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カテゴリ:アロエ・ハウォルチア > ガステリア

最近、1937年にドイツで出版された『Kakteenkunde』を入手し、その中のPaul Stephan氏のユーフォルビア・コレクションをご紹介しました。せっかく珍しい古い文献ですから、他にも何か面白い記事はないか索引を眺めていたところ、私の興味ある多肉植物であるガステリアについての記事がありました。

さて、本日は『Kakteenkunde』のガステリアに関する2つの記事をご紹介します。記事の執筆者はドイツの植物学者であるKarl Joseph Leopold Arndt von Poellnitzです。多肉植物を広く研究しましたが、特にHaworthiaの分類で著名です。Poellnitzia rubrifloraに献名されていることからご存知の方もおられるでしょう。
先ずは11月号の「Zwei neue Gasteria-Arten」から見ていきましょう。どうも、2種類のガステリアの新種を発表しているみたいです。植物の特徴は何とラテン語で記載されていました。全く読めませんから、機械翻訳の不細工な怪文書を解読してみました。

・Gasteria caespitosa von Poellnitz spec.nov.
根元から非常に多く増殖します。葉は完全に円柱状で、直立し長さ10~14cm、基部の幅は2cmです。両端には結節状の鋸歯があります。葉には光沢があり斑点があります。この先はさらなる詳細と花の特徴が続いているようですが、残念ながらかなり翻訳文が怪しいのでここまでとしましょう。
ここから先はドイツ語の翻訳です。どうやら、van der Bijl夫人が1929年にケープランドのSomerset Eastで採取したものを、von Poellnitzに贈ったものということです。von Poellnitzはこのガステリアを、育ったらGasteria maculata (Thunb.) Haw.、あるいはその類似種となると考えていたようです。しかし、その予想は外れて、葉のサイズは変わらずに良く花を咲かせているということです。von Poellnitzはこのガステリアを、Gasteria subnigricans Haw.やGasteria fasciata (Salm) Haw.と関係するが、それらと区別されるため新種と考えているようです。

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Gasteria caespitosa von Poellnitz spec. nov.
さて、ではこの種は現在どうなっているでしょうか?
取り敢えず、G. caespitosaから見てみましょう。
Gasteria caespitosa Poelln., First published in Kakteenkunde 1937 : 165

ちゃんと『Kakteenkunde』の165ページに載ってると書かれていますね。いや、当たり前の話ですが、何となく嬉しく思います。しかし、残念ながらこのG. caespitosaは現在認められている学名ではありません。現在はGasteria obliquaの異名扱いです。また、von PoellnitzがG. maculataと似ていると思った直感は正しく、Gasteria maculata Haw.も現在ではGasteria obliquaの異名ですから、同じ種を示していた訳です。ちなみに、G. subnigricansはGasteria brachyphylla var. brachyphylla、G. fasciataは何とまたもやGasteria obliquaの異名となっています。

・Gasteria Bijliae von Poellnitz spec.nov.
無茎またはほぼ無茎で、非常に早く生長し増殖します。若い苗は尖った2列の葉を持ち、成熟すると葉は渦巻き状の密なロゼットとなり、直径12~14cmです。横向きの縞模様があります。
やはり、このガステリアもvan der Bijl夫人によるもので、種小名は夫人に対する献名です。種小名が大文字なので単純に誤植かと思いましたが、写真の方の学名も同様なのであえてそうしているような気もしました。献名なのでとか何か理由があるのか、本当にただの誤植がは分かりません。von Poellnitzが7年育てましたが、未だに花は咲いていないということです。von Poellnitzもまだ生長しきっていないため、確実に新種とも言い切れないようで、やや歯切れの悪い言い方をしています。

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Gasteria Bijliae von Poellnitz spec.nov.
G. bijliaeは、現在ではGasteria carinata var. carinataの異名となっています。

では続けて10月号のvon Poellnitzによる「Gasteria humilis v.P.」を見てみましょう。G. humilisは1929年にvan der Bijl夫人がケープランドのGreat Brak川付近で採取した植物で、同年にvon Poellnitzにより新種として記載されました。密に螺旋状となり直径12~14cmとなります。8~12枚の葉は若い時は直立し古い葉はやや広がります。葉は三角形で先端はごく僅かに内側に曲がり、鈍く尖ります。葉は滑らかで光沢があり、濃い緑色で斑点があります。
G. humilisは確かにG. decipiens Haw.やG. parvifolia Bak.、G. gracilis Bak.、G. Beckeri 
Schönlandに関連しています。しかし、これらとは異なり葉の縁がトリミングされます。また、G. obtuse (Salm) Haw.はキールが上部で曲がり葉縁を形成しますが、G. humilisでは目立ちません。
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Gasteria humilis v.P
名前が出てきた中では、G. humilisとG. parvifoliaはGasteria carinata var. carinataの異名、G. decipiensとG. BeckeriはGasteria nitida var. nitidaの異名です。G. gracilisは何に相当するのかが不明な種です。


以上が論文の簡単な要約です。1937年にvon Poellnitzにより命名された2種類のガステリアは、残念ながら現在は認められておりません。過去に命名したG. humilisもG. carinata var. carinataの異名になってしまいました。学名は一度決まったら不変なものではなく、結構ダイナミックに変更され続けるものですから、昔の学名と異なるのは差程珍しいことではありません。しかし、ガステリア属はかなり特殊で、「分類学者の悪夢」と呼ばれるくらい異名だらけでした。個体差や地域変異がすべて別種として命名されてきたのでしょう。まあ、そもそもが外見的に区別するのが難しいグループなのかもしれません。たしか、1990年代くらいからvan Jaarsveldにより、ガステリア属は大幅に整理されました。現在、ガステリア属は26種類に集約されました。とは言うものの、そのうち9種類は2000年以降に発見されていますから、種類が少ないのに新種が次々と発見されているホットなグループでもあります。また、現在では遺伝子解析によりある程度は近縁関係が分かってきましたから、細かい修正は続くかもしれません。

さて、個人的にはこのような昔の記事が面白いので、是非とも記事にしたいのですが、中々古いものは入手が難しいものです。記事の内容を一応紹介していますが、どちらかと言うと1937年当時の画像を見ていただきたいだけだったりします。しかし、サボテンについての(恐らくは)貴重な記事もあるようですが、残念ながらサボテンはギムノカリキウム属以外はよく分かりません。私では何もコメント出来ませんから記事化は断念しました。もう少し色々な多肉植物に詳しければ良いのですが、こういうものは一朝一夕には身に付かないものです。少しずつ勉強していくつもりです。



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ガステリアは実に面白い多肉植物ですが、何故か人気がありません。どうしても、マニアックな印象がつきまといます。もしかしたら、臥牛が古典植物のように扱われ、微妙な姿の違いを観賞する傾向があるからかもしれません。ということですから、あまり人気がないのであまり販売されていません。ガステリア自体は昔から国内に流通していますから、レアとは言えない種類も多いはずですけどね。私も極々稀に販売されていたりしますから、機を逃さずにチマチマ集めて記事を書いてきました。また、現在、学術的に認められているガステリア属を異名を含めまとめた記事があります。
本日ご紹介するのはGasteria distichaです。「青竜刀」あるいは「無憂華」という名前もあるようですが、ネットの販売サイトでしか見たことがない名前です。実際に使われているのかは不明です。

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Gasteria disticha

G. distichaの学名は、1827年に命名されたGasteria disticha (L.) Haw.ですが、これは1753年にCarl von Linneが命名したAloe disticha L.から来ています。ガステリア属は1809年にGasteria Duvalが創設されるまではアロエ属とされていました。実はG. distichaは最初に命名されたガステリアです。また、1866年にはPtyas disticha (L.) Salib. not validly publ.も知られます。末尾に''not validly publ.とありますが、これは有効な公表ではないということですから、正式なものとは認められていないのでしょう。

G. distichaには変種が認められています。2007年にGasteria disticha var. robusta van Jaarsv.Gasteria disticha var. langebergensis van Jaarsv.が命名されたことに従い、基本種はGasteria disticha var. distichaとなりました。この内、変種ランゲベルゲンシスは独立種とされ、2019年にGasteria langebergensis (van Jaarsv.) van Jaarsv.となり、Gasteria distichaではなくなりました。さらに、2022年にはGasteria disticha var. marxiiがE. J. van JaarsveldとD. V. Tribbleにより提唱されていますが、まだ審議中といったところでしょうか。データベース上ではvar. marxiiの名前はまだ確認出来ません。


さて、ここからは異名を見ていきましょう。ガステリアは「分類学者の悪夢」と言われるくらい分類が混乱していた経緯があり、19世紀にはやたらめったらに学名が命名されました。そのため、うんざりする程に異名が沢山あります。というわけで、変種ディスティカの異名を命名年順に列挙します。

1768 Aloe linguiformis Mill.
1789 Aloe lingua var. angustifolia Aiton
          Aloe lingua var. crassifolia Aiton
1804 Aloe lingua var. latifolia Haw.
          Aloe lingua var. longifolia Haw.
          Aloe nigricans Haw.
          Aloe obliqua Jacq., nom. illeg.    
1809 Gasteria angustifolia (Aiton) Duval
          Gasteria longifolia (Haw.) Duval
          Gasteria nigricans (Haw.) Duval

1811 Aloe obscura Willd., nom. illeg.
1812 Aloe longifolia (Haw.) Haw., nom. illeg.
          Gasteria latifolia (Haw.) Haw.
1817 Aloe nigricans var. crassifolia Salm-Dyck
1819 Gasteria denticulata Haw.
1821 Aloe angustifolia
                     (Aiton) Salm-Dyck, nom. illeg.
          Aloe conspurcata Salm-Dyck
          Aloe obtusifolia Salm-Dyck, nom. illeg.
          Gasteria mollis Haw.
          Gasteria nigricans var. crassifolia
                            (Aiton) Haw.
1827 Gasteria conspurcata (Salm-Dyck) Haw.
          Gasteria crassifolia (Salm-Dyck) Haw.
          Gasteria disticha var. major Haw.
          Gasteria disticha var. minor Haw.
          Gasteria obtusifolia Haw.
1829 Aloe crassifolia
                         (Salm-Dyck) Schult. & Schult.f.
          Aloe mollis (Haw.) Schult. & Schult.f.
1840 Aloe retusifolia Haw. ex Steud.
1880 Gasteria disticha var. angustifolia Baker
          Gasteria disticha var. conspurcata
                                         (Salm-Dyck) Baker
          Gasteria platyphylla Baker

アロエだったりガステリアだったりしますが、とにかく様々な名前が付けられてきました。しかも、所々に'nom. illeg.'、つまりは非合法名が見受けられます。
そういえば、G. distichaははじめて命名されたガステリアだと述べましたが、ヨーロッパにはじめてもたらされたガステリアでもあります。G. distichaはCarl von LinneがAloe distichaと命名する前から知られていました。1689年にケープタウンの東でHendrik Oldenlandが採取し、'Aloe africana flore rubro folia maculis ab utraque parte albicantibus notata'という特徴の羅列で表記されました。その後、Carl von Linneにより、Aloe distichaと命名されましたが、この'disticha'とは葉が左右に分かれる二列性の特徴から、分配を意味するラテン語由来の種小名です。

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さて、タイトルにあります通り、Gasteria distichaにはじめて花が咲きました。Gasteriaはgaster=胃からきた名前ですが、名前の如く胃袋のような形の花を咲かせます。ガステリアの花には細長いタイプと短いタイプかありますが、G. distichaの花は短いタイプですね。丸みがあってかわいらしい花です。


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バナナは放っておくと、皮に黒い点々が出てきます。これは、スウィート・スポットと呼ばれ、甘く熟した食べ頃のサインと言われています。これは、バナナの皮に含まれるポリフェノールが酸化したものなんだそうです。しかし、困ったことに多肉植物にも黒いスポットが出来てしまうことがあります。当然これはポリフェノールではないし、食べ頃のサインでもありません。何かしらの不調のサインです。観葉植物の本を紐解くと、黒い点の原因は様々です。栽培環境が悪いせいでおこる生理障害の場合もありますが、黒星病や炭疽病などの病原菌、場合によってはカメムシなどの害虫の被害の場合もあります。
本日はこの黒い点についてのお話です。具体的にはアロエやガステリアに黒い点が出てしまうことが割とあり、これは一体何が原因なのだろう?というものです。その論考は2001年のHarry Maysによる『All that is known about Black Spot』です。早速、内容を見てみましょう。

黒い点の原因や対処法は、基本的に趣味家の経験則によるもので人により意見は異なり、科学的な見地からのものではありませんでした。著者ははじめから原因は1つではないかもしれないので、様々な可能性を探り意見をまとめてみたということを述べています。

①ストレス
日本語でストレスと言うと精神的なイメージがありますが、本来ストレスは圧力という意味もあります。植物も高温や乾燥などは植物にストレスを与えます。ただし、黒点の発生については可能性の話で確証はありません。

②環境
強光に当てて換気が不十分だと植物表面が痛むことがあります。さらに、高窒素肥料と水をあげすぎると、軟弱になり病原菌に弱くなる可能性があります。しかし、必ずしもこれらの条件で黒点があらわれるとは言えず、出ない場合もあります。

③土壌不足
長年植え替えをしていないと、栄養が不足して黒点があらわれると言われています。しかし、植え替えをしていなくても黒点が出ない場合も確認されており、むしろ堆肥を与えることで黒点が出るという意見もあります。

④湿度
温室内でも温度は場所や高さにより均一ではありません。また、場所によっては結露することもあります。実際に黒点の原因として過湿があげられることが多いようで、移動させて乾燥させることが推奨されています。しかし、残念ながら著者には、乾燥期に若いGasteria distichaに黒点があらわれた経験があります。逆に光に乏しく湿気の多い環境では何故か黒点は発生しませんでした。

⑤病原菌
湿度が高くなると、細菌やカビの活動は活発になります。しかし、ヨーロッパで多肉植物は冬は暗く湿った環境に置かれることになりますが、必ずしも黒点はあらわれません。

⑥種類
ガステリアでは種類により黒点が出やすい種類、出にくい種類があるという意見もあります。しかし、それも人によって傾向が異なりました。しかも、同じ種類を育てていても、黒点が出るものと出ないものがあるという報告もあります。中には株分けした片方にだけ黒点があらわれたりします。この場合の黒点は伝染性がないようです。

⑦野生株
南アフリカの東ケープ州の西部やオレンジ川北部では、野生のガステリアに黒点は滅多に見られませんでした。Hells Kloof地域のGasteria pillansiiは数ヶ月に渡り非常に乾燥した年に数個の黒点が観察されました。同じ地域で非常に雨が多かった年に、Gasteria pillansiiは水分を吸収し過ぎて膨れ上がり、裂けてしまうものもありました。腐ってしまったものもありましたが、黒点はまれにしか見られませんでした。

⑧David Cumming
より信頼性の高い情報を求めて、南アフリカの調査経験が豊富なDavid Cummingに連絡しました。Cummingは「特に東ケープ州で広い地域で一般的であると思われます。アストロロバは最も多く、ガステリアが続きます。」Cummingは黒点はストレスによるもので、それが黒点の主な原因ではなく、日和見感染の可能性があるとしています。

⑨Ernst van Jaarsveld
南アフリカの多肉植物の研究者であるvan Jaarsveldは、黒点はMontagnella(真菌=カビ)により引き起こされるとしています。3~6ヶ月ごとにオキシ塩化銅あるいはCaptanを噴霧しますが、定期的な噴霧を行っても黒点はあらわれます。

⑩Doug McClymont
ジンバブエのDoug McClymontは研究者としてではなく、半分趣味のアロエ栽培の経験を語ってくれました。アロエの黒点は、高湿度で曇天、気温18度以上、毎日雨が降るなどの条件で発生すると言います。また、昆虫による被害も加算されるようです。
Montagnella maximaやPlacoasterella rehmiiはbenzimidazolesやtriazolesといった浸透性殺菌剤は効果がありませんが、cyproconazoleとdisulphotonの混合顆粒により昆虫の害を防ぎ黒点か出来ません。しかし、非常に湿った環境では昆虫がいなくても黒点は出来てしまいます。しかし、オキシ塩化銅または水酸化第二銅の噴霧で高い効果があったようです。ただ、老化した葉は黒点が出来やすく薬剤でも効果がありません。

⑪王立園芸協会
科学的証拠を得るために、王立園芸協会の植物病理学部門に連絡しました。黒点のあるGasteria distichaの葉と根、土壌を調査してもらいました。黒点は日射、灌水、肥料などの生理的なものではないと結論付けました。ただし、黒点の周囲の組織を培養しても病原菌は見つかりませんでした。これは病原菌がいないことの証明にはならず、ただ培養が困難な病原菌だったからかもしれません。王立園芸協会の提案する最良の案は、広範囲の植物の葉の斑点に効果がある殺菌剤mancozebの使用です。

謎は深まるばかり…
冬に寒さからガステリアを守るために一切の通気を遮断して非常に湿った状態で育てている人もいますが、何故か全く黒点は出来ないそうです。
これまで見てきた意見は、全く以て相反する内容が噴出していますが、著者は黒点の原因は1つではないからだろうと考えています。結局、我々の出来ることは、殺菌剤の散布以外では、硬く締まった最適な育て方をして、ちゃんと植え替えしましょうという常識的なことくらいなものです。
黒点の謎は解明されたとは言えませんが、全く対処不能というわけでもないように思えます。もし、黒点があらわれた時には、その多肉植物は何かしらの問題を抱えているのかも知れませんね。

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アロエの古い葉にあるこの黒いスポットの原因は何でしょうか?


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ガステリア・エクセルサは19世紀に記載された、昔から知られているガステリアです。他のガステリアと同じく南アフリカの原産です。
私も小指の先ほどの苗を園芸店で購入して育てています。まだ、エクセルサらしさはありませんが、苗から育てていますから愛着がありますし、これからの生長が非常に楽しみです。


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Gasteria excelsa

そんな、エクセルサに関する情報を探ったところ、論文を見つけました。それは、2003年のDavid Cummingの論文、『A matter of recruiment in Gasteria excelsa Baker』です。早速、論文の内容に移りましょう。

G. excelsaはほとんどの場合、川の近くに自生します。Port Alfredの南に約50kmのAlexandria付近から、Transkeiまで見られます。
BathurstのLuthington川のほとりに沿ってG. excelsaは個体数が多く、著者はG. excelsaの種子を採取していました。この時、大量の種子が供給されているにも関わらず、芽生えがほとんどない状態でした。詳細を観察するために、Langholmeに向かって隔離された地域にあるG.excelsaの小集団が対象に選ばれました。

ここでは、狭いエリアに2つの異なる環境に、それぞれの集団があります。
1つ目は北東斜面と対応する南西斜面を持つ高さ1mの小さな尾根で、22個体の成熟したG. excelsaが見られました。G. excelsaは北東の斜面の高さ30cmの茂みの中に生えます。この場所のG. excelsaのサイズは直径37~79cm、葉の幅は8~13cm、葉の長さは23~41cmでした。幼体は3本のみで、1本は2~3才、2本は3~4才と推定しました。この場所には、Crassula muscosa var. polpodaceaとCynanchum gerrardiiが見られました。
2つ目は南西の高さ25mの急な川岸で、27の成熟したG. excelsaが見られました。それほど過酷な環境ではないにも関わらず、G. excelsaは小型でした。この場所のG. excelsaのサイズは直径37~45cm、葉の幅は7~8cm、葉の長さは20~30cmでした。この場所には背の高い茂みとまばらにある背の低い茂み、さらには3~4mの低木がある環境です。1才が3本、1~2才が3本、2~3才が4本、3~4才が3本と、幼体は豊富でした。
この場所には、Euphorbia pentagona、Euphorbia grandidens、Crassula lactea、Crassula muscosa var. polpodacea、Kalanchoe rotundifolia、Othonna dentata、Sansevieria hyacinthoides、Haemanthus albiflosが見られました。

著者は個体数と、1個体の1年に生産される種子の数から計算して、この地域内では1113万2275個の種子が生産されているとしました。この地域では、1年間に4個体の実生が生えているので、育つのは約30万種子に1つ程度であるとしています。
著者は湿った濾紙に100個のG. excelsaの種子を置いて、片隅を水に浸して発芽率を試験しました。すると、発芽しなかったのは2個だけでした。さらに、この2個はどうも置いた場所が悪く水分が足りていないようでした。つまり、発芽率はほぼ100%ではないかと推測しています。
種子が熟成する時期は湿潤期にあたり、発芽に適しています。しかし、人工的に種子を湿らせたら発芽するのに、野生では実生が見られないことを訝しんでいます。


以上が論文の簡単な要約となります。
大変申し訳ないのですが、私には英文の細かいニュアンスがいまいち捉えきれていないせいか、著者の疑問を今一つ理解出来かねる部分があります。私は野生環境では、実生が生えてもその後の乾燥などの要因でほとんどが枯死するだろうと割と安直に考えました。しかし、著者はそうではなくて、発芽自体がおこらないというような意味で言っているような気もします。その場合はどう考えたらよいのでしょうか? 
貯蔵種子という考え方もあります。すべての種子が一斉に発芽した場合、たまたま環境が悪化すると全滅してしまいます。しかし、発芽がばらつくことにより、良いタイミングで育つものも出て来ます。というように、実生よりも耐久性のある種子で環境の悪化をやり過ごす植物もあるのです。しかし、著者は発芽率を試験して、ほぼすべてが一斉に発芽することを確認しています。貯蔵種子ではないようにも思えますが、そう単純ではありません。種子の発芽を促す引き金は水だけではないからです。さらに、水が発芽の引き金である場合でも、水分をある一定以上吸わないと発芽しないなどの条件があるかもしれません。取り敢えずは、光や水分量などの条件を変えて、種子の発芽率が変わるかは見る必要があるでしょう。また、貯蔵種子の有効性を見るために、G. excelsaの自生地の土壌を採取して実験室で発芽するか、種子を様々な環境で保管しどのくらいの期間まで発芽能力があるかを調べることも重要です。
しかし、現状では情報が少な過ぎて良くわかりません。他にも情報がないか、もう少し調べてみるつもりです。


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Gasteria baylissianaは群生する小型のガステリアです。学名は1977年にRauhにより記載されました。しかし、このG. baylissianaの発見と命名には多少の前日譚があるようです。 そのことについて書かれたGideon F. Smith, Elsie M. A. Steyn & E. van Wykによる1999年の報告書、『359. GASTERIA BAYLISSIANA』をご紹介します。

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Gasteria baylissiana

Gasteria baylissianaは1960年にJohn Truterにより発見されました。Truterは南アフリカの東ケープ州、Suurberg山脈近くの農家で、多肉植物愛好家でした。Truterは偶然Suurbergの斜面でG. baylissianaを見つけ、Brand van Bredeに識別のために送りましたが、残念ながら命名はなされませんでした。
1965年に熱心な植物探検家のRoy Douglas Abott Bayliss大佐は、Suurberg付近で10種類ほどの植物を採集しました。1972年頃、Bayliss大佐は生きた植物をドイツのWerner Rauhに送りました。この中にG. baylissianaが含まれており、1977年に正式に記載され、Bayliss大佐にちなんでGasteria baylissiana Rauhと命名されました。

ガステリア属は著者曰く「分類学者の悪夢」と言わしめるほどの混乱ぶりで、一握りの種類に対して100以上の学名がつけられていました。しかし、南アフリカの植物学者であるErnst van Jaarsveldにより、1992年にガステリア属の概要についての出版がなされ、以降はvan Jaarsveldによりガステリア属の整理が行われました。

G. baylissianaはBayliss大佐の努力により栽培法は確立されましたが、Suurbergでは野生個体は非常に稀となりました。van JaarsveldはTruterの助けを借りて、1986年にSuurbergでG. baylissianaを4個体採集しました。van Jaarsveldは採集した4個体とBayliss採集個体の子孫を組み合わせて他家受粉による種子を取ることに成功しました。最終的に英国のサボテン・多肉植物協会(BCSS)による援助により、1993年にvan JaarsveldはG. baylissianaの自生地に210個体の繁殖したG. baylissianaを移植しました。

G. baylissianaは9~11月(春~初夏)に開花し、10月にピークを迎えます。
G. baylissianaは種子、挿し木、葉からでも簡単に増やすことが出来ます。葉は1週間ほどで容易に発根します。
G. baylissianaは非常に干魃に強いにも関わらず、日陰を好みます。


以上が簡単な要約となります。
Gasteria baylissianaの命名にもそれなりのドラマがありました。発見されたものの命名されず、17年後に第一発見者ではない採集個体から命名されるという数奇な運命をたどりました。また、自生地の野生個体の減少から、研究者自らG. baylissianaの保護が行われたことも印象的です。G. baylissianaの保護のための援助を行った英国のサボテン・多肉植物協会(BCSS)は、趣味家を対象とした民間団体ですから、イギリスは趣味家の力が強いですね。見習いたものです。



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白雪姫というかわいらしい名前をつけられたガステリアがあります。その学名をガステリア・グロメラタ(Gasteria glomerata)と言います。最近ガステリア属について詳しく調べたこともあり、ガステリアについて書かれた論文を少しずつ読んでいます。白雪姫については以前記事にしていますが、白雪姫の発見に関する論文を見つけましたのでご紹介します。

本日ご紹介するのは、南アフリカのErnst van Jaarsveldによる『Gasteria glomerata van Jaarsveld sp. nov.』という1991年の論文です。この論文により白雪姫がはじめて学術的に記載されました。白雪姫が発見された際の環境がわかる興味深い論文です。

早速内容に入りましょう。
Gasteria glomerataは南アフリカのKougaダム地域に固有のガステリアで、Kougaダムでは2種類目のガステリアです※。自生地の地形は険しく環境は良くありません。わずかに酸性(pH6.4)の石英質砂岩土壌で栄養価は低く、標高500~700mの垂直な崖に生えます。G. glomerataは他の低木などの陰で育ち、密集した状態で群生します。ちなみに、自生地が同じG. ellaphieaeとの雑種は確認されておりません。

※Kougaダムで最初に発見された新種のガステリアは、Gasteria ellaphieaeです。G. glomerataと同じ1991年にやはりvan Jaarsveldにより先に記載されました。

 G. glomerataの自生地には多肉植物を中心とした他の植物も豊富です。例えばCrassula(C. cordata, C. cultrata, C. lactea, C. muscosa var. parvula, C. orbicularis)、Delosperma laxipetalum、Adromirchus(A. crirtatus var. schonlandii, A. inamoenus)、Cotyledon(C. tomentosa, C. velutina, C. woodii)、Aloe pictifolia、Haworthia(H. translucens, H. turgida)、Bulbine latifolia、Othonna(O. carnosa, O. lobata)、Senecio scaposusHaemanthus albiflosなどがあげられます。また、低木あるいはブッシュを作るPelargonium zonale、Portulacaria afra、Ficus burt-davyiiなどが自生します。

G. glomerataは二列性の矮性種で、密に群生します。花は明るい赤桃色です。論文ではG. glomerataはG. rawlinsoniiとG. baylissianaと関係があるのではないかとしています。この3種はロゼットを形成しない二列性で、春に花を咲かせ、ともに厳しい断崖に生え、ケープに特有の石英質砂岩土壌に限定的に分布します。G. baylissianaは密に群生する育ち方も同じ矮性ガステリアです。また、著者はG. nitida var. armstrongiiと一部類似性があるものの、生息環境が異なるとしています。

最後に著者は、G. glomerataは明るい日陰で腐食質が豊富な土壌で最もよく育ち、分枝しよく増えると述べています。

以上がはじめて白雪姫が新種として命名された論文の要約した内容となります。詳細な形態学的な内容は割愛させていただきました。
さて、白雪姫の学名が命名されて既に30年以上経ちましたが、その間にガステリア研究も進展が見られます。2021年に出た『Phylogeny of the Southern African genus Gasteria duval (Asphodelaceae) based on Sanger and next generation sequencing data』という論文では、遺伝子解析によりガステリア属の系統関係を調べています。以下が白雪姫G. glomerataと近縁なガステリアとの系統関係です。

     ┏━━━━G. excelsa
 ┏┫
 ┃┗━━━━G. pulchra
 ┃
 ┫ ┏━━━━G. ellaphieae                         
 ┃ ┃ 
 ┃ ┃    ┏━━G. polita
 ┗ ┫┏┫
      ┃┃┃┏━G. acinacifolia
      ┃┃┗┫
      ┗┫    ┗━G. barbae
          ┃
          ┃┏━━G. armstrongii
          ┗┫
              ┃┏━G. glauca
              ┗┫
                  ┗━★G. glomerata

この論文では残念ながらG. baylissianaは解析されていないため、G. glomerataとの関係はわかりません。しかし、意外な事実が見えてきます。
例えば、G. glomerataはG. rawlinsoniiとは特に近縁ではありません。最も近縁なのはG. glaucaとG. armstrongiiです。この論文ではG. nitidaとG. nitida var. armstrongiiは近縁ではないことが判明したため、G. armstrongiiとして独立しています。G. glomerataと異なり、G. armstrongiiは平地に分布します。ガステリア属では生息環境の類似性は、種の近縁性とは無関係である可能性が高いのでしょう。
また、面白いことに、同じ地域に分布しているG. ellaphieaeは、G. glomerataと割と近縁でした。
あと、上の系統図のガステリアは、おおよそ南アフリカ南西部の原産でした。分布が近い種類は近縁種であるという、考えてみれば当たり前の話がわかったのです。

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Gasteria glomerata

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Gasteria ellaphieae

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Gasteria baylissiana


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いよいよ、ガステリア属の種類についての記事は、19世紀篇、20世紀篇と来て本日の21世紀篇で終了です。21世紀に入ると、南アフリカのvan Jaarsveldの一強時代となります。驚くべきことに、20年間に9種類の新種のガステリアが命名されており、そのすべてにvan Jaarsveldが関わっているのです。では、21世紀に命名されたガステリア属を見ていきましょう。

①Gasteria polita van Jaarsv., 2001

②Gasteria doreeniae
        van Jaarsv. & A.E.van Wyk, 2004


③Gasteria tukhelensis
                             van Jaarsv., 2005


④Gasteria barbae van Jaarsv., 2014

⑤Gasteria loedolffiae
                        van Jaarsv., 2014


⑥Gasteria koenii van Jaarsv., 2017

⑦Gasteria langebergensis
                   (van Jaarsv.)
              van Jaarsv. & Zonn., 2019

Homotypic synonym
Gasteria disticha var. langebergensis
                                van Jaarsv., 2007


⑧Gasteria visserii van Jaarsv., 2020

⑨Gasteria camillae
              van Jaarsv. & Molteno, 2020



ここ3日間の記事で、ガステリア属全26種の学名を、その命名年ごとに19世紀8種、20世紀9種、21世紀9種についてまとめてみました。18世紀はガステリア属はまだありませんからアロエ属とされており、1809年にDuvalによりガステリア属が創設されてからは19世紀はアロエ属かガステリア属かという駆け引きがあった模様です。しかし、20世紀前半は無風状態でしたが、後半はvan Jaarsveldの独断場と化します。1753年に後のGasteria disticha、つまりはAloe distichaが命名されていますからそこから数えて約270年、ガステリア属が1809年に創設されてからと考えても200年以上の歴史があります。そう考えるとここ30年あまりのvan Jaarsveldの活躍には目を見張るものがあります。
そのvan Jaarsveldは1987年にGasteria vlokiiを命名して以来、実に12種2亜種6変種を命名し認められています。ガステリア属26種類のうち12種類ですから、半分近くがvan Jaarsveldの命名しました。大変な速さで新種が見つかっています。

しかし、これだけ古くから知られており、しかも南アフリカに固有という条件で、21世紀に入ってから新種が発見されるペースが加速することは珍しく感じます。考えてみればガステリア属は急な崖に生えるものが多く、いまだに調査が及んでいない地域は沢山ありそうです。しかも、何故かガステリアは内陸部や隣国では見つからず、南アフリカにU字型に分布します。これからも、新種が発見される可能性が高いのではないでしょうか? 引き続きvan Jaarsveldの活躍と、21世紀の新世代の植物学者たちの研究に期待したいですね。



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昨日は19世紀に命名されたガステリア属についてまとめました。本日は20世紀篇です。
19世紀のガステリアは異名が非常に多く、それなりに混乱していたことがうかがえます。ガステリア属を採用するか、それとも今まで通りアロエ属のままにしていくのかという論争もあったのでしょう。しかし、20世紀に入るとガステリア属は定着し、もはやアロエ属の所属と考える学者は現れません。

20世紀に命名されたガステリア属は9種類です。19世紀と比較すると異名が少なく、異名が多いのは19世紀にアロエ属として命名されているGasteria brachyphyllaだけです。
では、20世紀に命名されたガステリア属を見ていきましょう。


①Gasteria pillansii Kensit, 1910

変種ピランシイ
Gasteria pillansii var. pillansii
Heterotypic synonym
Gasteria neliana Poelln., 1929
230718165938315
Gasteria pillansii

変種エルネスティ-ルスキイ
Gasteria pillansii var. ernesti-ruschii
        (Dinter & Poelln.) van Jaarsv., 1992
Homotypic synonym
Gasteria ernesti-ruschii
                Dinter & Poelln., 1938

変種ハリイ
Gasteria pillansii var. halii
                    van Jaarsv., 2007


②Gasteria rawlinsonii
                      Oberm., 1976


③Gasteria baylissiana
                           Rauh, 1977
230718170013261
Gasteria baylissiana

④Gasteria vlokii
                   van Jaarsv., 1987
230718165946897
Gasteria vlokii

⑤Gasteria ellaphieae
                    van Jaarsv., 1991
230718170029095
Gasteria ellaphieae

⑥Gasteria glomerata
                    van Jaarsv., 1991
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Gasteria glomerata

⑦Gasteria brachyphylla
      (Salm-Dyck) van Jaarsv., 1992
Homotypic synonym
Aloe brachyphylla Salm-Dyck, 1840

変種ブラキフィラ
Gasteria brachyphylla
                     var. brachyphylla
Heterotypic synonym
Aloe pseudonigricans Salm-Dyck, 1817
Gasteria nigricans
                 var. marmorata Haw., 1821
Aloe subnigricans Spreng., 1825
Gasteria subnigricans Haw., 1827
Gasteria subnigricans
                      var. glabrior Haw., 1827
Gasteria fasciata var. laxa Haw., 1827
Aloe subnigricans
       var. canaliculata Salm-Dyck, 1840
Gasteria nigricans
                  var. platyphylla Baker, 1880
Gasteria nigricans
                     var. polyspila Baker, 1880
Gasteria transvaalensis Baker, 1889
Gasteria angustiarum Poelln., 1937
Gasteria triebneriana Poelln., 1938
Gasteria joubertii Poelln., 1940
Gasteria vlaaktensis Poelln., 1940

変種バイエリ
Gasteria brachyphylla
                  var. bayeri van Jaarsv., 1992


⑧Gasteria batesiana
                     G.D.Rowley, 1995


変種バテシアナ
Gasteria batesiana var. batesiana
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Gasteria batesiana var. batesiana

変種ドロミティカ
Gasteria batesiana var. dolomitica
        van Jaarsv. & A.E.van Wyk, 1999


⑨Gasteria glauca
                          van Jaarsv., 1998
230708163711155
Gasteria glauca

時代が変わりガステリアの研究者も代わりました。もはや、19世紀を主導した研究者たちは見られません。
さらに、19世紀は8種類が命名されているのに対し、20世紀は9種類が命名されていますから、一見してガステリア研究は活発に見えますが、それは実のところ見かけだけのことです。なぜなら、20世紀前半で命名されたのはGasteria pillansiiのみで、しかも活動していたのはPoellnitz、
Schönland、Alwin Bergerくらいで、命名された学名の数も少なく19世紀ほどの熱気は感じられません。
しかし、20世紀後半はその様相はガラリと変わります。1976年から1995年までの19年間に残りの8種類が命名されているのです。このガステリアの命名ラッシュを主導したのはvan Jaarsveldです。1990年代以降はまさにvan Jaarsveldの時代と言えます。21世紀になってもvan Jaarsveldは活発に研究し、20世紀以上のペースでガステリアの新種を発見していくのです。

明日はいよいよ21世紀篇です。もはやガステリア属の第一人者となったvan Jaarsveldが大活躍します。

20世紀のガステリア属に関する代表的な命名者たちは以下の通り。

☆Poelln.=Karl von Poellnitz(1896-1945年)ドイツの植物学者。
Schönland.=Selmar Schonland(1860-1940年)ドイツ出身で南アフリカで活躍した植物学者。
☆A.Berger=Alwin Berger(1871-1931年)ドイツの植物学者・園芸家。
☆Kensit=Harrit Margaret Louisa Bolus née Kensit(1877-1970年)南アフリカの植物学者。L.Bolusと表記されることが多い。
☆Oberm.=Anna Amelia Mauve、旧姓Obermeyer(1907-2001)南アフリカの植物学者。
☆Rauh=Werner Rauh(1913-2000年)ドイツの植物学者・生物学者・作家。
☆G.D.Rowley=Gordon Douglas Rowley(1921-2019年)イギリスの植物学者。
☆van Jaarsv.=Ernst Jacobus van Jaarsveld(1953- )南アフリカの植物学者。



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ガステリアは赤系統の特徴的な花を咲かせるアロエ類(アロエ属やハウォルチア属などをまとめたグループ)です。属名のガステリア(Gasteria)は胃(garter)から来た名前で、花がちょうど胃袋のような形をしています。ガステリアは花の蜜を求めて訪れるタイヨウチョウにより受粉する鳥媒花です。
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ガステリアの花

ガステリアは1753年に設立されたアロエ属(Aloe L.)に含まれていましたが、1809年にDuvalによりガステリア属(Gasteria Duval)として独立しました。1866年にはプティアス属(Ptyas Salib.)も提唱されましたが、これは現在認められていない属名です。
2022年現在、学術的に認められているガステリアは26種類です。

本日は19世紀にガステリア属として命名された8種類について、異名を含め一覧としました。ガステリア属が創設される前はアロエ属でしたから、初命名は18世紀だったりしますが、ガステリア属が19世紀はじめに創設されましたからガステリア属としての命名は19世紀からということになります。しかし、19世紀に命名されたガステリアは異名が非常に多いですね。
異名は現在の正式な学名につながるHomotypic synonymと、正統性が認められないHeterotypic synonymがあります。
先に命名された学名を優先するという「先取権の原理」がありますから、一番はじめに命名された学名の種小名に正統性があります。ですから、もし属が変更になっても、種小名は基本的にはじめに命名されたものが受け継がれます。
しかし、19世紀のガステリア属の命名者を見てみると、Duval、Haworth、Bakerとアロエ属やハウォルチア属でもお馴染みの学者ばかりですね。

①Gasteria carinata
                (Mill.) Duval, 1809

Homotypic synonym
Aloe carinata Mill., 1768

変種カリナタ
Gasteria carinata var. carinata 

Heterotypic synonym
Aloe tristicha Medik., 1786
Aloe linguiformis DC, 1801
Aloe lingua var. angulata Haw., 1804
Aloe lingua var. multifaria Haw., 1804
Aloe carinata var. subglabra Haw., 1804
Gasteria angulata (Haw.) Duval, 1809
Aloe carinata Kew Gawl., 1810
Aloe excavata Willd., 1811
Aloe angulata Willd., 1811
Aloe angulata var. truncata Willd., 1811
Gasteria glabra Haw., 1812
Aloe leavis Salm-Dyck, 1817
Aloe pseudoangulata Salm-Dyck, 1817
Aloe subcarinata Salm-Dyck, 1817
Gasteria subcarinata
               (Salm-Dyck) Haw., 1819 
Aloe sulcata Salm-Dyck, 1821
Aloe glabra (Haw.) Salm-Dyck, 1821
Gasteria laetepunctata Haw., 1827
Gasteria parva Haw., 1827
Gasteria strigata Haw., 1827
Gasteria undata Haw., 1827
Gasteria sulcata
                (Salm-Dyck) Haw., 1827
Gasteria angulata (Willd.) Haw., 1827
Gasteria leavis (Salm-Dyck) Haw., 1827
Gasteria excavata (Willd.) Haw., 1827
Gasteria humilis Poelln., 1829 
Aloe pusilla Schult. & Schult.f., 1829
Aloe umdata Schult. & Schult.f., 1829
Aloe laetepunctata
         (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Gasteria pallescens Baker, 1880
Gasteria porphyrophylla Baker, 1880
Gasteria parviflora Baker, 1880
Gasteria disticha var. angulata
                        (Willd.) Baker, 1880
Gasteria carinata var. parva
                       (Haw.) Baker, 1896
Gasteria carinata var. strigata
                       (Haw.) Baker, 1896
Gasteria trigona var. kewensis
                        A.Berger, 1908
Gasteria carinata var. falcata
                        A.Berger, 1908
Gasteria carinata var. latifolia
                        A.Berger, 1908
Gasteria bijliae Poelln., 1937
Gasteria schweickerdtiana
                             Poelln., 1938
Gasteria patentissima Poelln., 1940
Gasteria carinata var. glabra
          (Salm-Dyck) van Jaarsv., 1998

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Gasteria carinata var. carinata

変種レツサ
Gasteria carinata var. retusa
                         van Jaarsv., 1992

Homotypic synonym
Gasteria retusa
       (van Jaarsv.) van Jaarsv., 2007

変種ヴェルコサ
Gasteria carinata var. verrucosa
                (Mill.) van Jaarsv., 1992

Homotypic synonym
Aloe verrucosa Mill., 1768
Gasteria verrucosa (Mill.) Duval, 1809

Heterotypic synonym
Aloe acuminata Lam., 1783
Aloe recemosa Lam., 1783
Aloe verrucula Medik., 1784
Aloe carinata DC., 1801
Aloe intermedia Haw., 1804
Aloe lingua Kew Gawl., 1810
Gasteria intermedia
               (Haw.) Haw., 1812
Aloe verrucosa var. striata
                     Salm-Dyck, 1817
Gasteria repens Haw., 1821
Gasteria intermedia var. asperrima
                               Haw., 1821
Aloe verrucosa var. latifolia
                      Salm-Dyck, 1821
Aloe subverrucosa Salm-Dyck, 1821
Aloe subverrucosa var. grandipunctata
                               Salm-Dyck, 1821
Aloe subverrucosa var. parvipunctata
                               Salm-Dyck, 1821
Aloe intermedia var. asperrima
                               Salm-Dyck, 1821
Gasteria subverrucosa
                  (Salm-Dyck) Haw., 1827
Gasteria intermedia var. laevior Haw., 1827
Gasteria intermedia var. longior Haw., 1827
Aloe repens Schult. & Schult.f., 1829
Aloe scaberrima Salm-Dyck, 1834
Gasteria var. intermedia
                           (Haw.) Baker, 1880
Gasteria subverrucosa var. marginata
                                 Baker, 1880
Gasteria radulosa Baker, 1889
Gasteria verrucosa var. scaberrima
                     (Salm-Dyck) Baker, 1896
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Gasteria carinata var. verrucosa

②Gasteria obliqua
               (Aiton) Duval, 1809

Homotypic synonym
Aloe maculata var. obliqua
                     Aiton, 1789
Aloe obliqua (Aiton) Haw., 1804

Heterotypic synonym
Aloe maculata Thunb., 1785
Aloe lingua Kew Gawl., 1806
Aloe nigricans var. fasciata
                      Salm-Dyck, 1821
Gasteria bicolor Haw., 1826 publ. 1827
Gasteria picta Haw., 1827
Gasteria retata Haw., 1827
Gasteria maculata Haw., 1827
Gasteria formosa Haw., 1827
Gasteria maculata var. fallax
                         Haw., 1827
Gasteria fasciata
                      (Salm-Dyck) Haw., 1827
Aloe formosa
           (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Aloe dictyodes Schult. & Schult.f., 1829
Aloe boureana Schult. & Schult.f., 1829
Aloe bicolor 
            (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Aloe vittata Schult. & Schult.f., 1829
Aloe guttata Salm-Dyck, 1834
Aloe quadrangularis Da Pare, 1835
Aloe macchiata Da Pare, 1835
Aloe zeyheri Salm-Dyck, 1836
Aloe marmorata Steud., 1840
Aloe planifolia Baker, 1869
Gasteria variolosa Baker, 1873
Gasteria colubrina N.E.Br., 1877
Gasteria planifolia (Baker) Baker, 1880
Gasteria marmorata Baker, 1880
Gasteriazeyheri (Salm-Dyck) Baker, 1880
Gasteria spiralis Baker, 1880
Gasteria spiralis var. tortulata Baker, 1880
Gasteria maculata var. dregeana
                A.Berger, 1908
Gasteria lingua
            (Kew Gawl.) A.Berger, 1908
Gasteria caespitosa Poelln., 1937
Gasteria chamaegigas Poelln., 1938
Gasteria salmdyckiana Poelln., 1938
Gasteria liliputana Poelln., 1938
Gasteria longiana Poelln., 1938
Gasteria longibracteata Poelln., 1938
Gasteria herreana Poelln., 1938
Gasteria kirsteana Poelln., 1940
Gasteria loeriensis Poelln., 1940
Gasteria multiplex Poelln., 1940
Gasteria biformis Poelln., 1940
Gasteria bicolor var. liliputana
              (Poelln.) van Jaarsv., 1992
Gasteria bicolor var. fallax
               (Haw.) van Jaarsv., 2007
230611120337632
Gasteria obliqua

③Gasteria pulchra
               (Aiton) Haw., 1812

Homotypic synonym
Aloe pulchra (Aiton) Jacq., 1804

Heterotypic synonym
Aloe obliqua DC, 1802
Gasteria poellnitziana
                 H.Jacobsen, 1954


④Gasteria acinacifolia
                  (J.Jacq.) Haw., 1819

Homotypic synonym
Aloe acinacifolia J.Jacq., 1813


Heterotypic synonym
Aloe acinacifolia J.Jacq., 1813
Aloe acinacifolia var. minor
                         Salm-Dyck, 1817
Gasteria nitens Haw., 1819
Aloe acinacifolia var. nitens
                         (Haw.) Haw., 1821
Gasteria venusta Haw., 1827
Gasteria ensifolia Haw., 1825
Gasteria candicans Haw., 1827
Gasteria pluripunctata Haw., 1827
Gasteria  linita Haw., 1827
Aloe ensifolia
        (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Aloe candicans
        (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Aloe venusta
        (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Aloe nitens
        (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Aloe pluripunctata
        (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Gasteria fuscopunctata Baker, 1880
Gasteria acinacifolia var. nitens
                            (Haw.) Baker, 1880
Gasteria acinacifolia var. ensifolia
                        (Haw.) Baker, 1880
Gasteria acinacifolia
     var. pluripunctata (Haw.) Baker, 1896
Gasteria acinacifolia
              var. venusta (Haw.) Baker, 1896
Gasteria huttoniae N.E.Br., 1908
Gasteria lutziii Poelln., 1933
Gasteria inexpectata Poelln., 1938
230521165003542
Gasteria acinacifolia

⑤Gasteria disticha (L.) Haw., 1827
Homotypic synonym
Aloe disticha L., 1753
Ptyas disticha (L.) Salib., 1866


変種ディスティカ
Gasteria disticha var. disticha

Heterotypic synonym
Aloe linguiformis Mill., 1768
Aloe lingua var. crassifolia Aiton, 1789
Aloe lingua var. angustifolia Aiton, 1789
Aloe nigricans Haw., 1804
Aloe obliqua Jacq., 1804
Aloe lingua var. latifolia Haw., 1804
Aloe lingua var. longifolia Haw., 1804
Gasteria nigricans (Haw.) Duval, 1809
Gasteria longifolia (Haw.) Duval, 1809
Gasteria angustifolia (Aiton) Duval, 1809
Aloe obscura Willd., 1811
Aloe longifolia (Haw.) Haw., 1812
Gasteria latifolia (Haw.) Haw., 1812
Aloe nigricans
           var. crassifolia Salm-Dyck, 1817
Gasteria denticulata Haw., 1819
Aloe obtusifolia Salm-Dyck, 1821
Aloe conspurcata Salm-Dyck, 1821
Aloe angustifolia
           (Aiton) Salm-Dyck, 1821
Gasteria mollis Haw., 1821
Gasteria nigricans
        var. crassifolia (Aiton) Haw., 1821
Gasteria disticha var. major Haw., 1827
Gasteria disticha var. minor Haw., 1827
Gasteria obtusifolia Haw., 1827
Gasteria conspurcata
           (Salm-Dyck) Haw., 1827
Gasteria crassifolia
           (Salm-Dyck) Haw., 1827
Aloe mollis
      (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Aloe crassifolia
   (Salm-Dyck) Schult. & Schult.f., 1829
Aloe retusifolia Haw. ex Steud., 1840
Gasteria disticha var. angustifolia
                        Baker, 1880
Gasteria disticha var. conspurcata
                  (Salm-Dyck) Baker, 1880
Gasteria platyphylla Baker, 1880
DSC_0290
Gasteria disticha

変種ロブスタ
Gasteria disticha var. robusta
                        van Jaarsv., 2007


⑥Gasteria nitida
          (Salm-Dyck) Haw., 1827

Homotypic synonym
Aloe nitida Salm-Dyck, 1817
Haworthia nitida
            (Salm-Dyck) G.Don, 1830

変種ニティダ
Gasteria nitida var. nitida

Heterotypic synonym
Aloe nitida var. major Salm-Dyck, 1817
Aloe nitida var. minor Salm-Dyck, 1817
Aloe nitida var. obtusa Salm-Dyck, 1817
Aloe trigona Salm-Dyck, 1821
Haworthia nigricans Haw., 1824
Gasteria obtusa (Salm-Dyck) Haw., 1827
Aloe decipiens (Haw.)
              Schult. & Schult.f. 1829
Gasteria beckeri 
Schönland, 1908
Gasteria stayneri Poelln., 1938


変種アルムストロンギイ
Gasteria nitida var. armstrongii
        (
Schönland) van Jaarsv., 1992
Homotypic synonym
Gasteria armstrongii 
Schönland, 1912
230708163540077
Gasteria nitida var. armstrongii

⑦Gasteria croucheri
              (Hook.f.) Baker, 1880

Homotypic synonym
Aloe croucheri Hook.f., 1869

亜種クロウケリ
Gasteria croucheri subsp. croucheri

Heterotypic synonym
Gasteria disticha var. natalensis
                     Baker, 1880

亜種ポンドエンシス
Gasteria croucheri subsp. pondoensis
           N.R.Croch, Gideon F.Sm.
                       & D.G.A.Styles, 2011

亜種ペンドゥリフォリア
Gasteria croucheri subsp. pendulifolia 
             (van Jaarsv.) Zonn.

Homotypic synonym
Gasteria pendulifolia van Jaarsv., 2001


⑧Gasteria excelsa Baker, 1880
230718170008774
Gasteria excelsa

本日は19世紀に命名されたガステリア属をご紹介しました。明日は20世紀に命名されたガステリア属をご紹介します。
しかし、19世紀と一口に言っても実に長く、命名者も様々です。19世紀初頭はHaworthやDuvalが活躍しています。Haworthは当初はガステリアをアロエ属としていますが、Duvalがガステリア属を創設すると、歩調を合わせるようにHaworthもガステリア属を使用し始めます。しかし、1920年代から活躍するSalm-DyckやSchult. & Schult.f.は、ガステリア属を認めずアロエ属としています。19世紀中頃はSteudやBakerが、やはりアロエ属とする立場です。しかし、Bakerは19世紀後半ではガステリア属を認める立場となっています。結局のところ、19世紀のガステリア属の正式に認められている学名の命名者は、Duval、Haworth、Bakerの3人だけでした。ガステリア属を認めるか否かが重要な分岐点でしたね。

19世紀のガステリア属に関する代表的な命名者たちは以下の通り。

☆Haw.→Adrian Hardy Haworth (1767-1833年)イギリスの昆虫学者・植物学者・甲殻類学者。
☆Duval→Henri August Duval(1777-1814年)フランスの植物学者。
☆Salm-Dyck→Joseph Franz Maria Anton Hubert Ignatz Furst und Altgraf zu Salm-Reifferscheidt-Dyck(1773-1861年)ドイツのアマチュア植物学者。
☆Schult.→Joseph August Schultes(1773-1831年)オーストリアの医師・博物学者。
☆Schult.f.→Julius Hermann Schultes(1804-1840年)オーストリアの植物学者。Joseph August Schultesの息子。
☆Kew Gawl.→John Bellenden Kew、元John Gawler(1764-1842年)イギリスの植物学者。
☆Steud→Ernst Gottlieb von Steudel(1783-1856年)ドイツの医師・植物学者。
☆Baker→John Gilbert Baker(1834-1920年)イギリスの植物学者。


ちなみに、G. nitida var. armstrongiiについては、armstrongiiはG. nitidaの変種ではない可能性が出てきました。2021年に出た『Phylogeny of the Southern African genus Gasteria duval (Asphodelaceae) based on Sanger and next generation sequencing data』という論文では、遺伝子解析により別種とすべき結果が得られています。今後、armstrongiiは独立するかもしれません。



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本日はヴロキイという名前の南アフリカ原産のガステリアをご紹介します。
ヴロキイは東ケープ州のHankey郊外のKouga地方に自生します。自然保護区の岩肌に生えるために保護の必要はないそうです。標高1000-1500メートルの石英質砂岩地の、ミネラル分が少ない砂質の腐食土壌がたまった岩の割れ目や隙間に生えます。pH4.1という非常に強い酸性条件で育つようです。生息地にはSenecio crassulifolius、Crassula atropurpurea、Crassula ericoides subsp. tortuosa、Adromischus maculatusなどが生えるそうです。

DSC_1793
Gasteria vlokii

ヴロキイは1984年に南アフリカの植物学者であるJan Vlokが、Waboomsbergの1946メートルの岩肌で発見しました。高地の湿ったフィンボス(夏に乾燥する冬の降雨地域)ではじめて発見されたガステリアということで、驚きをもって受け止められました。
ヴロキイは南アフリカの植物学者であるErnst van Jaarsveldが1987年にGasteria vlokii van Jaarsv.と命名しました。vlokiiは発見者であるJan Vlokに対する献名です。

ガステリア属は南アフリカ原産ですが、種類ごとの分布が近いものは遺伝的にも近縁であることがわかりました。以下に示すのはガステリアの遺伝子解析の結果です。ヴロキイは南アフリカ南西部のガステリアと近縁です。


┏━━━━━━━━━━G. pillansii

┃    ┏━━━━━━━━G. vlokii
┃    ┃
┃┏┫    ┏━━━━━━G. koenii
┃┃┃┏┫
┫┃┃┃┗━━━━━━G. brachyphylla
┃┃┗┫
┃┃    ┃    ┏━━━━━G. thunbergii
┃┃    ┃┏┫
┃┃    ┃┃┗━━━━━G. carinata 
┃┃    ┗┫                      var. glabra
┗┫        ┃┏━━━━━G. retusa
    ┃        ┗┫
    ┃            ┃┏━━━━G. carinata
    ┃            ┗┫
    ┃                ┃┏━━━G. langebergensis
    ┃                ┗┫
    ┃                    ┗━━━G. disticha
    ┃
    ┃    ┏━━━━━━━G. bicolor                          
    ┃┏┫                                         
    ┃┃┗━━━━━━━G. rawlinsonii                 
    ┃┃                                             
    ┗┫┏━━━━━━━G. nitida 
        ┃┃
        ┃┃         ┏━━━━G. excelsa
        ┃┃     ┏┫
        ┃┃     ┃┗━━━━G. pulchra
        ┃┃     ┃
        ┃┃┏ ┫ ┏━━━━G. ellaphieae                         
        ┃┃┃ ┃ ┃ 
        ┃┃┃ ┃ ┃    ┏━━G. polita
        ┗┫┃ ┗ ┫┏┫
            ┃┃      ┃┃┃┏━G. acinacifolia
            ┃┃      ┃┃┗┫
            ┃┃      ┗┫    ┗━G. barbae
            ┃┃          ┃
            ┃┃          ┃┏━━G. armstrongii
            ┗┫          ┗┫
                ┃              ┃┏━G. glauca
                ┃              ┗┫
                ┃                  ┗━G. glomerata
                ┃
                ┃    ┏━━━━G. croucheri
                ┃┏┫
                ┃┃┗━━━━G. loedolffiae
                ┗┫
                    ┃┏━━━━G. tukhelensis
                    ┗┫
                        ┃┏━━━G. batesiana
                        ┗┫            var. batesiana
                            ┗━━━G. batesiana
                                            var. dolomitica


ヴロキイは花の形状からは、G. glauca、G. ellaphieae、G. nitidaと近縁とされてきましたが、遺伝子解析の結果からは支持されません。

世の中には多肉植物ブームなるものが、私が知らない間にあったらしいです。しかし、その時の一時の過熱はなくなったものの、どうも多肉人口が増えたせいか多肉植物自体は以前より今の方が色々入ってきているように思います。そんな中でも、何故かガステリアは見かけません。もちろん、臥牛や恐竜は見かけますけど、それ以外の種類、しかも原種となると中々厳しいところです。私もチマチマ集めてはいますが、ガステリアは現在8種類のみです。先日のビッグバザールでも、ガステリアはほぼありませんでした。しかし、ガステリアは非常に美しいので、もう少し流行って欲しいところですね。


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最近、多肉植物栽培の大先輩とお知り合いになりまして、色々と教えていただいております。私自身はと言うと、ブログではあれやこれやと情報をひけらかしてはいますが、何せ経験が浅いもので表面的な知識ばかりで頭でっかちな部分がたぶんにあります。実際の経験豊かな先輩方にご指摘いただけると、私も非常に嬉しく勉強になります。そんな中、ラウリンソニーについて何か情報はありませんかというリクエストをいただきました。ラウリンソニーとは一体どのような植物なのでしょうか?

さて、ラウリンソニー、つまりG. rawlinsoniiはガステリア属の一種ですが、茎が長く伸びて一見してガステリアとは思えない非常に変わった姿をしています。私も図鑑で見たことはありますからその存在自体は知っていましたが、実際に見たことはありません。大型園芸店や即売会でも、まずお目にかかれないレア多肉です。
私自身、ガステリア属にかなりの興味がありますから、最近は色々と調べものをしています。そんな中、ガステリア属について書かれたいくつかの面白い論文を見つけました。そこでは、G. rawlinsoniiの立ち位置は中々面白いように思えます。

論文
2005年に出された『Taxonomy implication of genomic size for all species of the genus Gasteria Duval (Aloaceae) Plant Systematics and Evolution』という論文をまず紹介します。この論文は簡単に言うと、ガステリア属の核DNA(ゲノム)のサイズを測定しましたよというものです。種によってゲノムのサイズが異なり、面白いことにG. rawlinsoniiがもっとも小さく、次に内陸部に自生する13種がG. rawlinsoniiより大きく、さらに沿岸部に自生する5種、そして一番ゲノムサイズが大きいのはG. batesianaということです。著者はゲノムサイズが小さいG. rawlinsoniiがもっとも原始的で、そこから内陸部→沿岸部→北東部(G. batesiana)という風に分布を拡大しながら進化したのではないかと考えているようです。筆者の一人はvan Jaarsveldですが、この論文の前まではG. batesianaがもっとも原始的と考えていたそうです。
しかし、残念ながら2021年に出されたPhylogeny of the Southern African genus Gasteria duval (Asphodelaceae) based on Sanger and next generation sequencing data』という論文を読むと、2005年の論文の考察は否定されています。こちらの論文は遺伝子解析の結果ですから、より正確なはずです。2021年の論文では、西部に分布するG. pillansiiがもっとも原始的で、そこから東部に向かい最先端にいるのがG. batesianaということになりました。結果的にG. rawlinsoniiはG. bicolorともっとも近縁で、G. nitidaと合わせた3種類が非常に近いグループを形成しているそうです。
まあ、2005年の論文を最初に読んだ時に、ゲノムサイズにそれほど大きな差はない様に見えました。差はありますが、非常に僅差です。G. batesianaは他のガステリアと差ははっきりあるように見えましたが、その他は微妙なところです。これは、根拠のない憶測ですが、ガステリア属の分布拡大の最前線にいるG. batesianaは適応のためにゲノムが複雑となりサイズが巨大化し、逆にG. rawlinsoniiは環境適応が完了したのでいらないゲノムを捨てたのかもしれません。

自生地
G. rawlinsoniiは南アフリカの東ケープ州Baviaanskloof山とKouga山でのみ見られるそうです。標高300~700mのミネラルの少ない日陰の多い断崖に生えます。岩の割れ目に根を伸ばして、長い茎を下に垂らして育ちます。最大1~2m程度まで伸びるということです。
しかし、本当に切り立った崖に張りつくように育ち、採取もまったく不可能なため、今のところ絶滅の心配はないようです。海外のサイトでは「自然によって十分に保護されている」という面白い書かれ方をしていました。
そういえば、土壌は弱酸性で意外と腐植土が豊富と言われています。しかし、この弱酸性というのは曲者で、酸性土壌とは別物だったりします。何せ"弱"とありますから、ほぼ中性付近と考えた方が良いでしょう。変に酸性土壌にしようとすると、上手くいかないかもしれません。
G. rawlinsoniiの生える崖にはBulbine cremnophila、Cyrtanthus montanus、Cyrtanthus labiatus、Haworthia gracilis var. picturara、Haworthiopsis viscosa、Plectranthus verticillatus、Othonna lobata、Cotyledon tomentosa、Adromischus cristatus var. zeyheri、Delorperma esterhuyseniae、Albuca cremnophilaなどが見られるとのことです。
ガステリア属は葉挿しで増やせますが、ラウリンソニーは葉挿しがあまり上手くできないと良く言われます。まったく出来ないわけではないようですが、難しいようです。これは、断崖に生えるため、取れた葉が活着出来ないからではないかと言われているみたいです。


育て方の謎
G. rawlinsoniiは国内ではまったくと言っていいほど情報がないため、海外のサイトを色々と閲覧しましたが中々育て方について参考となりそうな記事は見つけられませんでした。
ただ、G. pillansiiは茎が長く育ちますが、根元の古い葉はやがて枯れ落ちます。しかし、どうやら下葉の残り具合は様々なようです。何が違うのでしょうか?
それから、G. rawlinsoniiの沢山の写真を見ていて気が付いたのですが、仕上がりが綺麗な株は地植えが多い様な気がします。ここに育成のヒントがあるのかもしれません。もしかしたらですが、地植えだと根詰まりや土壌の酸性化が起きないため生長が早く、下葉が落ちる前に長く伸長しているのかもしれません。生長が緩やかだと、長く伸びる前に下葉が古くなってしまいますからね。原因がこれらの場合、鉢植えでは植え替えをこまめに行えばある程度は解決出来そうです。
あと、意外にも葉はやたらに深い緑色であることに気が付きました。思ったより強く遮光しているのでしょうか?  あまり遮光すると貧弱に育ってしまうかもしれませんから、これはこれで中々加減が難しそうです。
そういえば、Aloidendron dichotomum(=Aloe dichotoma)では、遮光して水多目で育てると下葉があまり落ちないで育ちますが、無遮光で乾燥させて育てると下葉は直ぐに落ちて常に先端の方だけに葉があるようになります。これも似たような現象かもしれません。

二列生
今回、G. rawlinsoniiについて海外のサイトをあちこち閲覧していた時に、やたらと"葉はdistichousである"と書かれていました。最初何のことだろう?と思いましたが、日本語では「二列生」と訳すようです。意味は、葉が互い違いに出て、左右に並ぶことだそうです。「ガステリア属の幼若植物は二列生だが、成熟するとロゼットを形成する種が多い」の様に使えます。大変便利な言葉ですね。

学名
ラウリンソニーの学名は1976年に命名されたGasteria rawlinsonii Oberm.です。Oberm.は南アフリカの植物学者であるAnna Amelia Mauve (旧姓 Obermeyer)のことです。南アフリカとローデシア(ジンバブエ)で採取した4000以上の植物をカタログ化したことで知らています。


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最近、ガステリアが気になって仕方ありません。まったくもって、すっかり流行りから外れた感のあるガステリアですが、だからといってその美しさや素晴らしさが減衰したなんてことはありません。そんなこんなで、じわじわガステリアを集めはじめていますが、最近記事にするようになってからは、論文も少し読んだりしています。そんな論文ですが、中々面白いことが書いてあり、特にガステリア・ピランシーの立ち位置が意外と重要かもしれないと考えさせられました。
ガステリア・ピランシーは南アフリカ西部に分布する大型のガステリアです。しかし、遺伝子解析の結果から、ピランシーはガステリア属の中でも系統的には原始的とされています。


DSC_1615
ピランシーの苗。

2021年に出た『Phylogeny of the Southern African genus Gasteria duval (Asphodelaceae) based on Sanger and next generation sequencing data』という論文では、何とガステリア属29種の遺伝子を解析して、系統関係を推測しています。シークエンス解析という遺伝子の配列を読む技術があるのですが、その中でもサンガー法という方法があり、そのサンガー法と新しいシークエンス技術で解析した論文です。ここでは、細かい技術的な話や系統解析の議論は省略して、最終的な結論のみを示します。種と種の関係性と、進化の道筋を示した分子系統です。

南アフリカを大まかに北西部、南西部、南部、南東部、北西部に分けると、それぞれの産地のガステリアは遺伝的に近いことが分かりました。面白いのは、ガステリア属は南アフリカの北西部で生まれて、①→②→③→④→⑤と西から東へ分布を拡げながら東進して様々な種に別れたように見えるのです。この系統の根元にある①北西部産ガステリアとはGasteria pillansiiのことです。

ガステリア属の分子系統
┏━━━━①北西部産ガステリア
┃                    (G. pillansii)
┫┏━━━②南西部産ガステリア
┃┃
┗┫┏━━③南部産ガステリア
    ┃┃
    ┗┫┏━④南東部産ガステリア
        ┗┫
            ┗━⑤北東部産ガステリア


②南西部産ガステリア
┏━━━━━━G. vlokii

┫    ┏━━━━G. koenii
┃┏┫
┃┃┗━━━━G. brachyphylla
┗┫
    ┃    ┏━━━G. thunbergii
    ┃┏┫
    ┃┃┗━━━G. carinata 
    ┗┫                      var. glabra
        ┃
        ┃┏━━━G. retusa
        ┗┫
            ┃┏━━G. carinata
            ┗┫
                ┃┏━G. langebergensis
                ┗┫
                    ┗━G. disticha

③南部産ガステリア
④南東部産ガステリア
⑤北東部産ガステリア
    ┏━━━━━━━③G. bicolor                          
┏┫                                         
┃┗━━━━━━━③G. rawlinsonii                 
┃                                             
┫┏━━━━━━━③G. nitida 
┃┃
┃┃         ┏━━━━④G. excelsa
┃┃     ┏┫
┃┃     ┃┗━━━━④G. pulchra
┃┃     ┃
┃┃┏ ┫ ┏━━━━④G. ellaphieae                         
┃┃┃ ┃ ┃ 
┃┃┃ ┃ ┃    ┏━━④G. polita
┗┫┃ ┗ ┫┏┫
    ┃┃      ┃┃┃┏━④G. acinacifolia
    ┃┃      ┃┃┗┫
    ┃┃      ┗┫    ┗━④G. barbae
    ┃┃          ┃
    ┃┃          ┃┏━━④G. armstrongii
    ┗┫          ┗┫
        ┃              ┃┏━④G. glauca
        ┃              ┗┫
        ┃                  ┗━④G. glomerata
        ┃
        ┃    ┏━━━━⑤G. croucheri
        ┃┏┫
        ┃┃┗━━━━⑤G. loedolffiae
        ┗┫
            ┃┏━━━━⑤G. tukhelensis
            ┗┫
                ┃┏━━━⑤G. batesiana
                ┗┫                      var. batesiana
                    ┗━━━⑤G. batesiana
                                               var. dolomitica

論文の内容はここまでとして、ピランシーの自生地の情報を調べて見ました。
ピランシーは"Namaqua gasteria"の名前の通り、ナマクアランドに生えます。分布で言うと、南アフリカとナミビア最西端です。ピランシーはアフリカ西岸に生える唯一のガステリアで、また冬に雨季がある地域なんだそうです。夏は40℃に達します。
ピランシーはナマクアランドの海岸の断崖から標高1000mまで見られ、低木の下や岩陰に生えます。pHは6.8~7.8ですから、どちらかと言えば弱アルカリ性で育つと言えます。
自生地では、根元から子を吹いて約150個体が密集して1mほどの塊となるそうです。
Clanwilliamの南では、Diospyros ramulosa(柿の仲間)やMontinia caryophyllacea(乾燥地の低木)の陰にピランシーは生え、Lampranthus thermarum(マツバギクの仲間)やTylecodon paniculatus("阿房宮")、Tylecodon reticulatus("万物想")、Cotyledon orbiculata、Stapelia hirsuta、Prenia pallensがともに生えます。
Port Nolloth地域のOograbies山では、ピランシーはTylecodon racemosusやTylecodon similis、Tylecodon schaeferianus("群卵")、Haworthia arachnoidea、Crassula hemisphaerica("巴")、Crassula columella、Conophytum stephaniiなどが生える、世界有数の多肉植物の産地に生えます。しかし、これだけ分布域が広く、しかも個体数が多いためまったく保護の必要はないとのことです。


ピランシーの学名は1910年に命名されたGasteria pillansii Kensitです。Kensitは南アフリカの植物学者、分類学者のHarriet Margaret Louisa Bolusです。Kensitは旧姓で、一般にはL.Bolusの略名で知られているかもしれません。L.Bolusはアフリカ多肉植物協会の副会長や南アフリカ王立協会のフェローなど歴任し、大変な業績のある人物のようです。
また、ピランシーには1929年に命名されたGasteria neliana Poellnという異名があります。
ピランシーには変種があり、2007年に命名されたGasteria pillansii var. hallii van Jaarsv.と、1992年に命名されたGasteria pillansii var. ernesti-ruschii (Dinter & Poelln.) van Jaarsv.があります。var. ernesti-ruschiiは1938年に命名された時はGasteria ernesti-ruschii Dinter & van Jaarsv.でしたが、現在はピランシーの変種となりました。
G. pillansii var. halliiは、Port Nolloth近くのOograbies山、G. pillansii var. ernesti-ruschiiはナミビア極北から知られています。



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臥牛と言えばガステリアの代表格です。ガステリア自体はあまり販売していませんが、臥牛の美しい品種はまだ見る方です。そんな臥牛の学名と言えば、Gasteria nitida var. armstrongiiとして知られています。しかし、最新の論文では臥牛はニチダの変種ではないとされています。どういうことなのでしょうか?

臥牛はニチダの変種であり、ネテオニーの可能性があると言わることもあります。ネテオニーとは日本語では幼形成熟ですが、例えば昔流行ったウーパールーパーなるサンショウウオがありましたが、あれは幼生のまま育って成熟したメキシコサラマンダーです。同様に、ニチダは幼体のうちは左右に葉が並びますが、育つと葉は旋回してアロエの様なロゼットを形成します。しかし、臥牛の葉は旋回しません。よって、臥牛はニチダの幼体のまま育ったものだと言うのです。
なぜ、その様に言われるのかは定かではありませんが、ニチダとアームストロンギイは分布域が重なり、Gamtoos river付近では混在するからかもしれません。

最新の遺伝的解析による分子系統を示します。2021年に出たPhylogeny of the Southern African genus Gasteria duval (Asphodelaceae) based on Sanger and next generation sequencing data』という論文です。
G. nitidaはG. rawlinsonii、G. bicolorと近縁とされます。しかし、アームストロンギイは必ずしもニチダに近縁ではないため、G. armstrongiiとして独立種とされています。そのG. armstrongiiは、G. glaucaやG. glomerataと近縁であり、G. polita、G. acinacifolia、G. barbaeと姉妹群を形成しています。


    ┏━━━━━━━G. bicolor                          
┏┫                                         
┃┗━━━━━━━G. rawlinsonii                 
┃                                             
┫┏━━━━━━━★G. nitida 
┃┃
┃┃         ┏━━━━G. excelsa
┃┃     ┏┫
┃┃     ┃┗━━━━G. pulchra
┃┃     ┃
┃┃┏ ┫ ┏━━━━G. ellaphieae                         
┃┃┃ ┃ ┃ 
┃┃┃ ┃ ┃    ┏━━G. polita
┗┫┃ ┗ ┫┏┫
    ┃┃      ┃┃┃┏━G. acinacifolia
    ┃┃      ┃┃┗┫
    ┃┃      ┗┫    ┗━G. barbae
    ┃┃          ┃
    ┃┃          ┃┏━━★G. armstrongii
    ┗┫          ┗┫
        ┃              ┃┏━G. glauca
        ┃              ┗┫
        ┃                  ┗━G. glomerata
        ┃
        ┃    ┏━━━━━G. croucheri
        ┃┏┫
        ┃┃┗━━━━━G. loedolffiae
        ┗┫
            ┃┏━━━━━G. tukhelensis
            ┗┫
                ┃┏━━━━G. batesiana
                ┗┫                     var. batesiana
                    ┗━━━━G. batesiana
                                             var. dolomitica

私が学名の根拠としている『The World checklist of Vascular Plants』によると、臥牛はGasteria nitida var. armstrongiiとなっています。しかし、その根拠は2003年の『Plants of Southern African  : an annotated checklist.』と『World Checklist of Seed Plants Database in Access G』によります。
しかし、これらは最新情報に改定を繰り返しますから、次の改定では学名が変わるかもしれませんね。
ニチダの学名は1817年に命名されたAloe nitida Salm-Dyckが最初ですが、1827年にはGasteria nitida (Salm-Dyck) Haw.となり、これが現在認められている学名です。1830ににはHaworthia nitida (Salm-Dyck) G.Donも提唱されましたが、認められておりません。
臥牛の学名は1912年に命名されたGasteria armstrongii 
Schönlandですが、1992年にはGasteria nitida var. armstrongii (Schönland) van Jaarsv.とされました。果たして最新の研究結果からG. armstrongiiが認められるのでしょうか。その場合、昔の学名に戻ることになりますね。

DSC_1614
Gasteria armstrongii GM07c-5
フィールドナンバー付き。典型的な臥牛ではありませんが、これはこれで個性的。


臥牛はJeffreys Bayと東ケープ州のGamtoos riverに分布します。臥牛はガステリアの自生地に多い崖地ではなく、小石が多い平坦あるいは丘陵地に自生するようです。自生地には、Pachypodium bispinosum、Boophone disticha、Bergeranthus glenensis、Euphorbia gorgonis、Freesia alba、Crassula tetragona subsp. acutifoliaが見られるとのことです。
しかし、臥牛は野生株は絶滅危惧IA類という最も高いレベルの危機に瀕しています。臥牛は平坦地に生えることから採取しやすく、園芸的に人気があるため盗掘の被害にあっているそうです。また、平坦地ということで、農業用地として開拓されてしまうことにより、自生地が失われています。人の生活圏と生息地が重ってしまうと、生息地が失われて危機に瀕するというのはよくある話ですが、多肉植物好きとしてはとても悲しく思います。





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最近、ハウォルチオプシスやらアストロロバやら、いわゆるアロエ類に興味があります。詳しく知りたくなり、アロエ類についての論文を読んで紹介したりしました。

アロエ類と言えば当時ながらアロエ属とハウォルチア属、さらにはツリスタ属、アストロロバ属、ハウォルチオプシス属と手を広げてきました。そうなると、俄然ガステリア属にも興味が湧いてくるのは自然の摂理というものでしょう(?)。
さてそんな中、エラフィエアエというガステリアを入手しました。白点が密に入る、いかにもガステリアらしい美しい種類です。どのような植物なのでしょうか?

DSC_1592
Gasteria ellaphieae
エラフィエアエは画像の様に多肉質の平たい葉が左右に伸びていますが、生長すると葉が旋回してロゼットを形成するようです。これからの生長が楽しみです。


エラフィエアエの原産地は南アフリカの東ケープ州にあるKougaダム地域とのことです。私がおやっと思ったのは、先週記事にした「白雪姫」ことGasteria glomerataもやはりKougaダムと関係があるからです。そういえば、エラフィエアエの学名の命名は1991年のGasteria ellaphieae van Jaarsv.ですが、グロメラタもやはり1991年にvan Jaarsveldに命名されています。エラフィエアエ自体はvan JaarsveldがKouga地域でAloe pictifoliaを探していた時に偶然発見したようですが、この時にグロメラタも発見されたのかもしれませんね。
エラフィエアエもグロメラタと同様に、切り立った崖の斜面に生えるそうです。そして、やはりタイヨウチョウによって受粉されるというところも同様です。


グロメラタの記事はこちら。
何でも、エラフィエアエの自生地には竜城Haworthiopsis viscosaやHaworthia isabellaeが生えるということです。この様な自生地にともに生える植物の情報は興味深くもっと知りたいのですか、調べてもあまり出てこないのが現状です。いちいち論文で確認を取るのは中々手間がかかりますから難しいところです。(※古い論文は紙の出版物ですから、デジタル化されていません。ネットで探してもないことも良くあります)

しかし、ガステリア自体は昔から流通していますが、実際にはそれほど販売していませんね。要するに人気が今一つなのでしょう。ビッグバザールでも見かけたガステリアは流麗な斑入り品種、臥牛系交配種や選抜品種、あるいは恐竜ぐらいだったような気がします。ちなみに恐竜はピランシーのことだったり、ピランシー系交配種も恐竜と呼んだりもするらしく、あやふやすぎていまいち手が出せません。
ガステリアは日本でも長い歴史があり、ガステリア・ファンにより優れた品種が沢山作られてきました。しかし、私は何だかんだ言っても原種が好きなので、かつての流行にも乗れないでいます。原種はあまり入手出来ないでいますが、イベントなどでの一期一会を楽しみにしていますから、ネット販売品をかき集めたりはせず、ゆっくり集めていきたいと思っております。まあ、ネット販売品は明らかに名前が違っていたり、最近では徒長していたり腐りかけていたり、怪しげなものが多すぎることもありますけどね。いくつかの販売サイトは、記事を書くための情報収集としてサイトを見ようとしたらウイルスソフトが詐欺サイトと判断して警告を出してくる始末です。何とも困ったことです。



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先週、Gasteria glomerataについての記事をまとめました。その記事のコメント欄で、Gasteria batesiana var. dolomiticaについてリクエストがありました。
調べてみますと中々面白いガステリアであることは分かりました。しかし、私自身はドロミチカを育てておりませんから、写真もないし記事としてはややつまらないのではと思いまして、ガステリアについて書かれた論文の軽い紹介も含め一つの記事とさせていただきます。

バテシアナとドロミチカ
さて、ドロミチカの基本情報の紹介です。しかし、ドロミチカはバテシアナの変種ですから、バテシアナについても解説します。そういえばバテシアナは「春鶯囀」なる名前がつけられていますね。
ここで一つ注意しなければならないことがあります。Gasteria batesianaは、Gasteria batesiana var. batesianaのことを言っている場合と、G. batesiana var. batesianaとG. batesiana var. dolomiticaを合わせた総称のことを言っている場合があります。学術的には単にGasteria batesianaと書いた場合は変種も全て含めた総称ですが、園芸的・あるいは趣味家がGasteria batesianaと書いた場合はvar. batesianaのことを言っています。ですから、園芸的には、春鶯囀=G. batesiana var. batesianaと、G. batesiana var. dolomiticaがあって区別しますが、var. batesianaは省略されて単にG. batesianaと表記されてしまいます。実にややこしいですね。
ですから、ここで言うバテシアナはvar. batesianaとvar. dolomiticaを合わせた解説と思って下さい。

分布域
バテシアナの分布はKwaZulu-Natal北部のTukhela (Tugela) riverの北部からLimpopo州のOlifants riverまでの内陸部の断崖の東側に自生します。実はバテシアナはガステリア属の中で最も北に自生する種であることが知られています。その中でもドロミチカはMpumalangaの切り立ったドロマイトの崖に自生しますが、ドロミチカはバテシアナの中でも自生地は最北端にあるとのことです。

ドロマイトについて
ここで一つドロマイトについて、考えたいことがあります。ドロマイトは苦灰石あるいは白雲石と呼ばれますが、苦灰石の苦(苦土)=マグネシウム、灰(石灰)=カルシウムを示しています。つまり、ドロマイトはマグネシウムとカルシウムを含んだ鉱物であるということです。ドロマイトはカルシウムを含むためアルカリ性ですが、このアルカリ性かつマグネシウムを含むという特徴はかなり重要なことに思えるのです。

畑に野菜などを作る時に石灰を撒きますが、あれは酸性に傾きすぎた土をアルカリ性で中和するためです。別に土をアルカリ性にしているわけではありません。微生物の働きで酸が出来ます。さらに、植物の根からも酸が出ますから、土はやがて酸性が強くなり、植物の栽培に適さなくなります。ですから、石灰を撒くわけです。
ただし、水田に鉄分とケイ素補給のために撒く「ケイカル」を畑に撒くと、土は何年もアルカリ性になります。しかし、土がアルカリ性だと何故か作物の出来がいまいちとなり勝ちでした。その原因は、アルカリ性だとマグネシウムの吸収が悪くなるためと考えられています。

現在戦火に見舞われているウクライナは昔から優れた穀倉地帯として有名ですが、土壌はアルカリ性です。何故、作物が育つのでしょうか。それは土壌にマグネシウムが豊富に含まれているからです。日本の土壌はミネラルが余りありませんから、マグネシウムを畑に撒けばアルカリ性でも問題なく作物は育ちます。話をまとめると、土壌がアルカリ性だとマグネシウムの吸収を阻害するものの、マグネシウムが豊富なら問題はないということです。

よって、ドロマイトはアルカリ性ですが、マグネシウムを含むためドロミチカは生育できるのではないかということです。ドロミチカの栽培はアルカリ性にした方が良いかは分かりませんが、もし石灰を撒いてアルカリ性にするならば、マグネシウムもあった方が良いいと思います。やはり、ただの石灰ではなくマグネシウムが豊富な苦土石灰が良いのではないでしょうか? 苦土石灰は苦土=マグネシウム、石灰=カルシウムですが、これは苦灰石(ドロマイト)と同じですね。調べたところ、なんと苦土石灰はドロマイトを粒状に加工したものとのことです。苦土石灰を与えることが、ドロミチカの生育にプラスになるかもしれません。


保全状況
学術調査によるとバテシアナは自生地では非常に希な植物とのことです。しかし、現地ではバテシアナは薬用植物として利用されています。詳細は書かれていませんでしたが、ただの薬草ではなく呪術的な意味合いがあるようです。アフリカには呪術医(ウイッチドクター)がおり、未だに幅を利かせていますからね。まあ、それでもバテシアナは崖に生えますから、採取できない高さにあるものは無事とのことです。いずれにせよ、珍しい植物であることは間違いありません。

新しい論文
ガステリア属は見分けるべき特徴が少なく、皆良く似ているため、学者泣かせの植物です。生長に伴い葉の形が変わったりもしますから、その分類や系統関係の推測はさらに難しいものとなっています。
2021年に出た『Phylogeny of the Southern African genus Gasteria duval (Asphodelaceae) based on Sanger and next generation sequencing data』という論文では、何とガステリア属29種の遺伝子を解析して、系統関係を推測しています。ただし、この論文は100ページを超える大部なもので、まだ全てを読めてはいません。とりあえず、バテシアナについてのみ見てみると、以下の様な系統となっています。


        ┏━━G. batesiana
    ┏┫            var. dolomitica
    ┃┗━━G. batesiana
┏┫                var. batesiana
┃┗━━━G. tukhelensis

┃┏━━━G. croucheri
┗┫
    ┗━━━G. loedolffiae

この系統図を見た時に、おやっと思いました。南アフリカの東側のガステリアの分布と、分子系統がぴったり合っているからです。南アフリカのガステリアは東側では、G. loedolffiae→G. croucheri→G. tukhelensis→G. batesiana→G. batesiana var. dolomiticaという順番で北東に並ぶように分布します。どうやら、南アフリカの南端から東側にガステリア属が分布を拡げたようです。現在、その最先端がドロミチカと言えるのかもしれません。

鳥媒花
ガステリア属は鳥に花粉を運んでもらう鳥媒花です。それは、ドロミチカも同様です。花粉を運ぶのは、蜜を吸いにくるタイヨウチョウです。ちなみに、タイヨウチョウは南アフリカに21種類いるそうです。

面白い増えかた
ドロミチカは葉先が土に触れると、なんと葉先から子を吹く性質があります。葉が反り返る形状からして、地面に葉先が触れる事が多いのかもしれません。根元からのみ子吹きするよりも、少し離れた場所に新しい株が定着すれば、分布を拡大するに当たって有利なのでしょう。

学名
バテシアナの学名は1955年に命名されたGasteria batesiana G.D.Rowleyです。ドロミチカは1999年に命名されたGasteria batesiana var. dolomitica van Jaarsv. & A.E.Wykです。命名者はともに南アフリカの植物学者であるErnst van JaarsveldとAbraham Erasmus van Wykです。 



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グロメラタは南アフリカ原産のガステリアです。色や模様、形にしろガステリアとしては全体的にのっぺりとしていますが、それが逆にガステリアとしては特徴的です。白っぽいからか「白雪姫」なる名前もあるようです。私は見かけた時に、あまりにもかわいらしいので衝動買いしてしまいました。

DSC_1594
グロメラタはというか、一般的にガステリアはやや遮光気味に育てます。それは、ガステリアの多くの種で見られる深く濃い緑色からも、強光に対する耐性のなさを予感させます。しかし、グロメラタはガステリアとしては異様に色白です。他のガステリアと比べてある程度は強い日照が必要なのではないかと、心配してしまいます。とりあえずは他のガステリアと並べて育てますが、しばらくは生育具合を注視していきたいと思います。

最近、Euphorbia clivicolaは自生地の環境破壊により絶滅が危惧されているという記事を書きました。多肉植物好きとしては、これは大変残念に思います。そんなこともあり、最近では自生地の状況が気になって仕方がありません。さて、グロメラタは果たしてどうなのでしょうか。
海外のサイトを見ていたら情報がありました。南アフリカのケープ州南東部にある、Kougaダムの一部であるKouga riverの下流に限定されるとのことです。しかし、グロメラタは標高500~700mの垂直な断崖に生えるため、自生地は人に脅かされる心配はないということです。アフリカでは多肉植物の自生地に人が住んでいますから、大なり小なり影響を受けており、こういう例は幸運な部類でしょうね。そういえば、かつてGasteria baylissianaの情報を調べたことがありますが、やはり似たような急峻地に生えるとありました。ガステリアは崖地に生えがちなのでしょうか? もう少し勉強する必要がありそうです。

そういえば、ガステリア属は鳥に受粉してもらうために、花が特殊化したということを最近論文を読んでいて知りました。グロメラタはタイヨウチョウが受粉を行うそうです。タイヨウチョウはメタリックな色彩が大変美しい小型の鳥ですが、花の蜜を吸うことに特化した鳥なんだそうです。


グロメラタの学名は1991年に命名されたGasteria glomerata van Jaarsv.です。van Jaarsv.は南アフリカの植物学者のErnest Jacobus van Jaarsveldのことです。


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最近、ハウォルチアが気になっていて、ハウォルチア、ハウォルチオプシス、ツリスタを集めてきました。そこから派生してアストロロバ、そしてついにはガステリアに手を出し始めたわけです。とは言うものの、ガステリアはそこいら辺で売っていないので実にもやもやしていました。そこで、池袋の鶴仙園に突撃して、ついにガステリア・カリナタを入手したわけです。
ガステリア・カリナタは南アフリカ原産のガステリアです。非常に多様性が大きく、外見は個体差があります。しかし、美しい…


DSC_1420
Gasteria carinata

アロエはまだ小さい苗では、葉がガステリアの様に左右に並びます。そしてある程度育つと、葉が旋回をはじめて、やがてロゼットを形成します。Gasteria carinataも若いうちは左右に葉が並びますが、ある程度大きくなると葉が旋回を始めます。私の入手個体は旋回を始めたばかりみたいです。ガステリアの葉は一般的に肉厚ながらも扁平形ですが、カリナタは成熟するとキールが出来て断面が三角形になります。

ガステリア・カリナタは原産地では灌木の陰に生えるということですので、強光線には耐性はなさそうです。
ガステリアの耐寒性は一般的にあまり高くないと言われますが、冬でも戸外で放置されているガステリアを見かけますから意外と耐寒性は高いような気もします。海外のサイトを見ると、アメリカのハーディネスゾーンであるUSDAゾーンは9b~11bということですので、最大マイナス3.9℃程度には耐えられるとされているようです。


カリナタの学名は1809年に命名されたGasteria carinata (Mill.) Duvalです。1768年にはAloe carinata Mill.でしたが、ガステリア属に移動しました。
詳細な情報がない学名として、Gasteria retusa (VanJaarsv.) VanJaarsv.があります。
変種は2つあり、1992年に命名されたGasteria carinata var. verrucosa (Mill.) VanJaarsv.は、Aloe verrucosaと呼ばれていたものです。日本では白青竜と呼ばれています。1998年に命名されたGasteria carinata var. thunbergii (N.E.Br.) VanJaarsv.は、かつてGasteria thunbergiiと呼ばれていたものです。

それはそうとして、Gasteria carinata var. carinataの異名は沢山というか40以上あるみたいですが、調べても経緯がわからない学名(異名)が多くて困惑しています。異名は非常に多いわりに、各々の関係性がいまいち掴めず情報も少ないとなると、中々調べるのも困難です。
一例ですが、Gasteria angulata (Haw.) DuvalGasteria angulata (Willd.) Haw.という2つの同じ名前の異名があったりします。最初の方はHaworthが命名したアングラタをDuvalがガステリア属としたという意味で、後ろの方はWilldenowが命名したアングラタをHaworthがガステリア属としたという意味でしょう。ややこしいというか、意味がわかりませんね。これの正解は、Aloe angulata Willd.Gasteria angulata
 (Willd.) Haw.Aloe lingua var. angulata Haw.Gasteria angulata (Haw.) Duvalということらしいです。これは非常に面倒臭いのでこれ以上は深入りしませんが、とてつもなく暇だという方は暇つぶしに調べてみてはいかがでしょうか。
それはそうとして、異名の多さは外見上の変異幅が広いということを示していると考えられます。カリナタは非常に美しいガステリアですから、様々なタイプをコレクションしてみても面白いかもしれませんね。



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以前、"エクセルサ"という名札が付いたガステリアを入手しました。最近、ガステリアに興味があったので購入しましたが、調べると正体が怪しいというかよくわからなくなってしまいました。「君の名は…」というか「なんだちみは?」といった感じです。

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4月に購入。

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6月。取り敢えず植え替えせずに肥料を追加して様子見していました。左側の新しい葉は大きく、急成長しています。

エクセルサ、つまりはGasteria excelsaですが、ネット検索かけて出てくる栽培品の画像は、アロエのように放射状に葉が出るガステリアらしくない姿です。うーん、なんか違いますね?
ただし、アロエにせよハウォルチアにせよ、小さな実生や仔吹きしたばかりでは、ガステリアのように左右に葉が重なる形状を取ります。生長してある程度大きくなると、葉が旋回しはじめます。これは葉が旋回するタイプのガステリアでも同様です。ですから、おかしくはないと言えばおかしくないわけです。特にエクセルサは大型種ですから、まだ数cmの私の株はまだまだと言えます。
じゃあ、いいかと言われるとまだ問題があります。エクセルサの葉は鋭く先端が尖り、葉の上面はへこみ盛り上がりません。しかし、私の所有株は葉の先端は鈍頭で丸みがあり、葉は上面も盛り上がります。
大きく育ったら変わるのでしょうか?
あるいは、エクセルサ系交配種だったりして。

さて、エクセルサは株が70cmを越える超大型種です。なんでも、Gasteria acinacifoliaという高さ1mになるガステリアの次に大きいそうです。そのG. acinacifoliaの説明に"幼若株は先端が鈍頭"(要約)とあり、若い個体の写真を見ると確かに先端が尖りません。G. acinacifoliaも生長すると葉の先端が尖りますから、若い時とは葉の形が異なるのです。これはいい事を知りました。早速、エクセルサの自生地の写真を探してみたところ、ありましたありました。いかにもなガステリア然として、葉の先端が丸い若い個体です。謎は全て解けた!かどうかはわかりませんが、将来立派な巨大ガステリアのエクセルサに育つ可能性が大きくなりました。私のちっこいエクセルサがエクセルサらしくなるなのに何年かかるかわかりませんが、生長を見守って行きたいと思います。年1回くらいは、生長の様子をアップする予定です。

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抜いたところガステリアらしく根は長く、状態にも問題なし。

DSC_1437
根が長いので深い鉢に植え替えしました。

エクセルサの学名は1880年に命名されたGasteria excelsa Bakerです。
個人的なお話で申し訳ないのですが、"excelsa"は「エクセルサ」とは読まない気がします。なんか「エクスケルサ」が個人的にはスッキリします。「エクセルサ」なら"exelsa"じゃないの?という疑問がありましてな…。まあ、本当にどうでもいい話なんですけどね。






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最近は広義のアロエ類、つまりは旧アロエ属、旧ハウォルチア属に興味があって、じわじわと集めはじめています。アロエ類の中では硬葉系ハウォルチアは渋い存在で大好きになったのですが、同じく大変渋いガステリアも気にはなっていました。まあ、あまり売っていないこともあり、手を出していませんでした。まあ、もしかしたら他の多肉に目移りして気が付かなかっただけかもしれませんが。
そんな中、ひさびさに行ったファーマーズガーデン三郷店で、"バイリシアナ"という名前のガステリアが沢山並んでいたので購入しました。


DSC_0916
ガステリア・バイリシアナ
葉は暗色の地に、白い斑点があるように見えます。しかし、この斑点は模様ではなく、細かいイボ状の突起物です。だから触ると表面はザラザラしています。
また、あまり大型にはならず、子吹きしやすいタイプなのでしょう。おそらくはお店で冬越しした個体みたいですが、どうやら根元もしっかりしている様子なので基本的に丈夫なのでしょう。

軽く検索してみると、南アフリカ共和国の東ケープ州原産とあります。さらに、Addo Elephant国立公園のWittetrivier渓谷と詳細もありました。限られた地域に分布するらしいので、野生株の保護状況が気になります。しかし、どうやら保護色で見つけにくいこと、さらには採取困難な急峻地に生えることから、自生地の個体数には問題がないとのことです。

バイリシアナの学名は1977年に命名された、Gasteria baylissiana Rauhです。意外と最近です。命名は南アフリカの探検家で植物収集家の、Roy Douglas Abott Bayliss大佐にちなむということです。 



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