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カテゴリ: アロエ・ハウォルチア

アロエ属(広義)が分割されて、アロエ(狭義, Aloe)、アロイデンドロン(Aloidendron)、アロイアンペロス(Aloiampelos)、クマラ(Kumara)、アリスタロエ(Aristaloe)、ゴニアロエ(Gonialoe)となりました。とは言うものの、そのほとんどの種はアロエ属(狭義)に含まれ、分割されて出来た新属は皆小さなグループです。
アロエと言えば非常に多くの種類があり、様々な種類がホームセンターや園芸店で販売されています。昔から知られるキダチアロエ(Aloe arborescens)やアロエ・ベラ(Aloe vera)だけではなく、割と珍しい種類も見かけます。また、アロエから分割されて出来た新属は、大抵は旧・学名で販売されています。ディコトマ(Aloe dichotoma=Aloidendron dichotomum)もたまに見かけますし、千代田錦(Aloe variegata=Gonialoe variegata)や綾錦(Aloe aristata=Aristaloe aristata)は古くから普及し、乙姫の舞扇(Aloe plicatilis=Kumara plicatilis)も最近は良く目にします。これらは、特に近年では入手が容易になってきています。
しかし、そんな中でもアロイアンペロス(Aloiampelos)だけは、何故かまったく見かけません。普及種もなく、情報も貧弱です。どのような多肉植物なのでしょうか?
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Aloiampelos striatula var. caesia

アロイアンペロスはヒョロヒョロと伸びて、ややだらしない感じがするアロエの仲間です。しかし、これは枝同士が絡まりながら長く伸びてブッシュを形成したり、あるいは低木に寄りかかるする育ち方をするからです。学名自体がAloe+ampelos(ツル植物)ですから、特徴をよく表しています。
アロイアンペロスは低地に育ち沿岸部付近に多いのですが、A. striatulaのように内陸部の標高の高い降雪地帯に生えるものもあります。
花には普通のアロエと同様に太陽鳥が訪れます。


アロイアンペロスは1825年に4種がアロエ属として命名されました。しかし、2013年には命Aloiampelos Klopper & Gideon F.Sm.と命名され、アロエ属から独立しました。アロイアンペロス属に含まれる種類を見てみましょう。

①Aloiampelos ciliaris
キリアリスの学名は、2013年に命名されたAloiampelos ciliaris (Haw.) Klopper & Gideon F.Sm.です。最初に命名されたのは1825年で学名はAloe ciliaris Haw.でした。また、キリアリスには4変種が知られています。
・Aloiampelos ciliaris var. ciliaris
異名として1903年に命名されたAloe ciliaris var. franaganii Schönlandが知られています。
・Aloiampelos ciliaris var. redacta (S.Carter) Klopper & Gideon F.Sm.
1990年に命名されたAloe ciliaris var. redacta S.Carterに由来します。
・Aloiampelos ciliaris var. tidmarshii (Schönland) Klopper & Gideon F.Sm.
1903年に命名されたAloe ciliaris var. tidmarshii Schönlandに由来します。1943年にはAloe tidmarshii (Schönland) F.S.Mull. ex R.A.Dyerと命名されました。
・Aloiampelos ciliaris nothovar. gigas (Resende) Gideon F.Sm. & Figueiredo 
1943年に命名されたAloe ciliaris nothof. gigas Resendeに由来します。

②Aloiampelos commixta
コミクスタの学名は、2013年に命名されたAloiampelos commixta (A.Berger) Klopper & Gideon F.Sm.です。1908年に命名されたAloe commixta A.Bergerに由来します。

③Aloiampelos decumbens
デクンベンスの学名は、2013年に命名されたAloiampelos decumbens (Reynolds) Klopper & Gideon F.Sm.です。1950年に命名されたAloe gracilis var. decumbens Reynoldsに由来します。2008年に命名されたAloe decumbens (Reynolds) van Jaarsv.もあります。

④Aloiampelos gracilis
グラシリスの学名は、2013年に命名されたAloiampelos gracilis (Haw.) Klopper & Gideon F.Sm.です。1825年に命名されたAloe gracilis Haw.に由来します。異名として、1906年に命名されたAloe laxiflora N.E.Br.が知られています。

⑤Aloiampelos juddii
ジュディイの学名は、2013年に命名されたAloiampelos juddii (van Jaarsv.) Klopper & Gideon F.Sm.です。2008年に命名されたAloe juddii van Jaarsv.に由来します。

⑥Aloiampelos striatula
ストリアツラの学名は、2013年に命名されたAloiampelos striatula (Haw.) Klopper & Gideon F.Sm.です。1825年に命名されたAloe striatula Haw.に由来します。ストリアツラには2変種が知られています。
・Aloiampelos striatula var. striatula
変種ストリアツラには、1869年に命名されたAloe subinermis Lem.、1880年に命名されたAloe macowanii、1892年に命名されたAloe aurantiaca Baker、1898年に命名されたAloe cascadensis Kuntzeという異名が知られています。
・Aloiampelos striatula var. caesia (Reynolds) Klopper & Gideon F.Sm.

1936年に命名されたAloe striatula var. caesia Reynoldsに由来します。

⑦Aloiampelos tenuior 
テヌイオルの学名は、2013年に命名されたAloiampelos tenuior (Haw.) Klopper & Gideon F.Sm.です。1825年に命名されたAloe tenuior Haw.に由来します。また、テヌイオルには5変種が命名されましたが、現在では認められておりません。一応記しておくと、1900年(publ. 1901)に命名されたAloe tenuior var. glaucescens Zahlbr.、1936年に命名されたAloe tenuior var. decidua Reynolds、1936年に命名されたAloe tenuior var. rubriflora Reynolds、1956年に命名されたAloe tenuior var. densiflora、2007年に命名されたAloe tenuior var. viridifolia van Jaarsv.です。

終わりに
アロイアンペロスは国内ではほとんど見かけないアロエの仲間です。鉢に植えられた苗は、何やら徒長してしまったアロエのように見えて、いまいち食指が動かないかもしれません。しかし、地植えをして地際から枝が沢山出て絡まるようにブッシュを形成させるのが本来の楽しみかたです。南アフリカではキリアリスやテヌイオルなどアロイアンペロスは園芸に広く使われています。テヌイオルは「庭師のアロエ(the gardener's aloe)」という名前で知られているくらいです。ストリアツラは生け垣として、特にレソトでは植栽されるようです。アロイアンペロスは、沢山の太陽鳥をはじめとした鳥を庭に引き付けることでも楽しませてくれます。とは言うものの、日本国内では庭に植えるわけにもいかないでしょうし、本来の姿を楽しむことは中々難しいかもしれませんね。


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アロエの仲間というかアロエと近縁な植物と言えば、ガステリア(Gasteria)、ハウォルチア(Haworthia)、アストロロバ(Astroloba)とされてきました。これは、主に花の構造から推察された分類でした。この分類は、近年の遺伝子解析の結果からも支持されており、まとめてアロエ類などと呼ばれています。しかし、意外なこともわかりました。ハウォルチア属(広義)は3分割され、Haworthia(狭義)、Haworthiopsis、Tulistaとなり、しかもそれぞれが特別近縁ではないということが分かりました。それはアロエ属(広義)も同様で、Aloe(狭義)、Aloidendron、Aloiampelos、Aristaloe、Gonialoe、Kumaraとなりました。この旧・アロエ属のうち、AristaloeとGonialoeはどうやら近縁である可能性が高いようです。

長い前置きとなりましたが、本日の主役はアロエ属から分離されたゴニアロエ属(Gonialoe)です。ゴニアロエは3種類しかありませんが、代表種はGonialoe variegata(千代田錦)です。G. variegataは昔から園芸店で販売されてきましたが、G. variegata以外のゴニアロエは園芸店には出回りません。そんな中、正月明けに五反田TOCで開催されたサボテン・多肉植物のビッグバザールで、Gonialoe sladenianaを入手しました。良い機会ですから、ゴニアロエとは何者なのか調べみました。

Gonialoeの誕生
ゴニアロエの3種はすべて最初はアロエ属とされました。しかし、2014年にゴニアロエ属とされました。つまり、Gonialoe (Baker) Boatwr. & J.C.Manningです。ここで括弧の中のBakerとは何かという疑問が浮かびます。単純にBoatwr. & J.C.Manningが命名しただけではないことが分かります。調べてみると1880年にJohn Gilbert Bakerがアロエ属の内部の分類において、ゴニアロエ亜属(subgenus Gonialoe)を創設したということのようです。このゴニアロエ亜属を2014年にBoatwr. & J.C.Manningが亜属から新属に昇格させたということが事の経緯です。

①Gonialoe variegata
ゴニアロエで一番早く命名されたヴァリエガタの学名から見ていきましょう。ヴァリエガタの学名は2014年に命名されたGonialoe variegata (L.) Boatwr. & J.C.Manningです。はじめて命名されたのは1753年のAloe variegata L.で、ゴニアロエとなるまでこの学名でした。1753年に現在の二名式学名を考案したCarl von Linneの命名ですから、ヴァリエガタはアロエ属の初期メンバーということになりますね。
G. variegataには異名があり、1804年に命名されたAloe punctata Haw.や、1908年に命名された変種であるAloe variegata var. haworthii A.Bergerがありますが、現在では認められておりません。また、1928年にはAloe variegataのより大型で模様が美しいとされたAloe ausana Dinterも命名されますが、現在このタイプは確認されていないようです。

ヴァリエガタはナミビア南部から南アフリカのNorthen Cape、Western Cape、Eastern Cape西部から自由州西部まで広く分布します。粘土質、まれに花崗岩の崩壊した土壌で育ちます。生息地の冬は寒くなります。葉の長さは最大15cmです。
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Gonialoe variegata(千代田錦)

②Gonialoe sladeniana
スラデニアナもヴァリエガタと同様に2014年にGonialoe sladeniana (Pole-Evans) Boatwr. & J.C.Manningと命名されました。はじめてスラデニアナが命名されたのは1920年のAloe sladeniana Pole-Evansです。また、1938年には命名されたAloe carowii Reynoldsは異名とされています。
スラデニアナはナミビア中西部の断崖にのみ分布し、崩壊した花崗岩上で育ちます。生息地の冬は非常に寒いということです。葉の長さは最大9cmと小型です。
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Gonialoe sladeniana

③Gonialoe dinteri
ディンテリもヴァリエガタやスラデニアナと同様に、2014年にGonialoe dinteri (A.Berger) Boatwr. & J.C.Manningと命名されました。ディンテリがはじめて命名されたのは1914年のAloe dinteri A.Bergerです。
ディンテリはナミビア北西部とアンゴラ南西部に分布します。砂地あるいは岩場、石灰岩の割れ目、茂みに生えます。葉は長さ30cmとゴニアロエでは最大種です。

Tulista?
また、ゴニアロエ属が誕生した2014年に、G.D.Rowleyによりこの3種類はTulista Raf.とする意見もありました。G.D.Rowleyはツリスタ属を広くとり、現在のGonialoe、Aristaloe、Tulista、Astroloba、さらに一部のHaworthiopsisを含んだものでした。基本的にはGonialoe、Aristaloe、Tulista、Astrolobaは遺伝的にも近縁ですから、格別おかしな意見ではありません。これは、どの範囲で区切るかという尺度の問題です。それほどはっきりしたものでもないでしょう。ただ、Astrolobaなどは属内で非常によくまとまっており、アストロロバ属として独立していることに意味はあるのでしょう。ただ、HaworthiopsisはGasteriaと近縁で、Gonialoeとは近縁ではありません。

Aloe variegataの発見
オランダ東インド会社は1652年に現在のケープタウンに相当する場所に基地を設立しました。1679年にSimon van der Stelが司令官に任命され、1690年には総督に就任しました。1685年から1686年にかけて、van der Stelはナマクア族の土地で銅資源を探索する遠征を行いました。遠征隊は1685年の10月にCopper(=銅)山脈に到着しました。遠征隊に同行した画家のHendrik Claudiusにより、遠征中の地理、地質学、動物、植物、先住民の絵が描かれました。
また、遠征隊の日記が作成されましたが、van der StelもClaudiusも資料を出版しませんでした。これらの資料は1922年に、何故かアイルランドの首都ダブリンで発見されました。そして1932年にWaterhouseにより出版されました。
それによると、ヴァリエガタは1685年の10月16日、Springbok地域で記録されました。これが、ヴァリエガタの知られている限りの一番最初の記録です。


最後に
幾つかのサイト、主としてキュー王立植物園のデータベースや南アフリカ国立生物多様性研究所(South African National Biodiversity Institute)の資料を参考にしましたが、過去に論文等で知ったことも補足情報として追記しています。しかし、調べてみて分かりましたが、ゴニアロエは情報があまりありませんね。特別珍しくもなく、ヴァリエガタなどは普及種であるにも関わらずです。情報の質も良くありませんから、ゴニアロエについての良い論文が出てほしいものです。特にGonialoe sladenianaなどは、現在の個体数や環境情報がほとんどないような状況らしいので、将来的な保護のためにも科学的な調査が必要でしょう。


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硬葉系ハウォルチア(Haworthiopsis)は人気がなく、昔から国内で流通しているにも関わらずあまり見かけません。私もちまちま集めていますが、中々集まりません。去年の10月に神奈川県川崎市のタナベフラワーで多肉植物のイベントががあり訪れましたが、珍しいことに硬葉系ハウォルチアがけっこうあり、Haworthiopsis venosaを購入しました。
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Haworthiopsis venosa

ハウォルチアは南アフリカ原産ですが、H. venosaは南アフリカだけではなくナミビアにも分布する可能性があり、非常に広範囲に分布します。厳しい環境ですが、茂みの中や岩の隙間などの陰に生えます。自生地にはEuphorbia aggregata、Crassula obvallata、Cotyledon toxicarina、Mesembrhanthemum saxicolum、Stapelia flavirostrisなどが生えます。

さて、H. venosaが最初に命名されたのは1783年のことで、実に200年以上前のことです。この時はアロエ属とされており、Aloe venosa Lam.でした。ハウォルチア属が創設されたのは1809年ですから、1809年より前に命名されたハウォルチアはすべてアロエ属でした。1821年にはHaworthia venosa (Lam.) Haw.とされました。この学名が一番良く使用されており、国内では園芸的にも未だにこの名前で販売されています。その後、1891年にCatevala venosa (Lam.) Kuntzeも提唱されましたが、このカテバラ属自体が現在は存在しない属ですから認められていません。2013年には硬葉系ハウォルチアがHaworthiopsisとされましたが、H. venosaもハウォルチア属からハウォルチオプシス属とされました。つまり、Haworthiopsis venosa (Lam.) G.D.Rowleyです。残念ながら国内ではハウォルチオプシスの使用は少ないのが現状です。しかし、遺伝子解析の結果からも、ハウォルチア属とハウォルチオプシス属の分離はまず間違いがないでしょう。H. venosaには他にも異名がありますから年表で示します。

1804年 Aloe anomala Haw.
              Aloe recurva Haw.
              Aloe tricolor Haw.
1811年 Apicra anomala (Haw.) Willd.
              Apicra recurva (Haw.) Willd.
              Apicra tricolor (Haw.) Willd.
1812年 Haworthia recurva (Willd.) Haw.
1876年 Haworthia distincta N.E.Br.
1891年 Catevala recurva (Willd.) Kuntze
1943年 Haworthia venosa var. oertendahlii Hjelmq.

1976年 venosa subsp. recurva (Haw.) M.B.Bayer

H. venosaはよく見ると、葉の上面は透き通っています。ハウォルチオプシス属ではこのような「窓」があるものはあまりありませんが、しかも窓に葉脈のような模様が入るのは、H. venosa、H. tessellata、H. woolleyi、H. granulataくらいです。これらの共通する特徴を持つハウォルチオプシスは、H. venosaの亜種あるいは変種とされたこともあります。H. venosaとの関連だけをピックアップして見てみましょう。          DSC_1797
Haworthiopsis woolleyi
              (Poelln.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia woolleyi Poelln., 1937
→Haworthia venosa subsp. woolleyi
                     (Poelln.) Halda, 1997
→Haworthiopsis venosa var. woolleyi
                    (Poelln.) Breuer, 2016


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Haworthiopsis tessellata
                   (Haw.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia tessellata Haw., 1824
→Aloe tessellata
         (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
→Haworthia venosa subsp. tessellata
                                 (Haw.) M.B.Bayer, 1982
→Haworthia venosa var. tessellata
                                        (Haw.) Halda, 1997


Haworthiopsis granulata
           (Marloth) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia granulata Marloth, 1912
→Haworthia venosa subsp. granulata
                     (Marloth) M.B.Bayer, 1976


ちなみに、何故か共通した特徴のないように見えるニグラもH. venosaの亜種とされたことがあるようです。一応、情報を記載します。
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Haworthiopsis nigra
                   (Haw.) G.D.Rowley, 2013
異名
Apicra nigra Haw., 1824
→Aloe nigra (Haw.)
               Schult. & Schult.f., 1829 
→Haworthia nigra (Haw.) Baker, 1880
→Haworthia venosa subsp. nigra
                                (Haw.) Halda, 1997




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今年の正月明けに五反田TOCで開催された、新年のサボテン・多肉植物のビッグバザールへ行って来ました。今回のビッグバザールは、アロエがいつもより多く珍しいものも沢山ありました。悩みましたが、マダガスカル原産の小型アロエであるバケリ(Aloe bakeri)を購入しました。バケリはアロエにしては葉は薄くて非常に硬く、まるでディッキア(Dyckia)のようです。

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Aloe bakeri

バケリは園芸店では見かけないアロエですが、どのような多肉植物なのでしょうか? 少し調べてみました。取り敢えず論文を当たってみましたが、2019年のColin C. Walkerの論文、『Aloe bakeri - a critically endangered highly localized Madagascan endemic』が見つかりました。早速内容を見ていきましょう。

イギリスの植物学者であるGeorge Francis Scott-Elliotは1888年から1890年にかけてマダガスカルを訪れました。マダガスカル最南東にあるFort Dauphin (Taolagnaro, Tolanaro, Tolagnaro)での採取で、Aloe bakeriは発見されました。Scott-Elliotはキュー王立植物園のアロエの専門家であるJohn Gilbert Bakerに対する献名として、1891年にマダガスカルで採取した新しいアロエにAloe bakeri Scott-Elliotと命名しました。
 
1994年にA. bakeriをGuillauminiaとする、つまりはGuillauminia bakeri (Scott-Elliot) P.V.Heathがありました。このGuillauminiaは、Guillauminia albiflora(Aloe albiflora)のために、1956年にBertrandにより提唱された属です。Heathは1種類しかなかったGuillauminiaを拡大し、マダガスカルの矮性アロエであるA. bakeri、A. bellatula、A. calcairophylla、A. descoingsii、A. rauhiiを含ませましたが、それまではGuillauminiaが注目を浴びることはなく無視されてきました。しかし、アロエの権威であったReynoldsはGuillauminiaを採用しないなど、浸透したとは言いがたいようです。しかも、1995年にGideon F. Smithらにより発表された『The taxonomy of Aloinella, Guillauminia and Lemeea (Aloacaea)』ではGuillauminiaを詳細に分析し、アロエ属とは異なりGuillauminiaのみに共通する特徴がないことなどが指摘され、Guillauminiaは明確に否定されています。さらに、近年の遺伝子解析の結果では、Guillauminiaの所属種同士が必ずしも近縁ではなく、アロエ属の中に埋没してしまうことが明らかとなりました。よって、現在Guillauminiaは認められておりません。
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Aloe albiflora

次に自生地を調査した植物学者たちの報告を見てみましょう。Gilberd Reynoldsは1955年の6月から10月まで、マダガスカルでアロエを探して、自動車で4000マイル(6437km)以上の距離を運転しました。ReynoldsはFort Dauphinの近くでAloe bakeriを大量に見つけました。それは、50から100の密集したグループで生長していました。
次いで、Werner Rauhはマダガスカルに9回旅行しました。Rauhの1964年の報告では、Fort Dauphin付近でA. bakeriを観察しています。A. bakeriはTolanaro北西にあるVinanibe付近のまばらな花崗岩の露頭の腐植土が溜まった岩の亀裂で育つとしています。

CormanとMaysは2008年の報告で、去年(2007年)にマダガスカル南部を訪れたNorbert RebmannとPhilippe Cormanは、Euphorbia millii var. imperataeとともに生育するFort Dauphin付近のA. bakeriを見つけました。しかし、近くの港の開発に必要な石材採取のために、A. bakeriの生息地が破壊されていました。CormanはかつてRauhが観察した岩場で、A. bakeriは4個体しか見つかりませんでした。A. bakeriを発見したScott-Elliotは砂丘にも生息するとしていましたが、RebmannもCormanも砂丘ではA. bakeriを見つけることは出来ませんでした。
Castillon & Castillonは2010年の報告で、Taolagnaro付近の岩だらけの丘は、商業港と都市部の産業開発のため2年前に消滅したため、野生のA. bakeriは絶滅してしまったとしています。


以上が論文の簡単な要約となります。そういえば、1902年に命名されたAloe bakeri Hook.f. ex Bakerというアロエもありますが、こちらはAloe percrassa Tod.の異名です。A. percrassaは大型アロエですから、まったく似ていませんから間違いようはありませんね。
著者は絶滅したかは断言していませんが、キュー王立植物園のデータベースではA. bakeriは「絶滅」と表記されています。栽培は難しくないようですから、栽培品の維持はされています。しかし、自然環境に自生する多肉植物は非常に美しいものですから、大変悲しいことです。これ以上、多肉植物が絶滅してしまうことが起きてほしくありません。


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ガステリアは実に面白い多肉植物ですが、何故か人気がありません。どうしても、マニアックな印象がつきまといます。もしかしたら、臥牛が古典植物のように扱われ、微妙な姿の違いを観賞する傾向があるからかもしれません。ということですから、あまり人気がないのであまり販売されていません。ガステリア自体は昔から国内に流通していますから、レアとは言えない種類も多いはずですけどね。私も極々稀に販売されていたりしますから、機を逃さずにチマチマ集めて記事を書いてきました。また、現在、学術的に認められているガステリア属を異名を含めまとめた記事があります。
本日ご紹介するのはGasteria distichaです。「青竜刀」あるいは「無憂華」という名前もあるようですが、ネットの販売サイトでしか見たことがない名前です。実際に使われているのかは不明です。

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Gasteria disticha

G. distichaの学名は、1827年に命名されたGasteria disticha (L.) Haw.ですが、これは1753年にCarl von Linneが命名したAloe disticha L.から来ています。ガステリア属は1809年にGasteria Duvalが創設されるまではアロエ属とされていました。実はG. distichaは最初に命名されたガステリアです。また、1866年にはPtyas disticha (L.) Salib. not validly publ.も知られます。末尾に''not validly publ.とありますが、これは有効な公表ではないということですから、正式なものとは認められていないのでしょう。

G. distichaには変種が認められています。2007年にGasteria disticha var. robusta van Jaarsv.Gasteria disticha var. langebergensis van Jaarsv.が命名されたことに従い、基本種はGasteria disticha var. distichaとなりました。この内、変種ランゲベルゲンシスは独立種とされ、2019年にGasteria langebergensis (van Jaarsv.) van Jaarsv.となり、Gasteria distichaではなくなりました。さらに、2022年にはGasteria disticha var. marxiiがE. J. van JaarsveldとD. V. Tribbleにより提唱されていますが、まだ審議中といったところでしょうか。データベース上ではvar. marxiiの名前はまだ確認出来ません。


さて、ここからは異名を見ていきましょう。ガステリアは「分類学者の悪夢」と言われるくらい分類が混乱していた経緯があり、19世紀にはやたらめったらに学名が命名されました。そのため、うんざりする程に異名が沢山あります。というわけで、変種ディスティカの異名を命名年順に列挙します。

1768 Aloe linguiformis Mill.
1789 Aloe lingua var. angustifolia Aiton
          Aloe lingua var. crassifolia Aiton
1804 Aloe lingua var. latifolia Haw.
          Aloe lingua var. longifolia Haw.
          Aloe nigricans Haw.
          Aloe obliqua Jacq., nom. illeg.    
1809 Gasteria angustifolia (Aiton) Duval
          Gasteria longifolia (Haw.) Duval
          Gasteria nigricans (Haw.) Duval

1811 Aloe obscura Willd., nom. illeg.
1812 Aloe longifolia (Haw.) Haw., nom. illeg.
          Gasteria latifolia (Haw.) Haw.
1817 Aloe nigricans var. crassifolia Salm-Dyck
1819 Gasteria denticulata Haw.
1821 Aloe angustifolia
                     (Aiton) Salm-Dyck, nom. illeg.
          Aloe conspurcata Salm-Dyck
          Aloe obtusifolia Salm-Dyck, nom. illeg.
          Gasteria mollis Haw.
          Gasteria nigricans var. crassifolia
                            (Aiton) Haw.
1827 Gasteria conspurcata (Salm-Dyck) Haw.
          Gasteria crassifolia (Salm-Dyck) Haw.
          Gasteria disticha var. major Haw.
          Gasteria disticha var. minor Haw.
          Gasteria obtusifolia Haw.
1829 Aloe crassifolia
                         (Salm-Dyck) Schult. & Schult.f.
          Aloe mollis (Haw.) Schult. & Schult.f.
1840 Aloe retusifolia Haw. ex Steud.
1880 Gasteria disticha var. angustifolia Baker
          Gasteria disticha var. conspurcata
                                         (Salm-Dyck) Baker
          Gasteria platyphylla Baker

アロエだったりガステリアだったりしますが、とにかく様々な名前が付けられてきました。しかも、所々に'nom. illeg.'、つまりは非合法名が見受けられます。
そういえば、G. distichaははじめて命名されたガステリアだと述べましたが、ヨーロッパにはじめてもたらされたガステリアでもあります。G. distichaはCarl von LinneがAloe distichaと命名する前から知られていました。1689年にケープタウンの東でHendrik Oldenlandが採取し、'Aloe africana flore rubro folia maculis ab utraque parte albicantibus notata'という特徴の羅列で表記されました。その後、Carl von Linneにより、Aloe distichaと命名されましたが、この'disticha'とは葉が左右に分かれる二列性の特徴から、分配を意味するラテン語由来の種小名です。

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さて、タイトルにあります通り、Gasteria distichaにはじめて花が咲きました。Gasteriaはgaster=胃からきた名前ですが、名前の如く胃袋のような形の花を咲かせます。ガステリアの花には細長いタイプと短いタイプかありますが、G. distichaの花は短いタイプですね。丸みがあってかわいらしい花です。


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アロイデンドロンは樹木状となるアロエの仲間です。代表種はかつてアロエ・ディコトマ(Aloe dichotoma)と呼ばれていたAloidendron dichotomumです。アロイデンドロン属は近年の遺伝子解析の結果によりアロエ属から分離されました。現在アロイデンドロン属は7種類あるとされています。その点についてはかつて記事にしたことがあります。ご参照下さい。
アロエ属とアロイデンドロン属の関係は遺伝子解析により判明していますが、アロイデンドロン属内の分類はわかっていませんでした。そんな中、アロイデンドロン属の遺伝子を解析して近縁関係を解明した論文を見つけました。Panagiota Malakasi, Sidonie Bellot, Richard Dee & Olwen Graceの2019年の論文、『Museomics Clarifies the Classification of Aloidendron (Asphodelaceae), the Iconic African Tree Aloe』です。

アロイデンドロン属はアフリカ南部の砂漠を象徴する植物です。しかし、アロイデンドロン属内の進化関係は不明でした。そこで、アロイデンドロン属を遺伝子解析することにより、属内の系統関係を類推しています。ここでは、Aloestrela suzannaeというアロエ類が出てきますが、お恥ずかしい話ですが私はこのアロエストレラ属の存在を知りませんでした。アロエストレラ属は2019年に創設されましたが、Aloestrela suzannaeだけの1属1種の属です。しかし、新種というわけではなく、1921年に命名されたAloe suzannaeが2019年にAloestrela suzannaeとなりました。

アロイデンドロン属の分子系統
┏━━━━━━Aloe
┃     (Aloidendron sabaeumを含む)


┃    ┏━━━━Aloidendron ramossimum
┃    ┃
┃┏┫         ┏━Aloidendron dichotomum 1
┃┃┃     ┏┫
┃┃┃     ┃┗━Aloidendron dichotomum 2
┃┃┃┏ ┫
┃┃┃┃ ┗━━Aloidendron pillansii 1
┃┃┗┫
┃┃    ┗━━━Aloidendron pillansii 2
┃┃
┗┫            ┏━Aloidendron barberae 1
    ┃        ┏┫
    ┃        ┃┗━Aloidendron barberae 2
    ┃   ? ┫
    ┃        ┗━━Aloidendron barberae 3
    ┃
    ┃    ┏━━━Aloestrela suzannae 1
    ┃┏┫
    ┃┃┗━━━Aloestrela suzannae 2
    ┗┫
        ┃┏━━━Aloidendron eminens 1
        ┗┫
            ┗━━━Aloidendron eminens 2


アロイデンドロン属の系統関係は、Aloidendron sabaeum以外はまとまりのあるグループでした。しかし、論文ではA. barberaeが、A. ramossimum系統なのかA. eminens系統なのかは不明瞭でした。さらに、Aloestrela suzannaeは独立したアロエストレラ属ではなくA. eminensと近縁であり完全にアロイデンドロン属に含まれてしまうことがわかりました。また、驚くべきことにA. sabaeumはアロエ属に含まれてしまい、アロイデンドロン属とは近縁ではないことが明らかとなりました。よって、今後アロエストレラ属は消滅してアロイデンドロン属となり、A. sabaeumはアロエ属に復帰するかもしれません。しかし、論文ではAloidendron tongaensisが調べられていないようです。今後の研究が待たれます。また、A. pillansiiは2個体調べていますが、この2個体は近縁ではあるもののやや遺伝的に距離があるようです。この点も注視していく必要がありそうです。

以上が論文の簡単な要約です。
しかし、私が知らない間に創設されたアロエストレラ属を知らない間に否定する論文が出ていたということで、己の無知を思い知るとともにアロエ類の研究が盛んに行われていることを嬉しく思います。また、A. sabaeumの遺伝子解析の結果からは、アロエが樹木状となること=アロイデンドロンではないということを示唆しています。アロエ属であっても環境に対する適応により樹木状の形態をとる可能性があるのでしょう。そうなると、樹木状とならないというか草本に回帰したアロイデンドロン属も存在するかもしれませんね。今後の研究結果が非常に楽しみになります。


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「親しみやすさは軽蔑を生む」(familiarity breeds contempt)とは中々含蓄のあることわざです。このことわざはイソップ童話の「キツネとライオン」という話に出てくるフレーズなんだそうです。多肉植物に当てはめれば、普及種が親しみやすさとともに軽視される傾向があるのではないでしょうか?
個人的には普及種も好きで面白いと感じていますが、どうも世の中的には異なるようで、普及種の多肉植物が手入れもされずにカリカリになっていたりするのは大変悲しいことです。安くいつでもどこでも入手可能とあらば、扱いが荒くなるのもやむ無しかも知れません。まあ、普及種はお値段的にもお手軽ですからね。
しかし、そんな普及種であっても良いものは良いのだという熱い論考に出会いました。それは、イギリスのキュー王立植物園のPeter Brandhamの1981年の『Aloe aristata : an underrated species』です。


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Aristaloe aristata=Aloe aristata

著者にとって「親しみやすさは軽蔑を生む」ということわざはAloe aristataに当てはまるとしています。日本ではあまり見かけることがないAloe aristata(現在はAristaloe aristata, 綾錦)ですが、イギリスでは昔から知られている園芸植物です。イギリスではチェーン店や園芸用品店で入手可能で、多肉植物のコレクターはわざわざ栽培する価値はないと考えています。

Aloe albiflora, Aloe bakeri, Aloe bellatula, Aloe deltoideodonta, Aloe descoingsii, Aloe dumetorum, Aloe erensii, Aloe forbesii, Aloe haworthioides, Aloe humilis, Aloe jucunda, Aloe juvenna, Aloe myriacantha, Aloe polyphylla, Aloe rauhii, somaliensis, Aloe variegataなど魅力的な小型~中型のアロエは沢山ありますが、栽培が難しいものが多いとしています。これらは根を失いやすく、入手が難しく、開花しないと言います(※)。対して、A. aristataは良く子を吹き、入手は容易です。冬は乾燥させれば良く、直径6cm程度になると定期的に開花します。花は植物に対して大きいと言います。

※私も上記の1/3の種類くらいしか育てたことはありませんが、栽培はそれほど難しくありませんでした。しかし、晴れが少なく寒冷なイギリスの気候では難しい部分もあるのでしょう。

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Aloe descoingsii

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Aloe somaliensis

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Aloe haworthioides

A. aristataの花はピンク~鈍い赤色と淡黄色~クリーム色の2色からなる、アロエ属でも独特の花を咲かせます。これを著者は"bicolor"、つまりは「二色」と表現していますが、このラテン語は種小名で良く見かけますね。
A. aristataの葉は非常に多いことが特徴です。小型種のA. haworthioidesよりも多いとしています。葉の縁には柔らかいトゲがあり、葉の先端には長い毛のような芒があります。葉の表面には斑があり、葉裏により多くあります。

A. aristataは南アフリカ原産で、東ケープ州、オレンジ自由州、レソトなど非常に広い範囲に分布します。変種としてvar. leiophyllaとvar. parvifoliaが知られていました。しかし、アロエ研究の権威であったReynoldsによりA. aristataの範囲内と見なされ、認められていません。ただ、A. aristataには起源が不明の栽培種があり、分かりやすい4つのバリエーションを以下に示します。
1, 「典型的」なフォルム。自由に子を吹く最も一般的なタイプです。狭い灰緑色の葉を持ち、葉裏にはトゲと斑点が通常はランダムに、時には縦方向へ列となります。
2, 「単純」なフォルム。直径30cm以上となる可能性があり、滅多に子を吹きません。葉は「典型的」なフォルムより長く狭く、葉裏のトゲは縦に並ぶ傾向がより顕著です。
3, 'crisp'フォルム。非常に良く子を吹くタイプで、著者は最も魅力的と表現しています。葉は短く幅広で、トゲが多く葉裏では2~3列となります。
4, 'Cathedral Peak'フォルム。葉には斑点がほとんどなく、トゲも少数です。適度に子を吹きます。このフォルムは、南アフリカのDrakensberg山脈のCathedral Peak由来のものです。典型的なA. aristataの花を咲かせるにも関わらず、ヨーロッパでは× Gastrolea bedinghausii(
A. aristata × Gasteria sp.)という誤った名前で長年栽培されています。

A. aristataはGasteriaと容易に交雑可能で、著者は沢山の交配種を作ったそうです。ガステリアとの交配種の特徴は、両親の中間的な花を咲かせることだそうです。ただし、この交配種は花粉の受粉能力に乏しいのですが、× Gastrolea bedinghausiiは花粉の受粉能力が常に90%を越え、A. aristataと変わりません。ですから、× Gastrolea bedinghausiiは交配種ではないと考えられるのです。

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A. aristata × Gasteria sp.

著者はA. aristataはきちんと育てればそれ自体が魅力的であり、交配種の作成が容易なので交配の入門としても適すると主張します。A. aristataの異なるフォルムはコレクションに値するものであり、「温室にはこれ以上植物を入れる余裕がない」という使いふるされた言い訳は使うことは出来ないと絶賛しています。著者の住むSurreyでは非常に丈夫で、過去3年間庭の明るい日陰で育ち、1978/9年の非常に厳しい冬にも耐えてきました。毎年、夏に開花します。

以上が論考の簡単な要約です。
日本では人気がないせいか、園芸店ではほとんど見られませんが、イギリス(1981年の)では一般的なようです。しかし、著者が絶賛するようにA. aristataは非常に美しい植物です。さらに、私は形態的にアロエ的ではない感じが非常に面白く思います。A. aristataが命名されたのは1825年のことで、Aloe aristata Haw.が長年正式名称でした。しかし、遺伝子解析の結果から、2014年にAristaloe aristata (Haw.) Boatwr. & J.C.Manningとなり、アロエ属から分離しました。現在、アリスタロエ属は1属1種の珍種ですから、その点においてもコレクションするに値する多肉植物でしょう。


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マダガスカルには沢山の小型アロエが分布します。その中でも最小と言われるのが、Aloe descoingsiiです。一般的には「アロエ・ディスコインシー」と呼ばれたりしているみたいですが、普通にそのままラテン語読みで「アロエ・デスコイングシイ」で良いような気がします。学名は1930年から30年以上に渡りアロエ属の権威だったGilbert Westacott Reynoldsにより1958年に命名されました。つまりは、Aloe descoingsii Reynoldsです。種小名は1956年にA. descoingsiiを発見したフランスの植物学者であるBernard Descoingsに対する献名です。また、1994年には新設されたGuillauminia属とする意見があり、Guillauminia descoingsii P.V.Heathという学名がつけられましたが、翌1995年にGideon F.Smithらにより新属を提唱するに値する根拠がないとして斥けられています。

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Aloe descoingsii

A. descoingsiiは最小のアロエと言われますが、正しくは葉の長さが最も短いアロエでしょう。A. descoingsiiの主軸は意外にも太く、葉の幅は全体のサイズの割には広く、Aloe haworthioidesなど他のマダガスカル原産の小型アロエの方が非常に葉の幅は狭いものが沢山あります。A. descoingsiiは直径5cmまでで、葉は3~6cm程です。

A. descoingsiiはマダガスカル南西部のToliaraのFiherenana渓谷に分布します。標高は350mと言われます。A. descoingsiiは石灰岩の崖上の浅い土壌で育ちます。絶滅の危機に瀕していられる希少なアロエです。
しかし、このA. descoingsiiは園芸店でもまったく見かけたことがありません。希少種だからかと思いきや、何故かA. descoingsii系交配種は何度か見かけたことがあります。見た目の美しさ以外にも、増やしやすさであるとか育てやすさも関係しますから、理由は定かではありません。ただし、調べてみると、A. descoingsiiは非常に交配が盛んに行われたらしく、海外の園芸サイトでも「数えきれない程の雑種」があると書かれているくらいですから、単純に交配種が普及しているだけかも知れませんね。



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バナナは放っておくと、皮に黒い点々が出てきます。これは、スウィート・スポットと呼ばれ、甘く熟した食べ頃のサインと言われています。これは、バナナの皮に含まれるポリフェノールが酸化したものなんだそうです。しかし、困ったことに多肉植物にも黒いスポットが出来てしまうことがあります。当然これはポリフェノールではないし、食べ頃のサインでもありません。何かしらの不調のサインです。観葉植物の本を紐解くと、黒い点の原因は様々です。栽培環境が悪いせいでおこる生理障害の場合もありますが、黒星病や炭疽病などの病原菌、場合によってはカメムシなどの害虫の被害の場合もあります。
本日はこの黒い点についてのお話です。具体的にはアロエやガステリアに黒い点が出てしまうことが割とあり、これは一体何が原因なのだろう?というものです。その論考は2001年のHarry Maysによる『All that is known about Black Spot』です。早速、内容を見てみましょう。

黒い点の原因や対処法は、基本的に趣味家の経験則によるもので人により意見は異なり、科学的な見地からのものではありませんでした。著者ははじめから原因は1つではないかもしれないので、様々な可能性を探り意見をまとめてみたということを述べています。

①ストレス
日本語でストレスと言うと精神的なイメージがありますが、本来ストレスは圧力という意味もあります。植物も高温や乾燥などは植物にストレスを与えます。ただし、黒点の発生については可能性の話で確証はありません。

②環境
強光に当てて換気が不十分だと植物表面が痛むことがあります。さらに、高窒素肥料と水をあげすぎると、軟弱になり病原菌に弱くなる可能性があります。しかし、必ずしもこれらの条件で黒点があらわれるとは言えず、出ない場合もあります。

③土壌不足
長年植え替えをしていないと、栄養が不足して黒点があらわれると言われています。しかし、植え替えをしていなくても黒点が出ない場合も確認されており、むしろ堆肥を与えることで黒点が出るという意見もあります。

④湿度
温室内でも温度は場所や高さにより均一ではありません。また、場所によっては結露することもあります。実際に黒点の原因として過湿があげられることが多いようで、移動させて乾燥させることが推奨されています。しかし、残念ながら著者には、乾燥期に若いGasteria distichaに黒点があらわれた経験があります。逆に光に乏しく湿気の多い環境では何故か黒点は発生しませんでした。

⑤病原菌
湿度が高くなると、細菌やカビの活動は活発になります。しかし、ヨーロッパで多肉植物は冬は暗く湿った環境に置かれることになりますが、必ずしも黒点はあらわれません。

⑥種類
ガステリアでは種類により黒点が出やすい種類、出にくい種類があるという意見もあります。しかし、それも人によって傾向が異なりました。しかも、同じ種類を育てていても、黒点が出るものと出ないものがあるという報告もあります。中には株分けした片方にだけ黒点があらわれたりします。この場合の黒点は伝染性がないようです。

⑦野生株
南アフリカの東ケープ州の西部やオレンジ川北部では、野生のガステリアに黒点は滅多に見られませんでした。Hells Kloof地域のGasteria pillansiiは数ヶ月に渡り非常に乾燥した年に数個の黒点が観察されました。同じ地域で非常に雨が多かった年に、Gasteria pillansiiは水分を吸収し過ぎて膨れ上がり、裂けてしまうものもありました。腐ってしまったものもありましたが、黒点はまれにしか見られませんでした。

⑧David Cumming
より信頼性の高い情報を求めて、南アフリカの調査経験が豊富なDavid Cummingに連絡しました。Cummingは「特に東ケープ州で広い地域で一般的であると思われます。アストロロバは最も多く、ガステリアが続きます。」Cummingは黒点はストレスによるもので、それが黒点の主な原因ではなく、日和見感染の可能性があるとしています。

⑨Ernst van Jaarsveld
南アフリカの多肉植物の研究者であるvan Jaarsveldは、黒点はMontagnella(真菌=カビ)により引き起こされるとしています。3~6ヶ月ごとにオキシ塩化銅あるいはCaptanを噴霧しますが、定期的な噴霧を行っても黒点はあらわれます。

⑩Doug McClymont
ジンバブエのDoug McClymontは研究者としてではなく、半分趣味のアロエ栽培の経験を語ってくれました。アロエの黒点は、高湿度で曇天、気温18度以上、毎日雨が降るなどの条件で発生すると言います。また、昆虫による被害も加算されるようです。
Montagnella maximaやPlacoasterella rehmiiはbenzimidazolesやtriazolesといった浸透性殺菌剤は効果がありませんが、cyproconazoleとdisulphotonの混合顆粒により昆虫の害を防ぎ黒点か出来ません。しかし、非常に湿った環境では昆虫がいなくても黒点は出来てしまいます。しかし、オキシ塩化銅または水酸化第二銅の噴霧で高い効果があったようです。ただ、老化した葉は黒点が出来やすく薬剤でも効果がありません。

⑪王立園芸協会
科学的証拠を得るために、王立園芸協会の植物病理学部門に連絡しました。黒点のあるGasteria distichaの葉と根、土壌を調査してもらいました。黒点は日射、灌水、肥料などの生理的なものではないと結論付けました。ただし、黒点の周囲の組織を培養しても病原菌は見つかりませんでした。これは病原菌がいないことの証明にはならず、ただ培養が困難な病原菌だったからかもしれません。王立園芸協会の提案する最良の案は、広範囲の植物の葉の斑点に効果がある殺菌剤mancozebの使用です。

謎は深まるばかり…
冬に寒さからガステリアを守るために一切の通気を遮断して非常に湿った状態で育てている人もいますが、何故か全く黒点は出来ないそうです。
これまで見てきた意見は、全く以て相反する内容が噴出していますが、著者は黒点の原因は1つではないからだろうと考えています。結局、我々の出来ることは、殺菌剤の散布以外では、硬く締まった最適な育て方をして、ちゃんと植え替えしましょうという常識的なことくらいなものです。
黒点の謎は解明されたとは言えませんが、全く対処不能というわけでもないように思えます。もし、黒点があらわれた時には、その多肉植物は何かしらの問題を抱えているのかも知れませんね。

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アロエの古い葉にあるこの黒いスポットの原因は何でしょうか?


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ソルディダは一般的に硬葉系ハウォルチアと呼ばれる多肉植物です。ざらざらした暗い色の肌と、生長が遅いことが特徴です。ちなみに、ソルディダは生長の遅さ故か硬葉系の中では割と高価で、コエルマニオルムとソルディダは中々手が出せません。まあ、普通の園芸店では見かけることはありませんが…
さて、そんなソルディダですが、初めて学名が命名されたのは1821年と約200年前のことでした。そのため、これまでに様々な学名がつけられてきました。今日はそんなソルディダの履歴を辿ってみます。


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Haworthiopsis sordida

ソルディダが初めて命名されたのは、1821年のHaworthia sordida Haw.です。その後、1829年にAloe sordida (Haw.) Schult. & Schult.f.、1891年のCatevala sordida (Haw.) Kuntzeが知られています。また、ソルディダはスカブラと近縁と考えられ、1997年にHaworthia scabra var. sordida (Haw.) HaldaHaworthia scabra subsp. sordida (Haw.) Haldaも命名されています。しかし、結局はソルディダは独立種とされて、基本的にHaworthia sordida Haw.で呼ばれてきました。しかし、近年の遺伝子解析により、硬葉系ハウォルチアは軟葉系ハウォルチアとあまり近縁ではないことがわかってきました。硬葉系ハウォルチアはHaworthiaから分離され、HaworthiopsisとTulistaとなりました。Tulistaは現在4種からなる小さなグループですが、それ以外の硬葉系ハウォルチアはHaworthiopsisに分類されています。ソルディダも2013年にHaworthiopsis sordida (Haw.) G.D.Rowleyとされました。現在もこの学名が学術的に正式なものですが、実際に販売される場合は未だにHaworthia sordidaの名前で流通しています。
そう言えば、ソルディダには変種がありますが、ついでに見てみましょう。


1981年にソルディダの変種としてラブラニが命名されました。Haworthia sordida var. lavrani C.L.Scottです。一時期提案されたソルディダをスカブラの変種とする考え方から、その提案者により1997年にHaworthia scabra var. lavrani (C.L.Scott) Haldaと命名されたこともあります。また、2010年には変種ラブラニを独立種とするHaworthia lavrani (C.L.Scott) Breuerもありました。しかし、やはり最終的にはソルディダの変種ということになり、ソルディダがHaworthiopsisとなったことに合わせて2013年にHaworthiopsis sordida var. lavrani (C.L.Scott) G.D.Rowleyとなりました。

変種ラブラニが命名されたことにより、ラブラニではないソルディダは区別されることになりました。単純にHaworthiopsis sordidaと言った場合、変種ラブラニとそれ以外を含んだ名前となるからです。つまり、変種ソルディダです。これは命名されたわけではなく、変種が出来たことにより自動的に出来た学名です。つまり、Haworthiopsis sordida var. sordidaです。
この、変種ラブラニ以外のソルディダは変種ソルディダになる前から、異名がつけられてきました。いわゆるHeperotypic synonymです。Homotypic synonymとは異なり、Heperotypic synonymはその種小名が受け継がれなかった学名です。それは1938年に命名されたHaworthia agavoides Zantner & Poelln.です。このアガヴォイデスはやがてソルディダの変種とされ、1950年にHaworthia sordida var. agavoides (Zantner & Poelln.)となりました。さらに、ソルディダがHaworthiopsisとなったことを受けて、2016年にはHaworthiopsis sordida var. agavoides (Zantner & Poelln.) Breuerとされましたが、現在では変種ソルディダの異名扱いとされています。


以上がソルディダの学名の変遷です。ハウォルチオプシスは異名が恐ろしく多いものがあり、その一覧を見てうんざりすることもありますが、ソルディダはやはり特徴的な外見なせいか見た目の変異が少ないためかは分かりませんが、異名はほとんどありません。いや、それでも結構あるだろうと思われるかも知れませんが、種小名が同じHomotypic synonymばかりですから非常にすっきりしています。他のHaworthiopsisは1種類に対して、別種としていくつもの学名がつけられていたりして非常に混乱してきたことがうかがえます。
個人的にはこのざらざらした肌と暗い色合いは好きですが、イベントで立派な株が万単位の価格て販売されていて中々手が出せませんでした。しかし、最近のビッグバザールでは小さな実生苗が安価で入手可能です。どうやら、一度に沢山実生したみたいです。これは今しか入手出来ないものかもしれません。ソルディダが安く入手出来る中々ないチャンスです。あまり売れている雰囲気はありませんでしたが、皆さんもこの機にソルディダに手を出してみてはいかがでしょうか?


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かつて硬葉系ハウォルチアなどと呼ばれていたHaworthiopsisやTulistaには、イボに覆われているものがあります。そもそもこのイボが何のためにあるのかすら良くわかりませんが、結節などと呼ばれることが多いようです。遺伝的には、このイボの有無は分類には関係ないみたいです。要するに、イボのある種同士が近縁というわけではないため、イボのあるグループとないグループで分けることは出来ないのです。
さて、このイボにも種類があり様々です。今日はそんなハウォルチア系のめくるめくイボの世界へご案内しましょう。

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九輪塔 Haworthiopsis coarctata IB5850
九輪塔H. coarctataと鷹の爪H. reinwardtiiは同種とされることもありますが、現在は別種とされています。私の所有株はイボが控え目です。九輪塔のイボはまるでイボの先に着色したように見えます。


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星の林 Haworthiopsis reinwardtii var. archibaldiae
鷹の爪H. reinwardtiiの変種ですが、現在は認められていない学名です。鷹の爪系のイボは横長で大型です。

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Haworthiopsis reinwardtii f. kaffirdriftensis
コンパクトなf. kaffirdriftensisですが、イボは密に並びます。


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天守閣 × Astrolista bicarinata
AstrolobaとTulistaの自然交雑種。少し透き通るイボは、イボの由来がTulistaだと教えてくれます。


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Tulista pumila
Tulistaの代表種プミラ。Tulistaはよく見るとイボが半透明です。このプミラはイボが小さく密なタイプ。


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Tulista pumila
イボが白くないタイプのプミラ。イボは大型。


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Tulista pumila var. sparsa
プミラの変種スパルサ。イボはまばらですが、赤みを帯びた大型のイボが美しい。

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Tulista pumila var. ohkuwae
プミラの変種オウクワエ。白く大型のイボが密につき非常に目立ちます。

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Tulista kingiana
あまり見かけないキンギアナですが、イボは小さくて地味ですね。


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Tulista minor
Tulista minimaと呼ばれることもありますが、Tulista minorが正式な学名です。イボは横長で密につきます。


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Tulista minor swellense
有名な産地の個体。イボが立体的でよく目立ちます。


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Tulista marginata
マルギナタのイボは大型でたまにつながったりします。透き通った感じが好きですね。


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十二の巻 Haworthiopsis attenuata cv.
何故かH. fasciataと言われる十二の巻ですが、H. attenuata系の交配種です。白いイボはつながりバンド状になります。


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特アルバ Haworthiopsis attenuata
アテヌアタのイボが目立つ選抜交配種。


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松の雪 Haworthiopsis attenuata
アテヌアタのイボが小さく密につくタイプ。


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Haworthiopsis fasciata DMC05265
本物のファスキアタですが、普通の園芸店で入手は困難です。十二の巻とそっくりですが、アテヌアタとファスキアタは、遺伝子解析結果では近縁ではないようです。


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Haworthiopsis fasciata fa.vanstaadenensis
ファスキアタの特殊なタイプ。イボは小さくまばらで縦に5列あります。

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Haworthiopsis glauca var. herrei RIB0217
グラウカの変種ヘレイの葉が短いタイプ。変種ヘレイとしてはイボがはっきりしています。

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Haworthiopsis glauca var. herrei
グラウカの変種ヘレイの葉の長いタイプ。イボは目立ちませんが、よく見ると縦にイボが並んでいます。


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紫翠 Haworthiopsis recendeana
現在は九輪塔H. coarctataと同種とされている
紫翠ですが、イボが白くないので目立ちません。イボ自体は非常に密につきます。

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Haworthiopsis scabra
これ以上イボが小さいとイボではなくザラ肌と呼んだほうが良さそうです。H. sordidaやH. nigraはイボではなくザラ肌ですよね。


イボの世界はいかがでしたか? 意外とイボにも色々あることがお分かりいただけたと思います。
個人的にはイボイボ系は大好物なのですが、あまり人気がないみたいで残念です。この記事を起点にイボイボ系のファンが増えて、買う人が増えたことにより園芸店にもイボイボ系が並ぶようになれば私も嬉しいのですが、そんなバタフライ・エフェクトみたいなことは難しいですかね? 今こそ、イボの復権をと密かに願っている次第。


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クマラをご存知ですか? かつて、アロエとされていたAloe plicatilisやAloe haemanthifoliaは、2013年にアロエ属から独立してクマラ属(Kumara)となりました。よって、Aloe plicatilisとAloe haemanthifoliaは、それぞれKumara plicatilisとKumara haemanthifoliaとなりました。ここらへんの学名の経緯は過去に記事にしたことがあります。以下のリンクをご参照下さい。
さらに、Kumara plicatilisの生態について書かれた論文をご紹介した記事もあります。
そんな中、A. plicatilisがクマラ属へ移動した際の学名の混乱について正しい学名に訂正すべきであると主張している論文を見つけました。その論文は、2013年のRonell R. Klopper, Gideon F. Smith & Abraham E. Van Wykによる『The correct name of Aloe plicatilis in Kumara(Xanthorrhoeaceae : Asphodeloideae)』です。しかし、この論文はことの経緯を無駄なく簡潔に述べていますが、説明がないので経緯を知らない人間にはよく分からない内容となっています。そこで、私が調べた情報を加味して、内容を再構成して解説します。最初に簡単に言ってしまうと、著者の主張はKumara distichaという学名が使われているが、これは正しい学名ではないというものです。

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Kumara plicatilis=Aloe plicatilis

一番最初にK. plicatilisが命名されたのは、1753年にCarl von LinneによるAloe disticha var. plicatilis L.でした。Aloe disticha L.つまりは後のGasteria disticha (L.) Haw.の変種として命名されたのです。
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Gasteria disticha

1786年にドイツのFriedrich Kasimir MedikusはKumara Medik.を創設し、A. disticha var. plicatilisをKumara disticha Medik.としました。しかし、Aloe distichaは後のGasteria distichaなのですから、Kumara distichaというのはおかしな名前です。
実は1768年にA. disticha var. plicatilisはA. distichaの変種ではなく独立種であるとして、オランダのNicolaas Laurens BurmanがAloe plicatilis (L.) Burm.f.と命名しましたが、これが正しい種小名です。

ですから、最初A. disticha var. plicatilisであった植物が、アロエ属から独立した際に引き継ぐべき種小名は"disticha"ではなく"plicatilis"なのです。要するに、1786年に命名されたKumara disticha (L.) Medik.は使用されるべきではなく、1768年にAloe plicatilis (L.) Burm.f.を引き継いでいる、2013年に英国のGordon Douglas Rowleyにより命名されたKumara plicatilis (L.) G.D.Rowleyが正しい学名であるというのが著者の主張です。

Kumara Medik.には非常に深刻な問題点があります。1976年にRowleyによりKumaraのタイプをKumara distichaとして指定してしまったので、KumaraとGasteriaは同義語となってしまいました。学名は先に命名された方を優先する「先取権の原理」がありますから、1809年に命名されたGasteria Duvalよりも、1786年に命名されたKumara Medik.が優先されてしまいます。要するにGasteriaのすべてをKumaraに変更しなくてはならなくなり、命名上の混乱の観点からは深刻な問題と言わざるをえません。そのため、2世紀にわたり使用されてきたGasteriaという属を保存するべきでしょう。ですから、Kumaraをガステリアの同義語とせずに、Aloe plicatilisに使用される属名とすることが重要です。

以上が論文の簡単な解説となります。
現在認められている学名はKumara plicatilisですから、著者の主張が採用されていることがわかります。
思うこととして、学名は学者の主張によりコロコロ変わりますから、その都度、我々趣味家は振り回されてしまいます。しかし、現在は遺伝的解析により、近縁関係がはっきりしてきましたから、以前ほど、思い悩まされることはなくなりました。とは言うものの、まだ学名は変わる可能性があります。すべての多肉植物の遺伝子が調べられたわけではありませんし、近縁関係が判明したところでどこで区切ってわけるべきかは議論のあるところです。しばらくは試行錯誤が続くでしょう。しかし、現在は遺伝子解析は過渡期ですから、学名も流動的で変わりやすい時代と言えます。個人的にはこれからどうなっていくのか、楽しみで仕方がありません。



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ガステリア・エクセルサは19世紀に記載された、昔から知られているガステリアです。他のガステリアと同じく南アフリカの原産です。
私も小指の先ほどの苗を園芸店で購入して育てています。まだ、エクセルサらしさはありませんが、苗から育てていますから愛着がありますし、これからの生長が非常に楽しみです。


DSC_2013
Gasteria excelsa

そんな、エクセルサに関する情報を探ったところ、論文を見つけました。それは、2003年のDavid Cummingの論文、『A matter of recruiment in Gasteria excelsa Baker』です。早速、論文の内容に移りましょう。

G. excelsaはほとんどの場合、川の近くに自生します。Port Alfredの南に約50kmのAlexandria付近から、Transkeiまで見られます。
BathurstのLuthington川のほとりに沿ってG. excelsaは個体数が多く、著者はG. excelsaの種子を採取していました。この時、大量の種子が供給されているにも関わらず、芽生えがほとんどない状態でした。詳細を観察するために、Langholmeに向かって隔離された地域にあるG.excelsaの小集団が対象に選ばれました。

ここでは、狭いエリアに2つの異なる環境に、それぞれの集団があります。
1つ目は北東斜面と対応する南西斜面を持つ高さ1mの小さな尾根で、22個体の成熟したG. excelsaが見られました。G. excelsaは北東の斜面の高さ30cmの茂みの中に生えます。この場所のG. excelsaのサイズは直径37~79cm、葉の幅は8~13cm、葉の長さは23~41cmでした。幼体は3本のみで、1本は2~3才、2本は3~4才と推定しました。この場所には、Crassula muscosa var. polpodaceaとCynanchum gerrardiiが見られました。
2つ目は南西の高さ25mの急な川岸で、27の成熟したG. excelsaが見られました。それほど過酷な環境ではないにも関わらず、G. excelsaは小型でした。この場所のG. excelsaのサイズは直径37~45cm、葉の幅は7~8cm、葉の長さは20~30cmでした。この場所には背の高い茂みとまばらにある背の低い茂み、さらには3~4mの低木がある環境です。1才が3本、1~2才が3本、2~3才が4本、3~4才が3本と、幼体は豊富でした。
この場所には、Euphorbia pentagona、Euphorbia grandidens、Crassula lactea、Crassula muscosa var. polpodacea、Kalanchoe rotundifolia、Othonna dentata、Sansevieria hyacinthoides、Haemanthus albiflosが見られました。

著者は個体数と、1個体の1年に生産される種子の数から計算して、この地域内では1113万2275個の種子が生産されているとしました。この地域では、1年間に4個体の実生が生えているので、育つのは約30万種子に1つ程度であるとしています。
著者は湿った濾紙に100個のG. excelsaの種子を置いて、片隅を水に浸して発芽率を試験しました。すると、発芽しなかったのは2個だけでした。さらに、この2個はどうも置いた場所が悪く水分が足りていないようでした。つまり、発芽率はほぼ100%ではないかと推測しています。
種子が熟成する時期は湿潤期にあたり、発芽に適しています。しかし、人工的に種子を湿らせたら発芽するのに、野生では実生が見られないことを訝しんでいます。


以上が論文の簡単な要約となります。
大変申し訳ないのですが、私には英文の細かいニュアンスがいまいち捉えきれていないせいか、著者の疑問を今一つ理解出来かねる部分があります。私は野生環境では、実生が生えてもその後の乾燥などの要因でほとんどが枯死するだろうと割と安直に考えました。しかし、著者はそうではなくて、発芽自体がおこらないというような意味で言っているような気もします。その場合はどう考えたらよいのでしょうか? 
貯蔵種子という考え方もあります。すべての種子が一斉に発芽した場合、たまたま環境が悪化すると全滅してしまいます。しかし、発芽がばらつくことにより、良いタイミングで育つものも出て来ます。というように、実生よりも耐久性のある種子で環境の悪化をやり過ごす植物もあるのです。しかし、著者は発芽率を試験して、ほぼすべてが一斉に発芽することを確認しています。貯蔵種子ではないようにも思えますが、そう単純ではありません。種子の発芽を促す引き金は水だけではないからです。さらに、水が発芽の引き金である場合でも、水分をある一定以上吸わないと発芽しないなどの条件があるかもしれません。取り敢えずは、光や水分量などの条件を変えて、種子の発芽率が変わるかは見る必要があるでしょう。また、貯蔵種子の有効性を見るために、G. excelsaの自生地の土壌を採取して実験室で発芽するか、種子を様々な環境で保管しどのくらいの期間まで発芽能力があるかを調べることも重要です。
しかし、現状では情報が少な過ぎて良くわかりません。他にも情報がないか、もう少し調べてみるつもりです。


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千代田錦は日本国内でも昔から流通しているアロエの仲間です。しかし、最近は人気がないためかあまり見かけませんでした。ところが、何やらどこかのファームが大量に実生したみたいで、大型の千代田錦が園芸店に並んでいました。私も今年の3月に購入して育てています。千代田錦は葉が三方向に綺麗に並び、斑が非常に美しい多肉植物です。もっと人気が出ても良いような気がします。

DSC_2010
千代田錦 Gonialoe variegata

それはそうと、千代田錦は遺伝子解析の結果、2014年にアロエ属ではなくなりました。じゃあなんだと言われたらゴニアロエ属Gonialoeだということになります。やはりアロエに近縁ではありますが、アストロロバ属Astrolobaや新設されたツリスタ属Tulistaやアリスタロエ属Aristaloeとグループを形成します。

さて、そんな千代田錦ですが、何か情報はないかと論文を漁っていたところ、2003年に出されたPaul I. Forsterの『Variations on Aloe variegata, the partridge-breast Aloe』という論文を見つけました。表題の"partridge"とは「ヤマウズラ」のことですが、羽の模様からの連想でしょうか? タイガーアロエとも呼ばれます。

論文の内容に移りましょう。この論文が出された時点ではまだGonialoeではありませんから、論文の時の学名であるAloe variegataで解説します。
A. variegataは1685年にSimon van der Stelが南アフリカのNamaqualandに遠征した時に発見されました。Simonはオランダのケープ植民地の総督でした。どうやら、A. variegataは西洋で知られているアロエの最初の種類のひとつでした。この時の資料にA. variegataのイラストがありましたが、1932年まで出版されませんでした。

※補足説明 : van der Stelの調査の詳しい事情は、私も過去に調べたことがあります。Aloidendron dichotomumの最初の発見に関する記事でした。その記事では以下のような経緯を説明しています。
1685年から1686年にかけて、van der Stelはナマクア族の土地で銅資源を探索する遠征を行いました。遠征隊は1685年の10月にCopper(=銅)山脈に到着しました。遠征隊に同行した画家のHendrik Claudiusにより、遠征中の地理、地質学、動物、植物、先住民の絵が描かれました。その中には、A. dichotomumの絵も含まれていました。
また、遠征隊の日記が作成されましたが、van der StelもClaudiusも資料を出版しませんでした。これらの資料は1922年に、何故かアイルランドの首都ダブリンで発見されました。そして1932年にWaterhouseにより出版されました。

A. variegataを学術的に記載したの1753年のCarl von Linneですが、リンネ以前の最も初期の引用は1690年で、1689年には粗雑な図解がありました。A. variegataの園芸への導入は、1700年にアフリカ南部のコレクターから種子を受け取ったCasper Commelinであると考えられています。A. variegataは1753年にリンネにより記載されましたが、その種の基本となるタイプ標本※は指定されず、いくつかの引用からなっています。CommelinのA. variegataの図解や説明の中で、1706年の「Plantae Rariores et Exotica」の図をA. variegataのレクトタイプ※※として選択しました。この図は、2000年にGlen & hardyにより、イコノタイプ※※※として誤用され、2001年のNewtonはA. variegataはタイプ化されていないと誤って述べています。

※タイプ標本 : 新種を記載する際の、その生物を定義する標本(ホロタイプ)。
※※レクトタイプ : ホロタイプが失われたり、指定されていない場合に指定された標本。

※※※イコノタイプ : 新種指定の基準となった図のこと。

Aloe variegataの異名として、1804年に命名されたAloe punctata Haw.、1908年に命名されたAloe variegata var. haworthii A. Berger、1928年に命名されたAloe ausana Dinterが知られています。このA. ausanaは特に優れたタイプとされていたようで、葉がより直立して斑が大きいとされていたようです。しかし、このタイプが現在でも栽培されているかは定かではありません。

A. variegataはナミビア南部と南アフリカの西ケープ州、東ケープ州、自由州、北ケープ州に分布します。分布が広いため、様々な生息地で見かけることが出来ます。生育環境は主に粘土や花崗岩由来の土壌の低木地で見られます。雨は夏と冬に降り、気温は氷点下近くから夏には38℃を超えることもあります。

A. variegataは他のアロエとの交配種は少なく、1998年にForster & CummingによるAloe 'lysa'(A. variegata × A. bakeri)やAloe 'Versad'(A. variegata × 不明)が作出されています。また、オーストラリアのAtilla Kapitanyにより、生息地由来の種子より斑のない個体が得られ、Rudolf Schulzにより'Splash'の名前で販売されましたが、子株は斑入りに戻る可能性があります。
A. variegataはガステリアの交配親として利用されてきました。その多くは名前がなく、交配親もわかりません。主な品種は以下のものが知られています。
× Gasteria 'Orella'(A. variegata × G. batesiana)
× Gasteria 'Agate Chips'(A. variegata × G. bicolor var. bicolor)
× Gasteria mortolensis(A. variegata × G. acinacifolia)
× Gasteria pethamensis(A. variegata × G. carinata var. verrucosa)
× Gasteria pfrimmeri(A. variegata × G. sp.)
× Gasteria radlii(A. variegataあるいはA. serrulata × 不明)
× Gasteria rebutii(A. variegata × G. sp.)
× Gasteria sculptilis(A. variegata × G. ×cheilophylla)
× Gasteria smaragdina(A. variegata × G. ? candicans)


以上が論文の簡単な要約となります。
アロエよりガステリアとの交配が盛んなのは何故でしょうか。思うに、千代田錦はアロエ属よりもガステリア属の方が近縁なので、交配がスムーズなのかも知れませんね。
しかし、千代田錦の登場は18世紀から19世紀のヨーロッパの園芸界に、それなりのインパクトを与えたようです。1801年にSimsは「このアロエには非常に望ましい点が結合している」と述べ、1976年にはNobleが「おそらく英国で最も有名なアロエ」と見なし、非常に高い評価を受けています。久しぶりに千代田錦が流通したのですから、せっかくですから日本でも千代田錦の美しさを見直す時が来ているのではないでしょうか。


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最近、Aloe aristataという名前の多肉植物を入手しました。綾錦の名前でも知られています。近年、アロエ属からAristaloe属になりました。
グランカクタスの佐藤さんの図鑑では2つのタイプの写真が掲載され、交配種の可能性が指摘されていました。ひとつはトゲがないタイプで、もうひとつは
ハウォルチアの禾を思わせるトゲがあるタイプでした。私が過去に入手したのは、トゲがないタイプで非常に葉が硬いものでした。最新の遺伝子解析による分類では、AristaloeはAstrolobaやTulista、千代田錦(Gonialoe variegata=Aloe variegata)に近縁ですから、葉は硬いということは当たり前のことだと思っていました。逆にトゲがあるタイプは柔らかそうですから、ハウォルチア系との交配種かもしれないなんて思ったりもしました。
DSC_1921
綾錦?
トゲがなく葉が硬いタイプ。


しかし、自生地の写真を幾つか見てみると、どの写真を見てもややハウォルチアに似た姿で、トゲがあるタイプの方でした。思い込みはいけませんね。ちゃんと調べるべきでした。そんな折、先日開催された冬のサボテン・多肉植物のビッグバザールでAloe aristataが販売されていましたので購入しました。
DSC_1990
綾錦 
Aloe aristata=Aristaloe aristata

葉はしなやかでトゲがあります。特徴的に綾錦で間違いないでしょう。では、先に入手していた葉が硬いタイプのアロエは何者なのでしょうか? 綾錦と無関係とも思えませんが、何者かとの交配種である可能性が高いように思われます。そこで、まずはAristaloe aristataを調べてみることにしました。取り敢えずは、論文を探して見ました。出てきたのは、Colin C. Walkerの2021年の論文、『Aristaloe aristata : a unique, monotypic species』です。内容の簡単に要約します。

植物学者というよりはプラントハンターであったイギリスのJames Bowieにより初めて採取された植物は、1825年にイギリスのAdrian Hardy HaworthによりAloe aristata Haw.と命名されました。他にも、1829年にAloe longiaristata  Schult. & Schult.f.、1934年にAloe ellenbergii Guillauminと命名されましたが、これらは異名となっています。
2013年にはAstrolobaやGonialoe variegata(Aloe variegata, 千代田錦)とともにTulista属とされ、Tulista aristata(Haw.) G.D.Rowleyとする意見もありましたが、現在では認められておりません。
2014年にAristaloe aristata (Haw.) Boatwr. & J.C.Manningと命名され、これが現在の綾錦の学名です。Aristata属はA. aristata1種類のみを含む属です。


 A. aristataは南アフリカ原産とレソトで、西ケープ州の東、南北ケープ、東ケープ、オレンジ自由州、KwaZulu-Natal南西部に至るまで、アフリカ南部に広く分布します。「暑く乾燥したカルー地域の砂質土壌、川沿いの森林の腐食質に富んだ日陰、レソトの高原にある草原など様々(Glen & Hardy, 2000)」であり、「標高は200mから2200m」かつ「アフリカ南部の最も寒い幾つかの地域にも発生(van Wyk & Smith, 2014)」ということですから、かなり環境の変化に対応できる様子が伺えます。
A. aristataの耐寒性が高いことは明らかですから、イングランド南部では屋外栽培も可能との報告があるそうです。著者はスコットランド中部で屋外栽培を試みましたが失敗した模様です。どうも、冬の雨がよろしくないみたいですね。

A. aristataは交配親としても使用されてきました。実は意外にもガステリア属との交配種があり、2013年にはG.D.Rowleyにより×Gastulistaとして19種類がリスト化されています。これは現在ではAristaloe × Gasteriaと見なされています。

簡単な論文の要約は以上です。
綾錦は非常に耐寒性があるとのことですが、私の交配系綾錦は氷点下でも耐えることが出来ます。ちゃんと親の性質を受け継いでいるのですね。そう言えば、私の所有する綾錦のようなものは論文にあるようにガステリア交配種なのでしょうか? 葉が硬くなる特徴はまさにガステリアの血を受け継いでいるからかもしれません。しかし、論文からヒントは貰いました。
ヒントを元にデータベースを調べ直しました。おそらくは、私の交配系綾錦は1931年に命名された× Gasteraloe Guillauminでしょう。キュー王立植物園のデータベースの× Gasteraloeは、なんと私の所有している綾錦系交配種とそっくりな画像が貼られていました。ただし、この× GasteraloeはGasteria × Aloe sensu lato(広義)であり、Aristaloeを分離出来ていない広義のアロエ属を示しています。論文で述べられていた× Gastulista G.D.RowleyはGasteria × Tulista sensu lato(広義)ですが、G.D. Rowleyの言うところのTulistaはAristaloeやGonialoeも含んだ広義のTulistaでしょう。確かに広義のTulistaにはAristaloeも含まれますが、G.D.Rowleyの主張する広義のTulista自体が認められておらず、本来は
Gasteria × Tulista sensu stricto(狭義)にのみ使用されるべきです。ですから、Gasteria × Aristaloeについての適切な学名が必要でしょう。


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「乙姫の舞扇」ことKumara plicatilisは、かつてAloe plicatilisと呼ばれていました。現在でも販売されている苗はAloe plicatilisの名札が付いています。以前、ネットに転がっているような情報については調べてまとめました。
しかし、それもイギリス王立植物園のデータベースと、南アフリカの生物に関する公的データベースを参照としましたから、情報量は国内とは比較にならないほど大きいものでした。しかし、最近では学者論文も参照にしていますから、Kumara plicatilisについても何かないか調べてみました。そんなこんなで見つけたのが、S. R. Cousins, E. T. F. Witkowski, M. F. Pfab, R. E. Reddles, D. J. Mycockの2013年の論文、『Reproductive ecology of Aloe plicatilis, a fynbos tree aloe endemic to the Cape Winelands, South Africa』です。論文のタイトルにはAloe plicatilisとありますが、Kumara plicatilisという学名が提唱されたのは2013年ですから、タイミング的にAloe plicatilisはこの時は正しい学名でした。まあ、AloeからKumaraに名前は変わっても、植物自体が変わったわけではありません。論文ではまだAloeですから、解説もA. plicatilisの表記でいきます。

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Kumara plicatilis=Aloe plicatilis

さて、論文の内容ですが、A. plicatilisの繁殖について調査したものです。まずは、アロエの繁殖に関する研究について振り返ります。
調査が行われた南アフリカにはアロエが約140種確認されており、最もアロエの多様性が高い地域です。アロエは管状の鮮やかな花を咲かせる傾向があり、一般的に自家受粉しないため受粉は花粉媒介者(ポリネーター, pollinator)に依存します。多くのアロエは冬に開花して蜜を出すため、食糧の不足する冬の食糧源として重要です。アロエは鳥をポリネーターとする鳥媒花とする種類については複数の研究があります。長い管状の花を咲かせるアロエは濃い蜜を少な目に出し、花の蜜を専門とする太陽鳥をポリネーターとしています。対して、短い花のアロエは薄い蜜を大量に出し、花の蜜を専門とする太陽鳥ではなく、専門ではない鳥をポリネーターとしています。
この時、なぜ太陽鳥が受粉に寄与しないかを調べた論文については、過去に記事にしたことがあります。

アロエの種子は通常は長さ3~5mmで、2つの翼(一部の種は3翼)を持つものは風で散布されます。しかし、翼がない種は親植物の近くで育ちます。アロエは豊富に種子を生産しますが、発芽は雨に依存しており新しい苗は希です。アロエの種子は通常3週間以内に発芽し、1年後では大幅に発芽力が低下することがあるそうです。アロエの苗は、強光や暑さ、乾燥、霜、食害から保護してくれる他の植物が重要です。

A. plicatilisはケープのフィンボスに自生する唯一の樹木アロエです。A. plicatilisはケープ南西部のWinelandsの山岳地帯に分布が制限されています。標高は200~950mです。この地域は地中海性気候で、乾燥した夏(平均気温15~25℃)と雨の多い冬(平均気温7~15℃)がある環境です。自生地は急な岩だらけの斜面で、水捌けのよい酸性土壌です。10~3年間隔で夏に火災が発生します。
A. plicatilisは生長が遅く、2つに分岐する枝を持ち、葉は扇形になり12~16枚です。茎の直径は15cmまで、高さは80cmほどで成熟します。成体の高さの平均は1.5mほどですが、最大で5mに達する可能性があります。
花は円筒形で長さ5cm程度で、15~25cmの総状花序に25~30個の緋色の花が咲きます。A. plicatilisは8~10月(時に11月)に開花し、11月上旬に結実します。実は12~1月に裂開し、種子には翼があります。


著者はA. plicatilisのポリネーターを調査しました。方法は一部の花に網をかけて鳥や小型哺乳類を排除し、結実する季節に観察を実施するという割とアバウトなものです。結実は①排除なし、②鳥や小型哺乳類の排除、③すべてのポリネーターの排除という3パターンです。結果は、①>②>③の順番でした。A. plicatilisの場合、鳥や小型哺乳類の排除は結実にあまり影響を与えていないことが示されており、A. plicatilisの主たるポリネーターは昆虫である可能性があります。おそらくは、主要なポリネーターはミツバチと考えられます。
しかし、①の排除なしは②より高いため、昆虫だけではなく鳥も重要かもしれません。A. plicatilisの花を訪れた鳥は太陽鳥ですが、筒状の花の形状から太陽鳥以外の鳥は採蜜が難しいので、太陽鳥が受粉の効率を高める効果があるのかもしれません。

さらに、種子がどれくらい散布されるのかを確認しています。方法は実際の自生地で0.8mの高さから種子を落として、どの程度種子が拡散するかを計測しています。結果は、平均風速が遅い地域では1.3m、早い地域では15.3mに達しました。
この種子散布の1年後に土壌を採取し、温室で水を与えましたが、実生は生えてきませんでした。種子の寿命は1年もないことになります。散布後6ヶ月では少数の発芽があっただけで、種子は土壌中で長く生存しないことがわかりました。


採取した種子を、室内の冷暗所に保存した場合に発芽するかを試験しました。やはり、温室で水を与えましたが、発芽までの期間は3ヶ月保存では0.8週、18ヶ月保存では2.5週、24ヶ月保存では2.3週かかりました。
ここで面白いことがわかりました。6週間保存した新しい種子は発芽率が28%と非常に低いというのです。しかし、種子を調べると(種子の活性を調べるテトラゾリウム試験)、発芽能力があることがわかりました。どうやら、種子は散布された後に熟成される必要があるようです。また、室内で管理した種子は長期保存しても発芽したため、自生地の環境が種子の保存に適していないことが考えられます。

論文の簡単な要約は以上となります。
このように生態を詳しく調査することにより、植物の保護に対する重要な情報を提供します。例えば、今回のA. plicatilisの場合、種子の保存安定性があまり良くないことがわかりました。もし、植物の保護や繁殖を考えた時に、種子の保存は必然的です。事前に参照可能な情報があるとないとでは、大きな違いがあります。このような地道な研究が貴重な生物の未来を支える礎となるかもしれないのです。



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Gasteria baylissianaは群生する小型のガステリアです。学名は1977年にRauhにより記載されました。しかし、このG. baylissianaの発見と命名には多少の前日譚があるようです。 そのことについて書かれたGideon F. Smith, Elsie M. A. Steyn & E. van Wykによる1999年の報告書、『359. GASTERIA BAYLISSIANA』をご紹介します。

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Gasteria baylissiana

Gasteria baylissianaは1960年にJohn Truterにより発見されました。Truterは南アフリカの東ケープ州、Suurberg山脈近くの農家で、多肉植物愛好家でした。Truterは偶然Suurbergの斜面でG. baylissianaを見つけ、Brand van Bredeに識別のために送りましたが、残念ながら命名はなされませんでした。
1965年に熱心な植物探検家のRoy Douglas Abott Bayliss大佐は、Suurberg付近で10種類ほどの植物を採集しました。1972年頃、Bayliss大佐は生きた植物をドイツのWerner Rauhに送りました。この中にG. baylissianaが含まれており、1977年に正式に記載され、Bayliss大佐にちなんでGasteria baylissiana Rauhと命名されました。

ガステリア属は著者曰く「分類学者の悪夢」と言わしめるほどの混乱ぶりで、一握りの種類に対して100以上の学名がつけられていました。しかし、南アフリカの植物学者であるErnst van Jaarsveldにより、1992年にガステリア属の概要についての出版がなされ、以降はvan Jaarsveldによりガステリア属の整理が行われました。

G. baylissianaはBayliss大佐の努力により栽培法は確立されましたが、Suurbergでは野生個体は非常に稀となりました。van JaarsveldはTruterの助けを借りて、1986年にSuurbergでG. baylissianaを4個体採集しました。van Jaarsveldは採集した4個体とBayliss採集個体の子孫を組み合わせて他家受粉による種子を取ることに成功しました。最終的に英国のサボテン・多肉植物協会(BCSS)による援助により、1993年にvan JaarsveldはG. baylissianaの自生地に210個体の繁殖したG. baylissianaを移植しました。

G. baylissianaは9~11月(春~初夏)に開花し、10月にピークを迎えます。
G. baylissianaは種子、挿し木、葉からでも簡単に増やすことが出来ます。葉は1週間ほどで容易に発根します。
G. baylissianaは非常に干魃に強いにも関わらず、日陰を好みます。


以上が簡単な要約となります。
Gasteria baylissianaの命名にもそれなりのドラマがありました。発見されたものの命名されず、17年後に第一発見者ではない採集個体から命名されるという数奇な運命をたどりました。また、自生地の野生個体の減少から、研究者自らG. baylissianaの保護が行われたことも印象的です。G. baylissianaの保護のための援助を行った英国のサボテン・多肉植物協会(BCSS)は、趣味家を対象とした民間団体ですから、イギリスは趣味家の力が強いですね。見習いたものです。



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昨日はアロエ類の蜜の組成について記事にしましたが、今日はその続きです。具体的には1993年のNectar Sugar Composition in Subfamily Alooideae (Asphodelaceae)』と、一部は2001年のInfrageneric classification of Haworthia (Aloaceae) : perspectives from nectar sugar analysis』のデータをご紹介します。
まずは近年のアロエ類の遺伝子解析の結果を示します。今回の論文は遺伝子解析前のものなので、古い分類となっています。私の記事では気が付いたものは最新の分類に修正しています。


分子系統図
┏━━━━━━━━Aloidendron属

┫    ┏━━━━━━Kumara属
┃┏┫
┗┫┗━━━━━━Haworthia属
    ┃
    ┃┏━━━━━━Aloiampelos属
    ┃┃
    ┗┫┏━━━━━Aloe属
        ┃┃
        ┗┫    ┏━━━Astroloba属
            ┃    ┃
            ┃┏┫┏━━Aristaloe属
            ┃┃┃┃
            ┃┃┗┫┏━Gonialoe属
            ┃┃    ┗┫
            ┗┫        ┗━Tulista属
                ┃
                ┃┏━━━Haworthiopsis属
                ┗┫
                    ┗━━━Gasteria属

論文では蜜に含まれる糖の組成を解析しています。【Fructose, Glucose, Sucrose】の順番に糖の比率を示しています。Fructoseは果糖、Glucoseはブドウ糖、Sucroseはショ糖のことです。
分子系統に示された分類群を、上から順番に見ていきましょう。

Astroloba、Aristaloe、Gonialoe、Tulistaは近縁なグループです。
Astrolobaは虫媒花ですが、基本的に白花です。蜂は色のついた花に来ますから、Astrolobaに来るのは蛾あるいは蝿や虻なのかもしれません。
また、遺伝子解析の結果からPoellnitziaはAstrolobaに含まれることになりました。しかし、Poellnitziaは赤い花が咲かせ、鳥媒花とされているようです。論文によると、Astrolobaは果糖の比率は低くショ糖の比率が高い傾向がありますが、Poellnitziaはショ糖はなく果糖とブドウ糖の比率が高くなっています。よく見ると、Poellnitziaの蜜の組成はAloe(狭義)によく似ています。Aloeは鳥媒花ですから鳥が好む糖の組成なのかもしれません。
Aristaloeはデータがありません。GonialoeはAstrolobaに組成はよく似ています。Gonialoeも赤花です。
Tulistaは典型的なHaworthia型の花で目立たない白花です。蜜の組成は果糖が少なくショ糖が多くなっています。しかし、Haworthia(狭義)と比較するとブドウ糖が低く、成分はAstrolobaに近縁です。

Astroloba
A. congesta【4%, 32%, 64%】
A. foliolosa【4%, 16%, 80%】
A. spiralis【2%, 13%, 85%】

旧・Poellnitzia
A. rubriflora①【48%, 52%, - %】
A. rubriflora②【47%, 53%, - %】

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Poellnitzia rubriflora
=Astroloba rubriflora


Gonialoe
G. variegata【45%, 55%, - %】

Tulista
T. minima【7%, 24%, 69%】
T. pumila① 【1%, 14%, 85%】
T. pumila② 【3 %, 17%, 80%】
T. pumila③ 【7%, 19%, 74%】


DSC_0900
Gonialoe variegata

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Tulista pumila

HaworthiopsisとGasteriaは姉妹群です。Haworthiopsisはややまとまりがありませんが、Gasteriaはよくまとまった分類群です。
Gasteriaは分布と分類がリンクしています。Gasteriaは南アフリカの原産で、西部→南西部→南部→南東部→北東部という風に、分布を広げながら進化したようです。論文で扱われたGasteriaは、西部にはG. pillansii、南西部にはG. vlokii、G. brachyphylla、G. carinata、G. disticha、南部にはG. rawlinsonii、南東部にはG. excelsa、G. actinacifoliaがあります。また、G. maculataは現在ではG. oliquaのことです。
西部と南西部のGasteriaはショ糖が低く、南部と南東部のGasteriaはショ糖がやや低めの傾向です。まあ、調べた種類が少ないので断言出来ませんが…
Gasteria全体としてはAstrolobaに近縁ですが、ブドウ糖の比率は低い傾向があります。ショ糖に特化したグループと言えます。ただし、Gasteriaは鳥媒花ですが、ショ糖の比率が低いAloe(狭義)やPoellnitziaとは異なる組成です。糖の組成は花粉媒介者の好みを反映していないのでしょうか? ただの系統関係の遠近を示すだけなのでしょうか?

Gasteria
G. acinacifolia【10%, 14%, 76%】
G. baylissiana【2%, 4%, 94%】
G. brachyphylla【1, 1, 98】
G. carinata【5,% 8%, 87%】
G. disticha【2%, 4%, 94%】
G. excelsa【7%, 9%, 84%】
G. maculata
   var. maculata【2%, 2%, 96%】
G. maculata
   var. liliputana①【7%, 8%, 85%】
G. maculata
   var. liliputana②【6%, 7%, 87%】
G. pillansii【2%, 3%, 95%】
G. pulchra【6%, 8%, 86%】
G. rawlinsonii【12%, 13%, 75%】
G. vlokii【5%, 9%, 86%】
DSC_1954
Gasteria baylissiana

HaworthiopsisはGasteriaと蜜の組成の傾向は似ていますが、どちらかと言えばAstrolobaに似ています。Haworthiopsis自体は虫媒花でしょう。同じ虫媒花であるAstrolobaやTulistaのグループとHaworthiopsis+Gasteriaのグループが別れた時の祖先的な蜜の組成が残存しているのかもしれません。
H. koelmaniorumはややHaworthiopsisからやや遺伝的距離が離れています。しかし、糖の組成はHaworthiopsisとしては普通です。

Haworthiopsis
H. glauca【1%, 19%, 80%】
H. granulata①【5%, 25%, 70%】
H. granulata②【4%, 24%, 72%】
H. koelmaniorum【5%, 23%, 72%】
H. limifolia①【4%, 41%, 55%】
H. limifolia②【3%, 24%, 73%】
H. longiana【3%, 20%, 77%】
 H. nigra【 - %, 25%, 75%】
H. tessellata①【1%, 29%, 70%】
H. tessellata②【2%, 24%, 74%】
H. viscosa【2%, 32%, 66%】
H. woolley【1%, 22%, 77%】
DSC_1948
Haworthiopsis koelmaniorum

DSC_1796
Haworthiopsis nigra

以上が論文に示されたデータの結果です。解説は私の個人的な考えですから、論文の著者の考えではありませんからご注意下さい。
しかし、かねてよりの懸案であったAloeとPoellnitziaについての蜜の組成が示すことができてすっきりしました。逆にGasteriaについては、鳥媒花なのに糖の組成が同じ鳥媒花であるAloeやPoellnitziaとは異なる結果でしたが、この謎に対する答えを私は持ち合わせておりません。引き続き調査が必要でしょう。



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花は受粉のために動物を利用しますが、その報酬として蜜を用意しています。実はこの花の蜜は、種類ごとに成分が異なるという論文を以前紹介しました。

以前の記事では、HaworthiaやAstroloba、Chortolirionについて調べたGideon F. Smith, Ben-Erik van Wyk, E. M. A. Steyn & I. Breuerの2001年の論文、『Infrageneric classification of Haworthia (Aloaceae) : perspectives from nectar sugar analysis』をご紹介しました。
実はここ10年でアロエやハウォルチアなどを含むアロエ類は、遺伝子解析により大幅に変更されました。そのため、アロエ類のメンバー全体についての情報が欲しかったのです。しかし、よく調べたところ、1993年に
Ben-Erik van Wyk, Charles S. Whitehead, Hugh F. Glen, David S. Hardy, Ernst J. van Jaarsveld & Gideon F. Smithの『Nectar Sugar Composition in Subfamily Alooideae (Asphodelaceae)』というが出ていたことに気がつきました。2001年の論文では調べていないアロエ属や個人的に懸案のPoellnitzia rubrifloraについても解析しています。
まずは、近年の遺伝子解説によるアロエ類の分子系統を示します。アロエ属(広義)はAloe(狭義)、Kumara、Aloidendron、Aloiampelos、Aristaloe、Gonialoeに分割され、逆にLomatophyllumとChortolirionがアロエ属に統合されました。さらに、ハウォルチア属(広義)は軟葉系はHaworthia(狭義)に、硬葉系はHaworthiopsisとTulistaに分割されました。なお、PoellnitziaはAstrolobaに含むものとされています。
さて、ではこれらの分類と蜜の組成には関連があるのでしょうか?


アロエ類の分子系統図
┏━━━━━━━━Aloidendron属

┫    ┏━━━━━━Kumara属
┃┏┫
┗┫┗━━━━━━Haworthia属
    ┃
    ┃┏━━━━━━Aloiampelos属
    ┃┃
    ┗┫┏━━━━━Aloe属
        ┃┃
        ┗┫    ┏━━━Astroloba属
            ┃    ┃
            ┃┏┫┏━━Aristaloe属
            ┃┃┃┃
            ┃┃┗┫┏━Gonialoe属
            ┃┃    ┗┫
            ┗┫        ┗━Tulista属
                ┃
                ┃┏━━━Haworthiopsis属
                ┗┫
                    ┗━━━Gasteria属

論文は1993年と当時の分類に従っています。しかし、現在では分類体系は大きく変わりました。
最新の遺伝子解析の結果に従って、論文の内容を再構成します。学名の後に、蜜に含まれる糖の組成を以下の順に示します。

【Fructose, Glucose, Sucrose】Fructoseは果糖、Glucoseはブドウ糖、Sucroseはショ糖のことです。
分子系統に示された分類群を、上から順番に見ていきましょう。


まずは、アロエ類の中で一番祖先的な"Tree Aloe"、つまりはAloidendronから。論文ではAloe ramosissimaとなっていますが、現在はAloidendron ramosissimumとなりました。
糖の組成はアロエ属(狭義)に近い値です。しかし、アロエ属(狭義)と比較すると、果糖がやや高くブドウ糖がやや低いことに気がつきます。たいした違いではないように思えますが、アロエ属(狭義)は39種類47検体も調べていますから、その値から多少とは言え逸脱していることには何か意味があるような気がします。
A. ramosissimum【55%, 45%, -%】


DSC_1221
Aloidendron dichotomum

次にKumaraとHaworthia(狭義)は近縁ですが、残念ながらKumaraはデータがありません。Haworthia(狭義)は5種類を調べています。
Haworthia(狭義)は割と組成がばらつきます。果糖は少なめですが、H. herbaceaは19%とやや高めです。これはアロエ属(狭義)とはかなり異なる組成ですが、これを鳥媒花のアロエ属(狭義)と虫媒花のハウォルチア属(狭義)の違いと見ることはできるのでしょうか。
H. arachnoidea【13%, 51%, 36%】
H. bolusii【6%, 39%, 55%】
H. comptoniana【4%, 54%, 42%】
H. cooperi【5%, 39%, 56%】
H. herbacea【19%, 46%, 35%】
DSC_1945
Haworthia arachnoidea

次にアロエ属(狭義)とAloiampelosについて見てみましょう。論文で分析されたアロエ属は47検体ですが、6検体は重複、2検体は変種です。また、現在はAloe ramosissimaはAloidendron ramosissimumに、Aloe variegataはGonialoe variegataとなっていますから、この一覧からは除外しました。また、現在はアロエ属とされるLomatophyllumは1種類2検体、Chortolirionは1種類3検体を調べています。Chortolirion angolensisは、現在ではAloe welwitschiiとされています。
Aloe37種類2変種の糖の組成は【40~51%, 47~60%,  - ~4%】でした。アロエ属はショ糖の割合が少ないことが特徴です。果糖とブドウ糖は半々くらいで、種類の違いによる変動幅は小さいと言えます。気になるのは、小型種であるA. bowieaが中型~大型種と糖の組成が変わらないことです。大型アロエは鳥媒花で、小型アロエは虫媒花なのではないかと思われますが、蜜の組成に違いはないのは不思議です。A. haworthioidesなどの他の小型種についてどうなのか知りたいところです。
Lomatophyllumの蜜の組成は完全にアロエ属の範囲内でした。形態的に特殊化したLomatophyllumが蜜の組成では変わっていないのは意外です。しかし、Chortolirionはショ糖の比率が70%を超えており、明らかアロエ属から逸脱しています。私はChortolirionについては知識がないため、その理由を推測出来ません。
Aloe ciliarisは現在ではAloiampelosとなっています。Aloiampelosの糖の組成は、アロエ属(狭義)の組成の幅に収まります。

A. abyssinica【47%, 49%, 4%】
A. aculeata【45%, 55%, - %】
A. affinis【46%, 53%, 1%】
A. arborescens①【45%, 55%, -%】
A. arborescens②【46%, 53%, 1%】
A. asperifolia【46%, 51%, 3%】
A. bellatula【49%, 51%, -%】
A. bowiea①【51%, 49%, - %】
A. bowiea②
【49%, 51%, - %】
A. branddraaiensis【40%, 60%, - %】
A. capitata
【47%, 53%, - %】
A. castanea
【46%, 52%, 2%】
A. citrina
【49%, 47%, 4%】
A. dewinteri
【48%, 49%, 3%】
A. divaricata
【46%, 54%, - %】
A. erinacea
【46%, 54%, - %】
A. fourei【47%, 50%, 3%】
A. gariepensis【49%, 51%, -%】
A. greatheadii
     var. greatheadii【48%, 50%, 2%】
A. greatheadii
     var. davyana【49%, 49%, 2%】
A. hardyi【46%, 54%, - %】
A. hereroensis
     var. hereroensis【47%, 52%, 1%】

A. humilis【47%, 53%, - %】
A. littoralis【46%, 50%, 4%】
A. lutescens【47%, 52%, 1%】
A. massawana【46%, 53%, 1%】
A. melanacantha【47%, 52%, 1%】
A. meyeri【49%, 50%, 1%】
A. microstigma【50%, 50%, - %】
A. monotropa【47%, 52%, 1%】
A. mutabilis【44%, 56%, - %】
A. nubigena【48%, 51%, 1%】
A. pachygaster【49%, 51%, - %】
A. parvibracteata【45%, 55%, - %】
A. pearsonii(赤花)【47%, 51%, 2%】
A. pearsonii(黄花)【50%, 50%, - %】
A. perfoliata【48%, 49%, 3%】
A. petricola【48%, 52%, - %】
A. pictifolia【48%, 52%, - %】
A. sinkata【42%, 57%, 1%】
A. speciosa【48%, 52%, - %】
A. suprafoliata【49%, 50%, 1%】
A. thompsoniae【48%, 49%, 3%】
A. tricosantha①【46%, 53%, 1%】
A. tricosantha②【47%, 52%, 1%】
A. tricosantha③【46%, 53%, 1%】
A. vanbalenii【45%, 55%, - %】
A. vaombe【45%, 55%, - %】
A. vera【46%, 54%, - %】
A. verecunda【48%, 52%, - %】

DSC_0066
Aloe arborescens

旧・Lomatophyllum
A. purpurea①【51%, 49%, - %】
A. purpurea②【50%, 50%, - %】

旧・Chortolirion
A. welwitschii①【8%, 21%, 71%】
A. welwitschii②【8%, 19%, 73%】
A. welwitschii③【7%, 20%, 73%】

Aloiampelos
A. ciliaris【49%, 49%, 2%】


記事が長くなってしまいました。Astroloba以下については、明日続きをご紹介します。


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多肉植物たちも1年経てば、それぞれの速度で生長していきます。私の育てている多肉たちも、生長が早いもの遅いもの、去年はいまいちでも今年はよく生長したもの、逆に去年はよく生長したのに今年はいまいちだったものなど、一株一株皆異なり様々です。
最近、寒くなり室内に多肉植物たちを取り込みましたから、毎日じっくり見る時間が出来ました。普段は帰宅すると暗くてよく見えず、休日に見るくらいですが、暑いわ蚊は出るわで中々じっくり多肉植物たちを見られませんでしたから。
寒さによって生長は鈍り、種類によっては完全に生長が止まったものもあるでしょう。この1年の生長を振り返る良い機会です。本日は我が家のアロエについて、少し振り返ります。まあ、それほど沢山のアロエを育てているわけではありませんが、アロエは丈夫なものが多く生長も早いので、なんと行っても目に見えて大きくなりますから育てる喜びがあります。そんな我が家のアロエたちを少しご紹介しましょう。

DSC_0663
2021年の12月に千葉で開催された木更津Cactus & Succulentフェアで購入したAloe pegleraeです。まだ若く葉の枚数が少ないため、A. pegleraeらしさはありません。

DSC_1864
最近のAloe peglerae。見違えるように葉が増えました。葉の枚数が増えたので、葉がやや内側に巻いてきて、少しA. pegleraeらしくなってきました。トゲも強くなり、赤味が増して荒々しさが出ています。

DSC_0662
同じく2021年の12月のCactus & Succulentフェアで入手したAloe spectabilisです。A. pegleraeを購入したオマケでいただいた抜き苗です。真冬に植え込みましたから少し心配でした。
二列性と言って、アロエは苗の頃は葉が左右に並びますが、ご覧の通り見事な二列性の苗でした。

DSC_1900
最近のA. spectabilis。葉が旋回を始めました。葉の幅がかなり広くなり、A. spectabilisらしさが出てきました。まあ、A. spectabilisは高さ5メートルになる巨大アロエですから、まだまだ赤ちゃんみたいなものでしょうけど。

DSC_0779
2022年の2月に鶴仙園池袋店で購入したAloe somaliensis。冬なので乾かしぎみ、あるいは断水管理なのかもしれません。カリカリに乾いて、葉が巻いています。

DSC_1666
夏のA. somaliensis。あまりの強光に焦げて外側の葉をやられてしまいました。

DSC_1906
最近のA. somaliensis。焦がしてから遮光して、ようやく落ちつきました。来年は葉の枚数を増やしたいものです。

DSC_0022
2020年の1月に埼玉のシマムラ園芸で購入したAloe aristata。今は属が変更されてArirtaloe aristataです。カチカチに硬いタイプです。
※おそらくはGasteriaとの交配種の可能性あり。

DSC_1921
最近のA. aristata。すっかり葉が増えて同じ種類には見えません。隠れていますが、根元から幾つか小さい子を吹いています。

DSC_0971
2022年の4月に五反田で開催された春のサボテン・多肉植物のビッグバザールで購入したAloe parvula。寒さにすっかり赤くなっていました。写真ではわかりませんが、葉先はだいぶ枯れ込んでいました。凍みてしまう一歩手前に見えましたが、さてどうなるやら。

DSC_1816
最近のA. parvula。中々、赤味が抜けなくて苦労しましたが、ご覧の通り葉も増えて美しい緑色を取り戻しました。こういうしなやかな葉のアロエは気に入っています。

DSC_0204
2020年の3月に横浜のコーナン港北インター店で購入したAloe haworthioides。柔らかい小型アロエです。この時点では3株でした。

DSC_1815
最近のA. haworthioides。8株に増えました。

室内に取り込んだ多肉植物を眺めていると、ああ随分生長したなあと思います。今回、あまり変わっていなように見えても、昔の写真と比較すると思いの外生長していて驚いたりもしました。
そういえば、我が家の多肉植物に冬型はほとんどありません。ですから、基本的に冬はお休みの季節です。ブログも論文の紹介などがメインになるかもしれません。 

論文の紹介は私の記事としてはあまり人気はありませんが、重要なことが書かれており、私は個人的に面白くて仕方がないので是非内容を共有したいと考えています。学術論文だからと言って真面目に構えて読む必要はなく、流し読む位の気楽なものと捉えてほしいのです。科学研究は研究者だけの独占物ではなく、社会に還元することが求められます。それは、必ずしも実社会で実用的である必要はなく、書籍や大学のホームページなどで研究成果を説明していただくだけでも意味があると思います。しかし、すべての研究者の業績が書籍となるわけではなく、若手研究者や海外の研究については学術論文以外では知る術がないのが現状です。といったところで、学術論文を検索するのはハードルが高いかもしれません。ですから、あくまで私の興味のある部分だけではありますが、多肉植物の論文をこれからも紹介していきたいと考えております。



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Aloidendron dichotomumは代表的な木性アロエです。原産地では巨大に育つことで有名です。現在はアロイデンドロン属とされていますが、かつてはAloe dichotomaと呼ばれていました。
本日はA. dichotomumの発見と命名の経緯について書かれたColin C. Walkerによる2021年の論文『Aloidendron dichotomum The archetypal tree aloe』をご紹介します。私の所感や他の著者の論文による遺伝子解析の情報も追加しました。


DSC_1866
Aloidendron dichotomum

オランダ東インド会社は1652年に現在のケープタウンに相当する場所に基地を設立しました。1679年にSimon van der Stelが司令官に任命され、1690年には総督に就任しました。1685年から1686年にかけて、van der Stelはナマクア族の土地で銅資源を探索する遠征を行いました。遠征隊は1685年の10月にCopper(=銅)山脈に到着しました。遠征隊に同行した画家のHendrik Claudiusにより、遠征中の地理、地質学、動物、植物、先住民の絵が描かれました。その中には、A. dichotomumの絵も含まれていました。
また、遠征隊の日記が作成されましたが、van der StelもClaudiusも資料を出版しませんでした。これらの資料は1922年に、何故かアイルランドの首都ダブリンで発見されました。そして1932年にWaterhouseにより出版されました。van der Stelの日記には、A. dichotomumに対する記述があります。時に12フィートとなり、樹皮は硬いが中は柔らかく軽くスポンジ状つ、原住民は矢筒として利用されていることが記されています。これが、おそらくは最も古いA. dichotomumに対する記述でしょう。


次に南アフリカのA. dichotomumを訪れて記述したのは、Francis Massonです。MassonはJoseph Banks卿の命により、イギリス王立植物園のコレクションを強化するために南アフリカに派遣されたプラント・ハンターでした。Massonは数多くの新種の植物を発見しました。Massonは1774年にZwart Doon渓谷で新種のアロエを発見し、Aloe dichotomaと命名しました。 これが、A. dichotomumの最初の命名でしたが、Massonは当時の分類体系に正しく分類したことになります。

さて、A. dichotomumは初めて命名されて以来、200年以上A. dichotomaという学名でした。Aloidendronに移されたのが2013年のことでしたから、まだ10年も経っていないことになります。過去に出た図鑑もAloe dichotomaと表記していますし、販売される時にもAloe dichotomaの名札だったりしますから、Aloe dichotomaの方が馴染みがあります。ただし、現在のアロエ類の分類は、外見上の特徴ではなくて遺伝子解析の結果によりますから、より精度が高いものとなっています。ちなみに、Aloidendronとは、そのままTree Aloeという意味ですからわかりやすいですね。

アロエ類の分子系統図
┏━━━━━━━━★Aloidendron属

┫    ┏━━━━━━Kumara属
┃┏┫
┗┫┗━━━━━━Haworthia属
    ┃
    ┃┏━━━━━━Aloiampelos属
    ┃┃
    ┗┫┏━━━━━Aloe属
        ┃┃
        ┗┫    ┏━━━Astroloba属
            ┃    ┃
            ┃┏┫┏━━Aristaloe属
            ┃┃┃┃
            ┃┃┗┫┏━Gonialoe属
            ┃┃    ┗┫
            ┗┫        ┗━Tulista属
                ┃
                ┃┏━━━Haworthiopsis属
                ┗┫
                    ┗━━━Gasteria属

Aloidendronはイギリス王立植物園のデータベースでは7種類が登録されておりますが、論文では6種類について述べられています。
Aloidendronのうち、A. dichotomumに最も近縁と考えられているのが、Aloidendron ramosissimumです。そのため、2000年にはA. dichotomaの変種、2002年には亜種とする考え方も提案されました。しかし、現在ではそれぞれ別種とされております。両種ともに南アフリカのケープ州からナミビアにかけて分布します。A. ramosissimumは枝分かれして高さ3mほどのブッシュ状となり主幹を持たないため、A. dichotomumとは異なり樹木というよりは低木とした方が正しいようです。
同じく南アフリカのケープ州からナミビアに分布するのが、絶滅の危機に瀕しているAloidendron pillansiiです。やはり、2002年にはAloe dichotomaの亜種とする意見もありました。A. pillansiiは幹は直立しますが、枝は少ないようです。また、花序は水平方向に伸びるらしく、花序が直立するA. dichotomumとの区別は簡単です。
他のAloidendronはA. dichotomumとは地理的に離れています。アフリカ南東部にはAloidendron barberaeとAloidendron tongaensisが分布します。A.tongaensisは南アフリカのKwaZulu-Natal州からモザンビークまで、A. barberaeは南アフリカの東ケープ州からKwaZulu-Natal州、北部州、スワジランド、モザンビークまで広く分布します。しかし、論文では2015年のvan Jaarsveldはモザンビークの分布を主張しましたが、2019年のWalkerの報告ではモザンビークでのA. barberaeの存在を確認出来ませんでした。A. barberaeは高さ18mになり、花のサイズとピンクがかった花色でA. dichotomumと区別されます。2010年に発見されたばかりのAloidendron tongaensisは、A.barberaeに似ていますが高さは8mほどです。黄色がかったオレンジ色の花が特徴です。
他のAloidendronとさらに地理的に隔離されているのが、Aloidendron eminensです。A. eminensはソマリアの固有種で分布は非常に狭いと言います。高さは15mまでの直立した幹を持ち、赤色の花を咲かせます。
最後に論文には記載がない7種類目は、Aloidendron sabaeumです。発見は1894年ですがAloidendronとされたのは2014年のことです。驚くべきことにA. sabaeumはアフリカ原産ではなく、サウジアラビアとイエメンに分布します。高さは5mほどで、垂れ下がる葉を持ちます。花は赤色から赤褐色です。ここまではカタログ・データですが、A. sabaeumの画像がいまいち見つかりません。ひょろひょろと細長く伸びて枝分かれしないミニチュアのヤシのような画像は出てきます。生長しても分岐せずに、姿は変わらないのでしょうか?

論文の内容は以上です。多少情報を追加しましたが、Aloidendron dichotomumの発見の経緯などはまったく知らなかったので、私は非常に面白く論文を読みました。こういう話はデータベースを漁るだけでは得られませんから、著者には感謝ですね。
また、この他にもA. dichotomumの絵が書かれた経緯などもありましたが割愛しております。悪しからず。



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草花の花は美しく私達の目を楽しませてくれますが、植物達は私達を楽しませるために花を咲かせているわけではありません。受粉のために昆虫や鳥などを呼び寄せる際の目印として、目立つ花を咲かせているのです。もちろん、植物は花粉を運んでもらう報酬として、甘い蜜を準備しています。花に集まる昆虫や鳥もタダ働きは御免でしょうから、働きに見合う甘い蜜は必要なのです。
最近は多肉植物の花の受粉に関する論文を記事としてご紹介してきました。これまでの記事は花粉を運ぶポリネーターについての話でした。少し視点を変えて、本日はこの甘い蜜のお話をしましょう。

DSC_1640
Haworthiopsis scabra

よく考えてみると、花の話題はあっても、花の蜜の話題はあまり聞かない気がします。まあ、我々が直に花の蜜を吸うわけではないので、花の蜜と言えば蜂蜜くらいなものですからね。
ポリネーター(花粉媒介者)に対するアピールとして重要なのは、花の色や大きさ、形状です。花の色によって反応するポリネーターは異なります。しかし、花の蜜の成分はどうでしょうか。植物により異なるのでしょうか。あるいは、その成分とポリネーターの種類には相関があるのでしょうか。
とりあえず、多肉植物の蜜に関する論文を漁ってみたところ見つけたのが、G. F. Smith, B-E. van Wyk, E. M. A. Steyn & I. Breuerの2001年の論文、『Infrageneric classification of Haworthia (Aloaceae) : perspectives from nectar sugar analysis』です。

DSC_1631
Haworthiopsis attenuata

まず、アロエ類についておさらいしましょう。アロエ類とは、古典的な分類ではAloe(広義)、Haworthia(広義)、Gasteria、Astrolobaからなる植物です。しかし、最近では遺伝子解析の進展により、Aloe(広義)は解体されてAloe(狭義)、Aloidendron、Aloiampelos、Gonialoe、Arirtaloeとなり、Haworthia(広義)も、Haworthia(狭義)、Haworthiopsis、Tulistaとなりました。しかし、この論文が出た時点ではここら辺の話はまだ出て来ておりませんでした。むしろ当時の問題点は、球根様のChortolirionや液果を持つLomatophyllumはAloeか否かとか、花が異なるPoellnitziaがAstrolobaか否かということでした。これらは研究者によって見解が異なるため、かなりの議論があったようです。現在では、遺伝子解析により、ChortolirionやLomatophyllumはAloeの、PoellnitziaはAstrolobaの特殊化したものに過ぎないことがわかりました。さて、前提はここまでにして、論文の内容に移りましょう。花の蜜を分析して、蜜に含まれる糖の種類の割合を算出しています。蜜に含まれる糖は、果糖(フルクトース)、ブドウ糖(グルコース)、ショ糖(スクロース)です。以下の一覧は、2001年当時ですから学名が現在と一部異なります。括弧の中は【フルクトース, グルコース, スクロース】の割合(%)を示しています。

Haworthia亜属(=狭義のHaworthia)
1   H. angustifolia             【 4, 48, 48】
2   H. angustifolia
       fa. baylissii                 【10, 25, 65】
3   H. arachnoidea①        【13, 51, 36】
4   H. arachnoidea②        【  5, 50, 45】
5   H. blackburniae           【24, 43, 33】
6   H. bolusii                      【  6, 39, 55】
7   H. comptoniana          【  4, 54, 42】
8   H. cooperi                    【  5, 39, 56】
9   H. cymbiformis
     var. cymbiformis          【14, 55, 31】
10 H. decipiens①             【  7, 51, 42】
11 H. decipiens②             【  9, 61, 30】
12 H. divergens                 【16, 52, 32】
13 H. emelyae①               【  8, 54, 38】
14 H. emelyae②               【12, 59, 29】
15 H. habdomadis
       var. morrisiae              【  2, 48, 50】
16 H. herbacea                  【19, 46, 35】
17 H. maculata①              【17, 49, 34】
18 H. maculata②              【16, 58, 26】
19 H. margnifica
       var. maraisii                 【  1, 50, 49】
20 H. marumiana               【16, 54, 30】
21 H. maughanii                 【  7, 58, 35】
22 H. nortierii                      【20, 60, 20】
23 H. pubescens                【11, 46, 43】
24 H. retusa                        【  4, 44, 52】
25 H. retusa
       var. dekenahii              【10, 39, 51】
26 H. rycroftiana                【  6, 57, 37】
27 H. semiviva                    【16, 52, 32】
28 H. truncata                     【  7, 47, 46】
29 H. unicolor                      【  5, 45, 50】
30 H. xiphiophylla               【25, 48, 27】
31 H. glauca                         【  1, 19, 80】

いわゆる軟葉系ハウォルチア、狭義のHaworthiaはグルコースあるいはスクロースが主成分です。フルクトースは少ないのですが、多いものでも25%程度です。

Hexangulares亜属(=Haworthiopsis)
32 H. koelmaniorum①    【  5, 23, 72】
33 H. koelmaniorum②    【  8, 28, 64】
34 H. limifolia
        var. limifolia①           【  4, 41, 55】
35 H. limifolia
        var. limifolia②           【  3, 24, 73】
36 H. limifolia
        var. limifolia③           【11, 29, 60】
37 H. limifolia
        var. gigantea             【  4, 34, 62】
38 H. longiana①              【  3, 20, 77】
39 H. longiana②              【  7, 19, 74】
40 H. nigra                        【   - , 25, 75】
41 H. venosa
     subsp. granulata①     【  5, 25, 70】
42 H. venosa
     subsp. granulata②     【  4, 24, 72】
43 H. venosa
     subsp. granulata③     【  8, 30, 62】
44 H. venosa
     subsp. tessellata①    【  1, 29, 70】
45 H. venosa
     subsp. tessellata②    【  2, 24, 74】
46 H. viscosa①               【  2, 32, 66】
47 H. viscosa②               【  4, 33, 63】
48 H. woolley                   【  1, 22, 77】

硬葉系ハウォルチア、つまりはHaworthiopsisはスクロースが主成分です。狭義のHaworthiaとの違いが目立ちます。
Haworthiopsisの中でもH. koelmaniorumやH. limifoliaは遺伝子解析の結果では、やや位置が異なると見られていますが、蜜の成分はHaworthiopsisとしては普通です。

Robustipeduculares亜属(=Tulista)
49 H. minima                  【  7, 24, 69】
50 H. pumila①               【  1, 14, 85】
51 H. pumila②               【  3 , 17, 80】
52 H. pumila③               【  7, 19, 74】

Tulistaはサンプルが少ないのが残念ですが、スクロースの比率が非常に高いようです。実はTulistaは狭義のHaworthiaやHaworthiopsisより、AstrolobaやArirtaloeと近縁です。
ちなみに、H. minimaは現在ではTulista minorとされています。

交配種など
53 H. woolley
         × H. sordida           【  4, 29, 67】
54 H. viscosa
         × H. longiana         【  8, 27, 65】
55 H. subg.
   Haworthia sp. nov.     【  6, 55, 39】
56 H. tortuosa                【11, 31, 58】
57 H. mcmurtryi             【  7, 26, 67】

Astroloba
58 A. bullulata                【20, 46, 34】
59 A. spiralis
      subsp. spiralis          【  2, 13, 85】
60 A. spiralis
      subsp. foliolosa①   【  4, 16, 80】
61 A. spiralis
      subsp. foliolosa②   【  7, 29, 64】
62 A. spiralis
      subsp. foliolosa③   【  9, 32, 64】

Astrolobaはスクロースの比率が高いようです。A. bullulataは異なります。
ちなみに、A. spiralis subsp. foliolosaはA. foliolosaとして独立種とされています。

Chortolirion
63 C. angolense①        【  8, 21, 71】
64 C. angolense②        【  8, 19, 73】
65 C. angolense③        【  7, 20, 73】

Chortolirionはスクロースの比率が高いようです。Chortolirionは現在はAloeとされていますが、Aloeの蜜の成分と比較したいところです。

蜜の糖の成分がこれ程、属ごとに異なるとは思いませんでした。むしろ、種類ごとにバラバラでもおかしくはないと思っていました。意外です。
蜜の成分とポリネーター(花粉媒介者)との関係性はどうなのでしょうか? 大型アロエは鳥媒花ですが、Chortolirionはわかりませんが同じ鳥媒花だとしたらスクロース比率が高いのでしょうか。しかし、Haworthia、Haworthiopsis、Astrolobaは虫媒花ですが、割と成分の比率は異なります。ただし、ターゲットの昆虫が異なる可能性はあり、蜜の成分の違いと花に集まる昆虫の関係性も気になります。
最大の疑問はAstroloba rubrifloraの蜜の成分でしょう。A. rubrifloraはかつてPoellnitziaとされていました。これは、白花で虫媒花であるAstrolobaに対し、赤い花で鳥媒花のPoellnitzia rubrifloraという違いがあったためです。ポリネーターが異なることと蜜の関係性が一番わかりやすい例でしょう。
どうにも知りたいことが多すぎて困ってしまいます。他に論文がないかさらに詳しく調べてみます。


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本日のお話に関係するAloe pegleraeは南アフリカ原産の絶滅が危惧されているアロエです。原産地では非常に整った美しい姿をしており、違法採取や環境破壊により数を減らしており、保護の対象とされています。しかし、A. pegleraeは増やすことが難しいわけではないため、実生苗は入手が容易で普及種に近い状況となっております。ただし、A. pegleraeは生長が遅く大型になるまでに時間がかかるため、高額な現地球を欲しがる人もいるのでしょう。とはいえ、現在アロエは、Aloe veraと園芸用の交配系アロエ以外の輸出入に関して制限がかかっており、簡単には輸入出来なくなっているようです。

さて、最近アロエの受粉に関わる鳥について調査した論文の内容について記事にしました。
しかし、論文ではAloe feroxの受粉に関与する鳥を調査することが目的であり、昆虫や哺乳類を排除した内容でした。そこで、何か良い論文はないかと調べていたら見つけたのが、南アフリカのStephanie L. Payne、Craig T. Symes and ED T. F. Witkowskiが2016年に発表した『Of feathers and fur : Differential pollinator roles of birds and small mammals in the grassland succulent Aloe peglerae』です。

DSC_1864
Aloe peglerae

アロエは一般的に赤系統の花を咲かせますが、これは鳥に対するアピールと考えられています。しかし、ネズミなどの小型哺乳類が夜間にアロエの花を訪れることは知られていましたが、その受粉への関与についてはあまりわかっておりません。この論文では草原性のアロエであるAloe pegleraeの花を訪れる動物を記録し、受粉により出来た種子を調べました。
A. pegleraeの開花は7~8月で、主にルリガシライソヒヨ(Monticola rupestris)という鳥により受粉が行われ、昆虫の貢献はわずかと言われています。過去の知見ではA. pegleraeの花を訪れた動物は、ヒガシイワハネジネズミ(Elephantulus myurus)、ナマクアロックマウス(Micaelamys namaquensis)、チャクマヒヒ(Papio hamadryas ursinus)、ホソマングース(Galerella sanguinea)、four striped grass mouse(※4本の縞模様があるネズミ、Rhabdomys pumilio)が知られています。

研究は南アフリカのPretoriaの西部にあるMagaliesberg山脈にあるPeglerae Conservancyで行われました。A. pegleraeは知られている個体群は3箇所のみです。A. pegleraeは直径20cm以上で成体となり、冬(7~8月)に毎年開花します。A. pegleraeの花は薄い蜜を大量に分泌するということです。

さて、観察の結果、日中はルリガシライソヒヨ、夜間はナマクアロックマウスが最も頻繁なA. pegleraeの花への訪問者でした。チャクマヒヒやネズミが花自体を食べてしまった様子も観察されました。アロエの花に来ることが報告されているアカハラケビタキ(Thamnolaea cinnamomeiventris)は周囲に沢山いたにも関わらず、観察期間中にA. pegleraeの花を訪れませんでした。また、シロハラセッカ(Cisticola lais)、ハシナガビンズイ(Anthus similis)、アカバネテリムク(Onychognathus morio)、ケープメジロ(Zosterops virens)、ヒガシイワハネジネズミがA. pegleraeの花を訪れました。 
A. pegleraeの花への訪問、はルリガシライソヒヨが約60%を占めていることから、A. pegleraeの受粉にとって重要です。ルリガシライソヒヨが冬にわざわざ寒いMagaliesberg山脈を訪れるのは、餌の少ない冬にA. pegleraeの蜜を求めてではないかと著者は考察しています。

ネズミなどの小型哺乳類による受粉は、幾つかの植物で報告があります。今回の観察でA. pegleraeを訪れたのはナマクアロックマウスとヒガシイワハネジネズミでしたが、やはり餌の少ない冬に蜜を求めてやってくる可能性があります。しかし、ナマクアロックマウスは花を食べてしまうため、受粉の有効性は疑問視されてきました。ただし、今回の観察では食害があっても、種子が出来たということです。
鳥と小型哺乳類の受粉に対する貢献度は正確にはわかりません。その違いは移動距離で、鳥と比較すると小型哺乳類の移動範囲は狭くなります。しかし、小型哺乳類は採餌に時間をかけるため、鳥よりも多くの花粉を体に付着させます。花粉の移動する量という側面からは、小型哺乳類が有効と言えます。高さ数メートルになる大型アロエと比較して、A. pegleraeは背が低いため、小型哺乳類をより引き寄せやすいと言えるかもしれません。
A. pegleraeは自家不和合性、つまりは自分の花では受粉しない可能性が高いとされています。今回の観察では、出来た種子の発芽試験を行われました。その結果、鳥による受粉でも小型哺乳類による受粉でも、種子の発芽率に違いはないとのことです。つまりは、移動範囲が狭い小型哺乳類でも、ちゃんと花粉を他の個体へ運んでいるのです。

以上で論文の簡単な要約は終了です。著者はAloe pegleraeの受粉は鳥だけではなく、小型哺乳類によっても行われるということを主張しています。Aloe pegleraeにとっては両者ともに重要なポリネーター(花粉媒介者)なのです。
植物の受粉と言えば、以前はミツバチやマルハナバチなどの昆虫が重要で、一部ハチドリやタイヨウチョウなどの鳥も関与するくらいの認識でした。しかし、
Generalist birds outperform specialist sunbirds as pollinators of an African Aloe』という論文では、Aloe feroxの受粉は花の蜜を餌とすることに特化したスペシャリストであるタイヨウチョウはほとんど関与せず、主に専門ではない他の餌も食べるジェネラリストにより受粉するというのです。スペシャリストの受粉への貢献度の低さにも驚きましたが、何より鳥が主たるポリネーターであることは、私の植物の受粉に対する認識を大きく変えられることになりました。さらに、今回ご紹介した論文で、小型哺乳類による受粉への関与という、ほとんど聞いたことがない行動を知るにつけ、思いの外植物と動物の関係は複雑で柔軟に出来ていることを改めて認識し直しました。



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マダガスカル島は多肉植物の宝庫で、マダガスカル固有種のDidiereaやAlluaudiaの林があり、島の全域にPachypodiumが自生します。私の好きなEuphorbiaも豊富で、花キリン類はマダガスカルを象徴する植物ですね。  
Aloeはアフリカ大陸に豊富ですが、マダガスカル島にも沢山の固有種が存在します。問題なのはアフリカ大陸からマダガスカル島にAloeが進出した際に、1種類が侵入して様々な種類に進化したのか、最初から様々な種類が侵入してそこから進化を開始したのかということです。
というわけで、本日ご紹介する論文は2018年のRichard J. Dee、Panagiota Malakasi、Solofo E. Rakotoarisoa & Olwen M. Graceが発表した『A phylogenetic analysis of the genus Aloe (Asphodelaceae) in Madagascar and the Mascarene Island』です。論文ではマダガスカル島とマダガスカル島のすぐ東にあるマスカレン諸島のアロエの遺伝子を解析しています。マスカレン諸島は、モーリシャス島、レユニオン島、ロドリゲス島からなります。

マダガスカル島には132種類のアロエが自生し、そのすべてが固有種です。マスカレン諸島では、Aloe lomatophylloides(=Lomatophyllum lomatophylloides)がロドリゲス島の固有種で、Aloe purpurea(=Lomatophyllum purpureum)、Aloe tormentorii(=Lomatophyllum tormentorii)はモーリシャス島の固有種、Aloe macra(=Lomatophyllum macrum)はレユニオン島の固有種です。マスカレン諸島の固有種はかつてロマトフィルム属とされてきました。

さて、マダガスカル島は深海に囲まれた島で、モザンビーク海峡の深さは500~1000mくらいです。地質調査により、氷河期に一部モザンビーク海峡を横断できる陸橋が出来た可能性があります。ですから、アロエも最後の氷河期にマダガスカル島に移入したのかもしれません。

アロエ研究の権威であったG.W.Reynoldsは、マダガスカル島のアロエをその形態から9グループに分けました。著者はさらに、Reynoldsがアロエを分類した時はアロエ属ではなくLomatophyllumだったグループを10番目に入れました。

Group
①小型あるいは超小型のアロエ
    旧・Guillauminia, Lemeea, Aloinella
②葉は二列性、A. compressa
③葉は長さ50cm幅5cm。花序は単生か枝分かれは少ない。
    A. schomeri, A. buchlohii

④葉は卵型。A. deltoideodonta
⑤大型のロゼット。無茎性で葉は70cmまで。
    A. bulbillifera
⑥密に花を咲かせる。総状花序は短い。
    A. capitata, A. trachyticola
⑦総状花序は密集して多花性。
    A. conifera,A. macroclada

⑧低木状。A. acutissima
⑨2~3mで太く直立し、葉は頂点に密に輪生。
    A. vaombe, A. cipolinicola

⑩液果ができる。旧・Lomatophyllum

次に、マダガスカルとマスカレン諸島、アフリカ大陸のアロエの遺伝子解析による分子系統です。マダガスカル島とマスカレン諸島原産のアロエは太字としており、数字は上記の10個のグループに相当します。比較対象としてアフリカ大陸原産のアロエも同時に解析されています。
以降は私の感想を記していきます。

まず、Clade AとClade Mに大別されますが、驚くべきことに、Aloe susannaeは他のアロエと系統が大きく離れたKumara haemanthifoliaと他のアロエより近縁でした。この時点で、様々なというよりかなり異なる系統のアロエがマダガスカルに入ってきたことがわかります。

    ┏━Kumara haemanthifolia
┏┫
┃┗━⑦Aloe susannae

┃┏━Clade A
┗┫
    ┗━Clade M

次にClade Aですが、マダガスカルの旧・Lomatophyllumである3種はまとまりがあります。また、マダガスカルの小型アロエ2週は近縁ですが、旧・LomatophyllumのA. citreaも近縁でした。東アフリカのエチオピアやソマリアといったいわゆる"アフリカの角"辺りに分布するアロエが、Clade Aのマダガスカル原産のアロエと近縁でした。マダガスカルに地理的に近いアロエが近縁であるという合理的な結果が得られました。逆に南アフリカ原産のアロエはやや距離があります。私が思ったこととして、アロエの地理的な拡散は、南アフリカ→マダガスカルへの渡航地点→マダガスカル・東アフリカである可能性はないでしょうか。

Clade A

┏━━━━━Aloe ecklonis
┃                (南アフリカ原産)
┃┏━━━━Aloidendron dichotomum
┃┃            (南アフリカ原産)
┣┫┏━━━Aloiampelos ciliaris
┃┗┫        (南アフリカ原産)
┃    ┗━━━Aloe ellenbeckii
┃                (東アフリカ原産)
┃┏━━━━①Aloe albiflora
┫┃             (=Guillauminia)
┃┣━━━━⑩Aloe propagulifera
┃┃             (=L. propaguliferum)
┃┃┏━━━⑩Aloe citrea
┃┣┫         (=L. citreum)
┃┃┃┏━━①Aloe haworthioides
┃┃┗┫(=Aloinella, =Lemeea)
┗┫    ┗━━①Aloe parvula
    ┃        (=Lemeea)
    ┃┏━━━⑩Aloe pembana
    ┣┫         (=L. pembanum)
    ┃┃┏━━⑩Aloe macra
    ┃┗┫     (=L. macrum)
    ┃    ┗━━⑩Aloe occidentalis
    ┃             (=L. occidentale)
    ┃┏━━━Aloe ankoberensis
    ┃┃         (Ethiopia原産)
    ┃┃    ┏━Aloe jucunda
    ┗┫┏┫ (Somalia原産)
        ┃┃┗━Aloe secundiflora
        ┗┫      (東アフリカ原産)
            ┃┏━Aloe trichosantha
            ┗┫  (東アフリカ原産)
                ┗━Aloe vera
                      (Oman原産)

Clade Mはすべてマダガスカル島とマスカレン諸島原産のアロエです。見てすぐにわかるのは、Reynoldsの分類が機能していないことです。要するに、アロエ属は外的な特徴は環境等によりその都度進化して、近縁ではなくても類似した姿をとることがあるということでしょう。それは、旧・Lomatophyllumも同様で、A. purpureaとA. tormentoriiは近縁ですが、A. anivoranoensisは近縁ではありません。さらに言えば、Clade Aに所属する旧・LomatophyllumはClade Mとかなりの遺伝的な距離があります。マダガスカル島のLomatophyllumが、マスカレン諸島に伝播して独自に進化したという、大変わかりやすいシナリオは却下しなければならないようです。要するに、Lomatophyllumはアロエ属の島嶼部への適応形態なので、分類群の中であちこちに出現するということなのかもしれません。

Clade M

┏━━━━━━━━④Aloe laeta

┃    ┏━━━━━━④Aloe deltoideodonta
┃┏┫
┃┃┗━━━━━━⑧Aloe millotii
┣┫
┃┃┏━━━━━━Aloe suarezensis
┃┗┫
┃    ┃┏━━━━━⑩Aloe purpurea
┃    ┗┫                   (=L. purpureum)
┃        ┗━━━━━⑩Aloe tormentorii
┫                               (=L. tormentorii)
┃┏━━━━━━━①Aloe rauhii
┃┃                           (=Guillauminia)
┃┃    ┏━━━━━Aloe divaricata
┃┃    ┃
┃┃    ┣━━━━━④Aloe madecassa
┃┃    ┃
┃┃    ┃┏━━━━④Aloe imalotensis
┗┫┏╋┫
    ┃┃┃┗━━━━④Aloe viguieri
    ┃┃┃
    ┃┃┃    ┏━━━⑧Aloe acutissima
    ┃┃┃┏┫
    ┃┃┃┃┗━━━⑦Aloe conifera
    ┃┃┗┫
    ┃┃    ┃┏━━━⑥Aloe capitata
    ┃┃    ┗┫
    ┗┫        ┗━━━⑨Aloe cipolinicola
        ┃
        ┃    ┏━━━━⑩Aloe anivoranoensis
        ┃    ┃              (=L. anivoranoense)
        ┃    ┃┏━━━②Aloe compressa
        ┃┏╋┫
        ┃┃┃┗━━━①Aloe descoingsii
        ┃┃┃              (=Guillauminia)
        ┃┃┃┏━━━④Aloe ibitiensis
        ┗┫┗┫
            ┃    ┗━━━⑥Aloe trachyticola
            ┃
            ┃┏━━━━⑤Aloe bulbillifera
            ┃┃
            ┗┫    ┏━━①Aloe calcairophila
                ┃┏┫        (=Guillauminia)
                ┃┃┗━━Aloe hoffmannii
                ┗┫
                    ┃┏━━⑦Aloe macroclada
                    ┗┫
                        ┃┏━①Aloe bakeri
                        ┗┫     (=Guillauminia)
                            ┗━⑨Aloe vaombe

以上が論文の内容となります。遺伝子解析の結果では、マダガスカル島のアロエは多系統であることが判明しました。最低でも、Aloe susannae、Clade A、Clade Mの3系統です。しかし、調べたアロエの種類が少ないため、マダガスカルにはまだ他の系統のアロエも存在するかもしれません。例えば、今回の研究ではAloe susannaeだけがかなり異なる系統だったように、場合によっては1種類だけ別系統というパターンもありうることがわかります。つまりは、マダガスカル島のアロエをすべて調べないとわからないということです。ただし、アフリカ大陸のアロエについての遺伝子解析がそれほど進んでいない感じがありますから、総合的な評価はまだ難しいのかもしれません。著者も完全解明を目論んだわけではなく、調査の規模からして予備検討的な研究であると本文で述べています。しかし、それでも予想を上回る重要な結果が得られています。個人的には大変意義のある良い論文だと思いました。


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Haworthiaはアフリカ原産の多肉植物です。自生地は当然ながら非常に暑くなります。ですから、その高温に耐える力がHaworthiaにはあるはずです。 本日ご紹介する論文は、2017年にウクライナのN.V.Nyzhyna、M.M.Gaidarzhy、Y.V.Aviekinにより発表された『Species-specific response to acute hyperthermal stress of Haworthia (Asphodelaceae) plants』です。なんと、Haworthiaを40℃と50℃に加熱してその反応を調べるというものです。

DSC_1832~2
これは論文のイメージに合わせて私が適当に加工して作った画像です。現実にこういう色のオブツーサはないので悪しからず。

論文で使用されたHaworthiaは、H. cymbiformis、H. parksiana、H. attenuata、H. limifoliaの4種類です。ただし、この内H. attenuataとH. limifoliaは、現在ではHaworthiopsisとされています。
研究方法は実生2年のHaworthiaの中間の葉(中心の新しい若い葉と外側の古い葉の間)を使用し、25℃の条件を比較対象として、40℃と50℃の条件にした葉を化学的に分析しました。加熱時間は3時間です。

植物もストレスを受けると活性酸素を生じます。活性酸素は細胞に対して毒性がありますから、生物の体には活性酸素を除去する働きがあります。主にスーパーオキシドジムスターゼやカタラーゼ、ペルオキシダーゼなどの酵素により活性酸素は不活化されます。H. cymbiformisやH. attenuataはスーパーオキシドジムスターゼが加熱により上昇しましたが、H. parksianaとH. limifoliaは上昇しませんでした。
さらに、成分を分析すると、フラボノイド(ポリフェノールの1種)がおそらくは破壊されたために、大幅に減少しました。しかし、フラボノイドは温度ストレスを受けた初期に働いて、植物を保護していると考えられます。H. parksianaでは40℃より50℃でよりフラボノイドが増加したことは、フラボノイドがストレス下の植物の保護に重要である可能性を示します。

H. attenuataは40℃でクロロフィル(光合成に必要な緑色の色素)とカロテノイド(強い抗酸化作用を持つ黄色や赤色の色素)が増加しました。さらに、50℃ではカロテノイドのみが増加しました。これはH. attenuataが高温下でもカロテノイドを増やすことにより環境に対応出来ていることがわかります。
逆にH. limifoliaは40℃ではややクロロフィルが減少し、光合成の効率が低下しました。50℃ではカロテノイドも減少したことから、H. limifoliaは高温環境には耐えられていないことが想定されます。
H. cymbiformisは40℃でも既にカロテノイドが減少する傾向があり、高温に耐える力が小さい可能性があります。

次に高温により失われた水分量の測定が行われました。加熱1時間の水分喪失量はH. attenuataは7.53%、H. limifoliaは4.32%、H. parksianaは7.44%、H. cymbiformisは22.29%でした。干魃耐性はH. limifoliaでやや高く、H. cymbiformisでは著しく低いことがわかりました。

以上が論文の内容となります。
ただし、この論文は英語ではなく、ウクライナ語で書かれたものです。キリル文字で書かれていますから、私は全く読めません。仕方がないので機械翻訳してみましたが、意外にも割とよく分かる日本語に翻訳されていました。というのも、例えばマダガスカルはフランスの植民地だったせいか、フランス語の論文が多くあります。同様にメキシコではスペイン語の論文が書かれています。マダガスカルもメキシコも多肉植物の宝庫ですから、沢山の多肉植物の論文が書かれています。タイトルに引かれて見てみると内容はフランス語やスペイン語で書かれていて全く読めないので試しに機械翻訳をかけてみますが、大抵は読むに耐えないひどい日本語になってしまいます。文字化けも多く、語尾がYesかNoかも怪しい悪質なもので、一応は日本語に翻訳されているのに全く内容が理解出来ず断念した論文が幾つもありました。機械翻訳は専門用語が多い学術論文には不向きです。最近では英語以外の論文は初めから除外していましたが、この論文はどうしても気になったので無理をして機械翻訳された文章を読んで見ました。しかし、ところどころで不明瞭な翻訳があり、よく理解出来ないために省いた部分もありました。ですから、大変申し訳ないのですが、不正確な部分もあるかもしれません。今回は無理をしたものの、正直懲りましたので今後はこれはというものではない限り、英語論文以外は訳さない方針で行こうかと思います。


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アロエは巨大に育つものがあります。Aloe feroxやAloe marlothiiなどは高さ数メートルに育ち、数十センチメートルの花序を沢山出します。しかも、このような巨大アロエは蜜の量も非常に多く、蜜を求めて様々な生き物が訪れます。当然ながらアロエは受粉をしてもらうために蜜を求める生き物を利用するわけですが、この蜜は他の生き物にとっても重要です。アロエは大抵は赤・橙・黄色系統の花を咲かせる種類が多く、色で花を探す鳥類や赤系統の花を好むミツバチやマルハナバチに対するアピールなのかもしれません。蜜の量が多ければ、ネズミなどの小型の哺乳類も蜜を舐めに来るかもしれません。
アフリカには花の蜜を専門として生きるタイヨウチョウ(sunbird)が分布します。アメリカ大陸にはやはり花の蜜で生きるハチドリがいますが、タイヨウチョウもハチドリと同じく非常にカラフルで美しい鳥として知られています。そして、アロエにもタイヨウチョウが訪れることが知られていますが、その受粉への貢献度について詳しくはわかっていませんでした。

本日ご紹介するのは、Aloe feroxの受粉に貢献する鳥について調査した、Carolina Diller, Miguel Castaneda-Zarate and Steven D.Johnsonの『Generalist birds outperform specialist sunbirds as pollinators of an African Aloe』という論文です。論文は2019年と最近のものです。
内容に入る前に少し用語の解説をします。生物の世界では、何かに対し専門的に特化したスペシャリスト(specialist)と、様々なものに浅く広く対応したジェネラリスト(generalist)が存在します。例えば、ある食物Xを食べることに特化したスペシャリストに対して、ジェネラリストはスペシャリストほど上手くXを食べることが出来ないということは良くあります。ただし、スペシャリストはX以外の食物も食べることが出来ます。スペシャリストとジェネラリスト、どちらが有利かはわかりません。なぜなら、スペシャリストもジェネラリストも存在するからです。環境次第ではないでしょうか。また、スペシャリストと一口に言っても、必ずしもジェネラリストよりも効率的に上手く出来るとは限らず、単純にそのXに依存しているだけの場合もあります。
次に受粉を行う生物を花粉媒介者と言いますが、一般的にはポリネーター(pollinator)と呼びます。アロエには様々なポリネーターが訪れます。

論文ではAloe feroxを観察し、アロエにポリネーターが訪れたあとに
花の柱頭に着いた花粉を数えました。Aloe feroxは高さ5mになるアロエで、最大13本の総状花序を出し、1本の総状花序には約280個の花が咲きます。調査は2017年の開花期にあたる、8月の乾季に南アフリカのLower Mpushini Valley自然保護区において、Aloe feroxの大規模な500以上の大群落において実施されました。
Aloe feroxを訪れた鳥は、スペシャリストとしてアメジストタイヨウチョウ(Chalcomitra amethystina)、ジェネラリストとしてサンショクヒヨドリ(Pycnonotus tricolor)、ハタオリドリ(Ploceus spp.)、アカガタテリムク(Lamprotornis nitens)でした。ハタオリドリはフィールドの観察では種類の特定までは出来なかったようです。
観察期間中、アメジストタイヨウチョウが4回で24個の花に、サンショクヒヨドリは10回で92個の花に、ハタオリドリは5回で45個の花、アカガタテリムクは6回で69個の花に訪れました。
観察期間の12日間にAloe feroxを訪れたスペシャリストは77羽、ジェネラリストは242羽でした。スペシャリストはアメジストタイヨウチョウが71回、シロハラタイヨウチョウが6回訪れました。ジェネラリストはハタオリドリが79回、アカガタテリムクが65回、サンショクヒヨドリが60回、クロオウチュウ(Dicrurus adsimilis)が20回、チャイロネズミドリ(Colius striatus)で18回でした。


さて、実際にAloe feroxの柱頭に付着した花粉を調べると、面白い結果が得られました。スペシャリストが訪れてもAloe feroxにはあまり花粉は付かないというのです。ポリネーターが入らないように網を被せた花と違いが見られなかったのです。ポリネーターが訪れなくても、多少は自分の花粉が付いてしまうこともあるのですが、スペシャリストはそのレベルあったということです。逆にジェネラリストの訪れた花は、スペシャリストの訪れた花の倍以上の花粉が付いていました。つまりは、Aloe feroxにとって、スペシャリストであるタイヨウチョウよりもジェネラリストの方が優れたポリネーターであるということです。

スペシャリストの嘴は長く、ジェネラリストの嘴は短いからであると言われることがあるようです。しかし、今回の観察期間中の鳥を調べると、スペシャリストとジェネラリストの嘴の長さに差はありませんでした。違いは嘴の太さで、スペシャリストの嘴は細くジェネラリストの嘴は太いということです。今回の観察期間中では、ジェネラリストはスペシャリストよりも大型でした。ジェネラリストは蜜を吸うために、顔を花に突っ込みその時に頭で雄しべを押し広げていることが観察されました。逆にスペシャリストのタイヨウチョウは、小さい頭に細い嘴、長い舌を持つため、雄しべに触れないで蜜を吸うことが出来るのです。よって、Aloe feroxに対してタイヨウチョウは蜜泥棒ということになります。

以上が論文の内容となります。
蜜を餌とする専門のタイヨウチョウが、受粉に寄与しないという驚くべき論文でした。2点ほど補足説明をしましょう。
まず1つ目は、Aloe feroxとタイヨウチョウの目的が異なることです。Aloe feroxはポリネーターに受粉してもらうために蜜を準備しているわけですが、タイヨウチョウは受粉を助けるために花を訪れているわけではありません。タイヨウチョウからすれば、いかに効率的に蜜を得られるかが重要なのであって、Aloe feroxが受粉するか否かはどうでも良いことです。邪魔な雄しべに触れないで、素早く嘴を花に差し込んで蜜だけを抜き取る。正にスペシャリストの技です。この場合、タイヨウチョウの方が一枚上手と言えます。対して、ジェネラリストはタイヨウチョウのようにスマートに蜜を得られません。しかし、下手だから頭を花粉だらけにして、上手いことAloe feroxに利用されて、知らずに受粉の手助けをしているのです。
2つ目は、これはAloe feroxに対するタイヨウチョウのポリネーターとしての能力がないと言っているだけで、他の植物の花では異なるかもしれないということです。例えば、Gasteriaはタイヨウチョウをポリネーターとしています。この場合、タイヨウチョウは花の蜜に特化したスペシャリストですが、Gasteriaはタイヨウチョウに特化した一段レベルの高いスペシャリストです。不特定多数の花の蜜を利用するタイヨウチョウは、自分をターゲットにしたGasteriaに上手く利用されているのです。
野生の生き物は何も相手を思いやって行動しているわけではなく、あくまで自分の利益のために行動しています。ですから、Aloe feroxとタイヨウチョウの関係は、上手く噛み合わなかっただけで、Aloe feroxがへまをしたわけでもタイヨウチョウが上手く出し抜いたわけでもありません。この関係は偶然の産物と言えます。
実はスペシャリストの訪問を妨げたりジェネラリストを呼ぶ算段を用意している植物もあります。ではAloe feroxが無策であるのは何故なのか気になります。考えたこととして、小型のアロエは花の数が少ないため受粉は確実性が欲しいでしょうから、蜜泥棒対策は必要でしょう。しかし、数えきれないほどの花を咲かせるAloe feroxは、そのすべての花が受粉しなくても十分なのかもしれません。無駄が多いようにも感じられますが、スペシャリストを妨げたりすることにも相応のコストがかかります。要するに戦略が異なるだけではないでしょうか。大型だからコストをかけて花を沢山咲かせる戦略、小型だから花は少ないけれど蜜泥棒対策にコストをかける戦略という、サイズに合わせた現実的な戦略を講じているわけです。

植物とポリネーターの関係は非常に複雑で面白く感じます。この論文では蜂の影響を避けるため、蜂が活発に活動する時間帯は花に網を被せていました。では、蜂の受粉に対する貢献度はいかほどでしょうか? また、このような大型アロエでは、ネズミなどの小型哺乳類も蜜を求めて訪れます。小型哺乳類の多くは夜行性ですから、昼行性の鳥類とは競合しないでしょう。では、小型哺乳類はアロエとどのような関係を築いているのでしょうか? どうにも気になることが沢山出て来てしまいました。最近は忙しく中々じっくりと論文を探す時間が取れませんが、少しずつ調べていくつもりです。


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白雪姫というかわいらしい名前をつけられたガステリアがあります。その学名をガステリア・グロメラタ(Gasteria glomerata)と言います。最近ガステリア属について詳しく調べたこともあり、ガステリアについて書かれた論文を少しずつ読んでいます。白雪姫については以前記事にしていますが、白雪姫の発見に関する論文を見つけましたのでご紹介します。

本日ご紹介するのは、南アフリカのErnst van Jaarsveldによる『Gasteria glomerata van Jaarsveld sp. nov.』という1991年の論文です。この論文により白雪姫がはじめて学術的に記載されました。白雪姫が発見された際の環境がわかる興味深い論文です。

早速内容に入りましょう。
Gasteria glomerataは南アフリカのKougaダム地域に固有のガステリアで、Kougaダムでは2種類目のガステリアです※。自生地の地形は険しく環境は良くありません。わずかに酸性(pH6.4)の石英質砂岩土壌で栄養価は低く、標高500~700mの垂直な崖に生えます。G. glomerataは他の低木などの陰で育ち、密集した状態で群生します。ちなみに、自生地が同じG. ellaphieaeとの雑種は確認されておりません。

※Kougaダムで最初に発見された新種のガステリアは、Gasteria ellaphieaeです。G. glomerataと同じ1991年にやはりvan Jaarsveldにより先に記載されました。

 G. glomerataの自生地には多肉植物を中心とした他の植物も豊富です。例えばCrassula(C. cordata, C. cultrata, C. lactea, C. muscosa var. parvula, C. orbicularis)、Delosperma laxipetalum、Adromirchus(A. crirtatus var. schonlandii, A. inamoenus)、Cotyledon(C. tomentosa, C. velutina, C. woodii)、Aloe pictifolia、Haworthia(H. translucens, H. turgida)、Bulbine latifolia、Othonna(O. carnosa, O. lobata)、Senecio scaposusHaemanthus albiflosなどがあげられます。また、低木あるいはブッシュを作るPelargonium zonale、Portulacaria afra、Ficus burt-davyiiなどが自生します。

G. glomerataは二列性の矮性種で、密に群生します。花は明るい赤桃色です。論文ではG. glomerataはG. rawlinsoniiとG. baylissianaと関係があるのではないかとしています。この3種はロゼットを形成しない二列性で、春に花を咲かせ、ともに厳しい断崖に生え、ケープに特有の石英質砂岩土壌に限定的に分布します。G. baylissianaは密に群生する育ち方も同じ矮性ガステリアです。また、著者はG. nitida var. armstrongiiと一部類似性があるものの、生息環境が異なるとしています。

最後に著者は、G. glomerataは明るい日陰で腐食質が豊富な土壌で最もよく育ち、分枝しよく増えると述べています。

以上がはじめて白雪姫が新種として命名された論文の要約した内容となります。詳細な形態学的な内容は割愛させていただきました。
さて、白雪姫の学名が命名されて既に30年以上経ちましたが、その間にガステリア研究も進展が見られます。2021年に出た『Phylogeny of the Southern African genus Gasteria duval (Asphodelaceae) based on Sanger and next generation sequencing data』という論文では、遺伝子解析によりガステリア属の系統関係を調べています。以下が白雪姫G. glomerataと近縁なガステリアとの系統関係です。

     ┏━━━━G. excelsa
 ┏┫
 ┃┗━━━━G. pulchra
 ┃
 ┫ ┏━━━━G. ellaphieae                         
 ┃ ┃ 
 ┃ ┃    ┏━━G. polita
 ┗ ┫┏┫
      ┃┃┃┏━G. acinacifolia
      ┃┃┗┫
      ┗┫    ┗━G. barbae
          ┃
          ┃┏━━G. armstrongii
          ┗┫
              ┃┏━G. glauca
              ┗┫
                  ┗━★G. glomerata

この論文では残念ながらG. baylissianaは解析されていないため、G. glomerataとの関係はわかりません。しかし、意外な事実が見えてきます。
例えば、G. glomerataはG. rawlinsoniiとは特に近縁ではありません。最も近縁なのはG. glaucaとG. armstrongiiです。この論文ではG. nitidaとG. nitida var. armstrongiiは近縁ではないことが判明したため、G. armstrongiiとして独立しています。G. glomerataと異なり、G. armstrongiiは平地に分布します。ガステリア属では生息環境の類似性は、種の近縁性とは無関係である可能性が高いのでしょう。
また、面白いことに、同じ地域に分布しているG. ellaphieaeは、G. glomerataと割と近縁でした。
あと、上の系統図のガステリアは、おおよそ南アフリカ南西部の原産でした。分布が近い種類は近縁種であるという、考えてみれば当たり前の話がわかったのです。

DSC_1834
Gasteria glomerata

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Gasteria ellaphieae

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Gasteria baylissiana


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いよいよ、ガステリア属の種類についての記事は、19世紀篇、20世紀篇と来て本日の21世紀篇で終了です。21世紀に入ると、南アフリカのvan Jaarsveldの一強時代となります。驚くべきことに、20年間に9種類の新種のガステリアが命名されており、そのすべてにvan Jaarsveldが関わっているのです。では、21世紀に命名されたガステリア属を見ていきましょう。

①Gasteria polita van Jaarsv., 2001

②Gasteria doreeniae
        van Jaarsv. & A.E.van Wyk, 2004


③Gasteria tukhelensis
                             van Jaarsv., 2005


④Gasteria barbae van Jaarsv., 2014

⑤Gasteria loedolffiae
                        van Jaarsv., 2014


⑥Gasteria koenii van Jaarsv., 2017

⑦Gasteria langebergensis
                   (van Jaarsv.)
              van Jaarsv. & Zonn., 2019

Homotypic synonym
Gasteria disticha var. langebergensis
                                van Jaarsv., 2007


⑧Gasteria visserii van Jaarsv., 2020

⑨Gasteria camillae
              van Jaarsv. & Molteno, 2020



ここ3日間の記事で、ガステリア属全26種の学名を、その命名年ごとに19世紀8種、20世紀9種、21世紀9種についてまとめてみました。18世紀はガステリア属はまだありませんからアロエ属とされており、1809年にDuvalによりガステリア属が創設されてからは19世紀はアロエ属かガステリア属かという駆け引きがあった模様です。しかし、20世紀前半は無風状態でしたが、後半はvan Jaarsveldの独断場と化します。1753年に後のGasteria disticha、つまりはAloe distichaが命名されていますからそこから数えて約270年、ガステリア属が1809年に創設されてからと考えても200年以上の歴史があります。そう考えるとここ30年あまりのvan Jaarsveldの活躍には目を見張るものがあります。
そのvan Jaarsveldは1987年にGasteria vlokiiを命名して以来、実に12種2亜種6変種を命名し認められています。ガステリア属26種類のうち12種類ですから、半分近くがvan Jaarsveldの命名しました。大変な速さで新種が見つかっています。

しかし、これだけ古くから知られており、しかも南アフリカに固有という条件で、21世紀に入ってから新種が発見されるペースが加速することは珍しく感じます。考えてみればガステリア属は急な崖に生えるものが多く、いまだに調査が及んでいない地域は沢山ありそうです。しかも、何故かガステリアは内陸部や隣国では見つからず、南アフリカにU字型に分布します。これからも、新種が発見される可能性が高いのではないでしょうか? 引き続きvan Jaarsveldの活躍と、21世紀の新世代の植物学者たちの研究に期待したいですね。



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昨日は19世紀に命名されたガステリア属についてまとめました。本日は20世紀篇です。
19世紀のガステリアは異名が非常に多く、それなりに混乱していたことがうかがえます。ガステリア属を採用するか、それとも今まで通りアロエ属のままにしていくのかという論争もあったのでしょう。しかし、20世紀に入るとガステリア属は定着し、もはやアロエ属の所属と考える学者は現れません。

20世紀に命名されたガステリア属は9種類です。19世紀と比較すると異名が少なく、異名が多いのは19世紀にアロエ属として命名されているGasteria brachyphyllaだけです。
では、20世紀に命名されたガステリア属を見ていきましょう。


①Gasteria pillansii Kensit, 1910

変種ピランシイ
Gasteria pillansii var. pillansii
Heterotypic synonym
Gasteria neliana Poelln., 1929

変種エルネスティ-ルスキイ
Gasteria pillansii var. ernesti-ruschii
        (Dinter & Poelln.) van Jaarsv., 1992
Homotypic synonym
Gasteria ernesti-ruschii
                Dinter & Poelln., 1938

変種ハリイ
Gasteria pillansii var. halii
                    van Jaarsv., 2007


②Gasteria rawlinsonii
                      Oberm., 1976


③Gasteria baylissiana
                           Rauh, 1977


④Gasteria vlokii
                   van Jaarsv., 1987


⑤Gasteria ellaphieae
                    van Jaarsv., 1991


⑥Gasteria glomerata
                    van Jaarsv., 1991


⑦Gasteria brachyphylla
      (Salm-Dyck) van Jaarsv., 1992
Homotypic synonym
Aloe brachyphylla Salm-Dyck, 1840

変種ブラキフィラ
Gasteria brachyphylla
                     var. brachyphylla
Heterotypic synonym
Aloe pseudonigricans Salm-Dyck, 1817
Gasteria nigricans
                 var. marmorata Haw., 1821
Aloe subnigricans Spreng., 1825
Gasteria subnigricans Haw., 1827
Gasteria subnigricans
                      var. glabrior Haw., 1827
Gasteria fasciata var. laxa Haw., 1827
Aloe subnigricans
       var. canaliculata Salm-Dyck, 1840
Gasteria nigricans
                  var. platyphylla Baker, 1880
Gasteria nigricans
                     var. polyspila Baker, 1880
Gasteria transvaalensis Baker, 1889
Gasteria angustiarum Poelln., 1937
Gasteria triebneriana Poelln., 1938
Gasteria joubertii Poelln., 1940
Gasteria vlaaktensis Poelln., 1940

変種バイエリ
Gasteria brachyphylla
                  var. bayeri van Jaarsv., 1992


⑧Gasteria batesiana
                     G.D.Rowley, 1995


変種バテシアナ
Gasteria batesiana var. batesiana

変種ドロミティカ
Gasteria batesiana var. dolomitica
        van Jaarsv. & A.E.van Wyk, 1999


⑨Gasteria glauca
                          van Jaarsv., 1998



時代が変わりガステリアの研究者も代わりました。もはや、19世紀を主導した研究者たちは見られません。
さらに、19世紀は8種類が命名されているのに対し、20世紀は9種類が命名されていますから、一見してガステリア研究は活発に見えますが、それは実のところ見かけだけのことです。なぜなら、20世紀前半で命名されたのはGasteria pillansiiのみで、しかも活動していたのはPoellnitz、
Schönland、Alwin Bergerくらいで、命名された学名の数も少なく19世紀ほどの熱気は感じられません。
しかし、20世紀後半はその様相はガラリと変わります。1976年から1995年までの19年間に残りの8種類が命名されているのです。このガステリアの命名ラッシュを主導したのはvan Jaarsveldです。1990年代以降はまさにvan Jaarsveldの時代と言えます。21世紀になってもvan Jaarsveldは活発に研究し、20世紀以上のペースでガステリアの新種を発見していくのです。

明日はいよいよ21世紀篇です。もはやガステリア属の第一人者となったvan Jaarsveldが大活躍します。

20世紀のガステリア属に関する代表的な命名者たちは以下の通り。

☆Poelln.=Karl von Poellnitz(1896-1945年)ドイツの植物学者。
Schönland.=Selmar Schonland(1860-1940年)ドイツ出身で南アフリカで活躍した植物学者。
☆A.Berger=Alwin Berger(1871-1931年)ドイツの植物学者・園芸家。
☆Kensit=Harrit Margaret Louisa Bolus née Kensit(1877-1970年)南アフリカの植物学者。L.Bolusと表記されることが多い。
☆Oberm.=Anna Amelia Mauve、旧姓Obermeyer(1907-2001)南アフリカの植物学者。
☆Rauh=Werner Rauh(1913-2000年)ドイツの植物学者・生物学者・作家。
☆G.D.Rowley=Gordon Douglas Rowley(1921-2019年)イギリスの植物学者。
☆van Jaarsv.=Ernst Jacobus van Jaarsveld(1953- )南アフリカの植物学者。



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ガステリアは赤系統の特徴的な花を咲かせるアロエ類(アロエ属やハウォルチア属などをまとめたグループ)です。属名のガステリア(Gasteria)は胃(garter)から来た名前で、花がちょうど胃袋のような形をしています。ガステリアは花の蜜を求めて訪れるタイヨウチョウにより受粉する鳥媒花です。
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ガステリアの花

ガステリアは1753年に設立されたアロエ属(Aloe L.)に含まれていましたが、1809年にDuvalによりガステリア属(Gasteria Duval)として独立しました。1866年にはプティアス属(Ptyas Salib.)も提唱されましたが、これは現在認められていない属名です。
2022年現在、学術的に認められているガステリアは26種類です。

本日は19世紀にガステリア属として命名された8種類について、異名を含め一覧としました。ガステリア属が創設される前はアロエ属でしたから、初命名は18世紀だったりしますが、ガステリア属が19世紀はじめに創設されましたからガステリア属としての命名は19世紀からということになります。しかし、19世紀に命名されたガステリアは異名が非常に多いですね。
異名は現在の正式な学名につながるHomotypic synonymと、正統性が認められないHeterotypic synonymがあります。
先に命名された学名を優先するという「先取権の原理」がありますから、一番はじめに命名された学名の種小名に正統性があります。ですから、もし属が変更になっても、種小名は基本的にはじめに命名されたものが受け継がれます。
しかし、19世紀のガステリア属の命名者を見てみると、Duval、Haworth、Bakerとアロエ属やハウォルチア属でもお馴染みの学者ばかりですね。

①Gasteria carinata
                (Mill.) Duval, 1809

Homotypic synonym
Aloe carinata Mill., 1768

変種カリナタ
Gasteria carinata var. carinata 

Heterotypic synonym
Aloe tristicha Medik., 1786
Aloe linguiformis DC, 1801
Aloe lingua var. angulata Haw., 1804
Aloe lingua var. multifaria Haw., 1804
Aloe carinata var. subglabra Haw., 1804
Gasteria angulata (Haw.) Duval, 1809
Aloe carinata Kew Gawl., 1810
Aloe excavata Willd., 1811
Aloe angulata Willd., 1811
Aloe angulata var. truncata Willd., 1811
Gasteria glabra Haw., 1812
Aloe leavis Salm-Dyck, 1817
Aloe pseudoangulata Salm-Dyck, 1817
Aloe subcarinata Salm-Dyck, 1817
Gasteria subcarinata
               (Salm-Dyck) Haw., 1819 
Aloe sulcata Salm-Dyck, 1821
Aloe glabra (Haw.) Salm-Dyck, 1821
Gasteria laetepunctata Haw., 1827
Gasteria parva Haw., 1827
Gasteria strigata Haw., 1827
Gasteria undata Haw., 1827
Gasteria sulcata
                (Salm-Dyck) Haw., 1827
Gasteria angulata (Willd.) Haw., 1827
Gasteria leavis (Salm-Dyck) Haw., 1827
Gasteria excavata (Willd.) Haw., 1827
Gasteria humilis Poelln., 1829 
Aloe pusilla Schult. & Schult.f., 1829
Aloe umdata Schult. & Schult.f., 1829
Aloe laetepunctata
         (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Gasteria pallescens Baker, 1880
Gasteria porphyrophylla Baker, 1880
Gasteria parviflora Baker, 1880
Gasteria disticha var. angulata
                        (Willd.) Baker, 1880
Gasteria carinata var. parva
                       (Haw.) Baker, 1896
Gasteria carinata var. strigata
                       (Haw.) Baker, 1896
Gasteria trigona var. kewensis
                        A.Berger, 1908
Gasteria carinata var. falcata
                        A.Berger, 1908
Gasteria carinata var. latifolia
                        A.Berger, 1908
Gasteria bijliae Poelln., 1937
Gasteria schweickerdtiana
                             Poelln., 1938
Gasteria patentissima Poelln., 1940
Gasteria carinata var. glabra
          (Salm-Dyck) van Jaarsv., 1998


変種レツサ
Gasteria carinata var. retusa
                         van Jaarsv., 1992

Homotypic synonym
Gasteria retusa
       (van Jaarsv.) van Jaarsv., 2007

変種ヴェルコサ
Gasteria carinata var. verrucosa
                (Mill.) van Jaarsv., 1992

Homotypic synonym
Aloe verrucosa Mill., 1768
Gasteria verrucosa (Mill.) Duval, 1809

Heterotypic synonym
Aloe acuminata Lam., 1783
Aloe recemosa Lam., 1783
Aloe verrucula Medik., 1784
Aloe carinata DC., 1801
Aloe intermedia Haw., 1804
Aloe lingua Kew Gawl., 1810
Gasteria intermedia
               (Haw.) Haw., 1812
Aloe verrucosa var. striata
                     Salm-Dyck, 1817
Gasteria repens Haw., 1821
Gasteria intermedia var. asperrima
                               Haw., 1821
Aloe verrucosa var. latifolia
                      Salm-Dyck, 1821
Aloe subverrucosa Salm-Dyck, 1821
Aloe subverrucosa var. grandipunctata
                               Salm-Dyck, 1821
Aloe subverrucosa var. parvipunctata
                               Salm-Dyck, 1821
Aloe intermedia var. asperrima
                               Salm-Dyck, 1821
Gasteria subverrucosa
                  (Salm-Dyck) Haw., 1827
Gasteria intermedia var. laevior Haw., 1827
Gasteria intermedia var. longior Haw., 1827
Aloe repens Schult. & Schult.f., 1829
Aloe scaberrima Salm-Dyck, 1834
Gasteria var. intermedia
                           (Haw.) Baker, 1880
Gasteria subverrucosa var. marginata
                                 Baker, 1880
Gasteria radulosa Baker, 1889
Gasteria verrucosa var. scaberrima
                     (Salm-Dyck) Baker, 1896


②Gasteria obliqua
               (Aiton) Duval, 1809

Homotypic synonym
Aloe maculata var. obliqua
                     Aiton, 1789
Aloe obliqua (Aiton) Haw., 1804

Heterotypic synonym
Aloe maculata Thunb., 1785
Aloe lingua Kew Gawl., 1806
Aloe nigricans var. fasciata
                      Salm-Dyck, 1821
Gasteria bicolor Haw., 1826 publ. 1827
Gasteria picta Haw., 1827
Gasteria retata Haw., 1827
Gasteria maculata Haw., 1827
Gasteria formosa Haw., 1827
Gasteria maculata var. fallax
                         Haw., 1827
Gasteria fasciata
                      (Salm-Dyck) Haw., 1827
Aloe formosa
           (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Aloe dictyodes Schult. & Schult.f., 1829
Aloe boureana Schult. & Schult.f., 1829
Aloe bicolor 
            (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Aloe vittata Schult. & Schult.f., 1829
Aloe guttata Salm-Dyck, 1834
Aloe quadrangularis Da Pare, 1835
Aloe macchiata Da Pare, 1835
Aloe zeyheri Salm-Dyck, 1836
Aloe marmorata Steud., 1840
Aloe planifolia Baker, 1869
Gasteria variolosa Baker, 1873
Gasteria colubrina N.E.Br., 1877
Gasteria planifolia (Baker) Baker, 1880
Gasteria marmorata Baker, 1880
Gasteriazeyheri (Salm-Dyck) Baker, 1880
Gasteria spiralis Baker, 1880
Gasteria spiralis var. tortulata Baker, 1880
Gasteria maculata var. dregeana
                A.Berger, 1908
Gasteria lingua
            (Kew Gawl.) A.Berger, 1908
Gasteria caespitosa Poelln., 1937
Gasteria chamaegigas Poelln., 1938
Gasteria salmdyckiana Poelln., 1938
Gasteria liliputana Poelln., 1938
Gasteria longiana Poelln., 1938
Gasteria longibracteata Poelln., 1938
Gasteria herreana Poelln., 1938
Gasteria kirsteana Poelln., 1940
Gasteria loeriensis Poelln., 1940
Gasteria multiplex Poelln., 1940
Gasteria biformis Poelln., 1940
Gasteria bicolor var. liliputana
              (Poelln.) van Jaarsv., 1992
Gasteria bicolor var. fallax
               (Haw.) van Jaarsv., 2007


③Gasteria pulchra
               (Aiton) Haw., 1812

Homotypic synonym
Aloe pulchra (Aiton) Jacq., 1804

Heterotypic synonym
Aloe obliqua DC, 1802
Gasteria poellnitziana
                 H.Jacobsen, 1954


④Gasteria acinacifolia
                  (J.Jacq.) Haw., 1819

Homotypic synonym
Aloe acinacifolia J.Jacq., 1813


Heterotypic synonym
Aloe acinacifolia J.Jacq., 1813
Aloe acinacifolia var. minor
                         Salm-Dyck, 1817
Gasteria nitens Haw., 1819
Aloe acinacifolia var. nitens
                         (Haw.) Haw., 1821
Gasteria venusta Haw., 1827
Gasteria ensifolia Haw., 1825
Gasteria candicans Haw., 1827
Gasteria pluripunctata Haw., 1827
Gasteria  linita Haw., 1827
Aloe ensifolia
        (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Aloe candicans
        (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Aloe venusta
        (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Aloe nitens
        (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Aloe pluripunctata
        (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Gasteria fuscopunctata Baker, 1880
Gasteria acinacifolia var. nitens
                            (Haw.) Baker, 1880
Gasteria acinacifolia var. ensifolia
                        (Haw.) Baker, 1880
Gasteria acinacifolia
     var. pluripunctata (Haw.) Baker, 1896
Gasteria acinacifolia
              var. venusta (Haw.) Baker, 1896
Gasteria huttoniae N.E.Br., 1908
Gasteria lutziii Poelln., 1933
Gasteria inexpectata Poelln., 1938


⑤Gasteria disticha (L.) Haw., 1827
Homotypic synonym
Aloe disticha L., 1753
Ptyas disticha (L.) Salib., 1866


変種ディスティカ
Gasteria disticha var. disticha

Heterotypic synonym
Aloe linguiformis Mill., 1768
Aloe lingua var. crassifolia Aiton, 1789
Aloe lingua var. angustifolia Aiton, 1789
Aloe nigricans Haw., 1804
Aloe obliqua Jacq., 1804
Aloe lingua var. latifolia Haw., 1804
Aloe lingua var. longifolia Haw., 1804
Gasteria nigricans (Haw.) Duval, 1809
Gasteria longifolia (Haw.) Duval, 1809
Gasteria angustifolia (Aiton) Duval, 1809
Aloe obscura Willd., 1811
Aloe longifolia (Haw.) Haw., 1812
Gasteria latifolia (Haw.) Haw., 1812
Aloe nigricans
           var. crassifolia Salm-Dyck, 1817
Gasteria denticulata Haw., 1819
Aloe obtusifolia Salm-Dyck, 1821
Aloe conspurcata Salm-Dyck, 1821
Aloe angustifolia
           (Aiton) Salm-Dyck, 1821
Gasteria mollis Haw., 1821
Gasteria nigricans
        var. crassifolia (Aiton) Haw., 1821
Gasteria disticha var. major Haw., 1827
Gasteria disticha var. minor Haw., 1827
Gasteria obtusifolia Haw., 1827
Gasteria conspurcata
           (Salm-Dyck) Haw., 1827
Gasteria crassifolia
           (Salm-Dyck) Haw., 1827
Aloe mollis
      (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Aloe crassifolia
   (Salm-Dyck) Schult. & Schult.f., 1829
Aloe retusifolia Haw. ex Steud., 1840
Gasteria disticha var. angustifolia
                        Baker, 1880
Gasteria disticha var. conspurcata
                  (Salm-Dyck) Baker, 1880
Gasteria platyphylla Baker, 1880

変種ロブスタ
Gasteria disticha var. robusta
                        van Jaarsv., 2007


⑥Gasteria nitida
          (Salm-Dyck) Haw., 1827

Homotypic synonym
Aloe nitida Salm-Dyck, 1817
Haworthia nitida
            (Salm-Dyck) G.Don, 1830

変種ニティダ
Gasteria nitida var. nitida

Heterotypic synonym
Aloe nitida var. major Salm-Dyck, 1817
Aloe nitida var. minor Salm-Dyck, 1817
Aloe nitida var. obtusa Salm-Dyck, 1817
Aloe trigona Salm-Dyck, 1821
Haworthia nigricans Haw., 1824
Gasteria obtusa (Salm-Dyck) Haw., 1827
Aloe decipiens (Haw.)
              Schult. & Schult.f. 1829
Gasteria beckeri 
Schönland, 1908
Gasteria stayneri Poelln., 1938


変種アルムストロンギイ
Gasteria nitida var. armstrongii
        (
Schönland) van Jaarsv., 1992
Homotypic synonym
Gasteria armstrongii 
Schönland, 1912

⑦Gasteria croucheri
              (Hook.f.) Baker, 1880

Homotypic synonym
Aloe croucheri Hook.f., 1869

亜種クロウケリ
Gasteria croucheri subsp. croucheri

Heterotypic synonym
Gasteria disticha var. natalensis
                     Baker, 1880

亜種ポンドエンシス
Gasteria croucheri subsp. pondoensis
           N.R.Croch, Gideon F.Sm.
                       & D.G.A.Styles, 2011

亜種ペンドゥリフォリア
Gasteria croucheri subsp. pendulifolia 
             (van Jaarsv.) Zonn.

Homotypic synonym
Gasteria pendulifolia van Jaarsv., 2001


⑧Gasteria excelsa Baker, 1880


本日は19世紀に命名されたガステリア属をご紹介しました。明日は20世紀に命名されたガステリア属をご紹介します。
しかし、19世紀と一口に言っても実に長く、命名者も様々です。19世紀初頭はHaworthやDuvalが活躍しています。Haworthは当初はガステリアをアロエ属としていますが、Duvalがガステリア属を創設すると、歩調を合わせるようにHaworthもガステリア属を使用し始めます。しかし、1920年代から活躍するSalm-DyckやSchult. & Schult.f.は、ガステリア属を認めずアロエ属としています。19世紀中頃はSteudやBakerが、やはりアロエ属とする立場です。しかし、Bakerは19世紀後半ではガステリア属を認める立場となっています。結局のところ、19世紀のガステリア属の正式に認められている学名の命名者は、Duval、Haworth、Bakerの3人だけでした。ガステリア属を認めるか否かが重要な分岐点でしたね。

19世紀のガステリア属に関する代表的な命名者たちは以下の通り。

☆Haw.→Adrian Hardy Haworth (1767-1833年)イギリスの昆虫学者・植物学者・甲殻類学者。
☆Duval→Henri August Duval(1777-1814年)フランスの植物学者。
☆Salm-Dyck→Joseph Franz Maria Anton Hubert Ignatz Furst und Altgraf zu Salm-Reifferscheidt-Dyck(1773-1861年)ドイツのアマチュア植物学者。
☆Schult.→Joseph August Schultes(1773-1831年)オーストリアの医師・博物学者。
☆Schult.f.→Julius Hermann Schultes(1804-1840年)オーストリアの植物学者。Joseph August Schultesの息子。
☆Kew Gawl.→John Bellenden Kew、元John Gawler(1764-1842年)イギリスの植物学者。
☆Steud→Ernst Gottlieb von Steudel(1783-1856年)ドイツの医師・植物学者。
☆Baker→John Gilbert Baker(1834-1920年)イギリスの植物学者。


ちなみに、G. nitida var. armstrongiiについては、armstrongiiはG. nitidaの変種ではない可能性が出てきました。2021年に出た『Phylogeny of the Southern African genus Gasteria duval (Asphodelaceae) based on Sanger and next generation sequencing data』という論文では、遺伝子解析により別種とすべき結果が得られています。今後、armstrongiiは独立するかもしれません。



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最近、アロエ属についてアロエ属から分離したり統合されたりした経緯を簡単にまとめました。その記事の中でも触れましたが、Aloe bowieaについてはBowiea africanaやChamaealoe africanaとも呼ばれたことがあります。BowieaやChamaealoeからアロエ属に統合されても、アロエ属の中で独特の地位を占めるとされることがあります。

本日、ご紹介する論文はGideon F. Smithが1990年に発表した『Nomenclature notes on the subsection Bowiea in Aloe (Asphodelaceae : Alooideae)』です。早速、内容に入りましょう。

Chamaealoe A.BergerはAloe L.の異名です。つまり、かつてChamaealoe africana (Haw.) A.Bergerと呼ばれた種は現在Aloe bowiea Schult. & Schult.f.とされており、Aloe section Graminialoe Reynolds(=アロエ属グラミニアロエ節)に含まれるとされています。 

DSC_1607
Aloe bowiea
=Chamaealoe africana
=Bowiea africana


現代のアロエ属の分類に関しては、アフリカとマダガスカルのアロエ研究を生涯の仕事としたG. W. Reynoldsに負うところが大です。その後、アロエ属の属下分類は、Reynoldsの分類を基礎として改訂されていきました。アフリカ南部のアロエ属は、H. F. GlenとD. S. Hardyにより改訂されています。
Aloe bowieaはChamaealoeからアロエ属に移されましたが、Aloe bowieaのアロエ属内の分類はまだ明らかではありません。著者はAloe bowieaをSection Graminialoe Subsection Bowieae(グラミニアロエ節ボウィエアエ亜節)としてアロエ属の分類に組み込むことを目指しております。

アロエ属(Aloe L.)は1753年にCarl von Linneが設立しましたが、1786年にMedikusが細分化に失敗(Catevala Medik., Kumara Medik.)した後、1804年にHaworthがより自然な単位に分ける試みを行いました。Haworthは現在のHaworthiaやGasteriaに相当するグループに、アロエ属の属以下の分類としてGrandiflora、Parviflora、Curvifloraを考えました。その5年後の1809年に、DuvalはHaworthiaとGasteriaをアロエ属から分離しました。
1834年にSalm-Dyckは栽培した植物のカタログを出版しました。その中ではHaworthの考え方を支持し、アロエ属の属下分類としてParvifloraとGrandifloraを説明しました。GrandifloraはTubo recto(=アロエ)とTubo curvato(=ガステリア)に分類しました。Parvifloraは14節(Section)に分け、ボウィエアエ節(Section Bowieae)は、Aloe bowieaが初めてBowiea africanaとしてですが記載されました。これは、1824年のBowiea Haw.に基づきます。Bowiea Haw.の2種類目は1827年にHaworthによりBowiea myriacanthaと記載されました。しかし、1829年にこのBowiea Haw.の2種はアロエ属に移されました。
1836年にSalm-DyckはBowiea Haw.を支持し、Aloe myriacanthaも含めるべきであると主張しました。しかし、Baker(1880年, 1896年)はBowieaをアロエ属の同義語としてDuvalの分類を受け入れ、Salm-Dyckの節(Section)を亜属(Subgenus)に置き換えました。Aloe bowieaとAloe myriacanthaはアロエ属Eualoe亜属の中の1グループであるAcaulesに含めました。
Aloe bowieaとAloe myriacanthaは明らかに関連性はありますが、しかし互いの特徴は異なります。そのため、Aloe bowieaは1905年にChamaealoe africana、Aloe myriacanthaは1933年にLeptaloe myriacanthaとする意見もありました。Leptaloeは短命な属名で、1947年にReynoldsはアロエ属の同義語としました。しかし、1915年のMarloth、1941年のGroenewald、1950年のReynoldsはChamaealoeを支持しました。ただし、その後は1973年のObermeyer、1983年のSmithはChamaealoe africanaはAloe bowieaの同義語であるとしています。


Aloe bowieaは1973年のObermeyerや1981年のCourtによると、Anguialoe節との花の形態学的な類似性を示します。しかし、この節のアロエはAloe vryheidensis以外は木質化しますが、Aloe bowieaは非常に小型です。
Aloe bowieaは形態的にはGraminialoe節と類似します。Graminialoe節とAloe bowieaは、細い線形の直立した多肉質の葉を持ちます。Aloe bowieaは密集したロゼットを作り、他のGraminialoeと同様に肉質の根を持ちます。しかし、グラスアロエの中でもAloe bowieaの花は独特の緑がかる白色花で、総状花序に分散します。葯と花柱の配置も異なります。このように、Aloe bowieaは既存の属下分類に当てはまらないため、Graminialoe節の中でも独立したBowieae亜節(Subsection Bowieae)を提案しています。Graminialoe節Graminialoe亜節(Section Graminialoe Subsection Graminialoe)との相違点は上記以外にもあり、私の記事では示しませんが論文では一覧表をあげています。


Reynoldsのアロエ属の分類が示された後、Graminialoe節であるAloe modestaとAloe ioconspicuaが記載されました。しかし、それらとAloe bowieaは緩く細長い総状花序と、地下の球根状の膨らみがないことで区別出来ます。Aloe modestaはAloe bowieaよりも短い総状花序を持ち、小花柄が密集します。Aloe ioconspicuaは密集した円筒形の総状花序と無柄の花を持ちます。
上記のように、Bowiea亜節とGraminialoe亜節は肉眼でも容易に区別可能です。

以上が論文の簡単な内容紹介となります。やはり、アロエ属とされたとは言え、Aloe bowieaはアロエ属の中でも独立した存在と考える向きがあるようですね。グラスアロエを含む小型アロエはあまり詳しくないため、これから少しずつ調べていくつもりです。


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先日、「解体と統合のアロエ属」と称しまして、アロエ属から分離独立したり吸収統合された多肉植物が沢山あるという記事を書きました。
しかし、それは公的なデータベースを漁っただけですから、細かい事情やことの経緯はよくわかりません。特に気になっているのは、Aloe albifloraとAloe bowieaです。双方ともアロエ属ではないとされていた時期があります。A. albifloraはGuillauminia albifloraとされていましたが、現在はアロエ属とされています。いかなる経緯があったのか気になりましたので、少し調べてみました。本日、ご紹介する論文は1995年にGideon F. Smithらにより発表された『The taxonomy of Aloinella, Guillauminia and Lemeea (Aloacaea)』です。

アロエ属には14の異名(※1995年当時)があり、そのうち2属はマダガスカル原産種に対するものでした。それは、AloinellaGuillauminiaです。どちらの属名も広く受け入れられているとは言えず、世界規模で属を改訂したGilbert Westacott Reynolds(1958, 1966年)によりアロエに含まれることとなり、AloinellaとGuillauminiaは異名となりました。Reynoldsは1930年から1966年までの30年以上に渡りアロエ属の権威でした。

しかし、Heath(1993, 1994年)は、特に裏付けもなくAloinellaとGuillauminiaを復活させました。Aloinellaは同属として、Lemeea P.V.Heathと命名されました。A. haworthioides、A. boiteaui、A. parvulaをLemeeaに、A. bakeri、A. bellatula、A. calcairophylla、A. descoingsii、A. rauhiiはGuillauminiaとされました。

DSC_1815
Aloe haworthioides
=Aloinella haworthioides
=Lemeea haworthioides


DSC_1816
Aloe parvula
=Lemeea parvula


著者らはHealthの意見には反対です。なぜなら、属はその他の種よりもお互いに共通する多くの特徴を有している必要があるためです。この場合は、LemeeaやGuillauminiaがアロエ属とは明確に分離出来る特徴を持つ、つまりはLemeea内やGuillauminia内で共通する特徴を多く持ち、それがアロエ属とは共通していないことが求められているわけです。しかし、LemeeaやGuillauminiaはその特徴を抽出すると、アロエ属に含まれてしまう特徴ばかりでした。それぞれ固有と考えられている特徴も、調べてみると同じ特徴を有するアロエが見つかりました。

これらのことから、著者らはLemeea(incl. Aloinella)とGuillauminiaをアロエ属から分離することを認めません。もし、Healthの主張が認められるならば、アロエ属は細かい特徴ごとに非常に細分化されてしまい、LemeeaやGuillauminia以外の属の復活と、新たに沢山の新属を設けなければならなくなります。アロエ属という分類群の安定のためにも好ましくないとしています。

以上が論文の内容となりますが、結局はHealthの主張は認められておりません。しかし、近年の遺伝子解析の進歩により、結局アロエ属は解体されることになりました。それでも、アロエ属から独立したのはA. aristataやA. variegata、A. dichotomaなどであり、LemeeaやGuillauminiaではありませんでした。つまりはGideon F. Smithらの主張通り、LemeeaやGuillauminiaはアロエ属に含まれてしまうことが確定的となりました。



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女王錦Aloe parvulaはマダガスカル島に固有の小型アロエです。A. parvulaは1908年にドイツの植物学者であるAlwin Bergerにより命名されました。
2004年にイギリス王立植物園が発行している『Curtis's Botanical Magazine』にある「505. ALOE PARVULA : Aloacaea」という論文というか報告書を見つけましたのでご紹介します。生息環境について記されておりますから、栽培のヒントになるかもしれません。著者は王立植物園のDavid Du Puyです。

DSC_1817
Aloe parvula

早速、内容を紹介します。
Aloe parvulaは絶滅危惧種で、マダガスカルの中央台地の標高1400~1800mの、より乾燥した西部に位置するItremo山塊に限定的に分布します。この山塊にはロゼットを形成する小型アロエが3種類自生していますが、A. parvulaはその1種です。他の2種はAloe bellatula ReynoldsとAloe haworthioides Bakerです。これらのアロエは剛毛や結節で覆われた柔らかい多肉植物で、むしろHaworthiaに似ています。A. parvulaは生長が遅い種ですが、黄色の色素を欠くためサンゴのような真っ赤な美しい花を咲かせます。また、A. parvulaは自生地では種子が出来にくく、増殖が良くありません。

A. parvulaは石英の岩だらけで、酸性石英砂利の浅い土壌が蓄積する岩のくぼみや隙間、あるいは泥炭質土壌が蓄積する苔むした草地で頻繁に発生します。A. parvulaの生える土壌はXerophytaやAngraecum、Pachypodiumなどの他の多肉植物の根により固定されています。岩の隙間には水分が集まるものの、冬の乾季には雨は降りませんが標高が高いため時々雲からの水分で結露します。冬には10℃を下回ることがあります。乾季は5月から11月にかけて7~8ヶ月続きます。花は雨季の間の、特に1月から3月に頻繁に開花します。また、雨季でも泥炭が乾燥する期間があります。自生地には低木も生えないため、直射日光にさらされています。

A. parvulaは嫌石灰植物(calcifuge)で、堆肥や水の石灰を嫌います。論文では雨水を与えるべきであるとしていますが、これは雨ざらしにするという意味ではなく、水道水が硬水でありカルシウムが多いヨーロッパを念頭に言っているのでしょう。ヨーロッパでも雨水は弱酸性です。また、日本ではほとんどの地域は軟水ですから、普通に水道水をあげても問題はないでしょう。
冬季は乾燥させて、月に1度くらい水をあげれば、水分不足で過度に縮むことを防ぐことができると言います。また、最低気温は約10℃までですが、乾燥させれば5℃程度までは耐えられます。しかし、耐霜性は弱いみたいです。



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硬葉系ハウォルチアと呼ばれてきたHaworthiopsisを少しずつ集めています。しかし、残念ながら人気は今一つであまり販売されておりません。私は主にイベントで購入しています。年に数回、五反田TOCで開催されるサボテン・多肉植物のビッグバザールでは、Ruchiaさんのブースは硬葉系ハウォルチアやツリスタがあるため、毎回楽しみにしています。そんな中、ニグラHaworthiopsis nigraが販売されており、気にはなっていました。しかし、ついついツリスタやユーフォルビア苗に手を出してしまい、毎度帰宅してからやはり購入すべきであったと後悔していました。ニグラ自体は基本的に園芸店で見かけませんから、こういう時じゃないと中々手に入りませんからね。というわけで、先月開催された秋のサボテン・多肉植物のビッグバザールで、ついにニグラを購入しました。しかも、フィールドナンバー付きです。早速、調べてみました。
DSC_1796
Haworthiopsis nigra IB 12484

とりあえず、フィールドナンバーについて調べます。"IB 12484"とありますが、IBとは採取人のIngo Breuerの略です。Ingo Breuerはドイツの研究者であり、Eden Plantsの主宰者とのことです。登録されているIB 12484の情報は以下の通り。

Field number: IB 12484
Collector: Ingo Breuer
Species: Haworthia nigra
Locality: Deeside, 3km North of Whittlesea
Altitude: 1035m
Date: 17-Oct-03

登録されている学名はハウォルチア・ニグラとなっていますが、ニグラがハウォルチアからハウォルチオプシスとされたのは2013年のことですから、採取された2003年当時はハウォルチアで間違いないわけです。

さて、ニグラの学名は2013年に命名されたHaworthiopsis nigra (Haw.) G.D.Rowleyです。ニグラの命名の歴史は以下の通りです。
1824年 Apicra nigra Haw.
1829年 Aloe nigra
                        (Haw.) Schult. & Schult.f.
1880年 Haworthia nigra (Haw.) Baker
1891年 Catevala nigra (Haw.) Kuntze.
1997年 Haworthia venosa
                        subsp. nigra (Haw.) Halda
1998年 Haworthia viscosa
                        subsp. nigra (Haw.) Halda
2013年 Haworthiopsis nigra
                               (Haw.) G.D.Rowley


また、ニグラには2013年に命名されたHaworthiopsis nigra var. diversifolia (Poelln.) G.D.Rowleyという変種があります。
1937年 Haworthia diversifolia Poelln.
1938年 Haworthia schmidtiana
          var. diversifolia (Poelln.) Uitewaal
1948年 Haworthia nigra
          var. diversifolia (Poelln.) Uitewaal
2013年 Haworthiopsis nigra
      var. diversifolia (Poelln.) G.D.Rowley


変種ディヴェルシフォリアが出来たことで、変種ディヴェルシフォリアと基本種と区別するために自動的に変種ニグラが出来ました。つまり、Haworthiopsis nigra var. nigraです。この変種ニグラの異名は以下の通りです。
1929年 Haworthia schmidtiana Poelln.
1937年 Haworthia schmidtiana
                        var. suberecta Poelln.
1938年 Haworthia schmidtiana
                        var. elongata Poelln.
              Haworthia schmidtiana
                        var. pusilla Poelln.
1939年 Haworthia ryneveldii Poelln.
1948年 Haworthia nigra var. elongata
                                 (Poelln.) Uitewaal
              Haworthia nigra var. schmidtiana
                                 (Poelln.) Uitewaal
1983年 Haworthia nigra f. angustata
                                   (Poelln.) Pilbeam
2013年 Haworthiopsis nigra
                         var. elongata
                              (Poelln.) G.D.Rowley
              Haworthiopsis nigra var. nigra


ニグラは割と姿に多様性がありますから、亜種や変種が多いですね。別種とされたものも見受けられます。様々なタイプを集めるのも楽しいでしょう。



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アロエ属は現在使用されている二名式学名の創始者であるCarl von Linneにより、1753年に命名された由緒正しき属名です。しかし、アロエ属の歴史を辿ると、アロエ属だったものがアロエ属ではなくなったり、逆にアロエ属ではなかったものがアロエ属となったりと、アロエ属はかなりの変化を経験して来ました。ただし、全種類のアロエを調べたわけではありませんし、一時的にアロエ属だったものに関してはほとんど調べられておりません。しかし、それでも思いもよらぬ種類がアロエとされたり、アロエ属から分離したものの後に消失した属名の多さなど、その多様な有り様にめまいがするほどです。

先ずは、アロエ属と関係する属名の年表を示します。
1753年 Aloe L.
              Agave L.
1767年 Dracaena Vand. ex L. 
1786年 Catevala Medik.
              Kumara Medik.
1809年 Haworthia Duval
              Gasteria Duval
1811年 Lomatophyllum Willd.
              Rhipidodendrum Willd.
1813年 Phylloma Ker Gawl.
1821年 Pachidendron Haw.
1824年 Bowiea Haw.
1834年 Urginea Steinh.
1838年 Drakaina Raf.
1840年 Tulista Raf.
1866年 Busipho Salib.
1883年 Notosceptrum Benth.
1905年 Chamaealoe A.Berger
1908年 Chortolirion A.Berger
1933年 Leptaloe Stapf
1939年 Aloinella (A.Berger) Lemee
1947年 Astroloba Uitewaal
1956年 Guillauminia A. Bertrand
1993年 Lemeea P.V.Heath
2013年 Aloidendron (A.Berger)
                         Klopper & Gideon F.Sm.
              Aloiampelos
                         Klopper & Gideon F.Sm.
              Haworthiopsis G.D.Rowley
2014年 Gonialoe (Baker) 
                          Boatwr. & J.C.Manning
              Aristaloe Boatwr. & J.C.Manning

アロエ属の分離と吸収にはいくつかのパターンがありますから、いくつかの種類を例に挙げて解説します。
①古典的なアロエ類
1753年にアロエ属は誕生しましたが、この時アロエ属はあれもこれもといった状態で、様々な特徴を持つ多様な種を含むグループでした。しかし、アロエ属があまりにも様々なグループを含んでいたため、1809年に広義のHaworthiaとGasteria、1947年にはAstrolobaが独立し、アロエ属から分離しました。これらは、形態的にも生態的にも異なり、しかもHaworthia、Gasteria、Astrolobaはそれぞれの属内において非常によくまとまったグループでした。後に遺伝子解析でも支持された、妥当性のある自然な分離と言えます。
また、2013年にはHaworthiaが、Haworthia(狭義)、Haworthiopsis、Tulistaに分割されました。

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Aloe herbacea→Haworthia herbacea

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Aloe viscosa→Haworthiopsis viscosa

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Aloe pumila→Tulista pumila

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Aloe carinata→Gasteria carinata

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Aloe foliolosa→Astroloba foliolosa

②遺伝子解析によるアロエ属の分解
2013年に広義のアロエ属からAloidendronとAloiampelosが分離しました。さらに、翌2014年にはGonialoeとAristaloeが分離しました。AristaloeやGonialoeはAstrolobaやTulistaに近縁で、Kumaraは狭義のHaworthiaと近縁です。狭義のアロエはAloiampelosとは近縁ですが、他の旧アロエ属とはそれほど近縁ではありませんでした。

┏━━━━━━━━Aloidendron属

┫    ┏━━━━━━Kumara属
┃┏┫
┗┫┗━━━━━━Haworthia属
    ┃
    ┃┏━━━━━━Aloiampelos属
    ┃┃
    ┗┫┏━━━━━Aloe属
        ┃┃
        ┗┫    ┏━━━Astroloba属
            ┃    ┃
            ┃┏┫┏━━Aristaloe属
            ┃┃┃┃
            ┃┃┗┫┏━Gonialoe属
            ┃┃    ┗┫
            ┗┫        ┗━Tulista属
                ┃
                ┃┏━━━Haworthiopsis属
                ┗┫
                    ┗━━━Gasteria属

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Aloe broomii 

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Aloe plicatilis→Kumara plicatilis

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Aloe variegata→Gonialoe variegata

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Aloe aristata→Aristaloe aristata

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Aloe striatula→Aloiampelos striatula

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Aloe dichotoma→Aloidendron dichotomum

Lomatophyllum
Lomatophyllumは1811年に命名された昔からある属で、アロエ属に似た多肉植物です。一般的なアロエ属とは異なり、果肉のある果実をつけます。ただし、LomatophyllumにはDracaenaの一部が含まれていました。それらはやがてDracaenaとされ、本来のLomatophyllumのみとなりました。しかし、Lomatophyllumは種類が統合される傾向があり、例えばLomatophyllum purpureum=Lomatophyllum saundersii=Lomatophyllum rufocinctum=Lomatophyllum aloiflorum=Lomatophyllum marginatum=Lomatophyllum borbonicumとなっています。さらに、L. purpureumはDracaena marginata、Dracaena dentata、Dracaena foetidaなど、ドラセナ属とされることもありました。
しかし、Lomatophyllumは遺伝子解析の結果から、狭義のアロエ属に含まれてしまうことがわかりました。L. purpureumも現在ではAloe purpureaとされているようです。

④Chortolirion
一見して球根植物のような見た目の、Chortolirionも実はアロエ属に含まれることになりました。Lomatophyllumと同様に遺伝子解析の結果、狭義のアロエ属の一員となりました。Chortolirionは、初め広義のHaworthiaでしたがやがてChortolirionとなり、最終的にアロエ属となる経緯をたどりました。

⑤議論があったアロエ
アロエ属は一般的に赤・橙・黄色系統の花を咲かせます。しかし、Aloe albifloraは白い花を咲かせます。このことから、Aloe albifloraはアロエではない可能性があるとして、Guillauminia albifloraという学名がつけられたことがあります。Guillauminiaは6種類あるとされました。しかし、Guillauminiaは現在認められておらず、今は存在しない属名です。Guillauminiaはアロエ属6種からなる小さなグループでした。

Aloe bowieaは、Chamaealoe africanaあるいはBowiea africanaと呼ばれたことがあります。現在ではアロエ属となり、Chamaealoeは存在しない属名です。しかし、Bowieaは蒼角殿Bowiea volubilisとして属名が残っています。ただし、気を付けなければならないのは、Bowiea africanaのBowieaは1824年にHaworthが命名した属名ですが、Bowiea volubilisのBowieaは1867年にHarv. ex Hook.f.の命名した属名ですから実は起源が異なるはずですが、何故か混同されているように見えます。
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Aloe bowiea
=Chamaealoe africana
=Bowiea africana


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Bowiea volubilis

⑥現存しない一時的な学名
アロエ属にかつて命名されていたCatevala、Pachidendron、Urginea、Drakaina、Busipho、Notosceptrum、Leptaloe、Aloinella、Lemeeaといった属名がありますが、どれも現在では使用されておりません。

女王錦Aloe parvulaは、Lemeea parvulaと命名されたこともあります。
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Aloe parvula=Lemeea parvula

Aloe alooidesは、初めはUrginea alooidesと命名された後にNotosceptrum alooidesとなり、最終的にアロエ属となりました。実はこのUrgineaは160種類程度を含んだかなり大きな属でした。しかし、現在このUrgineaはほとんどがDrimiaとなり、その他にもAloe、Albuca、Schizocarphus、Fusifilum、Austroneaなどを含んだ雑多なグループでした。NotosceptrumはAloeやKniphofiaからなる小さなグループでした。

Aloe myriacanthaは、初めはBowiea myriacanthaと命名された後にアロエ属となり、最終的にLeptaloe myriacanthaとされましたが、結局はアロエ属とされています。Leptaloeは10種類ほどのグループで、すべてアロエ属からなっています。

Aloe purpureumはLomatophyllum purpureumとされていたこと、あるいはDracaenaとする意見があったことを示しました。しかしA. purpureumは、さらにPhyllomaやDrakainaといった属名とされたこともあります。Phyllomaはアロエ属4種類からなる小さなグループでした。Drakainaというドラセナに似た属名は、Aloe purpureumとDracaena dracoの2種類からなる奇妙なグループでした。

Aloe haworthioidesは、Lemeea haworthioidesやAloinella haworthioidesと命名されたこともあります。AloinellaはA. haworthioidesのためだけに創設されたグループでした。
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Aloe haworthioides
=Lemeea haworthioides
=Aloinella haworthioides


Aloe feroxは、Pachidendron feroxやBushipho feroxと呼ばれたこともあります。Pachidendronはアロエ属5種類からなる小さなグループでした。BushiphoはA. feroxのためだけに創設されたグループでした。

Aloe humilisはCatevala humilisと命名されたことがあります。Catevalaは約60種類程度を含むグループで、アロエ属や広義のハウォルチアが混ざっていました。
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Aloe humilis=Catevala humilis

Aloe dichotomaはAloidendron dichotomumとなりアロエ属から分離しましたが、広義のアロエ属だった1811年にRhipidodendrum dichotomumとされたことがあります。Rhipidodendrumは現在のKumaraとA. dichotomumの3種類からなるグループでした。
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Aloidendron dichotomum
=Aloe dichotoma
=Rhipidodendrum dichotomum


⑦アロエとされたことがあるアガヴェ
Agave americana、つまりはあの巨大に育つことで有名なアオノリュウゼツランですが、実に不思議なことにAloe americanaと命名されたことがあります。
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アオノリュウゼツラン
Agave americana
=Aloe americana


⑧存在しないアロエ
詳細は不明ですが、「廃止」となったアロエも存在します。他のアロエなどの異名ですらなく、学名自体が廃止となったAloe asperaやAloe browniiといったものがあります。詳しい調べていませんが、廃止となった学名はこの他にもけっこうありそうです。
もしかしたら、記載情報から実際の植物にたどり着けない場合というのはまず第一に考えられます。古い記載では情報が曖昧で標本もなく、スケッチのみというパターンは実際に存在します。まあ、他にも理由はあるのかもしれません。


⑨交雑種
かつてはアロエ属であった自然交雑種も存在します。例えば、Aloe × bicarinataは現在、× Astrolista bicarinataとされています。× AstrolistaはAstroloba × Tulistaを示しています。
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× Astrolista bicarinata
=Aloe × bicarinata

 
のブログは多肉植物がメインですが、内容的には学名の来歴を追った部分が他サイトとの違いかなあと思っています。実のところ大した情報ではありませんが、そんなことでも続けていれば色々と見えてくるものがあります。例えば、ハウォルチアは昔アロエだったものが多いこととか、アロエは意外に現在無効な属名があることとか、そんなことです。これからも、論文を含め気になることが出てきましたら記事にする予定です。


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かつてのHaworthia sensu lato(広義のハウォルチア属)は2013年に分割され、Haworthia sensu stricto(狭義のハウォルチア属)、Haworthiopsis、Tulistaになりました。その中でもツリスタ属はたった4種類から構成されています。その4種類とはTulista marginata、Tulista pumila、Tulista kingiana、Tulista minorです。ただし、Tulista minorはTulista minimaと呼ばれることもあります。
ここからが本題です。私には以前から疑問に思っていたことがあります。それは、T. minorとT. minimaのどちらを選択するべきかということです。どうやら、近年ではT. minorで統一する流れのようですが、その根拠が今一つわからなかったのです。なぜならば、T. minorもT. minimaも、1789年にAloe margaritiferaの変種として、スコットランドのWilliam Aitonにより命名されました。本来ならば、先に命名された種小名が優先されますが、この場合は同時に命名されています。どちらを優先すべきなのでしょうか? なぜ、T. minorが認めているのでしょうか?
しかし、なんとその答えが書かれた論文を見つけました。是非ご紹介したいのですが、その前にT. minorとT. minimaの命名年表を下記に示します。


1789年 Aloe margaritifera var. minor Aiton
              Aloe margaritifera var. minima Aiton
1809年 Haworthia minor (Aiton) Duval
1812年 
Haworthia minima (Aiton) Haw.
1821年 Apicra minor (Aiton) Steud.
1829年 Aloe minor (Aiton) Schult. & Schult.f.
1891年 
Catevala minima (Aiton) Kuntze
1997年 
Haworthia pumila subsp. minima
                                     (Aiton) Halda
2014年 
Tulista minima
              (Aiton) Boatwr. & J.C.Manning

2018年 Tulista minor
              (Aiton) Gideon F.Sm. & Molteno

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Tulista minor

さて、今日ご紹介する論文は、Gideon F. Smith, Estrela Figueiredo & Steven Moltenoによる2018年の『A new combination in Tulista, T. minor (Alooideae, Asphodelaceae)』です。
1789年にAloe margaritifera var. minorとAloe margaritifera var. minimaを命名したAitonは"minor"と"minima"を別種と認識していました。しかし、どうやら同じ論文の中で命名されたようです。この場合、先に命名された学名を優先するという「先取権の原理」ではどちらを優先すべきか判断出来ません。フランスのHenri August Duvalが"minor"をハウォルチアとしたのは1809年、イギリスのAdrian Hardy Haworthが"minima"をハウォルチアとしたのは1812年ですから、ハウォルチアへの移行は3年の差があります。著者はこの事を重視しているようです。調べたところ、どちらかに正式な学名とすることを初めて公表した著者の意見が優先されるそうです。これは「第一校訂者の原理」と呼ばれます。"minor"の場合はDuvalが第一校訂者となります。よって、ツリスタ属に変更する場合でも、その基礎となる種小名は"minor"となります。

話をまとめます。著者らが主張する学名に使われる種小名"minor"は、1789年にAitonによりAloe margaritifera var. minor Aiton(※Basionym)と命名されました。1809年にDuvalによりHaworthia minor (Aiton) Duval(※Homotypic synonym)とされましたが、著者らはDuvalを第一校訂者として、H. minorを根拠とする
Tulista minor (Aiton) Gideon F.Sm. & Molteno, comb. nov.(※comb. nov.=所属が変更された)としました。ちなみに、他にも種小名"minor"を使用した異名(Homotypic synonym)として、1821年のApicra minor (Aiton) Steudel、1829年の Aloe minor (Aiton) Schult. & Schult.f.が知られています。
また、正統性がなく無効とされる異名(Heterotypic synonym)として、1789年の
Aloe margaritifera var. minima Aiton、 1812年のHaworthia minima (Aiton) Haworth、2014年のTulista minima (Aiton) Boatwright & J.C.Manningが知られています。

補記1 : 同じ著者らの2017年の論文では、ツリスタ属はT. opalinaを含め5種類としていました。しかし、今回ご紹介した2018年の論文ではツリスタ属は4種類とし、T. opalinaを認めるかは議論のあるところであるとしています。T. opalinaを認めるか否か、2017年から2018年の1年で情勢が変わったのかもしれませんね。

補記2 : "minor"は「ミノー」と読むことが一般的ですが、ラテン語の読み方では「ミノル」です。個人的な好みでラテン語読みにこだわっている関係上、「ミノル」と読ませていただきました。
そういえば、"minima"は「小さな」、"minor"は「より小さな」という意味です。初めに"minor"と"minima"を命名したAitonは、大小2つの個体を見て、大きい個体は他種より小さいから"minima"として、それより小さい個体を"minor"と命名したのでしょうかね? 名前のミステリーはまだ未解決かもしれません。



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個人的にツリスタ属が好みでチマチマ集めていますが、現在ツリスタ属は4種類なので全種類簡単に集まりました。あとは変種やフィールドナンバー付きを集めるくらいです。Haworthia pumilaとHaworthia marginataは、2013年にGordon Douglas RowleyによりTulista pumilaとTulista marginataとされました。しかしその後にGideon F.Sm & Moltenoにより2017年にはTulista kingiana、2018年にはTulista minorがツリスタ属に追加されました。そのため、海外のサイトではT. marginataやT. pumilaはツリスタ属としていても
、T. minorやT. kingianaはハウォルチア属としていることもあります。国内では残念ながらツリスタ属自体に対する認識がそもそもあまり無いのが現状で、4種類すべてがハウォルチア属としていることが多いように思われます。

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Tulista kingiana

さてそんな中、今年の7月初めにT.kingianaを入手したことにより全4種類が集まりましたが、その都度学名などの情報を調べて記事にしました。この時、学名の情報はイギリス王立植物園のデータベースを参考としましたが、その根拠は特に意識していませんでした。しかし、最近多肉植物の論文を漁っているため、キンギアナをツリスタ属とした論文を見つけました。早速読んでみたところ、何やら意外なことが書かれており、単純に属名の変更というどちらかと言えば地味な論文にしては面白い内容でしたのでご紹介します。

ご紹介する論文は2017年のGideon F. Smith, Estrela Figueiredo & Steven Moltenoによる『A new combination in Tulista, T. kingiana (Asphodeloideae, Xanthorrhoeaceae / Alooideae, Asphodelaceae)』です。早速簡単にご紹介しましょう。
2003年のTreulein et al.や2013年のGrace et al.、2014年のManning et al.によるアロエ類の系統発生研究により、Haworthia s.l.(sensu lato=広義の)は3分割されることが示されました。Haworthiaは、Haworthia s.s.(sensu stricto=狭義の)、Haworthiopsis G.D.Rowley、Tulista Rafinesqueの3グループが確立され広く受け入れられました。
このうち、Tulistaは5種類を含むと考えられています。つまり、T. marginata (Lamarck, 1783) G.D.Rowley, 2013、T. minima (Aiton, 1789) Boatwr. & J.C.Manning, 2014、T. opalina (Hayashi, 2001) Breuer, 2016、T. pumila (Linnaeus, 1753) G.D.Rowley, 2013です。しかし、5番目の種であるHaworthia kingiana Von Poellnitz, 1936については、ツリスタ属として命名はされていますが、その学名が有効ではないと言います。どういうことなのでしょうか?
2013年のG.D.Rowleyや2016年のBreuerの論文では、H. kingianaをツリスタ属としました。しかし、これらはVon Poellnitzの1936年の報告を引用してそれを基に命名しました。しかし、Von Poellnitzの1936年の報告は国際命名規約(ICN)に乗っ取ったものではありませんでした。つまり、G.D.RowleyやBreuerにより命名されたTulista kingianaは、引用元に誤りがあるため正式には認められないというのです。これは、ICNの第41.5条に基づいて有効ではないとされるそうです。
そこで著者はHaworthia kingianaが規約に乗っ取り正式に報告されたVon Poellnitz, 1937を引用して、Tulista kingiana (Poelln.) Gideon F.Sm. & Molteno, comb. nov.として新たに記載しました。
※comb.nov.=combination nova、他の所属になったことを示す。
学名の根拠となった元になった学名(Basionym)は、Haworthia kingiana Von Poellnitz, 1937で、Tulista kingiana (Poelln.) G.D.Rowley, 2013やTulista kingiana (Poelln.) Breuer, 2016は規約に従わない無効名です。

ここまでが論文の内容です。私はG.D.Rowleyが2013年にツリスタ属を復活させた時に、T. kingianaは含まれていなかったものだと勘違いしていましたが、実は命名自体はされていたわけです。しかし、このような経緯は学名を調べただけではわかりませんから、個人的には非常に面白い話でした。


補記 : 論文ではツリスタ属は5種類としていますが、現在学術的に認められているツリスタ属は4種類です。T. opalinaはT.minorの異名とされています。しかし、将来的にT. opalinaが認められる可能性はあります。
また、T. minimaは現在ではT. minorが正しい学名となっています。これについては個人的に前々から頭を悩ます問題でした。T. minorが正式な学名であることは知っていますが、その理由や根拠となると全く説明出来ないのです。そんな中、そこら辺について書かれた論文を見つけましたので、私が何にそんなに悩んでいたのかを含め明日ご紹介したいと思います。



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本日はヴロキイという名前の南アフリカ原産のガステリアをご紹介します。
ヴロキイは東ケープ州のHankey郊外のKouga地方に自生します。自然保護区の岩肌に生えるために保護の必要はないそうです。標高1000-1500メートルの石英質砂岩地の、ミネラル分が少ない砂質の腐食土壌がたまった岩の割れ目や隙間に生えます。pH4.1という非常に強い酸性条件で育つようです。生息地にはSenecio crassulifolius、Crassula atropurpurea、Crassula ericoides subsp. tortuosa、Adromischus maculatusなどが生えるそうです。

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Gasteria vlokii

ヴロキイは1984年に南アフリカの植物学者であるJan Vlokが、Waboomsbergの1946メートルの岩肌で発見しました。高地の湿ったフィンボス(夏に乾燥する冬の降雨地域)ではじめて発見されたガステリアということで、驚きをもって受け止められました。
ヴロキイは南アフリカの植物学者であるErnst van Jaarsveldが1987年にGasteria vlokii van Jaarsv.と命名しました。vlokiiは発見者であるJan Vlokに対する献名です。

ガステリア属は南アフリカ原産ですが、種類ごとの分布が近いものは遺伝的にも近縁であることがわかりました。以下に示すのはガステリアの遺伝子解析の結果です。ヴロキイは南アフリカ南西部のガステリアと近縁です。


┏━━━━━━━━━━G. pillansii

┃    ┏━━━━━━━━G. vlokii
┃    ┃
┃┏┫    ┏━━━━━━G. koenii
┃┃┃┏┫
┫┃┃┃┗━━━━━━G. brachyphylla
┃┃┗┫
┃┃    ┃    ┏━━━━━G. thunbergii
┃┃    ┃┏┫
┃┃    ┃┃┗━━━━━G. carinata 
┃┃    ┗┫                      var. glabra
┗┫        ┃┏━━━━━G. retusa
    ┃        ┗┫
    ┃            ┃┏━━━━G. carinata
    ┃            ┗┫
    ┃                ┃┏━━━G. langebergensis
    ┃                ┗┫
    ┃                    ┗━━━G. disticha
    ┃
    ┃    ┏━━━━━━━G. bicolor                          
    ┃┏┫                                         
    ┃┃┗━━━━━━━G. rawlinsonii                 
    ┃┃                                             
    ┗┫┏━━━━━━━G. nitida 
        ┃┃
        ┃┃         ┏━━━━G. excelsa
        ┃┃     ┏┫
        ┃┃     ┃┗━━━━G. pulchra
        ┃┃     ┃
        ┃┃┏ ┫ ┏━━━━G. ellaphieae                         
        ┃┃┃ ┃ ┃ 
        ┃┃┃ ┃ ┃    ┏━━G. polita
        ┗┫┃ ┗ ┫┏┫
            ┃┃      ┃┃┃┏━G. acinacifolia
            ┃┃      ┃┃┗┫
            ┃┃      ┗┫    ┗━G. barbae
            ┃┃          ┃
            ┃┃          ┃┏━━G. armstrongii
            ┗┫          ┗┫
                ┃              ┃┏━G. glauca
                ┃              ┗┫
                ┃                  ┗━G. glomerata
                ┃
                ┃    ┏━━━━G. croucheri
                ┃┏┫
                ┃┃┗━━━━G. loedolffiae
                ┗┫
                    ┃┏━━━━G. tukhelensis
                    ┗┫
                        ┃┏━━━G. batesiana
                        ┗┫            var. batesiana
                            ┗━━━G. batesiana
                                            var. dolomitica


ヴロキイは花の形状からは、G. glauca、G. ellaphieae、G. nitidaと近縁とされてきましたが、遺伝子解析の結果からは支持されません。

世の中には多肉植物ブームなるものが、私が知らない間にあったらしいです。しかし、その時の一時の過熱はなくなったものの、どうも多肉人口が増えたせいか多肉植物自体は以前より今の方が色々入ってきているように思います。そんな中でも、何故かガステリアは見かけません。もちろん、臥牛や恐竜は見かけますけど、それ以外の種類、しかも原種となると中々厳しいところです。私もチマチマ集めてはいますが、ガステリアは現在8種類のみです。先日のビッグバザールでも、ガステリアはほぼありませんでした。しかし、ガステリアは非常に美しいので、もう少し流行って欲しいところですね。


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硬葉系ハウォルチアはハウォルチア属のHexangulares亜属とされてきました。しかし、硬葉系ハウォルチアは2013年にGordon Douglas Rowleyによりハウォルチオプシス属とツリスタ属として、ハウォルチア属から独立しました。しかし、そのハウォルチオプシス属内部をどう分類するのかという問題も出てきました。また、遺伝子解析結果からは、思いもよらぬ難問が提出されました。そこで、本日はハウォルチオプシス属の新しい分類を提案している、2016年に発表された論文『A synoptic review and new iofrageneric classification for the genus Haworthiopsis (Xanthorrhoeaceae : Asphodeloideae)』をご紹介いたします。著者は近年のアロエ類研究を先導する、南アフリカのSean D.Gildenhuys & Ronell R.Klopperです。

Haworthia henriquesiiが2019年にハウォルチオプシス属とされましたが、論文は2016年ですからHaworthiopsis henriquesiiを含まない18種類について述べられております。
問題はコエルマニオルム(H. koelmaniorum)の立ち位置です。コエルマニオルムは分布はリミフォリア(H. limifolia)に近いものの、形態的にはテセラタ節(H. granulata、H. tessellata、H. venosa、H. woolleyi)に近いようにも見えます。しかし、下に示した遺伝子解析による分子系統では、ハウォルチオプシス属はガステリア属と姉妹群ですが、コエルマニオルムはむしろガステリア属よりもハウォルチオプシス属と離れて見えます。

            ┏━━━━━Gasteria
            ┃
            ┃        ┏━━Haworthiopsis
            ┃        ┃     Section Trifariae
            ┃    ┏╋━━Haworthiopsis
            ┃    ┃┃     Section Haworthiopsis
            ┃┏┫┗━━Haworthiopsis
            ┃┃┃         Section Haworthiopsis
            ┣┫┗━━━Haworthiopsis
            ┃┃             Section Virescentes
        ┏┫┗━━━━Haworthiopsis
        ┃┃                 Section Haworthiopsis
        ┃┣━━━━━Haworthiopsis
        ┃┃                 Section Limifoliae
        ┃┣━━━━━Haworthiopsis
        ┃┃                 Section Tessellatae
        ┃┗━━━━━Haworthiopsis
    ┏┫                     Section Attenuatae
    ┃┣━━━━━━Haworthiopsis
    ┃┃                     Section koelmaniorum
    ┃┃┏━━━━━Tulista
    ┃┃┃
    ┃┃┣━━━━━Aristaloe
┏┫┗┫
┃┃    ┣━━━━━Gonialoe
┃┃    ┃
┃┃    ┗━━━━━Astroloba
┃┃
┃┣━━━━━━━Aloe
┃┃
┫┗━━━━━━━Aloiampelos

┣━━━━━━━━Haworthia

┣━━━━━━━━Kumara

┗━━━━━━━━Aloidendron

ハウォルチオプシスを分割していますが、ガステリア属を含めて1つのグループを形成しています。同様にツリスタ属、アリスタロエ属、ゴニアロエ属、アストロロバ属を1つのグループとしています。要するに、①ハウォルチオプシス+ガステリア、②コエルマニオルム、③ツリスタ+アリスタロエ+ゴニアロエ+アストロロバという、3群に分けられるのです。ガステリア属は非常にまとまりのあるグループなので、独立した属とされています。このように、コエルマニオルムはハウォルチオプシスとすべきか微妙な立ち位置にいます。
さらに言うならば、Trifariae節、Haworthiopsis節、Virescentes節はまとまりがありますが、Limifoliae節、Tessellatae節、Attenuatae節は必ずしも単系統にはなっていません。ハウォルチオプシス属自体のまとまりのなさがうかがえます。
ただし、慎重にも論文ではさらに詳細な解析が必要であるとしています。完全決着などではなく、現時点においての評価ということなのでしょう。
では、論文におけるハウォルチオプシス属の分類と、私の各Sectionの解説を示します。

①Section Attenuatae
・H. attenuata
・白い結節(イボ)がつくタイプです。結節の大きさや密度、白さには個体差があります。
・アテヌアタは東ケープ州に分布します。
・日本では「十二の巻」という名前の白い結節があるハウォルチオプシスが昔から販売されており、これをファスキアタとすることが多いのですが、「十二の巻」はアテヌアタ系交配種です。最近、「特アルバ」の名前で販売されている結節が目立つタイプのハウォルチオプシスはアテヌアタです。同様に結節が細かくつき繋がらない「松の雪」はやはりアテヌアタです。このように、アテヌアタ系はよく見かけますが、ファスキアタは基本的に販売しておりません。たまに専門店に並ぶくらいです。ネットでは十二の巻をファスキアタの名前で販売されていることが多いので注意が必要です。

②Section Haworthiopsis
・H. coarctata, H. fasciata, H. glauca, H.longiana, H. reinwardtii
・白
い結節(イボ)がつくタイプです。結節の大きさや密度、白さには個体差があります。白い結節を持ちロゼットを作るファスキアタ、白い結節を持ち縦長に育つコアルクタタとレインワルドティイ、結節に白くならないか結節がないグラウカ、結節がない場合もあり葉が長くなるロンギアナからなります。
・Haworthiopsis節はすべて東ケープ州に分布します。
コアルクタタをレインワルドティイに含める考え方もあります。

③Section Limifolia
・H. limifolia
・遺伝子解析では独立して見えますが、他種との関係に対する解析が不十分とのことで暫定的にリミフォリア節を設定しています。
・リミフォリアはMpumalanga州とKuwaZulu-Natal州に分布します。

④Section koelmaniorum
・H. koelmaniorum
・コエルマニオルムはLimpopo州とMpumalanga州に分布します。Limpopo州に分布するハウォルチオプシスはコエルマニオルムのみです。

⑤Section Tessellata
・H. granulata, H. tessellata, H. venosa, H. woolleyi
・テセラタは北西州と自由州唯一のハウォルチオプシスです。テセラタは北ケープ州や西ケープ州、東ケープ州にも広く分布します。グラヌラタは北ケープ州と西ケープ州に分布します。ヴェノサは西ケープ州に固有です。ウォオレイは東ケープ州に固有です。
・Tessellata節は小型で窓のあるグループです。グラヌラタはヴェノサの亜種とされてきました。同様にウォオレイはヴェノサの亜種あるいは変種とされて来ましたから、販売苗のラベルではそのような表記が多いでしょう。

⑥Section Trifariae
・H. pungens, H. nigra, H. scabra, H. viscosa
・縦長に積み重なるタイプです。ヴィスコサやニグラは三方向に葉を出して積み重なります。プンゲンスは6あるいは3方向に積み重なります。スカブラはロゼットを形成します。
・プンゲンスは東ケープ州に固有です。スカブラとヴィスコサは東ケープ州と西ケープ州に分布します。ニグラは東ケープ州と西ケープ州、さらに北ケープ州にも分布します。

⑦Section Virescentes
・H. bruynsii, H. sordida
・Virescentes節は東ケープ州に固有です。
・ブルインシイは一見して軟葉系のHaworthia retusaに似ていますが類縁関係はなく、平行進化と考えられています。

ちなみに、ハウォルチオプシス全種類の変種や異名については下記の記事にありますので、ご参照して下さい。



さて、論文の内容につきまして簡単に解説してきましたが、実は私も読んでいてモヤモヤする内容でした。まず、Tessellatae節やLimifoliae節の関係がよく分からないことです。これはさらに詳しく解析をすればわかることでしょうから今後に期待します。次にHaworthiopsis節ですが、Trifariae節やVirescentes節と入れ子状になってしまっています。どうみても、単系統ではありません。結節があるなどの特徴から分けるのは間違いなのかもしれません。

2014年のJohn C. Manning & James S. Boatwrightの
A Molecular Phylogeny and Generic Classification of Asphodelaceae Subfamily Alooideae : A Final Resolution of the Prickly Issue of Polyphyly in the Alooids?』という論文では、12種類のハウォルチオプシスの遺伝子解析をしています。ここでもコエルマニオルムはハウォルチオプシスの中には収まっていないため、下記の分子系統には入っていません。この論文では、コエルマニオルムはツリスタ+アストロロバ+アリスタロエ+ゴニアロエと姉妹群とされ、むしろハウォルチオプシスからは近縁ではありません。

┏━━━━━━━Gasteria

┃                    ┏━H. reinwardtii
┃                ┏┫
┃                ┃┗━H. nigra
┃            ┏┫
┃            ┃┗━━H. coarctata
┃        ┏┫
┃        ┃┗━━━H. glauca
┃    ┏┫
┃    ┃┣━━━━H. bryunsii
┃    ┃┃  
┃┏┫┗━━━━H. sordida
┃┃┃
┃┃┃┏━━━━H. fasciata
╋┫┗┫
┃┃    ┗━━━━H. longiana
┃┃
┃┗━━━━━━H. limifolia

┃┏━━━━━━H. venosa
┗┫
    ┗━━━━━━H. attenuata

Haworthiopsis節は2つに別れます。ファスキアタとロンギアナは近縁です。残りのレインワルドティイ、コアルクタタ、グラウカは、Trifariae属のニグラと近縁です。他のTrifariae節はわかりません。Limifolia節はここでも独立しています。Tessellata節のヴェノサはアテヌアタと近縁に見えます。
ただし、この2つの論文は分離がいまいちだったり、調べた種類が少ないため、まだ確実なことは言えないでしょう。また、調べた遺伝子によっても、解析結果に若干の違いが出るようです。更なるデータの蓄積が必要でしょう。
というわけで、わかったようなわからないような結果です。はっきりしないのは残念です。しかし、コエルマニオルムはハウォルチオプシスとは近縁とは言えないという結果だけは共通します。将来、コエルマニオルムはハウォルチオプシスから独立するかもしれませんね。


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ポエルニッチア属は、かつてアストロロバ・ルブリフロラにつけられた旧・学名です。私もそのことについて何ら疑問を抱かなかったわけですが、アストロロバ属について調べていた際に衝撃的な論文を見つけてしまいました。Gideon F. Smithらが2018年に発表した『Proposal to conserve the name Astroloba against Poellnitzia (Asphodelaceae : Alooideae)』です。

DSC_0982
Astroloba rubriflora
          =Poellnitzia rubricflora

とりあえず、その内容に入る前に簡単にことの経緯を説明します。ルブリフロラは1920年にアピクラ属として命名されたアロエ類です。種小名はルブリフロラとヤコブセニアナ(ジャコブセニアナ)が命名されましたが、学名は先に命名された方が優先されますから、ルブリフロラが採用されます。下の年表はルブリフロラの学名の変遷を示したものです。現在では2000年に命名されたアストロロバ属の所属となっています。


1920年 Apicra rubriflora L.Bolus
1939年 Apicra jacobseniana Poelln.
1940年 Poellnitzia rubriflora

                    (L.Bolus) Uitewaal
1955年 Poellnitzia rubriflora
                          var. jacobseniana
                              (Poelln.) Uitewaal
1971年 Haworthia rubriflora
                                    (L.Bolus) Parr

1981年 Aloe rubriflora 
                             (L.Bolus) G.D.Rowley

2000年 Astroloba rubriflora (L.Bolus)
              Gideon F.Sm. & J.C.Manning
2013年 Tulista rubriflora
                             (L.Bolus) G.D.Rowley

さて、それではいったい何が問題かと言いますと、属名はアストロロバで良いのか? ということです。アピクラ属は現存しない属ですし、アロエやハウォルチアに関しては、遺伝子解析結果からも否定されています。Gordon Douglas Rowleyがルブリフロラを他のアストロロバと共にツリスタ属の所属としましたが、これは確かに遺伝子解析結果では近縁でしたが、アストロロバ属はまとまりのある群として独立させる意見が認められています。ここまでは問題ありません。
ポエルニッチア属は1940年にルブリフロラのためにオランダの植物学者であるAntonius Josephus Adrianus Uitewaalにより提唱されました。しかし、1947年に同じくUitewaalにより、アストロロバ属が提唱されました。Uitewaalはポエルニッチアとアストロロバを別属としました。アストロロバ属は白花で虫媒花ですが、ルブリフロラ(rubri=赤、flora=花)の名前の通り赤花で鳥媒花です。現在ではルブリフロラは鳥を引き付けるために特殊化したアストロロバと見なされています。しかし、その特殊性ゆえ、ルブリフロラをアストロロバから分離する考え方はいまだに健在のようです。しかし、遺伝子解析からはやはりアストロロバに含まれるという結果でした。
さて、次からが最大の問題です。良く考えたら、1940年に命名されたポエルニッチア属と1947年に命名されたアストロロバ属を比較した場合、ポエルニッチア属の方が早く命名されていますから、アストロロバ属は本来使用されるべき属名ではないというのです。つまりは、現在アストロロバ属とされている種はすべてポエルニッチア属とするのが正しいというわけです。私はポエルニッチア属はルブリフロラのためだけに創設されたため、ポエルニッチア属を基準とすべきとは考えませんでしたが、確かに言われてみればその通りです。何故そのことに気が付かなかったのか、私自身迂闊でした。では、今後はアストロロバ属を廃して、すべての旧・アストロロバをポエルニッチア属に移動させるべきなのでしょうか?

しかし、著者はこの考え方に否定的です。アストロロバ属は1947年の命名以降一貫して使用されてきましたし、非常にまとまりのあるグループです。論文をはじめとする世界的な文献においても定着しています。そのため、アストロロバ属をポエルニッチア属に置き換えることは、決して望ましいことではなく、命名学的な安定性の観点からも利益にはならないと述べています。やはり、ポエルニッチアという1種に対応する属名をすでに確立した学名であるアストロロバ属に対応させることは、不必要な混乱と不確実性を生じるとしています。
植物の学名はある程度は見直されており、チェックを受けています。最新のチェックでは、アストロロバ属は1995年の『World Checklist of Seed Plants』により承認されており、ポエルニッチア属は2011年の『World checklist of selected plant families published update Facilitated』によりアストロロバ属の同義語であるとしています。今後もこのように見直しは行われますから、著者の意見が認められるのか、それともアストロロバ属が消滅するのか、大変気になるところです。私も注視しついきたいと思っています。



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ツリスタ属は2016年に認められた、割と新しい分類群です。遺伝子解析の結果からは、ツリスタ属はアストロロバ属やアロエ属から別れたアリスタロエ属・ゴニアロエ属と近縁である事がわかりました。さらに、ガステリア属やハウォルチオプシス属も近縁で、ここら辺も含めと私は好きでチマチマ集めています。そんな中でもツリスタ属は4種類と少なく、産地ごとの個体差が大きくコレクションする楽しみがあります。
本日は今年の五反田TOCで開催された春のサボテン・多肉植物のビッグバザールで入手したプミラの変種オウクワエについてです。


DSC_1759
Tulista pumila(ohkuwai) GM 602
Vrede, NW of Anysberg
非常にイボ(結節)が発達しているタイプです。プミラ系の最優美種です。ラベルにはohkuwaiとありますが、正確にはohkuwaeですね。


学名の後の"GM602"は採取情報がわかるフィールド・ナンバーというもので、「採取人+採取番号」の組み合わせからなっています。早速調べてみました。

Field number : GM 602
Collector : Gregorz Matuszewski
Species : Mammillaria meiacantha
Locality : Mexico, Coahuilauila
                          (Huachichil, 2050m)
Date : 2002

なんと、サボテンの情報が出て来てしまいました。ちなみに、"GM 602.1"と"GM 602.2"もありますが、やはり情報はサボテンでした。ただし、採取人のGregorz Matuszewskiは主に北米で活動しているみたいですから、南アフリカ原産のツリスタの採取人としては違和感があります。
とりあえず、"GM"と"Haworthia"で調べると新たな情報が出てきました。

Field number : GM 408
Collecter : J. Gerhard Marx
Species : Haworthia pumila
Locality : Western Cape, South Africa

もちろん、これは"GM 602"の情報ではありませんが、単に「GM」と言った場合にはGregorz Matuszewskiの場合とJ. Gerhard Marxの場合がある事がわかりました。残念ながら"GM 602"の情報は見つかりませんでした。まあ、単純に探し方が悪いだけという可能性もあります。しかし、そもそもフィールド・ナンバーを検索できるサイトは、フィールド・ナンバーを収集しているだけで、すべてのフィールド・ナンバーが登録されているわけではありません。普通に見つからないこともあります。
また、このフィールド・ナンバーからは、他の情報も読み取れます。植物の学名が"Haworthia pumila"となっていますね。当然ながら現在では"Tulista pumila"です。間違っているようにも思えますが、フィールド・ナンバーは採取時点での学名で登録されますから、これで問題ありません。むしろ、学名が変わる度に登録情報を訂正するのは、あまりにも大変です。


さて、では後半の"Vrede, NW of Anythberg"を調べてみましょう。Anythbergは南アフリカ南西部にある地名です。NWはNorth Westですから、Anythbergの町から北西部が採取地名です。北西部にはAnythberg国自然公園がありますが、Vredeは良くわかりません。

さて、ではGM 602を採取したJ. Gerhard Marxとは何者なのでしょうか? 調べてみると、どうやら南アフリカの芸術家とのことです。しかも、ハウォルチアのコレクターで、原産地に自生するハウォルチアの美しい図版を書いています。Gerhard Marxの作出した交配種もあるようです。また、Euphorbia suppressa MarxやEuphorbia audissoui Marxの命名者としても知られています。

さて、ツリスタ属ははじめて命名された時はアロエ属で、やがてハウォルチア属が創設されるとそちらに移り、最終的にツリスタ属となった経緯がありますから、学名(異名)は最低でも3つはあることになります。しかし、産地による個体差が激しいこともあり、それらを別種として命名したりしたこともあり、沢山の異名が付けられてきました。
先ずはプミラの来歴を見てみましょう。これは、変種を含んだプミラ全体の学名です。やはり、アロエ→ハウォルチア→ツリスタという経緯です。しかし、アピクラ属とする意見もありましたが、このアピクラ属は現在は存在しない属名です。また、Aloe arachnoidesの変種とする意見もありましたが、これは現在のHaworthia arachnoideaのことです。また、マキシマという種小名が出てきますが、プミラをマキシマと呼ぶことが結構あります。しかし、マキシマの初命名はプミラの命名の51年後です。学名は先に命名された種小名が優先されるルールですから、当然ながらマキシマは認められません。

1753年 Aloe pumila L.
1789年 Aloe arachnoides var. pumila (L.) Aiton
1804年 Aloe margaritifera var. maxima Haw.
1809年 Haworthia pumila (L.) Duval
              Haworthia maxima (Haw.) Duval
1821年 Apicra maxima (Haw.) Steud.
2013年 Tulista pumila (L.) G.D.Rowley

いよいよ、変種オウクワエの登場です。2016年にHaworthia sparsaとHaworthia ohkuwaeが、プミラの変種とされました。これにより、変種スパルサ、変種オウクワエ、変種プミラが誕生しました。変種プミラは変種スパルサと変種オウクワエが出来たことにより、その2変種と区別するために出来た名前です。これはプミラに限らず、変種が出来ると自動的に区別するための変種が出来る決まりとなっています。
先ずは基調種である変種プミラの来歴を見てみましょう。いや、先程プミラの学名は見たじゃないかと思われるかもしれませんが、3変種を含んだプミラ全体に対する学名でした。変種プミラは他の変種を含まないため、Tulista pumilaとTulista pumila var. pumilaは同じではないということです。変種プミラの異名は私が確認しただけで23もありました。さすがにすべて書くのも意味がなさそうですから、代表的な異名であるマルガリティフェラ系のみの来歴を見てみましょう。
1840年にはツリスタ属を提唱した
Constantine Samuel Rafinesqueの名前が見えます。この時、ツリスタ属は認められませんでしたが、2013年にGordon Dougles Rowleyがツリスタ属を復活させました。また、この他にも、semimargaritifera系、granata系、semiglabrata系、subalbicans系、papillosa系、corallina系が存在しました。

1753年 Aloe pumila var. margaritifera L.
1768年 Aloe margaritifera (L.) Burm.f.
1811年 Apicra margaritifera (L.) Willd.
1819年 Haworthia margaritifera (L.) Haw.
1840年 Tulista margaritifera (L.) Raf.
1891年 Catevala margaritifera (L.) Kuntze

変種スパルサと変種オウクワエの学名は、最初はハウォルチア属の独立種でしたが、やがてツリスタ属となりプミラの変種とされました。

2006年 Haworthia sparsa M.Hayashi
              Haworthia ohkuwae M.Hayashi
2016年 Tulista pumila var. sparsa
                             (M.Hayashi) Breuer
              Tulista pumila var. ohkuwae
                             (M.Hayashi) Breuer

そう言えば、入手時の名札には"Tulista ohkuwai"とありました。オウクワ"エ"ではなく、オウクワ"イ"です。ネットで検索しても、販売されているものはオウクワイが多いようです。これは、種小名が人名から来ていた場合、語尾が男性なら「-i」、女性なら「-ae」をつけるためです。しかし、人名の末尾が「-a」で終わる場合は、男女関係なく「-e」をつけることになっているため、"ohkuwai"は間違いで"ohkuwae"が正しい学名となります。



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昨日に続いて、ハウォルチオプシス属の学名と異名の紹介です。

⑭Haworthiopsis scabra
                (Haw.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia scabra Haw., 1819
→Aloe scabra (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
→Catevala scabra (Haw.) Kuntze, 1891

変種スカブラ
Haworthiopsis scabra var. scabra

異名
Haworthia tuberculata Poelln., 1931
→Haworthia scabra var. tuberculata
                              (Poelln.) Halda, 1997
Haworthia scabra var. johanii M.Hayashi, 2001
→Haworthia johanii (M.Hayashi) Breuer, 2010
→Haworthiopsis scabra var. johanii
                                     (M.Hayashi) Breuer, 2016

変種モリシアエ
Haworthiopsis scabra var. morrisiae
                        (Poelln.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia morrisiae Poelln., 1937
→Haworthia scabra var. morrisiae
                   (Poelln.) G.D.Rowley, 2013

変種スタルキアナ
Haworthiopsis scabra var. starkiana
                       (Poelln.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia starkiana Poelln., 1933
→Haworthia scabra subsp. starkiana
                        (Poelln.) Halda, 1997
→Haworthia scabra var. starkiana
                 (Poelln.) M.B.Bayer, 1999

変種ラテガニアエ
Haworthiopsis lateganiae
                     (Poelln.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia lateganiae Poelln., 1937
→Haworthia starkiana var. lateganiae
                 (Poelln.) M.B.Bayer, 1976
→Haworthia scabra var. lateganiae
                 (Poelln.) M.B.Bayer, 1999

DSC_1595
Haworthiopsis scabra

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Haworthiopsis scabra var. starkiana

⑮Haworthiopsis sordida
                  (Haw.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia sordida Haw., 1821
→Aloe sordida (Haw.)
              Schult. & Schult.f., 1829
→Catevala sordida (Haw.) Kuntze, 1891
→Haworthia scabra var. sordida
                                    (Haw.) Halda, 1997
→Haworthia scabra subsp. sordida
                                    (Haw.) Halda, 1997

変種ソルディダ
Haworthiopsis sordida var. sordida
異名
Haworthia agavoides
                  Zantner & Poelln., 1938
→Haworthiopsis sordida var. agavoides
   (Zantner & Poelln.) Breuer, 2016

変種ラブラニ
Haworthiopsis sordida var. lavrani
                   (C.L.Scott) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia sordida var. lavrani
                                   C.L.Scott, 1981
→Haworthia scabra var. lavrani
                    (C.L.Scott) Halda, 1997
→Haworthia lavrani
              (C.L.Scott) Breuer, 2010

DSC_1799
Haworthiopsis sordida

⑯Haworthiopsis tessellata
                   (Haw.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia tessellata Haw., 1824
→Aloe tessellata
         (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
→Catevala tessellata (Haw.) Kuntze, 1891
→Haworthia venosa subsp. tessellata
                                 (Haw.) M.B.Bayer, 1982
→Haworthia venosa var. tessellata
                                        (Haw.) Halda, 1997

変種テセラタ
Haworthiopsis tessellata var. tessellata

異名
Haworthia engleri Dinter, 1914
Haworthia parva Haw., 1824
→Aloe parva (Haw.)
               Schult. & Schult.f., 1829
Haworthia pseudotessellata Poelln., 1929
Haworthia pseudogranulata Poelln., 1937
Haworthia minutissima Poelln., 1939
Haworthia tessellata var. coriacea
                              Resende & Poelln., 1942
Haworthia coriacea
               (Resende & Poelln.) Breuer, 2010

変種クロウシイ
Haworthiopsis tessellata var. crousii
        (M.Hayashi) Gildenh. & Klopper,2016
異名
Haworthia crousii M.Hayashi, 2001


DSC_0691
Haworthiopsis tessellata

⑰Haworthiopsis venosa
               (Lam.) G.D.Rowley, 2013
異名
Aloe venosa lam., 1783
→Haworthia venosa (Lam.) Haw., 1821
→Catevala venosa (Lam.) Kuntze, 1891
Aloe recurva Haw., 1804
→Apicra recurva (Haw.) Willd., 1811
→Haworthia venosa subsp. recurva
                            (Haw.) M.B.Bayer, 1976
→Haworthia recurva (Willd.) Haw., 1812 
→Catevala recurva (Willd.) Kuntze, 1891
Aloe tricolor Haw., 1804
→Apicra tricolor (Haw.) Willd., 1811
Aloe anomala Haw., 1804
→Apicra anomala (Haw.) Willd., 1811
Haworthia distincta N.E.Br., 1876

DSC_1860
Haworthiopsis veonosa

⑱Haworthiopsis viscosa
         (L.) Gildenh. & Klopper, 2016

異名
Aloe viscosa L., 1753
→Apicra viscosa (L.) Willd., 1811
→Haworthia viscosa (L.) Haw., 1812
→Catevala viscosa (L.) Kuntze, 1891
→Tulista viscosa (L.) G.D.Rowley, 2013
Aloe triangularis Lam., 1783

変種ヴィスコサ
Haworthiopsis viscosa var. viscosa

異名
Aloe triangularis Medik., 1784
Aloe rigida Ker Gawl., 1810
Apicra tortuosa Willd. 1811
Aloe pseudotortuosa Salm-Dyck, 1817
Haworthia pseudotortuosa Haw., 1819
Haworthia asperiuscula Haw., 1819
→Aloe asperiuscula
              (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
→Catevala asperiuscula
                        (Haw.) Kuntze, 1891

→Haworthia viscosa f. asperiuscula
                         (Haw.) Pilbeam, 1983
→Haworthiopsis viscosa
                        var. asperiuscula

                            (Haw.) Breuer, 2016
Haworthia concinna Haw., 1819
→Aloe concinna
            (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Haworthia cordifolia Haw., 1819
→Aloe cordifolia
          (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
→Catevala cordifolia (Haw.) Kuntze, 1891
Haworthia indurata Haw., 1821
→Aloe indurata
       (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Haworthia torquata Haw., 1826 publ. 1827
→Aloe torquata 
       (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
Aloe subtortuosa
               Schult. & Schult.f., 1829
Haworthia tortuosa Sweet, 1830
Haworthia beanii G.G.Sm., 1944
→Aloe viscosa f. beanii
                        (G.G.Sm.) Pilbeam, 1983
→Haworthiopsis viscosa var. beanii
                           (G.G.Sm.) Breuer, 2016
Haworthia viscosa f. subobtusa
                          (Poelln.) Pilbeam, 1983
Haworthia viscosa subsp. derekii-clarkii
                                              Halda, 1998


変種ヴァリアビリス
Haworthiopsis viscosa var. variabilis
          (Breuer) Gildenh. & Klopper, 2016

異名
Haworthia viscosa var. variabilis
                                         Breuer, 2003
→Haworthia variabilis
                         (Breuer) Breuer, 2010
→Haworthiopsis variabilis
                          (Breuer) Zonn., 2014


DSC_1751
Haworthiopsis viscosa

⑲Haworthiopsis woolleyi
              (Poelln.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia woolleyi Poelln., 1937
→Haworthia venosa subsp. woolleyi
                     (Poelln.) Halda, 1997
→Haworthiopsis venosa var. woolleyi
                    (Poelln.) Breuer, 2016

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Haworthiopsis woolleyi

以上がハウォルチオプシス属、全19種類です。異名が多いのは属名が変わったからだけではなく、同種に異なる学名がつけられたことが原因の1つです。それは、産地ごとの外見的な違いを別種と判断したこともあるのしょう。ただし、それが遺伝的に異なるとは限らず、環境が厳しいので育ちが悪いだけだったりもしますから、間違いも起こりやすくなります。また、記事を読んでいただけたならお分かりの様に、活発に命名されたのが1800年代と古いことがわかります。当然ながら現在と異なりネットで情報をやり取り出来ません。ですから、情報収集も不完全で遅くなります。例えば、イギリスの雑誌に発表された論文が、フランスやドイツ、アメリカに届くまでタイムラグがあります。しかも、紙の出版物ですから、世界中の学術誌をすべて収集は困難ですから、すべての論文を確認して命名することもまた困難となります。これらのことから、当時からあったであろう混乱が現在にまで及んでいたりします。非常に困った問題です。



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昨日に続いて、ハウォルチオプシス属の学名と異名の紹介です。

⑤Haworthiopsis glauca
              (Baker) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia glauca Baker, 1880
→Catevala glauca (Baker) Kuntze, 1891
→Haworthia reinwardtii var. glauca
                                   (Baker) Halda, 1997
→Haworthia reinwardtii subsp. glauca
                                   (Baker) Halda, 1997

変種グラウカ
Haworthiopsis glauca var. glauca
異名
Haworthia carrissoi Resende, 1941

変種ヘレイ
Haworthiopsis glauca var. herrei
                        (Poelln.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia herrei Poelln., 1929

→Haworthia glauca var. herrei
                          (Poelln.) M.B.Bayer, 1976
→Haworthia reinwardtii var. herrei
                                 (Poelln.) Halda, 1997
Haworthia armstrongii Poelln., 1937
→Haworthia glauca f. armstrongii
                          (Poelln.) M.B.Bayer, 1976
Haworthia jacobseniana Poelln., 1937
→Haworthia glauca f. jacobseniana
                              (Poelln.) Pilbeam, 1983
Haworthia jonesiane Poelln., 1937
→Haworthia glauca f. jonesiane
                              (Poelln.) Pilbeam, 1983
Haworthia eiyae Poelln., 1937

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Haworthiopsis glauca var. herrei

⑥Haworthiopsis granulata
           (Marloth) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia granulata Marloth, 1912
→Haworthia venosa subsp. granulata
                     (Marloth) M.B.Bayer, 1976
→Haworthia scabra subsp. granulata
                             (Marloth) Halda, 1997

変種スコエマニイ
Haworthiopsis granulata var. schoemanii
                      (M.Hayashi) Breuer, 2016
異名
Haworthia schoemanii M.Hayashi, 2003

⑦Haworthiopsis henriquesii (Resende)
         Gideon F.Sm. & Vasco Silva, 2019

異名
Haworthia henriquesii Resende, 1941


⑧Haworthiopsis koelmaniorum
                        (Oberm. & D.S.Hardy)
                Boatwr. & J.C.Manning, 2014
異名
Haworthia koelmaniorum
                              Oberm. & D.S.Hardy, 1976
→Haworthia limifolia var. koelmaniorum
                (Oberm. & D.S.Hardy) Halda, 1997
→Tulista koelmaniorum
       (Oberm. & D.S.Hardy) G.D.Rowley, 2013

変種ムクムルトリイ
Haworthiopsis koelmaniorum
                   var. mucmurtryi
               (C.L.Scott) Gildenh. & Klopper, 2016

異名
Haworthia mucmurtryi C.L.Scott, 1984
→Haworthia koelmaniorum var. mucmurtryi
                (C.L.Scott) G.D.Rowley, 1999
→Tulista koelmaniorum var. mucmurtryi
                (C.L.Scott) G.D.Rowley, 2013
→Haworthiopsis mucmurtryi
                           (C.L.Scott) Zonn, 2014

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Haworthiopsis koelmaniorum

⑨Haworthiopsis limifolia
           (Marloth) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia limifolia Marloth, 1910


変種リミフォリア
Haworthiopsis limifolia var. limifolia

異名
Haworthia marlothiana Resende, 1940
Haworthia limifolia var. striata
                  Pilbeam, unknown publication
→Haworthiopsis limifolia var. striata
                               (Pilbeam) Breuer, 2016

変種ウボンボエンシス
Haworthiopsis limifolia var. ubomboensis
                           (I.Verd.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia ubomboensis I.Verd., 1941
Haworthia keithii
                  (G.G.Sm.) M.Hayashi, 2000

変種ギガンテア
Haworthiopsis limifolia var. gigantea
                (M.B.Bayer) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia limifolia var. gigantea
                                      M.B.Bayer, 1962
→Haworthia gigantea
               (M.B.Bayer) M.Hayashi, 2000

変種グラウコフィラ
Haworthiopsis limifolia var. glaucophylla
                            (M.B.Bayer) Breuer, 2010
異名
Haworthia limifolia var. glaucophylla
                                            M.B.Bayer, 2003
→Haworthia glaucophylla
                             (M.B.Bayer) Breuer, 2010

変種アルカナ
Haworthiopsis limifolia var. arcana
            (Gideon F.Sm. & N.R.Crouch)
                                 G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia limifolia var. arcana
           Gideon F.Sm. & N.R.Crouch, 2001
→Haworthia arcana
       (Gideon F.Sm. & N.R.Crouch)
                                     Breuer, 2013


⑩Haworthiopsis longiana
                 (Poelln.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia longiana Poelln., 1937

→Haworthia pumila subsp. longiana
                                   (Poelln.) Halda, 1997

⑪Haworthiopsis nigra
                   (Haw.) G.D.Rowley, 2013
異名
Apicra nigra Haw., 1824
→Aloe nigra (Haw.)
               Schult. & Schult.f., 1829 
→Haworthia nigra (Haw.) Baker, 1880
→Catevala nigra (Haw.) Kuntze, 1891
→Haworthia venosa subsp. nigra
                                (Haw.) Halda, 1997
→Haworthia viscosa subsp. nigra
                                (Haw.) Halda, 1998

変種ニグラ
Haworthia nigra var. nigra
異名
Haworthia schmidtiana Poelln., 1929
→Haworthia schmidtiana
              var. elongata Poelln., 1938
→Haworthiopsis nigra var. elongata
                    (Poelln.) G.D.Rowley, 2013
Haworthia ryneveldii Poelln., 1939
Haworthia nigra f. angustata
                         (Poelln.) Pilbeam, 1983

変種ディヴェルシフォリア
Haworthiopsis nigra var. diversifolia
                   (Poelln.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia diversifolia Poelln., 1937

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Haworthiopsis nigra

⑫Haworthiopsis pungens
                   (M.B.Bayer)
       Boatwr. & J.C.Manning, 2014
異名
Haworthia pungens M.B.Bayer, 1999
Tulista pungens (M.B.Bayer)
                           G.D.Rowley, 2013

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Haworthiopsis pungens

⑬Haworthiopsis reinwardtii
      (Salm-Dyck) G.D.Rowley, 2013
異名
Aloe reinwardtii Salm-Dyck, 1821
→Haworthia reinwardtii
                (Salm-Dyck) Haw., 1821
→Catevala reinwardtii
             (Salm-Dyck) Kuntze, 1891

変種レインワルドティイ
Haworthiopsis reinwardtii var. reinwardtii
異名
Haworthia reinwardtii var. zebrina
                                      G.G.Sm., 1944
→Haworthia reinwardtii f. zebrina
                 (G.G.Sm.) M.B.Bayer, 1977

変種ブレビクラ
Haworthiopsis reinwardtii var. brevicula
                       (G.G.Sm.) G.D.Rowley, 2013
異名
Haworthia reinwardtii var. brevicula
                                         G.G.Sm., 1944
→Haworthia brevicula
                         (G.G.Sm.) Breuer, 2010

品種オリバケア
Haworthiopsis reinwardtii f. oliviacea
            (G.G.Sm.) Gildenh. & Klopper, 2016
異名
Haworthia reinwardtii var. oliviacea
                                          G.G.Sm., 1944
→Haworthia reinwardtii f. oliviacea
                                       M.B.Bayer, 1976
→Haworthia oliviacea
                        (G.G.Sm.) Breuer, 2010
→Haworthiopsis reinwardtii var. oliviacea
                            (G.G.Sm.) Breuer, 2019

品種カルムネンシス
Haworthiopsis reinwardtii f. chalumnensis
        (G.G.Sm.) Gildenh. & Klopper, 2016
異名
Haworthia reinwardtii var. chalumnensis
                               G.G.Sm., 1943
→Haworthia reinwardtii f. chalumnensis
          (G.G.Sm.) M.B.Bayer, 1976

品種カフィルドリフテンシス
Haworthiopsis reinwardtii f. kaffirdriftensis
         (G.G.Sm.) Gildenh. & Klopper, 2016  
異名
Haworthia reinwardtii var. kaffirdriftensis
                               G.G.Sm., 1941
→Haworthia reinwardtii f. kaffirdriftensis
         (G.G.Sm.) M.B.Bayer, 1976

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Haworthiopsis reinwardtii f. kaffirdriftensis

本日はここまで。異名が非常に多いため、どうしても記事が長くなってしまいます。明日に続きます。


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多肉植物は沢山の種類があり、様々な分類群に所属します。そのため、多肉植物の種類は何種類あるのか、膨大過ぎてよく分かりません。しかし、1つのグループ=属レベルならば、調べることも可能です。
というわけで、私は今までオペルクリカリア属(Operculicarya)やダシリリオン属(Dasylirion)、フォウクィエリア属(Fouquieria)、アストロロバ属(Astroloba)について、果たして何種類あるのかを記事にしてきました。最近、ハウォルチオプシス属(Haworthiopsis)について書かれた論文を読んでいたところ、硬葉系ハウォルチアと呼ばれていたハウォルチオプシス属は18種類と書かれていました。その程度の種類なら調べられますし、論文が書かれた2016年から6年経って種類数は変わったのか興味があります。ということで、果たしてハウォルチオプシス属は何種類あるのかを、記事にしてみました。

先ずは、ハウォルチオプシス属が誕生するまでの経緯を見てみましょう。
スウェーデンのCarl von Linneによって現在使われる二名式学名というシステムが作られたのが、1753年のことでした。このときはハウォルチオプシス属はまだ存在せずに、最初はアロエ属でした。その後、1809年にフランスのHenri August Duvalによりハウォルチア属が創設され、ハウォルチオプシス属もハウォルチア属とされました。日本ではあくまで園芸上での話ですが、ハウォルチア属を軟葉系と硬葉系に分けています。軟葉系は現在のハウォルチア属で、硬葉系は現在のハウォルチオプシス属とツリスタ属に相当します。
ちなみに、1786年にドイツのFriedrich Kasimir Medikusにより創設されたカテバラ属、1811年にドイツのCarl Ludwig Willdenowにより創設されたアピクラ属という属もありましたが、アロエ属やハウォルチオプシス属の一部からなるグループでしたが、現在では存在しない属名です。
1840年にオスマン帝国生まれでアメリカで活動した
Constantine Samuel Rafinesqueがツリスタ属を提唱しましたが認められませんでした。しかし、2013年にイギリスのGordon Douglas Rowleyはハウォルチア属を解体し3属に分けました。解体されたハウォルチア属は、ハウォルチア属、ハウォルチオプシス属、ツリスタ属となり、忘れ去られていたツリスタ属は79年の年月を経てついに日の目を見ました。このとき、ツリスタ属にはアストロロバ属やハウォルチア属の一部も含まれていたので、ハウォルチオプシス属はツリスタ属とされた異名を持つ種類も存在します。現在ではツリスタ属は4種類まで減少し、含まれていたハウォルチア属はハウォルチオプシス属とされました。この時、ツリスタ属からハウォルチオプシス属への移動は、南アフリカのJames Boatwright & John C. Manningや、同じく南アフリカのSean D. Gildenhuys & Ronell R. Klopperによるものです。この南アフリカの研究者たちは、遺伝子解析という新しい武器により、次々と新しい見解を公表しており目が離せません。

ハウォルチオプシス属の経緯
1753年 Aloe L.
1786年 Catevala Medik.
1809年 Haworthia Duval
1811年 Apicra Willd.
1840年 Tulista Raf.
2013年 Haworthiopsis G.D.Rowley

それでは、いよいよハウォルチオプシス属の種類を見ていきます。最初に言ってしまうと、現在学術的に認められているハウォルチオプシス属は19種です。最新の情報では、Haworthia henriquesiiが2019年にハウォルチオプシス属とされました。これからも、ハウォルチオプシス属は増える可能性はあるのでしょうか?
また、異名もすべてを網羅できているのかは分かりませんが、できただけ盛り込みました。あと、変種に対する異名も調べました。異名が多い種類では、場合によっては異名で流通している種もあるでしょうから、自分の育てているハウォルチオプシスは正式な学名か見比べて見ると異なるかもしれません。また、学名は変更されてきた経緯からわかります通り不変のものではなく、常に見直され改定を受けるものです。この記事の一覧も、やがて古くなり通じなくなるのでしょう。


①Haworthiopsis attenuata
                     (Haw.) G.D.Rowley, 2013
異名
Aloe attenuata Haw., 1804
→Apicra attenuata (Haw.) Willd., 1811
→Haworthia attenuata (Haw.) Haw., 1812
→Catevala attenuata (Haw.) Kuntze, 1891
→Haworthiopsis attenuata (Haw.) 1997


変種アテヌアタ
Haworthiopsis attenuata var. attenuata

異名
Aloe redula Ker Gawl., 1807
Aloe subulata Salm-Dyck, 1822
→Haworthia subulata (Salm-Dyck) Baker, 1880
→Catevala subulata (Salm-Dyck) Kuntze, 1891
Haworthia clariperla Haw., 1827 publ. 1828
→Haworthia attenuata f. clariperla
                        (Haw.) M.B.Bayer, 1976
Aloe clariperla Schult. & Schult.f., 1829
Aloe subattenuata
        Salm-Dyck ex Schult. & Schult.f., 1830
→Haworthia subattenuata
(
Salm-Dyck ex Schult. & Schult.f.) Baker, 1880
→Catevala 
subattenuata
(Salm-Dyck ex Schult. & Schult.f.) Kuntze, 1891
Haworthia tisleyi Baker, 1880
→Catevala tisleyi (Baker) Kuntze, 1891
Haworthia argyrostigma Baker, 1896
Haworthia britteniana Poelln., 1937
Haworthia attenuata f. caespitosa
                  (A.Berger) Pilbeam, 1983

変種グラブラタ
Haworthiopsis attenuata var. glabrata
                (Salm-Dyck) G.D.Rowley, 2015

異名
Aloe glabrata Salm-Dyck, 1834
→Haworthia glabrata
                       (Salm-Dyck) Baker, 1880
→Catevala glabrata (Salm-Dyck) Kuntze, 1891
→Haworthia attenuata var. glabrata
               (Salm-Dyck) M.B.Bayer, 2012
Aloe redula Jacq., 1804
→Apicra redula (Jacq.) Willd., 1811
→Haworthia redula (Jacq.) Haw., 1812
→Catevala redula (Jacq.) Kuntze, 1891
→Haworthia pumila subsp. redula
                                  (Jacq.) Halda, 1997
→Haworthia attenuata var. redula
                          (Jacq.) M.B.Bayer, 1999
→Haworthia attenuata var. redula
                         (Jacq.) G.D.Rowley, 2015
Aloe rugosa Salm-Dyck, 1834
→Haworthia rugosa (Salm-Dyck) Baker, 1880
→Catevala rugosa (Salm-Dyck) Kuntze, 1891

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Haworthiopsis attenuata

②Haworthiopsis bruynsii
          (M.B.Bayer) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia bruynsii M.B.Bayer, 1981
→Haworthia retusa var. bruynsii
                    (M.B.Bayer) Halda, 1997


③Haworthiopsis coarctata
                     (Haw.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia coarctata Haw., 1824
→Aloe coarctata
                     (Haw.) Schult. & Schult.f., 1829
→Catevala coarctata (Haw.) Kuntze, 1891
→Haworthia reinwardtii var. coarctata
                                           (Haw.) Halda, 1997
→Haworthia reinwardtii subsp. coarctata
                                           (Haw.) Halda, 1997
→Haworthiopsis reinwardtii var. coarctata
                                           (Haw.) Breuer, 2016

変種コアルクタタ
Haworthiopsis coarctata var. coarctata
異名
Haworthia greenii Baker, 1880
→Catevala greenii (Baker) Kuntze, 1891
→Haworthia coarctata var. greenii
                                  (Baker) M.B.Bayer, 1973
→Haworthia coarctata f. greenii
                                  (Baker) M.B.Bayer, 1999
→Haworthia reinwardtii var. greenii
                                          (Baker) Halda, 1997
→Haworthiopsis reinwardtii var. greenii
                                         (Baker) Breuer, 2016
Haworthia peacockii Baker, 1880
→Catevala peacockii (Baker) Kuntze, 1891
Haworthia chalwinii Marloth & A.Berger, 1906
→Haworthia coarctata f. chalwinii
               (Marloth & A.Berger) Pilbeam, 1983
Haworthia fallax Poelln., 1932
Apicra bicarinata Resende, 1937
Haworthia resendeana Poelln., 1938
→Haworthiopsis resendeana
                   (Poelln.) Gildenh. & Klopper, 2016
Haworthia fulva G.G.Sm., 1943
Haworthia baccata G.G.Sm., 1944
Haworthia musculina G.G.Sm., 1948
Haworthia coarctatoides
                                 Resende & Viveiros,1948
Haworthia coarctata f. conspicua
                        (Poelln.) Pilbeam, 1983 

変種テヌイス
Haworthiopsis coarctata var. tenuis
                        (G.G.Sm.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia reinwardtii var. tenuis
                                              G.G.Sm., 1948
Haworthia coarctata var. tenuis
                         (G.G.Sm.) M.B.Bayer, 1973
Haworthia tenuis (G.G.Sm.) Breuer, 2010
Haworthia reinwardtii var. tenuis
                                (G.G.Sm.) Breuer, 2016

変種アデライデンシス
Haworthiopsis coarctata var. adelaidensis
                           (Poelln.) G.D.Rowley, 2013

異名
Haworthia reinwardtii var. adelaidensis
                                                     Poelln., 1940
→Haworthia coarctata subsp. adelaidensis
                               (Poelln.) M.B.Bayer, 1973
→Haworthia coarctata f. bellula
                                (G.G.Sm.) Pilbeam, 1983
→Haworthia coarctata var. adelaidensis
                               (Poelln.) M.B.Bayer, 1999
→Haworthia adelaidensis
                                     (Poelln.) Breuer, 2010

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Haworthiopsis coarctata

④Haworthiopsis fasciata
                    (Willd.) G.D.Rowley, 2013

異名
Apicra fasciata Willd., 1811
→Haworthia fasciata (Willd.) Haw., 1821
→Aloe fasciata (Willd.)
     Salm-Dyck ex Schult. & Schult.f., 1830
→Catevala fasciata (Willd.) Kuntze, 1891
→Haworthia pumila subsp. fasciata
                                      (Willd.) Halda, 1997

変種ファスキアタ
Haworthiopsis fasciata var. fasciata

異名
Aloe subfasciata
      Salm-Dyck ex Schult. & Schult.f., 1830
→Haworthia subfasciata
(Salm-Dyck ex Schult. & Schult.f.) Baker, 1880
→Catevala 
subfasciata
(Salm-Dyck ex Schult. & Schult.f.) Kuntze, 1891

変種ブロウニアナ
Haworthiopsis fasciata var. browniana
                (Poelln.) Gildenh. & Klopper, 2016

異名
Haworthia browniana Poelln., 1937
Haworthia fasciata f. browniana
                 (Poelln.) M.B.Bayer, 1976

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Haworthiopsis fasciata

どうやら記事が長過ぎるようで、文字入力時に変なタイムラグが発生するため記事を分割します。というわけで、続きます。しかし、異名が多い…



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スペクタビリスは非常に大型になるアロエです。しかし、スペクタビリスは昔から他のアロエと混同されてきました。その経緯について調べましたので、ひとつ記事とさせていただきます。2010年のKlopper & Gideon F.Sm.『Asphodelaceae : Alooideae : Reinstatement of Aloe spectabilis Reynolds』と、2021年のColin C.Walker『Aloe spectabilis - a splend South African species』というスペクタビリスについてのレビューを参照にして、ことの経緯を見てみましょう。

著名な植物学者であるAlwin Bergerは、1908年に権威のあるアロエについてのモノグラフを出版しました。これは、数十年にわたりアロエの分類の標準的な作品でした。Bergerはスペクタビリスを、Aloe ferox Mill.に含めました。しかし、1937年にGilbert Westacott Reynoldsはスペクタビリスを識別し、Bergerの見解は間違いであること、そして新種としました。つまり、Aloe spectabilis Reynoldsです。

それからなんと63年後の2000年にGlen & D.S.Hardyは、スペクタビリスをAloe marlothiiと同種であるとしました。確かにスペクタビリスはマルロシイによく似ており、分布も類似します。スペクタビリスはこのまま吸収されて消えてしまうのでしょうか?

しかし、2010年にRonell R. Klopper & Gideon F. Smithが『アロエ・スペクタビリスの復活』と称して、Aloe marlothiiとAloe spectabilisの特徴を比較しています。Klopper & Gideon F.Sm.と言えば、Aloianpelos属やAloidendron属を創設した研究者ですね。スペクタビリスとマルロシイの特徴を比較すると以下のようになります。

Aloe marlothii
花序 : 斜めから水平、30-50cm、20-30本
花柄の色 : 緑色から赤褐色
内側の花被片の頂点 : 淡~深紫色
フィラメントの伸長部 : 淡~深紫色

Aloe spectabilis
花序 : ほぼ直立、25cm前後、10-14本
花柄の色 : 暗褐色からほぼ黒色
内側の花被片の頂点 : くすんだ光沢のある黒色
フィラメントの伸長部 : オレンジ色

 花が咲かないと、マルロシイとスペクタビリスは区別出来ないと言われていますが、確かに花の特徴が決め手なようです。

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昨年の12月に千葉で開催された木更津Cactus & Succulentフェアで、例によってラフレシア・リサーチさんで激安のAloe pegleraeを購入した際、おまけでいただいたAloe spectabilisの抜き苗です。アロエを買っておまけでアロエを貰うというのも、何やら不思議な感じがします。
直ぐ
に植え付けましたが非常に丈夫で、真冬に植えたにも関わらずあっという間に根が張ったことには驚きました

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2022年8月。葉が旋回を始めました。アロエは若い時は葉は二列性(左右に葉が並ぶ)ですが、生長すると葉はぐるぐる回りながら生えます。

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トゲはかなり強いみたいです。そういえば、マルロシイは「鬼切丸」と呼ばれますが、スペクタビリスは「鬼王錦」という名前もあるそうです。サボテンでは名前に「錦」とついた場合は斑入り品種を指しますが、アロエでは斑入り品種のことではなく、斑入り品種ではなくても普通に「○○錦」という名前がつきます。

スペクタビリスは巨大アロエで、高さ5mに達します。幹は木質となりますが、有名な巨大アロエであるAloidendron属とは異なり、枝分かれせず単幹で葉は巨大になり頭でっかちな見た目になります。花は枝分かれして巨大で、鳥や昆虫の蜜源として重要です。
スペクタビリスはKwaZulu-Natalの固有種です。冬は氷点下まで下がる可能性があるそうです。面白いことに、1900年に自由州の農場にスペクタビリスが3本植えられたそうですが、現在では3万本以上に増えてしまったそうです。

今回の記事に出てくる3種類のアロエの学名と記載年について一応記しておきます。
1768年 Aloe ferox Mill.
1905年 Aloe marlothii A.Berger
1937年 Aloe spectabilis Reynolds



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プンゲンスは南アフリカ原産の硬葉系ハウォルチアです。この場合、"pungens"とは「突き刺す」という意味ですが、その名の通り葉の先端は鋭く尖ります。

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硬葉系なので、葉はとても硬い。

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若い時はHaworthiopsis viscosaの様に、積み重なります。生長とともにねじれていきます。

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やがてぐるぐる回りながら、螺旋状に育ちます。
5列あるいは3列といわれますが、この個体は3列が旋回しているようです。


プンゲンスは南アフリカの東ケープ州、LangkloofとJoubertinaのフィンボス(地中海性気候の灌木地帯で、冬に雨が降る)の岩の多い斜面に自生します。
自生地のプンゲンスはよく日を浴びて黄色くなっていますね。葉の先端は赤みを帯びてくるようです。


プンゲンスの学名は、はじめて命名されたのは1999年と、ハウォルチア系では意外と新しく発見された種類みたいです。最初はHaworthia pungens M.B.Bayerとされ、ハウォルチアとされました。2014年にはHaworthiopsis pungens (M.B.Bayer) Boatwr. & J.C.Manningとされました。これが、現在学術的に認められている学名です。ハウォルチオプシス属は2013年の命名されたHaworthiopsis G.D.Rowleyですから、ハウォルチオプシス属が出来てから結構早いですね。
2013年にはTulista pungens (M.B.Bayer) G.D.Rowleyも提唱されましたが、現在認められておりません。




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アロエ・ペグレラエは南アフリカ原産のアロエです。葉の枚数が増えると、葉が内側に巻いた様な独特の非常に美しい姿となります。

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昨年の冬、千葉のイベントで入手しました。アロエ苗が投げ売りされていたので、せっかくだから一鉢購入。
右下の葉は二列生(葉が左右に並ぶ)の痕跡があります。まだ若い個体です。


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2022年8月の姿。だいぶ葉の枚数が増えてきました。生長は遅いと言われますが、苗の頃は早いみたいです。

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まだ、葉が少ないので、ペグレラエらしさはありません。

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トゲは強いので注意が必要です。

ペグレラエは南アフリカのNorth West州のMagaliesbergとWitwatersbergに分布します。斜面に生えるらしいです。自生地では、Aloe marlothiiやAloe davyanaと自然交雑が起きているようです。
野生の株は非常に美しく生長が遅いため、違法採取が行われており、また開発に伴う環境破壊により急速に個体数を減らしています。絶滅危惧種に指定されており、Witwatersrand国立植物園では絶滅危惧植物プログラムの優先事項として、ペグレラエの保護活動が行われているそうです。
日本国内ではペグレラエは、実生苗がある程度は販売されているみたいですから、入手困難とまではいかないでしょう。しかし、違法採取かも知れない現地球には手を出さないことも重要です。

ペグレラエの学名は1904年に命名されたAloe peglerae 
Schönlandです。ペグレラエの名前は植物学者・自然学者のAlice Marguerite Peglerに対する献名です。Schönlandはドイツ出身のSelmar Schönlandのことです。かのPole Evansが始めた南アフリカの植物調査で主導的役割を果たしました。ちなみに、南アフリカ科学振興協会の創設メンバーとのことです。
また、Schönlandは、Euphorbia schoenlandiiやBrachystelma schonlandianumなどの植物に献名されています。


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ツリスタ属については割としつこく記事にしていますが、ついに全種類コンプリートしました。あまり販売されていないので、あちこち探し回ってようやくのことです。とはいっても、たったの4種類なんですけどね。結局、最後に入手したのがキンギアナでした。
ツリスタ属はハウォルチア属から分離したグループで、アロエ属から独立したGonialoe(千代田錦)やAristaloe(綾錦)、さらにAstrolobaと近縁です。

アロエ類の系統図
┏━━━━━━━━Aloidendron属

┫    ┏━━━━━━Kumara属
┃┏┫
┗┫┗━━━━━━Haworthia属
    ┃
    ┃┏━━━━━━Aloiampelos属
    ┃┃
    ┗┫┏━━━━━Aloe属
        ┃┃
        ┗┫    ┏━━━Astroloba属
            ┃    ┃
            ┃┏┫┏━━Aristaloe属
            ┃┃┃┃
            ┃┃┗┫┏━Gonialoe属
            ┃┃    ┗┫
            ┗┫        ┗━★Tulista属
                ┃
                ┃┏━━━Haworthiopsis属
                ┗┫
                    ┗━━━Gasteria属

キンギアナは南アフリカ原産ですが、非常に稀な植物で絶滅危惧種に指定されています。キンギアナの分布はMossel湾付近の狭い範囲で、岩の多い丘や斜面あるいは草原に生えます。違法採取や過放牧、農地開発など生息地の破壊により減少しています。

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遮光強目なので、本来の明るい色は出ていません。今年は日差しが強すぎるため、加減が難しい感じがあります。

キンギアナの特徴はなんと言っても、その明るい葉色です。ツリスタ属は強光で赤くなる傾向がありますが、キンギアナは明るい黄緑色です。キンギアナはツリスタ属らしく大型になり、18cm位になるそうです。
キンギアナは「king」+「-iana」ですが、king=王ではありません。「-iana」は人名につける女性詞ですから、この場合はKing夫人に献名されたということです。

キンギアナの学名は2017年に命名されたTulista kingiana (Poelln.) Gideon F.Sm. & Moltenoです。キンギアナは初めて命名されたのは1937年のHaworthia kingiana Poelln.ですが、1997年にはプミラの変種とされHaworthia pumila var. kingiana (Poelln.) Haldaとする意見がありました。
また、2001年に命名されたHaworthia zenigata M.Hayashi、2016年にツリスタ属とされたTulista opalina var. zenigata (M.Hayashi) Breuerの系統も現在はキンギアナと同種とされているようです。



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フォリオロサは南アフリカ原産のアストロロバです。しかし、アストロロバ自体知らないという人もいるかもしれませんが、常にマイナーなグループでかつて流行したことすらないので仕方がないことなのでしょう。そんなアストロロバですが、存在自体は昔から知られています。アロエの仲間として、アロエ属、ハウォルチア属、ガステリア属、アストロロバ属がありますよというのが、昔から図鑑に載ってた情報です。近年、アロエ属が5属に、ハウォルチア属が3属に分裂しましたが、アストロロバ属は基本的に同じです。アストロロバ属の最近のトピックは、ポエルニッチア属とされることもあるルブリフロラが、遺伝子解析によりやっぱりアストロロバ属でしたということ位ですかね。
さて、個人的にはアストロロバは大いに気に入っているわけですけれど、園芸店ではまずお目にかかれないレア多肉です。とはいっても、輸入が規制されているだとか、国内で増やせないとか栽培が難しいとか、そういう理由ではなく単純に人気がないだけです。まさに、購入する人がいなければ販売されないという、市場経済の基本原理に則ってますね。残念ながら。
しかし、そんな中、イベントで偶然見つけたアストロロバであるフォリオロサを本日はご紹介します。

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フォリオロサは南アフリカの東ケープ州Nama Karooに分布するアストロロバです。ネットではフェリオサとかフォリオサとか呼ばれることもあるようです。また、「多宝塔」とか「奔竜」という名前もあるようですが、まったく使われていません。
フォリオロサはアストロロバの中では小型で、葉はとても小さくてヒモの様に細長く育ちます。私の株は名札にわざわざ"小型"と表記してあったくらいなので、フォリオロサの中でも特に小さいタイプなのでしょうか? これからが楽しみです。

フォリオロサの学名は1947年に命名されたAstroloba foliolosa (Haw.) Uitewaalです。古い時代に命名されたハウォルチアやガステリアなどのアロエ類は最初はアロエ属とされましたが、アストロロバも同様に最初はアロエ属でした。フォリオロサの学名の変遷を年表にしてみました。

1804年 Aloe foliolosa Haw.
1811年 Apicra foliolosa (Haw.) Willd.
1812年 Haworthia foliolosa (Haw.) Haw.
1947年 Astroloba foliolosa (Haw.) Uitewaal.
1987年 Astroloba spiralis subsp. foliolosa
                               (Haw.) L.E.Groen
2013年 Tulista foliolosa (Haw.) G.D.Rowley

様々な学名が提唱されましたが、現在学術的に認められているのは、Astroloba foliolosaです。2013年のG.D.Rowleyのツリスタ属とする意見は当てずっぽうではなく、アストロロバ属とツリスタ属が遺伝的に近縁であることからツリスタ属の範囲を広くとった訳ですが、そうなるとGonialoeやAristaloeもツリスタ属に含めなくてはいけなくなるため、やや大味な分け方になるような気もします。アストロロバ属は非常に良くまとまった分類群ですから、独立した群としたほうが自然だと私は思います。



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最近、多肉植物栽培の大先輩とお知り合いになりまして、色々と教えていただいております。私自身はと言うと、ブログではあれやこれやと情報をひけらかしてはいますが、何せ経験が浅いもので表面的な知識ばかりで頭でっかちな部分がたぶんにあります。実際の経験豊かな先輩方にご指摘いただけると、私も非常に嬉しく勉強になります。そんな中、ラウリンソニーについて何か情報はありませんかというリクエストをいただきました。ラウリンソニーとは一体どのような植物なのでしょうか?

さて、ラウリンソニー、つまりG. rawlinsoniiはガステリア属の一種ですが、茎が長く伸びて一見してガステリアとは思えない非常に変わった姿をしています。私も図鑑で見たことはありますからその存在自体は知っていましたが、実際に見たことはありません。大型園芸店や即売会でも、まずお目にかかれないレア多肉です。
私自身、ガステリア属にかなりの興味がありますから、最近は色々と調べものをしています。そんな中、ガステリア属について書かれたいくつかの面白い論文を見つけました。そこでは、G. rawlinsoniiの立ち位置は中々面白いように思えます。

論文
2005年に出された『Taxonomy implication of genomic size for all species of the genus Gasteria Duval (Aloaceae) Plant Systematics and Evolution』という論文をまず紹介します。この論文は簡単に言うと、ガステリア属の核DNA(ゲノム)のサイズを測定しましたよというものです。種によってゲノムのサイズが異なり、面白いことにG. rawlinsoniiがもっとも小さく、次に内陸部に自生する13種がG. rawlinsoniiより大きく、さらに沿岸部に自生する5種、そして一番ゲノムサイズが大きいのはG. batesianaということです。著者はゲノムサイズが小さいG. rawlinsoniiがもっとも原始的で、そこから内陸部→沿岸部→北東部(G. batesiana)という風に分布を拡大しながら進化したのではないかと考えているようです。筆者の一人はvan Jaarsveldですが、この論文の前まではG. batesianaがもっとも原始的と考えていたそうです。
しかし、残念ながら2021年に出されたPhylogeny of the Southern African genus Gasteria duval (Asphodelaceae) based on Sanger and next generation sequencing data』という論文を読むと、2005年の論文の考察は否定されています。こちらの論文は遺伝子解析の結果ですから、より正確なはずです。2021年の論文では、西部に分布するG. pillansiiがもっとも原始的で、そこから東部に向かい最先端にいるのがG. batesianaということになりました。結果的にG. rawlinsoniiはG. bicolorともっとも近縁で、G. nitidaと合わせた3種類が非常に近いグループを形成しているそうです。
まあ、2005年の論文を最初に読んだ時に、ゲノムサイズにそれほど大きな差はない様に見えました。差はありますが、非常に僅差です。G. batesianaは他のガステリアと差ははっきりあるように見えましたが、その他は微妙なところです。これは、根拠のない憶測ですが、ガステリア属の分布拡大の最前線にいるG. batesianaは適応のためにゲノムが複雑となりサイズが巨大化し、逆にG. rawlinsoniiは環境適応が完了したのでいらないゲノムを捨てたのかもしれません。

自生地
G. rawlinsoniiは南アフリカの東ケープ州Baviaanskloof山とKouga山でのみ見られるそうです。標高300~700mのミネラルの少ない日陰の多い断崖に生えます。岩の割れ目に根を伸ばして、長い茎を下に垂らして育ちます。最大1~2m程度まで伸びるということです。
しかし、本当に切り立った崖に張りつくように育ち、採取もまったく不可能なため、今のところ絶滅の心配はないようです。海外のサイトでは「自然によって十分に保護されている」という面白い書かれ方をしていました。
そういえば、土壌は弱酸性で意外と腐植土が豊富と言われています。しかし、この弱酸性というのは曲者で、酸性土壌とは別物だったりします。何せ"弱"とありますから、ほぼ中性付近と考えた方が良いでしょう。変に酸性土壌にしようとすると、上手くいかないかもしれません。
G. rawlinsoniiの生える崖にはBulbine cremnophila、Cyrtanthus montanus、Cyrtanthus labiatus、Haworthia gracilis var. picturara、Haworthiopsis viscosa、Plectranthus verticillatus、Othonna lobata、Cotyledon tomentosa、Adromischus cristatus var. zeyheri、Delorperma esterhuyseniae、Albuca cremnophilaなどが見られるとのことです。
ガステリア属は葉挿しで増やせますが、ラウリンソニーは葉挿しがあまり上手くできないと良く言われます。まったく出来ないわけではないようですが、難しいようです。これは、断崖に生えるため、取れた葉が活着出来ないからではないかと言われているみたいです。


育て方の謎
G. rawlinsoniiは国内ではまったくと言っていいほど情報がないため、海外のサイトを色々と閲覧しましたが中々育て方について参考となりそうな記事は見つけられませんでした。
ただ、G. pillansiiは茎が長く育ちますが、根元の古い葉はやがて枯れ落ちます。しかし、どうやら下葉の残り具合は様々なようです。何が違うのでしょうか?
それから、G. rawlinsoniiの沢山の写真を見ていて気が付いたのですが、仕上がりが綺麗な株は地植えが多い様な気がします。ここに育成のヒントがあるのかもしれません。もしかしたらですが、地植えだと根詰まりや土壌の酸性化が起きないため生長が早く、下葉が落ちる前に長く伸長しているのかもしれません。生長が緩やかだと、長く伸びる前に下葉が古くなってしまいますからね。原因がこれらの場合、鉢植えでは植え替えをこまめに行えばある程度は解決出来そうです。
あと、意外にも葉はやたらに深い緑色であることに気が付きました。思ったより強く遮光しているのでしょうか?  あまり遮光すると貧弱に育ってしまうかもしれませんから、これはこれで中々加減が難しそうです。
そういえば、Aloidendron dichotomum(=Aloe dichotoma)では、遮光して水多目で育てると下葉があまり落ちないで育ちますが、無遮光で乾燥させて育てると下葉は直ぐに落ちて常に先端の方だけに葉があるようになります。これも似たような現象かもしれません。

二列生
今回、G. rawlinsoniiについて海外のサイトをあちこち閲覧していた時に、やたらと"葉はdistichousである"と書かれていました。最初何のことだろう?と思いましたが、日本語では「二列生」と訳すようです。意味は、葉が互い違いに出て、左右に並ぶことだそうです。「ガステリア属の幼若植物は二列生だが、成熟するとロゼットを形成する種が多い」の様に使えます。大変便利な言葉ですね。

学名
ラウリンソニーの学名は1976年に命名されたGasteria rawlinsonii Oberm.です。Oberm.は南アフリカの植物学者であるAnna Amelia Mauve (旧姓 Obermeyer)のことです。南アフリカとローデシア(ジンバブエ)で採取した4000以上の植物をカタログ化したことで知らています。


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