かつてハウォルチアと呼ばれていた植物は現在では3分割され、Haworthia、Haworthiopsis、Tulistaとなりました。これらは、花の特徴が似ていたため一つのグループとされていましたが、花以外の特徴は異なり、遺伝的にもそれほど近縁ではありません。Haworthiopsisは日本では硬葉系ハウォルチアと呼ばれていましたが、まだハウォルチア属だった頃はHexanglaris亜属とされていました。HaworthiopsisとTulista以外のハウォルチアを日本では軟葉系ハウォルチアと呼び、Haworthia亜属とされていました。
さて、本日はまだハウォルチアの分割が一般化していない2015年のNatalia Volodymyrivna Nuzhyna, Maryna Mykolaivna Gaydarzhyの論文、『Comparative characteristics of anatomical and morphological adaptations of plants of two subgenera Haworthia Duval to arid enviromental conditions』をご紹介します。論文では、Haworthia亜属とHexanglaris亜属の、乾燥への適応について、その形態と構造から検討しております。
この論文で調べられたのは、Haworthia亜属はH. angustifolia、H. blackburniae、H. chloracantha、H. cooperi、H. cymbiformis、H. marumiana、H. parksiana、H. pygmaea、H. retusaの9種類。Hexanglaris亜属はH. attenuata、H. coarctata、H. fasciata、H. glabrata、H. glauca、H. limifolia、H. pungens、H. reinwardtii、H. viscosaの9種類です。
Haworthia cooperi cv.
Haworthia亜属のロゼットは直径5〜6cmを超えることはあまりありません。H. parksianaやH. blackburniaeなどの葉は細長く幅は5mmを超えません。葉はしばしば光沢があり滑らかで、しばしば透明の「窓」や毛状突起があります。
Hexanglaris亜属は濃い緑色で、窓と毛状突起がありません(※)。葉の表面は厚くしばしばイボや突起があります。この特徴はH. limifoliaに典型的で、H. glaucaとH. coarctataでは適度にありますが、H. pungensとH. viscosaにはありません。しかし、H. viscosaは非常に厚いクチクラを持ちます。最小の葉はH. glaucaやH. reinwardtii、H. viscosaで、葉の幅はH. glaucaやH. reinwardtii、H. pungensが狭いようです。
(※) H. pungensには毛状突起があり、H. koelmaniorumには「窓」があります。
Haworthiopsis limifolia
葉の気孔はHaworthia亜属は多く、Hexanglaris亜属は少ない傾向があります。全体として向軸(Adaxial side)より背軸(Abaxial side)に多く見られます。しかし、1mm×1mmの面積内の気孔は、Haworthia亜属のH. retusaは非常に多く向軸は23.9個、背軸で36.7個でしたが、H. chloracanthaは向軸で2.6個、背軸で5.3個で少ないものでした。また、Hexanglaris亜属のH. glaucaは向軸で2.6個、背軸で3.6個でしたが、H. reinwardtiiは向軸で14.5個、背軸で13.1個と多いものでした。
Haworthiopsis coarctata
葉の水分含有率を調べたところ、Haworthia亜属のほとんどが90%以上でしたが、Hexanglaris亜属は多くは87〜89%でした。Haworthia亜属の例外はH. parksianaで、水分含有率は87%でした。また、Hexanglaris亜属のH. glaucaの水分含有率は84%以下でした。
Haworthiopsis viscosa
以上の結果から、以下のことが言えるそうです。Hexanglaris亜属に見られる様々な付属物やクチクラの発達は、強い日光を分散します。逆に滑らかな表面を持つHaworthia亜属は水分の放出が大きくなっています。
気孔が向軸より背軸に見られるのは、太陽光が向軸にあたるからではないかとしています。
Haworthiopsis pungens
以上が論文の簡単な要約です。
私は旧ハウォルチアを構成していたHaworthiopsisやTulistaは好きで集めていますが、軟葉系ハウォルチアには詳しくないため、論文を読んでいても今ひとつピンとこない感があります。しかし、硬葉系ハウォルチアの方が乾燥に強いのは、言われるまでもなくまあなんとなくわかりますよね。軟葉系ハウォルチアは窓以外は地中に埋まって育ったりしますから、強光や乾燥に耐えるための分厚いクチクラ層は必要ないのでしょう。今にして思えば、花以外の特徴は軟葉系ハウォルチアと硬葉系ハウォルチアで結構異なっていたわけですね。遺伝子解析の結果では、軟葉系ハウォルチアはKumara属(旧Aloe plicatilisなど)と近縁で、硬葉系ハウォルチアのTulista属はGonialoe属(旧Aloe variegataなど)、Aristaloe属(旧Aloe aristataなど)、Astroloba属に近縁とされており、Tulista属以外の硬葉系ハウォルチアはGasteria属と近縁とされています。この論文のように花以外の特徴で、遺伝子解析の結果で近縁なもの同士を比較したらどうなるでしょうか? どうにも気になりますね。
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この論文で調べられたのは、Haworthia亜属はH. angustifolia、H. blackburniae、H. chloracantha、H. cooperi、H. cymbiformis、H. marumiana、H. parksiana、H. pygmaea、H. retusaの9種類。Hexanglaris亜属はH. attenuata、H. coarctata、H. fasciata、H. glabrata、H. glauca、H. limifolia、H. pungens、H. reinwardtii、H. viscosaの9種類です。
Haworthia cooperi cv.
Haworthia亜属のロゼットは直径5〜6cmを超えることはあまりありません。H. parksianaやH. blackburniaeなどの葉は細長く幅は5mmを超えません。葉はしばしば光沢があり滑らかで、しばしば透明の「窓」や毛状突起があります。
Hexanglaris亜属は濃い緑色で、窓と毛状突起がありません(※)。葉の表面は厚くしばしばイボや突起があります。この特徴はH. limifoliaに典型的で、H. glaucaとH. coarctataでは適度にありますが、H. pungensとH. viscosaにはありません。しかし、H. viscosaは非常に厚いクチクラを持ちます。最小の葉はH. glaucaやH. reinwardtii、H. viscosaで、葉の幅はH. glaucaやH. reinwardtii、H. pungensが狭いようです。
(※) H. pungensには毛状突起があり、H. koelmaniorumには「窓」があります。
Haworthiopsis limifolia
葉の気孔はHaworthia亜属は多く、Hexanglaris亜属は少ない傾向があります。全体として向軸(Adaxial side)より背軸(Abaxial side)に多く見られます。しかし、1mm×1mmの面積内の気孔は、Haworthia亜属のH. retusaは非常に多く向軸は23.9個、背軸で36.7個でしたが、H. chloracanthaは向軸で2.6個、背軸で5.3個で少ないものでした。また、Hexanglaris亜属のH. glaucaは向軸で2.6個、背軸で3.6個でしたが、H. reinwardtiiは向軸で14.5個、背軸で13.1個と多いものでした。
Haworthiopsis coarctata
葉の水分含有率を調べたところ、Haworthia亜属のほとんどが90%以上でしたが、Hexanglaris亜属は多くは87〜89%でした。Haworthia亜属の例外はH. parksianaで、水分含有率は87%でした。また、Hexanglaris亜属のH. glaucaの水分含有率は84%以下でした。
Haworthiopsis viscosa
以上の結果から、以下のことが言えるそうです。Hexanglaris亜属に見られる様々な付属物やクチクラの発達は、強い日光を分散します。逆に滑らかな表面を持つHaworthia亜属は水分の放出が大きくなっています。
気孔が向軸より背軸に見られるのは、太陽光が向軸にあたるからではないかとしています。
Haworthiopsis pungens
以上が論文の簡単な要約です。
私は旧ハウォルチアを構成していたHaworthiopsisやTulistaは好きで集めていますが、軟葉系ハウォルチアには詳しくないため、論文を読んでいても今ひとつピンとこない感があります。しかし、硬葉系ハウォルチアの方が乾燥に強いのは、言われるまでもなくまあなんとなくわかりますよね。軟葉系ハウォルチアは窓以外は地中に埋まって育ったりしますから、強光や乾燥に耐えるための分厚いクチクラ層は必要ないのでしょう。今にして思えば、花以外の特徴は軟葉系ハウォルチアと硬葉系ハウォルチアで結構異なっていたわけですね。遺伝子解析の結果では、軟葉系ハウォルチアはKumara属(旧Aloe plicatilisなど)と近縁で、硬葉系ハウォルチアのTulista属はGonialoe属(旧Aloe variegataなど)、Aristaloe属(旧Aloe aristataなど)、Astroloba属に近縁とされており、Tulista属以外の硬葉系ハウォルチアはGasteria属と近縁とされています。この論文のように花以外の特徴で、遺伝子解析の結果で近縁なもの同士を比較したらどうなるでしょうか? どうにも気になりますね。
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