ユーフォルビア・オベサ・ドットコム

カテゴリ:アロエ・ハウォルチア > ハウォルチオプシス

私はハウォルチアをいくつか育てていますが、基本的に硬葉系、つまりは現在のHaworthiopsisばかりです。硬葉系ハウォルチアのイボイボした連中が好みです。しかし、相変わらず本物のファスキアタ(H. fasciata)は見かけず、アテヌアタ(H. attenuata)系統ばかりです。まあ、アテヌアタはアテヌアタで改良が進み、コレクションするのにうってつけです。何だかんだで、私もアテヌアタを見かけるとついつい買ってしまいます。さて、そっくりさんとして有名なファスキアタとアテヌアタが、まあまあ集まりましたから、箸休め的な軽い記事にしてみました。

230620062503695
十二の巻
日本では昔からありますが、有名な割に由来がよく分からない多肉植物です。日本で作出された園芸品種と言われています。葉の内側にイボがある特徴からは、十二の巻がアテヌアタ系とするのが妥当でしょう。しかし、純粋なアテヌアタとも考えにくいため、アテヌアタ系としておくのが穏当かも知れません。十二の巻は若干外見が異なるいくつかのタイプがあることから、おそらくは交配種なのでしょう。最近は大柄の荒々しいバンドの品種も十二の巻の名前で販売されていますが(次の十二の巻)、交配種を十二の巻と称しているだけで、本来の十二の巻ではない気がします。

DSC_2324
十二の巻
バンドが荒々しく入るタイプ。実は従来の十二の巻の方が、均整がとれて美しい姿となります。最近はこちらのタイプも十二の巻として販売されています。

230620062445639
松の雪
アテヌアタのバンドがつながらず、細かく散るタイプ。私の手持ち個体は、やや均整が乱れた姿です。

230620062535594
アテヌアタ 特アルバ
アテヌアタの選抜品で、バンドは太く強いのですが、どうにも姿が乱れてしまいます。

230618183223686
スーパーゼブラ
バンドが太いアテヌアタ系の品種です。通常の十二の巻に一番近いバランスの良い姿です。ラベルにはH. fasciataとありますが、葉の内側にもイボがあるためアテヌアタ系でしょう。純粋なアテヌアタではなく十二の巻の選抜品種なのでしょう。

230620062426507
Haworthiopsis attenuata f. tanba
アテヌアタの矮性品種。品種改良されたものではなく、野生の個体が由来です。

230618183307403
Haworthiopsis fasciata DMC05265
次はファスキアタです。フィールドナンバー付き。バンドはよく見るとつながっていません。

230620062454230
Haworthiopsis fasciata fa.vanstaadenensis
ファスキアタの矮性品種。野生の個体が由来みたいですが、あまり情報がありません。イボは小さくまばらです。

思うこととして、本来のアテヌアタは葉が開いた形なのではないかということです。私の手持ちでは、特アルバと松の雪、f. tanbaは純粋なアテヌアタですが、葉は開きます。しかし、十二の巻は葉があまり開かないため、あるいはファスキアタの血も入っているのかも知れません。ただ、特徴的には葉の内側にイボがあるため、アテヌアタ系のように見えます。単純に良型の個体を選抜しただけの可能性もありますが、なにせ十二の巻の誕生は非常に昔のことですから真相は誰にも分からないでしょう。しかし、由来が分からないにも関わらず、十二の巻は非常に優れた園芸品種です。丈夫でちゃんと育てれば大変美しいものですが、その丈夫さ故に室内でインテリア代わりにされて徒長していたり、野外で放置されてカリカリに干上がっている十二の巻を見るのは悲しくもあります。

DSC_1045
去年、神代植物公園で開催された多肉植物展へ行きましたが、素晴らしい仕上がりの十二の巻がありました。普及種であっても、ちゃんと育てればこれだけの貫禄が出るのです。このような素晴らしい十二の巻を育てられるようになりたいものです。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。

にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

暑い日もあり、まったくハウォルチアの季節ではありませんが、いくつか花が咲いたのでご紹介します。まあ、ほとんど硬葉系ですけどね。

230618183307403
Haworthiopsis fasciata DMC05265
フィールドナンバー付きのファスキアタが開花中です。

230618183310865
花茎は非常に長く伸びます。
230618183330979
花はこんな感じ。

230618183156847
Haworthiopsis fasciata fa.vanstaadenensis
矮性のファスキアタです。花茎が初めて出て来ました。

230618183223686
スーパーゼブラ Haworthiopsis attenuata cv.
アテヌアタ系です。おそらくは、十二の巻の選抜タイプです。花はまだですが、大分育ってきました。


230618183407967
松の雪 Haworthiopsis attenuata
松の雪はアテヌアタの白いバンドがつながらないタイプです。

230618183411145
花茎が伸びています。
230618183420741
開花中。

230618183808358
Haworthiopsis scabra JDV 95/17
フィールドナンバー付きのスカブラです。初めて開花しました。
230618183812725
花茎が伸びています。
230618183833062
開花中です。

230618183549938
Tulista pumila var. sparsa
スパルサも花茎が伸びてきました。

230618183523698
Haworthia arachnoidea
アラクノイデアにも花茎が出て来ました。

230618184006704
Aloe bowiea
アロエ感のないアロエのボウィエアですが、大分株が充実してきました。去年は花茎は出ましたが枯れてしまったので、咲けば初めての開花です。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。

にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

Haworthia koelmaniorumは、葉の上面に透明な窓があるハウォルチアです。しかし、硬葉系ハウォルチアはHaworthiaから分離しHaworthiopsisとなったことから、コエルマニオルムもHaworthiopsis koelmaniorumとなりました。さて、このコエルマニオルムですが、原産地の南アフリカでは減少しており、保護の対象となる希少な多肉植物であるとされています。本日はコエルマニオルムの生息地を調査したE.T.F.Witkowski & R.J.Listonの1997年の論文、『Population structure, habitat profile and regeneration of Haworthia koelmaniorum, a vulnerable dwarf succulent, endemic to Mpumalanga, South Africa』を参考に見ていきましょう。

DSC_2074
Haworthiopsis koelmaniorum
透き通っている様子が良く分かります。

DSC_1389
夏場は遮光していても、ストレスで赤くなり透明な窓が分かりにくくなります。

コエルマニオルムは珪岩で出来た尾根の斜面に7個体群が存在しますが、すべて自然保護区外です。1994年のBoydによる保全報告書では1800〜2000個体が自生すると推定されました。コエルマニオルムの知られている脅威は、コレクターによる収集や、伝統医学の医薬品としての採取があります。また、近年では特に日本のコレクターがハウォルチアに対して非常に熱心です。
この7つの個体群は、すべてMpumalanga州のGroblesdal地区(標高900〜1100m)に位置します。25年間の年間降水量の平均は720mmであり、その84%は10月から3月にかけて降ります。平均気温は暑い月で37.1℃、寒い月で3.1℃でした。冬には霜が下ります。また、コエルマニオルムの分布する尾根の間の低地が麦畑となったたことで、畑にならなかった高地のコエルマニオルムだけが飛び地状に残った可能性もあるそうです。


さて、実際の調査の結果、全体で1591個体のコエルマニオルムを確認しました。個体群は場所により25〜588個体までと幅がありました。また、火災により67%が被害を受けていました。種子を採取して発芽させたところ、湿らせてから7〜9日で発芽しました。発芽率は79〜89%でした。コエルマニオルムに近縁とされるH. limifoliaの種子の寿命は約5〜7ヶ月であるため、コエルマニオルムは貯蔵種子(seed bank)は持たない可能性が高いと考えられます。
コエルマニオルムの生える尾根と、尾根と尾根の間のコエルマニオルムが生えていない地域の土壌も比較されています。それによると、どこの土壌も砂質でほぼ同じでしたが、小さな違いはあったようです。分布域の土壌はほぼ同質でしたが、コエルマニオルムが生えていない土壌はやや粘土質が多い傾向がありました。
コエルマニオルムは岩の亀裂に生える傾向がありました。ただ、岩の亀裂がコエルマニオルムの生育に適しているかは分かりません。例えば、通常の場所に生えたコエルマニオルムは牛の踏みつけにより破壊されていることが報告されています。さらに、そういう場所は他の草も生えていることから、火災があった時に枯れ草を燃料として強く燃え上がり、コエルマニオルムに強いダメージを与えた可能性があります。
自生地のコエルマニオルムは、成熟した植物はありましたが苗は見られませんでした。これは、発芽はするもののすべて枯れてしまっているようです。苗にとって非常に好ましい特殊な環境がある程度長く続いた時のみ、苗は定着可能であると考えられます。そのため、自生するコエルマニオルムは分結して増えているものも多いと推定され、遺伝的多様性は低いと考えられます。
コエルマニオルムは寿命が長い植物と考えられており、分結と稀に訪れる苗の生育可能な時まで種子を作り続けることにより維持されてきたようです。ですから、家畜の踏みつけや違法採取により親植物が失われると、非常にダメージが大きいと考えられます。その生長の遅さもあり、回復には大変な時間が必要でしょう。

火災のダメージについては、多肉植物を対象とした2つの仮説があります。
①多肉植物は火に耐性はなく、燃えやすい他の植物が生えない岩場や砂場、たまたま火災が起きていない場所でのみ生きられる。
②多くの多肉植物は生長点が十分に保護されており、火災に強い。
コエルマニオルムは火災が起きない岩場の破れ目に生えることにより、火災から身を守っているようにも見えます。しかし、コエルマニオルムは火災によりダメージを受けても、生き残ることも確認されています。上記の2つの仮説はコエルマニオルムに関して、両方とも当てはまると言えます。岩の破れ目付近には、燃料となる植物が少なく、火災が起きても強い火力で焼かれにくいことは明らかだからです。さらに、他の植物より火災に強いコエルマニオルムは、火災により他の植物が失われることにより、他の植物との競争を有利なものとしている可能性もあります。

コエルマニオルムは自然な種子繁殖はあまり期待出来ないため、種子由来の苗を人工的に育てて移植するなどの方法により、保護活動を行う必要があります。牛の放牧を減らしことにより、踏みつけによる被害を減少させることが出来ます。

以上が論文の簡単な要約です。
しかし、野生のコエルマニオルムはたった1591個体しか存在しないというのは、中々衝撃でした。現在、国内で売りに出されているコエルマニオルムは1500株ではすまないでしょうし、趣味家が育てているコエルマニオルムはそれ以上でしょうから、野生のコエルマニオルムがいかに少ないかが分かります。我々趣味家としては、野生の多肉植物の減少は悲しむべきことでしょう。
しかし、論文の中で日本のコレクターの台頭が軽く触れられておりますが、これは何を意味するでしょうか? さすがに日本人が南アフリカまで頻繁に行って、違法採取を繰り返しているという訳ではないでしょう。違法採取は現地の人たちの収入源になっていたりしますが、これはその違法採取した植物を欲しがる人がいるから行われているのです。
現在の日本の状況は、正直あまり褒められたものではありません。輸入されてきたベアルートがイベントや専門店だけではなく、基本的に管理が出来ない大型園芸店などにも並べられており、どれだけの野生株が違法採取により失われたのかを考えると胸が痛みます。違法採取された植物は正規ルートでは買えませんが、あちこち回って採取情報がロンダリングされてしまうため、結局は市場に出回ることになります。これは種子の売買以外を禁止することでしか防ぐ方法はありません。その他の取り組みとしては、例えばソテツは市場に流通量が増えれば違法採取は減ると考えて、効率の良い増やし方や育て方が研究されています。また、Euphorbia susannaeは原産地では非常に希少な多肉植物ですが、どうやらアメリカで組織培養による大量生産がされたようで、市場流通量が激増して一気に安価な普及種となり、もはや違法採取されまものをわざわざ購入する必要はなくなりました。日本でもE. susannaeは、種子によるものと考えられますが、大手業者により大量生産されており、流通量も多く安価な普及種となっています。
現地株ではなく種子由来の苗が出回れば良いわけですが、現在日本国内に流通しているのは小型の苗ですから国内実生なのでしょう。コエルマニオルムは日本では人気種ではありませんが、軟葉系ハウォルチアなどは人気です。しかし、日本ではきらびやかな交配種が人気で、ハウォルチアの現地球を求めている人はほとんどいないでしょう。とはいえ、我々趣味家も野生の多肉植物の保全に対して、もう少し興味を持っても良いように思います。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。

にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

去年の秋のことです。神奈川県川崎市にあるタナベフラワーで、謎の多肉植物を入手しました。とても変わっていて、見た瞬間頭が疑問符だらけになりました。その多肉植物が「ハオルチア・トリアングラリス」です。名札にはそう書かれていました。しかし、聞いたことがない名前です。Haworthiopsis(硬葉系)であることは見て直ぐにわかりましたが、2022年時点で19種類あるHaworthiopsisにはこの学名はなかったはずです。おかしいなあとは思いつつ、外見的な面白さもあり購入に至った訳です。

_20230217_002636
Haworthia triangularis?
三方向に葉を広げます。種小名の「トリアングラリス」とはそのまま「トライアングル」のことですから、外見の特徴から来ていることが分かります。大型で葉の表面にはイボやざらつきはなく、滑らかで艶があります。また、日を浴びると黄色くなります。

さて、帰宅して「ハオルチア・トリアングラリス」を調べてみました。まあ、この場合はHaworthia triangularisですね。Euphorbia triangularisを知っていたので、種少名のスペルも直ぐに分かりましたね。早速検索してみると、何故かほとんど出てきません。海外のあるサイトでは、Haworthia triangularis (Lamarck)とあります。ああ、これは正式な命名規約に乗っとった学名ではないようです。括弧がある場合、属名が変更になったり亜種や変種が独立種になったりと、何かしらの変更があったことを示しています。括弧の中は以前の名前の命名者で、括弧の次に変更後の学名の命名者が来るはずですが、それがないのは実におかしなことだからです。
これは、おそらくはAloe triangularis Lamarckから来ているはずです。なぜなら、1809年にフランスのHenri August DuvalによりHaworthia Duvalが命名されるまでは、大抵のハウォルチアはアロエ属だったからです。ということで、Aloe triangularisを調べると、出てきました。1783年に命名されたAloe triangularis Lam., nom.superfl.です。やはり、推測は正しかったようです。命名者の後の'nom.superfl.'は、既に命名された同じタイプに別の名前がつけられたということですから、そもそも無効ではあります。では、このAloe triangularisは何者かというと、2016年に命名されたHaworthiopsis viscosa (L.) Gildenh. & Klopperのことです。
_20230217_003149
Haworthiopsis viscosa
Haworthiopsis viscosaは長い間Haworthiaでしたし、今でもHaworthia viscosaとして販売されています。その学名は1812年に命名されたHaworthia viscosa (L.) Haw.ですから、実に200年以上Haworthiaだった訳です。なるほど、新しい学名が浸透しない訳です。
しかし、初めて命名されたのは、1753年のAloe viscosa L.でした。これは、Aloe triangularisよりも30年早く命名されていますから、このAloe viscosa→Haworthia viscosa→Haworthiopsis viscosaの種小名の系統が正当な学名とされてきた訳です。Aloe triangularisは学術的には継承されず、園芸上はHaworthia triangularisとして使用されてきたということなのでしょう。

さて、ここまで学名を追って来ましたが、重大な問題が浮かび上がります。それは、Aloe triangularisがHaworthiopsis viscosaを指しているのならば、Aloe triangularisは典型的なHaworthiopsis viscosa(当時はAloe viscosa)に対して命名されたのではないかというものです。つまりは、私の所有している"Haworthia triangularis"は、1873年に命名されたAloe triangularisとは別物である可能性もあるのです。
そもそも、私の所有する"Haworthia triangularis"は由来がわからない多肉植物です。野生由来の個体なのか、栽培する中で生まれた突然変異株なのかすら不明です。学名の命名者達がどんな個体を見て命名したのかが分かりませんから、何とも言いようがありません。そもそも、古い論文は探しても見つからないことが多いので、それを確認することは中々困難です。もし、論文を見つけても、その命名の根拠となった標本は海外の大学や博物館にあるわけで、私にはその標本にアクセスする手段がありません。完全に手詰まりです。

ここで、私の所有する"Haworthia triangularis"(以下、引用符で囲った"Haworthia triangularis"は、私の所有する個体を表します)とHaworthiopsis viscosaを比較してみましょう。結構異なる部分があります。サイズが非常に大きく葉も長いことから、葉の重なり具合も異なります。また、Haworthiopsis viscosaの濃い緑色と比べて"Haworthia triangularis"は非常に明るい色です。葉の表面はざらつかず滑らかです。かなりの差があるように思えます。
しかし、自生地のHaworthiopsis viscosaの画像を検索してみると、思いの外その姿に多様性があり驚かされます。サイズや葉の重なり具合だけではなく、葉の表面のざらつき具合すら、かなりの幅があるようです。こうなると、"Haworthia triangularis"は、Haworthiopsis viscosaの変異幅の範疇に収まってしまう可能性が大です。
さて、これで一件落着かと思いきや、まだ続きがあります。Haworthiopsis viscosaには変種があり、Haworthiopsis viscosa var. 
variabilis (Breuer) Gildenh. & KlopperHaworthiopsis viscosa var. viscosaがあります。Haworthiopsis viscosa var. variabilisは、Haworthia variabilis (Breuer) Breuerの方が通りがいいかもしれませんが。さて、この変種variabilisは葉の長さが異なるようですが、幾つかの画像を見た限りではかなりの多様性があるみたいです。もしかしたら、私の"Haworthia triangularis"は、変種variabilisである可能性もあります。しかし、正確な見分け方がわからないので、可能性以上のことは言えません。

長々と書いてきましたが、まだ続きます。というのも、私の所有する"Haworthia triangularis"はAloe triangularis Lam.であるかのように書きましたが、実はAloe triangularisは2種類あるのです。それは、1784年に命名されたAloe triangularis Medik., nom.illeg.です。命名者、命名年、論文が記載された雑誌が異なります。要するに、Aloe triangularisという学名は2回命名されているのです。末尾の'nom. illeg.'は、命名規約の誤用が見られる名前という意味です。Aloe triangularis Medik.は、Haworthiopsis viscosa var. viscosaの異名です。
Aloe triangularis Lam.とAloe triangularis Medik.の違いに気付きましたか? 実はAloe triangularis Lam.はHaworthiopsis viscosaの異名で、Aloe triangularis Medik.は変種viscosaの異名なのです。同じように見えますが全く異なります。なぜなら、Haworthiopsis viscosaとは、変種viscosaと変種variabilisを合わせた名前だからです。つまりは、もし私の"Haworthia triangularis"がAloe triangularis Lam.とされた植物由来ならば、変種viscosaであるか変種variabilisであるかはわからないということになります。しかし、私の"Haworthia triangularis"がAloe triangularis Medik.由来であるならば、それはつまり変種viscosaということになるからです。とはいえ、それを確かめる手段はありませんから、虚しい空論かもしれません。

さて、Haworthiopsis viscosa自体は、Haworthiopsis scabraに近縁と言われているようです。ここで1つ思い浮かんだことがあります。それは、Haworthiopsis scabraとその変種starkianaの関係です。Haworthiopsis scabraというか変種scabraは、実にHaworthiopsisらしく、表面はざらざらしており全体的に暗い色合いです。しかし、変種starkianaは表面はツルツルで明るい色合いです。この関係は何やら私の"Haworthia triangularis"とHaworthiopsis viscosaとの関係に似ているような気がしたからです。こういう変異はよくあるパターンなのかもしれませんね。
_20230217_213954
Haworthiopsis scabra var. scabra

_20230217_194009
Haworthiopsis scabra var. starkiana

そういえば、Haworthiopsis pungensは、上から見るとちょっと似ていますね。
_20230217_193801
Haworthiopsis pungens


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

にほんブログ村 花・園芸ブログ サボテンへ
にほんブログ村

去年の秋頃のことでしたか、休日出勤でヘロヘロになりながら、帰りに池袋の鶴仙園に立ち寄りました。鶴仙園は毎度凄まじい量のハウォルチアがありますが、かつて硬葉系ハウォルチアと呼ばれたHaworthiopsisは少数派です。十二の巻あたりはいつでもありますが、それ以外は入荷次第な部分もあります。その時はなんとフィールドナンバー付きのHaworthiopsisがあったので購入しました。Haworthiopsis coarctata、つまりはいわゆる九輪塔です。

フィールドナンバー
フィールドナンバーは採取した場所などの情報が記載されています。フィールドナンバーが異なれば採取された地点が異なりますから、フィールドナンバーごとに特徴が異なります。
_20230207_205411
Haworthia coarctata DMC06356 IB5850
ラベルはフィールドナンバーの情報に基づくため、Haworthiopsisにはなっていません。IBはIngo Breuer、DMCはDavid M. Cummingの略です。後ろの2つがフィールドナンバーですが、2つあるのはおかしな気もします。しかし、IBナンバーは他のフィールドナンバーから来ていることもあるようですから、この場合はIB5850=DMC06356なのでしょう。
さて、採取地点はFarm Begelly, 12km S of Grahamstownということです。グレアムズタウンは南アフリカの南東部です。グレアムズタウンの南に12kmですから、ポート・エリザベスとポート・アルフレッドの中間くらいかもしれないですね。


H. coarctataの分布
H. coarctataの分布は、西側はPort Erizabethで東側はGreat Fish Riverまでです。東側のさらに先にはHaworthiopsis fasciataが自生します。H. coarctataの分布は良く似たHaworthiopsis reinwardtiiと隣接するようです。
混同されがちなH. reinwardtiiとの見分け方は中々難しいところがあるようです。H. coarctataの結節は滑らかで丸味があり、H. reinwardtiiの結節は偏平で大型と言われます。しかし、実際に自生地で野生のH. coarctataとH. reinwardtiiを見分けるのは、大変難しいようです。

H. coarctataの学名の変遷
H. coarctataはやはりH. reinwardtiiと関連付けられがちで、H. reinwardtiiの変種とされたりして来たようです。1824年にはじめて命名された時は、Haworthia coarctata Haw.でしたが、1997年にはHaworthia reinwardtii subsp. coarctata (Haw.) HaldaHaworthia reinwardtii var. coarctata (Haw.) Haldaとされたこともあります。異名として、1829年に命名されたAloe coarctata (Haw.) Schult. & Schult.f.や、1891年に命名されたCatevala coarctata (Haw.) Kuntze.もあります。2013年にハウォルチアから独立しHaworthiopsisとなり、Haworthiopsis coarctata (Haw.) G.D.Rowleyとなり、これが現在認められている学名です。また、2016年にはHaworthiopsis reinwardtii var. coarctata (Haw.) Breuerが命名されており、やはりH. coarctataをH. reinwardtiiと関連付ける考え方は健在のようです。
_20230209_214653
Haworthiopsis reinwardtii

変種アデライデンシスの学名の変遷
さて、H. coarctataには3つの変種があります。1つ目の変種は最初はやはりH. reinwardtiiの変種とされ、1940年にHaworthia reinwardtii var. adelaidensis Poelln.とされました。1973年にはHaworthia coarctata subsp. adelaidensis (Poelln.) M.B.Bayer、1999年にはHaworthia coarctata var. adelaidensis (Poelln.) M.B.BayerというH. coarctataの変種や亜種とする意見も出てきました。2010年には独立種であるHaworthia adelaidensis (Poelln.) Breuerも命名されました。最終的には2013年にHaworthiopsis coarctata var. adelaidensis (Poelln.) G.D.Rowleyと命名されています。他の異名として、1944年に命名されたHaworthia reinwardtii var. riebeekensis G.G.Sm.、1945年に命名されたHaworthia reinwardtii var. bellula G.G.Sm.、1983年に命名されたHaworthia coarctata f. bellula (G.G.Sm.) Pilbeamがあります。

変種テヌイス
2つ目の変種は、やはりH. reinwardtiiの変種とされ、1948年にHaworthia reinwardtii var. tenuis G.G.Sm.と命名されました。1973年にはHaworthia coarctataの変種とされHaworthia coarctata var. tenuis (G.G.Sm.) M.B.Bayerとなりました。2010年には独立種とするHaworthia tenuis (G.G.Sm.) Breuerもありました。最終的に2013年にHaworthiopsis coarctata var. tenuis (G.G.Sm.) G.D.Rowleyと命名されました。2016年にはHaworthiopsis reinwardtii var. tenuis (G.G.Sm.) Breuerという学名も命名されています。

変種コアルクタタの異名
ちなみに、変種アデライデンシスと変種テヌイスが出来たことにより、自動的に変種コアルクタタ、つまりHaworthiopsis coarctata var. coarctataが出来ました。というのも、H. coarctataとは、変種アデライデンシス+変種テヌイス+変種コアルクタタのことだからです。変種アデライデンシスと変種テヌイスが命名された時点で、変種アデライデンシスと変種テヌイスではないH. coarctataにも命名が必要となるのです。
しかし、変種コアルクタタには恐ろしいほどの異名があります。面倒なので年表形式で示しましょう。
1880年 Haworthia greenii Baker
              Haworthia peacockii Baker
1891
年 Catevala greenii (Baker) Kuntze
              Catevala peacockii (Baker) Kuntze
1906年 Haworthia chalwinii
                         Marloth & A.Berger
1932年 Haworthia fallax Poelln., orth.var.

1937年 Apicra bicarinata
                         Resende, nom.illeg.
              Haworthia reinwardtii
                         var. conspicua Poelln.
1938年 Haworthia resendeana Poelln.
1940年 Haworthia reinwardtii
                         var. pseudocoarctata Poelln.
1943年 Haworthia coarctata var. haworthii
                          Resende
              Haworthia coarctata
                          var. krausii Resende
              Haworthia coarctata
                          f. major Resende
              Haworthia coarctata
                          f. pseudocoarctata Resende
              Haworthia reinwardtii var. chalwinii
                       (Marloth & A.Berger) Resende
              Haworthia reinwardtii
                       var. committeesensis G.G.Sm.
              Haworthia greenii f. bakeri Resende
              Haworthia greenii f. minor Resende
              Haworthia greenii var. silvicola
                               G.G.Sm.
              Haworthia fulva G.G.Sm.
1944年 Haworthia baccata G.G.Sm.
              Haworthia reinwardtii
                         var. huntsdriftensis G.G.Sm.
1948年 Haworthia coarctatoides Resende
              Haworthia musculina G.G.Sm.
1973年 Haworthia coarctata var. greenii
                         (Baker) M.B.Bayer
1983年 Haworthia coarctata f. chalwinii
                         (Marloth & A.Berger) Pilbeam
              Haworthia coarctata f. conspicua
                         (Poelln.) Pilbeam
1997年 Haworthia reinwardtii
                          var. greenii (Baker) Halda
1999年 Haworthia coarctata f. greenii
                         (Baker) M.B.Bayer
2016年 Haworthiopsis resendeana
                         (Poelln.) Gildenh. &Klopper
              Haworthiopsis reinwardtii
                          var. greenii (Baker) Breuer

_20230209_203905
Haworthiopsis resendeana
残念ながら変種コアルクタタの異名となり、吸収されてしまいました。

最後に
ここ数年来のエケベリアや近年のアガヴェ・ブームと比べれば細やかですが、透明な窓が美しい交配系の軟葉系ハウォルチアを中心にハウォルチアも流行の兆しがあります。しかし、硬葉系ハウォルチア=ハウォルチオプシス人気は今一つです。硬葉系は肌がざらつき暗い色合いだったり渋い存在ですから、好きな人は好きなんですけど、園芸店はおろかビッグバザールなどの販売イベントですら中々販売していないのが悩みどころです。そんな中でも、鶴仙園さんはハウォルチアに対する期待値は高いのですが、硬葉系が有るか否かは運次第です。頻繁に通いたいところですがそうも行かないのが悩みです。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

去年、鶴仙園西武池袋店でPlant's Workさんとのコラボイベントがあり、沢山の珍しいハウォルチアが並びました。私も参戦してフィールドナンバー付きのHaworthiopsis woolleyiを入手しました。H. woolleyiを見たのははじめてのことでしたから、非常に嬉しかったのを覚えています。本日はそんなH. woolleyiについて調べてみました。

DSC_1777
購入時のH. woolleyi。ラベルには'H. venosa ssp. wooleyi GM079 South of Kleinpoort'とありました。これは古い学名ですが、Plant's Workさんが間違えている訳ではありません。フィールドナンバーは採取された時点の情報で登録されていますから、フィールドナンバーの登録情報が現在と異なることは珍しいことではありません。そして、フィールドナンバーの情報を記載するのが普通です。なぜなら、最新の学名はまたいつか変更されるかもしれないからです。とはいえ、よく見ると'woolleyi'ではなく'wooleyi'となっており、間違いがありますが、これは元のフィールドナンバーの登録情報の誤りのようです。

DSC_2197
現在のH. woolleyi。我が家に来てわずか5ヶ月程度ですが、一回り大きくなった気がします。

H. woolleyiは、1937年に年にHaworthia woolleyi Poelln.と命名されました。さらに、1997年にはHaworthia venosa subsp. woolleyi (Poelln.) Haldaとなりヴェノサの亜種とされました。しかし、最終的にはGordon D.Rowleyにより2013年にハウォルチオプシス属とされ、ヴェノサの亜種ではなく独立種に戻りました。現在はHaworthiopsis woolleyi (Poelln.) G.D.Rowleyが認められた学名です。また、2016年にはHaworthiopsis venosa var. woolleyi (Poelln.) Breuerも提唱されており、H. venosaと関係があるという考え方は一貫しています。
そういえば、H. woolleyiがはじめて命名された1937年のKarl von Poellnitzの論文、『Vier ndue Haworthia-Arten』を読むことが出来ました。非常に簡素で、図はなく特徴を羅列している無駄のない論文です。この論文では、ハウォルチアの新種を4種類命名しています。1つ目はHaworthia gordonianaで、これは現在のHaworthia cooperi var. gordonianaのことです。2つ目はHaworthia woolleyiですが、何故かHaworthia woolleyiiとiが重複しています。このHaworthia woolleyiiが採用されていない理由は分かりませんが、語尾の形式は決まっているため訂正があったのかもしれません。3つ目はHaworthia stayneriiで、これは現在のHaworthia cooperi var. piliferaのことです。4つ目はHaworthia emelyaeです。ちなみに、H. woolleyiの種小名はStapelia収集家のC.H.F.Woolleyに対する献名ということです。


最後にフィールドナンバーの情報を見てみましょう。やはり、H. woolleyiではなくH. wooleyiとなっています。Plant's Workさんの情報は正確ですね。
Field number : GM 79
Collector : J. Gerhard Marx
Species : Haworthia venosa ssp. wooleyi
Locality : South of Kleinpoort, Eastern Cape, South Africa


残念ながら採取年は分かりません。採取地のKleinpoortはポート・エリザベスの近くですね。私の所有するHaworthiopsis fasciata DMC 05265の採取地はN. Hankey(ハンキー北部)とありますから、South of Kleinpoort(クレイン・プアトル南部)は非常に近いか可能性があります。フィールドナンバーがついていると、このようなこともわかり面白いですね。
そういえば、収集者のGerhard Marxは南アフリカの著名な芸術家で、ハウォルチアのコレクションでも有名です。自ら素晴らしい野生のハウォルチアの絵を書いており、幾つかの新種の多肉植物を発見しています。このH. woolleyiのように、Gerhard Marxにより採取されたフィールドナンバー付きのハウォルチアも沢山あります。



ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

硬葉系ハウォルチア(Haworthiopsis)は人気がなく、昔から国内で流通しているにも関わらずあまり見かけません。私もちまちま集めていますが、中々集まりません。去年の10月に神奈川県川崎市のタナベフラワーで多肉植物のイベントががあり訪れましたが、珍しいことに硬葉系ハウォルチアがけっこうあり、Haworthiopsis venosaを購入しました。
DSC_1860
Haworthiopsis venosa

ハウォルチアは南アフリカ原産ですが、H. venosaは南アフリカだけではなくナミビアにも分布する可能性があり、非常に広範囲に分布します。厳しい環境ですが、茂みの中や岩の隙間などの陰に生えます。自生地にはEuphorbia aggregata、Crassula obvallata、Cotyledon toxicarina、Mesembrhanthemum saxicolum、Stapelia flavirostrisなどが生えます。

さて、H. venosaが最初に命名されたのは1783年のことで、実に200年以上前のことです。この時はアロエ属とされており、Aloe venosa Lam.でした。ハウォルチア属が創設されたのは1809年ですから、1809年より前に命名されたハウォルチアはすべてアロエ属でした。1821年にはHaworthia venosa (Lam.) Haw.とされました。この学名が一番良く使用されており、国内では園芸的にも未だにこの名前で販売されています。その後、1891年にCatevala venosa (Lam.) Kuntzeも提唱されましたが、このカテバラ属自体が現在は存在しない属ですから認められていません。2013年には硬葉系ハウォルチアがHaworthiopsisとされましたが、H. venosaもハウォルチア属からハウォルチオプシス属とされました。つまり、Haworthiopsis venosa (Lam.) G.D.Rowleyです。残念ながら国内ではハウォルチオプシスの使用は少ないのが現状です。しかし、遺伝子解析の結果からも、ハウォルチア属とハウォルチオプシス属の分離はまず間違いがないでしょう。H. venosaには他にも異名がありますから年表で示します。

1804年 Aloe anomala Haw.
              Aloe recurva Haw.
              Aloe tricolor Haw.
1811年 Apicra anomala (Haw.) Willd.
              Apicra recurva (Haw.) Willd.
              Apicra tricolor (Haw.) Willd.
1812年 Haworthia recurva (Willd.) Haw.
1876年 Haworthia distincta N.E.Br.
1891年 Catevala recurva (Willd.) Kuntze
1943年 Haworthia venosa var. oertendahlii Hjelmq.

1976年 venosa subsp. recurva (Haw.) M.B.Bayer

H. venosaはよく見ると、葉の上面は透き通っています。ハウォルチオプシス属ではこのような「窓」があるものはあまりありませんが、しかも窓に葉脈のような模様が入るのは、H. venosa、H. tessellata、H. woolleyi、H. granulataくらいです。これらの共通する特徴を持つハウォルチオプシスは、H. venosaの亜種あるいは変種とされたこともあります。H. venosaとの関連だけをピックアップして見てみましょう。          DSC_1797
Haworthiopsis woolleyi
              (Poelln.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia woolleyi Poelln., 1937
→Haworthia venosa subsp. woolleyi
                     (Poelln.) Halda, 1997
→Haworthiopsis venosa var. woolleyi
                    (Poelln.) Breuer, 2016


DSC_0691
Haworthiopsis tessellata
                   (Haw.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia tessellata Haw., 1824
→Aloe tessellata
         (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
→Haworthia venosa subsp. tessellata
                                 (Haw.) M.B.Bayer, 1982
→Haworthia venosa var. tessellata
                                        (Haw.) Halda, 1997


Haworthiopsis granulata
           (Marloth) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia granulata Marloth, 1912
→Haworthia venosa subsp. granulata
                     (Marloth) M.B.Bayer, 1976


ちなみに、何故か共通した特徴のないように見えるニグラもH. venosaの亜種とされたことがあるようです。一応、情報を記載します。
DSC_1796
Haworthiopsis nigra
                   (Haw.) G.D.Rowley, 2013
異名
Apicra nigra Haw., 1824
→Aloe nigra (Haw.)
               Schult. & Schult.f., 1829 
→Haworthia nigra (Haw.) Baker, 1880
→Haworthia venosa subsp. nigra
                                (Haw.) Halda, 1997




ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

ソルディダは一般的に硬葉系ハウォルチアと呼ばれる多肉植物です。ざらざらした暗い色の肌と、生長が遅いことが特徴です。ちなみに、ソルディダは生長の遅さ故か硬葉系の中では割と高価で、コエルマニオルムとソルディダは中々手が出せません。まあ、普通の園芸店では見かけることはありませんが…
さて、そんなソルディダですが、初めて学名が命名されたのは1821年と約200年前のことでした。そのため、これまでに様々な学名がつけられてきました。今日はそんなソルディダの履歴を辿ってみます。


DSC_2036
Haworthiopsis sordida

ソルディダが初めて命名されたのは、1821年のHaworthia sordida Haw.です。その後、1829年にAloe sordida (Haw.) Schult. & Schult.f.、1891年のCatevala sordida (Haw.) Kuntzeが知られています。また、ソルディダはスカブラと近縁と考えられ、1997年にHaworthia scabra var. sordida (Haw.) HaldaHaworthia scabra subsp. sordida (Haw.) Haldaも命名されています。しかし、結局はソルディダは独立種とされて、基本的にHaworthia sordida Haw.で呼ばれてきました。しかし、近年の遺伝子解析により、硬葉系ハウォルチアは軟葉系ハウォルチアとあまり近縁ではないことがわかってきました。硬葉系ハウォルチアはHaworthiaから分離され、HaworthiopsisとTulistaとなりました。Tulistaは現在4種からなる小さなグループですが、それ以外の硬葉系ハウォルチアはHaworthiopsisに分類されています。ソルディダも2013年にHaworthiopsis sordida (Haw.) G.D.Rowleyとされました。現在もこの学名が学術的に正式なものですが、実際に販売される場合は未だにHaworthia sordidaの名前で流通しています。
そう言えば、ソルディダには変種がありますが、ついでに見てみましょう。


1981年にソルディダの変種としてラブラニが命名されました。Haworthia sordida var. lavrani C.L.Scottです。一時期提案されたソルディダをスカブラの変種とする考え方から、その提案者により1997年にHaworthia scabra var. lavrani (C.L.Scott) Haldaと命名されたこともあります。また、2010年には変種ラブラニを独立種とするHaworthia lavrani (C.L.Scott) Breuerもありました。しかし、やはり最終的にはソルディダの変種ということになり、ソルディダがHaworthiopsisとなったことに合わせて2013年にHaworthiopsis sordida var. lavrani (C.L.Scott) G.D.Rowleyとなりました。

変種ラブラニが命名されたことにより、ラブラニではないソルディダは区別されることになりました。単純にHaworthiopsis sordidaと言った場合、変種ラブラニとそれ以外を含んだ名前となるからです。つまり、変種ソルディダです。これは命名されたわけではなく、変種が出来たことにより自動的に出来た学名です。つまり、Haworthiopsis sordida var. sordidaです。
この、変種ラブラニ以外のソルディダは変種ソルディダになる前から、異名がつけられてきました。いわゆるHeperotypic synonymです。Homotypic synonymとは異なり、Heperotypic synonymはその種小名が受け継がれなかった学名です。それは1938年に命名されたHaworthia agavoides Zantner & Poelln.です。このアガヴォイデスはやがてソルディダの変種とされ、1950年にHaworthia sordida var. agavoides (Zantner & Poelln.)となりました。さらに、ソルディダがHaworthiopsisとなったことを受けて、2016年にはHaworthiopsis sordida var. agavoides (Zantner & Poelln.) Breuerとされましたが、現在では変種ソルディダの異名扱いとされています。


以上がソルディダの学名の変遷です。ハウォルチオプシスは異名が恐ろしく多いものがあり、その一覧を見てうんざりすることもありますが、ソルディダはやはり特徴的な外見なせいか見た目の変異が少ないためかは分かりませんが、異名はほとんどありません。いや、それでも結構あるだろうと思われるかも知れませんが、種小名が同じHomotypic synonymばかりですから非常にすっきりしています。他のHaworthiopsisは1種類に対して、別種としていくつもの学名がつけられていたりして非常に混乱してきたことがうかがえます。
個人的にはこのざらざらした肌と暗い色合いは好きですが、イベントで立派な株が万単位の価格て販売されていて中々手が出せませんでした。しかし、最近のビッグバザールでは小さな実生苗が安価で入手可能です。どうやら、一度に沢山実生したみたいです。これは今しか入手出来ないものかもしれません。ソルディダが安く入手出来る中々ないチャンスです。あまり売れている雰囲気はありませんでしたが、皆さんもこの機にソルディダに手を出してみてはいかがでしょうか?


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村


かつて硬葉系ハウォルチアなどと呼ばれていたHaworthiopsisやTulistaには、イボに覆われているものがあります。そもそもこのイボが何のためにあるのかすら良くわかりませんが、結節などと呼ばれることが多いようです。遺伝的には、このイボの有無は分類には関係ないみたいです。要するに、イボのある種同士が近縁というわけではないため、イボのあるグループとないグループで分けることは出来ないのです。
さて、このイボにも種類があり様々です。今日はそんなハウォルチア系のめくるめくイボの世界へご案内しましょう。

DSC_2015
九輪塔 Haworthiopsis coarctata IB5850
九輪塔H. coarctataと鷹の爪H. reinwardtiiは同種とされることもありますが、現在は別種とされています。私の所有株はイボが控え目です。九輪塔のイボはまるでイボの先に着色したように見えます。


DSC_2014
星の林 Haworthiopsis reinwardtii var. archibaldiae
鷹の爪H. reinwardtiiの変種ですが、現在は認められていない学名です。鷹の爪系のイボは横長で大型です。

DSC_2016
Haworthiopsis reinwardtii f. kaffirdriftensis
コンパクトなf. kaffirdriftensisですが、イボは密に並びます。


DSC_2017
天守閣 × Astrolista bicarinata
AstrolobaとTulistaの自然交雑種。少し透き通るイボは、イボの由来がTulistaだと教えてくれます。


DSC_2030
Tulista pumila
Tulistaの代表種プミラ。Tulistaはよく見るとイボが半透明です。このプミラはイボが小さく密なタイプ。


DSC_2019
Tulista pumila
イボが白くないタイプのプミラ。イボは大型。


DSC_2018
Tulista pumila var. sparsa
プミラの変種スパルサ。イボはまばらですが、赤みを帯びた大型のイボが美しい。

DSC_2020
Tulista pumila var. ohkuwae
プミラの変種オウクワエ。白く大型のイボが密につき非常に目立ちます。

DSC_2028
Tulista kingiana
あまり見かけないキンギアナですが、イボは小さくて地味ですね。


DSC_2027
Tulista minor
Tulista minimaと呼ばれることもありますが、Tulista minorが正式な学名です。イボは横長で密につきます。


DSC_2029
Tulista minor swellense
有名な産地の個体。イボが立体的でよく目立ちます。


DSC_2021
Tulista marginata
マルギナタのイボは大型でたまにつながったりします。透き通った感じが好きですね。


DSC_2024
十二の巻 Haworthiopsis attenuata cv.
何故かH. fasciataと言われる十二の巻ですが、H. attenuata系の交配種です。白いイボはつながりバンド状になります。


DSC_2023
特アルバ Haworthiopsis attenuata
アテヌアタのイボが目立つ選抜交配種。


DSC_2026
松の雪 Haworthiopsis attenuata
アテヌアタのイボが小さく密につくタイプ。


DSC_2025
Haworthiopsis fasciata DMC05265
本物のファスキアタですが、普通の園芸店で入手は困難です。十二の巻とそっくりですが、アテヌアタとファスキアタは、遺伝子解析結果では近縁ではないようです。


DSC_2022
Haworthiopsis fasciata fa.vanstaadenensis
ファスキアタの特殊なタイプ。イボは小さくまばらで縦に5列あります。

DSC_2031
Haworthiopsis glauca var. herrei RIB0217
グラウカの変種ヘレイの葉が短いタイプ。変種ヘレイとしてはイボがはっきりしています。

DSC_2035
Haworthiopsis glauca var. herrei
グラウカの変種ヘレイの葉の長いタイプ。イボは目立ちませんが、よく見ると縦にイボが並んでいます。


DSC_2033
紫翠 Haworthiopsis recendeana
現在は九輪塔H. coarctataと同種とされている
紫翠ですが、イボが白くないので目立ちません。イボ自体は非常に密につきます。

DSC_2032
Haworthiopsis scabra
これ以上イボが小さいとイボではなくザラ肌と呼んだほうが良さそうです。H. sordidaやH. nigraはイボではなくザラ肌ですよね。


イボの世界はいかがでしたか? 意外とイボにも色々あることがお分かりいただけたと思います。
個人的にはイボイボ系は大好物なのですが、あまり人気がないみたいで残念です。この記事を起点にイボイボ系のファンが増えて、買う人が増えたことにより園芸店にもイボイボ系が並ぶようになれば私も嬉しいのですが、そんなバタフライ・エフェクトみたいなことは難しいですかね? 今こそ、イボの復権をと密かに願っている次第。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村


昨日はアロエ類の蜜の組成について記事にしましたが、今日はその続きです。具体的には1993年のNectar Sugar Composition in Subfamily Alooideae (Asphodelaceae)』と、一部は2001年のInfrageneric classification of Haworthia (Aloaceae) : perspectives from nectar sugar analysis』のデータをご紹介します。
まずは近年のアロエ類の遺伝子解析の結果を示します。今回の論文は遺伝子解析前のものなので、古い分類となっています。私の記事では気が付いたものは最新の分類に修正しています。


分子系統図
┏━━━━━━━━Aloidendron属

┫    ┏━━━━━━Kumara属
┃┏┫
┗┫┗━━━━━━Haworthia属
    ┃
    ┃┏━━━━━━Aloiampelos属
    ┃┃
    ┗┫┏━━━━━Aloe属
        ┃┃
        ┗┫    ┏━━━Astroloba属
            ┃    ┃
            ┃┏┫┏━━Aristaloe属
            ┃┃┃┃
            ┃┃┗┫┏━Gonialoe属
            ┃┃    ┗┫
            ┗┫        ┗━Tulista属
                ┃
                ┃┏━━━Haworthiopsis属
                ┗┫
                    ┗━━━Gasteria属

論文では蜜に含まれる糖の組成を解析しています。【Fructose, Glucose, Sucrose】の順番に糖の比率を示しています。Fructoseは果糖、Glucoseはブドウ糖、Sucroseはショ糖のことです。
分子系統に示された分類群を、上から順番に見ていきましょう。

Astroloba、Aristaloe、Gonialoe、Tulistaは近縁なグループです。
Astrolobaは虫媒花ですが、基本的に白花です。蜂は色のついた花に来ますから、Astrolobaに来るのは蛾あるいは蝿や虻なのかもしれません。
また、遺伝子解析の結果からPoellnitziaはAstrolobaに含まれることになりました。しかし、Poellnitziaは赤い花が咲かせ、鳥媒花とされているようです。論文によると、Astrolobaは果糖の比率は低くショ糖の比率が高い傾向がありますが、Poellnitziaはショ糖はなく果糖とブドウ糖の比率が高くなっています。よく見ると、Poellnitziaの蜜の組成はAloe(狭義)によく似ています。Aloeは鳥媒花ですから鳥が好む糖の組成なのかもしれません。
Aristaloeはデータがありません。GonialoeはAstrolobaに組成はよく似ています。Gonialoeも赤花です。
Tulistaは典型的なHaworthia型の花で目立たない白花です。蜜の組成は果糖が少なくショ糖が多くなっています。しかし、Haworthia(狭義)と比較するとブドウ糖が低く、成分はAstrolobaに近縁です。

Astroloba
A. congesta【4%, 32%, 64%】
A. foliolosa【4%, 16%, 80%】
A. spiralis【2%, 13%, 85%】

旧・Poellnitzia
A. rubriflora①【48%, 52%, - %】
A. rubriflora②【47%, 53%, - %】

DSC_1835
Poellnitzia rubriflora
=Astroloba rubriflora


Gonialoe
G. variegata【45%, 55%, - %】

Tulista
T. minima【7%, 24%, 69%】
T. pumila① 【1%, 14%, 85%】
T. pumila② 【3 %, 17%, 80%】
T. pumila③ 【7%, 19%, 74%】


DSC_0900
Gonialoe variegata

DSC_0788
Tulista pumila

HaworthiopsisとGasteriaは姉妹群です。Haworthiopsisはややまとまりがありませんが、Gasteriaはよくまとまった分類群です。
Gasteriaは分布と分類がリンクしています。Gasteriaは南アフリカの原産で、西部→南西部→南部→南東部→北東部という風に、分布を広げながら進化したようです。論文で扱われたGasteriaは、西部にはG. pillansii、南西部にはG. vlokii、G. brachyphylla、G. carinata、G. disticha、南部にはG. rawlinsonii、南東部にはG. excelsa、G. actinacifoliaがあります。また、G. maculataは現在ではG. oliquaのことです。
西部と南西部のGasteriaはショ糖が低く、南部と南東部のGasteriaはショ糖がやや低めの傾向です。まあ、調べた種類が少ないので断言出来ませんが…
Gasteria全体としてはAstrolobaに近縁ですが、ブドウ糖の比率は低い傾向があります。ショ糖に特化したグループと言えます。ただし、Gasteriaは鳥媒花ですが、ショ糖の比率が低いAloe(狭義)やPoellnitziaとは異なる組成です。糖の組成は花粉媒介者の好みを反映していないのでしょうか? ただの系統関係の遠近を示すだけなのでしょうか?

Gasteria
G. acinacifolia【10%, 14%, 76%】
G. baylissiana【2%, 4%, 94%】
G. brachyphylla【1, 1, 98】
G. carinata【5,% 8%, 87%】
G. disticha【2%, 4%, 94%】
G. excelsa【7%, 9%, 84%】
G. maculata
   var. maculata【2%, 2%, 96%】
G. maculata
   var. liliputana①【7%, 8%, 85%】
G. maculata
   var. liliputana②【6%, 7%, 87%】
G. pillansii【2%, 3%, 95%】
G. pulchra【6%, 8%, 86%】
G. rawlinsonii【12%, 13%, 75%】
G. vlokii【5%, 9%, 86%】
DSC_1954
Gasteria baylissiana

HaworthiopsisはGasteriaと蜜の組成の傾向は似ていますが、どちらかと言えばAstrolobaに似ています。Haworthiopsis自体は虫媒花でしょう。同じ虫媒花であるAstrolobaやTulistaのグループとHaworthiopsis+Gasteriaのグループが別れた時の祖先的な蜜の組成が残存しているのかもしれません。
H. koelmaniorumはややHaworthiopsisからやや遺伝的距離が離れています。しかし、糖の組成はHaworthiopsisとしては普通です。

Haworthiopsis
H. glauca【1%, 19%, 80%】
H. granulata①【5%, 25%, 70%】
H. granulata②【4%, 24%, 72%】
H. koelmaniorum【5%, 23%, 72%】
H. limifolia①【4%, 41%, 55%】
H. limifolia②【3%, 24%, 73%】
H. longiana【3%, 20%, 77%】
 H. nigra【 - %, 25%, 75%】
H. tessellata①【1%, 29%, 70%】
H. tessellata②【2%, 24%, 74%】
H. viscosa【2%, 32%, 66%】
H. woolley【1%, 22%, 77%】
DSC_1948
Haworthiopsis koelmaniorum

DSC_1796
Haworthiopsis nigra

以上が論文に示されたデータの結果です。解説は私の個人的な考えですから、論文の著者の考えではありませんからご注意下さい。
しかし、かねてよりの懸案であったAloeとPoellnitziaについての蜜の組成が示すことができてすっきりしました。逆にGasteriaについては、鳥媒花なのに糖の組成が同じ鳥媒花であるAloeやPoellnitziaとは異なる結果でしたが、この謎に対する答えを私は持ち合わせておりません。引き続き調査が必要でしょう。



ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村


Haworthiaはアフリカ原産の多肉植物です。自生地は当然ながら非常に暑くなります。ですから、その高温に耐える力がHaworthiaにはあるはずです。 本日ご紹介する論文は、2017年にウクライナのN.V.Nyzhyna、M.M.Gaidarzhy、Y.V.Aviekinにより発表された『Species-specific response to acute hyperthermal stress of Haworthia (Asphodelaceae) plants』です。なんと、Haworthiaを40℃と50℃に加熱してその反応を調べるというものです。

DSC_1832~2
これは論文のイメージに合わせて私が適当に加工して作った画像です。現実にこういう色のオブツーサはないので悪しからず。

論文で使用されたHaworthiaは、H. cymbiformis、H. parksiana、H. attenuata、H. limifoliaの4種類です。ただし、この内H. attenuataとH. limifoliaは、現在ではHaworthiopsisとされています。
研究方法は実生2年のHaworthiaの中間の葉(中心の新しい若い葉と外側の古い葉の間)を使用し、25℃の条件を比較対象として、40℃と50℃の条件にした葉を化学的に分析しました。加熱時間は3時間です。

植物もストレスを受けると活性酸素を生じます。活性酸素は細胞に対して毒性がありますから、生物の体には活性酸素を除去する働きがあります。主にスーパーオキシドジムスターゼやカタラーゼ、ペルオキシダーゼなどの酵素により活性酸素は不活化されます。H. cymbiformisやH. attenuataはスーパーオキシドジムスターゼが加熱により上昇しましたが、H. parksianaとH. limifoliaは上昇しませんでした。
さらに、成分を分析すると、フラボノイド(ポリフェノールの1種)がおそらくは破壊されたために、大幅に減少しました。しかし、フラボノイドは温度ストレスを受けた初期に働いて、植物を保護していると考えられます。H. parksianaでは40℃より50℃でよりフラボノイドが増加したことは、フラボノイドがストレス下の植物の保護に重要である可能性を示します。

H. attenuataは40℃でクロロフィル(光合成に必要な緑色の色素)とカロテノイド(強い抗酸化作用を持つ黄色や赤色の色素)が増加しました。さらに、50℃ではカロテノイドのみが増加しました。これはH. attenuataが高温下でもカロテノイドを増やすことにより環境に対応出来ていることがわかります。
逆にH. limifoliaは40℃ではややクロロフィルが減少し、光合成の効率が低下しました。50℃ではカロテノイドも減少したことから、H. limifoliaは高温環境には耐えられていないことが想定されます。
H. cymbiformisは40℃でも既にカロテノイドが減少する傾向があり、高温に耐える力が小さい可能性があります。

次に高温により失われた水分量の測定が行われました。加熱1時間の水分喪失量はH. attenuataは7.53%、H. limifoliaは4.32%、H. parksianaは7.44%、H. cymbiformisは22.29%でした。干魃耐性はH. limifoliaでやや高く、H. cymbiformisでは著しく低いことがわかりました。

以上が論文の内容となります。
ただし、この論文は英語ではなく、ウクライナ語で書かれたものです。キリル文字で書かれていますから、私は全く読めません。仕方がないので機械翻訳してみましたが、意外にも割とよく分かる日本語に翻訳されていました。というのも、例えばマダガスカルはフランスの植民地だったせいか、フランス語の論文が多くあります。同様にメキシコではスペイン語の論文が書かれています。マダガスカルもメキシコも多肉植物の宝庫ですから、沢山の多肉植物の論文が書かれています。タイトルに引かれて見てみると内容はフランス語やスペイン語で書かれていて全く読めないので試しに機械翻訳をかけてみますが、大抵は読むに耐えないひどい日本語になってしまいます。文字化けも多く、語尾がYesかNoかも怪しい悪質なもので、一応は日本語に翻訳されているのに全く内容が理解出来ず断念した論文が幾つもありました。機械翻訳は専門用語が多い学術論文には不向きです。最近では英語以外の論文は初めから除外していましたが、この論文はどうしても気になったので無理をして機械翻訳された文章を読んで見ました。しかし、ところどころで不明瞭な翻訳があり、よく理解出来ないために省いた部分もありました。ですから、大変申し訳ないのですが、不正確な部分もあるかもしれません。今回は無理をしたものの、正直懲りましたので今後はこれはというものではない限り、英語論文以外は訳さない方針で行こうかと思います。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村


硬葉系ハウォルチアと呼ばれてきたHaworthiopsisを少しずつ集めています。しかし、残念ながら人気は今一つであまり販売されておりません。私は主にイベントで購入しています。年に数回、五反田TOCで開催されるサボテン・多肉植物のビッグバザールでは、Ruchiaさんのブースは硬葉系ハウォルチアやツリスタがあるため、毎回楽しみにしています。そんな中、ニグラHaworthiopsis nigraが販売されており、気にはなっていました。しかし、ついついツリスタやユーフォルビア苗に手を出してしまい、毎度帰宅してからやはり購入すべきであったと後悔していました。ニグラ自体は基本的に園芸店で見かけませんから、こういう時じゃないと中々手に入りませんからね。というわけで、先月開催された秋のサボテン・多肉植物のビッグバザールで、ついにニグラを購入しました。しかも、フィールドナンバー付きです。早速、調べてみました。
DSC_1796
Haworthiopsis nigra IB 12484

とりあえず、フィールドナンバーについて調べます。"IB 12484"とありますが、IBとは採取人のIngo Breuerの略です。Ingo Breuerはドイツの研究者であり、Eden Plantsの主宰者とのことです。登録されているIB 12484の情報は以下の通り。

Field number: IB 12484
Collector: Ingo Breuer
Species: Haworthia nigra
Locality: Deeside, 3km North of Whittlesea
Altitude: 1035m
Date: 17-Oct-03

登録されている学名はハウォルチア・ニグラとなっていますが、ニグラがハウォルチアからハウォルチオプシスとされたのは2013年のことですから、採取された2003年当時はハウォルチアで間違いないわけです。

さて、ニグラの学名は2013年に命名されたHaworthiopsis nigra (Haw.) G.D.Rowleyです。ニグラの命名の歴史は以下の通りです。
1824年 Apicra nigra Haw.
1829年 Aloe nigra
                        (Haw.) Schult. & Schult.f.
1880年 Haworthia nigra (Haw.) Baker
1891年 Catevala nigra (Haw.) Kuntze.
1997年 Haworthia venosa
                        subsp. nigra (Haw.) Halda
1998年 Haworthia viscosa
                        subsp. nigra (Haw.) Halda
2013年 Haworthiopsis nigra
                               (Haw.) G.D.Rowley


また、ニグラには2013年に命名されたHaworthiopsis nigra var. diversifolia (Poelln.) G.D.Rowleyという変種があります。
1937年 Haworthia diversifolia Poelln.
1938年 Haworthia schmidtiana
          var. diversifolia (Poelln.) Uitewaal
1948年 Haworthia nigra
          var. diversifolia (Poelln.) Uitewaal
2013年 Haworthiopsis nigra
      var. diversifolia (Poelln.) G.D.Rowley


変種ディヴェルシフォリアが出来たことで、変種ディヴェルシフォリアと基本種と区別するために自動的に変種ニグラが出来ました。つまり、Haworthiopsis nigra var. nigraです。この変種ニグラの異名は以下の通りです。
1929年 Haworthia schmidtiana Poelln.
1937年 Haworthia schmidtiana
                        var. suberecta Poelln.
1938年 Haworthia schmidtiana
                        var. elongata Poelln.
              Haworthia schmidtiana
                        var. pusilla Poelln.
1939年 Haworthia ryneveldii Poelln.
1948年 Haworthia nigra var. elongata
                                 (Poelln.) Uitewaal
              Haworthia nigra var. schmidtiana
                                 (Poelln.) Uitewaal
1983年 Haworthia nigra f. angustata
                                   (Poelln.) Pilbeam
2013年 Haworthiopsis nigra
                         var. elongata
                              (Poelln.) G.D.Rowley
              Haworthiopsis nigra var. nigra


ニグラは割と姿に多様性がありますから、亜種や変種が多いですね。別種とされたものも見受けられます。様々なタイプを集めるのも楽しいでしょう。



ブログランキング参加中です
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村


硬葉系ハウォルチアはハウォルチア属のHexangulares亜属とされてきました。しかし、硬葉系ハウォルチアは2013年にGordon Douglas Rowleyによりハウォルチオプシス属とツリスタ属として、ハウォルチア属から独立しました。しかし、そのハウォルチオプシス属内部をどう分類するのかという問題も出てきました。また、遺伝子解析結果からは、思いもよらぬ難問が提出されました。そこで、本日はハウォルチオプシス属の新しい分類を提案している、2016年に発表された論文『A synoptic review and new iofrageneric classification for the genus Haworthiopsis (Xanthorrhoeaceae : Asphodeloideae)』をご紹介いたします。著者は近年のアロエ類研究を先導する、南アフリカのSean D.Gildenhuys & Ronell R.Klopperです。

Haworthia henriquesiiが2019年にハウォルチオプシス属とされましたが、論文は2016年ですからHaworthiopsis henriquesiiを含まない18種類について述べられております。
問題はコエルマニオルム(H. koelmaniorum)の立ち位置です。コエルマニオルムは分布はリミフォリア(H. limifolia)に近いものの、形態的にはテセラタ節(H. granulata、H. tessellata、H. venosa、H. woolleyi)に近いようにも見えます。しかし、下に示した遺伝子解析による分子系統では、ハウォルチオプシス属はガステリア属と姉妹群ですが、コエルマニオルムはむしろガステリア属よりもハウォルチオプシス属と離れて見えます。

            ┏━━━━━Gasteria
            ┃
            ┃        ┏━━Haworthiopsis
            ┃        ┃     Section Trifariae
            ┃    ┏╋━━Haworthiopsis
            ┃    ┃┃     Section Haworthiopsis
            ┃┏┫┗━━Haworthiopsis
            ┃┃┃         Section Haworthiopsis
            ┣┫┗━━━Haworthiopsis
            ┃┃             Section Virescentes
        ┏┫┗━━━━Haworthiopsis
        ┃┃                 Section Haworthiopsis
        ┃┣━━━━━Haworthiopsis
        ┃┃                 Section Limifoliae
        ┃┣━━━━━Haworthiopsis
        ┃┃                 Section Tessellatae
        ┃┗━━━━━Haworthiopsis
    ┏┫                     Section Attenuatae
    ┃┣━━━━━━Haworthiopsis
    ┃┃                     Section koelmaniorum
    ┃┃┏━━━━━Tulista
    ┃┃┃
    ┃┃┣━━━━━Aristaloe
┏┫┗┫
┃┃    ┣━━━━━Gonialoe
┃┃    ┃
┃┃    ┗━━━━━Astroloba
┃┃
┃┣━━━━━━━Aloe
┃┃
┫┗━━━━━━━Aloiampelos

┣━━━━━━━━Haworthia

┣━━━━━━━━Kumara

┗━━━━━━━━Aloidendron

ハウォルチオプシスを分割していますが、ガステリア属を含めて1つのグループを形成しています。同様にツリスタ属、アリスタロエ属、ゴニアロエ属、アストロロバ属を1つのグループとしています。要するに、①ハウォルチオプシス+ガステリア、②コエルマニオルム、③ツリスタ+アリスタロエ+ゴニアロエ+アストロロバという、3群に分けられるのです。ガステリア属は非常にまとまりのあるグループなので、独立した属とされています。このように、コエルマニオルムはハウォルチオプシスとすべきか微妙な立ち位置にいます。
さらに言うならば、Trifariae節、Haworthiopsis節、Virescentes節はまとまりがありますが、Limifoliae節、Tessellatae節、Attenuatae節は必ずしも単系統にはなっていません。ハウォルチオプシス属自体のまとまりのなさがうかがえます。
ただし、慎重にも論文ではさらに詳細な解析が必要であるとしています。完全決着などではなく、現時点においての評価ということなのでしょう。
では、論文におけるハウォルチオプシス属の分類と、私の各Sectionの解説を示します。

①Section Attenuatae
・H. attenuata
・白い結節(イボ)がつくタイプです。結節の大きさや密度、白さには個体差があります。
・アテヌアタは東ケープ州に分布します。
・日本では「十二の巻」という名前の白い結節があるハウォルチオプシスが昔から販売されており、これをファスキアタとすることが多いのですが、「十二の巻」はアテヌアタ系交配種です。最近、「特アルバ」の名前で販売されている結節が目立つタイプのハウォルチオプシスはアテヌアタです。同様に結節が細かくつき繋がらない「松の雪」はやはりアテヌアタです。このように、アテヌアタ系はよく見かけますが、ファスキアタは基本的に販売しておりません。たまに専門店に並ぶくらいです。ネットでは十二の巻をファスキアタの名前で販売されていることが多いので注意が必要です。

②Section Haworthiopsis
・H. coarctata, H. fasciata, H. glauca, H.longiana, H. reinwardtii
・白
い結節(イボ)がつくタイプです。結節の大きさや密度、白さには個体差があります。白い結節を持ちロゼットを作るファスキアタ、白い結節を持ち縦長に育つコアルクタタとレインワルドティイ、結節に白くならないか結節がないグラウカ、結節がない場合もあり葉が長くなるロンギアナからなります。
・Haworthiopsis節はすべて東ケープ州に分布します。
コアルクタタをレインワルドティイに含める考え方もあります。

③Section Limifolia
・H. limifolia
・遺伝子解析では独立して見えますが、他種との関係に対する解析が不十分とのことで暫定的にリミフォリア節を設定しています。
・リミフォリアはMpumalanga州とKuwaZulu-Natal州に分布します。

④Section koelmaniorum
・H. koelmaniorum
・コエルマニオルムはLimpopo州とMpumalanga州に分布します。Limpopo州に分布するハウォルチオプシスはコエルマニオルムのみです。

⑤Section Tessellata
・H. granulata, H. tessellata, H. venosa, H. woolleyi
・テセラタは北西州と自由州唯一のハウォルチオプシスです。テセラタは北ケープ州や西ケープ州、東ケープ州にも広く分布します。グラヌラタは北ケープ州と西ケープ州に分布します。ヴェノサは西ケープ州に固有です。ウォオレイは東ケープ州に固有です。
・Tessellata節は小型で窓のあるグループです。グラヌラタはヴェノサの亜種とされてきました。同様にウォオレイはヴェノサの亜種あるいは変種とされて来ましたから、販売苗のラベルではそのような表記が多いでしょう。

⑥Section Trifariae
・H. pungens, H. nigra, H. scabra, H. viscosa
・縦長に積み重なるタイプです。ヴィスコサやニグラは三方向に葉を出して積み重なります。プンゲンスは6あるいは3方向に積み重なります。スカブラはロゼットを形成します。
・プンゲンスは東ケープ州に固有です。スカブラとヴィスコサは東ケープ州と西ケープ州に分布します。ニグラは東ケープ州と西ケープ州、さらに北ケープ州にも分布します。

⑦Section Virescentes
・H. bruynsii, H. sordida
・Virescentes節は東ケープ州に固有です。
・ブルインシイは一見して軟葉系のHaworthia retusaに似ていますが類縁関係はなく、平行進化と考えられています。

ちなみに、ハウォルチオプシス全種類の変種や異名については下記の記事にありますので、ご参照して下さい。



さて、論文の内容につきまして簡単に解説してきましたが、実は私も読んでいてモヤモヤする内容でした。まず、Tessellatae節やLimifoliae節の関係がよく分からないことです。これはさらに詳しく解析をすればわかることでしょうから今後に期待します。次にHaworthiopsis節ですが、Trifariae節やVirescentes節と入れ子状になってしまっています。どうみても、単系統ではありません。結節があるなどの特徴から分けるのは間違いなのかもしれません。

2014年のJohn C. Manning & James S. Boatwrightの
A Molecular Phylogeny and Generic Classification of Asphodelaceae Subfamily Alooideae : A Final Resolution of the Prickly Issue of Polyphyly in the Alooids?』という論文では、12種類のハウォルチオプシスの遺伝子解析をしています。ここでもコエルマニオルムはハウォルチオプシスの中には収まっていないため、下記の分子系統には入っていません。この論文では、コエルマニオルムはツリスタ+アストロロバ+アリスタロエ+ゴニアロエと姉妹群とされ、むしろハウォルチオプシスからは近縁ではありません。

┏━━━━━━━Gasteria

┃                    ┏━H. reinwardtii
┃                ┏┫
┃                ┃┗━H. nigra
┃            ┏┫
┃            ┃┗━━H. coarctata
┃        ┏┫
┃        ┃┗━━━H. glauca
┃    ┏┫
┃    ┃┣━━━━H. bryunsii
┃    ┃┃  
┃┏┫┗━━━━H. sordida
┃┃┃
┃┃┃┏━━━━H. fasciata
╋┫┗┫
┃┃    ┗━━━━H. longiana
┃┃
┃┗━━━━━━H. limifolia

┃┏━━━━━━H. venosa
┗┫
    ┗━━━━━━H. attenuata

Haworthiopsis節は2つに別れます。ファスキアタとロンギアナは近縁です。残りのレインワルドティイ、コアルクタタ、グラウカは、Trifariae属のニグラと近縁です。他のTrifariae節はわかりません。Limifolia節はここでも独立しています。Tessellata節のヴェノサはアテヌアタと近縁に見えます。
ただし、この2つの論文は分離がいまいちだったり、調べた種類が少ないため、まだ確実なことは言えないでしょう。また、調べた遺伝子によっても、解析結果に若干の違いが出るようです。更なるデータの蓄積が必要でしょう。
というわけで、わかったようなわからないような結果です。はっきりしないのは残念です。しかし、コエルマニオルムはハウォルチオプシスとは近縁とは言えないという結果だけは共通します。将来、コエルマニオルムはハウォルチオプシスから独立するかもしれませんね。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村


昨日に続いて、ハウォルチオプシス属の学名と異名の紹介です。

⑭Haworthiopsis scabra
                (Haw.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia scabra Haw., 1819
→Aloe scabra (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
→Catevala scabra (Haw.) Kuntze, 1891

変種スカブラ
Haworthiopsis scabra var. scabra

異名
Haworthia tuberculata Poelln., 1931
→Haworthia scabra var. tuberculata
                              (Poelln.) Halda, 1997
Haworthia scabra var. johanii M.Hayashi, 2001
→Haworthia johanii (M.Hayashi) Breuer, 2010
→Haworthiopsis scabra var. johanii
                                     (M.Hayashi) Breuer, 2016

変種モリシアエ
Haworthiopsis scabra var. morrisiae
                        (Poelln.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia morrisiae Poelln., 1937
→Haworthia scabra var. morrisiae
                   (Poelln.) G.D.Rowley, 2013

変種スタルキアナ
Haworthiopsis scabra var. starkiana
                       (Poelln.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia starkiana Poelln., 1933
→Haworthia scabra subsp. starkiana
                        (Poelln.) Halda, 1997
→Haworthia scabra var. starkiana
                 (Poelln.) M.B.Bayer, 1999

変種ラテガニアエ
Haworthiopsis scabra var. lateganiae
                     (Poelln.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia lateganiae Poelln., 1937
→Haworthia starkiana var. lateganiae
                 (Poelln.) M.B.Bayer, 1976
→Haworthia scabra var. lateganiae
                 (Poelln.) M.B.Bayer, 1999

DSC_1595
Haworthiopsis scabra

DSC_0836
Haworthiopsis scabra var. starkiana

⑮Haworthiopsis sordida
                  (Haw.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia sordida Haw., 1821
→Aloe sordida (Haw.)
              Schult. & Schult.f., 1829
→Catevala sordida (Haw.) Kuntze, 1891
→Haworthia scabra var. sordida
                                    (Haw.) Halda, 1997
→Haworthia scabra subsp. sordida
                                    (Haw.) Halda, 1997

変種ソルディダ
Haworthiopsis sordida var. sordida
異名
Haworthia agavoides
                  Zantner & Poelln., 1938
→Haworthiopsis sordida var. agavoides
   (Zantner & Poelln.) Breuer, 2016

変種ラブラニ
Haworthiopsis sordida var. lavrani
                   (C.L.Scott) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia sordida var. lavrani
                                   C.L.Scott, 1981
→Haworthia scabra var. lavrani
                    (C.L.Scott) Halda, 1997
→Haworthia lavrani
              (C.L.Scott) Breuer, 2010

DSC_1799
Haworthiopsis sordida

⑯Haworthiopsis tessellata
                   (Haw.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia tessellata Haw., 1824
→Aloe tessellata
         (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
→Catevala tessellata (Haw.) Kuntze, 1891
→Haworthia venosa subsp. tessellata
                                 (Haw.) M.B.Bayer, 1982
→Haworthia venosa var. tessellata
                                        (Haw.) Halda, 1997

変種テセラタ
Haworthiopsis tessellata var. tessellata

異名
Haworthia engleri Dinter, 1914
Haworthia parva Haw., 1824
→Aloe parva (Haw.)
               Schult. & Schult.f., 1829
Haworthia pseudotessellata Poelln., 1929
Haworthia pseudogranulata Poelln., 1937
Haworthia minutissima Poelln., 1939
Haworthia tessellata var. coriacea
                              Resende & Poelln., 1942
Haworthia coriacea
               (Resende & Poelln.) Breuer, 2010

変種クロウシイ
Haworthiopsis tessellata var. crousii
        (M.Hayashi) Gildenh. & Klopper,2016
異名
Haworthia crousii M.Hayashi, 2001


DSC_0691
Haworthiopsis tessellata

⑰Haworthiopsis venosa
               (Lam.) G.D.Rowley, 2013
異名
Aloe venosa lam., 1783
→Haworthia venosa (Lam.) Haw., 1821
→Catevala venosa (Lam.) Kuntze, 1891
Aloe recurva Haw., 1804
→Apicra recurva (Haw.) Willd., 1811
→Haworthia venosa subsp. recurva
                            (Haw.) M.B.Bayer, 1976
→Haworthia recurva (Willd.) Haw., 1812 
→Catevala recurva (Willd.) Kuntze, 1891
Aloe tricolor Haw., 1804
→Apicra tricolor (Haw.) Willd., 1811
Aloe anomala Haw., 1804
→Apicra anomala (Haw.) Willd., 1811
Haworthia distincta N.E.Br., 1876

DSC_1860
Haworthiopsis veonosa

⑱Haworthiopsis viscosa
         (L.) Gildenh. & Klopper, 2016

異名
Aloe viscosa L., 1753
→Apicra viscosa (L.) Willd., 1811
→Haworthia viscosa (L.) Haw., 1812
→Catevala viscosa (L.) Kuntze, 1891
→Tulista viscosa (L.) G.D.Rowley, 2013
Aloe triangularis Lam., 1783

変種ヴィスコサ
Haworthiopsis viscosa var. viscosa

異名
Aloe triangularis Medik., 1784
Aloe rigida Ker Gawl., 1810
Apicra tortuosa Willd. 1811
Aloe pseudotortuosa Salm-Dyck, 1817
Haworthia pseudotortuosa Haw., 1819
Haworthia asperiuscula Haw., 1819
→Aloe asperiuscula
              (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
→Catevala asperiuscula
                        (Haw.) Kuntze, 1891

→Haworthia viscosa f. asperiuscula
                         (Haw.) Pilbeam, 1983
→Haworthiopsis viscosa
                        var. asperiuscula

                            (Haw.) Breuer, 2016
Haworthia concinna Haw., 1819
→Aloe concinna
            (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Haworthia cordifolia Haw., 1819
→Aloe cordifolia
          (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
→Catevala cordifolia (Haw.) Kuntze, 1891
Haworthia indurata Haw., 1821
→Aloe indurata
       (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Haworthia torquata Haw., 1826 publ. 1827
→Aloe torquata 
       (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Aloe subtortuosa
               Schult. & Schult.f., 1829
Haworthia tortuosa Sweet, 1830
Haworthia beanii G.G.Sm., 1944
→Aloe viscosa f. beanii
                        (G.G.Sm.) Pilbeam, 1983
→Haworthiopsis viscosa var. beanii
                           (G.G.Sm.) Breuer, 2016
Haworthia viscosa f. subobtusa
                          (Poelln.) Pilbeam, 1983
Haworthia viscosa subsp. derekii-clarkii
                                              Halda, 1998


変種ヴァリアビリス
Haworthiopsis viscosa var. variabilis
          (Breuer) Gildenh. & Klopper, 2016

異名
Haworthia viscosa var. variabilis
                                         Breuer, 2003
→Haworthia variabilis
                         (Breuer) Breuer, 2010
→Haworthiopsis variabilis
                          (Breuer) Zonn., 2014


DSC_1751
Haworthiopsis viscosa

⑲Haworthiopsis woolleyi
              (Poelln.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia woolleyi Poelln., 1937
→Haworthia venosa subsp. woolleyi
                     (Poelln.) Halda, 1997
→Haworthiopsis venosa var. woolleyi
                    (Poelln.) Breuer, 2016

DSC_1797
Haworthiopsis woolleyi

以上がハウォルチオプシス属、全19種類です。異名が多いのは属名が変わったからだけではなく、同種に異なる学名がつけられたことが原因の1つです。それは、産地ごとの外見的な違いを別種と判断したこともあるのしょう。ただし、それが遺伝的に異なるとは限らず、環境が厳しいので育ちが悪いだけだったりもしますから、間違いも起こりやすくなります。また、記事を読んでいただけたならお分かりの様に、活発に命名されたのが1800年代と古いことがわかります。当然ながら現在と異なりネットで情報をやり取り出来ません。ですから、情報収集も不完全で遅くなります。例えば、イギリスの雑誌に発表された論文が、フランスやドイツ、アメリカに届くまでタイムラグがあります。しかも、紙の出版物ですから、世界中の学術誌をすべて収集は困難ですから、すべての論文を確認して命名することもまた困難となります。これらのことから、当時からあったであろう混乱が現在にまで及んでいたりします。非常に困った問題です。



ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村


昨日に続いて、ハウォルチオプシス属の学名と異名の紹介です。

⑤Haworthiopsis glauca
              (Baker) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia glauca Baker, 1880
→Catevala glauca (Baker) Kuntze, 1891
→Haworthia reinwardtii var. glauca
                                   (Baker) Halda, 1997
→Haworthia reinwardtii subsp. glauca
                                   (Baker) Halda, 1997

変種グラウカ
Haworthiopsis glauca var. glauca
異名
Haworthia carrissoi Resende, 1941

変種ヘレイ
Haworthiopsis glauca var. herrei
                        (Poelln.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia herrei Poelln., 1929

→Haworthia glauca var. herrei
                          (Poelln.) M.B.Bayer, 1976
→Haworthia reinwardtii var. herrei
                                 (Poelln.) Halda, 1997
Haworthia armstrongii Poelln., 1937
→Haworthia glauca f. armstrongii
                          (Poelln.) M.B.Bayer, 1976
Haworthia jacobseniana Poelln., 1937
→Haworthia glauca f. jacobseniana
                              (Poelln.) Pilbeam, 1983
Haworthia jonesiane Poelln., 1937
→Haworthia glauca f. jonesiane
                              (Poelln.) Pilbeam, 1983
Haworthia eiyae Poelln., 1937

DSC_1537
Haworthiopsis glauca var. herrei

⑥Haworthiopsis granulata
           (Marloth) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia granulata Marloth, 1912
→Haworthia venosa subsp. granulata
                     (Marloth) M.B.Bayer, 1976
→Haworthia scabra subsp. granulata
                             (Marloth) Halda, 1997

変種スコエマニイ
Haworthiopsis granulata var. schoemanii
                      (M.Hayashi) Breuer, 2016
異名
Haworthia schoemanii M.Hayashi, 2003

⑦Haworthiopsis henriquesii (Resende)
         Gideon F.Sm. & Vasco Silva, 2019

異名
Haworthia henriquesii Resende, 1941


⑧Haworthiopsis koelmaniorum
                        (Oberm. & D.S.Hardy)
                Boatwr. & J.C.Manning, 2014
異名
Haworthia koelmaniorum
                              Oberm. & D.S.Hardy, 1976
→Haworthia limifolia var. koelmaniorum
                (Oberm. & D.S.Hardy) Halda, 1997
→Tulista koelmaniorum
       (Oberm. & D.S.Hardy) G.D.Rowley, 2013

変種ムクムルトリイ
Haworthiopsis koelmaniorum
                   var. mucmurtryi
               (C.L.Scott) Gildenh. & Klopper, 2016

異名
Haworthia mucmurtryi C.L.Scott, 1984
→Haworthia koelmaniorum var. mucmurtryi
                (C.L.Scott) G.D.Rowley, 1999
→Tulista koelmaniorum var. mucmurtryi
                (C.L.Scott) G.D.Rowley, 2013
→Haworthiopsis mucmurtryi
                           (C.L.Scott) Zonn, 2014

DSC_0973
Haworthiopsis koelmaniorum

⑨Haworthiopsis limifolia
           (Marloth) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia limifolia Marloth, 1910


変種リミフォリア
Haworthiopsis limifolia var. limifolia

異名
Haworthia marlothiana Resende, 1940
Haworthia limifolia var. striata
                  Pilbeam, unknown publication
→Haworthiopsis limifolia var. striata
                               (Pilbeam) Breuer, 2016

変種ウボンボエンシス
Haworthiopsis limifolia var. ubomboensis
                           (I.Verd.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia ubomboensis I.Verd., 1941
Haworthia keithii
                  (G.G.Sm.) M.Hayashi, 2000

変種ギガンテア
Haworthiopsis limifolia var. gigantea
                (M.B.Bayer) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia limifolia var. gigantea
                                      M.B.Bayer, 1962
→Haworthia gigantea
               (M.B.Bayer) M.Hayashi, 2000

変種グラウコフィラ
Haworthiopsis limifolia var. glaucophylla
                            (M.B.Bayer) Breuer, 2010
異名
Haworthia limifolia var. glaucophylla
                                            M.B.Bayer, 2003
→Haworthia glaucophylla
                             (M.B.Bayer) Breuer, 2010

変種アルカナ
Haworthiopsis limifolia var. arcana
            (Gideon F.Sm. & N.R.Crouch)
                                 G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia limifolia var. arcana
           Gideon F.Sm. & N.R.Crouch, 2001
→Haworthia arcana
       (Gideon F.Sm. & N.R.Crouch)
                                     Breuer, 2013

DSC_0384
Haworthiopsis limifolia

⑩Haworthiopsis longiana
                 (Poelln.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia longiana Poelln., 1937

→Haworthia pumila subsp. longiana
                                   (Poelln.) Halda, 1997

⑪Haworthiopsis nigra
                   (Haw.) G.D.Rowley, 2013
異名
Apicra nigra Haw., 1824
→Aloe nigra (Haw.)
               Schult. & Schult.f., 1829 
→Haworthia nigra (Haw.) Baker, 1880
→Catevala nigra (Haw.) Kuntze, 1891
→Haworthia venosa subsp. nigra
                                (Haw.) Halda, 1997
→Haworthia viscosa subsp. nigra
                                (Haw.) Halda, 1998

変種ニグラ
Haworthia nigra var. nigra
異名
Haworthia schmidtiana Poelln., 1929
→Haworthia schmidtiana
              var. elongata Poelln., 1938
→Haworthiopsis nigra var. elongata
                    (Poelln.) G.D.Rowley, 2013
Haworthia ryneveldii Poelln., 1939
Haworthia nigra f. angustata
                         (Poelln.) Pilbeam, 1983

変種ディヴェルシフォリア
Haworthiopsis nigra var. diversifolia
                   (Poelln.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia diversifolia Poelln., 1937

DSC_1796
Haworthiopsis nigra

⑫Haworthiopsis pungens
                   (M.B.Bayer)
       Boatwr. & J.C.Manning, 2014
異名
Haworthia pungens M.B.Bayer, 1999
Tulista pungens (M.B.Bayer)
                           G.D.Rowley, 2013

DSC_1671
Haworthiopsis pungens

⑬Haworthiopsis reinwardtii
      (Salm-Dyck) G.D.Rowley, 2013
異名
Aloe reinwardtii Salm-Dyck, 1821
→Haworthia reinwardtii
                (Salm-Dyck) Haw., 1821
→Catevala reinwardtii
             (Salm-Dyck) Kuntze, 1891

変種レインワルドティイ
Haworthiopsis reinwardtii var. reinwardtii
異名
Haworthia reinwardtii var. zebrina
                                      G.G.Sm., 1944
→Haworthia reinwardtii f. zebrina
                 (G.G.Sm.) M.B.Bayer, 1977

変種ブレビクラ
Haworthiopsis reinwardtii var. brevicula
                       (G.G.Sm.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia reinwardtii var. brevicula
                                         G.G.Sm., 1944
→Haworthia brevicula
                         (G.G.Sm.) Breuer, 2010

品種オリバケア
Haworthiopsis reinwardtii f. oliviacea
            (G.G.Sm.) Gildenh. & Klopper, 2016
異名
Haworthia reinwardtii var. oliviacea
                                          G.G.Sm., 1944
→Haworthia reinwardtii f. oliviacea
                                       M.B.Bayer, 1976
→Haworthia oliviacea
                        (G.G.Sm.) Breuer, 2010
→Haworthiopsis reinwardtii var. oliviacea
                            (G.G.Sm.) Breuer, 2019

品種カルムネンシス
Haworthiopsis reinwardtii f. chalumnensis
        (G.G.Sm.) Gildenh. & Klopper, 2016
異名
Haworthia reinwardtii var. chalumnensis
                               G.G.Sm., 1943
→Haworthia reinwardtii f. chalumnensis
          (G.G.Sm.) M.B.Bayer, 1976

品種カフィルドリフテンシス
Haworthiopsis reinwardtii f. kaffirdriftensis
         (G.G.Sm.) Gildenh. & Klopper, 2016  
異名
Haworthia reinwardtii var. kaffirdriftensis
                               G.G.Sm., 1941
→Haworthia reinwardtii f. kaffirdriftensis
         (G.G.Sm.) M.B.Bayer, 1976

IMG_20220312_211624
Haworthiopsis reinwardtii f. kaffirdriftensis

本日はここまで。異名が非常に多いため、どうしても記事が長くなってしまいます。明日に続きます。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村

多肉植物は沢山の種類があり、様々な分類群に所属します。そのため、多肉植物の種類は何種類あるのか、膨大過ぎてよく分かりません。しかし、1つのグループ=属レベルならば、調べることも可能です。
というわけで、私は今までオペルクリカリア属(Operculicarya)やダシリリオン属(Dasylirion)、フォウクィエリア属(Fouquieria)、アストロロバ属(Astroloba)について、果たして何種類あるのかを記事にしてきました。最近、ハウォルチオプシス属(Haworthiopsis)について書かれた論文を読んでいたところ、硬葉系ハウォルチアと呼ばれていたハウォルチオプシス属は18種類と書かれていました。その程度の種類なら調べられますし、論文が書かれた2016年から6年経って種類数は変わったのか興味があります。ということで、果たしてハウォルチオプシス属は何種類あるのかを、記事にしてみました。

先ずは、ハウォルチオプシス属が誕生するまでの経緯を見てみましょう。
スウェーデンのCarl von Linneによって現在使われる二名式学名というシステムが作られたのが、1753年のことでした。このときはハウォルチオプシス属はまだ存在せずに、最初はアロエ属でした。その後、1809年にフランスのHenri August Duvalによりハウォルチア属が創設され、ハウォルチオプシス属もハウォルチア属とされました。日本ではあくまで園芸上での話ですが、ハウォルチア属を軟葉系と硬葉系に分けています。軟葉系は現在のハウォルチア属で、硬葉系は現在のハウォルチオプシス属とツリスタ属に相当します。
ちなみに、1786年にドイツのFriedrich Kasimir Medikusにより創設されたカテバラ属、1811年にドイツのCarl Ludwig Willdenowにより創設されたアピクラ属という属もありましたが、アロエ属やハウォルチオプシス属の一部からなるグループでしたが、現在では存在しない属名です。
1840年にオスマン帝国生まれでアメリカで活動した
Constantine Samuel Rafinesqueがツリスタ属を提唱しましたが認められませんでした。しかし、2013年にイギリスのGordon Douglas Rowleyはハウォルチア属を解体し3属に分けました。解体されたハウォルチア属は、ハウォルチア属、ハウォルチオプシス属、ツリスタ属となり、忘れ去られていたツリスタ属は79年の年月を経てついに日の目を見ました。このとき、ツリスタ属にはアストロロバ属やハウォルチア属の一部も含まれていたので、ハウォルチオプシス属はツリスタ属とされた異名を持つ種類も存在します。現在ではツリスタ属は4種類まで減少し、含まれていたハウォルチア属はハウォルチオプシス属とされました。この時、ツリスタ属からハウォルチオプシス属への移動は、南アフリカのJames Boatwright & John C. Manningや、同じく南アフリカのSean D. Gildenhuys & Ronell R. Klopperによるものです。この南アフリカの研究者たちは、遺伝子解析という新しい武器により、次々と新しい見解を公表しており目が離せません。

ハウォルチオプシス属の経緯
1753年 Aloe L.
1786年 Catevala Medik.
1809年 Haworthia Duval
1811年 Apicra Willd.
1840年 Tulista Raf.
2013年 Haworthiopsis G.D.Rowley

それでは、いよいよハウォルチオプシス属の種類を見ていきます。最初に言ってしまうと、現在学術的に認められているハウォルチオプシス属は19種です。最新の情報では、Haworthia henriquesiiが2019年にハウォルチオプシス属とされました。これからも、ハウォルチオプシス属は増える可能性はあるのでしょうか?
また、異名もすべてを網羅できているのかは分かりませんが、できただけ盛り込みました。あと、変種に対する異名も調べました。異名が多い種類では、場合によっては異名で流通している種もあるでしょうから、自分の育てているハウォルチオプシスは正式な学名か見比べて見ると異なるかもしれません。また、学名は変更されてきた経緯からわかります通り不変のものではなく、常に見直され改定を受けるものです。この記事の一覧も、やがて古くなり通じなくなるのでしょう。


①Haworthiopsis attenuata
                     (Haw.) G.D.Rowley, 2013
異名
Aloe attenuata Haw., 1804
→Apicra attenuata (Haw.) Willd., 1811
→Haworthia attenuata (Haw.) Haw., 1812
→Catevala attenuata (Haw.) Kuntze, 1891
→Haworthiopsis attenuata (Haw.) 1997


変種アテヌアタ
Haworthiopsis attenuata var. attenuata

異名
Aloe redula Ker Gawl., 1807
Aloe subulata Salm-Dyck, 1822
→Haworthia subulata (Salm-Dyck) Baker, 1880
→Catevala subulata (Salm-Dyck) Kuntze, 1891
Haworthia clariperla Haw., 1827 publ. 1828
→Haworthia attenuata f. clariperla
                        (Haw.) M.B.Bayer, 1976
Aloe clariperla Schult. & Schult.f., 1829
Aloe subattenuata
        Salm-Dyck ex Schult. & Schult.f., 1830
→Haworthia subattenuata
(
Salm-Dyck ex Schult. & Schult.f.) Baker, 1880
→Catevala 
subattenuata
(Salm-Dyck ex Schult. & Schult.f.) Kuntze, 1891
Haworthia tisleyi Baker, 1880
→Catevala tisleyi (Baker) Kuntze, 1891
Haworthia argyrostigma Baker, 1896
Haworthia britteniana Poelln., 1937
Haworthia attenuata f. caespitosa
                  (A.Berger) Pilbeam, 1983

変種グラブラタ
Haworthiopsis attenuata var. glabrata
                (Salm-Dyck) G.D.Rowley, 2015

異名
Aloe glabrata Salm-Dyck, 1834
→Haworthia glabrata
                       (Salm-Dyck) Baker, 1880
→Catevala glabrata (Salm-Dyck) Kuntze, 1891
→Haworthia attenuata var. glabrata
               (Salm-Dyck) M.B.Bayer, 2012
Aloe redula Jacq., 1804
→Apicra redula (Jacq.) Willd., 1811
→Haworthia redula (Jacq.) Haw., 1812
→Catevala redula (Jacq.) Kuntze, 1891
→Haworthia pumila subsp. redula
                                  (Jacq.) Halda, 1997
→Haworthia attenuata var. redula
                          (Jacq.) M.B.Bayer, 1999
→Haworthia attenuata var. redula
                         (Jacq.) G.D.Rowley, 2015
Aloe rugosa Salm-Dyck, 1834
→Haworthia rugosa (Salm-Dyck) Baker, 1880
→Catevala rugosa (Salm-Dyck) Kuntze, 1891

DSC_1547
Haworthiopsis attenuata

②Haworthiopsis bruynsii
          (M.B.Bayer) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia bruynsii M.B.Bayer, 1981
→Haworthia retusa var. bruynsii
                    (M.B.Bayer) Halda, 1997


③Haworthiopsis coarctata
                     (Haw.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia coarctata Haw., 1824
→Aloe coarctata
                     (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
→Catevala coarctata (Haw.) Kuntze, 1891
→Haworthia reinwardtii var. coarctata
                                           (Haw.) Halda, 1997
→Haworthia reinwardtii subsp. coarctata
                                           (Haw.) Halda, 1997
→Haworthiopsis reinwardtii var. coarctata
                                           (Haw.) Breuer, 2016

変種コアルクタタ
Haworthiopsis coarctata var. coarctata
異名
Haworthia greenii Baker, 1880
→Catevala greenii (Baker) Kuntze, 1891
→Haworthia coarctata var. greenii
                                  (Baker) M.B.Bayer, 1973
→Haworthia coarctata f. greenii
                                  (Baker) M.B.Bayer, 1999
→Haworthia reinwardtii var. greenii
                                          (Baker) Halda, 1997
→Haworthiopsis reinwardtii var. greenii
                                         (Baker) Breuer, 2016
Haworthia peacockii Baker, 1880
→Catevala peacockii (Baker) Kuntze, 1891
Haworthia chalwinii Marloth & A.Berger, 1906
→Haworthia coarctata f. chalwinii
               (Marloth & A.Berger) Pilbeam, 1983
Haworthia fallax Poelln., 1932
Apicra bicarinata Resende, 1937
Haworthia resendeana Poelln., 1938
→Haworthiopsis resendeana
                   (Poelln.) Gildenh. & Klopper, 2016
Haworthia fulva G.G.Sm., 1943
Haworthia baccata G.G.Sm., 1944
Haworthia musculina G.G.Sm., 1948
Haworthia coarctatoides
                                 Resende & Viveiros,1948
Haworthia coarctata f. conspicua
                        (Poelln.) Pilbeam, 1983 

変種テヌイス
Haworthiopsis coarctata var. tenuis
                        (G.G.Sm.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia reinwardtii var. tenuis
                                              G.G.Sm., 1948
Haworthia coarctata var. tenuis
                         (G.G.Sm.) M.B.Bayer, 1973
Haworthia tenuis (G.G.Sm.) Breuer, 2010
Haworthia reinwardtii var. tenuis
                                (G.G.Sm.) Breuer, 2016

変種アデライデンシス
Haworthiopsis coarctata var. adelaidensis
                           (Poelln.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia reinwardtii var. adelaidensis
                                                     Poelln., 1940
→Haworthia coarctata subsp. adelaidensis
                               (Poelln.) M.B.Bayer, 1973
→Haworthia coarctata f. bellula
                                (G.G.Sm.) Pilbeam, 1983
→Haworthia coarctata var. adelaidensis
                               (Poelln.) M.B.Bayer, 1999
→Haworthia adelaidensis
                                     (Poelln.) Breuer, 2010

DSC_1798
Haworthiopsis coarctata

④Haworthiopsis fasciata
                    (Willd.) G.D.Rowley, 2013

異名
Apicra fasciata Willd., 1811
→Haworthia fasciata (Willd.) Haw., 1821
→Aloe fasciata (Willd.)
     Salm-Dyck ex Schult. & Schult.f., 1830
→Catevala fasciata (Willd.) Kuntze, 1891
→Haworthia pumila subsp. fasciata
                                      (Willd.) Halda, 1997

変種ファスキアタ
Haworthiopsis fasciata var. fasciata

異名
Aloe subfasciata
      Salm-Dyck ex Schult. & Schult.f., 1830
→Haworthia subfasciata
(Salm-Dyck ex Schult. & Schult.f.) Baker, 1880
→Catevala 
subfasciata
(Salm-Dyck ex Schult. & Schult.f.) Kuntze, 1891

変種ブロウニアナ
Haworthiopsis fasciata var. browniana
                (Poelln.) Gildenh. & Klopper, 2016

異名
Haworthia browniana Poelln., 1937
Haworthia fasciata f. browniana
                 (Poelln.) M.B.Bayer, 1976

DSC_1544
Haworthiopsis fasciata

どうやら記事が長過ぎるようで、文字入力時に変なタイムラグが発生するため記事を分割します。というわけで、続きます。しかし、異名が多い…



ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村


プンゲンスは南アフリカ原産の硬葉系ハウォルチアです。この場合、"pungens"とは「突き刺す」という意味ですが、その名の通り葉の先端は鋭く尖ります。

DSC_1671
硬葉系なので、葉はとても硬い。

DSC_1672
若い時はHaworthiopsis viscosaの様に、積み重なります。生長とともにねじれていきます。

DSC_1673
やがてぐるぐる回りながら、螺旋状に育ちます。
5列あるいは3列といわれますが、この個体は3列が旋回しているようです。


プンゲンスは南アフリカの東ケープ州、LangkloofとJoubertinaのフィンボス(地中海性気候の灌木地帯で、冬に雨が降る)の岩の多い斜面に自生します。
自生地のプンゲンスはよく日を浴びて黄色くなっていますね。葉の先端は赤みを帯びてくるようです。


プンゲンスの学名は、はじめて命名されたのは1999年と、ハウォルチア系では意外と新しく発見された種類みたいです。最初はHaworthia pungens M.B.Bayerとされ、ハウォルチアとされました。2014年にはHaworthiopsis pungens (M.B.Bayer) Boatwr. & J.C.Manningとされました。これが、現在学術的に認められている学名です。ハウォルチオプシス属は2013年の命名されたHaworthiopsis G.D.Rowleyですから、ハウォルチオプシス属が出来てから結構早いですね。
2013年にはTulista pungens (M.B.Bayer) G.D.Rowleyも提唱されましたが、現在認められておりません。




ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村


かつて硬葉系ハウォルチアと呼ばれていたハウォルチオプシス属は、そのほとんどの種が地味というか、大変渋い存在です。硬葉系の名の如く葉は非常に硬く、ほとんどの種は軟葉系ハウォルチアとは異なりオブツーサの様な美しい透明の窓はありません。葉にはイボがあるものが多くざらざらしており、暗い色彩だったりします。個人的には好きで、今後は軟葉系よりも硬葉系を集めたいと思っています。
しかし、ハウォルチオプシス属は軟葉系ハウォルチアと比べたら人気が今一つなせいか、入手しやすいとは言えない状況です。アテヌアタ交配種の"十二の巻"や、最近普及しているアテヌアタ(H. attenuata)の選抜品種である"特アルバ"は目にしますが、それ以外の種は普通の園芸店では難しいところです。"五重塔"(H. tortuosa)や"竜城"(H. viscosa)あたりは、もしかしたら目にすることはあるかもしれません。そんな中、"スカブラ"(H. scabra)は私もはじめて見掛けましたので驚きつつも購入しました。

DSC_1595
Haworthiopsis scabra
スカブラは実にハウォルチオプシスらしい存在です。細かいイボに覆われて葉の表面はざらつき、葉は尖りコンパクトなロゼットを形成します。地味ではありますが、非常に整った美しい多肉植物だと思います。

さて、スカブラの学名は2013年に命名されたHaworthiopsis scabra (Haw.) G.D.Rowleyです。最初に命名されたのは1819年のHaworthia scabra Haw.ですが、1829年にはAloe scabra (Haw.) Schult. & Schult.f.とされました。ハウォルチアは1809年にHaworthia Duvalが創設されるまでは、アロエ属であったことは珍しいことではなく良くあることです。しかし、ハウォルチア属として命名後にアロエ属とされるのはやや珍しく感じます。まあ、スカブラは質感的に小さいアロエっぽさがまったく無くはないのですが、これは当時のアロエ属の定義が異なっていただけでしょう。当然ながら現在スカブラはアロエではなくてハウォルチオプシスです。
さて、G.D.Rowleyが2013年にスカブラをハウォルチオプシス属とした時に、スカブラに3変種を認めました。つまり、Haworthiopsis scabra var. morrisiae (Poelln.) G.D.RowleyHaworthiopsis scabra var. lateganiae (Poelln.) G.D.RowleyHaworthiopsis scabra var. starkiana (Poelln.) G.D.Rowleyです。さらに、2016年にはHaworthiopsis scabra var. smitii (Poelln.) Gildenh. & Klopperが認められました。しかし、同じく2016年のHaworthiopsis scabra var. johanii (M.Hayashi) Breuerは異名とした認められておりません。まあ、今後変わるかもしれませんが。
それはそうとして、この変種たちの特徴はなんでしょうか? いまいち分かりません。スタルキアナは"風車"の名前で流通していましから分かります。風車はイボがなく肌がツルツルしているタイプです。よく日に当てると、黄色くなります。
DSC_0836
風車(ダルマ型)
Haworthiopsis scabra var. starkiana

変種スタルキアナ以外の変種については、ネット検索して出てきた画像が正しいのか良く分かりませんが、それが正しいとすると以下の通りです。
・変種ラテガニアエは葉が長くザラザラしない。
・変種スタルキアナは葉が短くザラザラしない。
・変種スミティイはイボはあるがツルツル。
・変種モリシアエは情報がなく良く分かりません。

変種のスタルキアナは"風車"と呼ばれますが、これは葉が螺旋状に渦巻くことに由来します。スタルキアナと同様、スカブラの葉もやや螺旋状に育ちます。その程度は個体差がありますが、それはスタルキアナも同様です。ネットでは"強螺旋"だとか、"トルネード型"なんて言われているみたいです。スカブラ系は個体差は大きいので、タイプの違いをコレクションすることも、また楽しいかもしれませんね。



ブログランキング参加中です。
クリックして頂けますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村



鶴仙園に行ったおり、非常に美しく蒼白いハウォルチアを入手しました。硬葉系ハウォルチアのヘレイです。さらに先日、横浜に行った際に大型ホームセンターで今井カクタスさんのヘレイがあったので入手しました。タイプは異なりますが、その美しさはやはり共通しています。
いったいどのような多肉植物なのでしょうか。少し調べても見ました。

DSC_1537
Haworthiopsis glauca var. herrei
整然として長く伸びる葉は、蒼白く非常に美しいものです。


DSC_1538
Haworthiopsis glauca var. herrei RIB0217
フィールドナンバー付きのヘレイ。葉は短くイボが目立つタイプ。野生株でも葉の形や長さは様々。葉の長い野生株もあります。

一般的な濃く深い緑色の植物は日陰に耐えられる性質があることが多く、それは逆に言うと強光にあまり強くない可能性があります。対して、淡い青白い色の植物は強光に強い可能性が高いのです。しかし、この場合、ヘレイはどうなんでしょうね? 硬葉系ハウォルチアは軟葉系ハウォルチアよりも、日照が強目な方が良い傾向がありますが、それでも真夏の直射日光には耐えられません。ヘレイは色的に硬葉系の中でも日照に強そうですがどうでしょうか。日照不足だと徒長するだけではなく、特徴である青白い色がきれいに出ないこともあります。青白い植物は強い光を当てれば当てるほど、太陽光線から身を守るためにワックス成分などを出して白くなります。しかし、これからの季節、ヘレイはどの程度まで日を当てるか悩みどころです。

耐寒性はどうでしょうか。とりあえず、海外のサイトでは、USDAゾーンは10a~11bとありますから、せいぜいマイナス1.1℃までしか耐えられないみたいです。あまり耐寒性は期待出来ませんね。とは言うものの、我が家のオブツーサや竜鱗は、マイナス5℃にも耐えますから、慣らせばいけるのかもしれません。

DSC_1539
花茎が思ったより長く伸びました。

DSC_1540
花はハウォルチアの仲間に典型的な緑線入り。

ヘレイの学名は2013年に命名されたHaworthiopsis glauca var. herrei (Poelln.) G.D.Rowleyです。最初に命名されたのは1929年のHaworthia herrei Poelln.ですが、1976年にはグラウカの変種Haworthia glauca var. herrei (Poelln.) M.B.Bayerとなり、最終的にハウォルチオプシスとなったわけです。
ヘレイの異名は沢山あります。
Poelln.が1937年にヘレイを複数種に分けています。つまり、Haworthia eiyae Poelln.Haworthia jacobseniana Poelln.Haworthia armstrongii Poelln.Haworthia jonesiae Poelln.です。当然ながら、現在これらは異名とされています。
そういえば、
 鷹の爪Haworthiopsis reinwardtii (Salm-Dyck) G.D.Rowleyの変種とする考え方もありました。1997年命名のHaworthia reinwardtii var. herrei (Poelln.) Haldaです。この時代はまだ鷹の爪はハウォルチオプシスではなくてハウォルチアでしたが。



ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと、嬉しいでしょう。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村








2014年に出た『
A Molecular Phylogeny and Generic Classification of Asphodelaceae Subfamily Alooideae : A Final Resolution of the Prickly Issue of Polyphyly in the Alooids?』という論文の紹介です。昨日は、アロエ属、ハウォルチア属、クマラ属について解説しました。今日はその続きです。

アストロロバ属とツリスタ属
アストロロバ属は硬葉系ハウォルチア=ハウォルチオプシスの縦長に変形したパターンに見えますから、ハウォルチオプシスの中から出てきたグループに思えます。同様にツリスタ属もハウォルチオプシスの中の1グループに思えます。しかし、実際にはアストロロバもツリスタもハウォルチオプシスとは近縁ではあるものの、ハウォルチオプシスと姉妹群を形成するのはガステリア属であり、アストロロバとツリスタは旧アロエ属のゴニアロエ属やアリスタロエ属と姉妹群を形成することが分かりました。
ガステリア属やアストロロバ属は非常によくまとまったグループです。対してゴニアロエ属やアリスタロエ属は、やや不確実とみられています。ポエルニッチア属をアストロロバ属に含めるという考え方と同様に、ゴニアロエ属とアリスタロエ属をツリスタ属に含めるべきであるという意見もあるようです。
アストロロバ属の花は特異的で、他グループと明らかに異なるます。さらに、ポエルニッチア属とされることもあるAstroloba rubrifloraは、アストロロバとしては特異的な花ですが、鳥媒花として特殊化したアストロロバとされます。
ハウォルチオプシス属は3つのグループがあるように見えます。コエルマニオルムは葉緑体と核の遺伝子解析結果が異なり、やや混乱した結果です。しかし、花の構造の類似性からハウォルチオプシス属に含めるとしています。


    ┏━━━━Gasteria
    ┃
┏╋━━━━Haworthiopsis①
┃┃
┃┗━━━━Haworthiopsis②

┫┏━━━━Haworthiopsis koelmaniorum
┃┃
┃┃        ┏━Tulista
┃┃    ┏┫
┗┫    ┃┗━Gonialoe
    ┃┏┫
    ┃┃┗━━Aristaloe
    ┗┫
        ┗━━━Astroloba

DSC_1412
Astroloba spiralis

DSC_1389
Haworthiopsis koelmaniorum

DSC_1508
Tulista kingiana

DSC_1507
Tulista minor(=Tulista minima)

DSC_0900
Gonialoe variegata(=Aloe variegata)

DSC_1990
Aristaloe aristata(=Aloe aristata)

ガステリア属
ガステリア属は非常にまとまりのあるグループです。花は赤系統で、まさにgaster=胃のような形の花が咲きます。ガステリア属の特異的な花は、受粉を鳥が行うために特化した形のようです。植物分類学では花の形態を指標としてきましたが、アロエ類の分類には使えないようです。アロエ属は鳥と昆虫が受粉しますが、ハウォルチア属は昆虫による受粉へ、ガステリア属は逆に昆虫媒花から鳥媒花に回帰したグループです。
ガステリア属は最近手をだし始めたばかりですが、手持ちのG. carinataやG. pillansiiは分子系統の根元にあり、あるいはやや原始的な種なのかもしれません。根元から先の分類は、一例に並んでいてあまり系統関係をみれていないようです。短期間に進化した可能性があります。

ガステリア属の分子系統
                ┏━Gasteria disticha
            ┏┫
            ┃┗━Gasteria polita
        ┏┫
        ┃┗━━Gasteria doreeniae
        ┃
        ┃┏━━Gasteria obliqua
        ┣┫
        ┃┗━━Gasteria rawlinsonii
        ┃
        ┃┏━━Gasteria glauca
        ┣┫
        ┃┗━━Gasteria glomerata
        ┃
        ┃┏━━Gasteria pulchra
        ┣┫
        ┃┗━━Gasteria tukhelensis
        ┃
        ┣━━━Gasteria acinacifolia
    ┏┫ 
    ┃┣━━━Gasteria nitida var. armstrongii
    ┃┃
    ┃┣━━━Gasteria batesiana
    ┃┃
    ┃┣━━━Gasteria ellaphieae
    ┃┃
┏┫┣━━━Gasteria excelsa
┃┃┃
┃┃┗━━━Gasteria vlokii
┃┃
┫┃┏━━━Gasteria carinata
┃┗┫
┃    ┗━━━Gasteria croucheri

┗━━━━━Gasteria pillansii


DSC_1514
Gasteria pillansii

DSC_1513
Gasteria glomerata

DSC_1462
Gasteria ellaphieae

DSC_1463
Gasteria vlokii

DSC_1420
Gasteria carinata

ハウォルチオプシス属
ハウォルチオプシス属はガステリア属の姉妹群です。葉緑体の遺伝子解析ではH. koelmaniorumはアストロロバ属やツリスタ属に近縁な様にみえますが、核の遺伝子解析ではH. venosaに近縁となっています。今後、さらに詳細な解析が必要でしょう。
白いイボを持つH. fasciataやH. attenuataから、白いイボを持ち縦長に伸びるH. reinwardtii(鷹の爪)やH. coarctata(九輪塔)が進化してきたのではないかと思っていましたが、必ずしもそうではないことが分かりました。それどころか、非常によく似たH. fasciataとH. attenuataは、葉緑体の遺伝子解析でも核の遺伝子解析でも、ハウォルチオプシス属の中ではそれほど近縁ではないことが分かりました。個人的には大変な驚きです。

ハウォルチオプシス属の分子系統
┏━━━━━━━Gasteria

┃                    ┏━Haworthiopsis reinwardtii
┃                ┏┫
┃                ┃┗━Haworthiopsis nigra
┃            ┏┫
┃            ┃┗━━Haworthiopsis coarctata
┃        ┏┫
┃        ┃┗━━━Haworthiopsis glauca
┃    ┏┫
┃    ┃┣━━━━Haworthiopsis bryunsii
┃    ┃┃  
┃┏┫┗━━━━Haworthiopsis sordida
┃┃┃
┃┃┃┏━━━━Haworthiopsis fasciata
╋┫┗┫
┃┃    ┗━━━━Haworthiopsis longiana
┃┃
┃┗━━━━━━Haworthiopsis limifolia

┃┏━━━━━━Haworthiopsis venosa
┗┫
    ┗━━━━━━Haworthiopsis attenuata


DSC_0837
Haworthiopsis reinwardtii f. kaffirdriftensis

DSC_0833
Haworthiopsis fasciata

DSC_1547
Haworthiopsis attenuata

最後に
ここまで長々とアロエ類の分類について、論文の内容を私の要らん感想を交えながら解説してきました。しかし、実を言えばこの論文が最終的な解答ではないのかもしれません。この論文では5つの遺伝子を調べていますが、遺伝子によっては種の系統関係が異なる結果となっています。遺伝子解析も万能ではありません。もっと沢山のデータを蓄積し、過去のデータとの整合性を高める努力が必要です。現在でも研究は進行しているのでしょうし、最新情報に更新され続けていくのでしょう。この論文も議論があるのでしょうし、再試験によるチェックも受けるでしょう。
しかし、種同士の関係性はまだしも、全体的な属同士の系統関係はほぼ判明したと言っても良いのではないでしょうか。部分的に怪しい部分はありますが、かつての分類体系に戻ることはないでのしょう。

さて、遺伝子解析によるアロエ・ハウォルチアの分類について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか? いいや、こんなものは認めんという方もおられるかもしれませんが、一つの考え方として提示させていただきました。善かれ悪しかれ、興味を持っていただけたのでしたら誠に幸いです。
これからも、面白い論文を見つけましたら、ぼちぼち紹介していきたいと思います。




ブログランキング参加中です。
クリックして頂けますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村




ハウォルチアには柔葉系と硬葉系があるとされてきました。柔葉系ハウォルチアにはオブツーサなど、葉に透明な窓がある柔らかくみずみずしいタイプで、こちらはその可愛らしさからか大人気です。逆に硬葉系ハウォルチアは葉が非常に硬く透明の窓がないものも多く、地味でどちらかと言えばマニアックな存在でした。
ところが、2013年にイギリスの植物学者である
Gordon Douglas Rowleyが、ハウォルチア(Haworthia)から硬葉系ハウォルチアを分離しハウォルチオプシス(Haworthiopsis)としました。2014年には遺伝子解析によりRowleyの主張は正しいことが確認されました。遺伝子解析による分子系統によると、ハウォルチアとハウォルチオプシスは同じ"アロエ類"ではあるものの、それほど近いわけではないようです。硬葉系ハウォルチア=ハウォルチオプシスは、意外なことにむしろガステリアに近いことがわかりました。

アロエ類の系統図
┏━━━━━━━━━Aloidendron属

┫    ┏━━━━━━━Kumara属
┃┏┫
┗┫┗━━━━━━━Haworthia属
    ┃
    ┃┏━━━━━━━Aloiampelos属
    ┃┃
    ┗┫┏━━━━━━Aloe属
        ┃┃
        ┗┫    ┏━━━━Astroloba属
            ┃    ┃
            ┃┏┫┏━━━Aristaloe属
            ┃┃┃┃
            ┃┃┗┫┏━━Gonialoe属
            ┗┫    ┗┫
                ┃        ┗━━Tulista属
                ┃
                ┃┏━━━━Haworthiopsis属
                ┗┫
                    ┗━━━━Gasteria属


昔からある"十二の巻"
さて、上記の如く激変があったばかりのハウォルチオプシスですが、それで人気が出るわけでもなく、相変わらず目立たない存在です。そんなハウォルチオプシスの中でも昔から"十二の巻"はよく知られていす。今でも多肉植物の寄せ植えに入っていたりします。しかし、十二の巻はあまり上等と思われていないせいか、また丈夫なこともあり、室内に置かれて徒長している姿が多い様に思われます。十二の巻を単独でキレイに育てようとする人はあまりいない気がします。
DSC_1549
十二の巻

さて、ネットで軽く十二の巻を検索すると、Wikiにしろネット植物図鑑にしろ、あるいは個人ブログにおいても、だいたい同じ内容が書いてあります。曰く「十二の巻はHaworthia fasciata(ファスキアータ)」、そして「南アフリカのケープ州の原産」だそうです。ところが、これらは全て間違いです。実は何度かブログ内でそう主張してきたわけですが、そこは悲しいかな弱小ブログの悲しい性ゆえ世間に知れ渡ることはありませんでした。仕方がないので、主張を強化する多肉植物が増える度に、記事を繰り返し書くことになった次第です。

ファスキアタと比べてみよう!
多肉植物、特にハウォルチアは原産地で採取された個体の系統を維持・保存した株が存在します。その証がフィールドナンバーです。フィールドナンバーは、例えば、H. fasciataを購入したら、ラベルに「JAA1262」と表記してあったとしましょう。JAAはJean Andre Audissouという採取した人名の略で、1262はその採取人が採取した1262番(1262地点)の植物という意味です。フィールドナンバーの情報は調べることができます。JAA1262なら、「E. of Hankey, South Africa」という採取地点の情報と、「24/07/2009」という採取年月日が分かります。年月日はイギリス式なので、「日/月/年」ですね。このように、人為的に交配していない野生株が入手可能なのです。

さて、そういうわけで、「十二の巻」ではなくて「H. fasciata」の名前で購入した株をご紹介しましょう。まずは、鶴仙園で入手した「H. fasciata 
DMC05265」です。

DSC_1550
Haworthiopsis fasciata DMC05265
十二の巻と良く似ています。白いイボがまばらですが、これは個体差がありますから、見分け方にはなりません。むしろ、十二の巻はこの白いイボが目立つ様に選抜を受けてきたので、違うのは当然でしょう。では、並べて比べてみましょう。

DSC_1546
左が十二の巻で、右がファスキアタ
見分け方はあるのでしょうか?
実はあります。というより、海外ではファスキアタはあまり入手出来ないようで、ファスキアタと良く似ていて普及しているアテヌアタ(H. attenuata)との見分け方が、趣味家の間でも議論されているのです。
ファスキアタの最大の特徴は葉の内側です。ファスキアタの葉は内側に白いイボがありませんが、アテヌアタは葉の内側に白いイボがあります。実際に見てみましょう。

DSC_1552
ファスキアタの葉の内側には白いイボはありません。

DSC_1551
対して十二の巻は、葉の内側に白いイボがあります。
なるほど、これは分かりやすい違いです。ここで疑問がわきます。では、十二の巻とは何者なのでしょうか?

アテヌアタと比べてみよう!
ここまでの流れでお察しの通り、恐らくは十二の巻はアテヌアタ系統です。海外の話題でありました通り、ファスキアタと良く似ていて、葉の内側に白いイボがあるのは、つまりアテヌアタということになります。
アテヌアタと比べてみましょう。

DSC_1541
左は"特アルバ"の名前で売られているアテヌアタです。白いイボが強いアテヌアタの選抜個体です。

DSC_1542
葉の内側はやはり白いイボがあります。やはり、十二の巻はアテヌアタ系統のようです。

十二の巻は交配種?
十二の巻は特徴から見て、アテヌアタ系統です。しかし、長年ファスキアタとされてきました。純系のアテヌアタとして系統は維持されて来たのでしょうか? 近縁種と交配していないかは分かりませんが、市販されている十二の巻は、生産者さんにより結構違いがあります。株分けによるクローン株なら、そこまで違いは出ないはずですから、ある程度は交配されていてもおかしくはない気がします。もちろん、アテヌアタの異なるタイプの間で交配されてきた可能性もあります。しかし、由来がまったくわからないことだけは確かです。

付記
最近入手した株を付記として示しておきます。
DSC_1544
左はHaworthiopsis fasciata fa.vanstaadenensis
右はHaworthiopsis fasciata DMC05265

DSC_1545
やはり、ファスキアタの葉の内側には、白いイボはありません。

DSC_1547
左はHaworthiopsis attenuataの特アルバ
右は松の雪


DSC_1511
松の雪はHaworthiopsis attenuataの白いイボが繋がらずばらつくタイプ。イボは写真では見にくいですが、葉の内側にもつきます。


ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しいです。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村




コエルマニオルムは南アフリカ原産のハウォルチアの仲間です。生長が遅いせいかわかりませんが、基本的にかなりお高いです。私はたまたまビニールポット植えの小苗だったので、安く買えましたが…

DSC_0973
一見して地味に見えますが、上面はすべて透明の窓。水やりの時に、非常に美しい姿が拝めます。

コエルマニオルムは現在ハウォルチオプシスに分類されています。ハウォルチオプシスHaworthiopsisは、かつて硬葉系ハウォルチアと呼ばれていた仲間です。一般的にハウォルチオプシスは、ハウォルチアよりも強い日照を必要とします。しかし、コエルマニオルムはハウォルチオプシスの中では窓が非常に大きいため、強光線に弱いようです。日焼けには注意する必要があります。
情報によると径15cmになるとのこと。現在は径5cm位なので、そこまで育つのにあと何年かかることやら…

学名は1967年に命名されたHaworthia koelmaniorum Oberm. & D.S.Hardyが最初です。1997年にHaworthia limifolia var. koelmaniorum (Oberm. & D.S.Hardy) Halda、つまりは瑠璃殿の変種とする意見もありました。また、2013年にはツリスタ属とするTulista koelmaniorum (Oberm. & D.S.Hardy) G.D.Rowleyもありました。しかし、現在学術的に認められている学名は、2014年に命名されたHaworthiopsis koelmaniorum (Oberm. & D.S.Hardy) Boatwr. & J.C.Manningです。いわゆる硬葉系ハウォルチアです。


ブログランキングに参加中です。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村





カフィルドゥリフテンシスは南アフリカ原産の硬葉系ハウォルチアです。「鷹の爪」、「九輪塔」、「星の林」の仲間です。
IMG_20220312_211624
カフィルドゥリフテンシス
Haworthiopsis reinwardtii f. kaffirdriftensis

カフィルドゥリフテンシスは、鷹の爪、九輪塔、星の林など「鷹の爪系」と関係が深いので、そこら辺の学名の流れも見てみます。

鷹の爪は1821年にAloe reinwardtii Salm-Dyck、アロエの仲間とされました。しかし、同じく1821年にHaworthia reinwardtii (Salm-Dyck) Haw.とハウォルチアとされました。1891年にはCatevala reinwardtii (Salm-Dyck) Kuntzeも提唱されています。しかし、硬葉系ハウォルチアが独立してハウォルチオプシスとなり、2013年にHaworthiopsis reinwardtii (Salm-Dyck) G.D.Rowleyとなりました。

九輪塔1924年に命名された、Haworthia coarctata Haw.から始まりました。1829年にはAloe coarctata (Haw.) Schult. & Schult.f.、1891年にはCatevala coarctata (Haw.) Kuntze、1997年には、鷹の爪の変種であるとする、Haworthia reinwardtii var. coarctata (Haw.) Haldaとする考え方も提唱されました。
しかし、現在学術的に認められている学名は、2013年に命名されたHaworthiopsis coarctata (Haw.) G.D.Rowleyです。また、2016年には鷹の爪の変種とする考え方を継承して、Haworthiopsis reinwardtii var. coarctata (Haw.) Breuerも提唱されています。今後、こちらの学名が認められる可能性もあります。
ちなみに、一般的には九輪塔の学名は鷹の爪の変種、var. chalwiniiとされています。ネットでは概ねそうです。これは、1906年に命名されたHaworthia chalwinii Marloth & A.Bergerの系列です。ここから鷹の爪の変種とされ、1943年命名のHaworthia reinwardtii var. chalwinii (Marloth & A.Berger) Resende、1983年命名のHaworthia reinwardtii f. chalwinii (Marloth & A.Berger) Pilbeamがありますが、これらはcoarctata系と同種とされています。
長くなってしまったのでまとめると、九輪塔は鷹の爪の亜種や変種とされることが多いのですが、九輪塔は独立した種とされているということです。

星の林は鷹の爪の変種として、1937年にHaworthia reinwardtii var. archibaldiae Poelln.と命名されました。しかし、学術的に星の林は鷹の爪と全くの同種とされているようです。つまり、
Haworthiopsis reinwardtii (Salm-Dyck) G.D.Rowleyです。

カフィルドゥリフテンシスは鷹の爪の変種として、1941年にHaworthia reinwardtii var. kaffirdriftensis G.G.Sm.と命名されました。しかし、1976年に鷹の爪の品種とされ、Haworthia reinwardtii f. kaffirdriftensis (G.G.Sm.) M.B.Bayerとされました。2016年にはハウォルチオプシス属とされ、Haworthiopsis reinwardtii f. kaffirdriftensis (G.G.Sm.) Gildenh. & Klopperが現在の正式な学名です。

ブレヴィクラは鷹の爪の変種として、1944年にHaworthia reinwardtii var. brevicula G.G.Sm.と命名されました。2010年にHaworthia brevicula (G.G.Sm.) Breuerてして独立する考え方もありましたが、2013年にハウォルチオプシス属とされHaworthiopsis reinwardtii var. brevicula (G.G.Sm.) G.D.Rowleyが現在の正式な学名です。

カルムネンシスは鷹の爪の変種として、1943年にHaworthia reinwardtii var. chalumnensis G.G.Sm.同じく1943年にHaworthia reinwardtii f. chalumnensis G.G.Sm.として命名された。2016年にハウォルチオプシス属とされ、Haworthiopsis reinwardtii f. chalumnensis (G.G.Sm.) Gildenh. & Klopperが現在の正式な学名です。

オリバケアは鷹の爪の変種として、1944年にHaworthia reinwardtii var. olivacea G.G.Sm.と命名されました。1976年には鷹の爪の品種とされ、Haworthia reinwardtii f. olivacea (G.G.Sm.) M.B.Bayerとされ、2010年には独立したHaworthia olivacea (G.G.Sm.) Breuerとする意見もありました。
しかし、やはりハウォルチオプシス属とされ、2016年に変種としてHaworthiopsis reinwardtii var. olivacea (G.G.Sm.) Breuer、品種としてHaworthiopsis reinwardtii f. olivacea (G.G.Sm.) Gildenh. & Klopperとされました。学術的に認められている学名は、f. olivaceaです。

まとめますと、カフィルドゥリフテンシスは鷹の爪の品種で、星の林は鷹の爪と同一種鷹の爪の他の品種としてカルムネンシスとオリバケアがあり、変種ブレヴィクラがあります。ちなみに、九輪塔は鷹の爪とは別種です。まあ、上記の変遷を見ていただければわかりますが、また変わるかもしれませんから、まあ暫定的かもしれませんが現在はそうなっていますよ、というお話でした。


ブログランキング参加中です。
クリックして頂けますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村









風車は南アフリカ原産の硬葉系ハウォルチアです。よく日に当てると明るい黄色になり独特の美しさがあります。
DSC_0836
風車 Haworthiopsis scabra var. starkiana
 購入したばかりなので、特徴である黄色はあまりが出ていません。風車の名前通り、葉は渦を巻く様につきます。葉が増えれば、より特徴が出るでしょう。また、見た目に反して、非常に硬くカチカチです。さすが硬葉系ハウォルチア。ちなみに、写真の個体は「ダルマ型」といわれ、葉が短くずんぐりとした姿です。

学名は1933年につけられた、Haworthia starkiana Poelln.が最初です。しかし、1997年にHaworthia scabra Haw.の亜種、つまりHaworthia scabra subsp. starkiana (Poelln.) Haldaとする考え方が、さらに1999年には変種、Haworthia scabra var. starkiana (Poelln.) M.B.Bayerとする考え方も出てきました。種speciesの下位の分類では、亜種subspecies (subsp,ssp) > 変種variety (var,v) > 品種forma (form,f)という順番です。まあ、この違いは微妙なので、どれが妥当かは難しいところかもしれません。
硬葉系ハウォルチアがハウォルチオプシス属としてハウォルチア属から分離・独立したので、2013年にHaworthiopsis scabra var. starkiana (Poelln.) G.D.Rowleyとされました。これが、現在学術的に認められている正式な学名です。
スカブラは暗色でざらざらした肌なので、明るい色でつるつるした肌の風車は、かなり異なるように見えます。種としては同種、ただの変種とは信じられないくらいです。

そう言えば、「風車」には「ふうしゃ」と「かざぐるま」の2通りの読み方がありますが、どっちなんでしょうね。国語的にはどちらも正解ですが、植物名ですからどちらか一方なはずです。検索すると、ほとんどの場合は読み方が書いていません。しかも、少ないひらがな併記で書いているサイトでは、「ふうしゃ」の場合も、「かざぐるま」の場合もあって困ってしまいます。まあでも、「黒風車」という種類もありますが、この場合は「くろふうしゃ」ですよね。「くろかざぐるま」は少しおかしい気もします。とりあえず、「ふうしゃ」読みということでいかがでしょうか?


ブログランキング参加中です。
クリックして頂けますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村






硬葉系ハウォルチアのファスキアタは、一見して昔からある硬葉系ハウォルチアの「十二の巻」とよく似ています。実際、十二の巻の学名としてH. fasciataと書かれているブログや販売サイトが沢山あります。しかし、十二の巻は由来不明の交配種なので、学名はありません。ファスキアタとは全くの別種です。
DSC_0833
Haworthiopsis fasciata DMC05265
ファスキアタは、葉の内側に白点は着きません。ファスキアタは国内ではあまり流通していないようです。ネット販売では、ファスキアタとして十二の巻を販売しているようです。海外でもファスキアタはあまり流通していないようですね。

DSC_0715
十二の巻 Haworthiopsis hybrid.
十二の巻は葉の内側にも白点がつくことがあります。十二の巻は日本独自の交配種のようで、海外では話題にあがりません。
十二の巻は交配種なので様々なタイプがあり、写真の様に開いた形のもの、葉が閉じるもの、九輪塔の様に縦に伸びるものなどがあります。この系の交配種の総称の様なものなのかもしれません。

DSC_0728
Haworthiopsis atenuata cv.
アテヌアタは十二の巻の交配元かもしれないとされているようです。海外では、アテヌアタとファスキアタの違いについて、趣味家の間で議論があるくらいです。写真は白点が目立つ選抜品。

十二の巻とアテヌアタについては、過去にまとめたことがありました。今回は、ファスキアタを入手したので追加記事の様なものです。
偽物に注意
しかし、十二の巻=ファスキアタという誤解がこれだけ拡がってしまっていると、売っているファスキアタが実際のところ何かはずいぶん怪しく感じます。H. fasciataとして手に入れたとしても、見分けるのが困難です。
一応、ファスキアタの葉は繊維質で、葉を折った時に葉の内側に繊維が沢山出てくるようです。しかし、これでは購入後でしか確認出来ないので困りますね。

私が今回入手したファスキアタは、産地情報ありのものなので、信頼性があります。ラベルには、「DMC05265 
dospele semenace, N.Hankey」とありました。dospele semenaceはどうやら、スラブ語系の言葉で「完熟種子」という意味らしいです。「N.Hankey」は最初は人名かと思いましたが、Hankeyは南アフリカの地名でした。「N」はNorth、つまりは北を示しています。つまり、南アフリカのHankeyの北部で採取された完熟種子由来の個体ですよ、ということのようです。DMC05265はいわゆるDMCナンバーというやつで、フィールドナンバーなんですけど、認知度が低いのか調べても情報が出てこないので困ってしまいます。しかし、フィールドナンバーつきは由来がはっきりしていますから、信頼性が担保された個体と言えます。

学名
ファスキアタは始め、1811年にApicra fasciata Willd.と命名されました。1821年にはハウォルチアの仲間であるとされるHaworthia fasciata (Willd.) Haw.、1930年にはアロエとするAloe fasciata (Willd.) Salm-Dyck ex Schult & Schult.f.もありました。また、1891年にはCatevala fasciata (Willd.) Kuntzeとする学名も提唱されましたが、これは認められていません。
1997年には、現在はツリスタ属となったプミラの亜種とする、Haworthia pumila subsp. fasciata (Willd.) Haldaとされたこともありました。
結局、ファスキアタはハウォルチア属として長年扱われてきました。しかし、硬葉系ハウォルチアがハウォルチオプシス属とされたのを期に、2013年にHaworthiopsis fasciata (Willd.) G.D.Rowleyとされ、これが現在学術的に認められている学名です。


にほんブログ村 花・園芸ブログ 多肉植物へ
にほんブログ村






五重の塔はハウォルチオプシスに属する多肉植物です。しかし、調べると同じハウォルチオプシスの竜城と混同されているみたいです。学名も混乱している様子ですから、まとめてみました。
DSC_0768
五重の塔 Haworthiopsis tortuosa

和名の混乱
「五重の塔」は葉が縦に積み重なって行きますが、良く似た「竜城」と混同されることもあるようです。「竜城」は葉の生える向きが揃っていて、上から見ると三角形です。対して、「五重の塔」は葉が旋回して、ロゼットがズレながら縦に積み重なる様に伸びます。

DSC_0776
竜城 Haworthiopsis viscosa
※葉の向きが揃っていることに注意。


学名
ネットで検索すると、五重の塔はHaworthia tortuosaとされている様です。そこで、Haworthia tortuosaの来歴を調べてみました。
まず、1804年にAloe tortuosa Haw.と命名されたのが最初みたいです。Haw.は、イギリスの昆虫学者・植物学者・甲殻類学者であるAdrian Hardy Haworthです。Haworthia属という学名自体が、Haworthに対する献名みたいですね。
1812年にはHaworthia tortuosa (Haw.) Haw.と、Haworthによりアロエからハウォルチアに移されました。また、1891年にはCatevala tortuosa (Haw.) Kuntzeも提唱されました。
さらに、遺伝子解析により、2016年にはHaworthiopsis tortuosa (Haw.) Gildenh. & Klopperとされました。アロエ属→ハウォルチア属→ハウォルチオプシス属という移動は、硬葉系ハウォルチアの経歴の良くあるパターンです。

さて、ここからが問題です。
実は1896年にHaworthia tortuosa (Haw.) Bakerという命名があります。しかも、これはAloe tortuosa Haw.から来ている学名です。実はこちらは竜城の学名なのです。海外でも混同があったのかもしれません。しかし、この学名は認められませんでした。

竜城の正式な学名の系統は、学名の考案者であるスウェーデンのカール・フォン・リンネが18世紀に命名した、
Aloe viscosa L.から始まりました。やはり、硬葉系ハウォルチアの辿る道は同じで、1812年にHaworthia viscosa (L.) Haw.、そして最終的には2016年にはHaworthiopsis viscosa (L.) Gildenh. & Klopperとなりました。
硬葉系ハウォルチアにありがちなのですが、1811年にApicra viscosa (L.) Willd.、1891年にCatevala viscosa (L.) Kuntzeという命名もありました。1783年にはAloe triangularis Lam.という異名もありました。さらに、2013年にはなんと竜城をツリスタ属であるとする、Tulista viscosa (L.) G.D.Rowleyという学名もありますが、現在は認められていません。


ややこしいので、まとめます。
「五重の塔」は、Haworthiopsis tortuosa、「竜城」はHaworthiopsis viscosaとなりました。 

大混乱
日本のネットでは、五重の塔と竜城は混同されがちで、しかも学名も混同されてしまっています。五重の塔の説明にH. viscosaとあったり、五重の塔の説明に竜城の画像が貼られていたりと、大混乱の様相を呈しています。
私の解説が混乱を静める一助となれば良いのですが…


ブログランキング参加中です。
クリックして頂けますと嬉しく思います。
にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村






十二の巻は昔からホームセンターや小さな花屋さんでも、サボテンの寄せ植えの中にひっそりと入って売られて来ました。そんな十二の巻は硬葉系ハウォルチアの代表格とされてきましたが、現在では硬質系ハウォルチアの多くはハウォルチオプシスHaworthiopsisに分類され、Haworthiaから独立しました。

十二の巻=ファスキアタか?
さて、十二の巻は一般的にはHaworthia(Haworthiopsis) fasciataとされています。ネットで検索しても十二の巻=ファスキアタです。しかし、十二の巻は交配種だからH. fasciataとは別種という意見もありますが、情報が少なくてよくわかりません。
そう言えば、市販されている十二の巻は、葉が開き気味だったり、閉じ気味だったり、やや縦に積み重なったり、結構個体差があるなあとは思っていました。
また、Haworthiopsis attenuataと非常に似ています。どこが違うのでしょうか。比べてみました。

DSC_0715
十二の巻

DSC_0728
アテヌアタ

白点の違いはあるか?
白点については個体差が著しく、白点の色合い、形、密度は野生個体でも様々です。さらに、栽培品は白点が派手な選抜品なので、種類の判別には不適切でしょう。ですから、ファスキアタにしろアテヌアタにしろ、白点だけで見分けることは出来ません。ただし、ファスキアタは葉の内側に白点は着かず、アテヌアタは白点が着くらしいです。確かに、アテヌアタは葉の内側に白点が着きました。しかし、十二の巻にも多少は葉の内側に白点があります。白点は種類を判別する決定打にはならないようです。

ファスキアタとアテヌアタの違い
ファスキアタとアテヌアタの違いは、国内ではあまり議論はありませんが、海外では盛んに議論されています。それによると、ファスキアタとアテヌアタの最大の違いは、葉の繊維なんだそうです。ファスキアタは葉の内側に繊維が沢山あり、葉を折ると繊維が出てきますが、アテヌアタにはないみたいです。
さらに、ファスキアタの葉は厚みがあり水分が多く、葉は生長すると内側にカールしてきます。対して、アテヌアタの葉は細長く、直線的に伸びます。
そう言えば、海外ではアテヌアタは手に入るみたいですが、ファスキアタは入手困難とのことです。
ネットなどでもファスキアタは売っている様子ですが、国内販売のファスキアタは本当のファスキアタなのか十二の巻なのかわかりません。これだけ、十二の巻=ファスキアタが一般化しているため、基本的に区別されずに売られている気がします。

十二の巻は?
私所有の十二の巻は、アテヌアタとは大きく異なります。葉は丸みがあって、ややカールするところはファスキアタと似ています。しかし、葉の繊維についてはよくわかりません。枯れ気味の古い葉が出たら、試しに折ってみたいと思います。十二の巻にファスキアタの遺伝子が入っていれば繊維があるかも知れません。

まとめ
・ファスキアタはあまり市販されていない。
・ファスキアタの葉は繊維質。
・白点だけでは種類の判別は困難。
・十二の巻は由来不明の交配種で、ファスキアタではない。
・アテヌアタは入手可能。
・ネット販売のファスキアタは本物かわからない。

にほんブログ村 花・園芸ブログ 塊根植物・塊茎植物へ
にほんブログ村





このページのトップヘ