大きな葉を持ちますが、枝は長く伸びてよく分岐します。花は集合しますが、苞はE. miliiほどではありませんが開いてやや目立ちます。E. horombensisは一見してE. miliiを大型にしたような姿です。苞も丸みがありよく目立ちます。

※ちなみに、"aff." という表記が見られますが、これは「特定の種あるいは亜種に類似するが、重要な分類形質の一部が明らかに一致しないことから、未記載種の可能性が高い場合に属名と種小名の間に挿入する用語」とのことです。今回は私に"aff."を判定する能力がないため、"aff."がついた種の解説は割愛させていただきます。

・E. tulearensis系
系統の根元にあるE. beharensisは塊根性で、トゲのある枝を長く伸ばします。かなり特殊な葉の出し方をします。E. tulearensisは塊根性でトゲはなく、縮れた葉を持ちます。E. ambovombensisやE. decaryiによく似ていますが、系統的には姉妹群ではあるものの、意外にも同じ枝に乗っていません。E. rossiiはトゲのある枝から非常に細長い葉を出します。苞は大きく目立ち、一見してE. milii系に見えますが、E. tulearensisに近縁です。E. capsaintemariensisは塊根性で、縮れた葉を出します。

・E. cylindrifolia系
E. cylindrifolia系は塊根性でトゲはありません。E. cylindrifolia以外は葉が縮れます。


        ┏━━━━━━━━Section Denisophorbia
    ┏┫
    ┃┗━━━━━━━━Section Deuterocalli
┏┫
┃┗━━━━━━━━━E. viguieri

┃                                ┏━E. aff. retrospina
┃                            ┏┫
┃                            ┃┗━E. horombensis
┃                        ┏┫
┃                        ┃┗━━E. capuronii
┃                    ┏┫
┃                    ┃┗━━━E. sp. 17
┃                ┏┫
┫                ┃┗━━━━E. aff. mahafalensis
┃            ┏┫
┃            ┃┗━━━━━E. pedilanthoides
┃        ┏┫
┃        ┃┗━━━━━━E. didiereoides
┃    ┏┫
┃    ┃┗━━━━━━━E. croizatii
┃┏┫
┃┃┃┏━━━━━━━E. lophogona
┃┃┗┫
┃┃    ┗━━━━━━━E. milii
┃┃
┃┃            ┏━━━━━E. capsaintemariensis 1
┗┫        ┏┫
    ┃        ┃┗━━━━━E. capsaintemariensis 2
    ┃    ┏┫
    ┃    ┃┃┏━━━━━E. rossii
    ┃    ┃┗┫
    ┃┏┫    ┗━━━━━E. tulearensis
    ┃┃┃
    ┃┃┗━━━━━━━E. beharensis
    ┃┃
    ┗┫        ┏━━━━━E. ambovombensis
        ┃    ┏┫
        ┃    ┃┗━━━━━E. decaryi
        ┃┏┫
        ┃┃┗━━━━━━E. cylindrifolia
        ┗┫
            ┗━━━━━━━E. francoisii

②Section Goniostema II
③Section Goniostema III

・Section Goniostema II
Section Goniostema IIはトゲのない群です。E. geroldiiは「トゲナシハナキリン」と呼ばれ、E. milii以上に丸みがある目立つ苞があります。E. alfrediiは太い幹から大きな葉を出します。

・Section Goniostema III
Section Goniostema IIIは太い幹に強いトゲがあり、葉は頂点にのみつきます。E. neohumbertiiは「噴炎竜」と呼ばれ、E. viguieriと対のように見られますが、それほど近縁ではありません。E. iharanaeはE. neohumbertiiによく似ています。


            ┏━Section Denisophorbia
        ┏┫
        ┃┗━Section Deuterocalli
    ┏┫
    ┃┗━━Section Goniostema①
┏┫
┃┃┏━━E. geroldii
┃┗┫
┃    ┗━━E. alfredii

┃    ┏━━E. neohumbertii 1
┃┏┫
┃┃┗━━E. neohumbertii 2
┗┫
    ┗━━━E. iharanae

そういえば、Euphorbia guillauminhanaはこの論文では調べていないようですが、花の形状や枝振りからすると、おそらくはE. miliiに近いのでしょう。また、地ムグリ花キリンE. primulifoliaの仲間はどうでしょうか? まだわからない部分があります。Section Goniostemaについて、詳細を調べた論文があるかもしれませんから、そのうち調べてみようかと思います。
明日はOld World Clade IIの内、Section MonadeniumとSection Euphorbia以外のその他のグループについて解説します。



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2013年に発表された『Phylogenetics, morphological evolution, and classification of Euphorbia subgenus Euphorbia』という論文の紹介です。昨日はPacific CladeとNew World Cladeについて解説しました。本日はOld World Clade Iについて解説します。ちなみに、Old World Clade Iはマダガスカル原産で、幹が棒状の多肉植物であるSection Tirucalli、未記載種が多く低木のSection Pervilleanae、他にSection Pachysanthaeからなります。

ユーフォルビア属の分子系統
┏━━━━━━Subgenus. Esula

┫┏━━━━━Subgenus. Rhizanthium
┃┃
┃┃┏━━━━Subgenus. Chamaesyce
┗┫┃
    ┃┃    ┏━━Pacific Clade
    ┗┫┏┫
        ┃┃┗━━New World Clade
        ┗┫
            ┃┏━━★Old World Clade I
            ┗┫
                ┃┏━Old World Clade II①
                ┗┫
                    ┗━Old World Clade II②

Old World Clade I
Old World Clade Iはすべてマダガスカル原産です。

    ┏━Section Tirucalli
┏┫
┫┗━Section Pervilleanae

┗━━Section Pachysanthae

①Section Pachysanthae
Section PachysanthaeはSection TirucalliやSection Pervilleanaeの根元にある分類群です。
E. mandraviokyは木本で幹は太りコーデックスのようになります。


②Section Pervilleanae
未記載種が多いようです。E. intisyは茎は棒状の多肉植物ですが、それ以外の種は樹木で光沢のある葉を持ち、一見してユーフォルビアに見えません。

                ┏━E. sp. 12
            ┏┫
            ┃┗━E. sp. 6
        ┏┫
        ┃┗━━E. sp. 5
    ┏┫
    ┃┃┏━━E. sp. 3
    ┃┗┫
    ┃    ┗━━E. sp. 4
┏┫
┃┃    ┏━━E. sp. 2
┃┃┏┫
┃┗┫┗━━E. randrianjohanyi
┃    ┃
┃    ┗━━━E. tetraptera

┃        ┏━━E. sp. 7
┃    ┏┫
┃    ┃┗━━E. pervilleana
┃┏┫
┗┫┗━━━E. rauhii
    ┃
    ┗━━━━E. intisy

③Section Tirucalli
Section Tirucalliは基本的に多肉質の棒状の植物です。E. tirucalli(ミルクブッシュ、緑サンゴ)、E. xylophylloides(硬葉キリン、ヘラサンゴ)、E. stenoclada(トナカイ角)など有名種は入手しやすい種類です。
E. arahakaは4つの株を見ていますが、E. arahaka 4はやや遺伝的に離れています。それ以外にも、全体的に分離が甘いように見えます。


                            ┏━E. arahaka 4
                        ┏┫
                        ┃┗━E. kamponii
                    ┏┫
                    ┃┗━━E. stenoclada 1
                ┏┫
                ┃┗━━━E. tirucalli
            ┏┫
            ┃┗━━━━E. decorsei
            ┃
            ┃            ┏━E. enterophora 2
            ┃        ┏┫
            ┃        ┃┗━E. arahaka 3
        ┏┫    ┏┫
        ┃┃    ┃┗━━E. arahaka 1
        ┃┃┏┫
        ┃┃┃┗━━━E. arahaka 2
    ┏┫┗┫
    ┃┃    ┗━━━━E. xylophylloides 2
    ┃┃
    ┃┃┏━━━━━E. xylophylloides 1
    ┃┗┫
┏┫    ┗━━━━━E. enterophora 1
┃┃
┃┃    ┏━━━━━E. fiherenensis 1
┃┃┏┫
┃┃┃┗━━━━━E. fiherenensis 2
┃┗┫
┫    ┗━━━━━━E. stenoclada 2

┃        ┏━━━━━E. arbuscula
┃    ┏┫
┃    ┃┗━━━━━E. damarana
┃┏┫
┃┃┗━━━━━━E. dhofarensis
┗┫
    ┗━━━━━━━E. gummifera

ユーフォルビア属の分類体系は、まだまだ続きます。明日はOld World Clade IIのSection Goniostemaについてです。いわゆる花キリンの仲間となります。



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2013年に発表された『Phylogenetics, morphological evolution, and classification of Euphorbia subgenus Euphorbia』という論文の紹介です。昨日はSubgenus. Esula、Subgenus. Rhizanthium、Subgenus. Chamaesyceについて解説しました。本日はPacific CladeとNew World Cladeについて解説します。ちなみに、Pacific Clade(太平洋分岐群)はオセアニアを中心とした島嶼部に、New World Clade(新世界分岐群)はアメリカ大陸の原産です。

ユーフォルビア属の分子系統
┏━━━━━━Subgenus. Esula

┫┏━━━━━Subgenus. Rhizanthium
┃┃
┃┃┏━━━━Subgenus. Chamaesyce
┗┫┃
    ┃┃    ┏━━★Pacific Clade
    ┗┫┏┫
        ┃┃┗━━★New World Clade
        ┗┫
            ┃┏━━Old World Clade I
            ┗┫
                ┃┏━Old World Clade II①
                ┗┫
                    ┗━Old World Clade II②

Pacific Clade
Section Pacificae
Pacific Cladeはオーストラリアからハワイに12種類が分布します。Pacific CladeはNew World Cladeの根元にありますから、Pacific Cladeの分布する太平洋の島嶼部からアメリカ大陸へ分布を拡げたことが推測されます。


この論文で解析されたPacific Cladeは5種類です。
・E. haeleeleanaはハワイ原産で、高さ13mに達する木本です。
・E. boophthonaはオーストラリア原産で、立ち上がりやや多肉質の茎を持ちます。
・E. plumerioidesはビスマルク諸島、フィジー、ジャワ、小スンダ諸島、ニューギニア、フィリピン、クイーンズランド、ソロモン諸島、スラウェシ、オーストラリアと広く分布します。細い木質の茎からプルメリアに似た葉を出します。
・E. steveniiはオーストラリア原産で、やや立ち上がり分岐する多肉質の茎に小さな葉を持ちます。
・E. sarcostemmoidesはオーストラリア原産で、叢生してやや多肉質な茎を持ちます。


            ┏━E. haeleeleana
        ┏┫
        ┃┗━E. boophthona
    ┏┫
    ┃┗━━E. plumerioides
┏┫
┃┗━━━E. stevenii

┗━━━━E. sarcostemmoides

New World Clade
New World Cladeはアメリカ大陸産のユーフォルビアです。遺伝子解析の結果では種の分離能があまり良くないということですが、これはNew World Cladeが短期間に進化した可能性を示しています。
New World Cladeはあまり有名な種類は少なく、Section Brasiliensesの夜光キリンなど、流通しているのは極一部です。

                        ┏━Section Brasilienses
                    ┏┫
                    ┃┗━Section Stachydium
                ┏┫
                ┃┗━━Section Crepidaria
                ┃
            ┏┫┏━━Section Nummulariopsis
            ┃┗┫
        ┏┫    ┗━━Section Portulacastrum
        ┃┃
        ┃┗━━━━Section Calyculatae
    ┏┫
    ┃┃    ┏━━━Section Euphorbiastrum
    ┃┃┏┫
    ┃┗┫┗━━━Section Mesophyllae
┏┫    ┃
┃┃    ┗━━━━Section Lactifluae
┃┃
┫┃┏━━━━━Section Cubanthus
┃┗┫
┃    ┗━━━━━Section Tanquahuete

┗━━━━━━━Pacific Clade

①Section Brasilienses
Section BrasiliensesとSection Stachydiumは近縁で、ともに中米・南米に分布します。しかし、Section Stachydiumは草本ですが、Section Brasiliensesは多肉植物です。
E. attastomaとE. phosphoreaの分離が出来ていません。急激に分化した場合など解析の精度が落ちる可能性もあります。ただし、隠蔽種と言って外見上では同じでも、遺伝的には差がある場合もありますから、さらなる詳細な研究が望まれます。

・E. attastomaはブラジル原産で、棒状の多肉植物。
・E. phosphoreaは「夜光キリン」と呼ばれ、現在地では菌の作用で発光すると言われます。ブラジル原産で棒状の多肉植物。
・E. sipolisiiはブラジル原産で、棒状の多肉植物です。枝は角ばる。


                ┏━E. attastoma1
            ┏┫
            ┃┗━E. phosphorea1
        ┏┫
        ┃┗━━E. sipolisii
    ┏┫
    ┃┃┏━━E. phosphorea2
    ┃┗┫
┏┫    ┗━━E. attastoma2
┃┃
┫┗━━━━Section Stachydium

┗━━━━━Section Crepidaria

②Section Stachydium
Section Brasiliensesと姉妹群を形成し、ともに中・南米原産です。基本的に草本で、多肉植物ではありません。

・E. heterodoxaはブラジル原産の草本。
・E. lagunillarumはブラジル原産の草本。
・E. comosaはアルゼンチン、ブラジル、コロンビア、ベネズエラ原産の草本。


    ┏━━━Section Brasilienses
    ┃        
┏┫    ┏━E. heterodoxa
┃┃┏┫
┃┗┫┗━E. lagunillarum
┫    ┃
┃    ┗━━E. comosa

┗━━━━Section Crepidaria

③Section Crepidaria
Section Crepidariaは基本的に北米原産で、木本が多いのですが、一部多肉質となるものもあります。多肉質の茎を持つ種は、あまり高度に多肉化せずにブッシュ状となります。

・E. cymbiferaはメキシコ原産の棒状の多肉植物です。
・E. lomeliiはメキシコ原産の棒状の多肉植物です。
・E. bracteataはメキシコ原産の多肉植物です。
・E. calcarataはメキシコ原産の木本です。
・E. finkiiはメキシコ原産ですが、情報がありません。
・E. personataはコスタリカ、ホンジュラス、メキシコ、ニカラグア原産で、細長い棒状の植物です。論文では"Pencil-stem"と表現されています。
・E. tithymaloidesはフロリダ、メキシコから熱帯アメリカの原産で、2m前後の低木です。庭木として植栽されます。


    ┏━━━━━Section Brasilienses
┏┫
┃┗━━━━━Section Stachydium

┃                ┏━E. cymbifera
┃            ┏┫
┃            ┃┗━E. lomelii
┃        ┏┫
┫        ┃┗━━E. bracteata
┃    ┏┫
┃    ┃┃┏━━E. colligata
┃    ┃┗┫
┃┏┫    ┗━━E. calcarata
┃┃┃
┗┫┗━━━━E. finkii
    ┃
    ┃┏━━━━E. personata
    ┗┫
        ┗━━━━E. tithymaloides

④Section Nummulariopsis
⑤Section Portulacastrum
⑥Section Calyculatae

Section Nummulariopsisは分岐の基部は北米原産ですが、その大半が中・南米原産です。基本的に草本のようです。Section PortulacastrumはここではE. germainiiのみですが、中・南米原産の草本です。Section CalyculataeはここではE. xylopodaとE. calyculataを解析していますが、北米原産の木本です。
Section Calyculataeが分岐の基部にありますから、北米から分化が始まったような気もします。しかし、分布を拡大しながら種分化した場合、元の地域で絶滅が起きた可能性もあります。そうなると、群のもともとの起源地域はわからないということになります。Section Nummulariopsisの起源地域は北米で中・南米へ分布を拡大したように思えます。しかし、Section Portulacastrumは中・南米原産ですから難しいところです。あるいはアメリカ大陸を縦横無尽に南北に分布を拡大してきたのかもしれません。


Section Nummulariopsis
・E. caespitosaはアルゼンチン、ウルグアイ原産の草本。
・E. portulacoidesはアルゼンチン、ボリビア、チリ、ウルグアイ原産の草本です。
・E. elquiensisはチリ原産。
・E. elodesはブラジル原産の草本です。
・E. peperomioidesはブラジル原産の草本です。
・E. thinophilaはチリ原産の塊根性植物です。
・E. papillosaはアルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ原産の草本です。
・E. telephioidesはフロリダ原産の草本です。
・E. rosescensはフロリダ原産の草本です。

Section Portulacastrum
・E. germainiiはチリ原産。一見してスベリヒユPortulaca様の多肉質の草本。

Section Calyculatae
・E. calyculataはメキシコ原産の木本。
・E. xylopodaはメキシコ原産の木本。


            ┏Section Brasilienses
        ┏┫
        ┃┗Section Stachydium
    ┏┫
    ┃┗Section Crepidaria
    ┃
    ┃                                    ┏━E. caespitosa
    ┃                                ┏┫
    ┃                                ┃┗━E. portulacoides 1
    ┃                            ┏┫
    ┃                            ┃┗━━E. portulacoides 2
    ┃                        ┏┫
    ┃                        ┃┗━━━E. portulacoides 4
    ┃                        ┃
    ┃                    ┏┫    ┏━━E. portulacoides 3
    ┃                    ┃┃┏┫
    ┃                    ┃┗┫┗━━E. sp. 1
    ┃                    ┃    ┃
    ┃                ┏┫    ┗━━━E. elquiensis
    ┃                ┃┃
    ┃                ┃┃┏━━━━E. elodes
    ┃            ┏┫┗┫
    ┃            ┃┃    ┗━━━━E. peperomioides
    ┃            ┃┃
    ┃        ┏┫┗━━━━━━E. thinophila
    ┃        ┃┃
    ┃    ┏┫┗━━━━━━━E. papillosa
┏┫    ┃┃
┃┃┏┫┗━━━━━━━━E. telephioides
┃┃┃┃
┃┗┫┗━━━━━━━━━E. rosescens
┃    ┃
┫    ┗━━━━━━━━━━E. germainii
┃                  (Section Portulacastrum)

┃┏━━━━━━━━━━━E. xylopoda
┃┃              (Section Calyculatae)
┗┫
    ┗━━━━━━━━━━━E. calyculata
                      (Section Calyculatae)

⑦Section Euphorbiastrum
⑧Section Mesophyllae
⑨Section Lactifluae

Section Euphorbiastrum、Section Mesophyllae、Section Lactifluaeは近縁です。基本的に中・南米原産で低木が多いようです。

Section Euphorbiastrum
・E. pteroneuraはメキシコからグアテマラ原産で、「破魔の矢」あるいは「旋風キリン」と呼ばれています。幹は棒状で分岐する多肉植物です。
・E. hoffmannianaはコスタリカ原産の木本?です。
・E. dussiiはカリブ海のウィンドワード諸島原産。
・E. weberbaueriはエクアドル、ペルー原産の、分岐する棒状の多肉植物。
・E. laurifoliaはコロンビア、ボリビアのアンデス山脈原産の木本です。

Section Mesophyllae
・E. sinclairianaはボリビア、ブラジル、ケイマン諸島、コロンビア、コスタリカ、キューバ、ドミニカ共和国、エクアドル、ハイチ、ホンジュラス、ジャマイカ、メキシコ、プエルトリコ原産の木本?

Section Lactifluae
・E. lactifluaeはチリ原産の灌木。



                         ┏━E. pteroneura
                     ┏┫
                     ┃┗━E. hoffmanniana
                 ┏┫
                 ┃┗━━E. dussii
             ┏┫
             ┃┗━━━E. weberbaueri
         ┏┫
         ┃┗━━━━E. cestrifolia
     ┏┫
     ┃┗━━━━━E. laurifolia
┏ ┫
┃ ┗━━━━━━E. sinclairiana

┗━━━━━━━E. lactiflua

⑩Section Cubanthus
⑪Section Tanquahuete

Section Cubanthusはカリブ海地域の島嶼部に分布します。Section Tanquahueteは北米原産ですが、Section Cubanthusとは木本であることは共通します。

Section Cubanthus
・E. umbelliformisはキューバ、ドミニカ共和国、ハイチ原産。
・E. gymnonotaはバハマ原産の木本。
・E. puniceaはジャマイカ原産の木本。「ジャマイカ・ポインセチア」の名前で知られる。
・E. cubensisはキューバ原産。
・E. podocarpifoliaはキューバ原産の木本。赤い目立つ花を咲かせる。
・E. helenaeはキューバ原産の木本。赤い目立つ花を咲かせる。
・E. muniziiはキューバ原産。

Section Tanquahuete
・E. tanquahueteはメキシコ原産の、高さ10mになる。


            ┏━E. umbelliformis
        ┏┫
        ┃┗━E. gymnonota
    ┏┫
    ┃┃┏━E. punicea
    ┃┗┫
    ┃    ┗━E. cubensis
┏┫
┃┃    ┏━E. podocarpifolia
┃┃┏┫
┃┗┫┗━E. helenae
┫    ┃
┃    ┗━━E. munizii

┗━━━━E. tanquahuete

明日は、続けてOld World Clade Iについて解説します。


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いまいち人気はありませんが、私はユーフォルビアが好きでチマチマ集めています。しかし、ユーフォルビアは非常に多様で、一見して同じユーフォルビアに見えない種類が含まれています。ユーフォルビアとはどのような植物なのでしょうか?

ユーフォルビアは日本にも生えている雑草だったり、メキシコのポインセチア、南米では大木、アフリカではサボテンの様な多肉植物、マダガスカルの花キリン、ヨーロッパの観賞用のカラーリーフ、もちろんアジアやオーストラリアにも自生しています。つまりは世界中に広く分布しています。
そして、その生態も様々です。ユーフォルビアは乾燥地に生えるものが多いのですが、アジアやヨーロッパに自生するものは多肉植物ではなくその多くは草本です。乾燥に対応して水分を蓄えるために多肉質になった種でも、サボテンのように茎が太ったものだけではなく、塊根が発達したもの、塊根からサボテンのような多肉質の茎を伸ばすものもあります。とにかく、ユーフォルビアはあらゆる可能性を追及した様な植物です。
考えて見ると、例えばサボテンも様々な形態です。木のようなモクキリン、森林サボテン、ウチワサボテン、ハシラサボテン、さらにはAstrophytum caput-medusaeやAriocarpusの様な特殊化したものもあります。しかし、これらは同じサボテン科ですが、所属する属は別々です。しかも、ハシラサボテンと言っても沢山の属にわかれています。では、ユーフォルビアと言えば、なんと1属、ユーフォルビア属だけで成立しているのです。形がどれだけ異なっても、やはりユーフォルビア属の一部です。とても不思議に思います。
ただし、ユーフォルビア属はCyathiumという特徴的なカップ状の花が共通します。この構造は発生学的には花と花序の中間と見なされるそうです。難しいのは、この花の構造とユーフォルビア属内の分類がうまくリンクせず、曖昧であるということです。


私は最近、多肉植物の論文を探して紹介する記事を書いています。そこで、ユーフォルビアについても論文を探してみました。しかし、ユーフォルビア属は巨大な分類群で、しかも世界中に分布し形態も様々なので、調べると沢山の論文がヒットします。あまりに多いので、逆に目当ての内容の論文を探すのに難儀する位です。
そんなこんなで見つけたのが、2013年に発表された『Phylogenetics, morphological evolution, and classification of Euphorbia subgenus Euphorbia』という論文です。この論文を紹介しますが、なんと言っても約2000種を含むと言われるユーフォルビア属そのものを解析したものですから、その内容も盛りだくさんです。とてもではないですが、一つの記事に収まらりません。というわけですので、いくつかに分割して記事にしようかと思います。

ついでに述べておきますが、以前「ユーフォルビア属の分類」と称して、3つの記事を書いたことがあります。しかし、この記事はNCBI(アメリカ国立生物工学情報センター)のTaxonomy browserに集積されたデータを吸いだしただけで、特に根拠を示しておりませんでした。ですから、その根拠を示すとともに、私の解説も適宜しながら進めさせていただきます。


さて、まずは序文ではこの論文がユーフォルビア661種を調べたものであること、核リボソームの遺伝子であるITSと葉緑体の遺伝子であるmatK、ndhFを解析したことが述べられております。本論から外れるので、テクニカルな話は割愛させていただきます。ここでは、とりあえず見取図的な大まかな分子系統をお示しします。本日は、Subgenus. Esula、Subgenus. Rhizanthium、Subgenus. Chamaesyceを解説します。

┏━━━━━━★Subgenus. Esula

┫┏━━━━━★Subgenus. Rhizanthium
┃┃
┃┃┏━━━━★Subgenus. Chamaesyce
┗┫┃
    ┃┃    ┏━━Pacific Clade
    ┗┫┏┫
        ┃┃┗━━New World Clade
        ┗┫
            ┃┏━━Old World Clade I
            ┗┫
                ┃┏━Old World Clade II①
                ┗┫
                    ┗━Old World Clade II②


エスラ亜属 Subgenus. Esula
エスラ亜属は約480種を含みます。

ユーフォルビアとは日本語でトウダイグサと呼びます。つまりは、ユーフォルビア属=トウダイグサ属なのです。この、トウダイグサは「灯台草」ではなくて「燈台草」です。この場合の「燈台」とは、背の高い台に油を注いだ皿を置いて、明かりを灯す器具のことを示します。時代劇でよく見かけるやつです。このトウダイグサの命名のきっかけは、トウダイグサE. helioscopiaから来ています。トウダイグサは本州以南の日当たりの良い荒れ地や畑地に生える二年草です。椀状の苞葉から黄色い花が出る形状を燈台に見立てているということです。トウダイグサ属の命名に関わる「トウダイグサ」はエスラ亜属に属します。

そういえば、最近園芸店で良く見かける草花として販売されるユーフォルビアは大抵エスラ亜属です。栽培されるのは主にヨーロッパ原産種で、花壇に植栽される花、あるいはカラーリーフで、多肉植物ではありません。有名な種類は、E. cyparissias、E. polychroma、E. myrsinites、E. amygdaloides、E. characiasなどがあります。

この論文では、4種類のエスラ亜属を解析しています。ずいぶん数が少ないのですが、これは各分類群の位置関係を調べるためですから、仕方がないことです。また、エスラ亜属はまとまりのある分類群ですから、沢山調べる必要性はないのかもしれません。
簡単に種の解説をします。
・E. orthocladeはマダガスカルの草本?のようですが、詳細はよくわかりません。
・E. aphyllaは「糸キリン」の名前で知られる棒状の茎を持つ多肉植物で、カナリア諸島原産です。海岸にも生えることから、耐塩性があります。
・E. helioscopiaは燈台草のことです。雑草。
・E. hirsutaは地中海沿岸に生える草本です。地中海沿岸とは必ずしもヨーロッパだけを示すわけではありませんから、トルコや北アフリカにも広く分布します。

        ┏━E. orthoclade
    ┏┫
┏┫┗━E. aphylla
┃┃
┫┗━━E. helioscopia

┗━━━E. hirsuta

リザンチウム亜属 Subgenus. Rhizanthium
リザンチウム亜属は、園芸店でお馴染みの多肉ユーフォルビアを沢山含んでいます。ホリダ、オベサ、タコものとも呼ばれるMedusoid、その他コーデックスもあります。約200種類あると言われています。この論文ではたった4種類を調べただけですから、今後リザンチウム亜属の詳細を調べた論文をもし見つけたら今後記事にしたいと思います。

代表的な種は、サボテンに似たホリダE. polygona var. horrida、勇猛閣E. ferox、紅彩閣E. hepatogona、オベサE. obesa、バリタE. meloformis subsp. valida、笹蟹丸E. pulvinata、瑠璃晃E. susannaeなど、あるいはタコものとも言われる孔雀丸E. flanaganii、闘牛角E. schoenlandii、閻魔キリンE. esculenta、荒天竜E. caput-medusae、E. deceptaなど、さらにはコーデックスの鉄甲丸E. bupleurifolia、E. tricadenia、E. silenifolia、鬼笑いE. ecklonii、鬼縮E. tuberosaなどが知られています。他にも玉鱗宝E. globosa、式部E. clava、逆鱗竜E. clandestina、昭和キリンE. bubalina、鬼棲木E. hamata、柳葉キリンE. monteiroi、E. loricata、E. multifolia、E. gariepina、E. lignosa、E. cuaneta、E. bongensis、E. longituberculosa、E. balsamifera、E. socotrana、E. platycephalaがあります。

この論文で扱われたリザンチウム亜属は4種類です。簡単に種の解説をします。
・E. gariepinaは「鬼ヶ島」と呼ばれることもある、アンゴラやナミビア、南アフリカ原産の叢生する多肉植物です。
・E. bongensisは南スーダンからザンビア原産の塊根性の多肉植物です。
・E. hadramauticaはアラビア半島南部、エチオピア、ソマリア原産の、棍棒状の幹から縮れた葉を出す多肉植物です。
・E. horridaは南アフリカ原産のサボテンのような多肉植物です。ホリダは現在ではE. polygona var. horridaとされています。

        ┏━E. gariepina
    ┏┫
    ┃┗━E. bongensis
┏┫
┫┗━━E. hadramautica

┗━━━E. horrida

カマエシケ亜属 Subgenus. Chamaesyce
カマエシケ亜属は約600種を含みます。ニシキソウの仲間で世界中に自生します。日本ではコニシキソウE. maculataやその近縁種が雑草として良く見られますが、ポインセチアE. pulcherrimaもカマエシケ亜属です。他にはカラーリーフとして栽培されるE. cotinifolia、花壇に植えられるハツユキソウE. marginataが有名です。

この論文で扱われたカマエシケ亜属は7種類です。簡単に種の解説をします。
・E. tannensisはオーストラリアやニューカレドニア、バヌアツ原産です。詳細は不明。
・E. planticolaはオーストラリア原産詳細は不明。
・E. aequorisは南アフリカ原産で、叢生して分岐する棒状の多肉植物です。
・E. spineaは「魔針殿」とも呼ばれる南アフリカとナミビア原産の多肉植物で、叢生して先端が尖ります。
・E. cotinifoliaはメキシコから熱帯アメリカ原産で、観葉植物として育てられる低木。多肉植物ではありません。
・E. guiengolaはメキシコ原産で、花を目的に栽培されます。茎はやや多肉質かもしれません。
・E. plagianthaはマダガスカル原産の木本。松のような細長い葉を伸ばします。

        ┏━E. tannensis
    ┏┫
    ┃┗━E. planticola
┏┫
┃┃┏━E. aequoris
┃┗┫
┫    ┗━E. spinea

┃    ┏━E. cotinifolia
┃┏┫
┗┫┗━E. guiengola
    ┃
    ┗━━E. plagiantha

本日はここまでです。明日はPacific CladeとNew World Cladeを解説します。


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人は見たいものしか見ないとは、なるほど上手いことを言ったものです。私は割とアクティブに園芸店を巡ってきましたが、今まであまりダシリリオンを目にしたことはありませんでした。しかしある時、園芸店の入荷情報をチェックしていたら、ダシリリオンが入荷したというお知らせがありました。調べて見ると中々面白い植物のようです。早速、購入しましたが、それから1年と立たずにダシリリオンをさらに2種類見かけて購入するに至りました。ここでふと思ったわけです。今まで行った園芸店で、本当にダシリリオンは売っていなかったのだろうかと。興味のある多肉植物はそれなりに詳しく目がいきますが、知らない多肉植物は目に入っても素通りしていただけなのではないかと。一度、ダシリリオンに興味を持ち入手していますから、私のダシリリオンに対する感度が上がっただけかもしれません。見ているがその実は見えていなかった、そんな気がして少し気恥ずかしくなります。

DSC_1691
Dasylirion longissimum名義のダシリリオン。
シマムラ園芸で購入。

DSC_1695
Dasylirion quadrangulatum名義のダシリリオン。
五反田TOCのビッグバザールで購入。Ruchiaさんの販売している実生苗。
ともに、古い葉が少し枯れ混んだので、まだ小さな内は乾かし過ぎないようにした方がよさそうです。
まだ何者かわからない苗ですが、太い幹を持つコーデックスになります。それまでに何十年かかるかわかりませんが…


ここで気になる情報に気付きました。 国内の販売サイトでM's plantsというアガヴェなどの多肉専門店の解説では、Dasylirion longissimumの名前で販売されているダシリリオンは、実はDasylirion quadrangulatumであるというのです。具体的にはD. longissimumはトゲがあり、D. quadrangulatumにはトゲがないということです。その専門店も種子に記載された名前で販売していますが、こういう風に言われていますよという情報を教えてくれているわけです。
私の所有するダシリリオンも、間違いなのでしょうか?
しかし、国内ではまったく情報がありません。海外ではどうなのでしょう。

海外の情報を探ってみましたが、日本国内とは異なりこの問題は話題となっているようです。海外でも混乱しているみたいです。というよりも、海外で混乱状態なので、海外の種子を購入している日本国内でも同じ混乱が連鎖的に起きているといった方が正しいようです。
海外の趣味家のフォーラムでは、世界中の多肉植物ファンが盛んにやり取りをしています。そのフォーラムの中で、D. quadrangulatumの葉にはトゲがなく断面は四角形で、D. longissimumの葉にはトゲがあり断面は四角形ではないとしています。また、D. longissimumは灰色がかるという表現をされていますが、これは青白いということでしょう。

そもそも、D. quadrangulatumとD. longissimumはどうやら混同されてきたようです。海外の"LLIFLE"というサイトでは、2001年にColin WalkerがD. longissimumとD. quadrangulatumは同種であるとしたとあります。しかし、別種であるという意見もあり、論争があったようです。今でもD. longissimumとD. quadrangulatumは同種であると書いてあるサイトがあるのは、このことが原因なのでしょう。ただし、それぞれの分布域は重ならないともあります。


また、アリゾナ大学のHPを見ていたら、D. quadrangulatumはトゲがないため、植栽に向くとありました。やはり、ここでも国内の情報とは逆になっています。

"World Flora Online"というサイトでは、それぞれの詳細情報が記述されていました。
まずは、D. quadrangulatumですが、葉の基部はスプーン型で耳状のフラップがあり、葉は80~90cmくらいでトゲはないが、葉縁は細かい鋸歯状とのことです。断面は基部では菱形で先端では正方形です。葉に光沢はないそうです。
対するD. longissimumは、葉の基部はスプーン型ですが耳状のフラップはありません。葉は80~140cmくらいで、葉の基部にはトゲがあり、やはり葉縁には弱い鋸歯があります。葉は時々光沢があるそうです。


情報を色々探っていくと、どうやらその元となった論文があるみたいです。1998年に発表されたのは、アメリカの植物学者であるDavid J BoglerによるThree new species of Dasylirion (Nolinaceae) from Mexico and a clarification of the D. longissimum complex』という論文です。混乱するD. quadrangulatumとD. longissimumを再定義しているらしいのですが、有料の学術雑誌なので内容はまったくわかりません。非常に残念です。しかし、2017年に発表された『La Familia Nolinaceae en el. estado de Nuevo Leon』という論文では、1998年の論文も資料の1つとして参照としながら、D. quadrangulatumとD. longissimumのややこしい事情も解説しています。しかし、この論文はスペイン語で書かれているため、まったく読めませんでした。仕方ないので機械翻訳しましたが、専門用語が多いせいか翻訳がうまく行かなくて割とめちゃくちゃな文章でしたので、解読には大変難儀しました。

ここからは論文の内容を抜粋して紹介します。ただし、論文では色々省略して論旨だけを淡々と書いているせいかわかりにくいので、私が情報を少し足しています。
フランスの植物学者であるCharles Antoine Lemaileは1856年にD. longissimumを命名しましたが、地域情報や標本なしの栽培植物に基づいているらしく、命名に問題があるようです。さらに、アメリカの植物学者であるSereno Watsonは、1879年にD. quadrangulatumを記述しており、これは不思議なことにLemaileのD. longissimumの記述に良く適合します。
イングランドの植物学者であるSir Joseph Dalton Hookerは、1900年にD. longissimumとD. quadrangulatumの両種を認識しており、詳細な説明とイラストを残しています。また、アメリカの植物学者であるWilliam Treleaseは、1911年にD. longissimum Nomen Confusem、つまりは「混同名」を宣言しました。
しかし、アメリカの植物学者であるDavid J Boglerは1994年にD. longissimumは2種類あることを資料と個体群からレビューしました。そこで、D. quadrangulatumを種として復元し、混同名をD. longissimumに宣言して、Querétaro、Hidalgo、San Luis Potosiの個体群を新種のD. treleaseiと命名しました。しかし、1998年にBoglerはD. treleaseiを破棄し、D. longissimumを復元しました。

というわけで、D. longissimumとD. quadrangulatumは別種であり、それぞれの学名は有効なものとなっております。

さて、それでは私の入手個体はどうなのでしょうか? D. longissimum名義でも実際に販売され普及しているのはD. quadrangulatumであるというのは、ヨーロッパ、アメリカ、日本においても実情は同じです。シマムラ園芸で購入したD. longissimumはD. quadrangulatumの可能性が高そうです。輸入種子がそうなっている以上は、そのままの名前で売るならそうなるでしょう。
では、RuchiaさんのD. quadrangulatumは、逆にD. longissimumなのでしょうか? しかし、外見的特徴ではD. longissimumらしさはありません。まだ幼弱な小苗ですから、特徴が出ていない可能性もありますが、現状ではD. quadrangulatumの名札通りな気もします。しかし、そうなるとRuchiaさんはD. quadrangulatumをちゃんと認識出来ていることになります。すごいですね。

しかし、なんと言ってもまだ苗ですから、まだまだこれからです。5年10年と育てて、じっくり観察していきたいと思います。


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最近、多肉植物について書かれた学術論文を少しずつ記事にして紹介しています。残念ながら興味を覚える方は少ないようで、あまり受けは良くないみたいですが、懲りずに論文を探しては読んでいます。そんな中、パキポディウムの進化と分類について書かれた論文を見つけましたのでご紹介します。本日は2013年に発表された『Phylogeny of the plant genus Pachypodium (Apocynaceae)』という論文を簡単に解説させていただきます。

パキポディウム属はアフリカ南部とマダガスカルに分布します。この論文では21種類のパキポディウムを調べています。調べたのはリボソームDNAのITS領域と葉緑体DNAのtrn LF領域で、パキポディウム属の系統関係を調べる目的の研究です。
結論はパキポディウムは5つのグループにわかれていることが明らかになったということです。過去に花の構造や形態、分布等の情報からパキポディウム属の分類がなされてきましたが、この論文の解析結果とおおよそ一致していましたが、異なる部分もありました。

今までの分類体系では、まずマダガスカル産のNesopodium亜属とアフリカ大陸産のPachypodium亜属に分けられます。旧・分類体系を示します。この時、"Subgenus"は「亜属」、"Section"は「節」、"Series"は「列」と日本語では訳されるようです。

旧・分類体系
★Subgenus Nesopodium
1, Section Gymnopus
1-1, Series Romasa
    P. brevicaule subsp. brevicaule
    P. brevicaule subsp. leucoxantum
    P. rosulatum subsp. bemarahense
    P. rosulatum subsp. bicolor
    P. rosulatum subsp. cactipes
    P. rosulatum subsp. gracilius 
    P. rosulatum subsp. makayense 
    P. rosulatum subsp. rosulatum
1-2, Series Densiflora
    P. densiflorum
    P. eburneum
    P. horombense
    P. inopinatum
2, Section Leucopodium
2-1, Series Contorta
    P. decaryi
    P. rutenbergianum
    P. sofiense
2-2, Series Ternata
    P. geayi
    P. lamerei
    P. mikea
2-3, Series Pseudoternata
    P. ambongense
    P. menabeum
3, Section Porphyropodium
    P. baronii
    P. windsolii
★Subgenus Pachypodium
    P. bispinosum
    P. namaquanum
    P. saundersii
    P. succulentum

遺伝子解析の結果をまとめたものが、下の分子系統になります。まずは、Section Gymnopusを見てみます。ここからは、論文の解析結果を見ながら、私の個人的な考えをお示しします。というのも、論文では試験方式やデータの処理法方などが議論され、必ずしも分類体系の提唱はされていないからです。ですから、その結果を見た我々が解釈する必要があるのです。

分子系統
        ┏━Section Gymnopus①
    ┏┫
    ┃┗━Section Gymnopus②
┏┫
┃┗━━Section Porphyropodium

╋━━━Section Leucopodium

┣━━━Section African①

┗━━━Section African②

Section Gymnopus①の詳細を見ると、まず気がつくのはP. densiflorumのまとまりのなさです。P. densiflorumは8個体を見ていますが、分布域が広いのが特徴です。P. horombenseに遺伝的に近縁とみられるP. densiflorum6は、実際に採取された地点がP. horombenseの採取された地点に近い個体です。また、P. inopinatumに遺伝的に近縁とみられるP. densiflorum7やP. densiflorum8は、やはり採取地点が近い関係にあります。これをみる限り、本来のP. densiflorumはP. densiflorum1~5であって、P. densiflorum6はP. horombenseのdensiflorumタイプでP. densiflorum7やP. densiflorum8はP. inopinatumのdensiflorumタイプなのではないかと疑わせます。
次はP. brevicauleです。P. brevicaule subsp. brevicauleと白花種のP. brevicaule subsp. leucoxantumの遺伝的位置は近くありません。P. brevicaule subsp. brevicauleはP. densiflorum系統であり、P. brevicaule subsp. leucoxantumはP. inopinatum系統です。
次はP. rosulatum subsp. bicolorですが、他のP. rosulatum系とは乗っている枝が異なり、むしろP. densiflorumやP. brevicauleと近縁に見えます。P. rosulatum系統とするのは無理があるのではないでしょうか? 分布を見ると、P. rosulatum subsp. bicolorはマダガスカル中部で、どちらかと言えばp. densiflorumやP. brevicaule subsp. brevicauleに近く見えます。

Section Gymnopus①
        ┏━━━P. eburneum1
        ┃
        ┃┏━━P. eburneum2
        ┃┃
        ┃┣━━P. brevicaule subsp. brevicaule1
        ┃┃
        ┃┣━━P. brevicaule subsp. brevicaule2
        ┃┃
        ┃┣━━P. brevicaule subsp. brevicaule3
        ┃┃
    ┏╋┫┏━P. densiflorum1
    ┃┃┃┃
    ┃┃┣╋━P. densiflorum2
    ┃┃┃┃
    ┃┃┃┗━P. densiflorum3
    ┃┃┃
    ┃┃┣━━P. densiflorum4
    ┃┃┃
    ┃┃┗━━P. densiflorum5
    ┃┃
    ┃┃┏━━P. densiflorum6
    ┃┃┃
┏┫┗╋━━P. horombense1
┃┃    ┃
┃┃    ┣━━P. horombense2
┃┃    ┃
┃┃    ┗━━P. horombense3
┃┃
┃┃    ┏━━P. densiflorum7
┃┃    ┃
┃┃┏╋━━P. densiflorum8
┃┃┃┃
┫┣┫┗━━P. inopinatum
┃┃┃
┃┃┗━━━P. brevicaule subsp. leucoxantum
┃┃
┃┗━━━━P. rosulatum subsp. bicolor

┃┏━━━━P. rosulatum subsp. gracilius
┣┫
┃┗━━━━P. rosulatum subsp. gracilius

┣━━━━━P. rosulatum subsp. cactipes

┗━━━━━P. rosulatum subsp. makayense

次にSection Gymnopus②を見てみましょう。P. rosulatum subsp. rosulatumは5個体が非常によくまとまっています。分布はマダガスカル北部です。しかし、Section Gymnopus①のP. rosulatum subsp. makayenceやP. rosulatum subsp. gracilius、P. rosulatum subsp. cactipesはマダガスカル南部に分布し距離があると言えます。この、マダガスカル南部に分布するP. rosulatumの亜種たちは、P. rosulatum系統とするべきではなく、それぞれ独立種とする方が自然に思えます。
また、旧・分類体系のSeries RomasaやSeries Densiflora は、分子系統ではまったく意味をなさない分類となっています。なぜなら、P. rosulatum系がまとまりがないことや、P. brevicaule系はP. rosulatum系ではなくP. densiflorum系に近縁だからです。

Section Gymnopus②
┏━━━Section Gymnopus①

┃    ┏━P. rosulatum subsp. rosulatum1
┃┏┫
┫┃┗━P. rosulatum subsp. rosulatum2
┃┃
┃┣━━P. rosulatum subsp. rosulatum3
┃┃
┗╋━━P. rosulatum subsp. rosulatum4
    ┃
    ┣━━P. rosulatum subsp. rosulatum5
    ┃
    ┗━━P. rosulatum subsp. bemarahense

Section Porphyropodiumは、赤い花を咲かせるパキポディウムです。マダガスカル原産のパキポディウムは基本的に黄花ですから少し違います。外見上はSeries Gymnopusとは葉の形がまったく違います。ただし、Section GymnopusとSection Porphyropodiumは姉妹群です。マダガスカル原産のパキポディウムは、一応は遺伝的にアフリカ大陸産のパキポディウムと区別できることになります。
P. windsoriiはP. baroniiの変種とする考え方もありますが、この結果からだけでは近縁であることしかわかりません。

Section Porphyropodium
┏━━━Section Gymnopus

┫    ┏━P. baronii1
┃┏┫
┗┫┗━P. baronii2
    ┃
    ┃┏━P. windsorii1
    ┗┫
        ┗━P. windsorii2

Section Leucopodiumはどちらかと言えば、縦長に育つタイプです。P. lamereiは7個体を調べていますが、割とまとまっています。P. mikeaはP. lamereiと同じ枝に乗っていますが、P. lamereiとほぼ同種とすべきか、P. lamereiから進化した種類とすべきかはわかりません。とても近縁であることはわかります。
P. lamerei、P. mikea、P. menabeum、P. geayiは姉妹群です。P. lamerei、P. mikea、P. geayiはマダガスカル南部、P. menabeumはマダガスカル中部、P. ambongenseはマダガスカル北部に分布します。
旧・分類体系では、P. decaryi、P. rutenbergianum、P. sofienseはSeries Contrtaとされていますが、分子系統でもこれは支持されています。ただし、それ以外のSeriesは支持されません。P.rutenbergianumとP. sofienseはマダガスカル北部、P. decaryiはマダガスカル最北端に分布します。

Section Leucopodium
                ┏P. lamerei1
                ┃
                ┣P. lamerei2
                ┃
            ┏╋P. lamerei3
            ┃┃
            ┃┣P. lamerei4
            ┃┃
        ┏┫┗P. mikea
        ┃┃
        ┃┃┏P. lamerei5
        ┃┃┃
        ┃┗╋P. lamerei6
        ┃    ┃
    ┏┫    ┗P. lamerei7
    ┃┃
    ┃┃┏━P. menabeum1
    ┃┃┃
    ┃┣╋━P. menabeum2
    ┃┃┃
┏┫┃┗━P. menabeum3 
┃┃┃
┃┃┗━━P. geayi
┃┃
┫┗━━━P. ambongense

┃        ┏━P. decaryi1
┃    ┏┫
┃┏┫┗━P. decaryi2
┃┃┃
┗┫┗━━P. decaryi3
    ┃
    ┣━━━P. rutenbergianum
    ┃
    ┗━━━P. sofiense

Section Africanはアフリカ大陸産のパキポディウムです。
Section African①のP. bispinosumとP. succulentumは近縁で、分布も南アフリカ南部に重なります。P. namaquanumも近縁で、南アフリカとナミビアの国境付近とナミビアの一部に分布します。相対的にはSection African①に所属する種は分布も近いと言えます。
Section African②に所属するP. lealiiとP. saundersiiは分布域が大きく離れています。P. saundersiiは南アフリカ、ジンバブエ、モザンビークの国境付近に分布しますが、P. lealiiはナミビア北部、ボツワナ北部、ナミビアとアンゴラの国境付近に分布が点在します。P. lealiiは分布が点在していてそれぞれが離れていますから、もともとは広い分布域を持っており、徐々に分布が狭くなり残ったのが、現在の点在する分布なのでしょう。

Section African①
    ┏━P. bispinosum
┏┫
┫┗━P. succulentum

┗━━P. namaquanum

Section African②
┏━P. lealii

┗━P. saundersii


いかがだったでしょうか? 意外だった、あるいは実際に育てている実感として近いと思った方もおられるかもしれません。私自身、最新の科学の知見に詳しいわけではなく、勉強しながら論文を探しています。しかし、科学は最新の情報が、あっという間に古臭くなったりしますから、最新情報を追いかけるのは素人の私には難しい部分があります。この記事も、来年頃にはいつの話をしているのか、ずいぶんと古い知識を語っているなぁと評されるかもしれませんね。
それはそうと、実は論文はそのほとんどが一般に公開されており、誰でも読むことが出来ます。研究者は最新の論文を読んで情報を得ますから、科学の発展のためには直ぐに読めることは重要です。そして、科学者か論文を書いた時に、読んで参考とした論文名を最後に一覧の形で表記します。この時にどれだけ多くの論文で引用されたかが、論文の価値を決めます。引用されるということは、多くの研究者が読んで重要と認めた論文という意味ですからね。
しかし、残念ながら一部の論文は、というか一部の論文の掲載紙は有料です。買えばいいじゃないかと思われるかもしれませんが、タイトルと数行の要約では本当に知りたい内容であるかわかりませんから、購入して読んでみて初めて要不用がわかるわけです。流石に手当たり次第とはいかないもので、手に入る論文だけですが、今後も懲りずに紹介出来ればと考えております。


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4月に東京五反田TOCで開催された、春のサボテン・多肉植物のビッグバザールに行った際に、サピニーという名前のユーフォルビアの苗を入手しました。購入したブースの生産者さんは、大変状態の良い優れた苗を毎回持ってきてくれますから、ついつい私も毎回購入してしまいます。
さて、そんなサピニーですが、ネットで現在地してみても恐ろしいほど情報がありません。多少、販売情報はあるようですが、私の購入した苗と同サイズのサピニーが数倍の値段で売られていたりします。なんか怪しいですね。
あと、海外のネット上のフォーラムでは、サピニーは海外でも非常に珍しいみたいですね。中々ヨーロッパでも入手は困難なようです。
個人的に「サピニー」より「サピニイ」のほうがしっくりくるので、これより「サピニイ」表記で行きます。

DSC_1647
まだ小さい苗ですが、高さ1mほどになるそうです。

DSC_1648
トゲのある木質の茎がありますが、まだトゲは出ていません。

ネットでサピニイの画像を探していたら、ふと"猛毒三兄弟"こと、Euphorbia poissonii、Euphorbia venenifica、Euphorbia unispinaと似ている様な気がしました。そこで、分布を調べてみたら面白いことがわかりました。ポイソニイは西アフリカのギニア湾沿い、ユニスピナはギニア湾沿いから東に長くチャド・スーダンまでの西アフリカから東アフリカ、ベネニフィカは東アフリカ、サピニイは中央アフリカとなっています。分布が広いユニスピナ以外は、一部重なりながらも分布がアフリカの東部・中央部・西部にわかれているのが、分布域を拡げながら進化した様子が見受けられます。
ここで、2013年に発表された『Phylogenetics, morphological evolution, and classification of Euphorbia subgenus Euphorbia』という論文を見てみます。この論文では遺伝子を解析していますが、サピニイの分子系統は以外の通りです。

             ┏━━E. sudanica
         ┏┫
         ┃┗━━E. venenifica
     ┏┫
     ┃┗━━━E. unispina
 ┏┫
 ┃┗━━━━★E. sapinii
 ┫
 ┗━━━━━E. resinifera

ユーフォルビアの全種類を調べた訳ではありませんから、ポイソニイは入っていませんがおそらくは近縁でしょう。また、調べていないだけで、他にも近縁種があるかもしれません。
さて、一番根元にあるレシニフェラは普通の柱サボテン様の多肉ユーフォルビアで、サピニイやポイソニイには似ていませんね。もしかしたら、レシニフェラ(の祖先)からサピニイ(の祖先)が進化した時に、サピニイやポイソニイの様な形態に進化したのかもしれません。
しかし、不思議なこともあります。レシニフェラはモロッコ原産ですが、この仲間がモロッコからモーリタニアやマリに分布を拡げながら進化したとすると、モーリタニアからギニア湾を通って東アフリカに達するスダニカがレシニフェラに近縁な様にも思えます。しかし、レシニフェラに一番近縁なのは中央アフリカ原産のサピニイです。地理的にずいぶん離れています。どういうことなのでしょうか?
考えられるのは2つ。1つは、
マリにも分布するポイソニイがレシニフェラとサピニイの間を埋めている可能性です。もう1つは、レシニフェラ自体がサピニイの祖先と別れたときには、モロッコではない地域に分布しており、レシニフェラに進化した際にモロッコ原産となった場合です。この謎はすべての近縁種を調査してはじめてわかるのでしょう。今後の研究に期待。

サピニイの学名は1908年に命名されたEuphorbia sapinii De Wild.です。De Wild.はベルギーの植物学者・菌類学者の
Émile Auguste Joseph De Wildemanのことです。De Wildemanはコンゴの植物相の研究で知られています。サピニイの名前は中央アフリカで植物の収集をしていたフランスの植物学者である、Adolphe Sapinに因んで命名されました。



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最近、多肉植物栽培の大先輩とお知り合いになりまして、色々と教えていただいております。私自身はと言うと、ブログではあれやこれやと情報をひけらかしてはいますが、何せ経験が浅いもので表面的な知識ばかりで頭でっかちな部分がたぶんにあります。実際の経験豊かな先輩方にご指摘いただけると、私も非常に嬉しく勉強になります。そんな中、ラウリンソニーについて何か情報はありませんかというリクエストをいただきました。ラウリンソニーとは一体どのような植物なのでしょうか?

さて、ラウリンソニー、つまりG. rawlinsoniiはガステリア属の一種ですが、茎が長く伸びて一見してガステリアとは思えない非常に変わった姿をしています。私も図鑑で見たことはありますからその存在自体は知っていましたが、実際に見たことはありません。大型園芸店や即売会でも、まずお目にかかれないレア多肉です。
私自身、ガステリア属にかなりの興味がありますから、最近は色々と調べものをしています。そんな中、ガステリア属について書かれたいくつかの面白い論文を見つけました。そこでは、G. rawlinsoniiの立ち位置は中々面白いように思えます。

論文
2005年に出された『Taxonomy implication of genomic size for all species of the genus Gasteria Duval (Aloaceae) Plant Systematics and Evolution』という論文をまず紹介します。この論文は簡単に言うと、ガステリア属の核DNA(ゲノム)のサイズを測定しましたよというものです。種によってゲノムのサイズが異なり、面白いことにG. rawlinsoniiがもっとも小さく、次に内陸部に自生する13種がG. rawlinsoniiより大きく、さらに沿岸部に自生する5種、そして一番ゲノムサイズが大きいのはG. batesianaということです。著者はゲノムサイズが小さいG. rawlinsoniiがもっとも原始的で、そこから内陸部→沿岸部→北東部(G. batesiana)という風に分布を拡大しながら進化したのではないかと考えているようです。筆者の一人はvan Jaarsveldですが、この論文の前まではG. batesianaがもっとも原始的と考えていたそうです。
しかし、残念ながら2021年に出されたPhylogeny of the Southern African genus Gasteria duval (Asphodelaceae) based on Sanger and next generation sequencing data』という論文を読むと、2005年の論文の考察は否定されています。こちらの論文は遺伝子解析の結果ですから、より正確なはずです。2021年の論文では、西部に分布するG. pillansiiがもっとも原始的で、そこから東部に向かい最先端にいるのがG. batesianaということになりました。結果的にG. rawlinsoniiはG. bicolorともっとも近縁で、G. nitidaと合わせた3種類が非常に近いグループを形成しているそうです。
まあ、2005年の論文を最初に読んだ時に、ゲノムサイズにそれほど大きな差はない様に見えました。差はありますが、非常に僅差です。G. batesianaは他のガステリアと差ははっきりあるように見えましたが、その他は微妙なところです。これは、根拠のない憶測ですが、ガステリア属の分布拡大の最前線にいるG. batesianaは適応のためにゲノムが複雑となりサイズが巨大化し、逆にG. rawlinsoniiは環境適応が完了したのでいらないゲノムを捨てたのかもしれません。

自生地
G. rawlinsoniiは南アフリカの東ケープ州Baviaanskloof山とKouga山でのみ見られるそうです。標高300~700mのミネラルの少ない日陰の多い断崖に生えます。岩の割れ目に根を伸ばして、長い茎を下に垂らして育ちます。最大1~2m程度まで伸びるということです。
しかし、本当に切り立った崖に張りつくように育ち、採取もまったく不可能なため、今のところ絶滅の心配はないようです。海外のサイトでは「自然によって十分に保護されている」という面白い書かれ方をしていました。
そういえば、土壌は弱酸性で意外と腐植土が豊富と言われています。しかし、この弱酸性というのは曲者で、酸性土壌とは別物だったりします。何せ"弱"とありますから、ほぼ中性付近と考えた方が良いでしょう。変に酸性土壌にしようとすると、上手くいかないかもしれません。
G. rawlinsoniiの生える崖にはBulbine cremnophila、Cyrtanthus montanus、Cyrtanthus labiatus、Haworthia gracilis var. picturara、Haworthiopsis viscosa、Plectranthus verticillatus、Othonna lobata、Cotyledon tomentosa、Adromischus cristatus var. zeyheri、Delorperma esterhuyseniae、Albuca cremnophilaなどが見られるとのことです。
ガステリア属は葉挿しで増やせますが、ラウリンソニーは葉挿しがあまり上手くできないと良く言われます。まったく出来ないわけではないようですが、難しいようです。これは、断崖に生えるため、取れた葉が活着出来ないからではないかと言われているみたいです。


育て方の謎
G. rawlinsoniiは国内ではまったくと言っていいほど情報がないため、海外のサイトを色々と閲覧しましたが中々育て方について参考となりそうな記事は見つけられませんでした。
ただ、G. pillansiiは茎が長く育ちますが、根元の古い葉はやがて枯れ落ちます。しかし、どうやら下葉の残り具合は様々なようです。何が違うのでしょうか?
それから、G. rawlinsoniiの沢山の写真を見ていて気が付いたのですが、仕上がりが綺麗な株は地植えが多い様な気がします。ここに育成のヒントがあるのかもしれません。もしかしたらですが、地植えだと根詰まりや土壌の酸性化が起きないため生長が早く、下葉が落ちる前に長く伸長しているのかもしれません。生長が緩やかだと、長く伸びる前に下葉が古くなってしまいますからね。原因がこれらの場合、鉢植えでは植え替えをこまめに行えばある程度は解決出来そうです。
あと、意外にも葉はやたらに深い緑色であることに気が付きました。思ったより強く遮光しているのでしょうか?  あまり遮光すると貧弱に育ってしまうかもしれませんから、これはこれで中々加減が難しそうです。
そういえば、Aloidendron dichotomum(=Aloe dichotoma)では、遮光して水多目で育てると下葉があまり落ちないで育ちますが、無遮光で乾燥させて育てると下葉は直ぐに落ちて常に先端の方だけに葉があるようになります。これも似たような現象かもしれません。

二列生
今回、G. rawlinsoniiについて海外のサイトをあちこち閲覧していた時に、やたらと"葉はdistichousである"と書かれていました。最初何のことだろう?と思いましたが、日本語では「二列生」と訳すようです。意味は、葉が互い違いに出て、左右に並ぶことだそうです。「ガステリア属の幼若植物は二列生だが、成熟するとロゼットを形成する種が多い」の様に使えます。大変便利な言葉ですね。

学名
ラウリンソニーの学名は1976年に命名されたGasteria rawlinsonii Oberm.です。Oberm.は南アフリカの植物学者であるAnna Amelia Mauve (旧姓 Obermeyer)のことです。南アフリカとローデシア(ジンバブエ)で採取した4000以上の植物をカタログ化したことで知らています。


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最近、ガステリアが気になって仕方ありません。まったくもって、すっかり流行りから外れた感のあるガステリアですが、だからといってその美しさや素晴らしさが減衰したなんてことはありません。そんなこんなで、じわじわガステリアを集めはじめていますが、最近記事にするようになってからは、論文も少し読んだりしています。そんな論文ですが、中々面白いことが書いてあり、特にガステリア・ピランシーの立ち位置が意外と重要かもしれないと考えさせられました。
ガステリア・ピランシーは南アフリカ西部に分布する大型のガステリアです。しかし、遺伝子解析の結果から、ピランシーはガステリア属の中でも系統的には原始的とされています。


DSC_1615
ピランシーの苗。

2021年に出た『Phylogeny of the Southern African genus Gasteria duval (Asphodelaceae) based on Sanger and next generation sequencing data』という論文では、何とガステリア属29種の遺伝子を解析して、系統関係を推測しています。シークエンス解析という遺伝子の配列を読む技術があるのですが、その中でもサンガー法という方法があり、そのサンガー法と新しいシークエンス技術で解析した論文です。ここでは、細かい技術的な話や系統解析の議論は省略して、最終的な結論のみを示します。種と種の関係性と、進化の道筋を示した分子系統です。

南アフリカを大まかに北西部、南西部、南部、南東部、北西部に分けると、それぞれの産地のガステリアは遺伝的に近いことが分かりました。面白いのは、ガステリア属は南アフリカの北西部で生まれて、①→②→③→④→⑤と西から東へ分布を拡げながら東進して様々な種に別れたように見えるのです。この系統の根元にある①北西部産ガステリアとはGasteria pillansiiのことです。

ガステリア属の分子系統
┏━━━━①北西部産ガステリア
┃                    (G. pillansii)
┫┏━━━②南西部産ガステリア
┃┃
┗┫┏━━③南部産ガステリア
    ┃┃
    ┗┫┏━④南東部産ガステリア
        ┗┫
            ┗━⑤北東部産ガステリア


②南西部産ガステリア
┏━━━━━━G. vlokii

┫    ┏━━━━G. koenii
┃┏┫
┃┃┗━━━━G. brachyphylla
┗┫
    ┃    ┏━━━G. thunbergii
    ┃┏┫
    ┃┃┗━━━G. carinata 
    ┗┫                      var. glabra
        ┃
        ┃┏━━━G. retusa
        ┗┫
            ┃┏━━G. carinata
            ┗┫
                ┃┏━G. langebergensis
                ┗┫
                    ┗━G. disticha

③南部産ガステリア
④南東部産ガステリア
⑤北東部産ガステリア
    ┏━━━━━━━③G. bicolor                          
┏┫                                         
┃┗━━━━━━━③G. rawlinsonii                 
┃                                             
┫┏━━━━━━━③G. nitida 
┃┃
┃┃         ┏━━━━④G. excelsa
┃┃     ┏┫
┃┃     ┃┗━━━━④G. pulchra
┃┃     ┃
┃┃┏ ┫ ┏━━━━④G. ellaphieae                         
┃┃┃ ┃ ┃ 
┃┃┃ ┃ ┃    ┏━━④G. polita
┗┫┃ ┗ ┫┏┫
    ┃┃      ┃┃┃┏━④G. acinacifolia
    ┃┃      ┃┃┗┫
    ┃┃      ┗┫    ┗━④G. barbae
    ┃┃          ┃
    ┃┃          ┃┏━━④G. armstrongii
    ┗┫          ┗┫
        ┃              ┃┏━④G. glauca
        ┃              ┗┫
        ┃                  ┗━④G. glomerata
        ┃
        ┃    ┏━━━━⑤G. croucheri
        ┃┏┫
        ┃┃┗━━━━⑤G. loedolffiae
        ┗┫
            ┃┏━━━━⑤G. tukhelensis
            ┗┫
                ┃┏━━━⑤G. batesiana
                ┗┫                      var. batesiana
                    ┗━━━⑤G. batesiana
                                               var. dolomitica

論文の内容はここまでとして、ピランシーの自生地の情報を調べて見ました。
ピランシーは"Namaqua gasteria"の名前の通り、ナマクアランドに生えます。分布で言うと、南アフリカとナミビア最西端です。ピランシーはアフリカ西岸に生える唯一のガステリアで、また冬に雨季がある地域なんだそうです。夏は40℃に達します。
ピランシーはナマクアランドの海岸の断崖から標高1000mまで見られ、低木の下や岩陰に生えます。pHは6.8~7.8ですから、どちらかと言えば弱アルカリ性で育つと言えます。
自生地では、根元から子を吹いて約150個体が密集して1mほどの塊となるそうです。
Clanwilliamの南では、Diospyros ramulosa(柿の仲間)やMontinia caryophyllacea(乾燥地の低木)の陰にピランシーは生え、Lampranthus thermarum(マツバギクの仲間)やTylecodon paniculatus("阿房宮")、Tylecodon reticulatus("万物想")、Cotyledon orbiculata、Stapelia hirsuta、Prenia pallensがともに生えます。
Port Nolloth地域のOograbies山では、ピランシーはTylecodon racemosusやTylecodon similis、Tylecodon schaeferianus("群卵")、Haworthia arachnoidea、Crassula hemisphaerica("巴")、Crassula columella、Conophytum stephaniiなどが生える、世界有数の多肉植物の産地に生えます。しかし、これだけ分布域が広く、しかも個体数が多いためまったく保護の必要はないとのことです。


ピランシーの学名は1910年に命名されたGasteria pillansii Kensitです。Kensitは南アフリカの植物学者、分類学者のHarriet Margaret Louisa Bolusです。Kensitは旧姓で、一般にはL.Bolusの略名で知られているかもしれません。L.Bolusはアフリカ多肉植物協会の副会長や南アフリカ王立協会のフェローなど歴任し、大変な業績のある人物のようです。
また、ピランシーには1929年に命名されたGasteria neliana Poellnという異名があります。
ピランシーには変種があり、2007年に命名されたGasteria pillansii var. hallii van Jaarsv.と、1992年に命名されたGasteria pillansii var. ernesti-ruschii (Dinter & Poelln.) van Jaarsv.があります。var. ernesti-ruschiiは1938年に命名された時はGasteria ernesti-ruschii Dinter & van Jaarsv.でしたが、現在はピランシーの変種となりました。
G. pillansii var. halliiは、Port Nolloth近くのOograbies山、G. pillansii var. ernesti-ruschiiはナミビア極北から知られています。



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レイストネリはナミビアとアンゴラのごく狭い地域に自生するユーフォルビアです。見た目からして地味なためか、基本的に売っていませんし、ネットの情報も国内だとほぼありません。海外のサイトでは多少の情報はありますが、それでもあまりないようです。
海外のサイトの情報だと、ナミビア北西とアンゴラ南西のKunene川付近に自生するとあります。もう少し詳しい情報はないかと調べていたら、1998年に出た『Euphorbia leistneri (Euphorbiaceae), a new species from the Kaokoveld (Namibia)』というレイストネリについて書かれた論文を発見しました。著者はR.H.Archerとあります。レイストネリは1998年に命名されたEuphorbia leistneri R.H.Archerですから、この論文がレイストネリが命名され世界に知られた第一報ということになります。ということで、この論文を簡単に紹介していきたいと思います。

DSC_1623
Euphorbia leistneri

DSC_1624
徐々に木質化していきます。

南アフリカのプレトリア国立植物園にある低木状ユーフォルビアであるE. leistneriは、ナミビアのKaokoveld北部のEpupa滝の近くで1976年にO.A.Leistner博士により収集されました。ただし、これはE. monteiroi(柳葉キリン)と間違われていたようです。レイストネリの名前は発見者のLeistner博士に対する献名です。

レイストネリの特徴は、まばらに枝分かれする低木です。葉は時計回りに螺旋状に10~20枚で、緑色の楕円形で25~30mm × 70~90mm。茎は細かい赤みを帯びた淡い緑色、葉の付け根に色素沈着があります。現地では12月から1月に開花し4月に種子を採取したとあります。花の特徴は分類学上では大変重要なので長々と解説してありますが、ここでは割愛させていただきます。

Kaokoveldは人里離れた山岳地帯で、116種の固有種あるいは固有種に近い植物が生えています。レイストネリはKunene川のEpupa滝の近くの狭い地域に非常に稀です。1997年の調査では200平方メートルの狭いエリアでしか見つからず、地元の住民に聞いても他では見たことがないとのことです。論文ではKunene川の両岸の更なる調査が必要としています。


現在、Kunene川では水力発電計画により自生地が消滅する可能性があり、今後地球上から野生のレイストネリが失われてしまうかもしれません。大変悲しいことですが、役に立たない植物より地元の人々の生活を優先するのは仕方のないことです。特にそれを遠く離れた便利な生活を享受している先進国の人間が批判することほど、地元の人々からしたら傲慢かつこれ程お門違いな話はないでしょう。もし、どうにかしたいのであれば、現地に行って保護活動をして、現地の人々が発電所開発で享受出来たはずの恩恵を、別の手段で代替するしかありません。まあ、そんな人はいませんから、どうにもならないでしょうね。


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臥牛と言えばガステリアの代表格です。ガステリア自体はあまり販売していませんが、臥牛の美しい品種はまだ見る方です。そんな臥牛の学名と言えば、Gasteria nitida var. armstrongiiとして知られています。しかし、最新の論文では臥牛はニチダの変種ではないとされています。どういうことなのでしょうか?

臥牛はニチダの変種であり、ネテオニーの可能性があると言わることもあります。ネテオニーとは日本語では幼形成熟ですが、例えば昔流行ったウーパールーパーなるサンショウウオがありましたが、あれは幼生のまま育って成熟したメキシコサラマンダーです。同様に、ニチダは幼体のうちは左右に葉が並びますが、育つと葉は旋回してアロエの様なロゼットを形成します。しかし、臥牛の葉は旋回しません。よって、臥牛はニチダの幼体のまま育ったものだと言うのです。
なぜ、その様に言われるのかは定かではありませんが、ニチダとアームストロンギイは分布域が重なり、Gamtoos river付近では混在するからかもしれません。

最新の遺伝的解析による分子系統を示します。2021年に出たPhylogeny of the Southern African genus Gasteria duval (Asphodelaceae) based on Sanger and next generation sequencing data』という論文です。
G. nitidaはG. rawlinsonii、G. bicolorと近縁とされます。しかし、アームストロンギイは必ずしもニチダに近縁ではないため、G. armstrongiiとして独立種とされています。そのG. armstrongiiは、G. glaucaやG. glomerataと近縁であり、G. polita、G. acinacifolia、G. barbaeと姉妹群を形成しています。


    ┏━━━━━━━G. bicolor                          
┏┫                                         
┃┗━━━━━━━G. rawlinsonii                 
┃                                             
┫┏━━━━━━━★G. nitida 
┃┃
┃┃         ┏━━━━G. excelsa
┃┃     ┏┫
┃┃     ┃┗━━━━G. pulchra
┃┃     ┃
┃┃┏ ┫ ┏━━━━G. ellaphieae                         
┃┃┃ ┃ ┃ 
┃┃┃ ┃ ┃    ┏━━G. polita
┗┫┃ ┗ ┫┏┫
    ┃┃      ┃┃┃┏━G. acinacifolia
    ┃┃      ┃┃┗┫
    ┃┃      ┗┫    ┗━G. barbae
    ┃┃          ┃
    ┃┃          ┃┏━━★G. armstrongii
    ┗┫          ┗┫
        ┃              ┃┏━G. glauca
        ┃              ┗┫
        ┃                  ┗━G. glomerata
        ┃
        ┃    ┏━━━━━G. croucheri
        ┃┏┫
        ┃┃┗━━━━━G. loedolffiae
        ┗┫
            ┃┏━━━━━G. tukhelensis
            ┗┫
                ┃┏━━━━G. batesiana
                ┗┫                     var. batesiana
                    ┗━━━━G. batesiana
                                             var. dolomitica

私が学名の根拠としている『The World checklist of Vascular Plants』によると、臥牛はGasteria nitida var. armstrongiiとなっています。しかし、その根拠は2003年の『Plants of Southern African  : an annotated checklist.』と『World Checklist of Seed Plants Database in Access G』によります。
しかし、これらは最新情報に改定を繰り返しますから、次の改定では学名が変わるかもしれませんね。
ニチダの学名は1817年に命名されたAloe nitida Salm-Dyckが最初ですが、1827年にはGasteria nitida (Salm-Dyck) Haw.となり、これが現在認められている学名です。1830ににはHaworthia nitida (Salm-Dyck) G.Donも提唱されましたが、認められておりません。
臥牛の学名は1912年に命名されたGasteria armstrongii 
Schönlandですが、1992年にはGasteria nitida var. armstrongii (Schönland) van Jaarsv.とされました。果たして最新の研究結果からG. armstrongiiが認められるのでしょうか。その場合、昔の学名に戻ることになりますね。

DSC_1614
Gasteria armstrongii GM07c-5
フィールドナンバー付き。典型的な臥牛ではありませんが、これはこれで個性的。


臥牛はJeffreys Bayと東ケープ州のGamtoos riverに分布します。臥牛はガステリアの自生地に多い崖地ではなく、小石が多い平坦あるいは丘陵地に自生するようです。自生地には、Pachypodium bispinosum、Boophone disticha、Bergeranthus glenensis、Euphorbia gorgonis、Freesia alba、Crassula tetragona subsp. acutifoliaが見られるとのことです。
しかし、臥牛は野生株は絶滅危惧IA類という最も高いレベルの危機に瀕しています。臥牛は平坦地に生えることから採取しやすく、園芸的に人気があるため盗掘の被害にあっているそうです。また、平坦地ということで、農業用地として開拓されてしまうことにより、自生地が失われています。人の生活圏と生息地が重ってしまうと、生息地が失われて危機に瀕するというのはよくある話ですが、多肉植物好きとしてはとても悲しく思います。





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先週、Gasteria glomerataについての記事をまとめました。その記事のコメント欄で、Gasteria batesiana var. dolomiticaについてリクエストがありました。
調べてみますと中々面白いガステリアであることは分かりました。しかし、私自身はドロミチカを育てておりませんから、写真もないし記事としてはややつまらないのではと思いまして、ガステリアについて書かれた論文の軽い紹介も含め一つの記事とさせていただきます。

バテシアナとドロミチカ
さて、ドロミチカの基本情報の紹介です。しかし、ドロミチカはバテシアナの変種ですから、バテシアナについても解説します。そういえばバテシアナは「春鶯囀」なる名前がつけられていますね。
ここで一つ注意しなければならないことがあります。Gasteria batesianaは、Gasteria batesiana var. batesianaのことを言っている場合と、G. batesiana var. batesianaとG. batesiana var. dolomiticaを合わせた総称のことを言っている場合があります。学術的には単にGasteria batesianaと書いた場合は変種も全て含めた総称ですが、園芸的・あるいは趣味家がGasteria batesianaと書いた場合はvar. batesianaのことを言っています。ですから、園芸的には、春鶯囀=G. batesiana var. batesianaと、G. batesiana var. dolomiticaがあって区別しますが、var. batesianaは省略されて単にG. batesianaと表記されてしまいます。実にややこしいですね。
ですから、ここで言うバテシアナはvar. batesianaとvar. dolomiticaを合わせた解説と思って下さい。

分布域
バテシアナの分布はKwaZulu-Natal北部のTukhela (Tugela) riverの北部からLimpopo州のOlifants riverまでの内陸部の断崖の東側に自生します。実はバテシアナはガステリア属の中で最も北に自生する種であることが知られています。その中でもドロミチカはMpumalangaの切り立ったドロマイトの崖に自生しますが、ドロミチカはバテシアナの中でも自生地は最北端にあるとのことです。

ドロマイトについて
ここで一つドロマイトについて、考えたいことがあります。ドロマイトは苦灰石あるいは白雲石と呼ばれますが、苦灰石の苦(苦土)=マグネシウム、灰(石灰)=カルシウムを示しています。つまり、ドロマイトはマグネシウムとカルシウムを含んだ鉱物であるということです。ドロマイトはカルシウムを含むためアルカリ性ですが、このアルカリ性かつマグネシウムを含むという特徴はかなり重要なことに思えるのです。

畑に野菜などを作る時に石灰を撒きますが、あれは酸性に傾きすぎた土をアルカリ性で中和するためです。別に土をアルカリ性にしているわけではありません。微生物の働きで酸が出来ます。さらに、植物の根からも酸が出ますから、土はやがて酸性が強くなり、植物の栽培に適さなくなります。ですから、石灰を撒くわけです。
ただし、水田に鉄分とケイ素補給のために撒く「ケイカル」を畑に撒くと、土は何年もアルカリ性になります。しかし、土がアルカリ性だと何故か作物の出来がいまいちとなり勝ちでした。その原因は、アルカリ性だとマグネシウムの吸収が悪くなるためと考えられています。

現在戦火に見舞われているウクライナは昔から優れた穀倉地帯として有名ですが、土壌はアルカリ性です。何故、作物が育つのでしょうか。それは土壌にマグネシウムが豊富に含まれているからです。日本の土壌はミネラルが余りありませんから、マグネシウムを畑に撒けばアルカリ性でも問題なく作物は育ちます。話をまとめると、土壌がアルカリ性だとマグネシウムの吸収を阻害するものの、マグネシウムが豊富なら問題はないということです。

よって、ドロマイトはアルカリ性ですが、マグネシウムを含むためドロミチカは生育できるのではないかということです。ドロミチカの栽培はアルカリ性にした方が良いかは分かりませんが、もし石灰を撒いてアルカリ性にするならば、マグネシウムもあった方が良いいと思います。やはり、ただの石灰ではなくマグネシウムが豊富な苦土石灰が良いのではないでしょうか? 苦土石灰は苦土=マグネシウム、石灰=カルシウムですが、これは苦灰石(ドロマイト)と同じですね。調べたところ、なんと苦土石灰はドロマイトを粒状に加工したものとのことです。苦土石灰を与えることが、ドロミチカの生育にプラスになるかもしれません。


保全状況
学術調査によるとバテシアナは自生地では非常に希な植物とのことです。しかし、現地ではバテシアナは薬用植物として利用されています。詳細は書かれていませんでしたが、ただの薬草ではなく呪術的な意味合いがあるようです。アフリカには呪術医(ウイッチドクター)がおり、未だに幅を利かせていますからね。まあ、それでもバテシアナは崖に生えますから、採取できない高さにあるものは無事とのことです。いずれにせよ、珍しい植物であることは間違いありません。

新しい論文
ガステリア属は見分けるべき特徴が少なく、皆良く似ているため、学者泣かせの植物です。生長に伴い葉の形が変わったりもしますから、その分類や系統関係の推測はさらに難しいものとなっています。
2021年に出た『Phylogeny of the Southern African genus Gasteria duval (Asphodelaceae) based on Sanger and next generation sequencing data』という論文では、何とガステリア属29種の遺伝子を解析して、系統関係を推測しています。ただし、この論文は100ページを超える大部なもので、まだ全てを読めてはいません。とりあえず、バテシアナについてのみ見てみると、以下の様な系統となっています。


        ┏━━G. batesiana
    ┏┫            var. dolomitica
    ┃┗━━G. batesiana
┏┫                var. batesiana
┃┗━━━G. tukhelensis

┃┏━━━G. croucheri
┗┫
    ┗━━━G. loedolffiae

この系統図を見た時に、おやっと思いました。南アフリカの東側のガステリアの分布と、分子系統がぴったり合っているからです。南アフリカのガステリアは東側では、G. loedolffiae→G. croucheri→G. tukhelensis→G. batesiana→G. batesiana var. dolomiticaという順番で北東に並ぶように分布します。どうやら、南アフリカの南端から東側にガステリア属が分布を拡げたようです。現在、その最先端がドロミチカと言えるのかもしれません。

鳥媒花
ガステリア属は鳥に花粉を運んでもらう鳥媒花です。それは、ドロミチカも同様です。花粉を運ぶのは、蜜を吸いにくるタイヨウチョウです。ちなみに、タイヨウチョウは南アフリカに21種類いるそうです。

面白い増えかた
ドロミチカは葉先が土に触れると、なんと葉先から子を吹く性質があります。葉が反り返る形状からして、地面に葉先が触れる事が多いのかもしれません。根元からのみ子吹きするよりも、少し離れた場所に新しい株が定着すれば、分布を拡大するに当たって有利なのでしょう。

学名
バテシアナの学名は1955年に命名されたGasteria batesiana G.D.Rowleyです。ドロミチカは1999年に命名されたGasteria batesiana var. dolomitica van Jaarsv. & A.E.Wykです。命名者はともに南アフリカの植物学者であるErnst van JaarsveldとAbraham Erasmus van Wykです。 



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最近、ホームセンターなどで"インコンスタンチア"という多肉ユーフォルビアを売っていたりします。私もホームセンターで入手しました。外見上は紅彩閣とか勇猛閣に良く似ています。ネット上でも、あまり情報はないようです。
そんな折り、2012
年に発表された『Normenclature and typification of southern African species of Euphorbia Bothalia』という論文を読んでいたところ、蒼蛮閣が自然交雑種であるとあり、前にその事を記事にしました。そして、この論文にはインコンスタンチアについても記述がありましたので、ついでに記事にしてみました。

蒼蛮閣についての記事はこちら。

DSC_1602
インコンスタンチア
学名は一般的にEuphorbia inconstantiaとされています。論文によると、インコンスタンチアは紅彩閣とポリゴナの交雑種とされています。この論文を承けて『The World Checklist of Vascular Plants』において、インコンスタンチアの学名はEuphorbia ×inconstantiaとされるようです。自生地で自然におきた属内交雑種ですね。
さて、ではその交雑親を見てみましょう。


DSC_0716
紅彩閣 Euphorbia heptagona
紅彩閣の学名はヘプタゴナです。しかし、紅彩閣はE. enoplaとされることが多く、一般的にエノプラという名前で売られています。
エノプラの命名は1860年ですが、ヘプタゴナの命名は1753年です。命名は早い方が優先ですから、ヘプタゴナが正式な学名となり、エノプラは異名(シノニム)です。
ちなみに、紅キリンE. aggregataがエノプラの名前で売られることがあったみたいですが、あまり似ていません。

DSC_1528
紅キリン Euphorbia aggregata
紅キリンは関係ありません。

DSC_1529
ポリゴナ Euphorbia polygona
ホリダE. polygona var. horridaはよく売っていますが、ポリゴナはあまり見ませんね。現在ではホリダはポリゴナの変種とされています。
私のポリゴナは生長点が傷付いたため生長が止まりましたが、その代わりにやたらと仔吹きしています。

そう言われて見れば、インコンスタンチアのトゲは、形は紅彩閣ですが、ホリダのトゲの様に節くれだっています。自然交雑種というのも、割りと納得かもしれませんね。


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2014年に出た『
A Molecular Phylogeny and Generic Classification of Asphodelaceae Subfamily Alooideae : A Final Resolution of the Prickly Issue of Polyphyly in the Alooids?』という論文の紹介です。昨日は、アロエ属、ハウォルチア属、クマラ属について解説しました。今日はその続きです。

アストロロバ属とツリスタ属
アストロロバ属は硬葉系ハウォルチア=ハウォルチオプシスの縦長に変形したパターンに見えますから、ハウォルチオプシスの中から出てきたグループに思えます。同様にツリスタ属もハウォルチオプシスの中の1グループに思えます。しかし、実際にはアストロロバもツリスタもハウォルチオプシスとは近縁ではあるものの、ハウォルチオプシスと姉妹群を形成するのはガステリア属であり、アストロロバとツリスタは旧アロエ属のゴニアロエ属やアリスタロエ属と姉妹群を形成することが分かりました。
ガステリア属やアストロロバ属は非常によくまとまったグループです。対してゴニアロエ属やアリスタロエ属は、やや不確実とみられています。ポエルニッチア属をアストロロバ属に含めるという考え方と同様に、ゴニアロエ属とアリスタロエ属をツリスタ属に含めるべきであるという意見もあるようです。
アストロロバ属の花は特異的で、他グループと明らかに異なるます。さらに、ポエルニッチア属とされることもあるAstroloba rubrifloraは、アストロロバとしては特異的な花ですが、鳥媒花として特殊化したアストロロバとされます。
ハウォルチオプシス属は3つのグループがあるように見えます。コエルマニオルムは葉緑体と核の遺伝子解析結果が異なり、やや混乱した結果です。しかし、花の構造の類似性からハウォルチオプシス属に含めるとしています。


    ┏━━━━Gasteria
    ┃
┏╋━━━━Haworthiopsis①
┃┃
┃┗━━━━Haworthiopsis②

┫┏━━━━Haworthiopsis koelmaniorum
┃┃
┃┃        ┏━Tulista
┃┃    ┏┫
┗┫    ┃┗━Gonialoe
    ┃┏┫
    ┃┃┗━━Aristaloe
    ┗┫
        ┗━━━Astroloba

DSC_1412
Astroloba spiralis

DSC_1389
Haworthiopsis koelmaniorum

DSC_1508
Tulista kingiana

DSC_1507
Tulista minor(=Tulista minima)

DSC_0900
Gonialoe variegata(=Aloe variegata)

DSC_0151
Aristaloe aristata(=Aloe aristata)

ガステリア属
ガステリア属は非常にまとまりのあるグループです。花は赤系統で、まさにgaster=胃のような形の花が咲きます。ガステリア属の特異的な花は、受粉を鳥が行うために特化した形のようです。植物分類学では花の形態を指標としてきましたが、アロエ類の分類には使えないようです。アロエ属は鳥と昆虫が受粉しますが、ハウォルチア属は昆虫による受粉へ、ガステリア属は逆に昆虫媒花から鳥媒花に回帰したグループです。
ガステリア属は最近手をだし始めたばかりですが、手持ちのG. carinataやG. pillansiiは分子系統の根元にあり、あるいはやや原始的な種なのかもしれません。根元から先の分類は、一例に並んでいてあまり系統関係をみれていないようです。短期間に進化した可能性があります。

ガステリア属の分子系統
                ┏━Gasteria disticha
            ┏┫
            ┃┗━Gasteria polita
        ┏┫
        ┃┗━━Gasteria doreeniae
        ┃
        ┃┏━━Gasteria obliqua
        ┣┫
        ┃┗━━Gasteria rawlinsonii
        ┃
        ┃┏━━Gasteria glauca
        ┣┫
        ┃┗━━Gasteria glomerata
        ┃
        ┃┏━━Gasteria pulchra
        ┣┫
        ┃┗━━Gasteria tukhelensis
        ┃
        ┣━━━Gasteria acinacifolia
    ┏┫ 
    ┃┣━━━Gasteria nitida var. armstrongii
    ┃┃
    ┃┣━━━Gasteria batesiana
    ┃┃
    ┃┣━━━Gasteria ellaphieae
    ┃┃
┏┫┣━━━Gasteria excelsa
┃┃┃
┃┃┗━━━Gasteria vlokii
┃┃
┫┃┏━━━Gasteria carinata
┃┗┫
┃    ┗━━━Gasteria croucheri

┗━━━━━Gasteria pillansii


DSC_1514
Gasteria pillansii

DSC_1513
Gasteria glomerata

DSC_1462
Gasteria ellaphieae

DSC_1463
Gasteria vlokii

DSC_1420
Gasteria carinata

ハウォルチオプシス属
ハウォルチオプシス属はガステリア属の姉妹群です。葉緑体の遺伝子解析ではH. koelmaniorumはアストロロバ属やツリスタ属に近縁な様にみえますが、核の遺伝子解析ではH. venosaに近縁となっています。今後、さらに詳細な解析が必要でしょう。
白いイボを持つH. fasciataやH. attenuataから、白いイボを持ち縦長に伸びるH. reinwardtii(鷹の爪)やH. coarctata(九輪塔)が進化してきたのではないかと思っていましたが、必ずしもそうではないことが分かりました。それどころか、非常によく似たH. fasciataとH. attenuataは、葉緑体の遺伝子解析でも核の遺伝子解析でも、ハウォルチオプシス属の中ではそれほど近縁ではないことが分かりました。個人的には大変な驚きです。

ハウォルチオプシス属の分子系統
┏━━━━━━━Gasteria

┃                    ┏━Haworthiopsis reinwardtii
┃                ┏┫
┃                ┃┗━Haworthiopsis nigra
┃            ┏┫
┃            ┃┗━━Haworthiopsis coarctata
┃        ┏┫
┃        ┃┗━━━Haworthiopsis glauca
┃    ┏┫
┃    ┃┣━━━━Haworthiopsis bryunsii
┃    ┃┃  
┃┏┫┗━━━━Haworthiopsis sordida
┃┃┃
┃┃┃┏━━━━Haworthiopsis fasciata
╋┫┗┫
┃┃    ┗━━━━Haworthiopsis longiana
┃┃
┃┗━━━━━━Haworthiopsis limifolia

┃┏━━━━━━Haworthiopsis venosa
┗┫
    ┗━━━━━━Haworthiopsis attenuata


DSC_0837
Haworthiopsis reinwardtii f. kaffirdriftensis

DSC_0833
Haworthiopsis fasciata

DSC_1547
Haworthiopsis attenuata

最後に
ここまで長々とアロエ類の分類について、論文の内容を私の要らん感想を交えながら解説してきました。しかし、実を言えばこの論文が最終的な解答ではないのかもしれません。この論文では5つの遺伝子を調べていますが、遺伝子によっては種の系統関係が異なる結果となっています。遺伝子解析も万能ではありません。もっと沢山のデータを蓄積し、過去のデータとの整合性を高める努力が必要です。現在でも研究は進行しているのでしょうし、最新情報に更新され続けていくのでしょう。この論文も議論があるのでしょうし、再試験によるチェックも受けるでしょう。
しかし、種同士の関係性はまだしも、全体的な属同士の系統関係はほぼ判明したと言っても良いのではないでしょうか。部分的に怪しい部分はありますが、かつての分類体系に戻ることはないでのしょう。

さて、遺伝子解析によるアロエ・ハウォルチアの分類について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか? いいや、こんなものは認めんという方もおられるかもしれませんが、一つの考え方として提示させていただきました。善かれ悪しかれ、興味を持っていただけたのでしたら誠に幸いです。
これからも、面白い論文を見つけましたら、ぼちぼち紹介していきたいと思います。




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かねてより、私のブログでことあるごとに、アロエ属やらハウォルチア属やらが再編されて、ゴニアロエ属だのクマラ属だのハウォルチオプシス属だのツリスタ属が分離して云々と聞かれてもいないのにうるさく書いてきました。しかし、いったい何の根拠があってそんなことを言っているのか疑問に思う方も、もしかしたらおられるかもしれません。まあ、どうでも良いと言われてしまいそうですが…

遺伝子を調べる
私がその根拠としているのは、2014年に出た『A Molecular Phylogeny and Generic Classification of Asphodelaceae Subfamily Alooideae : A Final Resolution of the Prickly Issue of Polyphyly in the Alooids?』という論文です。適当に訳すと「ツルボラン科アロエ亜科の分子系統学と一般分類 : アロエ類における多系統の厄介な問題の最終的な解決?」といったところでしょうか。要するにアロエ類(アロエやハウォルチア、ガステリアなどの仲間の総称)の遺伝子を調べて、その近縁を解析しているわけです。

内容について見てみましょう。冒頭は解析した遺伝子について述べられています。遺伝子解析というと全ての遺伝子を調べる様に思えますが、実はそうではなくて特定の遺伝子の配列のみを調べるのです。この論文では、光合成に関わる葉緑体の4つの遺伝子と、細胞核の1つの遺伝子を解析しているようです。1つの遺伝子では不確実ですが、複数の遺伝子解析の結果が符合すれば確実性が増します。もしかしたら、調べる対象の得手不得手をカバーする目的もあるのかも知れません。


吸収された分類群
アロエ類は伝統的にアロエ属、ハウォルチア属、ガステリア属、アストロロバ属に分けられてきました。さらに、ロマトフィルム属とコルトリリオン属、さらにポエルニッチア属を認める考え方もあります。

1, ロマトフィルム Lomatophyllum
ロマトフィルムは1811年に命名されました。マダガスカル周囲の島嶼部に分布し、果実が多肉質であることでアロエから区別されました。調べた限りではロマトフィルム属とされたことがあるのは28種類でした。しかし、そのうち3種類はドラセナ(Dracaena)で、6種類は同一種とされています。現在ではアロエ属とされています。


2, コルトリリオン Chortolirion
コルトリリオンが最初に命名されたのは1908年です。コルトリリオンは一見して球根植物の様な外見をしています。花はハウォルチアに良く似ていて、19世紀に命名された種は、実際にハウォルチアとされました。
が確認したコルトリリオンは6種ですが、現在は全てアロエ属とされています。調べた限りではChortolirion angolenseはAloe welwitschii、Chortolirion subspicatumはAloe subspicata、Chortolirion latifoliumはAloe jeppeae、Chortolirion bergerianum=Chortolirion stenophyllum=Chortolirion tenuifoliumはAloe bergerianaとされているようです。

アロエの分子系統
ロマトフィルムやコルトリリオンは、アロエ属の中に組み込まれています。L. anivoranoensisのとなりにA. haworthioidesがありますが、となりに書いてあるから、より近縁というわけではありません。A. haworthioidesなどは兄弟姉妹みたいなもので、今はまだ誰が兄で誰が弟かは分かりません。さらに細かく調べれば、それも分かるかもしれません。アロエ属に絞って解析した論文があるかもしれませんから、見つけたらまた記事にします。
※アロエ属全種類を調べてはいません。
                        ┏ ━Aloe nubigena
                        ┃
                    ┏╋━Aloe kniphofioides
                    ┃┃
                    ┃┗━Aloe ecklonis
                    ┃
                    ┣━━Aloe fouriei
                    ┃
                    ┣━━Aloe challisii
                    ┃
                    ┣━━Aloe vossii
                    ┃
                ┏╋━━Aloe verecunda  
                ┃┃
                ┃┣━━Aloe ferox
                ┃┃
                ┃┣━━Aloe thraskii
                ┃┃
            ┏┫┣━━Aloe excelsa
            ┃┃┃
            ┃┃┣━━Aloe arborescens
            ┃┃┃
            ┃┃┗━━Aloe saundersii
            ┃┃
            ┃┗━━━Aloe petricola
            ┃
            ┃┏━━━Aloe reynoldsii
            ┃┃
            ┃┣━━━Aloe striata
            ┣┫
            ┃┣━━━Aloe kouebokkeveldensis
            ┃┃
            ┃┗━━━Aloe buhrii
            ┃
            ┃    ┏━━Aloe brevifolia
            ┃┏┫
            ┃┃┗━━Aloe lineata
            ┣┫
            ┃┗━━━Aloe chabaudii
            ┃
            ┃┏━━━Aloe succotrina
            ┃┃
        ┏╋┫┏━━Aloe glauca
        ┃┃┃┃
        ┃┃┗┫┏━Aloe microstigma
        ┃┃    ┗┫
        ┃┃        ┗━Aloe pictifolia
        ┃┃
        ┃┃┏━━━Aloe spicata
        ┃┣┫
        ┃┃┗━━━Aloe lutescent
        ┃┃
    ┏┫┣━━━━Lomatophyllum anivoranoensis
    ┃┃┃                  (=Aloe anivoranoensis)

    ┃┃┣━━━━Aloe haworthioides
    ┃┃┃
    ┃┃┣━━━━Aloe comosa
    ┃┃┃
    ┃┃┣━━━━Aloe rupestris
    ┃┃┃
    ┃┃┣━━━━Aloe angelica
    ┃┃┃
    ┃┃┣━━━━Aloe vryheidensis
    ┃┃┃
    ┃┃┣━━━━Aloe hereroensis
    ┃┃┃
    ┃┃┗━━━━Aloe munchii
    ┃┃
┏┫┗━━━━━Chortolirion angolense
┃┃                                  (=Aloe angolense)

┃┃┏━━━━━Aloe chortolirioides
┃┃┃
┃┃┣━━━━━Aloe propagulifera
┃┃┃
┃┃┣━━━━━Aloe alooides
┃┃┃
┃┣╋━━━━━Aloe albida
┫┃┃
┃┃┣━━━━━Aloe perfoliata
┃┃┃
┃┃┣━━━━━Aloe dewinteri
┃┃┃
┃┃┗━━━━━Aloe arenicola
┃┃
┃┗━━━━━━Aloe melanacantha

┗━━━━━━━Aloe pearsonii

3, ポエルニッチア Poellnitzia
ポエルニッチアは最初に命名されたのは1940年です。ポエルニッチアはただ1種類のPoellnitzia rubrifloraがあり、赤系統の花を咲かせます。アストロロバに良く似ていますが、アストロロバはみな白花ですから、ルブリフロラ(rubri=赤い、flora=花)は特異的です。2000年にルブリフロラをアストロロバとする意見があり、現在ではルブリフロラはAstroloba rubrifloraが正式な学名です。しかし、未だにポエルニッチアを認める立場の研究者もいるそうです。
この論文ではルブリフロラはアストロロバに吸収されています。何でも、ルブリフロラは鳥が受粉を行っており、花はそれに合わせて変化したもののようです。

DSC_0982
Poellnitzia rubriflora
=Astroloba rubriflora


アストロロバの分子系統
アストロロバはポエルニッチアを含め、非常によくまとまったグループです。アストロロバはツリスタ+アリスタロエ+ゴニアロエと姉妹群を形成します。
    ┏━━━Gonialoe
    ┃
┏┫┏━━Tulista
┃┗┫
┃    ┗━━
Aristaloe
┃       
┫        ┏━Astroloba corrugata
┃    ┏┫
┃┏┫┗━Astroloba herrei
┃┃┃
┗┫┗━━Astroloba foliolosa
    ┃
    ┗━━━Poellnitzia rubriflora
                   (=Astroloba rubriflora)


分離した分類群
既存の分類群に吸収されたというか、元の鞘に戻ったものがいる一方、分離されたものもあります。先ずはアロエ属から分離した、アリスタロエ属、ゴニアロエ属、クマラ属、アロイアンペロス属、アロイデンドロン属です。さらに、ハウォルチア属から分離したハウォルチオプシス属とツリスタ属があります。
近縁関係でいうと、クマラ属とハウォルチア属、アストロロバ属とアリスタロエ属とゴニアロエ属とツリスタ属、ハウォルチオプシス属とガステリア属はそれぞれグループを形成しています。
私が思うに、アロエ類の進化は葉が柔らかいアロイデンドロン属からアロエ属までと、葉が硬いアストロロバ属からガステリア属があるという風に理解しています。アロエ属には葉が柔らかいものと硬いものとがあり、アロエ属から別れたグループ(アストロロバ、アリスタロエ、ゴニアロエ、ツリスタ、ハウォルチオプシス、ガステリア)の葉はみな硬いということに、進化的な意味があるような気がします。

アロエ類の系統図
┏━━━━━━━━Aloidendron属

┫    ┏━━━━━━
Kumara属
┃┏┫
┗┫┗━━━━━━Haworthia属
    ┃
    ┃┏━━━━━━Aloiampelos属
    ┃┃
    ┗┫┏━━━━━Aloe属
        ┃┃
        ┗┫    ┏━━━Astroloba属
            ┃    ┃
            ┃┏┫┏━━Aristaloe属
            ┃┃┃┃
            ┃┃┗┫┏━Gonialoe属
            ┃┃    ┗┫
            ┗┫        ┗━
Tulista属
                ┃
                ┃┏━━━Haworthiopsis属
                ┗┫
                    ┗━━━Gasteria属


クマラ属とハウォルチア属
クマラ属とハウォルチア属は近縁です。ここでいうハウォルチアは軟葉系ハウォルチアのことで、硬葉系ハウォルチアと呼ばれたハウォルチオプシス属とツリスタ属を含みません。クマラ属はかつてアロエ属でしたが、アロエ属とは系統的に離れています。クマラ属とハウォルチア属はともにイボやトゲがないグループです。
顕花植物の分類は基本的に花の構造により行われてきました。しかし、ハウォルチア型の花はハウォルチア属、ハウォルチオプシス属、コルトリリオン属(=アロエ属)で共通していますから、これらは系統的に近縁と考えられてきました。しかし、分子系統解析の結果から、ハウォルチア型の花はそれぞれ独立して進化したことが分かりました。花の蜜成分の含有量においても、異なるという報告もあり、花の類似は収斂進化の結果なのかもしれません。ハウォルチア型の花は昆虫媒花の結果として進化したようです。
クマラ属はKumara plicatilis(=Aloe plicatilis)とKumara haemanthifolia(=Aloe haemanthifolia)がありますが、この2種を比較するとやや離れています。とは言うものの、
他のアロエ属と比較した場合には近縁ですから、この2種がまとまったグループであることは間違いないのでしょう。もしかしたら、過去に2種の間を埋めるような絶滅種がいたのかもしれません。

ハウォルチア属の分子系統
                    ┏━Haworthia bayeri
                    ┃
                ┏╋━Haworthia cymbiformis
                ┃┃
                ┃┗━Haworthia cooperi
                ┃
                ┃┏━Haworthia semiviva
                ┃┃
            ┏┫┣━Haworthia mucronata
            ┃┃┃
            ┃┗╋━Haworthia lockwoodii
            ┃    ┃
        ┏┫    ┣━Haworthia arachnoidea
        ┃┃    ┃
        ┃┃    ┗━Haworthia decipiens
        ┃┃
        ┃┗━━━Haworthia marxii
        ┃
        ┃┏━━━Haworthia mirabilis
        ┃┃
        ┃┣━━━Haworthia herbacea
        ┃┃
        ┣╋━━━Haworthia reticulata
        ┃┃
        ┃┣━━━Haworthia retusa
        ┃┃
        ┃┣━━━Haworthia mutica
        ┃┃
        ┃┗━━━Haworthia maculata
        ┃
        ┃┏━━━Haworthia truncata
        ┃┃
        ┣╋━━━Haworthia zantneriana
        ┃┃
        ┃┣━━━Haworthia vlokii
        ┃┃
    ┏┫┗━━━Haworthia outeniquensis
    ┃┃
    ┃┃┏━━━Haworthia chloracantha
    ┃┃┃
    ┃┃┣━━━Haworthia pygmaea
    ┃┃┃
    ┃┣╋━━━Haworthia variegata
    ┃┃┃
    ┃┃┣━━━Haworthia floribunda
    ┃┃┃
    ┃┃┗━━━Haworthia emelyae
    ┃┃
    ┃┗━━━━Haworthia wittebergensis
    ┃
    ┗━━━━━Haworthia blackburniae


DSC_0889
Haworthia mucronata

DSC_0848
Haworthia herbacea

DSC_0767
Haworthia arachnoidea

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Haworthia cooperi

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Kumara plicatilis
=Aloe plicatilis


記事が長くなったので、2つに分けます。


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去る昨年の12月、"クラビラマ"なる名札の付いたユーフォルビアについて記事にしました。この時の記事は単純に育ってきたぞ、というだけの内容でしたが、その後わかったことがありましたから記事にしました。


事の経緯は、2020年の2月にふらふらと多肉植物に引き寄せられて、ガーデンセンター横浜に遊びにいった時の事です。何やら見慣れない多肉植物があったので購入しましたが、上述の如く"クラビラマ"という名前のユーフォルビアでした。
調べると、これはEuphorbia curviramaであり、"蒼蛮閣"なる名前もあることがわかりました。まあ、その時は、"クラビラマ"というよりは、"クルビラマ"だよなぁなんて思ったりしましたが。

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蒼蛮閣 

しかし、2012年に発表された『Normenclature and typification of southern African species of Euphorbia Bothalia』という論文を見ていたら、中々面白いことが書いてありました。何でも、クルビラマは属内交雑種と考えられているとあります。これは、誰かが交配してできた園芸品種ではなくて、原産地で自然と交雑が起きているということのようです。交雑の親は、Euphorbia caerulescensEuphorbia triangularisとされています。これを根拠として、『The World Checklist of Vascular Plants』は、クルビラマの学名をEuphorbia ×curvirama R.A.Dyerとしています。「×」は交配を示す記号です。

いやはや、知らないことばかりで困ってしまいますね。いや、私が無知なだけかもしれませんが、探すと新しい論文が沢山出ていて目が滑ります。これからも、ちまちま情報を集めて記事にしていきたいと考えております。




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ツリスタをご存知ですか?
ツリスタ属Tulistaは2013年にハウォルチアから分離されて出来ました。かつてはハウォルチアの中でも硬葉系ハウォルチアと呼ばれる仲間の一員でした。しかし、ツリスタ属自体が新しいこともあり、それほど浸透しておりません。今でもハウォルチアとして販売されています。そんな、ツリスタについて調べてみましたので、ご紹介します。

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Tulista minor 
      (Aiton) Gideon F.Sm. & Molteno
※swellens


ツリスタ収集中
そんなツリスタですが、ツリスタ属自体が有名ではないのと、ハウォルチア時代から元々人気があったわけではないので、ネット検索してもあまり情報はありません。「ツリスタ」で検索すると、まず釣りのゲームが出て来てしまうほどです。むしろ、"Tulista"で検索して海外のサイトを見た方が情報が出て来ます。
私はかつて硬葉系ハウォルチアと呼ばれていたハウォルチオプシスHaworthiopsisとツリスタTulistaは個人的に大好きで、じわじわ集めています。特に渋いツリスタはあまり販売していないこともあって、出会ったら優先的に購入するようにしています。
しかし、ツリスタは残念ながら大人気というわけではないので、入手が中々困難です。まあ、ネットで探せば入手可能でしょうが、私はあえてネットでの多肉植物の購入に制限をかけていて、イベントや園芸店で直接見て手にしたものだけを購入することにしています。これは、実際に見ないと品質がとかネット詐欺がとかではなく、ネット通販に手を出したら際限なく買ってしまいそうだからです。そうでなくても置き場が狭いのに、買うだけ買って育てられないでは困りますから。とはいえ、イベントで実物を手にとって見るのがとても楽しくて好きだからということも大事な理由ですけどね。

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Tulista marginata
                (Lam.) G.D.Rowley


ツリスタの復活
ツリスタは基本的にはじめに命名された時はアロエで、次はハウォルチアとされ、最後にツリスタという経緯をたどってきました。それぞれの属の創設年は以下の通りです。
1753年 Aloe L.
1809年 Haworthia Duval
1840年 Tulista Raf.
では、1840年にツリスタが誕生したのかというと、実のところ異なります。ツリスタ属の命名者であるRaf.は、オスマン帝国生まれでアメリカで活動し、独学で多くの動植物を命名したConstantine Samuel Rafinesqueのことです。しかし、Rafinesqueの業績は生前アカデミアで評価されませんでした。ですから、ツリスタ属は1840年に提唱されたものの、認められていなかったのです。この忘れ去られたツリスタを復活させたのが、ハウォルチオプシスをハウォルチアから独立させたGordon Dougles Rowleyです。Rowleyはサボテン・多肉植物を専門とする、イギリスの植物学者兼作家です。Rowleyは2013年にハウォルチアからハウォルチオプシスとツリスタを分けましたが、Rafinesqueが命名されたものの認められなかったツリスタを復活させました。
Rafinesqueがツリスタを命名した時に、どのような種を含んでいたのかはよくわかりませんが、Tulista margaritifera=Tulista pumilaは確認しています。ただ、Rowleyはツリスタ属をかなり幅広く採用したようで、旧アロエ属であるGonialoe3種とAristaloe1種、さらにHaworthiopsis(当時はHaworthia)7種、Astroloba7種を含んでいました。しかし、当時ツリスタとされたハウォルチオプシスのうち2種類と後に追加された2種類だけが、現在では正当なツリスタ属所属とされております。

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Tulista pumila var. ohkuwae
                       (M.Hayashi) Breuer


ツリスタの遺伝子解析
2014年に出た『A Molecular Phylogeny and Generic Classification of Asphodelaceae Subfamily Alooideae : A Final Resolution of the Prickly Issue of Polyphyly in the Alooids?』という論文では、アロエやハウォルチアの遺伝子解析を行っています。論文によると、ツリスタ属はゴニアロエ属(千代田錦)、アリスタロエ属(綾錦)、アストロロバ属に近いとされています。G.D.Rowleyがツリスタ属にゴニアロエやアリスタロエ、アストロロバを入れたのは、それほど検討違いではなかったというか、どの範囲までがツリスタ属かというどこで線を引くかという問題に過ぎないのかもしれません。
この論文ではツリスタはまだハウォルチアとして扱われていますが、T. marginata、T. kingiana、T. pumilaはよくまとまったグループとなっています。ツリスタはハウォルチア(軟葉系ハウォルチア)とはそれほど遺伝的に近くはなく、Tulista + Gonialoe + Aristaloe + Astrolobaというグループと、Gasteria + Haworthiopsis(硬葉系ハウォルチア)のグループが姉妹群を形成しています。この論文自体、なかなか面白い内容なので、そのうち記事にしてご紹介できればと考えております。


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Tulista pumila
                 (L.) G.D.Rowley

ツリスタの学名
現在認められているツリスタ属に所属する種は、4種類です。命名が早い順に見ていきましょう。

プミラ Tulista pumila
プミラの学名は1753年に命名されたAloe pumila L.から始まります。最初はアロエ属とされました。まあ、しかしツリスタ、ハウォルチオプシス、アストロロバあたりは、属が創設されるまではアロエ属の所属されるのというのは良くある話です。アロエ属の創設が1753年ですから、プミラはアロエの創設メンバーでした。1789年には、Aloe arachnoides var. pumila (L.) Aitonという学名もありましたが、どの程度浸透して認められた学名であるかはわかりません。ちなみに、Aloe arachnoidesとは、現在のHaworthia arachnoideaのことです。
さらに、1809年にはHaworthia pumila (L.) Duvalとされました。アロエからハウォルチアに移動しましたが、なんと1809年はハウォルチア属の創設の年です。プミラはアロエ属に続いて、ハウォルチア属の創設メンバーでもあるわけです。
そして、2013年にはついにTulista pumila (L.) G.D.Rowleyと命名されました。お察しのように、プミラはツリスタ属でもその創設メンバーです。

ちなみに、プミラには2つの変種が認められております。2006年に命名されたHaworthia sparsa M.HayashiHaworthia ohkuwae M.Hayashiがあり、現在ではいずれもプミラの変種とされています。つまり、2016年に命名されたTulista pumila var. sparsa (M.Hayashi) BreuerTulista pumila var. ohkuwae (M.Hayashi) Breuerです。
 
プミラには異名が沢山あり、代表的なものとしてマルガリティフェラ系とセミグラブラタ系、セミマルガリティフェラ系があります。
マルガリティフェラ系は、1753年にAloe pumila var. margaritifera L.としてプミラの変種とされました。しかし、1768年にはAloe margaritifera (L.) Burm.f.とされ独立しましたが、1811年にApicra margaritifera (L.) Willd.、1819年にはHaworthia margaritifera (L.) Haw.、1840年にTulista margaritifera (L.) Raf.、1891年にはCatevala margaritifera (L.) Kuntzeとされましたが、現在ではプミラと同一種とされています。


②マルギナータ Tulista marginata
マルギナータの学名は1783年に命名されたAloe marginata Lam.から始まります。1891年にはCatevala marginata (Lam.) Kuntze、1938年にはHaworthia marginata (Lam.) Stern、そして最終的には2013年命名のTulista marginata (Lam.) G.D.Rowleyとなりました。

マルギナータには異名があり、代表的なものとしてアルビカンス系とヴィレスケンス系があります。アルビカンス系は、1804年のAloe albicans Haw.、1811年のApicra albicans (Haw.) Willd.、1812年のHaworthia albicans (Haw.) Haw.です。ヴィレスケンス系は1821年のHaworthia virescence Haw.、1829年のAloe virescence (Haw.) Schult. & Schult.f.です。


③ミノル(ミノー) Tulista minor
ミノルの学名は1789年に命名されたマルガリティフェラ(=プミラ)の3つの変種として始まりました。つまり、1789年に命名されたAloe margaritifera var. minor AitonAloe margaritifera var. minima AitonAloe margaritifera var. majorです。
ミノル系は1809年にはHaworthia minor (Aiton) Duval、1821年にはApicra minor (Aiton) Steud.1829年に命名されたAloe minor (Aiton) Schult. & Schult.f.、そして2018年にTulista minor (Aiton) Gideon F.Sm & Moltenoとされました。

実はミノル以外もしばらくは独立種として、ミノルと平行して学名は変遷しました。
ミニマは1812年にはHaworthia minima (Aiton) Haw.、1891年にはCatevala minima (Aiton) Kuntze
1997年にはHaworthia pumila subsp. minima (Aiton) Halda
2014年にはTulista minima (Aiton) Boatwr. & J.C.Manningとされました。
マイヨル(マジョール)は1809年には、Haworthia major (Aiton) Duvalとされたました。しかし、ミニマもマイヨルも、ミノルと同種であるとして異名となりました。

ミノルにはその他にも沢山異名がありますが、有名な所ではマキシマとオパリナがあります。
マキシマは1804年にAloe margaritifera var. maxima Haw.、1809年にはHaworthia maxima (Haw.) Duval、1821年にApicra maxima (Haw.) Steud.となりました。
オパリナは2001年にHaworthia opalina M.Hayashi、2016年にはTulista opalina (M.Hayashi) Breuerとなりました。

※ミノルとかマイヨルとか読み方に違和感があるかもしれませんが、学名はラテン語ですからラテン語読みしています。悪しからず。

④キンギアナ Tulista kingiana
キンギアナは1937年に命名されたHawortha kingiana Poelln.から始まりました。1997年にはプミラの変種とするHaworthia pumila var. kingiana (Poelln.) Halda、そして2017年にTulista kingiana (Poelln.) Gideon F.Sm & Moltenoとなりました。

ちなみに、2001年に命名されたHaworthia zenigata M.Hayashiは、2016年にTulista opalina var. zenigata (M.Hayashi) Breuerとされましたが、現在ではゼニガタはキンギアナに含まれると考えられているようです。

旧・ツリスタの構成員
2013年にG.D.Rowleyがツリスタ属を復活させた時、アストロロバやハウォルチオプシスも混じっていました。今ではツリスタの所属ではありませんが、その時の構成員を紹介します。
2013年 
Astroloba rubriflora, Astroloba bullulata, Astroloba congesta, Astroloba corrugata, Astroloba foliolosa, Astroloba herrei, Astroloba spiralis, Haworthiopsis koelmaniorum, Haworthiopsis pungens, Haworthiopsis viscosa, Aristaloe aristata
2014年 ゴニアロエを追加
Gonialoe variegata, Gonialoe dinteri, Gonialoe sladeniana


終わりに
いかがでしょうか。たった4種類のツリスタ属にもこれだけの歴史があるのです。それを沢山の研究者たちが、長い年月意見を戦わせてきたわけです。
ちなみに、学名の中でアピクラ属やカテバラ属という属名が出て来ますが、これらは現在は使用されない幻の学名です。学術史に埋もれた旧学名にも様々なドラマがあったのかもしれません。
地味で人気があるとは言えない多肉植物でも、調べると思う以上に色々なことがわかります。こういう多肉植物の楽しみかたもあるのです。ホームセンターや百均で買ったミニ多肉にも、長く複雑な研究史があるのかもしれません。皆さんも一つ調べてみてはいかがでしょうか?



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 私のメイン多肉はユーフォルビアですから、やはりユーフォルビアばかり集めていますが、実はサボテンも少しずつ集めています。どうにも、ギムノカリキウムGymnocalyciumの扁平な連中がどうにも気になってしまうのです。とは言うものの、TOCのビッグバザール等のイベントにせよ園芸店にせよ、今やサボテンは少数派。今やエケベリアやコーデックス、アガヴェの天下です。ビッグバザールと言えど平べったいギムノカリキウムでは、やはり怪竜丸やバッテリーばかりで、それ以外には中々お目にかかる機会はありません。
そんな中、ルートを調べて園芸店を徒歩でハシゴするという、暇人特有のばかばかしい遊びをしていた時に、侘しい冬の園芸店のビニールハウスに"瑞昌丸"なる名札がついた謎のギムノカリキウムと出会ったのです。


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ラベルには"瑞昌丸"とありましたが、まあ瑞昌玉でしょう。サイズはまだ小さいため、最終的なトゲの強さはまだわかりません。ネットで瑞昌玉を探すと、たまにこのタイプが見つかります。
購入時は非常に弱トゲでしたが、新トゲは明らかに強くなっています。トゲはイボにあまり張り付かず、あまり瑞昌玉らしくありません。ただし、トゲの色は根本が赤く先端が白い典型的な配色。
肌は濃い緑色で、一般的に強光線に弱いとされる色です。実際、購入時に日焼けしてしまい、我が家の環境に慣れるまで1年かかりました。


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次に千葉のイベントでサボテン専門のブースがあり、典型的な瑞昌玉があったので購入しました。
トゲはあまり強くないのですが、太く短いトゲがイボに張り付くように生える典型的な瑞昌玉。ただし、トゲに赤みがないタイプ。肌は艶消し状で緑色は淡い。

学名の謎
さて、瑞昌玉の学名について一席ぶつつもりだったのですが、これが中々どうして難しいのです。そもそも、日本のギムノカリキウムの園芸名と学名がリンクしていないという問題があります。これはややこしいのですが、事の経緯を説明します。
ここでは、仮想のギムノカリキウムとしてAという学名があったとしましょう。このAは産地によりいくつものタイプがあったとしましょう。しかし、これは良くあることなのですが、それぞれのタイプの間の産地には中間的な特徴を持つ個体も存在します。この時に、ある1タイプが日本へ輸入されてきました。このタイプに瑞昌玉という園芸名がつけられました。大抵、Aのある特徴を見て"瑞昌玉"としますから、種子を採った時に園芸上好ましい特徴が出たものを選抜していきます。
しかし、現在地のAは必ずしも園芸上選抜された瑞昌玉とは特徴が一致しないわけです。つまり、瑞昌玉はAの一部ですが、Aの様々なタイプを瑞昌玉とは言えないのです。

さらに言うと、瑞昌玉はGymnocalycium stellatum var. kleinianumあるいはGymnocalycium quehlianum var. kleinianumと言われていますが、実際にはどの学名にあたるのかよく分からないというか、そうではないかと言われているだけなのかもしれません。
まあ、それだけで済めばいいのですが、実際には原産地の瑞昌玉と瑞昌玉と近しいとおぼしき仲間についての学名、G. stellatumG. quehlianumG. asteriumG. bodenbenderianumG. riojenseといったギムノカリキウムは皆良く似ており学術的にも混乱しています。

G. quehlianumに統一?
The World Checklist of Vascular Plants』 によると、1925年に命名されたGymnocalycium stellatum (Speg.) Speg.1957年に命名されたGymnocalycium asterium A.Cast.は、1926年に命名されたGymnocalycium quehlianum (F.Haage ex H.Quehl) Vaupel ex Hosseusの異名としているようです。しかし、よく読むとレビュー中とあります。まだまだ議論があるようです。
そういえば、瑞昌玉だけではなく、竜頭や鳳頭、新鳳頭もG. quehlianumではないかと言われています。単純な個体差を園芸品種として固定したに過ぎないのでしょうか?

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竜頭

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鳳頭

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新鳳頭

論文
2011年に『MOLECULAR PHYLOGENY OF GYMNOCALYCIUM (CACTACEAE) : ASSESSMENT OF ALTERNATIVE INFRAGENETIC SYSTEMS, A NEW SUBGENUS, AND TRENDS IN THE EVOLUTION OF THE GENUS』というギムノカリキウムの系統を調査した論文が出ました。その論文ではフィールドナンバー付きの原産地で採取された株を用いて遺伝子を解析していますが、瑞昌玉が所属すると考えられるTrichomosemineum亜属で示されているのはGymnocalycium quehlianumとGymnocalycium bodenbenderianumだけです。しかし、これは2種類しか調べていないというより、G. stellatumやG. asterium、G. riojenseを学名として認めずに2種に統合しているように思えます。まあ、それほど沢山の株を調べたわけではないようですが。
※論文ではGymnocalycium ochoterenaeが扱われておりませんが、ただ調べていないだけなのか、G. ochoterenaeを認めていない立場なのかはよくわかりません。

遺伝子解析と定規
一般的な話ですが、遺伝子解析する場合はすべての塩基配列を調べているわけではありません。大抵は数種類の遺伝子を解析します。目的によりますが、様々な植物で調べられていて実績がある遺伝子がチョイスされがちです。実は各遺伝子は同じスピードで変異しているわけではなく、変異速度は遺伝子ごとに異なります。例えば、重要な遺伝子ほど変異しにくくなります。これは葉・茎・根などの基本構造や代謝機能を司る遺伝子は、もし変異が入ってしまうと変異の種類によっては生育出来ないので、子孫に変異が伝わることがないからです。ただし、重要な遺伝子でも変異が入っても問題がない場合もありますが、いずれにせよ変異が入りにくい傾向があります。逆に変異が入りやすいのは、重複した遺伝子です。遺伝子のミスコピーにより同じ遺伝子が2つになることがあります。この場合、重複した遺伝子の片方があればその機能を果たすことができますから、もう一つは機能的にいらないので凄まじい勢いで変異が入ります。実はこれが新しい機能を持った新しい遺伝子の進化を引き起こすきっかけだったりします。
それぞれの遺伝子の変異速度は計算できますから、変異が早い遺伝子、変異が遅い遺伝子をある種の定規として目的により選択します。短期間に進化した、例えばここ1000万年で進化したグループに単位が大きい定規(変異の遅い遺伝子)で解析しても違いを捉えられないでしょうし、逆に何億年単位の進化を調べるのに短い定規(変異の早い遺伝子)で解析しても測定出来ません。
ですから、ギムノカリキウムの系統を調べた論文では、恐らくはギムノカリキウム属全体を調べるのに適した長さの遺伝子が定規としてチョイスされているはずです。しかし、進化の末端である、まさに今進化している種分化を見るためには、もっと短い定規が必要です。G. quehlianumの類縁種は急激に拡散して進化した、割りと新しい種と見なされています。つまり、現在は長い定規で計ったので、G. quehlianumとされる種の園芸上では区別されている個体差を判別出来ていないということになります。ですから、短い定規による測定が出来ていない以上、すべてがG. quehlianumとすることはまだ出来ないのです。もしかしたら、まだ細分化される可能性はありそうです。

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瑞昌玉の花

G. quehlianumの経緯
果たして瑞昌玉の学名がG. quehlianumにあたるのかどうかわかりませんが、今は一応そうであると仮定して学名の経緯を見てみます。しかし、G. quehlianumの学名はかなり混乱しており、実にややこしいことになっています。
1925年 Gymnocalycium stellatum
                                          (Speg.) Speg.

1926年 Gymnocalycium quehlianum
      (F.Haage ex H.Quehl) Vaupel ex Hosseus

1957年 Gymnocalycium asterium A.Cast.
このうちG. quehlianumに集約されました。学名は命名が早いものが優先されますが、一見すると1925年に命名されたG. stellatumになりそうな気がします。しかし、G. quehlianumは1899年にEchinocactus quehlianum F.Haage ex H.Quehlとして命名され、1926年にギムノカリキウム属に移動しました。ですから、G. quehlianumが一番早い命名なので、これが正式な学名となっています。
ややこしいのはここからで、例えばG. occultum=G. stellatum subsp. occultum=G. bodenbenderianumだったり、G. stellatum var. zantnerinum=G. quehlianum var. zantnerinum=G. quehlianumだったりします。このように、G. quehlianum、G. stellatum、G. bodenbenderianum、G. asteriumあたりは、どれかがどれかの亜種や変種として捉えられて来た経緯があります。本当にややこしいのですね。

学術的にもまだレビュー中ですからまだはっきりしたことは言えません。しかし、中々こういうある種の"役に立たない(=産業利用しにくい=金にならない)"タイプの研究は中々進展しない傾向があります。ただの一趣味家に過ぎない私などからしたら、いつの日か研究が進み整理されることを願うしかありませんけどね。



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ユーフォルビア・オベサは南アフリカ原産の、多肉植物です。サボテンのようでサボテンではない植物として有名です。最近では硬貨サイズの苗が園芸店に並ぶようになりました。

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Euphorbia obesa
オベサは若い内はやや扁平な球形ですが、やがて縦長に育ちます。このように木質化したオベサをオールドオベサと呼ぶらしいのですが、これは基本的にただの老化現象です。若い株の方のオベサの方がオベサらしさがあって美しいものですが、オールドオベサも貫禄があって良いものです。
ただし、あまり小さい内に老化現象が起きている株は、生長が鈍くなっている証拠ですから、根詰まりが起きているかもしれません。


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オベサはいかにもユーフォルビアらしい、目立たない緑色の花を条件が良ければ一年中咲かせます。しかし、多肉ユーフォルビアは、その多くの種類が雌雄異株なので通常は種は出来ません。オベサも同様で雌雄が揃っていないと種子は出来ません。ただし、オベサは非常に種子が大きいため、発芽率が良く、しかも生長が早く丈夫なので簡単に増やすことが出来ます。ですから、売っている1~2cmのオベサが数千円で売られているのは、さすがに高価過ぎるのではないかと思いますが…

オベサは非常に丈夫で、ある程度のサイズになれば氷点下にも耐えられます。しかし、オベサの冬の戸外栽培の最大の問題は水やりです。
多肉ユーフォルビアは冬でもある程度は水をやる必要があります。完全に断水すると根の動きが完全に止まってしまい、その後何年も生長しなくなったりします。だから、冬季に室内に取り込んで生長が止まった多肉ユーフォルビアでも、最低でも2週間に1回は水をあげます。
しかし、オベサは縦長になるくらい大きくなると鉢が大きくなりますから、なかなか乾きにくくなります。この冬の低温と多湿はオベサだけではなく、多肉ユーフォルビアに共通の弱点です。
私が育てていた初代のオベサは、これで根腐れを起こして枯れてしまいました。今のオベサは2代目ですが、苗のうちは冬は室内管理、ある程度大きくなってきたら冬でも霜除け程度としていました。しかし、さすがにこのサイズになると、そろそろ危ないので去年の冬は室内管理に戻しました。鉢の水分が無くなり乾ききったら、水をやるという管理方法です。部屋の温度によりますが、私の部屋では月に2~3回の水やりでした。

オベサの学名は1903年に命名されたEuphorbia obesa Hook.f.です。Hook.f.はイギリスの植物学者であるSir Joseph Dalton Hookerのことです。Hookerは南極やインドなどで調査を行い、植物標本を収集しました。進化論で知られるダーウィンの友人として知られており、資料の整理や情報提供をしたとされています。元々は自然選択説に対して批判的でしたが、ダーウィンが進化論を発表した時には、アカデミアで最初にダーウィンの自然選択説を支持したということです。
オベサには他に異名があり、1799年に命名されたEuphorbia cucumerina Willd.が知られています。また、オベサとは別種、あるいはオベサの亜種とされることもあるシンメトリカは、1941年にEuphorbia symmetrica A.C.White, R.A.Dyer & B.Sloaneと命名されました。1998年にはEuphorbia obesa subsp. symmetrica (A.C.White, R.A.Dyer & B.Sloane) G.D.Rowleyとする意見もありましたが、現在ではシンメトリカはオベサの品種とされているようです。

ここで一つ疑問が湧きます。学名にはルールがあり、先に命名された名前に優先権があります。命名された年はEuphorbia obesa1903年Euphorbia cucumerina1799年ですから、オベサの正式な学名はククメリナであるはずです。しかし、「The Warld Checklist of Vascular Plants」によると、正式な学名はEuphorbia obesaとされ、Euphorbia cucumerinaは異名と表記されています。これは一体どういうことなんでしょうか?
「A morphology based taxonomy revision of Euphorbia polygona species complex」(2013)によると、E. cucumerinaはドイツの植物学者であるCarl Ludwig Willdenowが、1781年12月から1784年6月までの2回の南アフリカ旅行中で作成されたメモとイラストのみで説明されました。E. cucumerinaは現在でも有効な種として引用されますが、結局のところその正体は不明です。Euphorbia cucumerinaとして採取あるいは撮影された個体は皆無で、記録は曖昧でスケッチから推測しか出来ません。要するによく分からないということです。一応は、Euphorbia obesaあるいはEuphorbia stellispinaのよく伸長した株ではないかという推測はされますが、それ以上のことは言えません。
ですから、その様な曖昧な情報だけで正式な学名とすることは出来ません。しかも、本当にE. obesaを指し示しているかすら怪しいとなると、命名が早くても正式な学名として採用するわけにはいかないというのは、正しいでしょう。
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Euphorbia stellispina
トゲは出たり出なかったりするので、トゲがないとオベサに似た雰囲気になるかもしれません。


さて、オベサについて少し調べて見ましたが、思いの外面白い情報がありました。オベサの様に珍しくもない、一般的なユーフォルビアであってもエピソードが満載となると、ユーフォルビアの収集と栽培も俄然楽しくなります。これからも、ユーフォルビアを楽しんでいきたいものです。


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