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カテゴリ: その他

ベンケイソウ科植物の中にオロスタキス属(Orostachys)と言う分類群があります。多肉植物として一般的に栽培されますが、国内にもイワレンゲやツメレンゲなど自生するオロスタキスがあります。さて、このオロスタキスですが、その名前を命名したのは一体誰なのか、何やら議論のあるところだと言うのです。Vjaceslav V. Byalt & Irina V. Sokolovaの1999年の論文、『Who is the author of the name Orostachys (Crassulaceae)?』を見ていきます。

名前の謎
Orostachysと言う名前は、その命名者として様々な人物が取り上げられてきました。例えば、Borisova(1939, 1970)やOhba(1978, 1995)は、基本名はAugustin Pyramus de Candolleに、属名としてはFischerを挙げています。Webbの『Flora europaea』の両方の版(1964, 1993)では、基本名はde Candolleに属名はFischer ex Sweetとされています。他のいくつかの研究では、属名をFischer単独のものとしています。さらに、Eggliら(1995)はFischer ex Bergerとして著者を引用しています。

命名の経緯
Orostachysと言う名前に結びつく最初の名前は、Carl von Linne(1753)により命名されたCotyledon spinosa L.であり、後のOrostachys spinosa (L.) Sweetでした。一般名Orostachysは、1808年にFischerによりはじめて使用されました。しかし、この属の説明をしなかったため、検証出来ませんでした。リストされている種は、名前が有効に公開されていないため、新しい名前として有効ではありません。
Orostachysの詳細な説明は翌年、つまり1809年にFischerにより発表されました。Fischerは、Orostachysの雄しべの数は花弁の数と等しくはなく、その2倍である10本であることを証明しました(※まれに8本、あるいは12本)。このような花の特徴から、FischerはOrostachysをCrassula L.やCotyledon L.よりも、Sedum L.に密接に関連しているとしました。

この時に記載されたのは以下の種でした。
①O. chloracantha
②O. thyrsiflora
③O. malacophyalla
④O. libanotica

de Candolleの分類
1828年にde Candolleは、ベンケイソウ科を扱った2つの重要な著作を出版しました。知られている世界中のベンケイソウ科植物の全種を扱い、19属に整理しました。この時、CandolleはOrostachys Fisch.を独立した属とせず、4つの節(Section)の1つUmbilicus DC.に含めました。Candolleは1808年のFischerを引用し、Orostachys Fisch.に言及していますが、1809年のFischerに基づく誤った引用による組み合わせを発表しました。

正しい引用
Orostachysの著者を正しく引用した最初の分類学者はCerepanov(1973)でした。しかし、Candolleの引用が間違っていたため、その後の多くの植物学者は、CandolleがOrostachysと言う新しい節の名前を有効に発表したと考えていました。
Orostachysは正式には以下のように引用されます。


Orostachys Fisch, in Mem. Soc. Imp. Naturalistes Moscou 2: 270. 1808.
Type: O. malacophyalla (Pall.) Fisch. (=Cotyledon malacophyalla Pall.)

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
de Candolleの引用に誤りがあったため、de Candolleの分類群は命名規約上では採用されないと言うことです。ですから、de Candolleをオロスタキスの命名者とすることは、多くの植物学者の考えとは裏腹に誤りなのです。
さて、せっかくですから、現在認められているオロスタキス12種類を示して終わります。

①O. boehmeri (Makino) H.Hara
②O. cartilaginea Boriss.
③O. chanetii (H.Lev.) A.Berger
④O. fimbriata (Turcz.) A.Berger
⑤O. gorovoii Dudkin & S.B.Gontch
⑥O. japonica (Maxim.) A.Berger
⑦O. malacophyalla (Pall.) Fisch.
⑧O. maximowiczii V.V.Byalt.
⑨O. minuta (Kom.) A.Berger
⑩O. paradoxa (A.P.Khokhr. & Vorosch.) Czerep.
⑪O. spinosa (L.) Sweet
⑫O. thyrsiflora Fisch.


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多肉植物は水分を溜め込んでおり、大変みずみずしいので、一見して食べられそうな気もします。実際にウチワサボテンやアロエ、アイスプラントなどは食べられています。しかし、EuphorbiaやBoophone(=Boophane)には毒性があり注意が必要です。また、Pachypodiumはキョウチクトウの仲間ですから強い毒性がありますが、あまり知られていないかも知れません。さて、それ以外の多肉植物と言えば、食べられるかどうか、あるいは毒性があるか否かはあまり聞きません。
本日は南アフリカで野生の多肉植物を食べた家畜におこる謎の疾患「Krimpsiekte」を引き起こす原因に迫ります。参照とするのは、Christo J. Bothaの2013年の論文、『Krimpsiekte in South Africa: Historical perspectives』です。早速、見てみましょう。

Krimpsiekteと言う病
Krimpsiekteは1775年以来、家畜の病気として認識されてきました。症状は麻痺で南アフリカで最初に記録された家畜の病気の1つで、植物中毒が原因と考えられていました。Krimpsiekteはnentaあるいはritaなどと呼ばれてきました。正式な記録は1864年のBrowneのものが最初でした。
1884年にHutcheonはKrimpsiekteのヤギの第一胃液を濾して2頭のヤギに投与し、Krimpsiekteを発症することを確認しました。1887年には植物学者のMacOwanはマメ科植物のLesserita annularisがヤギのrita=Krimpsiekteの原因であると述べました。また、1899年にHutcheonはKrimpsiekteのヤギの肝臓を犬に与えてみました。ヤギの肝臓を食べた犬は2日以内にKrimpsiekteの急性症状を引き起こしました。これは、Krimpsiekteにより引き起こされた二次中毒のはじめての報告でした。

原因はチレコドンか?
1891年に獣医師のSogaが、ヤギにTylecodon ventricosusの葉を与えると、Krimpsiekteの症状を引き起こすことを発見しました。わずか2オンス(56.7g)の細断した葉をヤギに3日間与えると、4日以内に疾患の症状を引き起こし、6日以内に死亡しました。T. ventricosusを与えたヤギは8頭すべてがKrimpsiekteを発症し、うち6頭が死亡しました。1891年は、南アフリカではじめて家畜に対して有毒な植物を実験的に証明した、歴史的に重要な年です。

再現実験
しかし、Sogaの実験結果には懐疑的な見方もありました。なぜなら、実験がKrimpsiekteが起こる地域のヤギを使用して行われたことと、それまで毒性のあるベンケイソウ科の植物は知られていなかったからです。
その後、獣医外科のTomlinson、Borthwick、Dixonは、Krimpsiekteの起きていない地域のヤギにT. 
ventricosusを与えることにより、Krimpsiekteの発症を確認しました。nentaあるいはKrimpsiekteになったヤギの歴史的な写真を、1898年にBorthwickが撮影しました。

第二の犯人はコチレドン
1908年に政府の農学者・植物学者であるBurtt Davyと、植物標本館助手のMiss Stentは、Cotyledon orbiculataによる家禽中毒の疑いについて報告しました。Miss Stentは庭でC. orbiculataを間引き、刻んだ葉を家禽に与えました。翌日、6羽の雌鳥が死亡しました。また、Burtt Davyは、Arnold Theiler公も鶏の麻痺と死亡を確認したことを報告しました。Kehoeは1912年に、アンゴラ山羊にC. orbiculataを240g与えました。その後、ヤギはKrimpsiekteを思わせる症状を引き起こし、10日後に死亡しました。Tustinらの1984年の報告では、C. orbiculataを摂取した16頭のアンゴラ山羊の群れで中毒が発生し、そのうち6頭が死亡しました。
ナミビアのMaltahohe近くの農場でヒツジにKrimpsiekteと似た症状が起きました。1965年にTerblance & Adelaarは、
C. orbiculataをヒツジに与えその毒性を確認しました。C. orbiculataの半乾燥状態の茎と葉は、わずか1.0g/kgでヒツジにとっては致命的でした。蓄積効果もあり、1日あたり50mg/kgと言う少量の摂取でも、中毒を引き起こしました。

第二のチレコドン
1920年にCursonは、Tylecodon wallichii (Cotyledon wallichii)の毒性を証明しました。1926年にHenningは、T. wallichiiがヤギやヒツジ、馬、家禽に対して、非常に有毒であることを確認しました。体重36kgのヤギにT. wallichiiの葉7gを2回与え、これは0.39g/kgと言う少量でしたが、摂取4日後に症状があらわれ、その2日後に死亡しました。Henningは家畜が比較的短期間に大量の植物を摂取すると急性中毒を引き起こし、現場では「opblaas」と呼ばれることもあると指摘しました。長期的な摂取はよりKrimpsiekteらしい症状を引き起こします。また、Krimpsiekteのヤギや馬の肝臓や馬肉を犬に与えると二次中毒を引き起こすことを確認しました。

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Tylecodon wallichii『Carnegie Institution of Washington publication』(1924年)より。Cotyledon wallichiiとして記載。

新たなKrimpsiekte
その後、Kalanchoe lanceolataによりKrimpsiekteが引き起こされることが明らかとなりました。1983年にAndersonらがヒツジで、1997年にMasvingwe & Mavenyengwaは牛でKrimpsiekteの発症を確認しました。
冬季降雨地帯では、Tylecodon grandiflorusによるとされる牛の中毒が起きていました。1983年にAndersonらはT. grandiflorusをヒツジに与え、Krimpsiekteを再現しました。

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Kalanchoe lanceolata
『Carnegie Institution of Washington publication』(1924年)より。Kalanchoe paniculataとして記載。


毒性の正体
HenningはC. orbiculataの有毒成分は熱に安定で、30分間煮ても、120℃で15分間処理しても破壊されないことを指摘しました。1936年にSepeikaは、神経毒であるcotyledontoxinとジギタリス様作用を持つ配糖体が含まれることを示唆しました。それから約40年後、bufadienolide強心配糖体であるcotyledosideがT. wallichiiから単離されました。cotyledosideの投与は家畜にKrimpsiekteを引き起こすことが確認されています。
1985年にAndersonらは、C. orbiculataから4つの
bufadienolideを単離しました。tyledoside Cと、orbicuside A、B、Cでした。orbicuside Aをヒツジと投与すると麻痺や横臥を誘発しました。
T. grandiflorusはAndersonらによって徹底的に研究されました。6つの
bufadienolideが単離され、tyledoside A、B、C、D、E、F、Gでした。
K. lanceolataからは3つの
bufadienolideが単離されました。3-O-acetylhellebrigeninと、lanceotoxin A,Bです。

最後に
意外にもティレコドンやコティレドン、さらにはカランコエからも家畜に麻痺や死亡をもたらす強力な毒性を有していることが明らかになりました。少量でも作用しますから、草食のペット、例えばハムスターやモルモット、ウサギなどは危険かも知れません。カランコエなどは一般的に普及していますから、落ちた葉には気を付ける必要がありそうです。まあ、すべてのカランコエに毒性があるかは分かりませんけどね。
よく毒性を表す指標として、LD50なるものがあります。これは、半数致死量と言って、その量を与えたら半数は死ぬ量です。これを例えば体重60kgの人に当てはまると、Krimpsiekteを引き起こす成分は6〜
22mg程度とかなり強烈な毒性です。こんな身近に毒性植物があったことに驚きました。私もユーフォルビア以外の多肉植物も危ないかも知れないと警戒することにしました。


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当ブログでは、多肉植物の名前についての話題がちょくちょく議題に上がります。ある種が分割されたり統合されたり、属名が変更になったりと言ったことはよくあることです。しかし、それだけではなく、命名規約上の問題もあります。現在の二名式学名は1753年のCarl von Linneから始まりますが、命名が古い種は基準となるタイプ標本がない場合があります。長い年月で行方不明になったり、第二次世界大戦により消失してしまったりと理由は様々です。このような場合、新たにタイプ標本を指定し直す必要があります。本日はそんなタイプ標本の再指定=レクトタイプ化に関するお話です。参照とするのは、D. L. Koutnik & Mary O'Connor-Fentonの1985年の論文、『Lectotypification of the genus Delosperma (Mesembryanthemumaceae)』です。早速、見てみましょう。

Mesembryanthemumの誕生
von Linneが1753年に「Species Plantarum」を出版した時、Mesembryanthemum属はわずか35種でした。1862年のSonderの「Capensis」では、293種に増加しました。現在、von Linneの言うところのMesembryanthemumは推定1200種あります。

※von Linneの言うところのMesembryanthemumは、後に分割されたため、現在のMesembryanthemumが1200種あるわけではありません。

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「Species Plantarum」

分離が始まる
N. E. Brownは、多くの種を集中的に研究した最初の現代的な研究者でした。1920年、1921年に、巨大なMesembryanthemum複合体から、別属に分離するプロセスを開始しました。属の分割は種子鞘(seed capsule)に基づいたものです。この分離するプロセスは現在も続いており、現在は100属以上となっています。
これらの属のほとんどは、1958年以前にはタイプ標本が指定されていませんでした。そのため、タイプ標本の再指定=レクトタイプ化が必要です。Delospermaもそのようなレクトタイプ化を必要としています。Delospermaは約163種からなり、現在著者により改訂中です。

タイプを再指定
1925年にBrownがMesembryanthemumからDelospermaをはじめて分離しました。しかし、この時にどの種がDelospermaに含まれるのかをBrownは示しませんでした。そこで、1925年以前にBrownにより記載され、Delospermaの最初の扱いでBrownに言及され、総称名の後に新属と印刷された3種類に限定しました。それは、D. herbeum、D. macellum、D. mahoniiです。このうち、D. herbeumは線状披針形の葉や小さな花からなる集散花序を持ち、雄しべは花の中心に集められるなど、典型的なDelospermaです。そのため、D. herbeumを代表的なDelospermaと判断します。また、D. herbeumはタイプ標本がBrownにより発見され、資料の一部として引用されています。

レクトタイプの混乱要素
Delospermaがレクトタイプ化されたかは、若干の混乱があります。Lavisは1967年にSection Delosperma(デロスペルマ節)と言う分類群を作りました。これは、「Delosperma属」と混同してはならず、Sectionの確立のためにレクトタイプと言う単語を使用することは明らかな間違いです。Section Delospermaのタイプは、Delosperma echinatum (Aiton) Schwantesですが、タイプとして問題があります。D. echinatumは1789年に命名されたMesembryanthemum echinatm Aitonに基づいており、これは1786年に命名されたD. echinatum Lam.と同名です。この種の正しい名前は、Delosperma pruinosum (Tunb.) Ingramですから、Delosperma echinatum Schwantesは非合法名です。

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Delosperma echinatum
『Monographia geneum aloes et mesembryanthemi』(1836年)より。Mesembryanthemum echinatumとして記載。


最後に
ややこしい話ですが、これはMesembryanthemumからDelospermaが分離された時に、属のタイプがないと言う問題を解決するための提案です。デロスペルマは日本では「マツバギク」の名前で知られていますが、ずいぶんと面倒くさい話があるものですね。
さて、この提案が採用されたか否かは、実はよく分かりません。まあ、これはただ調べられていないだけです。ただし、読んでいてよく分からない部分もあり、そちらの方が気になってしまいました。それは、Delosperma echinatumの学名についてです。著者らはD. echinatumをAitonの命名によるM. echinatum Aitonが由来である、Delosperma echinatum (Aiton) Schwantesとしています。そして、それは誤りで正しくはDelosperma pruinosum (Thunb.) Ingramとしました。しかし、現在のD. echinatumはAitonではなく、LamarkによるMesembryanthemum echinatum Lam.に由来するとされています。そもそも、Aitonの命名したD. echinatumがよく分からないため、どう解釈したものか悩みます。ちなみに、D. pruinosumは1791年に命名されたMesembryanthemum pruinosum Thunb.に由来します。対するD. echinatumは、1788年に命名されたMesembryanthemum echinatum Lam.に由来します。命名年を見れば、M. echinatumが優先されることが分かります。ということで、Delosperma echinatumが現在の正しい学名とされています。


 
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チレコドン(Tylecodon)と言う多肉植物がありますが、コチレドン(Cotyledon)と名前が似ており、私個人としてはどっちだったか分からなくなったりしたこともあります。ずいぶんややこしい名前だと思っていましたが、その理由が書かれた記事を見つけました。なんでも、TylecodonはCotyledonのアナグラムだと言うのです。ただ似ているのではなく故意だったわけです。面白い話ですね。実に遊び心があります。それはさておき、その記事の主題はチレコドンの花粉媒介者(ポリネーター)を探ると言うものです。そちらの内容をご紹介しましょう。それは、Sarah Gessらの1998年の記事である『BIRDS, WASPS AND TYLECODON』です。Gess夫婦が息子さんを連れて調査に赴いたようです。

チレコドンは鳥媒花
TylecodonはCotyledonのアナグラムで、1978年にTolkenによりCotyledonから分離されたグループです。Tylecodonには約28種があり、そのうち16種がNamaqualandに分布します。Namaqualandの岩だらけの丘陵地帯でもっともよく知られているのは、「botterboom」と呼ばれているT. paniculatusです。この低木は高さ1mになり、紙のように剥ける樹皮と多肉質な葉を持ちます。花は晩春から夏にかけて咲きますが、緋色でしっかりとしており鳥により受粉する植物の特徴を持ちます。花の長さは約20mmで、蜜は雄しべの基部にある毛の房で守られており、鳥が蜜を吸うために毛の房を押し退ける必要があります。著者らはGoegap自然保護区で、数羽のタイヨウチョウが花を訪れるところを観察しています。

Tylecodon hallii
あまり馴染みがない種としては、Richtersveld北部とナミビアの隣接地域の固有種であるT. hallimiがあります。この植物はbotterboomの1/3以下のコンパクトな多肉低木です。黄色い釣り鐘型の直立した花を沢山咲かせます。花は約22mmですが、明らかに鳥を誘引するように設計されていません。著者らは1995年の9月に、Richtersveld国立公園を訪れ、この地域のミツバチとジガバチ(wasps)を調査しました。Gess夫妻は乾いた水路の土手沿いの植物を採取するのに熱中していましたが、息子のRobertは丘の斜面に惹かれました。息子からの電話により、T. halliiに小型のハナドロバチ(pollen wasp)が沢山訪れていました。その後に、夫のFredによりMasarina tylecodoniと命名された未記載種であることが明らかとなりました。Tylecodonの花に昆虫が訪れたと言う記録はないようですから、この発見は大変興味深いものでした。

花粉媒介の仕組み
T. halliiはハナドロバチに豊富な蜜と花粉を提供します。しかし、蜜は圧迫された花糸の下に隠されているため、容易に蜜にアクセスすることは出来ません。ハナドロバチは花冠と雄蕊の間に侵入し、ピッタリと押し付けられた形で、長い舌を伸ばして花の根元にある蜜を吸います。ハナドロバチは強引に花に侵入する際に、葯を押してしまい背中に大量の花粉を受け取ります。花粉を沢山つけたハナドロバチが、柱頭が外側に湾曲した花に入ると、背中についた花粉を柱頭で拭き取る形になります。従って、M. tylecodoniはT. halliiの花粉媒介者として適しています。
また、ハナドロバチは意図的に花粉を集めますが、それは葯から直接回収します。背中についた花粉から集めるわけではありません。

信頼出来る花粉媒介者
調査地で花を咲かせている植物は13科32種が採取され、28種のミツバチとドロバチが訪問していることが明らかになりました。しかし、T. halliiにはM. tylecodoniのみが訪問し、M. tylecodoniはT. halliiのみを訪れました。著者は1997年9月に再訪し、T. halliiとM. tylecodoniの間の特別な相利関係を観察しました。ハナドロバチは少数の近縁な植物だけに訪問することが多いのですが、これまでは単一の植物とのみ関連付けられたことがないので、M. tylecodoniが他の植物を訪問する可能性はあります。しかし、T. halliiはRichtersveldで最初に開花する植物であるため、M. tylecodoniは非常に信頼出来る花粉媒介者であることに変わりはありません。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
チレコドンは鳥媒花ですが、Tylecodon halliiは虫媒花だったと言うことです。多肉植物の受粉生物学は調べられていないものが多く、このような思わぬ発見はつきものです。受粉のメカニズムも中々巧妙です。ハナドロバチとの相利共生の歴史を感じます。
しかし、多肉植物の受粉については、調べられていないだけではなく、あまり記事にもなっていません。私は今後も多肉植物の受粉生物学について話題にしていきたいと思っています。


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かつて、Sarcocaulonと言う多肉植物がありました。しかし、いつの間にやらSarcocaulonはMonsoniaに吸収されてしまったといいます。ですから、ネット上のブログや販売サイトでは、Sarcocaulonだった植物はMonsoniaの名前で呼ばれています。しかし、本当にSarcocaulonとMonsoniaは分けることが出来ないのでしょうか?

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Sarcocaulon rigidum
『The Flowering Plants of South Africa』(1921年)より。S. rigidumとは、現在のS. 
patersonii (=M. patersonii)のことです。

履歴書
先ずはモンソニアとサルコカウロンの命名の経緯を見てみましょう。
Monsoniaは1767年にCarl von Linneにより命名されました。つまり、Monsonia L.です。対するSarcocaulonは1826年にSweetにより命名されました。つまり、Sarcocaulon (DC.) Sweetです。始めはSarcocaulonに含まれていた種はMonsoniaとされましたが、Sarcocaulonが出来てからは、新種はSarcocaulonとして命名されました。1824年にDe CandlleがSarcocaulonをMonsoniに含むとする提案を行ったこともありました。最終的には、1996年にAlbersの提案によりSarcocaulonは一斉にMonsoniaに含まれることとなりました。

1996年の提案
調べてみると、1996年のF.Albersの論文、『The taxonomy status of Sarcocaulon (Geraniaceae)』により、SarcocaulonはMonsoniaに吸収されたことが分かりました。内容的には雄蕊群の個体発生や核型、化学成分の分析に基いています。さらに、SarcocaulonとMonsoniaの形態学的な違いは、Peralgonium属内でも見られる程度の違いに過ぎないと述べています。

違いはあるか?
1996年のAlbersの提案はそれなりに妥当性はあったようですが、反対意見もあります。1997年にR.O.Moffettは、『The taxonomy status of Sarcocaulon』と言う論文で、SarcocaulonとMonsoniaの違いを指摘しています。Sarcocaulonの特徴として、可燃性のワックスと樹脂が染み込んだ硬くて光沢がある樹皮を持つと言うことです。含まれる樹脂とワックスの量が非常に多く、乾かさないでも松明のように燃えるため、S. burmanniは「candle bush」、S. rigidumは「bushman's candle」と呼ばれています。

南アフリカ国立標本館
南アフリカ国立標本館のコレクションとそのデータベースであるPRECISは、1996年のAlbersの提案を採用しませんでした。L.L.Dreyerらの1997年のAlbersの提案に対する回答である『Sarcocaulon: genus or section of Monsonia (Geraniaceae)?』を見てみます。
国立標本館では、Albersの提案に対する科学的妥当性を認めますが、コレクションやPRECISに対し導入しないことを決定しました。その理由は以下の通りです。
①歴史的にSweet(1826年)に続いてKnuth(1912年)により、2つの個別の属であることと言う認識が広く受け入れられてきました。別属として維持することで、混乱を避けることが出来ます。
②Sarcocaulonは主にアフリカ南部の砂漠や半砂漠地域に限定されています。対照的にMonsoniaはアフリカ南部からアラビア半島およびインドまで、はるかに広く分布しています。
③SarcocaulonとPelargoniumに見られる多肉質でトゲのある茎は、環境により誘発された特徴である可能性があります。しかし、この特徴はMonsoniaでは見られず、Sarcocaulonの分布域に生えるMonsoniaにおいても見られません。
④SarcocaulonをMonsoniaの姉妹群として保存することにより、命名上の安定性が促進されます。

2003年のチェックリスト
一般的にはSarcocaulonは消滅して久しい扱いですが、現在のキュー王立植物園のデータベースでは、Sarcocaulonは復活しています。そして、その根拠としているのは、2003年に南アフリカ国立標本館による南部アフリカの植物種のチェックリストである『Plants of Southern Africa an annotated checklist. Strelitzia』です。Sarcocaulonの消滅は実は短い期間だけだったのかも知れません。

遺伝子解析
2017年にSara Garcia-Aloyらの論文、『Opposite trends in the genus Monsonia (Geraniaceae): specialization in the African deserts and range expantions throughout eastern Africa』により、MonsoniaとSarcocaulonの分子系統が考察されました。ちなみに、この論文ではSarcocaulonはMonsoniaに含まれるものとして解析しています。
解析結果はMonsoniaは7グループに分けられると言うことです。Sarcocaulonに相当するグループは非常にまとまりがあります。むしろ、Monsoniaは思いの外まとまりがありません。Sarcocaulonを含んだ大きなMonsoniaとするか、7グループを別属に分割するかと言うことになるような気がします。

サルコカウロンは何種類か
現在の復活したSarcocaulonの一覧を示して終わります。

1. S. camdeboense
 =M. 
camdeboensis
2. S. ciliatum
 =M. ciliata
3. S. flavescens
 =M. 
flavescens
4. S. herrei
 =M. herrei
5. S. inerme
 =M. inermis
6. S. marlothii
 =M. 
marlothii
7. S. mossamedense
 =M. 
mossamedensis
8. S. multifidum
 =M. multifida
9. S. patersonii
 =M. patersonii
 =S. rigidum
 =S. rigidum ssp. glabrum
 =S. rigidum f. parviflorum
10. S. peniculinum
 =M. peniculina
 =S. ernii
11. S. salmoniflorum
 =M. 
salmoniflora
 =M. apiculate
 =M. macilenta
    =S. lheritieri v. brevimucronatum
 =S. patersonii ssp. badium
 =S. patersonii ssp. curvatum
12. S. spinosum
 =Geranium spinosum
 =M. burmanni
 =S. 
burmanni
 =M. classicaulis
 =S. 
classicaule
 =S. 
spinosum v. hirsutum
13. S. vanderietiae
 =M. 
vanderietiae


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Mesembryanthemumは由来の古い属名ですが、かつては巨大なグループでした。しかし、徐々に分割され、LampranthusやDelosperma 、Ruschiaを始めとしたグループとなり、現在は100種類程度になっているようです。私はまったくメセンに詳しくはないのですが、Mesembryanthemumの学名に関係する論文を見つけたのでご紹介します。メセンと言うより学名について興味があるのです。
と言うわけで、本日はGideon F. Smithの2020年の論文、『(274 5) Proposal to conserve the name Mesembryanthemum vanputtenii (Lampranthus vanputtenii) (Aizoaceae) with that spelling』をご紹介します。

Mesembryanthemum pittenii L.Bolusは1929年に発表された南アフリカ原産の多肉植物です。L.Bolus(1929)は「Compton(N.B.G. 916/22)」と「van Pitten(N.B.G. 1045/25)」と言うタイプ標本(シンタイプ)を挙げています。翌年、この種は新たに創設されたLampranthusに移され、L. pittenii (L.Bolus) N.E.Br.とされました。

1967年にL.Bolusは、コレクターの名前が正しく記載されていなかったと述べ、種小名を「vanputtenii」に変更しました。採取者はJoost van Puttenで、Lambert's湾の海岸近く住んでおり、彼の所有地はVan Putten's Vleiと呼ばれていました。

「pittenii」を正書法的に修正すると、「i」を「u」に変更されます。さらに、Brummit & Powell(1992)は、「van」を含む南アフリカの姓は、姓の不可欠な部分とみなすのが一般的であるため、この単語を保持すべきであると指摘しています。

L.Bolusが1967年の修正に続いて、修正された名前であるL. vanputteniiが、南アフリカのAizoa科の種の編集に採用されました。過去50年に渡り、L. vanputteniiと言う名前が広く採用されてきたことを考慮し、そのバシオニムであるM. vanputteniiを保存することを提案します。

以上が論文の簡単な要約です。
バシオニムとは正式に認められた学名のもとになった名前のことです。いわゆる異名の1つですが、実は異名にも2種類あります。例えば、緋花玉を例に取ると、正しい学名はGymnocalycium baldianumですが、これは1925年に命名されたものです。しかし、緋花玉は初めは1905年にEchinocactus baldianusと命名されているのです。これは、現在の学名に繋がる学名ですから、バシオニムにあたります。異名の種類としてはHomotypic Synonymと呼ばれます。
また、現在の学名に繋がらないものもあり、これをHeterotypic Synonymと呼びます。緋花玉では、1932年に命名されたEchinocactus sanguiniflorusや1995年に命名されたGymnocalycium rosea、2009年に命名されたGymnocalycium schreiteriなど、11のHeterotypic Synonymがあります。これらは、新種として記載されたものの、G. baldianumと同種であるとして異名になったものです。
何やら面倒くさい話ですが、命名法は重要です。しかし、種を分けるか否かは研究者だけではなく、我々趣味家からも批判がある不完全なものです。それでも、最新の研究成果を吸収しながら、徐々に積み上げられるものが学名です。近年、遺伝子解析による分子系統が盛んに行われていますから、過去にないスピードで分類が改訂される時代になりました。遺伝子解析は過去の分類法と比較すると非常に客観的ですから、研究の進んだグループでは、やがて分類とその学名は固定的となっていくでしょう。このように、Carl von Linneが2名式学名を考案してから約250年経って初めて機械的に種を決定可能となったわけですから、我々は非常に面白い時代に生きていると言えるでしょう。これからも、最新の研究成果を記事にしていこうと考えております。


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多肉植物ブームが長く続き、即売会などでは変わった植物も見かけるようになりました。最近は乾燥地の灌木であるコミフォラもたまに見かけます。聖書に出て来る没薬とはコミフォラの樹脂を固めたものですから、分布も中東や北アフリカが中心です。流通量が少なく生長が遅いこともあり、一般的に大変高価です。本日はこのコミフォラのお話です。と言うわけで、Emiru Birhaneらの2023年の論文、『Arbuscular mycorrhizal fungi improve nutrient status of Commiphora myrrha seedlings under drought』をご紹介します。

乾燥地の植物
没薬(Myrrh)の原料であるCommiphora myrrhaは、高さ4mになるトゲのある樹木で、主に標高250〜1300mのアカシアとコミフォラからなる低木地帯で見られます。このような乾燥地に生える樹木の苗木は、水分含量の低下や光合成速度の低下など、水不足により様々な反応を示します。植物の干魃への適応は、アーバスキュラー菌根菌(AMF)などの土壌微生物との相互作用や支援により強化されます。

菌根菌
アーバスキュラー菌根菌(AMF)は、リン酸塩や他の栄養素が不足している場合に、植物の生長を促します。AMFの共生は、乾燥条件下での植物組織内のリン、ケイ素、窒素、亜鉛、マグネシウム、銅、カルシウムの濃度を増加させ、実生の生長を促進します。また、AMFは気孔コンダクタンスと光化学系IIの効率を維持することにより、光合成効率を高めます。つまり、AMFは水と栄養素の獲得を増加させることで、樹木の苗木の定着を改善します。しかし、C. myrrhaに対するAMFの影響はまだほとんど知られていません。

実験
著者らはエチオピア北部のMekelle大学で、C. myrrhaの苗木を用いた試験を温室で実施しました。温室内の気温は、日中で平均27℃、夜間で平均22℃でした。
種子はエチオピア北西部の低地より採取され、20%過酸化水素水不足により殺菌され、その後に冷水に12時間浸漬されました。プラスチックトレイに滅菌した川砂を敷き種子を播種したところ、種子すべてが5〜15日で発芽しました。発芽後、個別にプラスチックポットに移植しました。
菌根菌はエチオピア北西部の乾燥したアカシア・コミフォラ林で、乾季に採取されました。菌根菌の種類は特定出来ませんでしたが、乾燥土壌100g中には約76個の胞子を含んでいました。この土壌をモロコシ(ソルガム)に与え増やしました。モロコシの根への菌根菌の定着率は60〜95%でした。
試験はAMFの有無と、与える水分量を4段階に分けて実施されました。


干魃耐性の強化
AMFの添加によりバイオマスの増加が認められました。細根はAMFにより長くなりました。AMFの効果は水分が少ないほど顕著でした。また、新芽と根の窒素濃度は、AMF接種により増加しましたが、水分量は影響を与えませんでした。リン濃度とカリウム濃度は、AMFと水分量が大きく影響を与えました。リンやカリウムなどの栄養素摂取量が強化されると、干魃耐性が高まります。菌根が植物の根が到達出来ない微細な土壌細孔にアクセス可能であり、水分や栄養素の取り込みを強化出来ます。
AMFの効果として葉の面積の維持が確認されました。より乾燥した環境では葉が小さくなる傾向がありますが、AMFの接種により葉があまり小さくならず大きい葉を展開出来るのです。このことにより、AMFは光合成効率の改善にも寄与していることが分かります。

最後に
以上が論文の簡単な要約となります。
論文ではAMFを採取したアカシア・コミフォラ林の表土と下層土を用いた試験も行っていましたが、今回は割愛させていただきました。
さて、当ブログはサボテンや多肉植物を中心としていますが、それらに留まらず植物学に関わる広範な記事もポツポツと書いていたりします。植物学ネタでは、植物にとって菌根菌は重要であると言うことを何度か記事にしています。ほとんどの植物は菌根菌と共生関係にあり菌と根の複合体である菌根を形成し、お互いに栄養素のやり取りをしています。
多肉植物でもWelwitschiaは菌根菌と共生関係を結んでいることが確認されており、Gymnocalyciumでは菌根菌と共生関係にあるとよく育ち、フザリウムと言う寄生カビの感染予防にもなっていることが確認されています。しかし、ほとんどの植物は菌根菌との関係について詳しいことは分かっていません。乾燥と菌根の関係は非常に興味深いもので、菌根菌の能力を計る意味でも有用だと感じます。今後も、多肉植物と菌根菌との関係についての研究がなされることを望みます。


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地球上の発見された生物には、基本的に名前がつけられています。英語名だったり、その原産地や地域での呼び名もあったりします。しかし、世界中で通じる名前は、ラテン語表記による学名です。しかし、この学名にもルールがあり、誰でも好きなように命名して良いわけではありません。新種の記載は大学などの研究機関に属する研究者である必要はありませんが、学術論文は決まった形式があるため、事実上は研究者にほぼ独占されているのが現状です。この新種の記載には、産地情報や花を中心とする特徴についても詳細に書かれます。しかし、それだけでは不十分で、タイプ標本を必要とします。タイプ標本は研究機関に収蔵され、新種を発見したりした場合、類似した種と比較するために、類似種のタイプ標本が参照されます。最近では標本から遺伝子を抽出するケースもあるようです。
さて、本日はタイプ標本に関するお話です。と言うわけで、Joachim Thiedeの2008年の論文、『Lectotypification of Adenium multiflorum Klotzsch (Apocynaceae)』をご紹介します。

Adenium multiflorumはモザンビークのTete近くでHW Petersが採取した標本に基づき、ドイツの植物学者であるFriedrich Klotzschにより記載されました。それが公開されたのは、Petersの豪華な6巻からなる著作である、『Naturwissenschaftliche Reise nach Mosasanbique…』(モザンビークを巡る自然史の旅)の植物学に掲載されました。出版日は1862年とされていますが、実際には1861年に出版されました。優れたモノクロの図版が添えられていました。

1980年にアデニウム属の改訂が行われ、PlaizierはAdenium multiflorumのタイプ標本(ホロタイプ)は破壊されアイソタイプは追跡されなかったと述べました。つまり、学名の基準となるタイプ標本であるホロタイプが失われていたため、ホロタイプに次いで重要な重複標本であるアイソタイプを探しましたが見つけられなかった、あるいはそもそも存在しなかったのです。Plaizierはタイプ標本の産地の近くで採取された保存状態の良い標本を、新たにネオタイプとして指定しました。ネオタイプはタイプ標本が失われた時に、それに代わり指定されるタイプのことです。

著者はHW Petersの著者に記載されたAdenium multiflorumの図版が、失われたホロタイプに代わるレクトタイプ(イコノタイプ)であり、Plaizierの指定したネオタイプより優先されると指摘しています。レクトタイプとは、標本の中からホロタイプに相当する1点を選ぶことで、イコノタイプとは種を指定する図版を指します。この場合は、植物標本ではなく、図版がタイプとして指定されたと言うことです。

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Adenium multiflorum
『The Flowering plants of South Africa』(1921年)より。

以上が論文の簡単な要約です。
さて、このように重要なタイプ標本ですが、時として誤りが見つかることもあります。タイプ標本に複数種が混在しているとか、タイプ標本の変更時に誤った標本を指定してしまったりと言うこともあります。タイプ標本の変更は様々なケースがありますが、標本が破損したり紛失してしまうもあります。特に第二次世界大戦により焼失してしまった標本は沢山あったりします。

ちなみに、Adenium multiflorumは上記のごとく、1961年にKlotzschにより記載されたわけですが、同じく1961年には南アフリカの植物学者であるLeslie Edward Wostall CoddによりAdenium obesumの変種とする考え方も提案されました。さらに、1974年にはイギリスの植物学者であるGordon Douglas Rowleyにより、Adenium obesumの亜種とする意見もありました。しかし、現在はAdenium multiflorumが正式な学名です。ちなみに、A. obesumの亜種とする意見は、「no basionym ref.」と書かれており、つまり「参照となるバシオニムがない」と言うことです。これは、正しい学名が引用されていないと言うことです。詳しくは分かりませんが、もしかしたら引用すべきPetersの著作を正しく引用出来ていないのかも知れませんね。


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乾燥地には剥き出しの岩石が見られたりしますが、岩の割れ目に多肉植物が育ったりすることは、世界中の乾燥地で知られています。通常、岩石の風化は風や雨により、それこそ万単位の時間をかけて緩やかに進行します。しかし、植物の存在により岩石は強い作用を受けることになります。その例として、メキシコのバハ・カリフォルニアの溶岩に生える象の木(Pachycormus discolor)を取りあげましょう。本日はYoav Bashanらの2006年の論文、『Primary colonization and breakdown of ingneous rocks by endemic, succulent elephant trees (Pachycormus discolor) of the deserts in Baja California, Mexico』をご紹介します。

調査地域
著者らは2002年と2005年に、ソノラ砂漠のバハ・カリフォルニア半島の中央にある2箇所を調査しました。この地域は夏の高温が特徴で、晴れた日は35〜40℃になり、良く日が当たる場所は45℃を超えます。冬は夜間の気温が3℃まで低下することがあります。植生はIdria columnaris(=Fouquieria columnaris、観峰玉) やPachycereus pringlei(cardon cacti )などが生えます。

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Pachycormus discolor
『Contribution from the United States National Herbarium』(1912-1916年)より


岩上で育つ象の木
花崗岩や玄武岩で出来た冷えた溶岩流の上で、象の木が生長していることが確認されました。岩上には他の植生は確認されませんでした。花崗岩の地域は、大きな木が岩を挟み込んでおり、1平方キロメートルあたり3.86本が生えていました。玄武岩の地域では、岩に亀裂はなく象の木は岩の中で生長し、小さな木でも引き抜くことは出来ませんでした。高さ20〜30mになる玄武岩の岩上には、高さ3m以上の成木が1平方キロメートルあたり平均8.83本生えていました。

岩石の風化
cardon cactusに関する最新の研究では、根に関係する微生物が岩石を風化させサボテンに栄養素を供給しており、裸岩上におけるサボテンの生長を可能としていることが示されました。これらの微生物が象の木の根にも存在するのかは不明です。

最後に
岩を貫通しながら育つ象の木の姿は、実に奇妙なものです。著者らは最後に微生物の存在を匂わせましたが、これは根圏にいる細菌などの微生物のことのようです。確かに根圏が発達した場合、様々な微生物が増殖し岩石にも作用することは考えられることです。しかし、私は菌根菌が重要なのではないかと考えます。植物の根と共生関係を結んだ菌根菌は、酸を出して周囲のものを溶かします。以前は菌根菌は一部の植物だけに見られるもののように言われたりもしましたが、現在ではほとんどの植物は菌根菌と共生関係を結んでいることが確認されています。当然ながら象の共生関係もまた菌根菌と共生関係にあるはずです。
象の木は岩を穿ちながら育ち、岩は侵食されて行きます。それは、わずか数十年で岩に大きな穴が開くわけですから、自然風化と比較したら大変なスピードです。象の木はやがて寿命などで枯れるものもあるかも知れませんが、象の木があった穴には象の木と微生物が作った腐食質が残り、枯れた象の木自体も腐食質となるでしょう。そこには、岩上では育たなかった植物が生えることが出来るはずです。象の木は不毛の岩上にオアシスを作り出す植物と言えるのではないでしょうか。


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塊茎・塊根植物をコーデックスと呼びますが、近年の多肉植物ブームの一旦はコーデックスの奇妙な姿が目を引いたと言うこともあるでしょう。コーデックスでは、初期はパキポディウムが、最近はオペルクリカリアが人気のようです。そんな中、ドルステニアもメインストリームにはなりませんが、割りかし人気があるようで、多肉植物の販売イベントがあれば苗がかなりの割合で見られます。Dorstenia foetidaなどは、もはや普及種と呼んでも良いかも知れません。さて、本日はそんなドルステニアについてのお話です。長きに渡り正式の記載されず、裸名で呼ばれていたドルステニアがあると言います。その発見の経緯などを辿った、Alain Rzepeckyの2016年の論文、『Dorstenia horwoodii Rzepecky sp. nov. from nudum to novum, a fortyish year hiatus』をご紹介します。

70年代後半以来、小さく装飾的な葉を持つドルステニアが一部の愛好家にコレクションされて来ました。このドルステニアは、ドルステニア研究に貢献した故Frank (Francis) K. Horwood(1924-1987年)に因み、一般的にはDorstenia horwoodiiとして知られています。Horwoodはは1974年に2本の論文を提出し、片方は1970年にJohn J. LavranosとRenato Bavazzanoが収集した資料を用い、D. horwoodiiを描いています。この植物は、ソマリア北東部のNugaal州Eylの北東約5kmの石灰岩の台地で、岩の割れ目に生えているのが見つかりました。

1973年には、Horwoodは友人であるLavranosに同行し、現地で新しい植物を得て栽培することに成功しました。1985年にも、Lavranosに加え、Susan Carter、Seymour Lindenと共にEyl東の高原で観察を行いました。しかし、L. E. Newtonにより行われた植物標本の整理により、1959年にイギリスの昆虫学者であるChristopher Francis Hemmingにより同地域での収集がなされたことがわかりました。次のような注記がありました。「俗名Bogoh-uched。巨大な岩の上の小さな穴や隙間に生える、2インチまでの小さな植物。」HemmingのコレクションはDorstenia crista Englとして寄託されました。D. cristaは1989年にBerg & HijimanによりD. foetidaの異名とされました。


D. horwoodiiはD. foetidaを思い起こしますが、特徴は異なります。D. horwoodiiは高さ6cmで直径8cmの半球状の茂みを作ります。枝は短く、時間経過と共に灰色となり、密集し幅は5〜6mmです。葉は直ぐに落葉し、数は少なく枝先に集まります。

以上が論文の内容となります。
D. horwoodiiは古くに発見されていたにも関わらず学術的に正式な記載をされず、裸名として長きに渡りコレクターに知られて来ました。しかし、2016年のこの論文により正式に記載がなされました。そして、D. horwoodiiの名前は認められました。キュー王立植物園のデータベースにも名前があり、以下のように記されています。


Dorstenia horwoodii Rzepecky
First published in Cact. Succ. J. (Los Angeles) 88: 68 (2016)
This species is accepted
The native range of this species is Somalia. It grows primarily in the desert or dry shrubland biome.

D. horwoodiiのように裸名で呼ばれる多肉植物も沢山ありますが、このように正式に記載されるケースは稀なような気がします。しかも、発見の経緯まで丁寧に追っています。一般的に裸名がついた多肉植物は園芸目的の違法採取や栽培植物が起源であるため、自生地が不明なものが多く、学術的な記載が困難なのでしょう。


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ここ2回に渡りIpomoea属のタイプの変更を巡る論争を記事にしてきましたが、本日で終わります。事の経緯を簡単に振り返ってみましょう。
まず、2020年にEsermanらがIpomoea属のタイプを変更することを提案しました。属のタイプとはその属を代表する種を示しています。Ipomoea属は遺伝子解析により他属とされていた植物を含むものでした。そのため、旧来のIpomoea属だけを1つのグループとすることが不可能となったため、それらの属をIpomoea属が吸収して巨大に拡大したIpomoea属となったのです。Esermanらは巨大化したIpomoea属が将来的に分割された場合、Ipomoea属のタイプになっているI. pes-tigridis(キクザアサガオ)に近縁な種のみがIpomoea属となり、その他の種は新たに命名し直す必要が生じます。特にI. butatas、つまりサツマイモは作物として重要であり、名前の変更は混乱をもたらすかも知れません。そのため、サツマイモに近縁なI. triloba(ホシアサガオ)をIpomoea属の新たなタイプとした場合、Ipomoea属が分割されたとしてもサツマイモはIpomoea属として名前を変更する必要がなくなります。


次にMunoz- Rodriguezらの2023年の論文をご紹介しました。これは、Esermanらの提案に反対し、Ipomoea属のタイプの変更は必要がないとしています。それは、Ipomoea属の解析が進んでおらず、分割される見込みがないためです。


反論に対する返答
Munoz-Rodriguezらの反論に対し、Esermanらのグループからの返答がなされております。それは、2023年の論文、『Towards a collaborative approach to the systematics of Ipomoea: A response to the "Rebuttal to (2786) Proposal to change the conserved type of Ipomoea, nom. cons. (Convolvulaceae)"』です。

専門家ではない?
☆反論
Munoz-Rodriguezらは、著者グループについて、「(著者の)大多数はIpomoeaに関する分類学や体系的な研究の経験がほとんどない」と述べています。しかし、著者らはサツマイモとその近縁種についての数十年に渡る、Ipomoeaとヒルガオ科の系統学と分類学への貢献を否定するものです。著者らはIpomoeaやサツマイモに関する様々な分類スケールでの分類学と系統学に関する100以上の出版物を生み出してきました。
★感想
Munoz-Rodriguezの論文は非常に攻撃的なものでした。Esermanらのグループは40人を超える共著者からなりますが、遺伝学や生態学など様々な研究分野の研究者からなり、多方面からIpomoea属を捉えようとしました。ですから、Munoz-Rodriguezの主張は言いがかりに過ぎません。そもそも、他分野の専門家と協力して研究することは一般的です。仮にEsermanのグループにIpomoeaを専門としていない研究者がいたとしても、非難される謂れはないのです。


分割可能性について
☆反論
Munoz-Rodriguezらは「Ipomoea属内で分離された属を認識すると言うこれまでの試みはすべて失敗に終わっているため、この提案は不要である。」とし、「この提案は数百種類のIpomoea属の中に組み込まれた非単系統群の継続的な受け入れと拡張を意味している。」としています。Esermanらはこの主張に全面的に反対しています。Ipomoea属内から単系統属を分離する今までの試みの失敗が、将来的な科学的進歩の可能性を制限するべきではありません。Esermanらがここで強調しているのは、非単系統群を受け入れることはしていないと言うことです。Esermanらの提案は、研究者が複雑なIpomoeaに取り組み続け、将来的な研究をサポートすることにあります。さらに、Ipomoea属に分離可能なグループが提案されており、これからの研究により別属として復活する可能性もあります。それらを「不可能」と主張することは、入手可能なIpomoeaの重要な文献を無視する単純化した見解です。
★感想
Munoz-Rodriguezらが主張する「著者らはIpomoeaの入れ子状に非単系統の属が含まれている場合に、拡張されたIpomoea属を拒否することで、より安定した論理的か達成可能であると言う主張を裏付ける証拠や議論を何も提供していません。」としていました。しかし、Esermanらは拡張されたIpomoea属を受け入れており、否定はしていません。とは言え、確かに(将来的に)分離する可能性があるからタイプを変更するわけであり、分離する可能性がないのなら不必要な処置でしょう。ここで互いに認識の齟齬が生まれているような気がします。
Esermanらは将来的に分離可能性があるからタイプを変更する提案をし、Munoz-Rodriguezらは分離可能性があるのなら根拠を示すべきだとしているのです。そして、Esermanらは逆にMunoz-Rodriguezらが将来的な分離可能性を否定する考え方であるとしています。
基本的に水掛け論ですから、まったく噛み合いません。しかし、Munoz-Rodriguezらの主張するように、将来的な話であったとしても根拠を示すべきでしょう。Esermanらは「将来的な研究」の可能性について述べていますが、分離を提案する研究はあるにせよやや古く、Ipomoeaの系統解析の現状を踏まえてのものとは思えません。この部分はやや強い言い方をしていますが、Esermanらが主張するほど確かなものなのでしょうか?

事実誤認について
☆反論
Munoz-Rodriguezらの反論には事実誤認があります。Ipomoeaをアストリポモエア亜連とアルギレイア亜連に分けていますが、Esermanらの2014年のサンプリング数を減らした系統解析に基づいていると主張しています。しかし、この名前は2003年のStefanovicらの研究により初めて示されました。「アルギレイア亜連を含まない広義のIpomoeaが不適切にサンプリングされ、人為的に厳選された系統を使用し、誤解するように描かれている可能性があります。」とありますが、Simoesらの2022年の研究はIpomoea連内部の関係を評価することを目的としておらず、ヒルガオ科全体の系統を見るためでした。また、この2つのグループ分けは最近の結論ではなく、以前から繰り返し発見されてきたものです。また、Munoz-Rodriguezらは単一の巨大なIpomoea属を主張し、分割された属の認識を却下することを支持する先行文献として2001年のManosらの論文を引用しています。しかし、Manosらは単一の巨大なIpomoeaを主張したことはなく、Ipomoeaが単系統ではないことを実証しました。

★感想
先行文献を私は読んでいないため、ここいら辺はいまいち判断がつかないところです。ただ、Munoz-Rodriguezらは「拡大した単系統のIpomoeaを認識すること」として、1999年のWilkin、2001年のManosら、2019年・2022年・2023年のMunoz-Rodriguezらを挙げていますから、Esermanらの指摘が正しいのならManosに関しては誤りかも知れません。ただし、実例の1つの誤りを指摘しただけにも思えますが、実は文献のうち3つはMunoz-Rodriguez自身のグループなのですから、何やら手前味噌に過ぎない気もします。
ここでついでに指摘しますが、Esermanらは旧世界のアルギレイア亜連から新世界のアストリポモエア亜連にタイプを変更するための根拠の1つとして、種類の多いアストリポモエア亜連の学名の変更は大変である旨を主張しました。しかし、Munoz-Rodriguezらは、アルギレイア亜連に属するIpomoeaの方が種類が多いと反論しました。この反論に対しEsermanらが言及しないのは、私には不誠実に見えます。


将来の研究を妨げているか?
☆反論
Munoz-Rodriguezらは、EsermanらがIpomoea連の新しい分類を提供していないと主張しています。しかし、それはIpomoeaのタイプの変更に関する提案の前提ではなく、それを妨げるものであってはなりません。Esermanらが主張しているのは、将来の研究のための強固な基盤を提供するための簡単な修正であり、サツマイモの名前の変更など、望ましくない命名上の影響を与えることなく再分類を可能とします。
★感想
EsermanらはMunoz-Rodriguezらの反論に対し、直接的に返答していません。分割されると言う根拠は何でしょうか? 私としては研究が進めば、Ipomoea属が分割される可能性は普通にありそうだと思っています。しかし、それはMunoz-Rodriguezらが「将来そのような分類が作成される場合、その時が命名法の問題に対処する適切な時期となるでしょう。」と述べたように今じゃなくても良いわけです。ですから、Esermanらが主張する「妨げ」と言う主張には根拠がありません。ただし、Munoz-Rodriguezらが論文中で幾度か述べている「すべての出版物で単系統の分類群を特定することは不可能かつ不要であり失敗する運命にあると主張してきました。」などと言う言い回しは、将来的にもIpomoea属の分類が出来ないかのように受け取られても仕方がないと思われます。Esermanらの返答で、Ipomoea属の分類についてMunoz-Rodriguezらが「自信がないのかも知れませんが」などと余計な煽り文句で締めていますが、それはMunoz-Rodriguezらの消極的な姿勢から来ているのでしょう。

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Ipomoea angustisecta
『Die Vegetation der Erde』(1910年)より。
現在はI. bolusianaの異名とされています。塊根性のIpomoeaですが、将来的にIpomoea属から分割されてしまうのでしょうか?


最後に
この議論は2020年から始まりましたが、どうやら2023年にEsermanらの主張が受け入れられたようです。そのため、Munoz-Rodriguezらが反論し、それに対しEsermanらが反論したと言う流れになります。ですから、2023年に議論された話題で、まだ議論は続くかも知れません。私ですらEsermanらの主張の一部には瑕疵があるように見えますから、Munoz-Rodriguezらのグループからの再反論がなされるでしょう。しかし、言った言わないと言う部分は水掛け論となるだろうことが容易に想像され、その点は生産性がないので勘弁してほしいところです。現状においては、はっきりしないことが多いように思われ、素人の私には総合的な判断がつきかねると言ったところです。サツマイモの将来の運命は一体どうなるのでしょうか?
3回に渡り追ってきたIpomoea属のタイプの変更を巡る議論ですが、本日で取り敢えずは終わります。再反論がなされたり、新たな系統解析の結果が発表されたなら、また改めて記事にしようと考えております。


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昨日はサツマイモを含むIpomoea属のタイプを変更する提案がなされたと言う話をご紹介しました。


それは、将来的にIpomoea属が分割された時に、サツマイモ=Ipomoea butatasがIpomoea属でいられるようにと言うことでした。しかし、この提案には反論がなされています。反論があること自体は学術的に有意義なことと言えるでしょう。ただし、内容的にやや問題があるように思われます。本日はその内容を見てみましょう。


提案に対する反論
2020年に出されたIpomoeaのタイプを変更すると言う提案に対し、反論がなされています。それは、Pablo Munoz- Rodriguezらの2023年の論文、『Rebuttal to "(2786) Proposal to change the conserved type of Ipomoea, nom. cons. (Convolvulaceae)"』です。一体、何を問題としたのでしょうか?

提案の確認
まずは、反論を受けているLauren A. Esermanらの2020年の論文の内容から確認しましょう。
1. Ipomoeaは2つのグループからなり、大半を占める新世界のアストリポモエア亜連と、旧世界のアルギレイア亜連からなります。
2. Ipomoea属のタイプであるI. pes-tigridisはアルギレイア亜属に含まれます。
3. 商業的に重要なサツマイモ(I. butatas)を含むアストリポモエア亜連の種(=I.triloba)にタイプを変更するべきです。
4. 将来的にIpomoeaが分割された時に、サツマイモがIpomoeaその内に残されるために必要なことです。

提案に根拠はないと言う主張
☆主張
Ipomoea属内の分離属を認識する試みはすべて失敗に終わっています。これまで不可能であったIpomoeaの満足のいく自然な再分類が可能であると言う、この署名者グループ(その大部分はIpomoeaに関する分類学上または系統的研究の経験がほとんどない)による主張に懐疑的です。そのような分類や根拠を提出していません。
★感想
ここは正直なところ私は首を傾げました。その学術的な内容以外の部分についてです。まず、Ipomoeaの研究者以外は意見を述べてはならない、あるいは意見に重みがないかのような主張がなされています。しかし、これは誤りであると断言出来ます。ある種の権威主義であり、それは科学ではありません。あくまで、その内容に意味があり、誰が主張したかは関係がありません。実際には未だに学術世界においても権威主義は大手を振っていますが、表向きに主張するのはあまりにも馬鹿げています。

また、「署名者グループ」とは何でしょうか? Esermanらの2020年の論文では、40名を超える共著者からなるものでした。それを「署名者」と言うのは、ただ名前を貸しただけのように揶揄する目的しか見いだせません。反論はあくまでも内容で示せば良いだけの話です。


不道徳な幻想とは?
☆主張
提案を拒否する2つめの理由は、命名規則の安定性です。IpomoeaのタイプをI. trilobaに変更しても、既存のタイプであるI. pes-tigridisよりも命名上の安定性は得られません。これはMainitz(1976)により提案され、命名上の安定性を理由に数十年に渡り受け入れられています。旧世界のIpomoeaにはすべての分離属を合わせたよりも多くの種を含みます。アルギレイア亜連を含まない広義のIpomoeaが不適切にサンプリングされ、人為的に厳選された系統を使用し、誤解するように描かれている可能性があります。Esermanらの言及したアストリポモエア亜連とアルギレイア亜連は、800種以上あるIpomoeaから27種のみを含む初期の系統解析(Eserman et.al., 2014)に基づいていることに注意して下さい。したがって、拡大された単系統のIpomoeaを認識すること以外の再整理は、Munoz-Rodriguez et. al., 2019により行われたよりも沢山あり、命名上の変更が必要となることに注意することが重要です。さらに、サツマイモが「名前を失う」危険にさらされていると言う示唆は、分類学的に不安定であると言う不道徳な幻想を生み出しています。
★感想

またもや感情論が登場しました。系統に関する内容は私は確認していないため、判断出来かねます。しかし、「不道徳な幻想」とは何でしょうか? 不満があるのは分かりますが、個人のSNSではないのですからいい加減勘弁して欲しいものです。
ただし、命名法上の安定性には注意が必要です。長く使用された名前が重視されるのは著者らの指摘通りです。さらに、Esermanらの主張では新世界のアストリポモエア亜連の方が種類が多いため、アストリポモエア亜連に含まれる種をタイプとすべきであるとしています。しかし、著者らは旧世界のアルギレイア亜連の方が種類が多いと主張しています。この点は私には判断がつかない部分です。また、系統解析についてですが、Esermanらは2014年の論文による少数の解析結果に依存しているとし、その点を問題としています。私には、Esermanらが2014年の論文にのみ準拠しているようには思えませんが、いずれにせよ系統解析は道半ばで断言出来る段階ではなさそうです。


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Sweet Potato
『The sweet potato in Hawaii』(1923年)より。


引用の誤り
☆主張
著者らはIpomoeaのタイプを変更することを相談されておらず、Esermanらは誤って研究を引用しています。「アルギレイア亜連はIpomoea連における再境界の最も有用な更新に向けた障害であると考えられています…」 著者らはIpomoea連の分割を主張したことはなく、すべての出版物で単系統の分類群(属、亜属、節)を特定することは不可能かつ不要であり失敗する運命にあると主張してきました。
★感想
学術論文は協力しても良いのですが、通常は自由競争です。一々お伺いを立てる必要はありません。ですから、Esermanらは著者らのグループに相談してもしなくても構いません。
正直、言った言わないの話はどうでも良いのですが、まあとにかく著者らはIpomoea属を分割せず、と言うか事実上は出来ないので、拡張されたIpomoeaの維持を主張していることは理解出来ます。


タイプの変更は時期尚早
☆主張
署名者(Esermanら)はさらに次のように続けてもいます。「命名法がより安定した論理的な分類の発展を妨げるべきではないと考えており、Ipomoeaのタイプをアストリポモエア亜連に含まれる種に置き換えることを提案します。」 著者らはIpomoeaの入れ子状に非単系統の属が含まれている場合に、拡張されたIpomoea属を拒否することで、より安定した論理的か達成可能であると言う主張を裏付ける証拠や議論を何も提供していません。タイプの変更は、Ipomoeaの分類学と系統発生の研究が行われ、Ipomoeaの生物学、進化、形態が何らかの形で異なることが実証された後にのみ考慮されるべきです。
★感想
煩わしいので著者らの煽りは無視して進めます。実はこの部分は非常に重要な話です。確かに現状において、Ipomoeaの分類はあまりにも分からないことばかりです。ですから、Ipomoea属を分割すると言う話が近々で起きるとはとても思えず、今やらなくてはならないことかと聞かれると微妙な気もします。将来的に詳細が明らかとなってから考慮したら良いと言う著者らの主張は、私には正論に思えました。


まとめ
この論文の要点は、単純にIpomoea属のタイプを変更する必要はないと言うことです。まず、現状において、Ipomoea属が現時点においては分割される可能性は低いため、分割される可能性を考慮してタイプを変更するのは意味がないとしています。これらの著者らの主張は、傾聴に値するもののように思われます。しかし、Ipomoea属が将来的には分割される運命にあるような気もしています。この反論を受けて、Ipomoea属のタイプの変更を主張したEsermanらが反論に返答しています。記事がまたもや長くなりすぎたため、ここで切ります。明日がこの一連の記事の締めになります。


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塊根植物にイポメアと言うものがあります。綴りは「Ipomoea」なので正確にはイポモエアですが、それはともかくこれは分類的にはヒルガオ科植物です。ですから、塊根性のIpomoeaも朝顔のような花を咲かせます。そして、Ipomoeaの代表種と言えば、何と言ってもSweet potato、つまりはサツマイモでしょう。サツマイモの学名はIpomoea butatasですからね。考えるに、多年生で芋が生長し続けるのが塊根性Ipomoeaで、1年ごとに芋を新しく作り直すのがサツマイモと言うことになるのでしょうか。と言うことで、本日はサツマイモを含めたIpomoeaの話です。調べてみると、近年Ipomoeaを巡って研究者たちが何やら激論を交わしているようです。そして、話の中心にサツマイモがいるのです。一体、どういうことなのでしょうか? これは、サツマイモに限らずすべての植物の分類に関わる重要な話です。長くなりますが、ぜひご一読下さい。

Ipomoeaのタイプを変更する提案
事の発端となったのは、Lauren A. Esermanらの2020年の論文、『(2786) Proposal to change the conserved type Ipomoea, nom. cons. (Convolvulaceae)』です。実に総勢41人の研究者の連名による論文です。話が複雑なので適宜私の解説を交えながら、簡単に要約していきます。

Ipomoeaのタイプはルコウソウ
Ipomoeaはヒルガオ科最大の属で、650〜900種程度があります。Ipomoeaは形態的に明確な違いがないため、その分類と命名には問題があり、長い議論の歴史があります。現在の学名のシステムを作ったvon Linneは17種のIpomoeaを記載しましたが、Ipomoea quamoclit(ルコウソウ)だけが1737年のvon Linneの初期の記述と一致します。現在の二名式学名は1753年にvon Linneが発表しましたから、それ以前の話になりますね。そのため、最も早いIpomoeaの記述として、ルコウソウは理想的なIpomoea属のタイプとなります。属のタイプは、その属を代表する種を指し示すものです。

Quamoclitの分離
その後にIpomoeaからQuamoclit属を分離させる提案がなされ、何百種類ものIpomoeaの名前を組み替えられる羽目になりました(Roberty, 1952)。詳しくは分かりませんが、Ipomoea属のタイプであるルコウソウがQuamoclit属になってしまったので、Ipomoea属は廃棄されてしまったのかも知れません。そうなると、ルコウソウと近縁ではない膨大な種は新たな命名が必要となってしまいます。
しかし、MainitzがI. pes-tigridis(キクザアサガオ)と共にIpomoea属を保存することを提案し受け入れられましたため、混乱は収まりました(1981, 1982)。近縁種が少ないルコウソウをIpomoea属のタイプとする危険性からの措置と思われます。


Ipomoeaの遺伝子解析
近年では分子系統解析の成果により、より安定した分類法が確立されつつあります。Ipomoea属内で、狭義のIpomoeaは側系統であり、その中に10属が入れ子状になっていました。その10属とは、Argyreia(オオバアサガオ属)、Astripomoea、Blinkworthia、Lepistemon、Lepistemonopsis、Mina、Paralepistemon、Rivea、Stictocardia、Turbinaです。つまり、これらの10属はIpomoeaに組み込まれてしまっており、分離することが出来ないのです。
これらの成果により、Ipomoeaの正体に関する議論は、さらに深まりました。Wilkinはイポモエア連(※連とは科の下、属の上の分類群、Ipomoeeae)のすべてを狭義のIpomoea属に含めることを提案しました。これは2019年には、Munoz-Rodriguezらにより取り上げられました。属を超えた分類を提案せず、Ipomoea属を約900種まで増加させました。


2つのIpomoea
遺伝子解析から、イポモエア連は2つのグループに分割可能です。ここでは、仮の名前として、非公式名「Astripomoeinae」(アストリポモエア亜連)と「Argyreiinae」(アルギレイア亜連)としています。前者は新熱帯のIpomoeaで、後者は旧世界に分布するIpomoeaです。ここで問題が生じます。それは、Ipomoeaのタイプであるキクザアサガオが、アルギレイア亜連に含まれてしまうと言うことです。

サツマイモの危機
Ipomoeaのタイプであるキクザアサガオがアルギレイア亜連に含まれるならば、もしIpomoea属が分割された場合、Ipomoea属はアルギレイア亜連に含まれる種だけになり、アストリポモエア亜連に含まれる種はIpomoea属ではなくなります。その場合、約600種もの名前の変更が必要となります。アストリポモエア亜連には観賞価値の高い種も含み、経済的に重要な作物であるサツマイモ(I. butatas)の名前も変更しなくてはならないのです。サツマイモは数千〜数万の品種があり、年間9000万トン以上生産される重要な作物です。サツマイモの名前の変更は、混乱を招き、生産する企業などに無駄な出費を強いるかも知れません。

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Sweet Potato
『Sweet Potato Culture for profit.』(1896年)より。


タイプの変更の提案
この問題は、Ipomoeaのタイプであるキクザアサガオがアルギレイア亜連であることが原因です。膨大な名前の変更を避けるため、アルギレイア亜連もアストリポモエア亜連も、巨大なIpomoea属に含めることを支持します。また、Ipomoea属のタイプをアストリポモエア亜連に含まれる種に置き換えることを提案します。将来的にIpomoeaが分割される場合でも、アストリポモエア亜連に含まれる種がタイプならば、より種類が少ないアルギレイア亜連に含まれる種の名前を変更するだけで済みます。そして、サツマイモの名前の変更を避けることが出来るのです。

新しいタイプはホシアサガオ
Ipomoeaのタイプであったキクザアサガオは、遺伝子解析により他のIpomoeaの大部分と遠縁であることが示唆されています。ここでは、キクザアサガオの代わりにI. triloba(ホシアサガオ)をIpomoea属のタイプとすることを提案します。Woodらの分子系統学的研究により、ホシアサガオがサツマイモに近縁であることが判明しています。したがって、この提案されたタイプにより、経済的に最も重要な種の命名法の不安定化を避け、将来的にIpomoeaの分類を再評価することが可能となります。
ここで、なぜサツマイモをIpomoea属のタイプとしないかと言えば、それは命名年が早いものが優先されるからです。サツマイモの命名は1753年のConvolvulus butatas L.でありかなり早いのですが、初めはIpomoea属ではありませんでした。ちなみに、サツマイモがIpomoea属とされたのは1793年のことで、Ipomoea butatas (L.) Lam.です。対するホシアサガオは、1753年に命名された、Ipomoea triloba L.です。


何故、分割される可能性があるのか?
属の分割の話は分かりにくいでしょうから、解説します。まず、伝統的に植物の分類は花の構造を指標としてきました。ですから、花を見ればどの分類群に入るか分かるのです。遺伝子解析の結果でも、基本的には花の構造による分類は正しいことが確認されています。ただし、花の構造による分類にも問題があります。
1つは、分類群同士の関係が分からないことです。あるグループ内で共通する構造があると言うところまでは分かります。しかし、異なるグループ間で比較しようとすると、何を基準として採用して良いのかが分からないのです。これは、植物がどのように進化したかが分からない限り、当て推量とならざる得ません。ですから、遺伝子解析により伝統的な植物の分類は否定され、基本的に一新されたのです。
2つめは、花の特徴が共通する分類群内の分類が難しいことです。花の構造が同じである以上は、何かしらの共通した形質を新たな指標とする必要があります。しかし、その形質は共通祖先から始まるものなのか、種ごとに個別に獲得したものなのかが判別出来ません。例を挙げれば、植物ではないのですが、イタチで見てみましょう。イタチの仲間は骨格を見れば、直ぐに分かります。そして、伝統的な分類では、魚食性の種は歯や頭蓋の特徴が共通する1つのグループとされていました。しかし、それは各グループで魚食性の種類が、似た特徴をそれぞれ進化させただけだったのです。いわゆる収斂進化と呼ばれるもので、最適化されると類似してくると言うだけの話です。つまり、植物も収斂進化なのかどうかが見た目では判別出来ませんから、花の特徴が共通する分類群内の分類はとても難しいのです。
以上のことを踏まえれば、Ipomoea属内の分類は困難であることが分かります。遺伝子解析により属内分類が明らかとなりつつありますが、あまりにもIpomoea属は種類が多すぎて、そのすべてを明らかとすることは難しいかも知れません。しかし、将来的には分かりません。いつか肥大化したIpomoea属は分割されるかも知れません。その時に、サツマイモを含むグループだけがIpomoea属となるのでしょう。


まとめ
ややこしい話でしたが、これは分類群の安定に関する話です。遺伝子解析によりIpomoea属は他属とされてきた複数のグループと区別出来ないことが判明しました。そのため、それらのグループをIpomoea属に加入させることにより、Ipomoea属は巨大に膨れ上がったのです。そして、膨れ上がったIpomoea属は将来的に分割される可能性があります。その場合、Ipomoea属のタイプがキクザアサガオであるため、キクザアサガオを含むグループが真のIpomoea属となり、サツマイモを含むグループはIpomoea属ではなくなってしまうのです。それを避けるために、Ipomoea属のタイプを変更しましょうと言う提案でした。
さて、この提案には反論がなされています。とは言え、記事があまりにも長くなってしまったので、続きは明日にしましょう。


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多肉植物の分布域は大抵は砂漠など、あまり人が住んでいないような場所です。しかし、近年では開発により生息地が破壊される速度が加速しています。本日はそんな開発により生息地を失った、とある多肉植物の救出作戦についてご紹介します。それは、Herta Kolbergの2014年の論文、『Relocation of Adenia pechuelii (Passifloraceae) -a viable rescue option?』です。Adenia pechueliiというアデニア属の塊茎植物の移転とその後の経過についての報告です。アデニア属と言えば、Adenia glaucaやAdenia globosaなど、緑色の塊茎からつるを伸ばす植物が稀に販売されています。

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Adenia pechuelii
『Die Pflanzenwelt Afrikas, insbesondere seiner propischen Gebiete』(1910年)より。

ウラン開発の余波
世界的なエネルギー危機と市場価格の高騰により、ナミビアにおけるウラン探査と採掘が増加しています。その計画の1つとして、カナダの企業がナミブ砂漠の東端にある農場でウラン採掘が行われることになりました。予定地の環境影響評価と環境管理計画では、一般的にElephant's Footと呼ばれるAdenia pechueliiの大規模な個体群が見つかりました。1994年のIUCN基準ではA. pechueliiは絶滅危惧IB(EN)として評価されていました。A. pechueliiはナミビアの固有種で西海岸沿いの霧が発生する地域に生えます。その生態はあまり良く知られていません。

移植試験
2008年にA. pechueliiの移植が可能であるかが試験されました。掘削機で植物の周囲を掘り、その後はスコップやバールを用いて丁寧に掘り上げ、なるべく根の損傷がないように深く掘り下げました。今回の試験では無作為に60本のA. pechueliiが選ばれ、様々な処理をして採掘予定地以外でA. pechueliiが生える地域に移植されました。移植は、ただ移植しただけの場合と、殺菌剤で処理したもの、発根ホルモンで処理したもの、定期的に水やりしたものなど、複数の条件が試されました。

移植後の経過観察
移植後は定期的な経過観察を行いましたが、移植から1年後にはすべての個体が生存していました。移植から4年後においても80%にあたる48個体が生存していました。枯死した個体のほとんどは移植によるダメージではなく、野生動物による食害によるものでした。移植しなかった個体も比較のために観察していましたが、やはり野生動物による食害により枯死するものが観察されています。また、食害による枯死は小型の個体が受けやすいようです。
これは、湿潤な年が続いた後で、干ばつが起こったことにより、野生動物による食害が発生しやすくなった可能性があります。野生動物の食害を受けないで枯死した個体は、わずか1個体でした。移植によるダメージを受けた可能性のある個体だけを考慮すると、移植後の生存率は98.5%にもなります。移植は有効であると判断されました。
移植時に様々な処理を試みましたが、これらは移植後の生存率や生長量には影響がありませんでした。ただ、定期的な水やりについては、移植した年は湿潤でよく雨が降ったため、その影響を推測することが出来ませんでした。しかし、移植時の水やりは、根の安定や発根の刺激のために必要であると考えられます。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
A. pechueliiに関しては移植は有効なようです。移植先の環境が異なると上手くいかない場合もありますが、A. pechueliiの場合は自生地が広く、移植先が豊富にあったことが幸いしたようです。とは言え、開発が進めばA. pechueliiの生息地は減少し続けるでしょう。その時に、有効な移植先がなかったり、残された自生地に過密に移植されるようなことがなければ良いのですけどね。


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多肉植物には有毒なものもあります。しかし、毒性があると言うことは、人体に対して生理作用を及ぼすと言うことでもあり、民間薬として利用される可能性があります。毒性と言えばまずユーフォルビアが思いつきますが、実はBoophoneと言う巨大な球根植物も有毒であり、民間で利用されているらしいのです。詳細は知りませんでしたが、調べてみるとBoophoneが原因と思われる事件が発生しているようです。それは、Wj du Plooyらの2001年の論文、『Poisoning with Boophane disticha: a forensic case』です。タイトルではBoophaneとなっていますが、現在はBoophoneが正しい表記です。しかし、論文中では元の表記であるBoophaneですから、そのように呼びましょう。さて、Boophoneにより引き起こされた事件とは一体何なのでしょうか?

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Boophone disticha
『Curtis's botanical magazine』(1825年)より。


Boophane distichaの球根を食べると、鎮静、鎮痛、幻覚、意識喪失、非合理な行動、多弁、昏睡などの症状を引き起こします。Boophaneは悪霊を追い払い、幸運をもたらし、雨乞いに利用する目的で小屋の近くで栽培されます。
さて、事の経緯はこうです。南アフリカのヒーラー(伝統的医術者)が、ある人に魔術がかけられていると思い、魔術をかけた人物を突き止めようとしました。ヒーラーはその人にBoophane調合液150mLを飲ませました。しかし、Boophane調合液を飲んだ人は自身が襲われているという幻覚に見舞われ、拳銃を抜き無差別に発砲しました。発砲により1名が死亡し、数名が負傷しました。発砲した人物は逮捕され、Boophane調合液は分析のために南アフリカ警察法医学局に送られました。
クロマトグラフや質量分析によりBoophane調合液に含まれる化合物が同定されました。同定されたのは、アルカロイドであるBuphanidrin、Buphanine、Crinamidine、Undulatine、さらに揮発性油であるEugenolでした。さて、Buphanineにはスコポラミン同様の作用があり、制御不能な行動、幻覚、興奮、昏睡を引き起こします。Buphanidrineには麻薬性があり、幻覚作用があります。Eugenolには鎮痛作用があります。被告の不合理な行動は、Boophaneに含まれるBuphanineとBuphanidrineの摂取によるものと考えられます。ただ、この場合のEugenolの影響は不明です。


以上が論文の簡単な要約です。
伝統医学には魔術的要素があります。薬草を治療に用いるだけではなく、占いや呪術にも利用されるのです。今回の事件もまじない的な利用方法でした。
即死するような毒性ではないとはいえ、Boophoneには非常に強い作用があることが分かりました。この論文に取りあげられた事件は、Boophoneによる異常行動、興奮作用、幻覚作用が強く出た結果なのでしょう。とは言え、わざわざ球根から汁を搾らなければならないため、事故でうっかり搾り汁を飲んでしまうことはないでしょう。ですから、ただ園芸植物として栽培する分には、特に問題となるようなことは考えにくいはずです。むしろ、ユーフォルビアの方が厄介かも知れませんね。


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アフリカの乾燥地にはアフリカゾウやクロサイなど、巨大な草食動物が分布します。クロサイは柱サボテン状のユーフォルビアを食べるためになぎ倒してしまうため、クロサイを保護するために導入した地域ではユーフォルビアが激減しています。アフリカゾウも木をなぎ倒してしまいますから、乾燥地の貧弱な植生にはかなりの負担がありそうです。本日はそんなアフリカゾウとバオバブの関係に焦点を当てた、Amanda Khosaらの2023年の論文、『The impact of elephants (Loxodonta africana) on the Baobab (Adansonia digitata) in a semi-arid savanna』をご紹介します。

バオバブとアフリカゾウ
アフリカゾウは樹木の生存に多大な悪影響を与えてます。樹皮を剥いだり、枝を折ったり、根こそぎにしたりします。アフリカゾウに傷付けられると、菌に感染しやすくなり、火事被害に遭いやすくなったり、シロアリなどの昆虫の被害に遭いやすくなります。バオバブの幹は柔らかいため、アフリカゾウによる被害を受けやすい樹木です。バオバブは膨大な水分を貯蔵しており、特に干ばつや乾季にはアフリカゾウが利用します。

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Baobab(Adansonia digitata)
『Field Museum news』(1936年)より。


アフリカゾウによる損傷
ジンバブエ南東部のlowveldにある2つの自然保護区を比較しました。1つはアフリカゾウがいるエリアで、もう片方はアフリカゾウがいないエリアです。アフリカゾウのいないエリアでは、バオバブの損傷は見られませんでした。しかし、アフリカゾウがいるエリアでは、損傷のないバオバブは3%に過ぎませんでした。
ただ、バオバブの単位面積当たりの個体数は、アフリカゾウのいるエリアの方が多いのですが、これはアフリカゾウとは関係がないと考えられます。バオバブは標高が低い地域に生えますが、アフリカゾウがいないエリアはいるエリアより標高が高いため必ずしも適した環境とは言えません。また、果実を食べて種子を運搬するヒヒがいないため、新たな実生が少ないことも原因である可能性はあります。ただ、バオバブの寿命の長さを考えた場合、新たな実生の少なさはそれほど問題ではないのかも知れません。

損傷の具合
観察からは、幹周りが5m(幹の直径が1.59m)以上では、アフリカゾウによる樹皮の剥ぎ取りが起きています。小さなバオバブは枝が食べられていました。しかし、大きなバオバブほどアフリカゾウの被害に遭いやすいことから、アフリカゾウは意図的に選択している可能性があります。これは、効率的に摂取するための最適化を意味します。
アフリカゾウのいるエリアでは、バオバブは食害にあっていましたが、枯死したバオバブには遭遇しませんでした。これは、バオバブの損傷に対する回復力があるためです。しかし、これはたまたま調査地域内での話しで、調査地域外ではバオバブがアフリカゾウに倒される様子を目撃しています。正しいバオバブの枯死率を知るためには、個々のバオバブの長期的なモニタリングが必要です。

アフリカゾウの影響
今回観察したアフリカゾウのいる地域のアフリカゾウの生息密度は1.5頭/平方キロメートルであり、ジンバブエ政府が推奨する0.75頭/平方キロメートルを超えています。過去の報告でも、アフリカゾウの生息密度の上昇は、森林の構造と組成を大きく変えてしまうことが知られています。バオバブの損傷跡からは、アフリカゾウの被害は過去5年間が最も被害が大きかったことと、古い時代から累積的に被害に遭っていることが分かりました。これは、1981年から2010年にかけての降雨量の平均が460mmであったのに対し、2019年は50〜200mmと少雨であったことに起因しているのかも知れません。また、アフリカゾウのいないエリアのバオバブは、幹の面積が33%大きく、樹冠が48%大きく、樹木の高さが24%高いことが分かりました。アフリカゾウによりバオバブは生長が抑制されている可能性が高いことを示しています。ジンバブエ政府は過密なアフリカゾウを移送する計画を開始しました。400頭が移送される計画で、現在101頭がザンベジ渓谷下流域に移送されています。

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Adansonia digitata
『Flora de Madagascar et des Comores』(1955年)より。


最後に
以上が論文の簡単な要約です。
論文ではアフリカゾウの被害にあったバオバブの写真が掲載されていますが、少し齧られているでは済みません。幹の周囲をぐるりと一周、綺麗に樹皮が剥ぎ取られています。樹皮は乾燥に耐えるためにも必要でしょうから、よくもまあ枯死しなかったものです。どれも巨大なバオバブでしたから、貯め込んだ水分で耐えたのでしょう。
しかし、アフリカゾウの数のコントロールとは難しいものなのでしょうか。本来的には増えたり減ったりしながら、適正数になるような気もしますが、何故増え過ぎてしまったりするのか、よく分かりません。近年の干ばつでバオバブに対する被害が拡大している様子ですが、それならアフリカゾウは数を減らして適正密度になるような気がします。とても不思議です。


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多肉植物は様々なグループがありますが、高度に多肉化した植物はサボテンやユーフォルビアなど限られたグループだけです。私が育てていないグループでは、旧ガガイモ科(今はキョウチクトウ科)の多肉植物があります。旧ガガイモ科は詳しくないため、とりあえず思いついたHoodiaの論文を少し見てみました。すると、Hoodia gordoniiと言う種類の旧ガガイモ科植物について、何やら成分についてあれこれ調べているようでした。

植物は薬にならない
実は地元の植物に何らかの薬効成分があるのではと調べた論文と言うのは沢山あります。しかし、有効成分が含まれていたとしても、精製した成分そのものならともかく、基本的に植物自体はまったく薬にはならないものです。極微量に含まれる成分を抽出するのは非効率で、しかも大抵は化学合成薬に比べると効果はイマイチです。ですから、この手の研究は世界中で沢山行われていますが、実になったものはほとんどありません。古来より利用されてきた漢方薬のようなものならともかく、新たに薬草を探そうと言う試みは得てして上手くいかないものです。

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Hoodia gordonii
『Curtis's botanical magazine』(1878年)より。Hoodia bainiiとして記載。


Hoodiaと痩身効果
始めはHoodiaもそうだろうと思いましたが、ちょっと様相が異なるのです。普通は薬効成分がありますくらいで終わるのですが、Hoodia gordoniiについては同じような論文がいくつもあるのです。妙に思って見てみたら、何やらHoodia gordoniiには痩身効果があるかも知れないと言われているようです。そして、それがかなり期待されている様子が分かります。どういうことなのでしょうか?

誇大広告に踊らされる人々
ちょうど、その経緯を記したThomas Brendleの2020年の論文、『The Rise and Fall of Hoodia: A Lesson on the Art and Science of Nature Product Commercialization』を見つけました。概要を読むと大まかな経緯が分かりました。曰く以下の如くです。
「Hoodiaは1997年から2007年にかけて、名声が悪名に変わりました。減量効果について研究開発中であるにも関わらず、深妙な薬とされ熱心な信者に販売するビジネスが横行しました。Hoodiaを巡る誇大広告は、医薬品開発者がプロジェクトを中止し、販売業者に対する訴訟で誇大広告が何の根拠もないことが明らかになり止まりました。一方、研究開発には数百万ドルを費やされ、偽の主張を信じて多額のお金を払った人もいます。」
どうやら、Hoodia gordoniiには痩身効果は認められなかったようです。しかし、販売業者は飛びついて、痩せ薬として販売したことが分かります。

薬効はなし
Hoodia gordoniiの薬理効果を確認はなされており、例えばChrystian Araujo Pereiraらの2011年の論文、『Efficacy and toxicity of Hoodia gordonii commercial powder used to combat obesit』を流し見ると、以下のような内容でした。
「Hoodia gordoniiから配糖体P57が単離され、食欲の抑制効果について関心が高まっています。しかし、そのような効果は、市販品のH. gordonii粉末については評価も証明もされておらず、有効性や安全性を保証する科学的根拠はありません。それらを確認するために、ラットにH. gordoniiを4週間に渡り飲ませました。血液をはじめとした様々な検査の結果、期待した食欲抑制や肥満治療につながる効果は確認されませんでした。」
結局はHoodia gordoniiには痩身効果はないようです。薬として販売するためには、薬理効果や安全性を科学的に確認する必要があります。ですから、この時点で販売されていたHoodia gordonii粉末は、製剤ではなく健康食品のようなものだったのでしょう。だとしても、安全性のあやふやなものを販売してしまうことに驚きますが、そのような怪しげなものに手を出してしまう人々にも驚かされます。やはり、「痩身効果」と言う言葉は飽食の現代人を引き寄せる魔力があるようです。

Hoodia gordonii製品の氾濫
Hoodia gordoniiの流行の具合については、M. Neelika Jayawardaneの2011年の論文、『Impenetrable Bodies/Disappearing Bodies: Fat American Celebrities, Lean Indigenous People, and Multinational Pharmaceuticals in the Battle to Claim Hoodia gordonii』に詳しいので見てみましょう。
「Hoodia gordoniiを含むと言う製品は、2000年代に米国市場に氾濫しました。数十のブランドの広告は、何百万人ものアメリカ人を引き締まった魅力的な体に変えることを約束しています。Hoodiaの食欲を奪うと言う主張は、過剰な食糧爆撃が蔓延する米国の状況において、死に対する解毒剤と同じくらい強力です。」
米国においてHoodia gordonii製品が爆発的に流行したことがうかがえます。この論文のタイトルは面白くて、「Hoodia gordoniiの権利を争う太った米国のセレブ、痩せた原住民、そして多国籍製薬企業」と言うものです。有料の論文なので概要しかわかりませんが、肥え太った先進国の人間のために、痩せた原住民が収奪され、先進国の多国籍製薬企業が肥え太ると言う構図が透けて見えます。


不平等な世界
では、Hoodiaの原産地の人々はどう関わっているのでしょうか? ここでは、Saskia Vermeylenの2007年の論文、『Comtextualizing 'Fair' and 'Equitable': The San's Reflections on the Hoodia Benefit-Sharing Agreement』を見てみましょう。
「生物多様性条約(CBD)は、生物多様性の利用による利益の平等な分配を要求していますが、公平性(Fair)と平等性(Equitable)の定義はしていません。サン族が伝統的に利用してきたHoodiaについて、企業は何の事前の同意もなく特許を取得しましたが、遅ればせながら利益分配協定が締結されました。先住民族と企業の間の知識と権力の重大な不平等があり、生物多様性条約の深刻な弱点があります。」
これはよくある話です。先進国の巨大多国籍企業が開発途上国で相手が読めない契約書にサインさせて、実質的な奴隷労働をさせたりと言うことが実際にありました。そこまでいかなくても、相手は相場も知りませんし、企業側は意図的に詳細を隠すためそもそも平等な話し合いにはならないのです。また、自然物に特許を取ることは随分と図々しい話にも思えますが、例えば巨大多国籍企業が開発途上国の河に覆いをしてしまい、もともと暮らしていた住民から河の水の使用料を徴収することすらありますから、それほど驚くべきことでもないでしょう。


最後に
Hoodia gordoniiに含まれる成分に痩身効果が期待されましたが、結局は痩身効果はなかったわけです。しかし、問題は薬理効果どころか安全性すら未確認なものを誇大広告をかけて売り捌いたことです。数十のブランドがあったようですから、相当にHoodia熱が加熱したのでしょう。ある種の馬鹿騒ぎであり実に愚かな感じがしてしまいます。
しかし、このような時に流行の熱に浮かされないようにしないと、意味がないものに投資して懐が寒くなるだけではなく、健康に害がおこる可能性もあったのです。日本でも怪しげな健康食品やサプリメントがありますが、実際に何が入っていて期待される効果があるのかは確認されていないものばかりです。怪しげなサプリメントを服用したことによる肝機能障害は頻繁していますし、ステロイドなどの強力な薬品が成分に記載されずに入っているケースもよくあります。これをもって他山の石とし、よくよく考えて騙されないようにしたいものです。



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多肉植物は葉挿しで増やすことが出来るものが多くあります。葉挿しする時に、エケベリアなどは用土に挿さないでそのまま置いておくだけで発根したりします。この時に、霧吹きで湿らすこともありますが、葉の表面から水分を吸収するのだと言う人もいます。個人的には発根のために空中湿度を高くする意味合いが強いような気もします。しかし、その程度はどうあれ、葉からの水分吸収はありそうなことです。実際にはどうなのでしょうか? 少し調べてみました。見つけたのは、Marc Fradera-Solerらの2023年の論文、『Revisiting an ecophysiological oddity: Hydathode mediated foliar water uptake in Crassula species from southern Africa』です。

FWUとは?
植物の根以外からの大気中の水分の取り込みについては、長年の議論がありました。しかし、現在では様々な植物の葉や茎からの水分吸収が報告されています。葉面からの水分吸収(FWU)は、水ポテンシャル勾配が減少する、一般的に空中湿度が高い場合の現象とされて来ました。しかし、急な水ポテンシャル勾配は、季節的な降雨や定期的に空中湿度が高まる乾燥した塩分の高い地域などで発生する可能性があります。

FWUの可能性
乾燥地に生える多肉植物の自生地の多くは土壌水分は極端に少ないものの、海洋の影響により空中湿度が高くなり霧や露を発生させます。このような環境は、アタカマ砂漠やソノラ砂漠の一部をなすバハ・カリフォルニア、アフリカ南部のKarooなどが知られてします。サボテンはアレオーレを介した水分摂取が疑われており、おそらくトゲや毛が霧を集めることにより促進されます。アフリカ南部ではAnacampseros科やハマミズナ科(ツルナ科、メセン科、マツバギク科)の多肉植物がFWUを疑われており、その表面には特殊な毛状突起や鱗片を持っています。また、特に注目を集めているのは、アフリカ南部のCrassula属で、長年に渡りFWUを疑われてきました。Crassulaはアフリカ南部の様々な環境に適応してきました。

クラッスラ属研究
初期の研究では、Crassulaに特有な葉の表面の毛状突起や非常に豊富な水孔を介してFWUが発生する可能性が推測されています。Tolken(1974年、1977年)は、Crassulaは十分に乾燥し脱水した条件では、葉の表面から水分(色素液)を吸収することを観察しました。Martin & von Willert(2000年)は、Crassulaは葉の表面を湿らせた後の葉の厚みを計測することにより、FWUが可能であることを示しました。しかし、湿潤の直接的な影響と蒸散の減少による間接的な影響を区別していないため、水孔を介したFWUであるかは分かりませんでした。

研究されたクラッスラ
著者らは、CrassulaのFWUの能力は、葉の表面の構造に強く影響されるのではないかと言う仮説を立てました。この研究では南アフリカ原産のCrassula属9種類を使用しました。使用したのは、アフリカ南部の南西および西海岸に沿って分布するコンパクトな6種類のCrassulaであるC. ausensis subsp. titanopsis、C. deceptor、C. fragarioides、C. plegmatoides、C. sericea var. sericea、C. tectaと、冬に降雨量が多いKarooのコンパクトではない3種類のCrassulaであるC. ovata、C. multicava subsp. multicava、C. perforata subsp. perforataです。

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Crassula deceptor
『Mitteilungen der Botanischen Staatssammlung Munchen』(1966-1968年)より、Crassula artaとして記載。「稚児姿」と呼ばれています。


FWUの確認試験
植物を乾燥させた状態で、蛍光色素が葉の水孔から吸収されるか顕微鏡で観察したところ、C. perforata以外の8種類は水孔を介したFWUの可能性が示されました。

FWUの理由
Kalanchoe、Aichryson、Sedumなどのベンケイソウ科植物は、一般に辺縁の毛状突起あるいは単一の毛状突起しか持ちません。しかし、Crassulaは層状の毛状突起を持ち多肉植物である数少ない例となっています。Crassulaの分布するKarooは湿度が高く、夜間と早朝の霧や露に依存している可能性があります。実際にCrassulaは海沿いの斜面に生え、湿度の高い海からの風が遮断されることにより、霧や露が発生します。

FWUしない理由
C. perforataではFWUは確認されませんでしたが、Tolken(1974年、1977年)の報告ではC. rupestrisとC. macowaniana、C. brevifoliaはFWUの兆候を示しませんでした。これらの種には共通点があり、無毛で疎水性のワックス状の葉を持ち、比較的大型となり低木状となります。大型であることから広域な根系を持ちます。

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Crassula ausensis
『Mitteilungen der Botanischen Staatssammlung Munchen』(1966-1968年)より、Crassula littlewoodiiとして記載。

葉の表面構造
葉の表面構造は非常に多様でした。C. ovataとC. multicavaの葉の表面は無毛で、まばらに白色の結晶の堆積が見られました。C. perforataは、無毛ですが葉の縁に沿って円錐形の毛状突起が見られました。C. deceptorとC. fragarioides、C. plegmatoidesは乳頭状の突起を持ち、C. sericeaは長い毛状突起がありました。C. ausensisとC. tectaは、鎖骨毛状突起と大型水孔細胞特異的芽細胞を有していました。また、C. ausensisやC. deceptor、C. tectaは結節(隆起)と窪みが存在しました。C. ausensisとC. tectaは、結節は毛状突起の集合部位と一致しました。

葉の湿潤性
Crassulaには、葉に多様な彫刻が見られます。これらは、過度の日射量を反射し、蒸散による水分損失を低減させます。しかし、これらの構造は露の形成にも関与している可能性があります。ただし、葉の表面は親水性から疎水性まで様々でした。例えば、C. tectaでは粗い親水性の葉の表面で、水分は毛細管現象により急速に広がります。一方、C. ausensisはかなる緩やかで目立ちませんでした。逆に水を弾く「ロータス効果」が見られるC. deceptorとC. plegmatoidesは超疎水性です。

葉の湿潤性とFWU
葉の湿潤性はFWUには、厳密には関係がありません。一般により高い湿潤性を持つ場合はより高いFWUの能力があるとされ、疎水性の葉はFWUの恩恵が少ないとされます。著者らの研究結果からは、一見して疎水性の葉を持っていても、水孔を介したFWUが可能でした。しかし、実験では典型的な雨粒のサイズである直径約2mm程度の水滴により行いましたが、自然条件下で発生する直径0.5mm程度の霧では湿潤性は異なるのかも知れません。いずれにせよ、Crassulaの葉に見られる複雑な表面構造は水孔のFWUへの仲介を促進し、一見して疎水性の種でもFWUが促進される可能性があります。

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Crassula perforata
『Drought resistant plants』(1942年)より。「十字星」、「南十字星」、「早乙女」などと呼ばれているようです。


最後に
以上が論文の簡単な要約です。
Crassulaはすべてではありませんが、葉からの水分吸収が可能であるという結果でした。しかし、まだ問題も残されています。論文にもあったように、疎水性で水を弾く場合、なぜ水を弾いてしまうのに水分吸収が可能であるかが分かりません。著者らの考えである水滴のサイズによるとしたら、葉挿しに霧吹きしてもあまり沢山かけると意味がないということになります。

また、私が一番疑問に思ったのは水分の吸収量です。植物の質量に対してどれほど吸収されるのか、実際に生存するために有用なだけの水分を得ることが出来るのかということです。葉からの水分吸収が可能であるということと、そのことが本当に意義があるのかどうかはまったく別の話でしょう。本当に意味があるのでしょうか? 疎水性の高い場合は、水分吸収が可能であっても極少量で、実際には役に立っていない可能性も否定出来ません。さらなる研究が望まれます。


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昨日の記事で、Ceraria属がPoutulacaria属に吸収されて消滅したという論文をご紹介しました。Poutulacariaは2種に旧Ceraria5種が加わり、合計7種となりました。その見分けが論文にまとめられていたのでご紹介します。昨日に引き続き2014年の論文、『Phylogenetic relationships in the Didiereaceae with special reference to subfamily Portulacarioideae』からの引用です。


・高さ30cmまでの矮性亜低木。
 枝は広がり枝垂れる。
 →P. pygmaea
・高さ0.3〜5mまでの低木から小高木。
 生長すると枝は直立する傾向がある。
 →②


・葉は平らで、円形から倒卵形。
 →③
・葉は円筒形や円柱状。落葉樹。
 →⑥


・葉は30〜70mm × 30〜40mm。
 花序は高さ1〜5m。
 →P. armiana
・葉は4〜25(56)mm × 4〜25(68)mm。
 花序は枝や短枝から10cm。
 →④


・密に枝分かれし葉が茂る。
 高さ1〜4m。常緑で明るい緑色。
 →P. afra
・まばらに枝分かれし葉は少ない。
 高さ0.3〜3m。落葉し灰緑色。
 →⑤


・葉は4〜8mm × 3〜8mm。
 葉は幅よりやや長いことが多い。
 花序は花柄がない。
 →P. fruticulosa
・葉は10〜35(56)mm × 10〜30(68)mm。
 葉の幅と長さが同じくらい。
 花には花柄がある。
 →P. carrissoana


・枝は太く二股に分かれる。
 先端の枝では太さ3〜5mm。
 葉の長さは3〜5mm。
 花序は1〜15mm。
 →P. namaquensis
・枝は細い不規則に分岐。
 先端の枝では太さ2〜3mm。
 葉は長さ6〜15mm。
 花序は10〜40mm。
 →P. longipedunculata

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Poutulacaria namaquensis
=Ceraria namaquensis


さて、Ceraria属がPoutulacaria属に吸収されてしまったわけですが、Poutulacaria属は現在7種類が記載されています。せっかくですから、新しい学名と異名と記載年の一覧を示しましょう。
※PoutulacariaとCeraria以外の異名は省きました。

1, Poutulacaria afra, 1787
 異名:
    Poutulacaria portulacaria, 1915
2, Poutulacaria namaquensis, 1862
 異名:
    Ceraria namaquensis, 1912
    Ceraria gariepina, 1912
3, Poutulacaria fruticulosa, 2014
    異名:
    Ceraria fruticulosa, 1912
    Ceraria schaeferi, 1915
4, Poutulacaria pygmaea, 1928
 異名:
    Ceraria pygmaea, 1996
5, Poutulacaria carrissoana, 2014
 異名:
    Ceraria carrissoana, 1939
    Ceraria kuneneana, 2008
6, Poutulacaria longipedunculata, 2014
 異名:
    Ceraria longipedunculata, 1961
    Ceraria kaokoensis, 2007
7, Poutulacaria armiana, 1984


先のビッグバザールでP. namaquensisを入手したわけですが、調べてある程度詳しくなるとついつい欲しくなってしまうのは困ったことです。Poutulacariaはディディエレア科に含まれますから、Alluaudiaも近縁です。今回のビッグバザールではAlluaudiaも複数種見かけました。しかし、この仲間を集め始めると大変というか、手を広げ過ぎるためしばらくは自重します。


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近年、小型のコーデックスであるCeraria pygmaeaが結構人気があるようです。見た感じからして、いかにもスベリヒユ科ですが、その後整理されディディエレア科ポルツラカリア亜科とされています。これは、Alluaudia、Didierea、Poutulacaria、Ceraria、Decaryaなどが非常に近縁であるということを受けてのことです。その根拠となったのは、Peter V. Bruynsらの2014年の論文、『Phylogenetic relationships in the Didiereaceae with special reference to subfamily Portulacarioideae』です。遺伝子解析の結果を見てみましょう。私が少し解説を加えます。ちなみに、ディディエレア科はサボテン科に近縁で、3つの亜科に分けられます。

          ┏━━ディディエレア亜科
      ┏┫
      ┃┗━━カリプトロテカ亜科
  ┏┫      
  ┃┗━━━ポルツラカリア亜科
  ┫
  ┗━━━━サボテン科


ディディエレア亜科
カリプトテカ亜科

ディディエレア亜科は、Alluaudia属、Didierea属、Decarya属、Alluaudiopsis属からなります。それぞれ単系統で綺麗に分かれていますが、Decarya属だけはDidierea属に組みこまれています。DidiereaとDecaryaが非常に近縁であることは意外でした。Alluaudia属は、A. comosa(Didierea comosa)、A. dumosa(Didierea dumosa)、A. ascdndens(Didierea ascendens)、A. humberii(Alluaudia decaryi)、A. procera(Didierea procera)、A. montagmaciiからなります。Didierea属は2種類あり、D. madagascariensis(D. mirabilis)とD. trolliiからなります。Decarya属はD.madagarcariensis(Alluaudia geayi)のみの単型属です。Alluaudiopsis属は、A. marnierianaとA. fiherenensisからなります。
また、カリプトテカ亜科のCalyptrotheca属もここに示しました。Calyptrotheca属は2種類あり、C. somalensisとC. taitensis(C. stuhlmannii)からなります。


                     Alluaudia
                        ┏A. comosa 
                          ┏┫ 
                          ┃┗A. dumosa 
                      ┏┫  
                      ┃┗━A. ascendens
                  ┏┫ 
                  ┃┗━━A. humbertii
                  ┃
              ┏┫┏━━A. procera
              ┃┗┫
              ┃    ┗━━A. montagnacii
              ┃    Didierea
              ┃    ┏━━D. madagasacriensis
          ┏┫┏┫
          ┃┃┃┗━━D. trollii
          ┃┗┫   Decarya
          ┃    ┗━━━D. madagascariensis
          ┃     Alluaudiopsis
      ┏┫┏━━━━A. marnieriana
      ┃┗┫
      ┃    ┗━━━━A. fiherenensis
  ┏┫    カリプトテカ亜科
  ┃┗━━━━━━C. somalensis
  ┫
  ┗━━━ポルツラカリア亜科

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Alluaudiaの葉の比較
『Adansonia』(1961年)より。
上段がA. procera、中段かA. ascendens、下段がA. motagnacii。


231120004853621~2
Alluaudia ascdendens
231120004836459~2
Alluaudia humbertii
231120004911588~2
Alluaudia procera
『Flora de Madagascar et des Comores』(1963年)より。


231120004934450~2
Calyptrotheca(右)
『Die Vegetation de Erde』(1915年)より。
右上はC. somalensis、右下はC. stuhlmannii(C. taitensisの異名)。


231120004955458~2
Didierea trollii
『Adansonia』(1961年)より。


ポルツラカリア亜科
ポルツラカリア亜属はPortulacaria属とCeraria属からなります。以下に見るように、Portulacaria属とCeraria属が分離出来ません。実はCeraria pygmaeaはもともとはPortulacaria pygmaeaとして記載され、その後に殊更の根拠もなくCeraria属に移された経緯があります。分離の基準はそれほどはっきりしていなかったのかも知れません。ちなみに、C. namaquensisも初めはPortulacariaとして記載されています。

                  ┏━P. armiana
              ┏┫
              ┃┗━C. namaquensis
          ┏┫
          ┃┗━━C. longipedunculata
          ┃
      ┏┫┏━━C. fruticulosa      
      ┃┗┫
      ┃    ┗━━C. pygmaea
  ┏┫
  ┃┗━━━━C. carrissoana 
  ┫
  ┗━━━━━P. afra

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Portulacaria afra(上)
『The flora of South Africa with synoptical tables of the genera of the higher plants』(1913年)より。


231120004950662~2
Portulacaria namaquensis
=Ceraria namaquensis
『Annals of botany』(1912年)より。
Ceraria gariepinaとして記載。


Portulacaria属とCeraria属を分離出することが出来なず、明らかに1つのまとまりのあるグループとなっています。つまり、Portulacaria、あるいはCerariaに統一する必要があるのです。学名は先に命名された方が優先されるという「先取権の原理」に従います。この場合は、1912年に命名されたCeraria H.Pearson & Stephansより、1787年に命名されたPortulacaria Jack.が優先されるのです。つまり、今までCeraria属とされてきた5種類はPoutulacaria属となります。キュー王立植物園のデータベースでも、すでにCeraria属はPortulacaria属の異名とされています。Ceraria属は消滅してしまいました。Ceraria pygmaeaもPortulacaria pygmaeaに変更されています。
ちなみに、ポルツラカリア亜科はアンゴラから南アフリカに分布していますが、カリプトテカ亜科は東アフリカ原産、ディディエレア亜科はマダガスカル原産です。系統樹の分岐を見ると、アフリカ南西部からアフリカ東部、そしてマダガスカルに到達したように見えます。サボテン科との近縁性からは、アフリカ大陸と南アメリカがかつて1つだったころまで、共通祖先は遡るのかも知れませんね。
さて、このような属レベルの変更は、遺伝子解析が発展したため、これからも続くのでしょう。今後も出来る限りこのような変更について、ご紹介出来ればと考えております。


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多肉植物のみならず植物を栽培するに際して、日照や灌水に並ぶ重要な要素は用土でしょう。多肉植物の培養土は市販品もありますが、自身で配合するという方もおられるでしょう。多肉植物の用土の組み合わせはどのようなものご良いのでしょうか? 本日は多肉植物の培養土の組み合わせの良し悪しを調べた、Vishal Lodhiらの2021年の論文、『Influence of potting media on growth of succulent under shade net condition』を見てみましょう。

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Crassula ovata
『The botanist's repository』(1797-1811年)より。Crassula obliquaとして記載。

試験は2020年12月から2021年3月まで、インドのSHUATS園芸局園芸研究所で実施されました。50%遮光下で、5種類の多肉植物を3種類の培養土で栽培しました。用いた多肉植物は、Crassula ovata(※1)、Pachyphytum hookeri、Senecio rowleyanus(※2)、Sedum rubrotinctum(※3)、Crassula capitella(※4)です。用いた培養土の組み合わせは、
①土+砂+ミミズ堆肥、
②土+砂+ミミズ堆肥+木炭、
③ココピート+パーライト+FYM(※5)
を試験しました。

※ 1 ) 「金のなる木」。
※ 2 ) 「緑の鈴」、「グリーンネックレス」。現在の学名は、Curio rowleyanus。
※ 3 ) 「虹の玉」。現在の学名は、Sedum ×rubrotinctum。
※ 4 ) 「火祭り」。
※ 5 ) FYMとは堆肥などの有機物資材。

栽培90日後の多肉植物の背の高さと葉の枚数、葉の厚さ、葉の面積、子株の数、根の長さ、根域面積、根の本数を測定しました。
C. ovataは、①は背の高さと葉の枚数、根の長さが優位、②は葉の厚さと葉の面積、子株の数、根の本数が優位、③は葉の面積と子株の数、根域面積、根の本数が優位でした。
P. hookeriは、①は特に優位な項目はなく、②は葉の枚数と葉の厚さ、葉の面積、子株の数、根の長さ、根域面積、根の本数で優位、③は葉の数と葉の厚さ、葉の面積、子株の数、根域面積、根の本数で優位でした。
S. rowleyanusは、①は背の高さと葉の枚数で優位、②は背の高さと葉の厚さ、葉の面積、子株の数、根の長さ、根域が優位、③は葉の枚数と根域面積、根の本数で優位でした。
S. rubrotinctumは、①は特に優位な項目はなく、②は葉の面積と子株の数、根の長さで優位、③は葉の厚さと葉の面積、根域面積で優位でした。
C. capitellaは、①は特に優位な項目はなく、②は葉の面積と子株の数で優位、③は葉の枚数と葉の厚さ、子株の数、根の長さ、根の本数で優位でした。

以上が論文の簡単な要約です。
しかし、この論文の結論は5種類の多肉植物の生長具合を比較していますが、今ひとつ私にはピンときません。異なる種の多肉植物は生長も異なりますから、直接の比較はナンセンスです。単純に生産性を見ているようですが…。では、同じ植物で異なる培養土で生長が変わるかを見るべきです。その視点で見てみると、どうでしょうか?
*Crassula ovata(金のなる木)
5種類の中では最も大型で、唯一木質化した幹を持ちます。①は背の高さと葉が枚数は多いものの、子株は少なくなっています。逆に②や③は背の高さや葉の枚数は少なく、子株は多いものでした。背の高さや葉の枚数と子株の数はtrade-offの関係にあるのでしょう。金のなる木は木質化し大型であることから、子株を作るためのコストが高いということかも知れません。おそらく、金のなる木の培養土は③が最も適した資材なのでしょう。②は全体的に高いものの、葉の枚数や根の長さがかなり低いため、どうしても③に劣ります。
*Pachyphytum hookeri
P. hookeriは非常に多肉質な丸い葉を持つ、やや立ち上がるロゼットを作ります。こちらは圧倒的に②が優れており、葉の枚数は①の1.9倍、子株の数も①の1.75倍と、かなりの差がありました。③も①よりも高いのですが、全体的に②より劣り、根の長さが低めでした。
*Senecio rowleyanus(緑の鈴)
緑の鈴は長く垂れ下がる茎に球状の多肉質の葉がつきます。緑の鈴は、③の培養土が非常に良好です。③は葉の厚さと葉の面積が高い代わりに、葉の枚数が少ないものでした。これは、球状の葉の1つ1つが大きく充実しているためではないでしょうか。逆に①や②の培養土では、小さな葉が沢山ついているようです。
*Sedum rubrotinctum(虹の玉)
虹の玉は葉の丸いセダムですが、培養土の違いによる差が非常に少ないのが特徴です。全体的に誤差範囲レベルの違いしかありません。ただ、②は葉の面積と子株の数、根の長さが良好です。
*Crassula capitella(火祭り)
火祭りは多肉質の平たい葉を持ちロゼットを作ります。火祭りは培養土の違いによる差が最も小さかったようです。ただ、③は培養の枚数や葉の厚さで、微妙に優勢でした。

次に培養土の特徴を見てみましょう。①の培養土は土と砂とミミズ堆肥からなります。ミミズ堆肥は養分が豊富で団粒構造を作り、微生物が増えやすく排水にも寄与します。②は①に木炭を加えたものです。木炭は通気性と保肥、排水に寄与します。通気性や栄養の持ちが良くなるでしょう。③はココ椰子の実の繊維を発酵させたもので、ピートモスと異なりpH調整の必要はありません。保水力や透水性、通気性に寄与します。パーライトも加えられていますが、これはよく分かりません。というのも、パーライトには黒曜石から作られるものと、真珠岩から作られるものとがあり、それぞれ排水性と保水性という真逆の作用があるからです。まあ、いずれせよ透水性は高まるでしょう。

園芸店やホームセンターには、様々な培養土が販売されており、その内容物は見た目からして異なります。個人ブログなどで使用した感想を見ることは出来ますが、生育環境が異なることもあり、最終的な良し悪しは自身で確かめてみるしかありません。既製品は販売中止や、いつも行く園芸店での取り扱いを止めてしまったりもします。個人的には自分で配合したほうが安上がりで、かつ生育環境に合わせられるのでおすすめです。多肉植物の栽培は排水性が重要ですが、これは水やりの間隔に合わせる必要があります。少し保水力を高め乾きにくくして水やりの回数を減らすのか、排水性を重視して乾きやすくして水やりの回数を増やすのか、個々人のライフスタイルや好みによるでしょう。この論文はあくまで地元で入手しやすい資材を用いた園芸生産性に関するものですから、あまり我々の参考にはならないかも知れません。しかし、すべての多肉植物に適した培養土はないであろうことを教えてくれます。


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地球規模の気候変動が問題となっています。原因の1つとされる大気中の二酸化炭素の増加による地球温暖化については異論もあるようです。しかし、その原因はともかくとして、現実問題として様々な異常がおきている事実は覆すことは出来ません。さて、気候変動は多肉植物が自生する乾燥地にも影響しており、サボテンが高温により枯死したり、雨が降らなくてアフリカの多肉植物が枯死するなどの報告があります。
本日は2011年に開催されたThe Ecological Society of Americaという国際会議において発表された会議資料を見てみましょう。本日ご紹介するのは、Sarah Chambliss & Elizabeth G. Kingの『Plants  behaving badly: Proliferation of a native succulent in Kenyan drylands』です。「悪い行動をとる植物」とは、どういう意味なのでしょうか?

ケニア中北部の乾燥地帯の固有種であるSansevieria volkensiiは、 ここ数十年で劇的に増加しました。このような植物群落の構造が変化は、放牧地の生態系と生産性を変化させ、牧畜民の生計を脅かす可能性があります。実際にS. volkensiiの密集した群落は、家畜や人の移動を妨げ、家畜の飼料としても価値が低く、牧畜民にとって望ましいものではありません。しかし、S. volkensiiの増殖の動態は調査されておりませんでした。

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Sansevieria volkensii
『Bulletin of miscellaneous information』(1915年)より。Sansevieria intermediaとして記載。ちなみに、Sansevieria属はDracaena属に吸収されたことから、2018よりDracaena volkensiiとなっています。

干ばつだった2009年に樹冠下(※1)のS. volkensiiは開けた場所の個体より健全であることに気が付きました。大雨が続いた2010年の再調査では、平均して30%多いramets(※2)と葉が見つかりました。樹冠下の群落は大きかったのですが、新しい葉の割合は開けた場所の群落でより大きいものでした。

※1 ) 樹冠とは樹木の枝の広がった、枝と葉が密集した部分のこと。
※2 ) rametsとはいわゆる子株のことで、株分け出来る各個体のこと。同一クローン分球体。


以上が会議資料の要約です。
簡単な報告といった感じですが、気候変動が問題とされる昨今、固有種が増えると言う思わぬ現象について述べています。内容的には樹冠の陰になった部分にS. volkensiiは生えやすいようですが、大雨のあった年は開けた場所の群落も拡大していたことから、より重要な条件は水分であることが分かります。
それはそうと、S. volkensiiの増加を問題視していますが、何が問題なのでしょうか? 移入種ではない固有種の増加は、一見して望ましいものに思えます。著者らの言う牧畜民の利便性について述べていますが、それだけではありません。生物は有限のリソースを糧に競争しているのですから、何かが増えれば代わりに何かが減ることになります。要するに、生態系のバランスが崩れてしまうということです。しかし、本来的に生態系は変化し続けるものですから、必ずしもおかしなことではないかも知れません。報告は気候変動によるものであるとは明言されていませんから、S. volkensiiの増加が自然のサイクルの一部に過ぎないのか、あるいは自然のサイクルを逸脱した異常な事態であるかは不明です。ただ、著者らはこれを良くないこととして捉えているようです。確実な事を言うには、過去を含めた気象データとS. volkensiiの分布の関係を長期に渡り監視する必要があるでしょう。



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Fockea属はアフリカに6種類分布するキョウチクトウ科の植物です。塊根や塊茎と落葉するツルを持ち、火星人(Fockea edulis)に代表されます。4種類は南アフリカとナミビアにのみ分布しますが、F. multifloraとF. angustifoliaはアフリカ南部から東アフリカまで広く分布します。問題はF. multifloraは南のザンベジ川渓谷と北のタンザニア中央部の間に分布の空白地帯があることです。その空白地帯とはマラウイのことです。
本日はJoachid Thiedeらの2010年の論文、『FILLING THE GAP: FOCKEA MULTIFLORA K.SCHUM. (APOCYNACEAE) IN MALAWI』をご紹介します。F. multifloraの分布のギャップを埋めるべく、過去のマラウイにおける調査記録を探し出し検討しました。

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Fockea multiflora
『Kunene Sambesi expedition』(1903年)より。


マラウイにおける現地調査は、1965〜1968年および1976〜1981年のBruce J. Hargreavesと、1991年のJoachim Thiedeにより実施されました。また、2つの標本がMontfort L. Mwanyamboによりマラウイ国立標本館に収蔵されています。これらの情報を精査しました。

①Joachim Thiede, 1991年
マラウイ南部Blantyre地区Blantyre-Mwanza道路の東のinselberg(残丘の1種)。花崗岩のinselbergの亀裂に、葉のないF. multifloraがいくつか生えていました。また、いくつかの乾性植物や小さなバオバブなどが伴っていました。F. multifloraにはCissus quadrangularisが巻き付いていました。

②Bruce J. Hargreaves, 1977年

マラウイ南部Phalombe地区Phalombe平原。

Bruce J. Hargreaves, 1977-1978年
マラウイ南部Machinga地区、Liwonde国立公園。Euphorbia espinosaに巻き付いたり、Adenium obesumやTalinum portulacifoliumと共に見られました。
Dudley(1994, 1997, 2001)は、Liwonde国立公園へのクロサイの再導入に関連し公園の植生を詳細に調査しました。F. multifloraは、Mopane(Colophospermum mopane)の群生するサバンナ、あるいはMopaneの森林の茂みで見られました。
また、1983年と1984年にマラウイ南部Machinga地区のLiwonde国立公園から標本が採取されています。採取地点は、1983年の標本はChinguni丘陵の麓で、1984年の標本はLikwenu川付近で採取されました。

④Scholes, 1982年
マラウイ南部のMonkey BayとNkopola Lodgeの間にあるSpearhead社のタバコ農園内。
乾燥したアカシアとバオバブの低木地帯で、F. multifloraが「支木の上に元気に生長」しているとしました。

⑤Bruce J. Hargreaves, 1978年
マラウイ中央州Dedza地区Golomoti近くで見られました。

Bruce J. Hargreaves, 1978年
マラウイ北部州Rumphi地区Njakwa峡谷において、F. multifloraは岩の露出部に生育していました。岩の亀裂に根を張り、周囲の低木に絡みついていました。
Thiede(2009年)によると、この峡谷は多肉植物に富み、Aloe、Ceropegia、Cyanotis、Dorstenia、Euphorbia、Kalanchoe、Kedrostis、Plectanthus、Sansevieria、Sarcostemmaに属する16種が含まれます。


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Fockea multiflora
『Die Pflanzenwelt Afrikas』(1910年)より。


以上が論文の簡単な要約です。
論文ではマラウイの6つの地域からのF. multifloraの分布を確認しました。つまり、ザンビア南部、ジンバブエ北部、モザンビーク西部という国境沿いのF. multifloraの分布と、タンザニアの分布の中間にあたるマラウイにおける分布を確認したということです。これにより、分布の空白地帯は目出度くなくなったわけです。F. multifloraのように分布が広い場合、調査の如何により空白地帯が生じたり、飛び地状の分布になってしまいます。この論文では過去の記録を精査して、情報を正したと言ったほうが適切かも知れません。しかし、新たに調査したとしても、残念ながらすでに開発等で生息地が消失している可能性もあります。F. multifloraのように古い調査記録がそれなりに残っていることは、実に幸いなことです。


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実はサボテンや多肉植物も、毎年のように新種が発見されています。地球上のすべての土地が調査し尽くされているわけではないため、未踏の場所を調査したら新種は見つかるもののようです。さらに、詳しく研究されず、似た種類を1種類にまとめてしまっていたりもします。そのようなものは、最近になって再び研究されて整理され始めています。ここ10年ちょいの多肉植物の新種については、サボテン、アロエ、アガベ、セダムについて最近記事にしてまとめて来ました。本日はエケベリアの近年の新種について見てみましょう。論文を軽く漁っただけなので、すべての新種を網羅してはいないかも知れません。

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Echeveria whitei
『Addisonia』(1925年)より。


2011年
・メキシコのMichoacanより、新種のEcheveria purhepechaが記載されました。

2012年
・メキシコのSinaloaより、新種のEcheveria cheveriaが記載されました。

2013年
・メキシコ西部のSierra de Manantlanより、新種のEcheveria yalmanantlanensisが記載されました。石灰岩の山塊Cerro de Grandeの固有種です。

2014年
・メキシコのColima火山より、新種であるEcheveria muniziiが記載されました。E. fulgensに似ています。
・メキシコ西部Colimaの石灰岩地より、新種であるEcheveria cerrograndensisが記載されました。E. fulgensと近縁と考えられます。
・メキシコのJaliscoより、新種のEcheveria marianaeが記載されました。E. novogaliciana、E. dactyliferaに似ています。

2015年
・メキシコのJaliscoより、Echeveria rulfianaが記載されました。

2016年
・メキシコのMichoacanより、新種であるEcheveria pistioidesが記載されました。
・メキシコのMichoacanより、新種であるEcheveria coruanaが記載されました。


2017年
・Echeveria pringlei var. parvaを独特させ、Echeveria fjammigeraを代替名として提案しました。しかし、この提案は認められておりません。

2019年
・メキシコのMichoacanより、新種であるEcheveria michihuacanaが記載されました。
・メキシコのGuerreroより、新種であるEcheveria xochipalensisが記載されました。
・メキシコのNevado de Colima火山より、新種であるEcheveria sonianevadensisが記載されました。


2020年
・エクアドルとペルーの国境より、既存種より2種の新種が分離されました。1つはEcheveria quitensisとされてきた中から、Echeveria cojitambensisが分離されました。もう1つはEcheveria cuencaensisと混同されてきたEcheveria tabaconasensisが分離されました。
・メキシコのSinaloaより、新種であるEcheveria coppiiが記載されました。

2021年
・ペルーのTayacaja州より、新種であるEcheveria incaicaが記載されました。E. oreophilaに似ています。
・ペルーのCastrovirreyna州より、新種のEcheveria ostolazaeが記載されました。
・メキシコのGuerreroより、新種であるEcheveria islasiaeが記載されました。
・メキシコのDurangoより、新種であるEcheveria kristeniiが記載されました。E. dactyliferaおよびE. novogalicianaに似ています。


2022年
・メキシコのOaxacaのMixteca Atla産地より、新種であるEcheveria andreaeが記載されました。

以上がエケベリアの新種たちです。意外と新種は見つかっていますし、これからも見つかる可能性が高そうです。エケベリアの分布の中心はメキシコのようですが、エクアドルでも新種が見つかっていますね。もしかしたら、メキシコ以外では調査が遅れているだけで、これからまだまだ新種が見つかるかも知れません。また、今は何と言っても遺伝子解析の時代です。エケベリアは形態学的によく似た種類が多いため、混同されている種類もありそうですから、遺伝子解析により大幅に改訂されてしまうかも知れません。これからのエケベリア研究は目が離せませんね。


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多肉植物の生息地は、開発によりその生息が脅かされています。多肉植物は分布が狭く、特殊な環境にのみ生えるものも多いことから、多くの多肉植物が絶滅の危機に瀕しています。保護活動によりこれらの多肉植物を救うことは出来るのでしょうか?
本日は希少な多肉植物を救うための保護活動に目を向けます。Stefan Siebert & Frances Siebertの2022年の報告である、『Beating the boom: The fight to save a tiny succulent』をご紹介しましょう。小型のメセンであり、野生では非常に希少なFrithia humilisの保護活動の顛末です。


妖精の象の足
「妖精の象の足」(Faily elephant feet)と呼ばれるFrithia humilisは、南アフリカの固有種です。Gauteng州とMpumalanga州の境界にまたがる約600平方キロメートルの範囲の、岩盤上に乗った砂利の隙間にのみ生えます。非常に特殊な土壌条件が必要です。乾燥しわずか2cmしかない浅い土壌は、珪岩砂と腐植質からなり、0.5cmの珪岩砂利に覆われている必要があります。しかし、残念なことに南アフリカの発電所に供給される石炭が採掘される石炭鉱床は、F. humilisの分布と重なります。すでに、鉱山開発などによりF. humilisは生息地の半分以上を失っています。

救出作戦
新しい石炭鉱山の開発予定地に、4000個体に及ぶF. humilisが発見されました。しかし、南アフリカの政策により、この希少植物を他の土地に移植しなくてはなりませんでした。そのため、時間が限られる中、適切な代替地を探し出し、2009年に移植が敢行されました。移植が終わると、本来の自生地は採掘のため、すぐに爆破されてしまいました。

挫折と行き詰まり
救出活動以来、移植先を定期的に監視しました。当初、移植したF. humilisの生存と繁殖は有望に見えました。確かに、移植当初はネズミによる減少がありました。ところが、個体数が大幅に減少し始めたのは、2017年以降でした。著者らはこれは個体数が少ないことから、遺伝的多様性の低下により自家受粉が増えたからではないかと考えました。
著者らは移植先における花粉媒介者の数や訪問頻度、開花や結実について調査しましたが、これらの指標は他の自生地と変わりがありませんでした。つまり、種子や実生の数が少ないわけではないということです。

保護の難しさ
F. humilisは土壌ごと移植されたため、貯蔵種子(Seed bank)からの発芽が期待されました。実際に移植後に実生が出現し、それは2013年まで続きました。そして、干ばつ後の2017年以降、減少が始まりました。それ以降、観察により花の数、成体の植物数、実生苗の数は減少し続けています。
F. humilisのような特殊な土壌に生える植物は、数十億年かけて形成された生息地に、数百万年かけて適応してきました。単純に移動させたら、新しい生息地で繁栄することを期待することは出来ません。一度介入したならば、監視を続け生息地の維持のために投資する必要があります。最終的には、自生地には手を加えずに残しておく必要があります。


最後に
以上が報告の簡単な要約です。
保護活動は失敗に終わりました。これだけ文明が発達した現代においても、未だ自然とはあまりに未知であり、まったくコントロールが効かない存在であることを改めて実感しました。
しかし、F. humilisを育てるのはそれほど難しくないと思った方もおられるでしょう。これは、当然ながら自然環境下は栽培環境とはまったく異なるからです。自然環境下では植え替えも施肥も、水やりや遮光も出来ないのですから、自然と育って増えてくれるのを期待するしかありません。まったく同じ自然環境を用意することはあまりに難しいでしょう。やはり、自然環境ごと保全することが肝要ということなのでしょう。


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最近、とても気になっていることがあります。以前購入したOperculicarya borealisの実生苗ですが、それが本当にO. borealisであるか良くわからなかったのです。ネットで検索すると何やらそれらしい情報は出てきますが、個人ブログの情報がどこまで正しいか良く分かりません。しかも、オペルクリカリア全種類の見分け方はまったく分からないため、ある種と特徴の一部が一致していても、同じ特徴を他の種も持っている可能性があります。具体的に言うと、O. borealisの葉には毛が生えていると言われますが、私の株にはありません。では、何かと言われると良くわからないのです。

DSC_0664
Operculicarya borealis?

ということで、オペルクリカリアの特徴を記述した論文を見つけましたから、ご紹介しましょう。それは、Armand Randrianasolo & Porter P. Lowry IIの2006年の論文、『Operculicarya (Anacardiaceae) revisited: an updated taxonomic treatment for Madagascar and Comoro Island, with description of two new species』です。この論文では、2種類の新種を説明するために、既存の種の見分け方が記述されています。


①葉軸の翼
 1. 葉軸に翼がある→②へ
 2. 葉軸に翼がない→⑦へ
②小葉の最大の長さ
 1. 小葉の長さは最大20mm以上
         →O. capuronii
 2. 小葉の長さは最大10(-15)mm
  →③へ
③葉に生えた毛
 1. 葉軸上に密な毛がある→④へ
 2. 葉はほぼ無毛。若い葉ではまばらに
  細かい毛がある。→⑥へ
④小葉の葉脈
 1. 葉脈がわずかに残る
  →O. hirsutissima
 2. 葉脈は顕著で裏面で隆起→⑤へ
⑤葉の形
 1. 小葉の先端は平らで、小葉は縁が
  丸まる、葉脈の間に深い空洞
  →O. hyphaenoides
 2. 小葉は楕円から倒卵形、小葉の縁は
  丸まらない、葉脈の間に深い空洞はない
  →O. borealis
⑥枝の形
 1. ジグザグの枝→O. pachypus
 2. 枝はまっすぐ→O. decaryi
⑦葉柄の長さ
 1. 葉柄は0.5mm以下→O. multijuga
 2. 葉柄は1〜4mm→O. gummifera
 
では、実際に謎のオペルクリカリアの特徴を見てみましょう。
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葉軸に羽がありますから②です。小葉は5〜6mmで、最大でも10mmですから③になります。さらに、葉に毛はほとんどないように見えますから⑥です。

231010215131456
葉の裏面にも毛がありません。葉脈も目立ちません。葉脈が目立つO. hyphaenoidesやO. borealisではないようです。

231010215105167
茎はジグザグにつきます。以上の特徴からは、O. pachypusということになります。どうやら、O. borealisではないようですね。GBIFの画像データでは、O. pachypusの葉脈は目立ず、O. decaryiの葉脈は主脈が目立ち、O. borealisの葉脈は側脈まではっきりとしていました。
また、O. hirsutissimaは良い画像データがないため、乾燥標本だけでは細かい特徴は良く分かりません。O. hyphaenoidesは葉が巻いて非常に特徴的です。葉軸に翼がないO. multijugaとO. gummiferaは、小葉の先端が尖ります。


231011001527466~2
Operculicarya gummifera
『Flora de Madagascar et des Comores』(1946年)より。Poupartia gummiferaとして記載。


ちなみに、2015年には同じArmand Randrianasolo & Porter P. Lowry IIによる『A new species of Operculicarya H. Perrier (Anacardiaceae) from western dry forests of Madagascar』では、9種類目となるオペルクリカリアの新種、Operculicarya calcicolaが説明されました。O. calcicolaは葉軸に羽はなく、小葉は11〜13cmで葉柄は2〜5mmです。O. gummiferaと似ていますが、小葉は3〜6.3cmです。O. calcicolaは小葉や果実、花序軸など、全体的に大型です。

Operculicarya pachypusは爪楊枝くらいの細さの苗でも非常に高額で、今まで買う気になりませんでした。しかし、安いからと何となく購入したO. borealisが、どうやらO. pachypusだったようです。まあ、多肉植物をやるならばオペルクリカリアの1つくらいは育てたいと思っていただけで、O. borealisが欲しかったというわけでもないため、逆に良かったような気もします。
ところで、このオペルクリカリアは異なった名前で販売されていたわけですが、これは名札を間違えたからではなく、おそらくは輸入種子の名札がO. borealisだったのでしょう。このように、異なる名前で多肉植物が販売されるのは珍しいことではなく、私も度々こういう多肉植物に遭遇しています。ネット販売されている多肉植物でも、名前が間違っている場合はそのほとんどが同じ間違いをしていたりしますから、供給元が同じなのかも知れません。
さて、おそらくはO. pachypusであろうという結論に至りましたが、懸念というか心残りはO. hirsutissimaです。葉軸に密な毛がないため、私のオペルクリカリアとは異なる気がしますが、確かな画像データがないのは残念です。とはいえ、基本的に流通していないO. hirsutissimaである可能性はなさそうですけどね。


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Sedumは丈夫で育てやすく、寄植えやグランドカバーなど用途の幅も広く、その種類も非常に沢山あります。しかも、近年に至っても沢山の新種が発見されています。新たな調査により発見される場合もありますが、近年の特徴は遺伝子解析による新種の発見でしょう。産地ごとの微妙な違い程度と考えられて変種や亜種とされてきたものが、遺伝子解析により分離されるという報告がなされるようになりました。このように、新種の発見は大変興味深いものです。しかし、我々趣味家には中々情報が入って来ないものです。本日はそんなセダムのここ10年と少しの新種について、ごく簡単にご紹介しましょう。ただ、私もそのすべてを歩漁出来ませんから、おそらくご紹介出来たのはその一部に過ぎないかも知れません。

231005222419419~2
Sedum spp.
『Illustrations of the British flora』(1908年)より。


2010年
・米国のアイダホ州から新種であるSedum valensが記載されました。


2012年
・メキシコから新種であるSedum kristeniiが記載されました。
・メキシコとグアテマラから新種であるSedum mesoamericanumが記載されました。
・中国から新種であるSedum plumbizinicicolaが記載されました。
・メキシコから新種であるSedum perezdelarosaeが記載されました。
・メキシコから新種であるSedum jarochoが記載されました。
・メキシコから新種であるSedum brachetiiが記載されました。


2013年
・台湾の石灰岩地から新種であるSedum tarokoenseが記載されました。
・中国から新種であるSedum kuntsunianumが記載されました。


2014年
・米国のカリフォルニア州から新種であるSedum citrinumが記載されました。
・中国から新種であるSedum spiralifoliumが記載されました。


2015年
・メキシコから新種であるSedum moniliformeが記載されました。Sedum longipesに良く似ているということです。
・メキシコから新種であるSedum piaxtlaenseが記載されました。
・メキシコから新種であるSedum pyriseminumが記載されました。


2016年
・東アフリカのケニア山高地から、新種であるSedum kenienseが記載されました。


2017年
・日本の男女群島より新種であるSedum danjoenseが記載されました。Sedum formosanumとされてきましたが、遺伝子解析により別種として分離されました。
・メキシコから新種であるSedum sinforosanumが記載されました。
・中国からSedum peltatumが説明されました。しかし、キュー王立植物園のデータベースには記載がありません。


2019年
・中国の石灰岩地から新種であるSedum lipingenseが記載されました。
・中国から新種であるSedum ichangensisが記載されました。
・台湾から新種であるSedum kwanwuenseSedum taiwanalpinumが記載されました。


2020年
・中国から新種であるSedum nanlingensisが記載されました。Sedum onychopetalumやSedum kiangnanenseに近縁とされます。
・ペルー北部から新種であるSedum hutchisoniiが記載されました。
・日本の小笠原諸島から新種のSedum mukojimenseが記載されました。Sedum boninenseから分離されました。


2022年
・メキシコから新種であるSedum dormiensが記載されました。
・日本の九州地方から沖縄に分布するSedum japonicum subsp. uniflorumあるいはSedum uniflorumとされるセダムは、Sedum ryukyuenseとされました。これは、1838年に記載されたSedum uniflorum Hook. & Arn.は、過去に同名のセダムが命名されていたため非合法名として命名され直されました。ちなみに、同名のセダムとは、1810年に命名されたSedum uniflorum Raf.(=Phedimus stellatus)です。 


2023年
2023年に出た論文で説明された新種は、まだデータベースに記載がありません。
・中国から新種とされるSedum jinglaniiが説明されました。
・中国から新種とされるSedum yangjifengensisが説明されました。
・中国から新種とされるSedum danxiacolaが説明されました。
・日本の九州地方の石灰岩地より、新種とされるSedum kawarenseが説明されました。Sedum lipingenseに近縁とされます。


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Sedum bourgaei
『Addisonia』(1917年)より。


セダムは種類が多く皆よく似ていますから、種類の判別は中々困難です。意外にも日本でもまだ新種のセダムが見つかっていますが、その経緯は種の整理や分離独立といった形です。これは、日本のセダムが広く分布する種類と似ていたら、基本的に広域種の地方変異程度に考えてしまうため、このような事態となっているのでしょう。今は遺伝子解析という武器があるため、隠蔽されていた新種が見つけ出されたのです。これからも、このようなケースは増えてくることは確実ですから、場合によっては新種が次々と見つかる可能性もあります。セダムはある意味、今熱い分野なのかも知れませんね。


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マダガスカルと言えば、花キリンなどの固有のユーフォルビア、固有種のアロエ、パキポディウム、DidiereaやAlluaudia、着生ランなど、とにかく珍しい植物の宝庫というイメージです。しかし、一般的にマダガスカルと言えばキツネザルをイメージするかも知れません。私もDidierea-Alluaudia林に住むキツネザルは、果たしてあのトゲトゲの幹に掴まって平気なんだろうかと、余計な心配をしたりもしました。さて、そんな中、キツネザルと植物の関係について書かれた興味深い論文を見つけましたのでご紹介します。それは、Jen Tinsmanらの2017年の論文、『Scent marking preferences of ring-tailed lemurs (Lemur catta) in spiny forest at Berexty Reserve』です。

キツネザルのマーキング行動
キツネザルはすべての霊長類の中で、最も複雑なマーキング行動を行います。群れのナワバリや、配偶者へのアピール、同じ性別の中での順位など、様々な社会状況に香りを使用します。過去にワオキツネザルで実施された研究では、マーキングをする際の特定の植物に対する選好は見られませんでしたが、垂直な茎に対する強い選好が見られました。しかし、観察されたのは雨季の森林内で、樹上での行動でした。ワオキツネザルは乾季には、乾燥しトゲだらけのDidierea-Alluaudia林に移動します。乾季ではマーキングする植物に選好はあるのでしょうか? 

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ワオキツネザル  Lemur catta
『Histoire phyrique: naturelle et politique de Madagascar』(1890年)より


ワオキツネザルに好みあり
ワオキツネザルが出産する乾季に、Berenty保護区で観察されました。雌6頭、雄7頭、若い雄2頭の計15頭の群れを追跡しました。著者らはマーキングの跡の調査と、100例の実際のマーキング行動を観察しました。
調査では1534属の植物を確認しましたが、最も頻繁にマーキングしたのはUncarinaでした。Uncarinaは調査地域の植物の6%を占めるに過ぎませんが、マーキングされた植物の65%を占めました。Albizia、Azadiractha、Catharanthus、Celtis、Fernandoa、Moringaも、よりマーキングされました。逆に、Alluaudia、Commiphora、Euphorbiaは個体数に比較してマーキングされませんでした。

選ばれる理由・選ばれない理由
実際のマーキング行動の観察では、その65%が分岐した植物を選んでいました。Uncarinaの85%は二股に分岐しているため、ワオキツネザルに好まれているのかも知れません。
AlluaudiaやCommiphoraはトゲがあるため、避けているのかも知れません。また、ユーフォルビアはトゲがない滑らかな外見上はマーキングに適した植物でも、ワオキツネザルは避けました。ユーフォルビアの刺激のある乳液を嫌がっているのかも知れません。
興味深いことにUncarinaはの樹液は独特の臭気があります。Uncarinaの臭気がマーキングの効果に影響を与えている可能性もあります。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
乾季のワオキツネザルは、マーキングする植物に好みがあることが明らかになりました。また、著者らは、ワオキツネザルが片手で枝を掴んでバランスを取りながらマーキングする行動を観察しており、それが二股の植物が選ばれる理由かも知れないと述べています。しかし、なぜUncarinaなのかは、化学的な研究と、ワオキツネザルに対する行動試験をして、確かめる必要がありそうです。



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多肉植物の流行はドイツ、フランス、イギリスなどがアフリカの植民地の調査と絡んで発展しましたが、その後は米国が巨大な多肉植物の市場となりました。しかし、最近では日本、韓国、中国などの東アジアの国々でも多肉植物の流行があり、違法取引が心配されます。とはいえ、日本は第二次世界大戦前からサボテンブームがあったわけで、多肉植物新興国と呼べるかは微妙です。それでも、世界規模の流通拡大に伴い扱われる植物の種類も増え、趣味家も爆発的に増えたことは確かでしょう。さて、本日は東アジアの例として、韓国の事例を取り上げます。それは、Jared D. Marguliesの2020年の論文、『Korean 'Housewives' and 'Hipsters' Are Not Driving a New Illicit Plant Trade: Complicating Consumer Motivations Behind an Emergent Wildlife Trade in Dudleya farinosa』です。

Dudleya farinosaは絶滅危惧種ではない
植物は動物と比較すると関心が低く、違法取引に関する研究も進んでいません。絶滅危惧種は植物の方が多いにも関わらず、違法な野生生物取引(IWT)の植物に対する資金は少ない現実があります。メディアからの注目度も低いものでした。近年、注目されるIWTの例として、Dudleya farinosaが挙げられます。現在、DudleyaはCITESによる国際取引の制限はされていません。D. stoloniferaとD. traskiaeは生息地が限られ、絶滅の危機があり、違法取引の懸念があったため、CITESの附属書Iに記載され国際取引が禁止されていました。しかし、国際貿易による脅威に直面していないと考えられたため、2013年のCITES締結国会議(CoP)によりリストから除外されました。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでも、Dudleyaは記載されていません。しかし、多くのDudleyaはカリフォルニア州、および米国連邦絶滅危惧種リストに記載されていますが、D. farinosaは記載されていません。D. farinosaは分布が広く絶滅危惧種ではありません。ですから、D. farinosaの取引で問題となるのは、土地の所有者に無許可で行われた密猟や、検疫許可証を取得しない密貿易や品目を偽って輸出した場合です。

ことの発端
2017年にカリフォルニア州魚類野生生物局(CDFW)は、外国人によるD. farinosaの密猟が増大していることに気が付きました。
ことの発端はカリフォルニア州の小さな町の郵便局から大量の荷物を出荷しようとしている男性がいたということから始まります。偶然居合わせた市民が郵送物から土がこぼれ落ちる様を見て、地元で問題となっているアワビの密猟ではないかと疑いました。その後、警察はこの事件を追い、2018年にD. farinosaを密猟した2人の韓国人を逮捕しました。彼らは多肉植物の販売業者で、世界中で違法採取を行っていました。CDFWはこれが単独の孤立した事例ではなく、グループ犯罪であることに気が付きました。2017年から2018年の間に、カリフォルニアで外国人によるD. farinosaの密猟は摘発されただけで6件ありました。事件の規模は約50個体を密猟した単独犯から、CDFWが100万米ドルを超える価値があると推測する数千本の植物の大量密貿易までありました。専門家や裁判所は、過去数年間の間にもDudleyaの密猟が行われていた可能性が高いとしています。

そもそも、D. farinosaは合法的に入手可能な市場がすでにあるため、わざわざ違法取引をする必要はありません。なぜ、密猟が繰り返されるのでしょうか? 著者は韓国のニュース報道や裁判記録、さらには韓国の人々にインタビューし、D. farinosaの入手の動機を明らかにしました。

韓国メディアの説明
韓国の複数のメディアは、D. farinosaを韓国の消費者が欲する理由を挙げています。曰く、「サボテンのようにDudleyaは乾燥した気候で生きるため、その葉や茎に水を含む植物です。空気清浄化と家の装飾用に、韓国の投資ツールとして脚光を浴びています。」ということです。
他の記事では、特に中国や韓国では、必需品ではない人気アイテム、特に世話が必要なアイテムの購入を通じて、他人に経済的な地位を誇示するために、D. farinosaを入手する圧力があったという憶測もありまます。また、D. farinosaの形は東アジアの宗教的シンボルである蓮の花を彷彿とさせるという指摘(※)もありました。

(※) これは流石にこじつけに感じます。最低限、日本人の感性ではありません。これは、1952年のWardの報告ですが、元の文書を読んでいないので、実際の調査で判明した事実なのか、Wardが東アジア文化を調べる中で思いついた話なのかは不明です。

CDFWの説明
CDFWの説明はもっと一般的なもので、Dudleyaのみに対してだけの説明ではありません。しかし、Dudleyaを含めあらゆる希少生物に対応可能な考え方です。つまり、希少生物は入手が難しく、その希少さゆえに価値が上がり、密猟者はより希少生物を欲しがります。違法であるということは価値なのです。

インタビューによる説明
まずは、2019年の韓国の地方検事局のインタビューでは、中国と韓国は巨大な中産階級が台頭しており、増えた可処分所得で家を美しく飾りたいと思っています。ブームになっているD. farinosaは、「これはこの場所から来た」という由来が重要です。それは、天然サーモンと養殖サーモンのようなものかも知れません。
ほとんどのインタビュー対象者は、投機的な性質を表明しました。しかし、D. farinosaに対する消費者の需要の高まりの背後にある動機について、メディア記事とインタビュー対象者の間で一貫性がありました。ある記事によると、韓国と中国の「主婦」と「流通に敏感な人々(Hipster)」の間で急速に多肉植物「熱」が高まっていることに起因するというのです。この枠組みはメディアで繰り返し使われています。

業者による説明
韓国の多肉植物業者によると、メディアの説明とは異なり、D. farinosaは専門的で通常は経験豊富なコレクターに特に望まれていることを強調しました。韓国では多肉植物が流通していますが、その多肉植物人気とD. farinosaを所有したい人との間にほとんど関連がないと言います。実際の多肉植物の小売業者によると、D. farinosaは一般的な人気はないため、通常は在庫は置かないそうです。D. farinosaは一般の市場ではなく、多肉植物をオンライン販売している専門業者からのみ入手可能でした。
また、カリフォルニアと韓国の業者や植物専門家によると、D. farinosaを栽培する場合は屋外では難しいと言います。D. farinosaは崖の急斜面に生えるため排水を好み、水やりに気をつけないと根腐れの可能性があります。韓国の業者はD. farinosaは初心者向けの植物ではなく、高度なレベルのケアが必要とし、多くの場合は温室を借りて栽培していることを確認しました。


一般的な説明は憶測
CDFWの職員、カリフォルニアの自然保護活動家、多肉植物専門家は、アジアの消費者はD. farinosaが野生起源であるからこそ評価しているのだという憶測を表明しました。しかし、著者のインタビューでは、D. farinosaの生産者や販売業者は、野生起源かどうかには興味がなく、実際の植物の美的な品質に興味を持っていました。業者の顧客にとっても、野生起源であることが価値を高めるということはありませんでした。顧客はカリフォルニア原産であることは知っていましたが、重視したのは価格とサイズ、品質についてでした。なぜ、東アジアではD. farinosaが非常に人気があると信じられているのだろうかという質問に、ある業者は「これは、中国のコレクターや日本のコレクター、韓国のコレクターについてではなく、個々の(Dudleyaなどを好む)コレクターが望んでいるからだ。」と答えました。

野生個体は好まれない
D. farinosaは起源による価値はありませんでしたが、植物のサイズや年齢は重視されていました。著者の観察によると、輸入されたD. farinosaは温室で輸出のダメージを回復させ、新しい葉が出て見映えが良くなるまで販売されません。野生植物の特徴である、虫食われ跡や自然環境による痛みは好まれず、低品質で価値を下げるものと捉えられています。
著者は韓国の多くの業者がD. farinosaを種子から栽培していることを確認しました。熱心なコレクターが好むのはより大きい植物でしたが、大きく育てるには時間がかかります。しかし、韓国の業者による栽培苗は評判が高く、「エキゾチックなカリフォルニアの植物」に対する需要ではなく、韓国の温室で栽培されている植物に対する需要でした。

主たる動機
人々を密猟に駆り立てた主な推進力は、D. farinosaの需要と供給のバランスが崩れたことにあります。国内の植物を急激に枯渇させる世界的な需要がありました。数年前、韓国、中国、日本、ヨーロッパなどで、ソーシャルメディアの普及により情報が急速に拡散し、専門のコレクターの間でD. farinosaへの関心が急上昇しました。ソーシャルメディアとグループメッセージは合法取引と違法取引の両方のプラットフォームとして機能します。多肉植物コミュニティ内でD. farinosaが流行るにつれ、コレクターはオンラインコミュニティ内でD. farinosaの栽培経験を共有することに関心を持ちます。このようなことを、Thomas Walters(2020)は「交際への欲求により動機付けられる」としています。

国際市場に少ないことが原因
韓国国内ではD. farinosaに需要があるものの、すぐに入手可能な供給はありません。植物検疫証明書の発行と植物輸入許可は非常に高コストで、業者からすると単に「高すぎる」ということです。米国内で商業的に入手可能(しかも合法的に)なはずのD. farinosaの供給が足りていないのは、皮肉にも米国におけるD. farinosaの人気が低下していたからです。あるDudleyaの専門家のコメントでは、「彼らが野生のDudleyaを盗んだものの、5ドルで売ることも出来ない」としています。このような状況が違法取引を蔓延させた原因と考えられます。

正しい動機の解明が必要
メディアが繰り返し仮説を「リサイクル」して記事を書く度に、いつの間にか仮説は常識になってしまいます。これは、CDFWなどの米国側も同様で「東アジア人はエキゾチックな野生植物を好む」という人種的な仮説がいつの間にか固定観念になってしまっていました。IWTに対処するには正しい動機の理解が必要です。

以上が論文の簡単な要約となります。
日本ではDudleyaは人気はあまりあるとは言えないでしょう。基本的に市販はされていません。また、日本にも現地球信仰はありますが、それは原産地へのエキゾチックな思いではなく、単純に野生植物の見た目の良さに惹かれているだけです。Dudleyaのように古い葉が新しい葉に容易に更新される植物に対して原産球を求めるとはとても思えません。
さて、繰り返される言説はいつの間にか常識となり、仮説は真実となります。D. farinosaについて言うのならば、単純に国際市場で不人気ゆえにファームであまり栽培されず、そのためD. farinosaを求める東アジア市場の盛り上がりに対して国際市場が対応出来なかったことが原因です。だからといって密猟や密貿易を仕方がないとは思いませんが、その動機を正しく理解していないとIWTへの効果的な対応は不可能でしょう。もし、当局の言う「エキゾチックな野生植物」を信じるならば対処は困難で地道な監視や摘発しかありませんが、「国際市場での枯渇」が原因ならば割合その対処は容易です。
この論文のような地道な調査が、野生動植物の保全に非常に力になるでしょう。思い込みで対処せずに正しく理解し対処出来るように、このような研究が推進されることを望みます。


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世界各地には未だに伝統医学が存在し、地域によっては住民の生活に深く根付いています。特に現代医学が浸透していない開発途上国には顕著です。しかし、このような伝統医学は様々な野生の植物を利用するため、場合によっては希少な植物が用いられてしまうこともあります。このような場合、野生の植物ではなく栽培された植物を利用することが出来れば、簡単に解決するでしょう。しかし、問題は栽培した植物が野生の植物より劣っていないかという疑念です。これは、薬用植物の栽培を考案する際の一番の問題点で、栽培品を下に見るのことは世界的に一般的です。しかし、希少植物の保護の観点から薬用植物の栽培を行う場合は、栽培品はその効果が疑われ、結局は野生の希少植物が使われてしまうという悪循環を断つことが中々出来ていない現状があります。ですから、栽培品の品質の証明は野生植物の保全対策としても急務課題と言えます。本日は栽培された蒼角殿(Bowiea volubilis)を市場で取引される野生株との薬効を比較した、M. A. Masondoらの2013年の論文、『A comparison of the pharmacological properties  of garden cultivated and mutch market-sold Bowiea volubilis』を見ていきます。

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蒼角殿 Bowiea volubilis

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B. volubilisの花

蒼角殿(Bowiea volubilis)は、南アフリカ東部に広く分布し、南アフリカの伝統医学で使用される薬用植物の14%におよびます。球根にはいくつかの強心配糖体が含まれています。強心配糖体は心筋に作用し鬱血性心不全の治療にも使用されますが、使い方次第では心臓に悪影響があります。しかし、伝統医学では様々な病気に対して利用されてきました。球根の汁を分娩時に妊婦に与えたり、感染症対策に皮膚に塗布したり、眼痛に対しても使用されます。さらに、ズールーの薬草医は腹水、不妊、膀胱炎、腰痛、筋肉痛などのためにB. volubilisを処方します。

南アフリカでは公式あるいは非公式の市場の両方で、薬草植物の需要は増加しており、明らかに規制はされていません。最大の懸念は使用される薬用植物の部位の85%は、球根や塊茎、樹皮などの再生不可能な部位であることです。多くの植物が過剰収穫により絶滅、あるいは絶滅の危機に瀕しています。B. volubilisもまた、過剰収穫により減少し、南アフリカのレッドデータリストで脆弱種に指定されています。
研究者は薬用植物の絶滅リスクに対抗するために、薬用植物の小規模農業を提案しました。しかし、伝統医学のヒーラーは野生の薬用植物はより強力であると信じているため、栽培品への転換は進まないままです。

著者らは大学の植物園で栽培された約5歳のB. volubilisを、Muthi市場で取引されている株と比較しました。B. volubilisは乾燥させてから粉末にし、5gを石油エーテル(PE)、ジククロメタン(DCM)70%エタノール(EtOH)、および水で1時間の超音波処理により抽出しました。抽出物を濾過した後に真空濃縮し、これを微生物への薬効を見るためにエイムズ試験を実施しました。エイムズ試験では、4種類の最近株である枯草菌ATCC6051株、黄色ブドウ球菌ATCC12600株、大腸菌ATCC11775株、肺炎桿菌ATCC13883株、および真菌であるカンジダ・アルビカンスATCC10231株を試験しました。 
エイムズ試験の結果は、枯草菌に対しての各抽出物は栽培品と野生植物で同等あるいは栽培品の方がやや有効、黄色ブドウ球菌に対しては栽培品が有効なものと野生植物が有効なものとがあり、大腸菌は栽培品と野生植物で同等、肺炎桿菌は野生植物の方がやや有効、真菌は野生植物の方がやや有効でした。
B. volubilisは様々な感染症に利用されていますが、今回の試験結果では野生植物であっても抗菌力はかなり貧弱でした。とはいえ、今回試験された微生物以外に効果が高い可能性もあります。とりあえず、今回の結果からは栽培品と野生植物の間で大きな違いはないことが確認されました。植物の薬理活性は育ち方や年齢、サイズ、季節により異なるとされ、効果が最大となる栽培方法が分かればより有効かも知れません。


次に抗炎症作用(いわゆる消炎作用)についても試験され、栽培品も野生植物も抗炎症作用を持つことが確認されました。有機溶媒で抽出されたものより、水で抽出されたものの方が作用は強いものでした。2種類の炎症物質を阻害するかを見ましたが、1種類(COX-2)は水抽出物では栽培品も野生植物も100%炎症物質を阻害しました。もう1種類(COX-1)は水抽出物では栽培品は約50%の阻害、野生植物では90%以上を阻害しました。今回の結果から、伝統医学における疼痛および炎症性疾患に対するB. volubilisの有効性が確認されました。

以上が論文の簡単な要約となります。
抗菌力に対しては調べた範囲では曖昧な結果でしたが、消炎作用に関しては強い作用があることが確認されました。わざわざ有機溶媒を使用しなくても水で抽出可能であったことは、伝統医学での利用方法と合致しており、実際に利用される際に利便性が高いと言えるでしょう。COX-1に関しては野生植物の方が強い作用があるようですが、論文中にもあるように適切な栽培方法の確立により解決可能であるかも知れません。また、野生植物においてもCOX-2に対する効果の方が高いので、COX-2の効果に適した利用方法を考慮するという考え方もあるでしょう。
この論文の最大のネックは、その検体の少なさです。そもそも、B. volubilisが収穫された場合により生育が異なるでしょうから、期待される効果にバラツキがあるかも知れません。あちこちの産地を比較する必要があります。もしかしたら、産地により大幅に成分比率が異なるかも知れず、その場合は栽培品以下のものもあるかも知れません。さらに言えば、栽培品の生育環境が不明であり、それが標準的な栽培方法かどうか考えなければなりません。
最後に、抗菌力に関して1つだけ。本来ならば、B. volubilisが利用される地域で疫学調査を行い、その地域でB. volubilisにより治療などで対策される微生物を特定し、その微生物に対して効果があるかを見る必要があります。しかし、現実的には①薬用植物の薬理作用の研究、
②薬用植物の原産地における利用方法の調査、③疫学調査の3点はバラバラに研究されています。この3点はセットにならないと本当の意味における確証が得られませんから、本来の目的である栽培品への代替は進まないでしょう。


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近年、サンセヴィエリア属(Sansevieria、サンスベリア、サンセベリア)がドラカエナ属(Dracaena、ドラセナ)に吸収されてしまうという驚くべきニュースを目にしました。当該論文は公開されていないので、残念ながら読めていないのですが、その辺りの話は最近記事にしました。


その関連で少し興味が湧いたので、他にも何か論文はないかと調べてみたところ、Iris van Kleinweeらの2021年の論文、『Plastid phylogeny  of the Sansevieria clade (Dracaena ; Asparagaceae) resolves a rapid evolutionary radiation』を見つけました。ただし、この論文は全文を公開していないため、イントロと方法のみしか示されておりません。しかし、遺伝子解析結果は公開されていましたから、見てみましょう。

取り敢えず、サンセヴィエリアはドラカエナに吸収されてしまいましたが、ドラカエナの中でもサンセヴィエリアはまとまったグループのようです。このグループをSansevieria cladeと呼んでいるようです。しかし、Sansevieria cladeに含まれる種の分類はよく分かっていませんでした。どうやら、現存する旧・Sansevieriaたちは、新しい時代に急速に進化して様々な種類に分かれた可能性があるのです。
遺伝子解析はすべての遺伝子を調べているわけではなく、植物種の違いに関わらずよく使われる遺伝子があります。しかし、それらの遺伝子では、新しい時代に急速に進化した場合は上手く種を分離出来ないのです。ですから、この論文では実に7種類もの遺伝子を解析して、サンセヴィエリアの急速な進化に迫っています。
以下に示す分子系統では、A1、A2、B、C、D、Eの6グループに分かれています。このA~Eまではまとまりがあり、旧・Sansevieriaは近縁です。

                        ┏グループA1
                    ┏┫
                    ┃┗グループA2
                ┏┫
                ┃┗━グループB
            ┏┫
            ┃┃┏━グループC
            ┃┗┫
        ┏┫    ┗━グループD
        ┃┃
    ┏┫┗━━━D. angolensis
    ┃┃
    ┃┗━━━━グループE
┏┫
┃┃┏━━━━D. camerooniana
┃┗┫
┫    ┗━━━━D. sambiranensis
┃ 
┗━━━━━━D. aletriformis

グループA1
A1には、D. zeylanica、D. burmanica、D. roxburghianaが含まれます。インド亜大陸の原産です。
・D. zeylanicaはSansevieria zeylanicaのことです。Sansevieria ensifolia、Sansevieria grandicuspis、Sansevieria indica、Sansevieria pumilaと同種です。Cordyline zeylanicaと呼ばれたこともあります。
・D. burmanicaはSansevieria burmanicaのことです、Sansevieria maduraiensisと同種です。
・D. roxburghianaはSansevieria roxburghianaのことです。また、1805年にはSansevieria zeylanicaという学名もつけられましたが、これはD. zeylanica (Sansevieria zeylanica)とは別につけられたもののまったく同じ学名です。当然ながら認められていない学名です。

グループA2
A2には、D. pinguicula、D. perrotii、D. powellii、D. hanningtonii、D. arborescensが含まれます。
立ち上がり茎が伸びるタイプで、主に東アフリカの原産です。
・D. pinguiculaはSansevieria pinguiculaのことです。
・D. perrotiiはSansevieria perrotiiのことです。Sansevieria robusta、Sansevieria ehrenbergiiと同種です。
・D. powelliiはSansevieria powelliiのことです。
・D. hanningtoniiはPleomele hanningtoniiのことです。Dracaena oldupai、Sansevieria rorida、Sansevieria ehrenbergii、Sansevieria roridaと同種です。ちなみに、D. powelliiの異名の1つにS. ehrenbergiiがあり、D. hanningtoniiとかぶりますが、D. powelliiの異名のS. ehrenbergiiは後から同じく学名を付けてしまったパターンです。
・D. arborescensはSansevieria arborescensのことです。Sansevieria zanzibaricaと同種です。

グループB
Bには、D. raffllii、D. testudinea、D. canaliculata、D. liberica、D. longiflora、D. scimitariformis、D. sinus-simiorum、D. stuckyi、D. subspicata、D. spathulata、D. aethiopica、D. halliiが含まれます。アフリカ南部中心に分布します。
D. raffllii、D. testudinea~D. liberica、D. longiflora~D. haliiの3グループに分けられます。
・D. rafflliiはSansevieria rafflliiのことです。
・D. testudineaはSansevieria brauniiのことです。種小名が変わっていますが、これはもともとDracaena brauniiという植物が先に存在したため、同じ学名となってしまうことを避けるための処置です。
・D. canaliculataはSansevieria canaliculataのことです。Sansevieria schimperi、Sansevieria sulcataと同種です。
・D. libericaはSansevieria libericaのことです。Sansevieria chinensis、Sansevieria gentilisと同種です。
・D. longifloraはSansevieria longifloraと同種です。
・D. scimitariformisはSansevieria scimitariformisのことです。
・D. sinus-simiorumはSansevieria sinus-simiorumのことです。
・D. stuckyiはSansevieria stuckyiのことです。Sansevieria andradaeと同種です。
・D. subspicataはSansevieria subspicataのことです。
・D. spathulataはSansevieria cocinnaのことです。Sansevieria subspicata var. cocinnaは同種です。種小名が変わっていますが、これはもともとDracaena cocinnaという植物が先に存在したため、同じ学名となってしまうことを避けるための処置です。
D. aethiopicaはSansevieria aethiopicaのことです。Sansevieria thunbergii、Sansevieria caespitosa、Sansevieria glauca、Sansevieria scabrifoliaは同種です。
D. halliiはSansevieria halliiのことです。

グループC
Cには、D. parva、D. singularis、D. phillipsiae、D. nilotica、D. dawei、D. bacularis、D. dooneri、D. trifasciata、D. francisii、D. sordida、D. suffruticosa、D. serpenta、D. newtoniana、D. conspicua、D. volkensis、D. hargeisana、D. forskalianaが含まれます。アフリカ大陸に広く分布します。
D. parva~D. trifasciata、D. francisii~D. serpenta、D. newtoniana~D. forskalianaの3グループに分けられます。
・D. parvaはSansevieria parvaのことです。Sansevieria bequaertiiは同種です。
・D. singularisはSansevieria singularisのことです。Sansevieria fischeriは同種です。
・D. phillipsiaeはSansevieria phillipsiaeのことです。
・D. niloticaはSansevieria niloticaのことです。Sansevieria massaeは同種です。
・D. daweiはSansevieria daweiのことです。
・D. bacularisはSansevieria bacularisのことです。
・D. dooneriはSansevieria dooneriのことです。
・D. trifasciataはSansevieria trifasciataのことです。Sansevieria aureovariegata、Sansevieria craigii、Sansevieria jacquinii、Sansevieria laurentii、Sansevieria trifasciata var. laurentii、Sansevieria zeylanica var. laurentiiは同種です。
・D. francisiiはSansevieria francisiiのことです。
・D. sordidaはDracaena variansの異名です。D. variansはSansevieria variansのことです。Sansevieria patens、Sansevieria sordida、Dracaena patensは同種です。
・D. suffruticosaはSansevieria suffruticosaのことです。
・D. serpentaはSansevieria gracilisのことです。種小名が変わっていますが、これはもともとDracaena gracilisという植物が先に存在したため、同じ学名となってしまうことを避けるための処置です。とはいえ、このD. gracilisは問題のある学名で、1796年に命名されたD. gracilisはDracaena reflexa var. angustifoliaの異名で、1808年に命名されたD. gracilisはDracaena ellipticaの異名です。これだけ使い降るされた学名ですから、3回目の使用となれば混乱は必至でしょうから使われないのは当然です。
・D. newtonianaはSansevieria newtonianaのことです。
・D. conspicuaはSansevieria conspicuaのことです。
・D. volkensisはSansevieria volkensisのことです。Sansevieria intermedia、Sansevieria polyrhytis、Sansevieria quarriaは同種です。
・D. hargeisanaはSansevieria hargeisanaのことです。
・D. forskalianaはSansevieria forskalianaのことです。Sansevieria guineensis var. angustior、Sansevieria elliptica、Sansevieria abyssinica、Convallaria racemosaは同種です。

グループD
Dには、D. zebra、D. senegambica、D. petheraが含まれます。D. zebraとD. senegambicaは非常に近縁です。
・D. zebraはSansevieria metallicaのことです。
種小名が変わっていますが、これはもともとDracaena metallicaという植物が先に存在したため、同じ学名となってしまうことを避けるための処置です。ただし、Dracaena metallicaはCordyline fruticosaの異名です。
・D. senegambicaはSansevieria senegambicaのことです。Sansevieria cornuiは同種です。
・D. petheraはSansevieria kirkiiのことです。
種小名が変わっていますが、これはもともとDracaena kirkiiという植物が先に存在したため、同じ学名となってしまうことを避けるための処置です。

グループE
EにはD. kenyensis、D. dawnsii、D. caulescens、D. pearsoniiが含まれます
・D. kenyensisはデータベースに情報がありませんが、どうやらSansevieria bellaのことのようです。 Sansevieria bellaは現在ではDracaena neobellaとされています。
種小名が変わっていますが、これはもともとDracaena bellaという植物が先に存在したため、同じ学名となってしまうことを避けるための処置です。ただし、このDracaena bellaはCordyline fruticosaの異名です。
・D. dawnsiiはSansevieria dawnsiiのことです。
・D. caulescensはSansevieria caulescensのことです。
・D. pearsoniiはSansevieria pearsoniiのことです。Sansevieria deserti、Sansevieria rhodesianaのことです。



A~Eのグループに入らない種類についてですが、D. angolensisはSansevieria内にありますが、A~Eのグループには入りません。
・D. angolensisはSansevieria angolensisのことです。Sansevieria cylindrica、Sansevieria livingstoniaeと同種です。
・D. cameroonianaはSansevieriaではなく、はじめからDracaenaでしたが、Sansevieriaと近縁のようです。
・D. sambiranensisはSansevieria sambiranensisのことです。他のSansevieriaとは系統が異なります。
・D. aletriformisはSansevieriaではありません。Yucca aletriformisという異名があります。

Sansevieriaの葉の形状は様々で、葉の厚みも様々です。これは、乾燥に対する適応を示しています。しかし、葉の形状はグループごとに似ているわけではないようです。多肉質な葉は近縁ではないあちこちに現れるようです。
また、タイトルにありますように、Sansevieriaは急速に進化して様々な種類に分化したようです。どうやら、Sansevieriaは約500万年前に登場したようです。非常に昔なような気がしますが、新生代新第三紀終盤の鮮新世ですから、歴史年代からすると最近です。しかも、現在の種類が分化し始めたのは、第四紀更新世以降ですから、日本では旧石器時代という新しさです。本当に新しく現れた多肉植物と言えますね。



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新年のサボテン・多肉植物のビッグバザールに行きました。ラフレシアリサーチさんが様々な多肉植物の種子を販売していましたが、Operculicarya pachypusの種子を3粒購入しました。まだ寒いので種をまく適期ではないでしょうけど、お試し用に1粒まいてみました。ちなみに、先人の知恵は無視して、適当にやってしまいました。一応は持てるだけの科学知識を動員してはみましたが…
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今回はこんな道具を使用。今回は30mLサイズの三角フラスコに種をまきます。

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オーソサイドは種子の殺菌にも使用されます。

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オーソサイドを適当に溶かしました。ピンセットの殺菌用なので、規定の倍率にする必要はありません。

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オペルクリカリア・パキプスの種子を使用。今回はお試し用に1粒だけ。果肉には発芽を抑制するアブシジン酸が含まれていますから、果肉は取り去る必要があります。自然では鳥などの動物に食べられて果肉は消化されます。

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しばらく水に浸け込んで、果肉をふやかします。

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しかし、思うように水を吸いません。果肉も固く中々取れません。

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果肉を取っては水に浸けてふやかしてを繰り返しました。まあ、ティッシュペーパーで擦ってだいたい果肉は落ちましたかね。

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しばらく水に浸けておきます。直ぐに沈んだので、しいな(不捻種子)ではなさそうです。10時間ほど吸水。

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赤玉土と燻炭を混ぜたものです。赤玉土は細粒が良いのでしょうけど、なかったので中粒で代用。熱湯で簡単に消毒。本当は圧力鍋で高温湿圧滅菌した方がベストですが、食品以外で圧力鍋は使いたくありませんからね。

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殺菌剤水溶液にピンセットを浸け込んでおきます。まあ、火炎滅菌の方が手っ取り早くて確実ではあります。ライターの弱い火でも800~900度、火で炙れば完全に滅菌可能ですからね。しかし、ピンセットが酸化して汚くなるので今回はなしの方向です。専用のピンセットが必要でしたか。

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種子はよく水に溶かした滅菌剤に浸けたりしますが、今回は種子に直に殺菌剤をまぶします。殺菌剤の説明書に書かれた希釈倍率は、果実に使った時に残留しないようにするためのものです。ですから、種子粉衣と言って、直に殺菌剤をまぶした方が簡単で効果が期待出来ます。まあ、モヤシやカイワレ大根なんかは、発芽前の種子に殺菌剤をまぶすと、高濃度の殺菌剤を口にすることになりますから止めた方が無難ですけどね。

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種子には発芽に光が必要な明発芽種子と、光があると発芽しない暗発芽種子とがあります。例えば、乾燥地の植物の種子は、光が当たっている環境だと発芽しても暑さや乾燥で枯れてしまうのではないでしょうか。種子が確実に地中に埋まっている時に発芽した方が生き残る可能性が高いでしょう。ですから、多肉植物は暗発芽種子が多いような気もします。というわけで、種子は暗くしておきます。

さて、勢いだけで適当にやってしまいましたが、どうなることやらといった感じです。上手くいけばいいのですが、部屋が普通に10℃以下になるので中々厳しいかもしれませんね。まあ、試しです。種子もかなり安かったので、失敗しても大して懐が痛むわけでもありません。
まあ、とはいえ今回やってみたものの、少しカビに対して神経質過ぎたかなあとは思いました。極端なことを言えば、普通に殺菌せずに種をまいて、カビが生えたら殺菌剤まけばそれで解決なんですよね。今さらですが、ただの徒労だったかもしれません。次回はもっと適当にやってみます。



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サンスベリア、あるいはサンセベリアと呼ばれる植物があります。ラテン語読みなら「サンセヴィエリア」ですかね。まあ、昔からある斑入りのSansevieria trifasciataがすっかり普及しましたが、最近では様々な種類が販売されているようです。そんなサンスベリアですが、私自身はそれほど興味はありません。しかし、ダシリリオンを調べていた時に、また余計な情報を得てしまいました。なんと、サンスベリア属は現在では存在せず、ドラセナ属(Dracaena、ラテン語読みでドラカエナ)に統一されてしまったというのです。その論文では詳細がわかりませんから、その理由を探ってみました。

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ボウチトセランの花

イギリスのキュー王立植物園のデータベースを見てみたところ、サンセヴィエリアはドラカエナの異名とありました。その根拠として、2021年に出された『New nomenclatural and taxonomic adjustments in Dracaena (Asparagaceae)』という論文が指定されていました。しかし、この論文は一般に公開されていませんから概要しかわかりません。しかし、概要を読むと、遺伝子解析の結果から、サンセヴィエリアはドラカエナに含まれてしまうということです。実際の分子系統図を見れないのは残念ですが仕形ありません。
とりあえず、データベースでサンセヴィエリア属の情報を検索してみます。サンセヴィエリア属はCarl von Linneの弟子で鎖国下の日本の出島にも滞在したこともあるCarl Peter Thunbergが1794年に命名したSansevieria Thunb. nom. cons.です。属名は[属名]+[命名者]ですが、通常は命名者を省略して属名だけですが、論文(特に分類学)だと命名者もセットで記入されます。ここでは[属名]+[命名者]+[nom. cons.]となっています。このnom. cons.とは、保存名(保留名)のことです。保存名とは命名規約を厳密に適用すると、今まで使用されてきた学名から変更しなくてはならず、混乱する場合などに維持される学名です。


ただし、サンセヴィエリア属の項目には、'This name is a synonym of Dracaena'とあり、要するにサンセヴィエリアは異名でドラカエナになったということです。実際に最も一般的なサンセヴィエリアであるSansevieria trifasciataを調べてみると、詳細な情報はなくなっており学名はDracaena trifasciataになったからそちらを見るようにとあります。変更後のDracaena trifasciataを見ると、こちらには様々な情報が記載されていました。こちらにはnom. cons.の表記もありませんし、完全にサンセヴィエリアはドラカエナに吸収されてしまったようです。

とりあえず、サンセヴィエリアの有名な種類であるアツバチトセラン、ボウチトセラン、ツツチトセランの3種類について現状がどうなっているのか調べてみました。

①アツバチトセラン
まずは、代表的なサンセヴィエリアであるアツバチトセランです。アツバチトセランは、1903年にSansevieria trifasciata Prain
命名されましたが、2017年にDracaena trifasciata (Prain) Mabb.が提案され現在はこの学名が認められています。また、アツバチトセランには亜種があり、D. trifasciata subsp. trifasciataとD. trifasciata subsp. sikawaeがあり、それぞれに異名があります。

subsp. trifasciataには、1904年に命名されたSansevieria laurentii De Wild.、1911年に命名されたSansevieria jaquinii N.E.Br.、1912年に命名されたSansevieria craigii Anon.、1915年に命名されたSansevieria trifasciata var. laurentii (De wild.) N.E.Br.という異名があります。

subsp. laurentiiは2019年にSansevieria trifasciata var. laurentii R.H.Wbb & Yingerと命名されましたが、2021年にDracaena trifasciata subsp. sikawae (R.H.Wbb & Yinger) Takaw.-Ny. & Thiedeとなりました。


②ボウチトセラン
ボウチトセランは、1859年にSansevieria cylindrica Bojar ex Hook.と命名され、この学名が最も普及しています。しかし、実際には1861年に命名された Sansevieria angolensis Welw. ex Carriereの系統が正しい学名とされているようです。通常は先に命名された学名が優先ですから、S. cylindricaが優先されるはずです。しかし、実際にはS. angolensisが正しいとされる理由は不明です。詳しく調べる必要がありそうです。S. angolensisは命名者がWelw. ex Carriereとなっていますが、これはWelw.が命名したものの正式な命名の要件を満たしていなかったため、1861年にCarriereがWelw.を引用して記載し直したということでしょう。つまりは、Welw.の命名は1861年よりも前ということになりますが、このことがS. angolensisを優先する理由となっているかはわかりません。

さて、ボウチトセランの学名は1861年に命名されたSansevieria angolensis Welw. ex Carriereでしたが、2018年にDracaena angolensis (Welw. ex Carriere) Byng & Christenh.となりました。ボウチトセランには1932年に命名されたSansevieria livingstoniae Rendleという異名もあります。また、異名であるS. cylindricaには、1891年にAcyntha cylindrica (Bojar ex Hook.) Kuntze、1923年に命名されたCordyline cylindrica (Bojar ex Hook.) Brittonなどサンセヴィエリア属ではないという意見もありました。1915年にはSansevieria cylindrica var. patulaという変種も提唱されましたが、現在では認められておりません。

③ツツチトセラン
ツツチトセランは、1903年にSansevieria stuckyi God.-Leb.と命名されましたが、2018年にDracaena stuckyi (God.-Leb.) Byng. & Christenh.となりました。D. stuckyiは、1932年にAcyntha stuckyi (God.-Leb.) Chiov.とする意見もありました。また、S. stuckyiの命名年である1903年に同じ命名者により、Sansevieria andradae God.-Leb.が命名されていますが、現在ではD. stuckyiと同種とされています。ちなみに、この時の記載に問題があったようで、同じく1903年にSansevieria andradae God.-Leb. ex Geromeとなっています。

最後に
さて、このようにサンセヴィエリアについて多少調べてみましたが、サンセヴィエリア属からドラカエナ属に移動するに際して種小名が変わっているものも結構あるみたいです。
それはそうと、今回はキュー王立植物園のデータベースを参照としましたが、それ意外のすべてのデータベースがサンセヴィエリアをドラカエナに変更していないようです。
サンセヴィエリア属はそれなりに種類があるため、かなり大幅な変更でしょうから現在は移行期間中といった感じなのかもしれません。しかし、サンセヴィエリアの名前を残す残さない関係なく、サンセヴィエリアはドラカエナの一部であるであることは覆しようがありません。サンセヴィエリアからドラカエナへの変更の流れは止められないでしょう。


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 昨日に引き続きエケベリアの遺伝子を解析した論文の紹介です。本日が最後です。

エケベリアとセダムなどの遺伝子を解析した結果を以下に示します。それによると、エケベリアは大きく4つに分けられることがわかりました。下の系統図の太字で示したClade I~Clade IVです。

┏━━━━━━━━Lenophyllum acutifolium

┃                                ┏Sedum palmeri
┃                    ┏━━┫
┃                    ┃        ┗Sedum frutescens
┣━━━━━┫
┃                    ┃┏━━Sedum compactum
┃                    ┗┫
┫                        ┃┏━Sedum allantoides
┃                        ┗┫
┃                            ┃┏Villadia cucullata
┃                            ┗┫
┃                                ┗Villadia albiflora

┃┏━━━━━━━━Sedum dendroideum
┗┫
    ┃┏━━━━━━━Clade I
    ┗┫
        ┃┏━━━━━━Clade II
        ┗┫
            ┃┏━━━━━Sedum corynephyllum
            ┗┫
                ┃┏━━━━Clade III 
                ┗┫
                    ┃            ┏Clade IV-①
                    ┗━━━┫
                                    ┗Clade IV-②

_20230109_223316
Clade IV-②はエケベリアのみからなるグループです。series Gibbiflorae、つまりはエケベリア属ギビフロラエ列です。ギビフロラエ列は2つのグループに大別されます。

                            ┏━E. gibbiflora 1
┏━━━━━━┫
┃                        ┃┏E. fulgens 
┃                        ┗┫    v. obtusifolia
┃                            ┗E. gibbiflora 2

┫┏━━━━━━━E. purhepecha
┃┃
┃┃                        ┏E. roseiflora
┃┃                    ┏┫
┃┃                    ┃┗E. nayaritensis
┗┫┏━━━━┫
    ┃┃                ┃┏E. munizii
    ┃┃                ┗┫
    ┃┃                    ┗E. rufiana
    ┃┃
    ┃┃    ┏━━━━E. dactylifera
    ┃┃┏┫
    ┗┫┃┃┏━━━E. michihuacana 1
        ┃┃┗┫
        ┃┃    ┃        ┏E. michihuacana 2
        ┃┃    ┃┏━┫
        ┃┃    ┃┃    ┗E. michihuacana 3
        ┃┃    ┗┫
        ┃┃        ┃┏━E. michihuacana 4
        ┗┫        ┗┫
            ┃            ┃┏E. michihuacana 5
            ┃            ┗┫
            ┃                ┗E. michihuacana 6
            ┃
            ┃┏━━━━E. cante
            ┃┃
            ┃┃        ┏━E. subrigida
            ┗┫┏━┫
                ┃┃    ┃┏E. novogaliciana
                ┃┃    ┗┫
                ┗┫        ┗E. perezcalixii
                    ┃
                    ┃┏━━E. cerrograndensis
                    ┗┫
                        ┃┏━E. sp.
                        ┗┫
                            ┃┏E. marianae
                            ┗┫
                                ┗E. patriotica

                        ┏E. uxorium
┏━━━━━┫
┃                    ┗E. acutifolia

┃                    ┏E. fulgens v. fulgens
┃┏━━━━┫
┃┃                ┗E. guerrerensis
┫┃
┃┃            ┏━E. aff. acutifolia 1
┃┃┏━━┫
┃┃┃        ┃┏E. aff. gigantea
┃┃┃        ┗┫
┗┫┃            ┗E. aff. acutifolia 2
    ┃┃
    ┃┣━━━━E. fulgens
    ┃┃
    ┃┣━━━━E. aff. gibbiflora
    ┃┃
    ┗┫            ┏E. fimbriata 1
        ┣━━━┫
        ┃            ┗E. fimbriata 2
        ┃
        ┣━━━━E. rubromarginata 1
        ┃
        ┃┏━━━E. sp.
        ┃┃
        ┃┃        ┏E. triquiana
        ┃┃┏━┫
        ┃┃┃    ┗E. gigantea
        ┗┫┃
            ┃┣━━E. longiflora
            ┃┃
            ┃┃    ┏E. aff. fulgens 1
            ┃┣━┫
            ┗┫    ┗E. grisea
                ┃
                ┣━━E. crenulata
                ┃
                ┣━━E. rubromarginata 2
                ┃
                ┃┏━E. aff. gibbifor
                ┗┫
                    ┃┏E. prunina
                    ┗┫
                        ┗E. aff. fulgens 2

この4日間に渡る記事の総括は、エケベリア属は単系統ではないということです。複数の系統が入り交じる雑多な寄せ集めと言えます。この状態の解決策は2つあります。1つは、すべてをセダム属としてしまうことです。エケベリアもグラプトペタルムもクレムノフィラもトンプソネラも廃止してしまうのです。おそらく、これが最も簡単かつ分類学的に正しい方法です。もう1つは、グラプトペタルムやクレムノフィラなどを廃止してエケベリアに含んでしまうというものです。この場合、エケベリアは遺伝的には広義セダムの一部ですから、エケベリアを残したい場合にはセダムを細かく分割する必要性が生じてしまいます。あまり現実的ではない提案でしょう。とは言うものの、まだ公的なデータベース上においては旧来の分類方法のままです。どうも、ここ十年くらいでセダムやエケベリアを含むベンケイソウ科植物の遺伝子解析が急激に進行しています。分類体系の再検討はこれからでしょう。かなりホットな話題ですから、これからのことの推移を注視していきたいと思います。


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昨日に引き続きエケベリアの遺伝子を解析した論文の紹介です。Clade I、Clade II、Clade IIIの詳細をお示ししました。本日はClade IV-①です。

エケベリアとセダムなどの遺伝子を解析した結果を以下に示します。それによると、エケベリアは大きく4つに分けられることがわかりました。下の系統図の太字で示したClade I~Clade IVです。

┏━━━━━━━━Lenophyllum acutifolium

┃                                ┏Sedum palmeri
┃                    ┏━━┫
┃                    ┃        ┗Sedum frutescens
┣━━━━━┫
┃                    ┃┏━━Sedum compactum
┃                    ┗┫
┫                        ┃┏━Sedum allantoides
┃                        ┗┫
┃                            ┃┏Villadia cucullata
┃                            ┗┫
┃                                ┗Villadia albiflora

┃┏━━━━━━━━Sedum dendroideum
┗┫
    ┃┏━━━━━━━Clade I
    ┗┫
        ┃┏━━━━━━Clade II
        ┗┫
            ┃┏━━━━━Sedum corynephyllum
            ┗┫
                ┃┏━━━━Clade III 
                ┗┫
                    ┃            ┏Clade IV-①
                    ┗━━━┫
                                    ┗Clade IV-②

_20230109_223219
Clade IVは調査された種類が多いため、2つに分けます。Clade IV-①はEcheveria、Graptopetalum、Sedum、Cremnophila、Reidmorania、Tacitusを含む雑多なクレードです。便宜上、4つのグループに分けました。

┏━━━━①Graptopetalum-1

┃┏━━━②Graptopetalum-2
┃┃
┗┫┏━━③Cremnophila
    ┃┃
    ┗┫┏━④Echeveria
        ┗┫
            ┗━Clade IV-②

①Graptopetalum-1
エケベリアとグラプトペタルムが混雑しており、グラプトペタルムはまとまりのあるグループではないことがわかります。これらは将来的に吸収されて消滅するでしょう。ちなみに、現在G. mendozaeとG. craigiiはセダムとされています。現在、Reidmoraniaはエケベリアに、Tacitusはグラプトペタルムに吸収されてしまいました。

┏━━━━G. mendozae

┣━━━━G. amethystinum

┃        ┏━G. craigii
┣━━┫
┃        ┃┏E. craigiana
┃        ┗┫
┃            ┗E. affinis

┃        ┏━G. grande
┣━━┫
┃        ┃┏G. paraguayense
┃        ┗┫
┃            ┗G. bernalense

┃            ┏R. occidentalis
┃┏━━┫
┃┃        ┗G. pachyphyllum
┃┃
┃┃    ┏━G. bartramii
┣┫┏┫
┃┃┃┃┏G. suaveolens
┃┃┃┗┫
┃┃┃    ┗T. bellus
┃┗┫
┃    ┃    ┏E. valvata
┃    ┃┏┫
┃    ┃┃┗E. calycosa
┃    ┗┫
┃        ┃┏G. saxifragoides
┃        ┗┫
┃            ┗G. pusillum

┃            ┏E. amoena
┣━━━┫
┃            ┗E. microcalyx

┃┏━━━②Graptopetalum-2
┃┃
┗┫┏━━③Cremnophila
    ┃┃
    ┗┫┏━④Echeveria
        ┗┫
            ┗━Clade IV-②


②Graptopetalum-2
③Cremnophila
ここではグラマトペタルムはまとまったグループとなっていますが、セダムが混入しています。クレムノフィラはよくまとまったグループですが、やはりエケベリアやセダムと入れ子状となっています。

┏━━━━━①Graptopetalum-1

┃                ┏G. fruticosum
┃    ┏━━┫
┃    ┃        ┗G. marginatum
┃    ┃
┃    ┃        ┏G. rusbyi
┃    ┣━━┫
┃    ┃        ┗G. filiferum
┃    ┃
┫┏┫        ┏G. macdougallii
┃┃┣━━┫
┃┃┃        ┗S. clavatum
┃┃┃
┃┃┃        ┏G. glassii
┃┃┃    ┏┫
┃┃┃    ┃┗G. pentandrum
┃┃┗━┫
┃┃        ┃┏G. superbum 1
┃┃        ┗┫
┃┃            ┗G. superbum 2
┗┫

    ┃        ┏━C. linguifolia 1
    ┃    ┏┫
    ┃    ┃┃┏C. linguifolia 2
    ┃    ┃┗┫
    ┃    ┃    ┗C. linguifolia 3
    ┃┏┫
    ┃┃┃┏━C. nutans 1
    ┃┃┗┫
    ┃┃    ┃┏C. nutans 2
    ┃┃    ┗┫
    ┗┫        ┗C. nutans 3
        ┃

        ┃        ┏E. humilis
        ┃┏━┫
        ┃┃    ┗E. xichuensis
        ┗┫
            ┃┏━E. trianthina
            ┗┫
                ┃┏④Echeveria
                ┗┫
                    ┗Clade IV-②


④Echeveria
ここではエケベリアがまとまっています。

┏━━━━━━━━━━━E. peacockii

┃┏━━━━━━━━━━E. subalpina
┗┫
    ┃┏━━━━━━━━━E. laui
    ┗┫
        ┃                                ┏E. semivestita 
        ┃                            ┏┫ v. semivestita
        ┃                            ┃┗E. semivestita 
        ┃┏━━━━━━┫     v. floresiana
        ┃┃                        ┃┏E. tamaulipana
        ┃┃                        ┗┫
        ┃┃                            ┗E. runyonii
        ┗┫
            ┃                            ┏E. aff. secunda 1
            ┃┏━━━━━━┫
            ┃┃                        ┗E. aff. secunda 2
            ┃┃
            ┃┃                    ┏━E. minima
            ┗┫┏━━━━┫
                ┃┃                ┃┏E. secunda
                ┃┃                ┗┫
                ┃┃                    ┗E. aff. secunda 3
                ┗┫
                    ┃┏━━━━━E. strictiflora
                    ┃┃
                    ┃┣━━━━━E. shaviana 1
                    ┃┃
                    ┗┫                ┏E. calderoniae
                        ┣━━━━┫
                        ┃                ┗E. shaviana 2
                        ┃
                        ┃┏━━━━E. lutea
                        ┗┫
                            ┃┏━━━E. bifida
                            ┗┫
                                ┃┏━━E. lyonsii
                                ┗┫
                                    ┃┏━E. bifurcata
                                    ┗┫
                                        ┃┏E. rodolfi
                                        ┗┫
                                            ┗E. aff. rodolfi


Clade IV-①は、エケベリア、グラマトペタルム、クレムノフィラ、セダムを含みます。グラマトペタルムはまったくまとまりがありません。Graptopetalum-2はよくまとまっていますが、セダムを含んでいます。Graptopetalum-1はエケベリアが混在しており、グラプトペタルム属の存在自体に疑問符がつきます。
明日に続きます。


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昨日から引き続きまして、エケベリアの遺伝子解析による分類をお示ししています。昨日はClade IとClade IIの詳細をお示ししました。本日はClade IIIです。

エケベリアとセダムなどの遺伝子を解析した結果を以下に示します。それによると、エケベリアは大きく4つに分けられることがわかりました。下の系統図の太字で示したClade I~Clade IVです。


┏━━━━━━━━Lenophyllum acutifolium

┃                                ┏Sedum palmeri
┃                    ┏━━┫
┃                    ┃        ┗Sedum frutescens
┣━━━━━┫
┃                    ┃┏━━Sedum compactum
┃                    ┗┫
┫                        ┃┏━Sedum allantoides
┃                        ┗┫
┃                            ┃┏Villadia cucullata
┃                            ┗┫
┃                                ┗Villadia albiflora

┃┏━━━━━━━━Sedum dendroideum
┗┫
    ┃┏━━━━━━━Clade I
    ┗┫
        ┃┏━━━━━━Clade II
        ┗┫
            ┃┏━━━━━Sedum corynephyllum
            ┗┫
                ┃┏━━━━Clade III 
                ┗┫
                    ┃            ┏Clade IV-①
                    ┗━━━┫
                                    ┗Clade IV-②

_20230109_222553
Clade IIIはThompsonellaを含みます。4つのグループに分けられます。それぞれのグループの詳細を見ると、①Echeveria-1と④Echeveria-4はエケベリアのみからなります。しかし、③Thompsonellaはエケベリアとトンプソネラが混じっています。トンプソネラと近縁なエケベリアをトンプソネラに含めてしまうか、トンプソネラを廃止してエケベリアに含めてしまうか、あるいはエケベリアもトンプソネラも廃止してしまいすべてセダムにするか、3つの選択肢があります。また、②Echeveria-2にはPachyphytum cuicatecanumが含まれます。これは流石にパキフィツムから除外すべきでしょう。

┏━①Echeveria-1

┫┏②Echeveria-2
┃┃
┗╋③Thompsonella
    ┃
    ┗④Echeveria-3


①Echeveria-1

                            ┏E. corynephyllum
┏━━━━━━┫
┃                        ┗E. rosea

┫                        ┏E. chiapensis
┃┏━━━━━┫
┃┃                    ┗E. nuda
┗┫
    ┃┏━━━━━E. nebularum
    ┗┫
        ┃┏━━━━E. globulosa
        ┗┫
            ┃┏━━━E. subcorymbosa
            ┗┫
                ┃┏━━E. megacalyx
                ┗┫
                    ┃┏━E. mondragoniana
                    ┗┫
                        ┃┏E. chazaroi
                        ┗┫
                            ┗E. helmutiana

②Echeveria-2

                            ┏E. rorzaniana
┏━━━━━━┫
┃                        ┗E. carminea

┃    ┏━━━━━E. racemosa
┃    ┃
┃    ┃                ┏E. pinetorum
┃    ┣━━━━┫
┃┏┫                ┗E. mucronata
┃┃┃
┃┃┣━━━━━E. olivacea
┃┃┃
┃┃┃┏━━━━E. penduliflora
┃┃┗┫
┃┃    ┃┏━━━P. cuicatecanum
┃┃    ┗┫
┃┃        ┃┏━━E. alata
┃┃        ┗┫
┗┫            ┃┏━E. viridissima
    ┃            ┗┫
    ┃                ┃┏E. globuliflora
    ┃                ┗┫
    ┃                    ┗E. macdougalii
    ┃
    ┃        ┏━━━E. lurida
    ┃┏━┫
    ┃┃    ┃┏━━E. diffractens
    ┃┃    ┗┫
    ┃┃        ┃┏━E. carnicolor
    ┃┃        ┗┫
    ┃┃            ┃┏E. tencho
    ┃┃            ┗┫
    ┃┃                ┗E. canaliculata
    ┗┫
        ┃        ┏━━E. goldmanii
        ┃┏━┫
        ┃┃    ┃┏━E. aff. bella
        ┃┃    ┗┫
        ┃┃        ┃┏E. bella aff. major
        ┗┫        ┗┫
            ┃            ┗E. sessiliflora
            ┃
            ┃┏━━━E. heterosepata
            ┗┫
                ┃┏━━E. crassicaulis
                ┗┫
                    ┃┏━E. platyphylla
                    ┗┫
                        ┃┏E. longipes
                        ┗┫
                            ┗E. paniculata
                                     v. maculata

③Thompsonella

                    ┏━E. moranii
┏━━━━┫
┃                ┃┏E. pringlei v. parva
┃                ┗┫
┃                    ┗E. pringlei

┃                    ┏T. mixtecana 1
┃┏━━━━┫
┃┃                ┗T. mixtecana 2
┗┫
    ┃            ┏━T. minutiflora 1
    ┃┏━━┫
    ┃┃        ┃┏T. xochipalensis
    ┃┃        ┗┫
    ┃┃            ┗T. minutiflora 2
    ┗┫
        ┃┏━━━T. platyphylla
        ┗┫
            ┃┏━━T. colliculosa
            ┗┫
                ┃┏━T. garcia-mendozae
                ┗┫
                    ┃┏T. spathulata 1
                    ┗┫
                        ┗T. spathulata 2

④Echeveria-3

                    ┏E. setosa v. ciliata
┏━━━━┫
┃                ┃┏E. coccinea 1
┃                ┗┫
┃                    ┗E. coccinea 2

┃                    ┏E. montana
┃    ┏━━━┫
┃    ┃            ┗E. aff. longissima
┫┏┫
┃┃┃┏━━━E. chapalensis
┃┃┗┫
┃┃    ┃┏━━E. derenbergii
┃┃    ┗┫
┃┃        ┃┏━E. gracilis
┃┃        ┗┫
┃┃            ┃┏E. pulvinata 1
┗┫            ┗┫
    ┃                ┗E. pulvinata 2
    ┃
    ┃            ┏━E. amphoralis
    ┃        ┏┫
    ┃        ┃┗━E. sp.
    ┣━━┫
    ┃        ┃┏━E. uhlii
    ┃        ┗┫
    ┃            ┃┏E. setosa v. deminuta
    ┃            ┗┫
    ┃                ┗E. setosa
    ┃
    ┃┏━━━━E. multicaulis
    ┗┫
        ┃┏━━━E. brachetii
        ┗┫
            ┃┏━━E. aff. setosa
            ┗┫
                ┃┏━E. purpusorum
                ┗┫
                    ┃┏E. longissima 
                    ┗┫     v. aztatlensis
                        ┗E. longissima
                                 v. brachyantha


エケベリアの中に埋もれているPachyphytum corynephyllumは、初めはエケベリアとして命名されました。現在はパキフィツムですが、エケベリアとした方が正しいのでしょう。また、Thompsonellaは未だに現在です。Thompsonellaには妥当性がないように思われます。ここいらへんも、将来整理されるかもしれません。
明日に続きます。



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かつて、というか去年の12月初めに珍しくエケベリアについての記事を書きました。実はエケベリアについて調べていたわけではなく、庭に野良セダムが生えてきたのでセダムSedumについて調べていたのです。しかし、見つけた論文のタイトルは"Linnaeus's folly"、「リンネの愚かさ」という大胆なもので、内容もエケベリアがセダムに吸収されてしまうという衝撃的なものでした。その論文の紹介記事はこちらをご一読下さい。
さて、とは言うものの、論文はセダムを広く解析したもので、エケベリアは少し調べただけでした。そこで、エケベリアについてもっと詳細に調べた論文はないかと調べていたところ、参考になりそうな論文を見つけました。2019年の論文、『Phylogenetics relationships of Echeveria (Crassulaceae) and related genera from Mexico, based on DNA barcoding loci』です。非常に長い論文で、詳細を書いていると大変な長さになりますから、実際の遺伝子解析結果のみを示します。
まずは、エケベリアとセダムなどの遺伝子を解析した結果を以下に示します。それによると、エケベリアは大きく4つに分けられることがわかりました。下の系統図の太字で示したClade I~Clade IVです。VilladiaがSedumに含まれてしまうなど、以前ご紹介した論文と傾向は同じです。そして、Clade IIとClade IIIの間に
Sedum corynephyllumが入るなど、エケベリアにはまとまりがありません。

┏━━━━━━━━Lenophyllum acutifolium

┃                                ┏Sedum palmeri
┃                    ┏━━┫
┃                    ┃        ┗Sedum frutescens
┣━━━━━┫
┃                    ┃┏━━Sedum compactum
┃                    ┗┫
┫                        ┃┏━Sedum allantoides
┃                        ┗┫
┃                            ┃┏Villadia cucullata
┃                            ┗┫
┃                                ┗Villadia albiflora

┃┏━━━━━━━━Sedum dendroideum
┗┫
    ┃┏━━━━━━━Clade I
    ┗┫
        ┃┏━━━━━━Clade II
        ┗┫
            ┃┏━━━━━Sedum corynephyllum
            ┗┫
                ┃┏━━━━Clade III 
                ┗┫
                    ┃            ┏Clade IV-①
                    ┗━━━┫
                                    ┗Clade IV-②


_20230109_221046
では、各クレードの詳細を見ていきましょう。Clade Iはパキフィツム(Pachyphytum)です。詳しくはわかりませんが、この論文ではパキフィツムはエケベリアの一部をなすと考えているようです。パキフィツムは非常にまとまりのあるグループですが、残念ながらこの論文では分離が悪く、種同士の関係性は不明です。横並びの18種類は、本来なら遠近があるはずですが、解析が上手くいかなかったようです。

    ┏P. fittkaui
┏┫
┃┗P. kimnachii

┃┏P. compactum
┃┣P. brevifolium
┫┣P. viride
┃┣P. brachetii
┃┣P. glutinicaule
┃┣P. sp.
┃┣P. rzedowskii
┃┣P. viride
┗╋P. hookeri
    ┣P. oviferum
    ┣P. bracteosum
    ┣P. longifolium
    ┣P. caesium
    ┣P. werdermannii
    ┣P. machucae
    ┣P. contrerasii
    ┣P. saltense
    ┗P. garciae

_20230109_222317
次はClade IIです。Clade IIはすべてエケベリアからなります。Series Urbiniaeとありますが、属の下の分類でウルビニア列です。著者はこのウルビニア列をエケベリアからの独立を提案しているようです。しかし、やはりセダムが入れ子状に混じりますから、中々難しいところです。解決策は非常に細分化して新しい属を作りまくるか、すべてをセダムとしてしまうかです。

        ┏━━━E. cuspidata var. cuspidata
    ┏┫
    ┃┗━━━E. cuspidata var. zaragozae
┏┫
┃┃┏━━━E. chihuahuensis
┃┗┫
┃    ┃┏━━E. lilacina
┃    ┗┫
┃        ┗━━E. unguiculata

┃    ┏━━━E. pulidonis
┃┏┫
┫┃┃┏━━E. elegans
┃┃┗┫
┃┃    ┃┏━E. potosina
┃┃    ┗┫
┃┃        ┃┏E. halbingeri var. halbingeri
┃┃        ┗┫
┃┃            ┗E. simulns
┗┫
    ┃    ┏━━E. juliana
    ┃┏┫
    ┃┃┃┏━E. tobarensis
    ┃┃┗┫
    ┃┃    ┗━E. turgida
    ┗┫
        ┃┏━━E. tolimanensis
        ┗┫
            ┃┏━E. agavoides
            ┗┫
                ┃┏E. colorata f. colorata
                ┗┫
                    ┗E. colorata


現在の学術的なデータベースではどうなっているでしょうか? イギリスのキュー王立植物園のデータベースでは、Villadia、Pachyphytumはまだ健在です。立ち位置の怪しいSedum corynephyllumもそのままです。ただし、Urbiniaeはエケベリアの異名扱いで正式に認められた属ではありません。今後、このあたりはダイナミックに変わる可能性があります。
続きます。


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亀甲竜は南アフリカ原産のヤマノイモの仲間です。ヤマノイモ?と思うかもしれませんが、亀甲竜の学名はDioscorea elephantipesで日本のヤマノイモはDioscorea  japonica、ナガイモはDioscorea D. polystachya(異名Dioscorea batatas)と同じヤマノイモ属です。みな、同じように蔓を伸ばし、非常に良く似た葉をつけます。違いは芋にコルク層が出来るか否かでしょう。さて、アフリカには亀甲竜以外のDioscoreaも分布しますが、それらの遺伝子を解析した論文を見つけました。Olivier Maurin, A. Muthama Muasya, Pilar Catalan, Eugene Z. Shongwe, Juan Viruel, Paul Wilkin & Michelle van der Bankの2016年の論文、『Diversification into novel habitats in the Africa clade of Dioscorea (Dioscoreaceae) : erect habit and elephant's foot tubers』です。

Dioscoreaは熱帯域を中心に世界中に分布し、600種類以上あるとされています。Dioscoreaは芋(根茎・塊茎、perennating organs)を持ち、茎はツル性です。そのほとんどは雌雄異株で翼のある種子があります。単位面積あたりの種の多様性が高い地域は、ブラジル南部、メキシコの一部、大アンティル諸島、マダガスカル西部、中国南部からタイまでです。
過去の知見によると、Dioscoreaは10の主要cladeに分けられることが明らかになっています。この10の主要cladeのうち、3cladeはサハラ以南のアフリカに分布します。African cladeはアフリカでのみ多様化しており、13種類が知られています。そのうち、9種類が南アフリカの固有種です。
African cladeの特徴はその「象の足」のようなコルク層が発達した芋にあります。論文では"pachycaul"と表現しています。この"pachycaul"とはラテン語で"pachy + caulis"、つまりは「ずんぐりした + 茎」という意味の合成語です。要するに塊根・塊茎植物(caudex)のことを示しています。このpachycaul構造はメキシコ亀甲竜Dioscorea mexicanaなど新大陸でも希に見られます。

以下に世界各地の28種類のDioscoreaの遺伝子を解析した分子系統を示します。Stenophora cladeはヒマラヤからネパール、バングラデシュ、タイ、ベトナム、マレーシア原産のD. prazeri、New World clade IIはアルゼンチン、チリ原産のD. brachybotrya、New World clade IIはメキシコ原産のD. galeottiana、Mediterranean cladeはヨーロッパ、北アフリカ、トルコからイラン原産のD. communis、レバノン、シリア原産のD. orientalis、スペイン原産のD. chouardii、フランス、スペイン原産のD. pyrenaicaを調べています。Tamus edulisはD. communisとD. orientalisと近縁で、独立したTamus属ではなくDioscorea属に含まれることがわかりました。現在ではT. edulisはD. communisと同種とされており、Tamus属自体がDioscorea属に吸収されて存在しない属になりました。また、D. tentaculigeraは中国からタイに分布します。それ以外はアフリカ原産種です。

                ┏━━━African clade
                ┃
                ┃        ┏Compound Leaved clade
                ┃    ┏┫
            ┏┫    ┃┗Dioscorea sansibarensis
            ┃┃┏┫
            ┃┃┃┗━Enantiophyllum clade
            ┃┗┫
            ┃    ┗━━Dioscorea tentaculigera
        ┏┫
        ┃┗━━━━Mediterranean clade
    ┏┫
    ┃┗━━━━━New World clade II
┏┫
┃┗━━━━━━New World clade I

┗━━━━━━━Stenophora clade

①African clade
African cladeは4つのサブクレードに分けられます。
        ┏━Pachycaul subclade
    ┏┫
    ┃┗━Cape subclade
┏┫
┃┗━━East Africa subclade

┗━━━D. buchananii subclade

・Pachycaul subclade
このサブクレードは、5種類13個体を調べています。名前の通り、"pachycaul"構造を持つ主に南アフリカ原産のグループです。代表種は亀甲竜D. elephantipesで、非常に肥厚したコルク層がある芋があり、ひび割れてゴツゴツした姿になります。芋は形よく育ち、観賞用によく栽培されます。D. sylvaticaは葉裏が白く、表面が滑らかな芋があり観賞用に栽培されます。南アフリカからモザンビーク、スワジランド、ザンビア、ジンバブエ原産です。D. hemicryptaは表面がガサガサした不定形の芋があります。D. strydomianaは非常に肌が荒れたゴツゴツした芋があり、やや立ち上がって育ち樹木の幹のように見えます。
遺伝子を調べると、外見上は似ていて同種とされていたものの実は近縁ではないとか、外見上は違いがあり別種とされていたものの実は同種というパターンも珍しくありませんが、Dioscoreaは従来区分の種によるまとまりがあります。D. elephantipesとD. sylvatica、D. hemicryptaとD. strydomianaはそれぞれ姉妹群です。

                    ┏━D. elephantipes 1
            ┏━┫
            ┃    ┗━D. elephantipes 2
        ┏┫
        ┃┗━━━D. elephantipes 3
        ┃
    ┏┫        ┏━D. sylvatica 1
    ┃┃┏━┫
    ┃┃┃    ┗━D. sylvatica 2
    ┃┗┫
    ┃    ┗━━━D. sylvatica 3
    ┃
    ┃            ┏━D. hemicrypta 1
┏┫        ┏┫
┃┃        ┃┗━D. hemicrypta 2
┃┃    ┏┫
┃┃    ┃┗━━D. hemicrypta 3
┃┃┏┫
┃┃┃┗━━━D. hemicrypta 4
┫┗┫
┃    ┃        ┏━D. strydomiana 1
┃    ┗━━┫
┃                ┗━D. strydomiana 2

┗━━━━━━D. brownii

・Cape subclade
このサブクレードは南アフリカ原産です。D. burchelliiは2つの個体でやや遺伝的に距離があるようです。

            ┏━D. stipulosa 1
    ┏━┫
    ┃    ┗━D. stipulosa 2
    ┃
┏┫    ┏━D. mundii 1
┃┣━┫
┃┃    ┗━D. mundii 2
┫┃
┃┗━━━D. burchellii 1

┗━━━━D. burchellii 2

・East Africa subclade
このサブクレードは東アフリカ原産です。D. gillettiiはエチオピア、ケニア原産、D. kituiensisはケニア原産です。

        ┏━D. gillettii 1
┏━┫
┃    ┗━D. gillettii 2

┗━━━D. kituiensis

・D. burchellii subclade
このサブクレードは主に南アフリカ原産です。D. rupicolaは不定形の芋を持ちます。D. buchananiiは分布が広く、南アフリカ、アンゴラ、マラウイ、モザンビーク、タンザニア、ザンビア、ザイール、ジンバブエ原産です。"Bitter Yam"と呼ばれ食用とされます。

        ┏━D. multiloba
┏━┫
┃    ┗━D. rupicola

┗━━━D. burchellii


②Compound Leaves clade
このクレードは熱帯アフリカ原産のものと、アジア~オーストラリア原産のものがあります。D. dregeanaは南アフリカ、モザンビーク、スワジランド原産、D. dumetorumはチャド、コンゴ、赤道ギニア、エチオピア、ガボン、ガーナ、アンゴラ、ベナン、ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、中央アフリカ、ギニア、ギニアビサウ原産です。D. bulbiferaはニガカシュウの名前で知られています。アフリカからアジア、オーストラリアまで広く分布します。

                ┏━D. dregeana 1
            ┏┫
            ┃┗━D. dregeana 2
        ┏┫
        ┃┗━━D. dregeana 3
    ┏┫
    ┃┗━━━D. dregeana 4
┏┫
┃┃        ┏━D. dumetorum 1
┫┗━━┫
┃            ┗━D. dumetorum 2

┗━━━━━D. bulbifera

③Enantiophyllum clade
このクレードはアフリカ原産です。D. cotinifoliaは南アフリカ、モザンビーク、スワジランド原産で、不定形な滑らかな表面を持つ芋があります。D. schimperianaはアフリカ大陸に広く分布します。

        ┏━D. cotinifolia 1
        ┃
┏━╋━D. cotinifolia 2
┃    ┃
┃    ┗━D. cotinifolia 3

┃    ┏━D. schimperiana 1
┗━┫
        ┗━D. schimperiana 2

African cladeは始新世に始まった旧世界のクレードの一部をなしています。漸新世の間、アフリカは湿潤で密な森林に覆われており、多年草の塊茎とわずかに翼があり滑空する種子が特徴です。中新世の気候変動により、アフリカ東部の草原と南アフリカの地中海性気候、及びケープ植物相が出現しました。乾燥した草原でおきる火事への適応で、コルク質の樹皮が発達したと考えられています。東アフリカでは種子に翼がなく、エライオソームがあることからアリにより運ばれる可能性があります。エライオソームとはアリに運んでもらうための種子についている栄養分で、アリはエライオソームがついた種子ごと巣穴に持ち込みます。アリの巣は地表より湿っていて涼しいので発芽に適しています。しかし、なぜ東アフリカでは風による種子の拡散ではなくなったのかは不明です。ただし、アリによる拡散は他の地域でもおきていることから、割とおきやすい変異なのかもしれません。

DSC_1923
亀甲竜 Dioscorea elephantipes

以上が論文の簡単な要約です。この論文は遺伝子解析結果から種の分岐年代を推定しています。ですから、アフリカにおけるDioscoreaの進化をかつての環境の変動と照らし合わせて、どのように進化したのかを推察しているのです。実は論文の内容は盛り沢山なのですが、様々な議論がされているため要約しきれませんでした。記事があまりにも長くなるためかなり割愛しています。内容が気になる方は、実際の論文を読んだ方が面白いかもしれませんね。


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ベンケイソウ科の最新の遺伝子解析結果を示した2020年の論文、Linnaeus's folly -phylogeny, evolution and classification of Sedum (Crassulaceae) and Crassulaceae subfamily Sempervivoides』を昨日に引き続き解説します。
DSC_1996
昨日の記事に載せた庭の野良セダムとは別種のセダム。こちらもいつの間にか生えてきた野良セダムです。一体どこからやってくるのでしょうか?

ベンケイソウ科は、クラッスラ亜科、カランコエ亜科、センペルビブム亜科に分けられます。
センペルビブム亜科は、まずTelephium cladeがあり、Orostachys, Hylotelephium, Meterostachys, Sinocrassula, Kungia, Phedimus, Rhodiola, Umbilicusが含まれます。次にSempervivumとJovibarbaはひとつのグループをなします。主にヨーロッパ原産です。昨日はAcre cladeについて詳細を解説しました。Acre cladeはほぼセダム属からなりますが、エケベリアやグラプトペタルムが含まれるという驚くべき結果でした。本日は②Leucosedum cladeと③Aeonium cladeの詳細を見てみましょう。


ベンケイソウ科の分子系統
                ┏①Acre clade
            ┏┫
            ┃┗②Leucosedum clade
            ┃
            ┣━③Aeonium clade
        ┏┫
        ┃┗━Sempervivum/Jovibarba
    ┏┫
    ┃┗━━Telephium clade
┏┫
┃┗━━━Kalanchoe亜科

┗━━━━Crassula亜科

②Leucosedum cladeの分子系統
    ┏━━━北米原産種
    ┃
┏┫        ┏Sedum mucizonia
┃┃        ┃※北米・ヨーロッパ原産種
┃┗━━╋Sedum wilczekianum
┫            ┃※北米原産種
┃            ┗Sedum dasyphyllum
┃                      var. glanduliferum
┃                ※北米・ヨーロッパ原産種
┗━━━━ユーラシア大陸原産種


Leucosedum cladeは、Acre cladeとともにセダム属を形成しています。
北米原産種は、Sedum spathulifolium, Sedum spathulifolium subsp. purdyi, Sedum oregonensis, Sedum oreganum, Sedum debile, Sedum pumilaが含まれます。
ユーラシア大陸原産種には、ヨーロッパと北アフリカ原産のSedum brevifolium, Sedum gypsicola, Sedum hirsutum subsp. hirsutum、ヨーロッパとアジアと北アフリカ原産のSedum dasyphyllum, Sedum rubens, Sedum cepaea、ヨーロッパとアジア原産のSedum pallidum, Sedum magellense、ヨーロッパ原産のSedum stefcoが含まれます。
Leucosedum clade最大の問題はユーラシア原産種にPrometheumが含まれていることです。問題部分の分子系統を見てみましょう。

            ┏Prometheum chrysanthum
        ┏┫※アジア原産種
        ┃┗Prometheum serpentinicum
    ┏┫    ※アジア原産種
    ┃┣━Prometheum sempervivoides
    ┃┃    ※アジア原産種
┏┫┗━Prometheum thymphaeum
┃┃        ※ヨーロッパ原産種
┫┗━━Sedum hispanicum
┃            ※ヨーロッパ・アジア原産種
┗━━━Sedum microcarpum
                ※ヨーロッパ・アジア原産種

ご覧の通り、Prometheumは完全にセダムの一部です。もし、エケベリア属やプロメテウム属を温存しようとすると、Acre cladeやLeucosedum cladeは非常に細分化されてしまい、収拾がつかなくなるでしょう。要するにPrometheumはセダムに吸収されるということです。

③Aeonium clade
Aeonium cladeはまとまりのあるグループです。しかし、驚くべきことにここにもセダムが紛れ込んでしまっているのです。分子系統を見てみましょう。
Monanthesはまとまりがまったくないので、Aeoniumに吸収されるか、一部がAichrysonに吸収され種類が減ることになるでしょう。しかし、最大の問題はセダムが混入していることです。


                            ┏Aeonium nobile
                        ┏┫
                        ┃┗Aeonium  decorum
                    ┏┫
                    ┃┗━Aeonium aureum
                ┏┫
                ┃┃┏━Monanthes anagensis
                ┃┗┫
                ┃    ┗━Monanthes polyphylla 
            ┏┫              
subsp. amydros
            ┃┃    ┏━Aichryson palmense
            ┃┃┏┫
            ┃┃┃┗━Aichryson punctatum
        ┏┫┗┫
        ┃┃    ┗━━Monanthes icterica
        ┃┃
        ┃┃        ┏━Sedum jaccardianum
        ┃┗━━┫
    ┏┫            ┗━Sedum surculosum 
    ┃┃                               
var. luteum
    ┃┃            ┏━Sedum pubescens
┏┫┗━━━┫
┃┃                ┗━Sedum caeruleum
┃┃
┫┗━━━━━━Sedum modestum

┗━━━━━━━Hypagophytum
                                       abyssinicum


分類学の属は、まとまりがあることが重要です。Aeonium cladeのセダムを温存するならばエオニウムはセダムに吸収されてしまいますし、エオニウムを温存するならばAeonium clade内のセダムはセダムを名乗ることは出来なくなります。しかし、センペルビブム亜科は、①Acre clade+Leucosedum clade、②Aeonium clade、③Sempervivum+Jovibarba、④Telephium cladeの4つに分かれているように見えます。①Acre clade+Leucosedum cladeがセダム属として、②Aeonium cladeはセダム属ではないとする方が自然に感じます。その場合、Aeonium cladeに含まれるセダムは別の属に移動するか新しい属を新設する必要があります。

さて、以上で論文の簡単な解説は終了です。著者は論文に挑戦的な「リンネの愚かさ」というタイトルをつけました。セダム属は現在の生物の分類体系と学名のシステムを造り上げたCarl  von Linneが1753年に命名しました。しかし、当時のリンネが記載したセダムは現在の分類のあちこちの種類を含んだものでした。これを持って「リンネの愚かさ」であるとしているのです。
しかし、セダムがまとまりのないグループであり、エケベリアなどいくつもの属がセダムに吸収されてしまうかもしれない可能性が出て参りました。これは大変な驚きです。とはいえ、調べられたエケベリアは1種類に過ぎません。少し気になったので調べてみたところ、エケベリアについて調べた論文を見つけましたから、そのうちご紹介したいと思います。


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ベンケイソウ科の植物は手軽な多肉植物として、昔から栽培されてきました。ベンケイソウと言われてもぴんとこないかもしれませんが、ベンケイソウ科にはここ数年大人気のエケベリア属Echeveriaをはじめ、クラッスラ属Crassula、センペルビブム属Sempervivum、セダム属Sedum、カランコエ属Kalanchoe、エオニウム属Aeonium、オロスタキス属Orostachys、アドロミスクス属Adromischus、コチレドン属Cotyledonなどが含まれます。
この内、セダムはベンケイソウ科最大のグループで、約470種が知られています。セダムは日本ではマンネングサなどと呼ばれ昔から栽培されてきましたが、丈夫で耐寒性が高いので屋外で野生化しています。私の自宅にも得体の知れないセダムがいつの間にか生えてきました。本日はそんなセダムを含むベンケイソウ科植物の現在の分類に一石を投じる内容の論文をご紹介します。

論文の経緯として、以下に示す流れがあります。近年の遺伝子解析技術の進展により、多肉植物の分類にも遺伝子解析が応用されるようになりました。最近では多肉植物を遺伝子解析した沢山の論文が出されています。それはベンケイソウ科植物も同様で、沢山の種類があるセダムもデータが蓄積されてきました。

DSC_1997
庭に蔓延る謎のセダム

ご紹介するのは、Thibaud F. E. Messerschmid, Johannes T. Klein, Gudrun Kadereit & Joachim W. Kadereitの2020年の論文、『Linnaeus's folly -phylogeny, evolution and classification of Sedum (Crassulaceae) and Crassulaceae subfamily Sempervivoides』です。論文のタイトルは「リンネの愚かさ」というとんでもないものですが、当たり前ですが内容と関係があります。

論文の内容に入る前に一般的なベンケイソウ科の分類を示します。3つの亜科に分かれており、ほとんどはセンペルビブム亜科に含まれます。
①クラッスラ亜科
    Classula, Tillaea
②カランコエ亜科
    Adromischus, Cotyledon, Kalanchoe, Tylecodon
③センペルビブム亜科
    Aeonium, Sempervivum, Orostachys,
    Sedum, Dudleya, Echeveria, Graptopetalum
    など28属


ここからは論文の内容に移ります。まずは遺伝子解析の結果を示します。クラッスラ亜科とカランコエ亜科は系統の根本にあり、センペルビブム亜科とは分離できています。
センペルビブム亜科は、まずTelephium cladeがあり、Orostachys, Hylotelephium, Meterostachys, Sinocrassula, Kungia, Phedimus, Rhodiola, Umbilicusが含まれます。アジア原産のものが多いようです。ただし、OrostachysとHylotelephium、Meterostachysは明らかに同属です。将来的に統合される可能性が高いでしょう。
次にSempervivumとJovibarbaはひとつのグループをなします。主にヨーロッパ原産です。
Aeonium cladeとLeucosedum clade、Acre cladeについては主題に関わることなので、詳細を見ていきましょう。
ベンケイソウ科の分子系統
                ┏①Acre clade
            ┏┫
            ┃┗②Leucosedum clade
            ┃
            ┣━③Aeonium clade
        ┏┫
        ┃┗━Sempervivum/Jovibarba
    ┏┫
    ┃┗━━Telephium clade
┏┫
┃┗━━━Kalanchoe亜科

┗━━━━Crassula亜科

まずはAcre cladeから見てみましょう。
Acre cladeは世界中に分布します。原産地ごとにグループを作る傾向がありますが、アジア原産種でも2系統あったりします。基本的にAcre cladeはLeucosedumとともに、セダム属のグループです。

Acre cladeの分子系統
            ┏━━北米原産種
        ┏┫
        ┃┗━━Macaronesia原産種
    ┏┫
    ┃┃        ┏Sedum farinosum
    ┃┗━━┫    ※Macaronesia原産
┏┫            ┗Sedum anglicum
┃┃                    ※ヨーロッパ原産
┃┗━━━━ヨーロッパ原産種

┣━━━━━アジア原産種①

┣━━━━━ユーラシア原産種

┣━━━━━ユーラシア原産種

┣━━━━━ユーラシア原産種

┣━━━━━アフリカ原産種

┣━━━━━Sedum multiceps
┃                     ※北米原産
┣━━━━━アジア原産種②

┗━━━━━Sedum acre
     ※ヨーロッパ、アジア、北米原産


アメリカ原産種37種類、Macaronesia原産種2種を調べていますが、Macaronesiaとはヨーロッパや北アフリカに近い大西洋の島々のことです。Macaronesia原産種として、Sedum lancerottense, Sedum nudumが調べられています。
ここはSedumとVilladiaが入れ子状となっています。Sedum①にはSedum plicatum, Sedum reniforme, Sedum andinum, Sedum jurgensenii, Sedum goldmanii, Villadia albifloraが含まれ、Villadia①にはVilladia imbricata, Villadia recurva, Villadia nelsonii, Villadia minutifloraが含まれます。Sedum①とVilladia①は姉妹群で近縁です。しかし、V. albifloraは完全にSedum①に含まれてしまっています。
Villadia②はVilladia①と近縁ではありません。Villadia②はVilladia aristata, Villadia misera, Villadia pringleiが含まれます。つまり、Villadiaはまったくまとまりがない属ですから、おそらくはSedumに吸収されてなくなる可能性が高い属です。
Sedum②はSedum hemsleyanum, Sedum oxypetalum, Sedum guatemalense, Sedum greggiiが含まれます。
EcheveriaとGraptopetalumは近縁ですが、ともにSedumの中に埋め込まれてしまっています。LeucosedumやThompsonellaとともに、Sedumに吸収されてしまう可能性が大です。

Acre clade, 北米原産種の分子系統
                ┏━Sedum①
            ┏┫
            ┃┗━Villadia①
            ┃
            ┃┏━Sedum chloropetalum
            ┣┫
        ┏┫┗━Sedum quevae
        ┃┃
        ┃┣━━Sedum bourgaei
        ┃┃
        ┃┗━━Sedum retusum
    ┏┫
    ┃┣━━━Villadia②
    ┃┃
    ┃┃        ┏Sedum trichromum
    ┃┣━━┫
    ┃┃        ┗Sedum alamosanum
    ┃┃
┏┫┗━━━Sedum alexanderi
┃┃
┃┃            ┏Sedum compactum
┃┣━━━┫
┃┃            ┗Sedum obcordatum
┃┃
┃┗━━━━Sedum oxacanum

┣━━━━━Sedum②

┣━━━━━Sedum palmeri

┣━━━━━Lenophyllum acutifolium

┣━━━━━Sedum versadense

┃            ┏━Echeveria fulgens
┃        ┏┫
┃        ┃┗━Graptopetalum bellum
┃        ┃
┃        ┣━━Sedum clavatum
┃    ┏┫
┃    ┃┣━━Sedum commixtum
┃    ┃┃
┣━┫┗━━Thompsonella minutiflora
┃    ┃
┃    ┗━━━Sedum corynephyllum

┣━━━━━Sedum fuscum

┗━━━━━Macaronesia原産種

その他の地域で調べられた種は以下の通りです。
ヨーロッパ原産種は、Sedum sexangulare, Sedum alpestre, Sedum grisebachii var. horakiiが含まれます。
アジア原産種①は、Sedum erythrospermum, Sedum morrisonense, Sedum nokoense, Sedum formosanum, Sedum alfredii, Sedum emarginatum, Sedum polytrichoides, Sedum makinoi, Sedum baileyi, Sedum bulbiferum, Sedum sarmentosum, Sedum lineare, Sedum triactina, Sedum trullipetalum, Sedum obtrullatum, Sedum oreades, Sedum multicauleが含まれます。
アジア原産種②は、Sedum uniflorum subsp. oryzifolium, Sedum uniflorum subsp. Japonicum, Sedum zentaro-tashiroi, Sedum tosaense, Sedum mexicanum(アメリカにも分布)が含まれます。
アフリカ原産種は、Sedum ruwenzoriense, Sedum mdyeri-johannisが含まれます。
ユーラシア大陸原産種は、Sedum tuberiferum, Sedum borissovae, Sedum apoleiponはヨーロッパ原産、Sedum ursiはアジア原産、Sedum urvillei, Sedum annuum, Sedum laconicumはヨーロッパとアジア原産です。

取り敢えず、Acre cladeについては以上となります。しかし、驚くべきことに、エケベリアがセダムに吸収される可能性が指摘されています。この2020年の論文の意見が採用された場合、センペルビブム亜科は大幅な改変を受けることになるでしょう。おそらくは、Acre cladeはすべてセダム属とされてしまうのではないでしょうか。なぜなら、学名は先に命名された名前を優先とする「先取権の原理」があるからです。
1828年に命名されたEcheveria D.C.より、1753年に命名されたSedum L.が優先されます。将来的にエケベリアという名前は学術的に消滅し、園芸でしか用いられない俗名に零落してしまうのでしょうか?
記事が
長くなってしまいましたので、明日に続きます。


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Uncarinaというマダガスカル島原産の塊根植物が最近販売されるようになりました。Uncarinaはゴマ科の植物で、多くの種類は黄色い花を咲かせます。趣味の園芸の「多肉植物 コーデックス」の巻を購入して読んでいたところ、Uncarinaの交配と採種についての解説があり、初めてUncarinaの不思議な形の果実を知りました。



本の写真ではUncarinaの果実は、返しのついたトゲだらけのやたらに攻撃的なフォルムでした。なぜ、Uncarinaはこのようなトゲだらけの果実を持っているのでしょうか?
一般的に 果実や種子のトゲは動物の毛に付着して運ばれるためにあります。私も子供のころは、オナモミやヌスビトハギの種子が知らない間に服に付いていたこともありました。では、Uncarinaの果実を運ぶ動物はなんでしょうか? この疑問に答える論文が見つかりました。それが、2009年のJeremy J. Midgley & Nicola Illingの『Were Malagasy Uncarina fruits dispersed by the extinct elephant bird?』です。

トゲに被われた果実や種子は2種類あり、体毛に付着する粘着イガと、踏みつけることにより蹄や足に刺さる踏みつけイガとがあります。昔私の服についたオナモミは粘着イガでしょう。では、踏みつけイガとはどういうものでしょうか。知られている例では、Uncarinaに近縁とされるHarpagophytumの果実があります。HarpagophytumはUncarinaとよく似た果実を持ち、その特徴から果実はライオンゴロシ、英語で"devils claw"と呼ばれます。Harpagophytumの果実はダチョウに踏まれてその足につき、ダチョウが走る度に少しずつ壊れて、種子が少しずつこぼれていくそうです。Harpagophytumの果実は丈夫なため、ダチョウの踏みつけがないと種子が出てきません。

実際のUncarinaの果実を観察してみましょう。Uncarinaの果実は熟すと地面に落ちますが、ここが重要です。普通、動物の毛に付着する場合は、地面ではなくてある程度高い場所、つまりは生った状態が好ましいはずです。その場合は植物の近くを動物が通って体が植物に触れれば、果実が自然と付着するはずです。しかし、果実が地面に落ちた場合、踏まれることはあったとしても、自然と毛に付着するのは難しいのではないでしょうか。
また、著者はUncarinaのトゲが大きくてトゲ同士が離れすぎているため、毛に付着するのは難しいのではないかと推察しています。実際に毛に付着する果実や種子は、トゲは小さくてトゲに生えるさらに細かいトゲや毛があるといいます。しかし、Uncarinaの種子は無毛です。
これらの情報から、Uncarinaは粘着イガではないと考えられるのです。

Uncarinaの果実は踏みつけイガである可能性が高いとして、想定される動物像はどんなものでしょうか。まずは、頑丈なUncarinaの果実を破壊できる体重がないといけません。想定される動物は、ある程度大型である必要があります。
現在、マダガスカル島に生息する動物で可能性があるのはキツネザルだけですが、最大のキツネザルであるインドリ(Indri indri)は6~7kgで体重が軽すぎます。大型キツネザルとしては、紀元前に絶滅したArchaeoindris fontoynontiiはゴリラサイズで、体重は200kgに達したと考えられています。ただし、キツネザルは足の裏が柔らかいので、Uncarinaの種子を踏むつけても大丈夫な硬さはないと考えられます。そして、硬い足の裏で踏みつけて、果実が壊されなくてはならないことも重要です。また、巨大キツネザルの化石はUncarinaの分布域からは発見されていません。

著者はUncarinaの果実を運んだのは、"elephant bird"ではないかと考えています。では、
"elephant bird"とはなんでしょうか? 直訳だと「象の鳥」ですが、これは調べてみるとエピオルニス(Aepyornis)という絶滅した鳥のことでした。エピオルニスは高さ3~4m、体重400~500kgになる巨大な飛べない鳥でした。17世紀までは生存していた可能性があるようです。Harpagophytumとダチョウの関係のように、Uncarinaの果実を踏みつけて運んだ可能性があるのはエピオルニスしか候補がありません。

類似した果実を持つUncarinaとHarpagophytumは、ともに巨鳥による踏みつけイガによる種子の分散がおきます。しかし、Harpagophytumはアフリカ大陸原産で、しかもマダガスカルに近いアフリカ東岸には分布しておりません。ですから、踏みつけイガを持つUncarinaとHarpagophytumの共通祖先がアフリカ大陸とマダガスカルに拡散し、アフリカ大陸ではHarpagophytum、マダガスカルではUncarinaに進化したという筋書きは難しいかもしれません。むしろ、アフリカ大陸とマダガスカルで、それぞれ個別に踏みつけイガを進化させただけかもしれません。このように、別々に同じ機能を獲得した場合の進化を、一般に収斂進化と呼びます。

また、Uncarinaは種類によってトゲのサイズが異なります。問題となるのは、Uncarina  leandriiの極端に短いトゲです。7.5mm以下という短さですから、エピオルニスをターゲットとした可能性は低そうです。おそらくは、絶滅したゾウガメにより運ばれた可能性を著者は指摘しています。

というわけで、Uncarinaの種子をばらまく可能性が高い動物はエピオルニスやゾウガメなど、絶滅してしまっていることが明らかになりました。踏みつけ果実は踏みつけられないと頑丈な果実が壊れずに種子がこぼれないため、そもそも種子は発芽しません。運搬者がいないと繁殖が出来ませんから、将来的に絶滅する可能性があります。確かに、Uncarinaの野生個体はそのほとんどが大型個体に片寄っています。しかし、地域によっては、小型の若いUncarinaも確認されています。エピオルニスは絶滅したのにどうしてでしょうか。
わかったこととして、若いUncarinaが見られる地域では、大型のUncarinaは家畜の通り道沿いに点在していることです。そして、牛がUncarinaの果実を踏みつけて運んでいるらしいことがわかりました。自然環境が保全されている地域では果実の運搬者がいないために増えることができず、開発されている撹乱した環境では増えることができるという皮肉な状況と言えます。

以上が論文の簡単な要約となります。
UncarinaとHarpagophytumの収斂進化は、たまたま似ていただけだという結論は、やや唐突な感じがします。しかし、UncarinaとHarpagophytumは近縁ですから、元々果実にトゲなどの装飾が発達しやすい下地は共通していたのかもしれません。そして、巨大な鳥が生息する環境も共通しています。収斂する要素はそれなりにあるのでしょう。
しかし、人の手が入ったことにより個体数を増やすことが可能となった珍しい例です。しかし、農業や牧畜、さらには資源開発が進めば、Uncarinaが育つこともやがて難しくなるでしょう。そもそも、エピオルニスが絶滅したのは人が原因なのですから、Uncarinaからしたら今さらありがたい話でもないでしょうけどね。


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最近、Bowiea volubilisについて少しずつ調べています。Bowieaは葉のないモジャモジャした蔓を伸ばす緑色の玉葱のような球根植物です。アフリカでは薬草として利用されてきたことや、現在はB. volubilisの亜種とされているsubsp. gariepensisについても記事にしました。実際の薬理作用についても気になるところで、良さげな論文がありましたら記事にしてご紹介出来ればと考えております。
Bowieaにはもうひとつ、Bowiea kilimandscharicaという小型種があります。しかし、このB. kilimandscharicaは現在ではB. volubilisと同種とされ、B. kilimandscharicaという学名は異名とされています。しかし、小型であること位しか情報がありません。何か情報はないかと調べても、B. kilimandscharicaについては、何故かよくわかりません。せめて、B. kilimandscharicaが初めて記載された論文を探してはみたものの、1934年に出版されたドイツ語の「Notizblatt des Botanischen Gartens und Museums zu Berlin-Dahlem.」という雑誌らしいのですが、PDF化されていないのか見つかりません。まあ、探し方が悪いだけかもしれませんが…
 
しかし、調べる過程でBowieaを含むアフリカの球根植物の分類に挑戦した論文を発見しました。B. kilimandscharicaの調査は続行するとして、本日はアフリカの球根植物についての論文をご紹介します。

ご紹介するのは、Mario Martine-Azorin, Manuel B. Crespo, Maria Angeles-Vargas, Michael Pinter, Neil R. Crouch, Anthony P. Dold, Ladislav Mucina, Martin Pfosser & Wolfgang Wetschnigの2022年の7月に出たばかりの論文『Molecular phylogenetics of subfamily Urgineoideae (Hyacinthaceae) : Toward a coherent generic circumscription informed by molecular, morphological, and dirtributional data』です。
内容はキジカクシ科Urginea亜科(ヒヤシンス亜科)植物の遺伝子解析による分子系統を構築し、今後の分類の改訂を提案してあるようです。大変力が入った研究で、内容や議論されている内容をつぶさに検討すると、大変なボリュームとなってしまいますから、私の記事では分子系統を示すに留めたいと思います。まあ、球根類には詳しくないので、よく分からないという部分も大なのですが…

Urginea亜科の分子系統
                            ┏Austronea
                        ┏┫
                        ┃┗Fusifilum
                        ┃
                    ┏┫    ┏Boosia
                    ┃┃┏┫
                    ┃┃┃┃┏Fusifilum magnifium
                    ┃┗┫┗┫
                    ┃    ┃    ┗Urginea revoluta
                    ┃    ┃
                ┏┫    ┗Geschollia
                ┃┃
                ┃┣Urgineopsis
                ┃┃
                ┃┣Drimia
                ┃┃
                ┃┣Litanthus
                ┃┃
                ┃┣Schizobasis
                ┃┃
                ┃┣Rhadamanthopsis
                ┃┃
                ┃┃┏Rhadamanthopsis
                ┃┣┫          namibiensis
                ┃┃┗Aulostemon
                ┃┃
                ┃┣Squilla
                ┃┃
                ┃┣Tenicroa
                ┃┃
                ┃┗Rhodocodon
                ┃
                ┃    ┏Ebertia
                ┃┏┫
                ┃┃┗Vera-duthiea
                ┃┃
                ┃┃        ┏Indurgia
                ┣┫        ┃
                ┃┃    ┏┫┏Spirophyllos
                ┃┃    ┃┗┫
            ┏┫┃┏┫    ┗Urginea
            ┃┃┃┃┃
            ┃┃┗┫┗Iosanthus
            ┃┃    ┃
            ┃┃    ┃┏Sekanama
            ┃┃    ┗┫
            ┃┃        ┗Zulusia
            ┃┃
            ┃┃        ┏Ledurgia
            ┃┃        ┃
            ┃┃    ┏╋Thuranthos
        ┏┫┃    ┃┃
        ┃┃┃┏┫┗Zingela
        ┃┃┃┃┃
        ┃┃┗┫┗Urginavia
        ┃┃    ┃
    ┏┫┃    ┗Sagittanthera
    ┃┃┃
    ┃┃┗Striatula
┏┫┃
┃┃┗Mucinaea
┫┃
┃┗Rhadamanthus

┗Bowiea


馴染みがない名前が多いのですが、南アフリカなどのアフリカの冬型球根としては、Drimia、Urginea、Schizobasisあたりは辛うじて知られています。最近ではケープバルブも見かけるようになってきましたから、聞いたことがあるものもあるかもしれません。しかし、ケープバルブと言っても、要するに南アフリカの冬型球根の総称ですから、分類すると特に近縁ではないいくつものグループが含まれています。この論文では扱われていない種類も沢山あります。

気になるBowieaについてですが、この論文ではB. gariepensisもB. kilimandscharicaも独立種とされています。分子系統を見ると、B. volubilisとB. kilimandscharicaは近縁で、B. gariepensisの2株は少し離れています。現在のところは、B. kilimandscharicaはB. volubilisに含まれてしまい、B. gariepensisはB. volubilisの亜種とされていますが、3種類の関係性は分子系統の結果と符合します。特徴や分布が異なり、生殖隔離もあるようですから、3種は別種としても良いのでないかと思います。そもそも、Bowieaの種の認定を左右する根拠は1987年のBruynsの論文によるものでしょうから、遺伝子解析が発達した近年の研究により改訂されるべきでしょう。この論文は2022年の最新のものですから、今後学名の変更の可能性はあります。ただし、そのためには様々な地域のB. volubilisとB. kilimandscharicaを比較して、B. kilimandscharicaがB. volubilis集団から明瞭に分離できるということが求められるかもしれません。

Bowieaの分子系統
                    ┏B. gariepensis 1
┏━━━━┫
┃                ┗━━B. gariepensis 2

┃    ┏━B. kilimandscharica
┗━┫
        ┗━━━━B. volubilis


以上が論文の内容ですが、本当に一部のみの抜粋です。論文では様々な議論が展開されています。著者は分類群を統合する分類学の流れに対し、意義を唱えています。例えば、一塊の分類群は「教育目的にはより実用的」(Chase et al., 2009)であるとか、分類群は「数が少ないほど扱いがより安定する」(Manning et al., 2004, 2009)と述べられています。しかし、その議論はあまりに推測的で不当ではないか、科学的根拠に欠けるのではないかと、著者は考えているようです。


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ガリエペンシスは蒼角殿の仲間です。学名に関する経緯は以下の通りです。まず、1867年に蒼角殿Bowiea volubilisが命名されました。その後、白花の種類が見つかり、1983年にvan JaarsveldによりBowiea gariepensis van Jaarsv.と命名されました。しかし、1987年(publ. 1988)に蒼角殿の亜種とするBowiea volubilis subsp. gariepensis (van Jaarsv.) Bruyns.とされました。しかし、ガリエペンシスは白花であるだけではなく蔓の色合いなど全体的に違いがあり、一見して別種に思えます。
そんな中、ガリエペンシスを発見したvan Jaarsveldの短いレビューを見つけましたのでご紹介します。2015年に
Ernst Jacobus van Jaarsveldが執筆したBowiea HYACINTHACEAE』です。

内容的にはB. volubilisとB. gariepensisの詳細な特徴を列挙しています。B. volubilisの球根は最大16cmほどで茎は3-4m(最大10m)で、ケニア、タンザニア、ウガンダ、ジンバブエ、マラウイ、アンゴラ、南アフリカに分布します。B. gariepensisの球根は最大14cmほどで茎は1.2m程度で、ナミビア南部と南アフリカ北西部に分布します。それ以外にも花の細かい特徴が記載されていますが割愛します。

これは論文ではなく、植物図鑑の解説のようなものですから、記述は短くこの程度の簡単なものです。しかし、van JaarsveldはガリエペンシスがBowiea volubilisの亜種とする意見も示しつつ、本文ではBowiea gariepensisで通しています。学名は一度決まったら不変なものではなく、新たな研究の進展により変わることが度々あります。実際にB. gariepensisがB. volubilisの亜種とされたことを見てもそれはわかります。ですから、ガリエペンシスもいつか亜種ではなく、いつの日か独立種とされる可能性はあるのでしょう。個人的には、単純に外見的な違いだけではなく、分布の隔たりを見るに生殖隔離が既に起きているように見受けられます。何を持って亜種とされたのかわかりませんが、その根拠が気になります。当該論文を上手いこと見つけられればいいのですが…



おまけ

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1984年の『Veld & Flora』に記載されたガリエペンシス。絵自体は1983年に描かれたものですから、初記載時の絵かもしれません。ちなみに、まだこの時は"Bowiea gariepensis Van Jaarsveld, sp. nov."と表記されています。


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蒼角殿は南アフリカ、ジンバブエ、ザンビア、タンザニア、ウガンダ、ケニア、モザンビーク、マラウイ、アンゴラ原産の、モジャモジャしたつるを持つ球根植物です。1867年にHarv. ex Hook.f.により命名されました。

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蒼角殿 Bowiea volubilis Harv. ex hook.f.

蒼角殿には強心作用があるとされていますが、原産地ではある種の薬草として利用されてきた歴史があります。蒼角殿に含まれる有効成分を調べた論文もあるようですが、本日は蒼角殿の薬草としての利用について調査した論文をご紹介します。

本日ご紹介するのは、南アフリカの研究者であるL.J. Ramarumo、A. Maroyi & M.P. Tshisikhaweの『Bowiea volubilis Harv. ex Hook.f. subsp. volubilis : A therapeutic plant species used by the traditional healers in the Soutpansberg Region, Vhembe Biosphere Reserve, Limpopo Province, South Africa』です。2019年に発表された新しい論文です。

論文は南アフリカのLimpopo州Vhembe自然保護区、Soutpansberg地域の伝統的なヒーラーによるB. volubilisの治療への利用を調査したものです。調査はヒーラー133人に対するインタビューにより収集されました。
身近にある植物を薬草として利用は、太古の昔から行われています。世界の人口の80%以上、特に農村地域では健康のために薬草に依存しています。アフリカ南部では4000種類以上の植物が、病気に対して治療薬として利用されているそうです。

B. volubilisは発疹、幼児の駆虫薬。肝感染症、骨盤痛、幼児の黄疸などに使用されました。その薬草としての加工方法も目的により異なります。例えば、発疹にB. volubilisを使用する際は、新鮮な球根をみじん切りにして汁を絞り、これをボディーローションとして1日2回、5日間患部に使用します。肝感染症には、新鮮なB. volubilisの全体を茹でて、Momordica(M. boivinii、M. balsamica、M. cardiospermoides、M. foetida、M. repens)の新鮮な根と一緒に煎じます。これは、1日3回、2ヶ月間薬湯として飲まれます。骨盤痛には、茹でて刻んだ新鮮な球根と、Artabotrys monteiroaeの煎じ薬をトウモロコシ粉と混ぜて粥を作ります。粥として1日2回を1週間食べます。

このように、B. volubilisの利用法についての調査により、薬草としての可能性はあります。しかし、残念ながらB. volubilisの持つ薬理作用に関してはあまりわかっていません。抽出された個別成分の研究はあるようですが、植物そのものが漢方薬のように効果があるかは検証されていません。しかし、B. volubilisが様々な生理活性物質を含んでいることは確かなので、今後の研究に期待したいところです。


最後に、問題はB. volubilisがこのように生薬として様々な用途で利用されるため、個体数が減少して将来的に野生状態での絶滅の可能性があるということです。著者らは栽培の必要性を訴えています。

以上が論文の内容となります。
個人的に驚いたのは、意外にも用途に合わせて加工方法が異なり、他の薬草と合わせて調合されるなど調合方法が複雑なことです。薬草としての長い歴史的な経緯を感じさせます。
また、著者らは栽培の必要性を訴えていますが、栽培した時に野生株と比較して薬効成分が減少しないかは気になるところです。実際にその点を重視して調べた論文もあるようです。Bowiea volubilisの実際の薬理作用についても気になります。今後も注視して行きたいと考えております。


おまけ
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1867年の『Botanical Magazine』に掲載されたBowiea volubilisの図表。この論文によりB. volubilisは正式に新種として記載されました。



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あれは確か2020年のことだったと思いますが、園芸店でたまたま火星人を見かけました。「火星人」とは塊根植物の名前で、本当に火星人が出没したわけではありません。私が見た火星人は、水で膨らむタイプの種まきポットに植えられていて、3cmくらいの鉢に植えられていました。火星人自体はそれほど珍しくありませんが、火星人は巨大に育ちますから、塊根が1cmくらいの小苗は初めてだったので購入しました。まあ、ワンコインだったこともありますが…
まあ、とにかく種まきポットは水はけ等もろもろ良くないので、直ぐに植え替えました。しかし、何故か大量のネジラミが蔓延っており辟易しました。

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今年、植え替えましたが、これは植え替え前。何故か斜めに傾いてます。

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根詰まりの度合いが激しく、鉢を破壊しないと抜くことが出来ませんでした。抜く時に塊根を痛めて乳液が出てしまいました。しかし、塊根が太るのが早い。
あと、ネジラミは根絶していました。


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現在の様子。蔓が暴れていますが、あまり勢いはありません。もう少し遮光強めにした方がいいのでしょうか?

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しかし、火星人の画像を検索すると、塊根の形が縦長に育ったものと、丸く育ったものとがあります。この違いは何が原因でしょうか? 良くわかりません。

火星人はかつてはガガイモ科とされていましたが、現在はキョウチクトウ科に吸収されました。科以下については良くわかりません。NCBI Taxonomy browserでは、Asclepiadoidead、Asclepiadeae、Fockeeaeとされているみたいです。これは、果たしてガガイモ亜科、ガガイモ連、フォッケア(フォクケア)亜連でいいのでしょうか? いまいち自信がありません…
ちなみに、FockeeaeはFockea属とCibirhiza属からなります。

火星人の学名は1895年に命名されたFockea edulis (Thunb.) K.Schum.です。K.Schum.はドイツの植物学者でサボテンの研究で知られるKarl Moritz Schumannのことです。サボテン同好学会(後のドイツ・サボテン学会)の会長でした。
Fockea属とされるまでの経過は以外の通りです。

1794年 Pergularia edulis Thunb.
1819年 Echites edulis (Thunb.) Thunb.
1842年 Chymocormus edulis (Thunb.) Harv.
1895年 Fockea edulis (Thunb.) K.Schum.


ちなみに、火星人には他にも異名があります。
1838年 Brachystelma macrorrhizum E.Mey.
1844年 Fockea cylindrica R.A.Dyer
1933年 Fockea glabra Decne.


Fockea属は1839年に創設されました。Chymocormus属も提唱されましたが、わずか3年差で早く命名されたFockea属が正式な属名となりました。
1839年 Fockea Endl.
1842年 Chymocormus Harv.
かつてFockea属と命名された種は18種類あるとされていたみたいですが、どんどん種が統合されて現在では6種類になりました。F. edulisは南アフリカ原産ですが、ほかの5種は南アフリカからケニアやタンザニアなどのアフリカ大陸東側に分布します。

一応、Fockea属の全種類の命名年と学名のリストを示します。
1839年 Fockea capensis Endl.
1893年 Fockea angustifolia K.Schum.
              Fockea multiflora K.Schum.
1895年 Fockea edulis (Thunb.) K.Schum.
1908年 Fockea comaru (E.Mey.) N.E.Br.
1916年 Fockea sinuata (E.Mey.) Druce




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緑の太鼓(Green drum)はマダガスカル原産のツル植物です。葉が多肉質でコインの様な形をしており、Silver Dollar PlantとかDollar vineなどと呼ばれています。
ツルが増えて鉢が明らかに小さいので、植え替えました。


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ツルが暴れています。鉢が小さいのでバランスが悪く、風が吹くと鉢ごと転がってしまいます。

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抜くと根が回っていました。

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朱泥鉢に植え替えました。プラ鉢より重いので、多少は倒れにくいはず。

そういえば、緑の太鼓はウリ科植物です。ウリ科の多肉植物といえば、大きな塊根を持つGerrardantus やIbervilleaなどがあります。ここいらへんも好きなのですが、あえて買わないことにしています。なぜなら、緑の太鼓のツルは垂れ下がるだけなので場所を取りませんが、GerrardantusやIbervilleaはツルが長く伸びて絡まりつくので、それなりの置場所が必要だからです。残念ながらそんなスペースはありません。

緑の太鼓の分類は、ウリ科Cucurbitaceae、ザノニア亜科Zanonioideae、ザノニア族Zanonieaeです。
ザノニア族にはGerrardantusやZygosicyosも含まれます。ザノニア族は基本的にツル植物です。
ザノニア族は5属が含まれます。XerosicyosとZygosicyosはマダガスカル原産、Gerrardantusは南アフリカや熱帯アフリカ原産です。Zanoniaはインドからニューギニア原産でアジア域に分布します。Siolmatraは南米原産です。


緑の太鼓の学名は1939年に命名された、Xerosicyos danguyi Humbertです。Humbertはフランスの植物学者であるHenri Jean Humbertのことです。


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カンガルーポケットはマレーシアからオーストラリア原産のツル植物です。葉は多肉質で乾燥に耐性があります。乾燥への耐性は、着生植物の特徴です。着生植物は樹木の幹に根で張り付いて育ちます。注意が必要なのは、着生植物は寄生しているわけではないので、樹木から栄養を貰っているわけではないことです。
じゃあなんで着生するのかというと、これは熱帯林に適応するためです。熱帯林は数十メートルの高い木がひしめき合って生えています。そのため、熱帯林の中は非常に暗く、日中でも日が差しません。日本の森林では、下生えで笹なんかが生えていますが、熱帯林は下生えがなく雑草すら生えることが出来ないのです。樹木の幹に着生すれば、地面と異なり日を浴びることが出来るのです。ですから、熱帯林の草本は着生植物が非常に多いのが特徴です。
着生植物は沢山あります。例えばランの仲間、胡蝶蘭をはじめとした洋ランのほとんどの種類は着生植物です。ラン科の約15000種のほとんどが着生植物です。他にもパイナップル科の植物、例えばチランドシアやフリーセア、ネオレゲリアなどが着生植物として有名です。また、熱帯林に生えるリプサリスや孔雀サボテンなどのサボテンも着生植物です。熱帯林ではオオタニワタリやビカクシダなど着生シダも多く見られます。


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やや多肉質の葉を持つ。

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中が中空の大きな袋状の葉も持ちます。袋の中には根が生えています。

ネットでカンガルーポケットを検索したところ、気になる記述が割と目につきました。それは、中空の袋を"貯水嚢"と呼んで、水を貯めるとかいい加減なことが書いてあることです。カンガルーポケットの袋に水を貯める機能はありません。育てている人も、水が溜まっている所を見たことはないはずなんですけどね。不思議です。
この袋の機能は、アリに巣を提供するためのものです。アリが袋の中に巣を作って、アリの出す老廃物から袋内の根で栄養を吸収します。また、アリは巣を守るために、カンガルーポケットの葉を食べる毛虫などの昆虫を攻撃します。熱帯林の着生植物では割とアリと共生するアリ植物は普通に見られます。
カンガルーポケットはアリ植物ですが、日本のアリは入りませんから、そこは安心です。


カンガルーポケットはフクロカズラという名前もあります。海外ではKangaroo pouch、Bladder vineなどの呼び方があります。ポケットではなくポーチですが、やはり袋状の葉からきた名前です。Bladder vineは膀胱のツタという意味ですが、ラグビーボールが豚の膀胱から出来ていた様に、膀胱は生活に利用されてきたことから付いた名前でしょう。日本人にはぴんとこないでしょうけど。

カンガルーポケットの学名は1886年に命名された、Dischidia vidalii Becc.です。学名はペクチノイデスと呼ばれ勝ちですか、これは1912年に命名されたDischidia pectinoides H.Pearsonから来ていますが、こちらは異名で正式に認められている学名ではありません。

そういえば、Dischidiaはガガイモ科とされて来ましたが、遺伝子解析による最新の分類体系であるAPG分類体系では、ガガイモ科はキョウチクトウ科となりました。ですから、現在Dischidiaはキョウチクトウ科に分類されます。


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ソフォラ・プロストラタはニュージーランド原産の低木です。
枝がジグザグに伸びるので、ジグザグの木(マダガスカルのディデイエレア科植物)に似ていますが、ソフォラはマメ科植物です。

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Sophora prostrata Buchanan, 1883 publ. 1884
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数年育てていますが、幹はなかなか太くなりません。まあ、元々つまようじくらいの細さだったので、だいぶ太くなったとも言えます。
これは、‘Little Baby’の名前で売られていたものです。わざわざ品種を作る必要もなさそうですが、ただの商品名かもしれません。

海外の趣味家はかなり肥培しているみたいなので、堆肥をてんこ盛りにして水多目で育てたほうがいいかもしれません。
戸外で越冬できるか試してみましたが、枝先がだいぶ枯れてしまいました。完全戸外栽培はなかなか厳しい模様です。大きくなれば耐寒性もあがるかもしれませんが。

ソフォラ属=クララ属です。クララとはクサエンジュのことで、結構毒性が高いようです。ソフォラ・プロストラタはどうなんでしょうかね?


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英語でSea onion、日本では子持ちオーニソガラムの名前で知られているバルブを紹介します。

子持ちオーニソガラムはバルブ類、つまりは球根植物です。ただし、チューリップなどの球根と異なり球根は土に埋まらず、親球根から仔球根が出来てそれがポロポロ落ちて増えます。薄皮の内側に仔が出来て、薄皮が剥がれると仔球根が出てくる様子から、Pregnant Onion、つまり妊娠中のタマネギと言われることもあるようです。
何故かネットではヨーロッパ原産と書かれることもありますが、南アフリカ原産です。一応、ケープバルブと呼べないこともない気がします。

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上の写真の様に、仔球根が親球根からポロポロ落ちます。

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落ちた仔球根は転がった先で、根と芽を出して育ちます。乾燥に強いので、生着率は高いようです。

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転がった先で育ち、また仔球根を出して増えます。

さて、育て方ですが、これは物凄く簡単です。
地植えして放置でOK。霜に強く、雪が積もっても平気です。
以前は鉢栽培していたのですが、生長が早くよく増えるので、根詰まりを起こしやすいためやや面倒でした。
ただ、路地栽培は簡単で良いのですが、どんどん増えて手に終えなくなる感じはあります。

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増えすぎて困ります。

最後に学名についてです。
Ornithogalum caudatumとされがちですが、正式な学名は異なります。その経緯を解説します。
まず、1777年にオランダのニコラウス・フォン・ジャカンが、Ornithogalum longibracteatumと命名したのが最初のようです。ジャカンは神聖ローマ皇帝のフランツ1世により西インド諸島の調査を行った人物で、モーツァルトの友人とのことです。ちなみに、グランカクタスの佐藤勉さんが書いた『世界の多肉 3070種』ではこの学名を採用しているみたいで、和名は海ネギとなっています。ただし学名はOrnithogalum lonqibracfcatumと盛大な誤植があります。
1789年にジャカンにより、学名はOrnithogalum caudatumに変更されました。同年、スコットランドの植物学者であるウィリアム・エイトンにより、やはりO. caudatumとされました。
その後、1794年にスウェーデンの植物学者・博物学者・医学者であるカール・ペーテル・ツンベルクにより、Ornithogalum bracteatumとされました。ツンベルクは二名式学名の提唱者であり現代分類学の祖であるカール・フォン・リンネの弟子であり、鎖国下の日本にも来て出島に滞在しました。ツンベルクに献名されて命名された日本の植物の学名も沢山あり、種小名がthunbergiiとあるユキヤナギ、ハルリンドウ、タブノキ、クロマツ、ユウスゲなどがあります。
2009年に遺伝子解析の結果を踏まえ、Ornithogalum属からAlbuca属に移動となりました。つまり、Albuca bracteataです。この学名は、ツンベルクの学名を正当として命名されました。ですから表記上、Albuca bracteata (Thunb.) J.C.Manning & Goldblattが正式名称です。J.C.Manning & Goldblattは、南アフリカの植物学者であるジョン・チャールズ・マニングとピーター・ゴールドブラットのことです。


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