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カテゴリ: ソテツ

3月後半から毎週コツコツ多肉植物の植え替えをしてきましたが、あっという間に1ヶ月が経ってしまいました。なんと今回で今年の植え替えは100鉢目のアニバーサリーです。いや、別に目出度いという訳ではありませんが、ちょうどいい区切りなので我が家の大物を植え替えることにしました。

記念すべき(?)100鉢目はZamia furfuraceaというメキシコ原産のソテツです。昔ホームセンターにたまたま入荷した小さな実生苗でした。ろくに植え替えもしていないのに(※2回位はした)、いつの間にやら大きくなって、去年ははじめて花を咲かせました。日本では「ザミア・プミラ」の名前で販売されていますがこれは誤りです。ここいら辺の話は記事にしていますから、以下の記事をどうぞ。

さて、それでは早速植え替えを開始します。まずは、Zamia furfuraceaから。
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冬の間は室内に取り込みましたが、葉が広がり邪魔なので縛っていました。今日から紐を取り去り自由になります。
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縛っていた紐を取りました。
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塊茎は大分大きくなりました。しかし、何故か斜めに育ってしまいます。
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花殻がまだありました。種が入っていない「しいな」があったので、どうやら雌株のようです。
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抜くのが大変そうですが、駄温鉢は底の穴を押すだけで簡単に抜けます。しかし、これは大変な根の詰まり具合。9号の朱泥鉢でも狭い感じがします。
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盆栽用のレーキでほぐしていきます。
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根が渦巻いています。長い間植え替えていないのがばれてしまいますね。
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浅い部分にサンゴ根がありました。藍藻と共生しています。Dioonの丸っこいサンゴ根と異なり、よりサンゴっぽい形です。
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根の量がすごいので、駄温鉢では少し浅いような気がします。
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縦長の10号鉢に植えることにしました。
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植え替え後。真っ直ぐに植えました。
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ぐらつきそうですから、少し深植えしました。
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今年も葉を沢山出してほしいですね。ソテツシジミにやられなければいいんですけどね。ソテツシジミは関東地方でも定着しているようですから、かなり
ビビっています。沖縄では海外のソテツにつくカイガラムシが蔓延して、ソテツが結構枯れているみたいですが、北上しないか心配です。


ソテツの害虫の記事はこちらをご参照下さい。

さて、ついでに同じザミアのZamia integrifoliaも植え替えてしまいましょう。すごい斜めに育ちました。どうにもザミアを真っ直ぐ育てるのが苦手です。ちなみに、こちらも「ザミア・フロリダーナ」という名前です販売されていますが、やはりこれも誤りで記事にしていますからご参照下さい。

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Zamia integrifolia
こちらも斜めに育ってしまいます。冬の間、植物用ランプに当てていましたが、それが原因みたいです。

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しかし、一冬でここまで斜めになるのが不思議。
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根はかなり狭い感じで、見た目より大きい鉢に植えた方が良さそうです。
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サンゴ根も出来ていました。やや青みがかっていますね。藍藻が植物用ランプで光合成していたのでしょう。
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植え替え後。真っ直ぐ植えました。取り敢えずプレステラ120に植えました。地上部よりも根が強いので、ちょっと小さいかも。

大物の植え替えが済んでほっとしました。後は小さいものばかりです。そろそろ長い長い植え替えも終わりの気配です。多肉植物の置き場所を増設予定ですが、全く進んでいません。早いところどうにかしないと、さすがに手狭です。植え替えも終わりますし何とかそちらも片付けたいと思っています。


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ソテツの根にはサンゴ根と呼ばれる不思議な形状の根があります。これは何かと言えば、細菌(バクテリア)がソテツと共生関係を結んだものです。植物と細菌の共生と言えば、マメ科植物の根粒が有名です。マメ科植物の根粒は、大気中の窒素ガスを固定してアンモニアに変換することが出来ます。植物は大気中の窒素を利用出来ませんが、アンモニア態窒素は栄養分として利用可能なのです。
さて、このソテツのサンゴ根は古くから研究されてきたようですが、最新の研究成果をまとめた論文を見つけました。Aimee Caye G. Chang, Tao Chen, Nan Li & Jun Duanによる2019年の論文、『Perspectives on Endosymbiosis in Coralloid Roots : Association of Cycas and Cyanobacteria』です。なるほど、サンゴ根はそのまま「Coralloid Roots」なんですね。というより、サンゴ根という言葉自体が英語から来ているのかもしれません。
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Dioon spinulosumのサンゴ根は地際に形成されていました。

ソテツのサンゴ根と共生する細菌は、意外にも光合成をする細菌です。いわゆる、藍藻(藍色細菌、シアノバクテリア)と呼ばれている細菌で、一見して藻のように見えます。しかし、遺伝子が核膜に包まれておらず、細胞質中に浮かんでいる状態です。これを一般的に原核生物と呼び、藍藻は葉緑体の元になった細菌であると考えています。一昔前には日本でも河川や湖沼に生活排水が処理されずに垂れ流した結果、富栄養化によりアオコと呼ばれる藍藻が増殖し腐敗して異臭を放ったりしました。まあ、この富栄養化は洗剤にリンが含まれていたことが原因だったようで、現在では洗剤にリンはほぼ含まれなくなりました。
さて、わざわざ地中にある根に共生する細菌が光合成できても意味がないような気がしますが、個人的な感想ではサンゴ根は浅いところに出来やすいように思われます。なお、ソテツと共生する藍藻は主にネンジュモです。ネンジュモは緑色の珠を数珠繋ぎに連ねたような藻です。実際にサンゴ根を切って断面を見るとと外皮側に薄く緑色の層があり、藍藻が存在することが分かります。

サンゴ根の形成に先立って、プレ・サンゴ根(precoralloid roots)を形成します。この段階では藍藻は存在しないのにプレ・サンゴ根は形成されます。このプレ・サンゴ根が藍藻との共生のために形成されるものかどうかは、実はよく分かりません。他に何か機能がある可能性もあります。しかし、現実的にプレ・サンゴ根にネンジュモが感染することにより、サンゴ根が形成されるのです。
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Dioon eduleの根に形成されたサンゴ根ですが、プレ・サンゴ根あるいはサンゴ根の初期段階と思われます。

しかし、窒素ガスというのは利用しようと思うと、大変厄介な存在です。なぜなら、窒素ガスは窒素原子が2つ結合したものですが三重結合によりがっちり連結しており、様々な物質に反応を示さない不活発な分子だからです。ですから、窒素は大気の78%を占めるにも関わらず安定しており、我々が呼吸のために大量に吸い込んでも何も起こりません。しかし、ネンジュモは空気中の窒素ガスをニトロゲナーゼという酵素で、三重結合を解離させ水素と結合させて生物が利用可能な形とするのです。

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Zamia furfuraceaのサンゴ根はDioonとは形が異なります。

藍藻はいつでもニトロゲナーゼを使うわけではなく、通常は周囲に栄養分が不足している場合に使われます。この時、藍藻は普段の細胞よりわずかに大きいヘテロシスト(heterocysts)という形態になります。ニトロゲナーゼは酸素で不活性化してしまうため、細胞に厚い壁を持ったヘテロシストにより酸素を遮断出来るようです。しかし、サンゴ根ではソテツとの共生関係のためだけに、藍藻はヘテロシストを形成します。
また、藍藻はヘテロシスト以外にもいくつかの形態に変化します。運動性がありソテツの出す化学物質に反応して感染に関与すると言われているhormogoniumや、環境の悪化によりakinetesと呼ばれる胞子になります。akinetesは寒さや乾燥に強く、60年以上耐えることが出来ると言います。

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Zamia integrifolia(異名Zamia floridana)のサンゴ根は青みがかり、藍藻がいることが分かります。

2019年にはソテツ(Cycas revoluta)の根から、hormogoniumを誘導する因子(
diacylglycerol 1-palmitoyl-2-linoleoyl-sn-glycerol)を単離することに成功しているそうです。そこで、考えられるサンゴ根が形成される筋書きは以下の通りです。まず、ソテツはプレ・サンゴ根を形成し、誘導因子を分泌し移動性があるhormogoniumを誘引します。hormogoniumはプレ・サンゴ根に感染しますが、このままだと取り込まれた藍藻は窒素固定を行いません。なぜなら、窒素固定は藍藻がヘテロシストとなる必要があるからです。そこで、藍藻が感染したらhormogonium誘導因子の放出を停止し、取り込まれた藍藻はヘテロシストの形態へ移行し窒素固定を開始するのです。ちなみに、hormogonium誘導因子の放出を抑制する遺伝子が1997年に発見されているそうです。
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Cycas revoluta

以上のように様々なことが分かりつつあります。しかし、サンゴ根形成のメカニズムはいまだに分かっておらず、ソテツとネンジュモの関係も明らかとなっていない部分が沢山あります。著者らはこれらの研究には限界があるとしています。まず、感染実験が必要ですが、ソテツの生長を考えると非常に長期に渡る試験となる可能性があります。では、in vitro(試験管内)で実験するにせよ、サンゴ根の組織培養の方法を構築することから始めなければならないでしょう。
この論文自体がソテツのサンゴ根研究の成果をまとめた、ある種の一里塚のようなものです。ここから論文に記された研究の道筋をゆっくりと進展していくのか、それとも革新的な技術の開発で一気に解決してしまうのか、まあそれは都合の良すぎる話ですが、今後の研究を私もゆっくり待ちたいと思います。


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最近、沖縄で海外のソテツにつく害虫が見つかりました。Aulacaspis yasumatsuiというカイガラムシの一種です。昨日、ニュースで初めて知ったのですが、沖縄は2例目で実は昨年の10月に奄美大島で発見されており、すでに700本のソテツに拡がってしまっているそうです。その増殖の早さから思いの外、大事になる可能性があります。

ニュースの元記事はこちら。
A. yasumatsuiはタイなどの東南アジア原産のカイガラムシです。繁殖力が強く世界中の温暖地に拡散してしまっています。野生ソテツの宝庫であるメキシコではA. yasumatsuiをかなり警戒しているようです。今までA. yasumatsuiが確認されたソテツはCycasだけではなく、Zamia、Dioon、Stangeria、Macrozamia、Bowenia、Encephalartosで見つかっていますから、ソテツの仲間はすべて被害に合うと考えた方が良いようです。

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Dioon spinulosum

カイガラムシはカメムシの仲間で植物の汁を吸いますが、吸われた部位は白く細胞が死んだ状態となります。大量に増えればやがて光合成が出来なくなります。葉についたA. yasumatsuiは葉をすべて取ってしまえば済みますが、幹の鱗片の間や地下部位についたA. yasumatsuiを除去するのは大変な困難でしょう。

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もし、A. yasumatsuiが鱗片の隙間に入ってしまったらと考えると、とても除去しきれる気がしません。

A. yasumatsuiがついて何もしなければ1年ほどでソテツは枯死する可能性があると言います。対策は、見える範囲にいるものは取り除くか、カイガラムシ用の殺虫剤をまくしかありません。それでも、地下部位などすべてを取り去るのは至難の技かもしれません。また、もし本土にA. yasumatsuiが定着してしまった場合、除去しても野外の他のソテツから新たなA. yasumatsuiがやって来るかもしれません。


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Zamia furfuracea

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Cycas revoluta

A. yasumatsuiは東南アジア原産ですから、寒さに弱いような気もしますがよく分かりません。そもそも、私は熱帯原産のソテツを冬は室内に取り込んでいます。温室で育てている人もいるでしょう。そうなると、もしA. yasumatsuiが寒さに弱かったとしても、冬に生き残るでしょうからA. yasumatsuiの耐寒性の有無に意味はないかもしれません。また、屋外にあったとしても、土壌中は暖かいので地下で生き残るものもあるかもしれませんし、一般的に耐寒性が高い卵で冬を越す可能性もあります。沖縄は離れているからなどと楽観視は出来ないでしょう。近年、ソテツシジミという、ソテツを食害する南方系の蝶が、1992年に沖縄で確認されてから、現在では関東地方各地で確認されるに至りました。この蝶も日本列島をじわじわ北上して来たわけです。地球温暖化により気温も上昇してきていますから、A. yasumatsuiが本土に上陸するのも時間の問題でしょう。

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Dioon edule

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Zamia integrifolia(=Z. floridana)

ソテツシジミが関東地方のあちこちで発見されているニュースを見て、まあいざとなれば芋虫を捕殺するだけなので、それほどの脅威は感じませんでした。しかし、Aulacaspis yasumatsuiは初期に気が付かず蔓延してしまうと、手に負えなくなる可能性が大です。私もソテツを何種類か育てていますから、注意しないといけませんね。


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花粉を運ぶのは誰か? 植物のポリネーター(花粉媒介者)については個人的に気になっており、過去にはアロエやアガヴェについて論文を調べて記事にしました。しかし、陸上植物のライフサイクルを考えた時、ポリネーターの働きにより種子が出来るだけでは駄目で、その種子が散布される必要があります。果実を動物に食べてもらい、あちこちで糞をして糞中の種子がばらまかれるタイプのものが多いでしょう。また、オナモミのようにトゲなどにより動物の体に付着して運ばれるものも割とあります。エライオソームという栄養分が着いている種子は、蟻に巣穴に運搬してもらうタイプです。また、Uncarinaは踏みつけ種子で、果実が脚に絡み付いて踏まれる度に種子がこぼれるなんていうタイプもあります。逆に動物を利用しない植物は多くは羽があり風で散布されます。また、ユーフォルビアは種子を弾け飛ばしますが、散布すると言っても対して距離ではありません。
このように、種子の散布は様々な方法があり、植物によって様々な工夫が見受けられます。最近はこの種子の散布が気になるところです。ということで、本日はその一例を調査した論文をご紹介します。それはLaura Yanez-Espinosa, Felipe Barragan-Torres, Alejandra Berenice Ibarra & Jaime Ivan Moralesの2019年の論文、『Dispersal of Dioon edule cycad seeds by rodents in tropical oak forest in Mexico』です。この論文ではメキシコのサンルイスポトシ州の熱帯オーク林でDioon eduleというソテツの種子の行方を追跡しています。

ソテツは中生代に豊富で多様性があり、コーンごと種子を草食恐竜が食べることにより、糞として種子を拡散したと言われています。恐竜は絶滅しましたが、現在のソテツの種子は誰が運んでいるのでしょうか?
まず、実際のソテツの種子は1~3cmと大きいので、重力で落下し親植物の近くに留まります。しかし、雨により分散し、または小川の流れに乗ることもあります。とはいえ、基本的に分散力は低い種子と言えるでしょう。論文では自動撮影により種子を運ぶ動物を観察しました。結果は4種類のネズミが、Dioon eduleの種子を持ち去りました。しかし、ソテツの種子には毒があると言われています。
実際にマウスにDioon eduleの種子を与えると、神経系にダメージがあり7日後に死亡したそうです。しかし、この実験はDioon eduleの種子のみを餌とした場合です。実際に様々なものを食べている場合には、それほど問題にはならないようです。ネズミの巣穴にファイバースコープを入れて、巣穴の内部に貯蔵された種子を観察しましたが、やはり齧られて食用とされていることが分かります。
さて、せっかくの種子が食べられてしまっては意味がないような気もしますが、実際にはあちこちに貯蔵した種子のほとんどは放置される運命のようです。日本でもリスやネズミがドングリをやはりあちこちに貯蔵しますが、そのほとんどは利用されません。巣穴は地上より湿り気があり発芽に適した環境です。しかも、ネズミの糞などで周辺環境は富んでいます。何より、親株から離れた場所に移動できるメリットは計り知れません。

ネズミの種類により種子に対する行動に差があります。小型のネズミより中型のネズミの方が、Dioon eduleの種子を積極的に巣穴に運びます。これは、どういう理由でしょうか? 単純にとらえるならば、小さいネズミは大きい種子を運ぶのが大変だからです。エネルギー効率を考えた場合、大きすぎる種子は運搬にかかるコストが高くなりすぎて非効率的です。自身のサイズに見合ったより小型の種子を運搬する方が良いということになります。逆に中型のネズミにとっては、Dioon eduleの種子を運搬することは大したコストがかからないのでしょう。しかし、論文では他の可能性にも言及しています。それは、種子の毒性についてです。今さら種子の毒性について蒸し返すのかと思われるかもしれませんが、ちゃんと理由があります。小型のネズミにとっては、Dioon eduleの種子は毒性が高すぎるのかもしれません。なぜなら、Dioon eduleの種子を同じ量食べた場合、体重の重い中型のネズミにとっては許容量ですが、体重の軽い小型のネズミにとっては致命的かもしれないからです。小型のネズミにとっては、運ぶのが大変な割にほんの少しずつしか食べられない効率の悪い食べ物です。

以上が論文の簡単な要約と言うより、一部を抜粋したものです。実は論文にはオークのドングリと比較したりとか様々な要素が含まれますが、今回は敢えて省きました。それは、種子が運ばれることのメリット・デメリットと、種子を運ぶ動物のメリット・デメリットについて重視したからです。
ネズミは何もソテツのために種子を運んでいるわけではありませんが、結果的に種子は拡散されます。しかし、そのネズミもサイズによりメリット・デメリットを天秤にかけて、自身のためだけに種子を運ぶのです。自然の中に何とも言えない絶妙なバランスが存在することに、大変驚かされますね。


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昨日はメキシコ原産のソテツであるDioon eduleの情報についての記事を書きましたが、本日はD. eduleの論文をご紹介したいと思います。D. eduleはDioonの代表種であり、様々な角度から研究がなされています。非常に面白そうな論文が沢山あります。しかし、最近ではやや忙しく中々思ったように論文を読めていないのが悩みです。

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Dioon edule

そんな中、読んだ論文はAndrew P. Vovidesの1990年の論文、『Spatial Distribution, Survival, and Fecundity of Dioon edule (Zamiaceae) in a Tropical Deciduous Forest in Veracuruz, Mexico, with Notes on Its Habitat』です。

著者は野生のD. eduleが集中するメキシコのVeracuruz州中央の熱帯林で、その生長と繁殖に関するデータを4年間にわたり収集しました。
まずは実生の定着具合を見てみましょう。調査によると、高さ10cm以下の若い苗はほぼ枯れてしまうことが分かりました。やはり、小さな内は環境の変化や乾燥に耐えられないのでしょう。しかし、高さ40~50cmくらいに生長すると枯れてしまう個体は5%以下でした。ある程度生長できれば環境の変化にも対応出来るのでしょう。
次に樹齢を見てみましょう。調査した区域の139個体のD. eduleの中で最高齢は2001~2250歳と見られる個体が1本ありました。1501~2000歳の個体は0本、1251~1500歳の個体が1本、1001~1250歳の個体が2本、751~1000歳の個体が2本、501~750歳の個体が11本、251~500歳の個体が13本、0~250歳の個体が109本ありました。ここで分かることは、D. eduleは非常に寿命が長いということだけではありません。0~250歳の個体が109本ということは、この250年の間に生き残った実生は109本しかないということでもあります。この0~250歳の死亡率は88%にもなるようです。

種子を人工的に発芽させた場合、発芽率は98%と非常に高いことが分かりました。しかし、野生状態だとネズミ(Peromyscus mexicanus)に種子を食べられてしまうことが明らかとなっています。しかし、一般的にソテツには毒があり、ラットにD. eduleの種子を砕いて与えると24時間以内に死亡してしまいます。つまり、D. eduleの種子を食べるP. mexicanusはソテツの毒に耐性があるということです。
また、新しく葉は柔らかく、Eumaeus deboraという蝶の幼虫により食害されます。
実生が枯死する最大の要因は、おそらく極端な乾燥です。1983年の乾季には1~2歳のD. eduleはほぼ死滅しました。さらに、D. eduleの実生を人工的に2年間育てた後に2週間の乾燥させたことにより、20個体中18個体が枯死しました。やはり、若い個体にとって乾燥は大敵のようです。
D. eduleの生息地は山火事が起きやすく、大型の個体は耐えられますが、苗は耐えられないでしょう。しかし、山火事により一時期に土壌中に窒素が増加することにより、開花に寄与しているということです。結果的に種子の生産が増加するということです。


生育環境を見てみましょう。土壌の深さを測定すると、D. eduleの84%はたった6~20cmしかない浅い土壌に生えていることが分かりました。多くの場合、岩場に生えていました。土壌はカリウムとリン酸が貧弱であり、かなりの貧栄養のようです。pHは7.7でした。この岩場に育つことにより、種子が岩の隙間に入りネズミに食べられてしまう可能性は低くなるようです。
D. eduleには菌根が確認されているそうです。あまり知られていませんが、野生の樹木の根はキノコの菌糸で被われており、樹木とキノコの間で養分のやり取りがあり共生関係にあります。これを菌根と呼びます。菌根はまれな現象ではなく、森林には普遍的に存在し非常に重要な仕組みであることが分かってきました。D. eduleも共生している菌根から水分や栄養をもらい、乾燥し栄養の少ない過酷な環境に耐えているのでしょう。

以上が論文の簡単な要約となります。D. eduleが尋常ではない寿命を持つこと、あまりに過酷な環境ゆえに実生苗がほとんど死滅してしまうこと、そしてその過酷な環境に耐える仕組みがあることが分かりました。このような調査は単にD. eduleの科学的な知見が増えるだけではなく、将来保護を行うための基本的な下地にもなります。しかし、このような地味な研究には資金が中々出ない現状のため、多くの植物が調査すらされずに人知れず開発や違法採取で絶滅していることは大変悲しいことです。著者はD. eduleの繁殖にも関わっているようですから、そこら辺の活動についてもそのうち記事に出来たらと思っておりません。


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3年前くらい前のことですが、大型の園芸店にDioon eduleという海外のソテツの苗が販売されていることに気が付きました。冬だったこともあり葉が黄色く変色していたりして、購入を躊躇う状態でした。その後、2~3の園芸店やホームセンターで見かけましたが、基本的に状態は悪く入荷からそれなりに時間が経っていることがうかがえます。流石に復活可能かわからないので購入しませんでしたが、その後はDioon eduleを見かけることはありませんでした。おそらくは、Dioon eduleの種子をある程度の数輸入した一過性の実生苗だったようです。しかし、去年のクリスマスに千葉で開催された木更津Cactus & Succulentフェアで、なんとDioon eduleを販売していたので購入しました。 ということで、Dioon eduleとは一体どのようなソテツなのでしょうか?

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Dioon edule

D. eduleの学名は、1843年に命名されたDioon edule Lindl.です。D. eduleはまあまあ異名が多いため、以下に年表で示しました。
1844年 Zamia maelenii Miq.
1845年 Platyzamia rigida Zucc.
1848年 Dioon imbricatum Miq.
1855年 Dioon aculeatum Lem.
1861年 Dioon edule f. imbricatum
                  (Miq.) Miq.
1863年 Dioon strobilaceum Lem.
1868年 Dioon edule var. imbricatum
                  (Miq.) Miq.
1884年 Macrozamia littoralis
                   Liebm. ex Dyer
              Macrozamia pectinata 
                   Liebm. ex Dyer
1899年 Dioon edule var. lanuginosum
                  (J.Schust.) Wittm.
1932年 Dioon edule f. lanuginosum
                   J.Schust.
              Zamia rigida Karw. ex J.Schust.

さらに、現在は独立種とされているDioon angustifoliumは、かつてDioon edule f. angustifolium、Dioon edule var. angustifolium、Dioon edule subsp. angustifoliumなどと呼ばれていました。幾つかのサイトでD. eduleの情報を収集しましたが、あるサイトではD. eduleはD. merolaeやD. holmgeniiと関連があるなどと書かれていましたが、遺伝子解析の結果ではD. eduleはD. angustifoliumと近縁です。分布が近い種は遺伝子も近縁な傾向があり、D. eduleとD. angustifoliumは分布が近いと言えます。
他にも現在は認められていないD. eduleの変種があります。Dioon edule var. latipinniumはDioon pectinatumに、Dioon edule var. sonorenseはDioon sonorenseとして現在ではそれぞれ独立種とされています。

さて、一般的なD. eduleの情報を探したところ、D. eduleはメキシコの海抜1500mにまで見られるということです。D. eduleは中型のソテツで、高さ1~1.5(~3)mで、直径は20~30cmになります。成熟した葉は15~20枚で、長さ0.7~1.6mとなり、小葉は片側120~160にもなります。Dioonの中でも小葉の縁にトゲがないことが、D. eduleの特徴とされているようです。D. eduleは乾燥した森林地帯に生え、浅い土壌の過酷な地域です。

Dioon eduleは大変美しいソテツで、育つほど葉は長くなり小葉の数も増えていきます。小葉は細長く隙間なく整然と並び、ある程度育ったD. eduleの葉は涼しげで非常に美しいものです。しかし、Dioon eduleは環境の悪化などにより個体数の減少が指摘されている貴重なソテツです。輸入種子由来の実生の流通が望ましく、違法採取株由来かもしれない現地球の販売はあまり望ましくありません。正規のルートで輸入された個体でも、違法採取株がファームを転々として日本に輸入された可能性も捨てきれません。
Dioon eduleはDioonの代表種です。異名が多くE. eduleから分離された種類があることからも、それはうかがえます。そのため、Dioonの中ではD. eduleは割と研究されており、論文も多少は出されています。明日はそんなD. eduleについて調査した論文をご紹介しましょう。


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ザミア・フルフラケア(Zamia furfuracea)はメキシコ原産のソテツの仲間です。日本でザミア・プミラ(Zamia pumila)の名前で販売されているのは、基本的にフルフラケアです。プミラとフルフラケアが混同されているのはおそらく日本だけで、海外の園芸サイトでは明確に別種とされています。まあ、実際のところそれほど似ているわけではないので、実際に見て間違うことはないでしょう。
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Zamia furfuracea(神代植物公園)
①葉の幅が広い、②葉の先端が丸い、③葉は皮質でぶ厚い、④黄色~褐色の短い毛がある、という特徴があればフルフラケアです。逆を言えば、プミラは葉の幅が狭く、葉の先端が尖り、葉は薄く、毛はないということになります。見分け方は簡単ですね。
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毛に被われたフルフラケアの新葉

さて、そんなフルフラケアですが、原産地のメキシコでは個体数の減少により絶滅が危惧されているそうです。そのあたりについて詳しく調べた2022年の論文、『Genetic diversity and differentiation in Zamia furfuracea (Zamiaceae) : an endangered, endemic and restricted Mexican Cycad』を本日はご紹介します。
Z. furfuraceaはメキシコ南東部の沿岸に固有のソテツで、生態的および園芸的に非常に重要です。主に牧畜地の拡大、都市開発、環境の悪化などにより減少しています。論文では6つの集団の遺伝子の多様性を確認しました。

Z. furfuraceaは世界の園芸市場で2番目に多く取引されているソテツです。そのため、違法採取にさらされてきました。さらに、開発なども影響し、過去40年で35%の減少を引き起こしました。なぜこのような調査を行う必要があるのかを説明しましょう。自生地の環境や個体数の調査は保護のための最低限の情報ですが、遺伝的多様性の調査は将来を見据えた研究と言えます。なぜなら、個体数の減少と個体群の分断が合わさると、遺伝的多様性が減少し様々な弊害が引き起こされる可能性があるからです。遺伝的多様性が失われると、やがて個体群の遺伝子が均一化してしまい、近親交配に近い状態となります。実際に野生のフルフラケアの実生の発芽率が低下している地域もあるという報告があります。
論文には述べられていませんでしたが、遺伝子が均一化してしまうと、その個体群が特定の病気に対して抵抗力がない場合、絶滅してしまいます。遺伝的多様性が豊富であれば、ある個体は病気に弱くても他の個体は抵抗性があれば問題はないわけです。実際に遺伝的に均一であったことで、危機に陥った有名な植物があります。それは、バナナです。種子ではなくて親株から出てくる子株で増やしているバナナは、遺伝的にクローンですから過去に病気の流行により壊滅的なダメージを受けてしまいました。現在我々が食べているバナナはその病気に対して耐性のある品種で、実は昔と異なる品種です。現在のバナナの品種は耐病性と輸送中の傷みにくさにより選ばれたため、以前と比べたら味や食感はあまり良くないとされているようです。とはいえ、現在のバナナもクローンで増やされていますから、やはり新たな病原菌の登場により最近では壊滅的なダメージを受ける農園も出てきてしまいました。現在、新たな耐病性品種を見つけることに躍起になっているそうです。

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Zamia furfuracea

脱線してしまったので、話を戻しましょう。
もともとフルフラケアは他のソテツと比較して遺伝子の多様性が高いとされています。しかし、都市開発などにより自生地も侵食され個体数も減少し、各個体群は孤立してしまいました。個体数は1つの個体群に100個体程度とされているようです。実際に創始者効果(※)やボトルネック効果(※※)が遺伝子解析により判明しており、遺伝的多様性は低下しています。個体群により遺伝的多様性は異なり、遺伝的多様性が高い群と低い群がありました。著者は遺伝的多様性の高い群をまずは重点的に保護すべきではないかと主張しています。

※創始者効果 : 祖先となった少数個体の遺伝子頻度の偏りに影響を受けること。
※※ボトルネック効果 : 個体数の激減により遺伝的多様性の低い集団が出来ること。


以上が論文の簡単な要約となります。
最近ではそれほど珍しくないフルフラケアですが、自生地では絶滅が危惧される希少種となってしまっています。大変悲しいことです。
しかし、研究者もなんとかしようと行動しています。例えば、Zamia integrifolia(異名Z. floridana)やZ. furfuraceaをモデルとして用いて、その繁殖効率を高めることを目的とした研究がなされています。これは、野生個体の違法採取を防ぐために、人工繁殖を確立して実生が流通してしまえは良いという考え方です。現実問題として違法採取を取り締まるだけでは効果が薄いということもあり、考えだされた現実的な方法です。このように研究者もソテツの保護に貢献していますが、自生地の破壊に対しては対策のしようがない状態です。とはいえ、保護のための情報を得るための研究は、保護活動を開始するための根拠となりますから、このような研究が行われることは非常に有用です。フルフラケアが絶滅しないことを切に願っております。

DSC_1655
フルフラケアの花。小さな実生苗から育てていますが、ようやく花が咲きました。


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Dioonは中米からメキシコまでに分布する大型のソテツです。その涼しげで優美な葉から、日本でもDioon eduleなどはまれに栽培されることがあります。私も世界最大のソテツと言われるDioon spinulosumの苗を育てています。このDioon spinulosumについては、発見されたばかりで情報が少なかったため研究者が現地を訪れて調査したという記事を書きました。なんと1909年の論文でした。
DSC_2037
Dioon spinulosum

ソテツ自体は古代から存在する起源の古い植物です。ソテツの分類について記事にしましたが、Dioonは微妙な立ち位置にいるようです。

さて、ソテツについては何度か記事に書いてきましたが、Dioonの分類についての論文を見つけました。しかも、ただの分類ではなく、その進化と地理的な分布について考察する壮大な内容の論文です。Brian L. Dorsey, Timothy J. Gregory, Chodon Sass & Chelsea D. Spechtの2018年の論文、『Pleistocene diversification in an ancient lineage : a role for glacial cycles in the evolutionary history of Dioon Lindl.(Zamiaceae)』です。
Dioonの遺伝子を解析することにより、4つのグループにわけられることがわかりました。ソテツは古い時代から存在するにも関わらず、このグループは割と新しい時代に急速に進化したことが推測されます。

Dioonの分子系統
Dioonはメキシコの太平洋側に広く分布するWestern Clade、メキシコ南部のくびれ部分の太平洋側に固まって分布するSouthern Clade、メキシコのメキシコ湾沿いに分布するEdule Clade、Edule Cladeより南のメキシコ湾南部に分布するSpinulosum Cladeにわけられます。
下のDioonの分子系統を見ると、種分化の方向はSpinulosum Clade→Edule Clade→Southern Clade→Western Cladeとなっています。つまり、もともとメキシコ南部が起源で、北上しメキシコ湾沿いだけではなくて、やがて太平洋側にも分布が拡がったように見えます。

Dioonの分子系統
        ┏Westrn Clade
    ┏┫
    ┃┗Southern Clade
┏┫
┃┗━Edule Clade

┗━━Spinulosum Clade

Western Clade
                ┏D. sonorense1
┏━━━┫
┃            ┗D. sonorense2

┫            ┏━━━D. tomasellii1
┃┏━━┫
┃┃        ┗D. tomasellii2
┗┫
    ┃    ┏━D. stevensonii1
    ┗━┫
            ┗━━D. stevensonii2

Southern Clade
        ┏━━D. planifolium1
        ┃
┏━┫    ┏D. caputoi1
┃    ┗━┫
┃            ┗D. caputoi2

┃    ┏━D. holmgrenii1
┃    ┃
┃┏┫    ┏D. holmgrenii2
┃┃┗━┫
┃┃        ┗━━D. holmgrenii3
┃┃
┃┃┏━━━D. merolae1
┃┃┃
┣┫┃┏━━━D. merolae2
┃┃┃┃
┃┃┃┃        ┏━D. merolae3
┃┃┣┫┏━┫
┫┃┃┃┃    ┗━D. merolae4
┃┗┫┗┫
┃    ┃    ┃┏D. merolae5
┃    ┃    ┗┫
┃    ┃        ┗━D. merolae6
┃    ┃
┃    ┗━━━━D. planifolium2

┃        ┏━━D. purpusii1
┃    ┏┫
┃    ┃┗━━━━D. argenteum
┃┏┫
┃┃┗━D. purpusii2
┗┫
    ┃        ┏━━━━D. califanoi1
    ┃┏━┫
    ┗┫    ┗━D. califanoi2
        ┃
        ┗━━━━D. purpusii3

Edule Clade
┏━━━D. edule1

┃┏━━━━━D. angustifolium1
┫┃
┃┃┏━━━━━━D. angustifolium2
┗┫┃
    ┃┃┏━━━━D. edule2
    ┗┫┃
        ┃┃    ┏━━━D. edule3
        ┗┫┏┫
            ┃┃┗━━━D. edule4
            ┃┃
            ┗┫        ┏━D. edule5
                ┃    ┏┫
                ┃    ┃┗━━━━D. edule6
                ┗━┫
                        ┃┏━━D. edule7
                        ┗┫
                            ┗D. edule8

Spinulosum Clade
                        ┏D. rzedowskii1
            ┏━━┫
            ┃        ┗D. rzedowskii2
┏━━┫
┃        ┃    ┏━D. spinulosum1
┃        ┗━┫
┫                ┗━━D. spinulosum2

┃            ┏━━D. mejiae1
┗━━━┫
                ┗━D. mejiae2


更新世の進化
遺伝子解析は遺伝子の変化の速度を計算することにより、どのくらい前に種同士が分かれたのかを推測することも出来ます。その推測によると、中新世後期にSpinulosum Cladeと他3Cladeが分かれ、更新世に各Cladeは急激に種類が増えたことが示唆されています。これは、一体どういうことなのでしょう?
更新世は新生代第四紀の約258万年前から約1万年前までの時代です。更新世は氷期と氷期の間の暖かい間氷期を15回繰り返しました。どうやら、この氷期の繰り返しがDioonの急激な進化に関係があるようです。
気温の急激な上昇は植物層の標高を上げます。分かりにくいので、日本の植物で例えましょう。例えば、氷期で寒かった時期に、本州に寒帯~亜寒帯の植物が分布を拡大しました。しかし、やがて温暖な間氷期が訪れると、寒帯~亜寒帯の植物は育つことが出来なくなり、山を登りはじめます。山は標高が高くなるほど気温が低下しますから、適した低い気温の標高に分布するようになります。これらの植物を私達は高山植物と呼んでいるのです。この時、高山植物はもはや平地では育ちませんから、違う山同士の植物で交配出来なくなります。つまり、それぞれの山で孤立し交わらないため、山ごとに異なる進化をして別種になっていくのです。
どうやらDioonも同じで、氷期と間氷期の繰り返しにより、標高が上がると孤立し、標高が下がると分布を拡げるということが、急速な種類の増加に繋がっていると考えられるのです。Dioonは高山植物ではありませんが、育つのに適した気温があります。暖かくなりすぎれば、最適な気温帯を求めて山を登りはじめるのです。
ソテツは生きた化石と呼ばれますが、Dioonに関しては非常に新しい種類ばかりであることがわかりました。更新世は258万年前からですから、あるいはすごい昔のような気もしてしまいますが、数億年前に誕生したソテツからみたら最近の話です。まあ、
人類誕生が600~700万年前と考えられていますから、人類よりもDioonの方が新顔です。もちろん、Dioonの祖先の誕生はさらに古い時代ですけど、生きた化石の急激な進化は意外性があります。ただの遺伝子解析による種類の遠近だけではなく、進化の理由まで考察する大変面白い論考でした。こういう良い論文があると紹介しがいがありますね。



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フロリダソテツあるいはフロリダザミアは名前の通りフロリダに分布するソテツです。一般的にはZamia floridanaの学名で苗が販売されています。しかし、現在のところ学術的に認められているフロリダソテツの学名はZamia integrifoliaです。これはイギリス王立植物園のデータベースを根拠としています。そして、私もことあるごとにそう主張してきました。ただし、そう言うのもイギリス王立植物園がそう主張しているからというだけではなく、ちゃんとその理由もあります。それは、国際命名規約にある、先に命名された学名を優先するという「先取権の原理」をもとにしています。
簡単に結論だけまとめると、Z. floridanaの命名よりZ. integrifoliaの命名の方が早いというだけの話です。しかし、このことについて過去に疑義が提出されていることに気が付きました。しかも、その疑義に対する回答を提案している論文まで見つけました。果たして、一体何が問題だったのでしょうか? また、それに対する回答案とはどのようなものだったのでしょうか?

DSC_1976
Zamia floridanaか?Zamia integrifoliaか?

先ずは、Z. integrifoliaに対する疑義を提出した2009年のDaniel B. Wardの論文、『ZAMIA FLORIDANA (ZAMIACEAE), THE CORRECT NAME OF THE FLORIDA CYCAD』を見てみましょう。

著者は主張するところによると、Zamia integrifoliaはZamia pumilaの同義語として引用されたため違法な学名であり、Zamia floridanaが正しい学名であるとしています。ことの経緯を説明しましょう。
論文では解説もされず詳細は不明ですが、ニュアンス的にどうやらZ. integrifoliaはZ. pumilaと混同されてきたようです。Stevensonの1987年、1991年の西インド諸島のソテツのレビューでは6種類が区別されており、Z. integrifoliaの学名を採用しているようです。また、Landryの1993年の論文でもZ. integrifoliaの学名をを採用し、Z. pumilaと区別しました。

ここからは、話が少しややこしくなるため、論文の内容に進む前にフロリダソテツの学名について少しまとめます。
フロリダソテツが初めて記載されたのは、1789年のことです。記載はWilliam Aitonによるものです。著者が主張するZ. floridanaは1868年にA. DeCandolleにより記載されました。命名には79年の差があります。

Zamia integrifolia L. f., 1789
Zamia floridana A. DC., 1868

Z. integrifoliaを命名したのは現在の学名のシステムを考案したCarl von Linneの息子のLinne filiusです。この"filius"は名前ではなくて息子という意味ですから、"Linne filius"は「リンネの息子」という意味です。実は親子で同じ名前なのでこのような表現となっています。

さて、論文の内容に戻ります。
どうやら著者はZ. integrifolia=Z. pumilaと捉えているようで、Linne filiusがZ. integrifoliaについて同義語であるZ. pumilaを引用している誤りを犯しているといいます。詳しい経過を追って見てみましょう。
1763年にCarl von LinneがZ. pumilaを命名しました。Linneはラテン語の"Spadix more fructus Cupressi divisus in floscules"という語句を付けました。ラテン語はわからないのですが、「小さく分割された肉質花序、ヒノキより大きい球果」という意味でしょうか?
一方、Linne filiusは父親とは独立してZamiaを研究したようです。Linne filiusはロンドンでWilliam Aitonと仕事をし、執筆の手伝いもしました。Z. integrifoliaが初めて公表されたAitonの1789年の出版「Iortus Kewemis」では、Zamiaの説明はLinne filiusによるものです。Linne filiusはZ. integlifoliaにラテン語で"foliolis subintegerrimis obtusiusciilis miidcis rectis nitidis, stipites inermi"と記しました。ここで重要なのは、"stipites inermi"=「除外された異名」です。Linne filiusはZ. pumilaのみを参照として引用し、これを「除外された異名」と述べました。この除外された異名という文言がフロリダソテツの命名に関する不確実性の起源であると著者は述べています。
著者はフロリダソテツの命名に関する質疑応答を、国際命名規約の特派員とメールでやり取りしました。このあたりのやり取りは、規約に関する話ですから、私にはよく理解できない部分もあります。 しかし、内容的には、Linne filiusの「除外された異名」というワードについての議論が重要なようです。

ここで、また一旦立ち止まってデータベースの資料を漁ってみます。Aitonの1789年の書籍でLinne filiusはZ. integlifolia、Z. furfuracea、Z. debilisを命名しましたが、これらはZ. pumilaから分離されたものかもしれません。ちなみに、この内Z. debilisは現在ではZ. pumilaの異名とされています。


論文の内容に戻ります。どうやら、Linne filiusはZ. pumilaに複数の種が含まれていると考えていたようです。そして、著者はZ. integlifoliaからZ. pumilaが完全に除外出来ていないと考えているようです。しかし、特派員は除外出来ていると捉えており、Z. integlifoliaを異名とすることに慎重な姿勢です。

以上が論文の簡単な要約となります。国際命名規約の特派員とのやりとりは、実際には規約を巡る長い応報や、Linneが実際に植物を見たどうかといった細かい話が長々と続きますが、詳細は割愛させていただきました。最後に著者は、Z. integlifoliaを廃した場合でも、Z. floridana以外の命名もされているため注意が必要であるとして締めています。

長くなりましたが、続いてDaniel B. Wardの主張に対する返答をお示ししましょう。2011年のDennis W. Stevenson & James L. Revealの『(2004) Proposal to conserve the name Zamia integrifolia (Cycadaceae) with conserved type』という論文です。

この論文はZ. integlifoliaからZ. pumilaが排除出来ていることを示しています。特にLinne filiusの「除外された異名」というワードに対して、これをZ. pumilaと分ける重要な情報と捉えているようです。しかし、著者はWardの意見を尊重し、解釈の検討を提案しています。ただし、著者はZ. integlifoliaが長く使用された一般的な名前であり、保存されるべきであると考えています。
もし、Z. integlifoliaが廃された場合、Z. floridanaではなく、Z. media、Z. tenuis、Z. dentataといった学名が優先される可能性があります。しかし、最も古く一般的に使用されるZ. integlifoliaという名前を保存する事により、命名法上の安定性が最大となるとしています。

さて、論文の内容は以上ですが、解説が必要でしょう。実はZ. floridanaの命名より前に幾つかの学名が提案されています。以下に示します。2本目の論文にも出てきたZ. mediaやZ. tenuisがあります。Encephalartos pruniferは関係なさそうですが、Z. integlifoliaと同じ植物に対して命名されているため、この学名も候補です。その場合、Zamia pruniferという名前に変更されます。現在命名されているZamiaの学名と被らなければ有効でしょう。
Zamia integrifolia L. f., 1789
Zamia media Jacq., 1798
Zamia tenuis Willd., 1806
Encephalartos prunifer Sweet, 1839
Zamia floridana A. DC., 1868
 
ちなみに、論文に出てきたZ. dentataは、現在ではZ. pumilaの異名とされているようです。ですから、Z. integlifoliaの代わりにはなりません。
Zamia pumila L., 1763
Zamia dentata Voigt, 1828


さて、現在の学名はどうなっているのかというと、イギリス王立植物園のデータベースでは、Z. floridanaではなくZ. integlifoliaが正式な学名とされています。しかし、注意が必要なのは、学名の後ろに"nom.cons."という表記があることです。
nom.cons.とはラテン語でnomen conservandumの略で、英訳するとconserved nameで、いわゆる保存名(保留名)のことです。保存名とは命名規約によると「広く使用される名前が先取権によりsynonym(異名)として処理されると学名が混乱する場合」に適応される名前です。この場合は、学名がZ. integlifoliaではなくZ. mediaやZ. tenuisとされた場合に混乱が生じかねないとの判断でしょう。

Z. integlifoliaはどうやら、海外でも園芸的にはZ. floridanaの名前で流通しており、それは日本でも同じです。おそらくは、輸入種子もZ. floridanaの名前で輸入されているのでしょう。論文でもZ. integlifoliaとZ. floridanaが混雑しており、好ましいとは言えない状況です。しかし、Z. integlifoliaには疑義があったとしても、Z. floridanaは「流通している名前である」こと以外に使用される必然性がありません。しかし、命名規約上は「先取権の原理」が優先事項ですから、Z. floridanaが今後、正式な学名として採用される可能性は基本的にないと言えます。


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ソテツは起源の古い植物で、同じ裸子植物であるイチョウとともに生きた化石と呼ばれることがあります。このソテツの分類ははっきりせず、図鑑ごとに違ったりもします。細かく分類を分ける場合もありますが、最近は日本のソテツ(蘇鉄)を含むCycas属をソテツ科、Cycas属以外のZamia属などをザミア科とする分類方法もあります。
さて、それでは遺伝的にはどのように分類されるのでしょうか? また、ソテツにはCycas、Zamia、Encephalartos、Macrozamia、Dioon、Stangeriaなど沢山の属がありますが、それぞれの関係性はどのようになっているのでしょう?
本日ご紹介するのは、ソテツの遺伝子を解析して系統関係を探ったK. D. Hill, M. W. Chase, D. W. Stevenson, H. D. Hills & B. Schutzmanによる2003年の論文、『THE FAMILIES AND GENERA OF CYCAD : A MOLECULAR PHYLOGENETIC ANALYSIS OF CYCADOPHYTA BASED ON NUCLEAR AND PLASTID DNA SEQUENCES』です。

論文ではまずソテツについての経緯を示しています。現在の学名のシステムを作ったLinneは、Cycas circinalisとZamia pumilaを記載しましたが、その後は調査の進展により1800年までに7種、1850年までに33種、1900年までに85種が記載されました。 ソテツはソテツ目という単一の目にすべて含まれ、(この論文が書かれた2003年の時点で)3~5科、10~12属、約300種とされています。
分類は変遷を繰り返してきました。ソテツは1789年にde Jussieuによりシダとされましたが、1809年にRichardによりシダとヤシの間にある分類群とされました。1827年のBrownと1829年のBrongniartにより針葉樹との類似性が観察され、これが1830年のLindleyや1843年のLehmannによりより高次の分類群の確立に繋がりました。1837年にRichenbachによりソテツ科からザミア科を分離しましたが、当時は受け入れられなかったようです。1868年にde Candolleはすべてのソテツを1科にまとめました。1959年および1961年にJohnsonはStangeria科を創設し、ソテツ科、ザミア科とあわせて3科とし、後続の研究者もこれに従いました。1981年にStevensonはBowenia科を創設し、StangeriaとBoweniaの間に関連性があるとしました。
その後、1990年にChigua、1998年にEpicycasが新たに記載され、その分類については議論の余地があります。

ソテツ目の分子系統
                                        Bowenia
                                ┏━B. serrulata
                ┏━━━┫
                ┃            ┗━B. spectabilis
                ┃                    Encephalartos
                ┃        ┏━━E. leavifolius
                ┃        ┃
                ┃    ┏┫┏━E. ghellinkii
                ┃    ┃┗┫
            ┏┫    ┃    ┗━E. arenarius
            ┃┃┏┫            Lepidozamia
            ┃┃┃┃    ┏━L. hopei
            ┃┃┃┗━┫
            ┃┃┃        ┗━L. peroffskyana
            ┃┃┃                Macrozamia
        ┏┫┃┃            ┏M. moorei
        ┃┃┗┫        ┏┫
        ┃┃    ┃        ┃┗M. communis
        ┃┃    ┃    ┏┫
        ┃┃    ┃    ┃┗━M. elegans
        ┃┃    ┃┏┫
        ┃┃    ┃┃┗━━M. pauliguilielmi
        ┃┃    ┗┫
        ┃┃        ┗━━━M. fraseri
        ┃┃                        Dioon
        ┃┃                ┏━D. edule
    ┏┫┗━━━━┫
    ┃┃                    ┗━D. tomasellii
    ┃┃                           Ceratozamia
    ┃┃                        ┏━C. miqueliana
    ┃┃┏━━━━━┫
    ┃┃┃                    ┗━C. norstogii
    ┃┃┃                       Chigua
    ┃┃┃            ┏━━━C. restrepoi
    ┃┃┃            ┃       Zamia
    ┃┃┃        ┏┫    ┏━Z. lindenii
┏┫┗┫        ┃┗━┫
┃┃    ┃        ┃        ┗━Z. skinneri
┃┃    ┃    ┏┫
┃┃    ┃    ┃┃        ┏━Z. floridana
┃┃    ┃    ┃┗━━┫
┃┃    ┃┏┫            ┗━Z. pseudo
┃┃    ┃┃┃                     parasitica
┃┃    ┃┃┃
┃┃    ┗┫┗━━━━━Z. paucijuga
┫┃        ┃                   Microcycas
┃┃        ┗━━━━━━M. calocoma
┃┃                               Stangeria
┃┗━━━━━━━━━S. eriopus
┃                                   Cycas
┃                                ┏━C. circinalis
┃                        ┏━┫
┃                        ┃    ┗━C. furfuracea
┗━━━━━━┫
                            ┃    ┏━C. revoluta
                            ┗━┫Epicycas
                                    ┗━E. miquelii


上に示しました分子系統を見ますと、Chigua属はZamia属に、Epicycas属はCycas属に含まれるということです。
①Cycas属
Cycas属は分岐の根元にあり、他のソテツから離れています。分類学的にはCycasとその他のソテツという分け方が妥当かもしれません。Cycas属はインド洋から南アジア、東南アジア、東アジア、ニューギニア島を含まないオセアニアの島嶼部に分布します。

②Stangeria属
Stangeria属はCycasの後に分岐したグループです。しかし、Bowenia属はBowenia属との類似性をStevensonに指摘されていましたが、遺伝子解析ではStangeria属に近縁ではありませんでした。Stangeria属はアフリカに分布します。

③オーストラリアのソテツ
Macrozamia属、Lepidozamia属、Encephalartos属は南半球Cladeです。形態学により指摘されてきたLepidozamia属とMacrozamia属の近縁性より、Lepidozamia属とEncephalartos属の方が近縁でした。ただし、Macrozamia属とLepidozamia属はオーストラリアに分布し、Encephalartos属はアフリカに分布します。Encephalartos属は地理的にはかなりの距離がありますから、系統関係にはやや疑問があります。

④アメリカ大陸のソテツ
Microcycas属はZamia属の姉妹群ですが、Ceratozamia属はMicrocycas属+Zamia属の明確な姉妹群ではありませんが、分析結果では他の属よりは近縁なようです。しかし、形態学的な系統関係の想定よりも、Ceratozamia属はMicrocycas属+Zamia属と遺伝的な違いは大きいようです。しかし、Ceratozamia属、Microcycas属、Zamia属はすべて中央アメリカ周辺に分布します。

⑤Bowenia属、Dioon属
Bowenia属はオーストラリアに分布し、③のMacrozamia属、Lepidozamia属、Encephalartos属に関連性があります。Dioon属はアメリカ大陸に分布しますが、Bowenia属を含むグループの姉妹群としました。
しかし、著者はBowenia属、Stangeria属、Dioon属は、遺伝子解析でもややあやふやな部分があるため、さらなる解析が必要であるとしています。


分かりにくいのでまとめます。

            ┏━━Bowenia
            ┃       (オーストラリア)
        ┏┫    ┏Encephalartos
        ┃┃┏┫(アフリカ大陸)
        ┃┃┃┗Lepidozamia
        ┃┗┫    (オーストラリア)
        ┃    ┗━Macrozamia
        ┃            (オーストラリア)
        ┣━━━Dioon
    ┏┫            (アメリカ大陸)
    ┃┃     ┏━Ceratozamia
    ┃┃     ┃   (アメリカ大陸)
    ┃┗ ━┫┏Microcycas
┏┫         ┗┫(アメリカ大陸)
┃┃             ┗Zamia
┃┃                 (アメリカ大陸)
┫┗━━━━Stangeria
┃                     (アフリカ大陸)
┗━━━━━Cycas
                         (アジアなど)


以上が論文の簡単な要約です。ここからは、私の軽い感想を述べます。
ソテツ目の中で最も祖先的なのはCycas属で、おそらくは熱帯アジアが起源なのでしょう。もちろん、もともと広く地域に分布していて、やがて分布域が減少して残ったのが現在の分布である可能性はあります。化石記録については知らないので、なんとも言えません。
Cycas属の次に現れるStangeria属はアフリカ大陸原産ですが、Cycas属がマダガスカルまで到達していることを考えたらそこまで奇妙な結果ではないのかもしれません。
ここからは2~3グループに別れます。まず、アメリカ大陸に分布するCeratozamia属、Microcycas属、Zamia属は近縁です。アフリカ原産のStangeria属からどのように伝播したのでしょうか。南アメリカ東岸とアフリカ大陸西岸はパズルのようにピッタリ合わせられることが知られていますが、両者はもともと1つでした。ですから、大陸が分離する前にStangeria属あるいはStangeria属の祖先が広く分布しており、分離後にアメリカ大陸で
Ceratozamia属、Microcycas属、Zamia属が進化したのかもしれません。
Dioon属はやや立ち位置が微妙なのでグループを分けました。Dioonも他のアメリカ大陸原産属と同じように進化したのでしょう。
最後にMacrozamia属、
Lepidozamia属、Encephalartos属、Bowenia属ですが、Lepidozamia属、Bowenia属はオーストラリアに分布していますから、近縁なのも分かります。しかし、Encephalartos属がアフリカ原産なのはなぜでしょうか? しかも都合の悪いことに、Bowenia → Macrozamia → Lepidozamia・Encephalartosのように見えますから、まるでオーストラリアからアフリカに派生したかのようです。おそらくは、オーストラリアとアフリカ大陸が1つだった時代の共通祖先が2つに別れたのかもしれませんが判然としません。
どうにもあやふやな部分や伝播が気になります。後続の研究がないか調べてみます。


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Dioon spinulosumは最近販売されるようになったソテツの仲間です。種子のついた苗をたまに園芸店で見かけます。私も苗を園芸店で購入しましたが、以前にD. spinulosumについての記事を書いた際、意外と情報がないことに気が付きました。

とりあえず、D. spinulosumが命名された1883年の論文を探してみましたが、残念ながら見つかりませんでした。まあ、140年近く前の古い論文ですから仕方がないことです。しかし、代わりに1909年に書かれたD. spinulosumについての論文を見つけました。Charles J. Chamberlainの『Dioon spinulosum』です。いや、こちらも100年以上前の古い論文ですけどね。
論文を読むと、当時はDioonはまだ3種類しか見つかっていなかったようです。D. edule、D. spinulosum、D. purpusiiですが、D. purpusiiはほんの数ヶ月前に記載されたばかりで、D. eduleとよく似ていたために間違われてきたとあります。

論文の中では1883年のDioon spinulosumを公表したEichlerの記述について書かれております。しかし、どうやら記載時のD. spinulosumの葉は最大65cmしかないため、まだ若い苗だったのかもしれません。D. spinulosumはメキシコのVera Cruz州Cordobaの苗床由来で、そこのガーデナーによるとTuxtla近くに自生しているとのことです。ただ、この時は球果が見つからなかったので、Dioonであるか疑わしいと思われるかもしれないとEichlerは述べています。
D. spinulosumははじめはDyerにより発見されたようで、産地はProgresoとされています。おそらくは栽培された個体から標本が作られたようです。

補足 : この時(1909年)の学名はDioon spinulosum Dyerとされていることから、EichlerはD. spinulosumをはじめて記載したのはDyerだと考えていたようです。しかし、現在ではDioon spinulosum Dyer ex Eichlerとなっていることから、どうやらDyerの記述は学名を命名する際の要件を満たしていなかったのでしょう。それを、Eichlerが正式に記載したという形になっています。

著者は1906年のメキシコへの旅行中、Vera Cruzの公園でD. spinulosumの小さな個体を見つけましたが、野生個体であるかはわかりませんでした。州捜査局のAlexander M. GawはそのD. spinulosumがVera Cruzの南東部の町Tlacotalpamに由来していることを突き止めました。また、ほとんどの人がD. spinulosumとD. eduleを区別していないことにも気が付きました。

1908年に著者はD. spinulosumを採集するためにメキシコ南部を訪れました。Tuxtepecに向かう途中のTierra Blanca付近でD. spinulosumを沢山見かけるらしく、実際にTierra Blancaの西部と少し北にある山でD. spinulosumを見つけました。南に行くほど沢山生えているという情報があり、実際にTierra Blancaから離れ、Vera Cruzの南約60マイルには非常に豊富で巨大なD. spinulosumが見られました。土地は石灰岩地でD. spinulosumは日陰を好むようです。

Tierra Blancaの南西部約40マイルのPapaloapam川沿いの町Tuxtepecから、半日ほど馬に乗ると豊富なD. spinulosumがある山に着きました。場所によってはD. spinulosumが唯一の大型植物であり、Dioonの森と言っても過言ではありませんでした。今回の調査では高さ12mのD. spinulosumを発見しましたが、BarnesとLandは著者の数ヶ月後にTierra Blancaを訪れ高さ16mのD. spinulosumを発見したということです。著者は、「細い幹と優雅な曲線を描く葉は、Dioon eduleのずんぐりした幹と堅くまっすぐ上の伸びる葉とは対照的」と称します。
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Dioon spinulosum
(1909, C. J. Chamberlain)


幹の表面の畝模様は樹冠により形成されるため、樹齢を推測する根拠となります。これは、D. eduleは明瞭で樹冠が2年持つことがすでに明らかであるため、幹を見ればD. eduleの樹齢がわかるというものです。しかし、D. spinulosumは幹の表面の畝模様が不明瞭でありそもそもはっきりしないだけではなく、D. eduleのように樹冠が2年持つのか不明ですから、D. spinulosumの樹齢の根拠にはならないかもしれません。それでも、D. eduleよりもD. spinulosumは生長が早い可能性があり、最大個体でも樹齢400年は超えないのではないかと著者は考えております。著者はD. spinulosumの10mの個体は、D. eduleの1mの個体より若いのではないかと感じているようです。

D. spinulosumは急峻な崖地に生えるものは、根が岩に沿って垂れ下がり、12m以上地上に露出することもあります。
幹はD. eduleほど硬くないとのことです。
Eichlerの観察では長さ65cmの葉では小葉は片側で38枚、Dyerの観察では1mの葉で小葉は片側で70枚でした。高さ2m以上で葉のサイズは最大になりますが、フルサイズの葉は2.2mとなり片側117枚の小葉があります。
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Dioon spinulosumの小葉とトゲ
(1909, C. J. Chamberlain)

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我が家のDioon spinulosum
小葉はまだ片側17枚に過ぎません。


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Dioon spinulosumの巨大な球果
(1909, B. J. Chamberlain)
球果は裸子植物最大で、3月頃に最大15kgに達します。

以上が論文の簡単な要約となります。まだ、Dioon spinulosumの報告から年月が経っていないこともあり、著者も確かめながらの探索的な内容となっています。「半日馬に乗って」という表現を見ると、そのような時代の論文かと改めて思いました。しかし、このような古い論文が残っていること、さらにはPDF化して保存と公開をしてくれた方には多大な感謝を述べなくてはならないでしょう。


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日本に生えるソテツ(蘇鉄、Cycas revoluta)は、針葉樹やイチョウなどと同じく裸子植物です。身近な針葉樹と言えば杉や桧ですが、花粉症の原因となり問題となっています。これは杉や桧が風媒花であることが重要です。風媒花は文字通りの風任せなため、数打ちゃ当たるの戦法で大量の花粉を撒き散らす必要があるのです。
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Cycas revoluta

植物の進化は陸上に上陸後、コケ植物→シダ植物→裸子植物→被子植物という順番でした。被子植物の登場により、昆虫に受粉してもらうための目立つ花が登場しました。針葉樹の花が目立たないのは、昆虫にアピールする必要がないからです。同じように、イネ科やカヤツリグサ科の植物の花も風媒花なため、非常に目立たない地味な花です。ですから、裸子植物は虫媒花ではなく、風媒花とされてきました。
しかし、1986年に海外のソテツであるZamia furfuraceaがゾウムシにより受粉されることが報告されました。それ以来、1987年にZamia pumilaがゾウムシとアザミウマにより受粉されるとし、1993年にはMacrozamia、1995年にはEncephalartos、2002年にはBowenia、2004年にはLepidozamiaについて昆虫による受粉が確認されました。
ソテツ類の分類は、裸子植物ソテツ綱ソテツ目です。科は2つか3つとするのがスタンダードですが、今回はソテツ科とザミア科の2つに分ける分類を採用します。ソテツ科はソテツ属(Cycas)の1属で約100種類からなり、ザミア科は9~10属で約200種類からなります。1986年以来のソテツの虫媒花の発見は、すべてザミア科によるものでした。ソテツ科は虫媒花の可能性について指摘されることはありましたが、確実性のある研究はこれまでありませんでした。日本に生えるCycas revolutaについては風媒花と考えられて来ました。

今回ご紹介するのは、Cycas revolutaの虫媒花の可能性を探った2007年の『IS CYCAS REVOLUTA (CYCADACEAE) WIND- OR INSECT-POLLINATED?』です。著者は京都大学のMasumi Kono & Hiroshi Tobeです。
まず、最近の研究によるとCycas revolutaの自然の自生地では受粉は雨季であり、風媒花にとっては不利です。また、受粉時に花から揮発性の強い臭いが放出されることが知られています。
研究は沖縄県与那国島において行われました。Cycas revolutaは雌雄異株で、雄株は1~2年、雌株は2~3年ごとに開花します。観察は2004年の5~6月で、頻繁に雨が降っていたにも関わらず受粉しました。
Cycas revolutaの花で採取された昆虫は、雄株ではカネタタキ(Ornebius kanetataki)、フタスジシュロゾウムシ(Derelomus bicarinatus)、アミメヒラタゴキブリ(Onychostylus notulatus)でした。雌株ではクロハナケシキスイ(Carpophilus chalybeus)、キバナガヒラタケシキスイ(Epuraea mandibularis)、オキナワゴボウゾウムシ(Larinus latissimus)が豊富でした。
受粉の1ヶ月後、雌の花にはクロハナケシキスイ、キバナガヒラタケシキスイ、オキナワゴボウゾウムシが頻繁に観察されました。ゴキブリやダンゴムシ、ヨコバイ、ムカデ、クモ、サソリ、トカゲも見られましたが、隠れるための一時的なものであると見なされました。自然に受粉した18個体中の15個体にはケシキスイが繁殖し幼虫も見られました。
ケシキスイの幼虫に最大10.5%が食害されていましたが、この場合でも146個の種子を作りました。
捕獲したケシキスイを電子顕微鏡で観察したところ、Cycas revolutaの花粉が付着していることが確認されました。

昆虫が訪れるのを網で防いだ場合でも、雄株と雌株の距離が2m以内の場合では約100個の種子を作りました。ですから、風媒により受粉するのは間違いありません。しかし、距離が2mを超えると受粉効率は著しく減少しました。つまりは、距離が近い場合には風媒が有効ですが、距離が遠い場合は虫媒により受粉するということです。

以上が論文の内容となります。著者はCycas revolutaが虫媒の初期段階にある可能性を指摘しています。風媒花から虫媒花へ、その両方へ跨がる受粉形式は例をみない奇妙なものです。昆虫に対する報酬も、蜜や花粉ではなく、花(胚)自体が食害によりダメージを受けるという不完全なものです。しかし、花の進化というものを考えた時に、Cycas revolutaの奇妙な受粉形式はその過渡期にあるものとして重要な意味を持つのかもしれませんね。


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最近、ザミアZamiaという名前のソテツが園芸店に出回るようになりました。主に見かけるのは、Zamia pumilaとZamia floridanaです。しかし、実はこの学名は間違っており、Zamia pumilaは国内では基本的に販売されておりません。Z. pumilaの名前で販売されている、葉か肉厚で判別の先端が丸みを帯びているソテツはZamia furfuraceaです。このことについて書いた記事は、私の書いた記事の中では人気があります。たまに、正しいフルフラケアの名前で売られることもありますから、混乱している人も多いのでしょう。記事では海外のサイト等を参照としていましたが、最近フルフラケアについて書かれたいくつかの論文で写真を確認しましたから、やはり私の推測は正しかったようです。
お次はZ. floridanaですが、こちらもやはり学名は誤りです。Zamia integrifoliaが正しい学名です。学名は国際命名規約により、先に命名された学名を優先するという「先取権の原理」があります。Z. integrifoliaはZ. floridanaの79年前に既に命名されていますから、どう考えてもZ. integrifoliaが正しい学名です。詳しくは以下の記事をご参照ください。
さて、実はというわけではないのですが、私はフロリダナ、ではなくインテグリフォリアの苗を育てています。ところが、遮光せずに外に出したところ、1枚しかない葉が日焼けして丸坊主になってしまいました。仕方がないので、ハウォルチアの棚に避難させていたところ、立て続けに3枚の葉が伸びてきました。葉をやられたからでしょうけど、春から夏にかけて新葉を出さなかったのにとは思いましたけど。しかし、やはり日照が足りない様にも感じました。というのも、新しい葉が、以前より大きくなったからです。葉が大きくなると生長しただけに思えますが、それだけではありません。一般論ですが、日向で植物を育てると葉は厚く小さくなり、日陰では葉は薄く大きくなる傾向があります。これは一応理屈があり、強い光が当たると厚みのある葉でも内部まで光が入ってくるので、葉の内部でも光合成出来ますから葉は分厚くなります。逆に弱い光では厚みのある葉では内部まで光が到達しないので、葉の内部では光合成が出来ません。そうなると、厚みのある葉は無駄が多いので薄い葉を出すことになりますが、光合成できる細胞が減ってしまいますから、葉の面積を大きくする事で対応するのです。ですから、葉が大きくなったので日照不足を心配してしまうのです。

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Zamia integrifolia

そんな悩みを抱えていた昨今、何気なくザミアの論文を検索してみたところ、なんとザミアの育て方に関する論文を発見しました。いやはや、なんでも探せばあるものですね。さて、そんなことで、本日ご紹介する論文は2004年に発表されたF. C. Almira, A. E. Dudeck, and B. Schutzmanの『Effects of Varying Shade and Fertilizer on the Growth of Zamia floridana A. DC. B. Dehgan』です。タイトルを見ておや?と思った方もおられるでしょうが、この論文ではZamia floridanaとなっています。まあ、古い論文では異名がまかり通ることは割とある話です。しかし、イギリス王立植物園が主宰する『
Plants of the World Online』ではZamia integrifoliaが正しい学名であるその根拠を、ニューヨーク植物園が2012年に出版した『The world list of Cycad.』をもって承認しています。論文が出された2004年当時はZamia floridanaとされることがポピュラーだったのかもしれませんね。さて、前置きが長くなりましたが、早速内容を見てみましょう。

ソテツ類は世界中で絶滅の危機にさらされています。当然、開拓や開発による自生地の消滅も問題ですが、残念なことに盗掘による個体の減少も頭の痛い問題となっております。ですから、環境保護だけではソテツ類の野生個体の減少を止めることは難しいと考えられています。そのため、ソテツが簡単に入手可能となって採取の被害を抑えるという考え方は昔から繰り返し主張されており、ソテツの人工繁殖を効率的に行い大量に流通させることが目指されており、実際にそのような論文も出されているようです。しかし、増やすことは研究されているものの、増やしたソテツをどのように育てるかは研究されて来ませんでした。流通させるためには繁殖だけでは駄目で、園芸農場で育成する必要がある以上は育て方も重要です。
若い
ソテツは自然状態では親植物などの陰で育つ個体が多く、直射日光が当たるオープンな環境では実生を見かけません。若い苗のうちは遮光が必要である可能性があります。また、ソテツの栄養要求性はまったくの不明です。このような背景があるため、論文ではZ. floridana(=Z. integrifolia)をモデルとして使用し、遮光と肥料の効果について検証しています。

ザミアは1歳の苗木を用い、条件を揃えるために根を切除してから新たに出根させた後、3ヶ月育成しました。遮光の条件は30%と50%と無遮光です。苗木には隔週で、20-20-20の液肥(Peters溶液)、あるいは18-6-12の置肥(Osmocote顆粒)、16-8-12の置肥(Sierraタブレット)を与えられました。この3つの数字の組み合わせは、肥料の成分比で、一般的にN-P-K、つまりは窒素-リン-カリウムを示します。園芸店で販売している化成肥料にも、この構成比は書かれています。試験の評価方法は、試験開始から8ヶ月後、冬が始まる前に葉のサイズや枚数、塊根のサイズ、地上部と根の重量が測定されました。
結果として遮光は効果的です。ただし、50%遮光は葉の長さは最大でしたが、葉の枚数は30%遮光が最大でした。葉のサイズは日陰への適応ですから、あまり好ましい結果ではないでしょう。しかし、葉の枚数は生長に従い増えますから、30%遮光が条件としては最適ということになります。
肥料はその種類に関わらず効果的でした。個人的にはソテツ類は生長が遅いため、それほど肥料の恩恵は受けないのではないかと考えていました。しかも、ソテツ類はマメ科植物と同様に根粒があり、空気中の窒素を固定して栄養源にできますから、肥料要らずと勘違いしていました。下手に肥料なんてあげたら腐るかもしれないなんて思っていましたが、どうやら肥培に努めた方が良いみたいです。



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ザミア・フルフラケアZamia furfuraceaの花芽があがってきました。花芽が伸びはじめてから咲くまでを記事にしようと思っていましたが、中々咲かないのでまだ咲きませんが記事にします。

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フラッシュも一段落し、新葉が美しい季節です。良く見ると塊根の先端が膨らんでいます。まさか、また新芽かと思いきや…

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これは蕾ですね。小苗を入手してから10年以上育てていますが、初めてのことです。植え替えした方が生長が早いのは知っていますが、5年おきくらいのタイミングでしか植え替えをしないので生長は遅いでしょうけど。

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7月16日。まだまだ小さい。

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7月24日

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8月6日。だいぶ膨らんで、茎が伸びてきました。
しかし、茎はまだ伸びる感じですから、まだまだ咲きません。とは言うものの、交配相手がいないので咲いても種は取れませんけどね。

そういえば、ソテツと言えばクロマダラソテツシジミという名前の、ソテツの若葉を食害するシジミ蝶がいます。もともとは東南アジア原産でしたが、2007年くらいから関西でも定着したみたいです。しかし、温暖化の影響かいつの間にやら、最近では神奈川、東京、埼玉、千葉あたりでも発見されています。私の所有ソテツたちもいつかやられないか心配です。
しかし、昆虫マニアの人達がその蝶を探しているみたいですが、どうやらソテツとヤシの区別がついていないらしく、近所のソテツ(どう見てもヤシ)では見られないとか書いてありました。まあ、そりゃあヤシにはつかないでしょうね。興味がない人には同じようなものなのでしょうか?




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日本産のソテツがフラッシュしました。Zamia furfuraceaとDioon spinulosumに続いてのフラッシュです。しかし、海外産のソテツの方が早いとは…。


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5月28日。
フラッシュ開始。

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2022年6月4日
一気に新芽が伸びてきました。

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2022年6月12日
柔らかく美しい新葉。


日本産のソテツは九州が北限ですが、雪が降ることもある地域でも鑑賞用に植栽されます。ソテツの仲間は熱帯~亜熱帯気候に多いため、温帯域にも自生する日本のソテツはソテツの仲間でもトップクラスの耐寒性を持つと言えます。

ソテツの学名は1782年に命名されたCycas revoluta Thunb.です。thunbはスウェーデンのCarl Peter Thunbergのことです。ThunbergはCarl von Linneの弟子で、鎖国期の日本に滞在したことで有名です。
ソテツの異名は、1867年に命名されたCycas inermis Oudem.、1900年に命名されたCycas miquelii Warb.、1998年に命名されたEpicycas miquelii (Warb.) de Laub.が知られています。

過去に書いたソテツの記事はこちら。

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蘇鉄のすべて
栄 喜久元


我が家のソテツでは、ザミア・フルフラケアが今年初のフラッシュを開始しています。そして、ザミア・フルフラケアに続いて、ディオーン・スピヌロスムがフラッシュを開始しました。

ディオーン・スピヌロスムはメキシコ原産のソテツの一種です。Giant dioonという英語名が示す様に、最大10mを越える高さとなる世界最大のソテツです。日本でも最近はたまに園芸店で販売していたりします。同じくメキシコ原産のザミアフルフラケアやザミア・インテグリフォリアが流通しつつあり、もしかしたらソテツ・ブームが来つつあるのかもしれません。

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2021年9月
購入時。葉は光沢がありますが、新しい葉は白い粉で保護されています。

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白い粉がとれた光沢のある葉。

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2022年5月22日
フラッシュが始まりました。
右下の丸いものは種子。

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2022年5月28日
ゆっくり展開中。
小葉の数は15枚位ありそうです。

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2022年6月4日

しかし、ディオーン・スピヌロスムは情報が少なく、しかも情報の質が良くないですね。
例えばディオーン・スピヌロスムで検索すると、モルッカソテツとか書いてあります。では、逆にモルッカソテツで検索すると、ディオーン・スピヌロスムがそこそこヒットします。しかし、モルッカソテツのモルッカは、インドネシアのモルッカ諸島のことですから、メキシコ原産のディオーン・スピヌロスムとは関係がありません。東南アジアのソテツ類をナンヨウソテツとかモルッカソテツと呼んだことから、それがやがて海外産のソテツの総称として使われて、いつの間にかディオーン・スピヌロスムを示すという勘違いが一般化したのではないでしょうか。

育て方は良くわかりません。販売サイトの言うところの"レースのカーテンごし"であるとか、"霧吹きで葉水"という、植物種に関係なくまったく同じ文言だったりする育て方は、まったく信用出来ません。
では、原産地の情報を見てみましょう。調べてみると、熱帯雨林だが石灰岩地の崖や岩の丘陵地帯に自生するとあります。ようするに礫地に生えるわけで、排水が良い土壌が良さそうです。しかし、熱帯雨林に生えますから、水を好むような気もします。水捌けの良い用土で植えて、極端に乾かしすぎない様に、といったところでしょうか?

原産地の写真を見ていると、大概はジャングルの中に生えており、他の樹木の陰になっている雰囲気があります。しかし、写真だけではでは、はっきりとはわかりません。崖に生えるものは強光線を浴びている可能性もあります。実際の日照条件はどうでしょうか。
一般的に広葉樹は、深い色合いの葉を持つ植物は日陰向きで、明るい葉色なら明るい場所に生えるという傾向があります。ディオーン・スピヌロスムは濃い緑色の葉を持ちますから、直射日光に当てない方がいい様な気もします。しかし、日本のソテツ(Cycas revoluta)などは、やはり崖地に自生しており強光線に耐えますが、葉は深い緑色です。ソテツは裸子植物ですから、広葉樹の傾向は当てはまらないのかもしれません。
次にディオーン・スピヌロスムの新しい葉は、白い粉に被われています。こうしたものは強い日照に耐えるためであったりします。ディオーン・スピヌロスムもそうなのでしょうか。まだ弱い新葉を保護するためのものであることは間違いありません。
ちなみに、温暖地の庭に植栽されたディオーン・スピヌロスムは、特に日よけもなく周囲に何もない芝地で育てられていたりします。日照を好むのかどうかとか、最適条件は何かはわかりませんが、強光線に耐性があることは間違いないようです。実際に私も遮光はしていません。

耐寒性については、これまた難しいところです。マイナス5℃までと書いてあるサイトもあり、結構耐寒性はありそうです。私が育てているディオーン・スピヌロスムは、明らかに苗なので、耐寒性は期待出来ないでしょう。植物は基本的に大なり小なり大型の方が耐寒性が上がります。逆に苗は耐寒性がなくてすぐにやられてしまいがちです。
海外のサイトの情報ではアメリカのhardiness zoneが書いてありました。hardiness zoneは農作物の育つ気温を地図上に落としこんだものですが、非常に便利なので観葉植物を育てる時の指標としても盛んに使われています。アメリカのhardiness zoneであるUSDA zoneよると、ディオーン・スピヌロスムは9B~11とのことです。9Bはマイナス3.9℃からマイナス1.1℃ですから、耐霜性はありそうです。しかし、私の住む地域はマイナス5℃以下になりますから、なかなか厳しいかもしれません。いずれにせよ、冬は家の中に取り込みます。

ディオーン・スピヌロスムの学名は1883年に命名された、Dioon spinulosum Dyer ex Eichlerです。
Dyerはイギリスの植物学者であるSir William Turner Thiselton Dyerのことで、キュー王立植物園の3代目の園長です。Eichlerはドイツの植物学者であるAugust Wilhelm Eichlerのことで、裸子植物と被子植物、単子葉と双子葉をわけたことで知られています。"ex"が付きますが、この場合はDyerが命名したものの正式に発表されていないだとか、命名の要件を満たしていないだとか何らかの事情があったのでしょう。そこで、Eichlerが正式に発表したということになります。


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ソテツの仲間は、一年に1~2回しか新芽を出しません。場合によっては新芽が出ない年もあると聞きます。ですから、ソテツが新芽を吹く今の時期は、ソテツファンにとっては最も喜ばしいのです。そこで、ソテツ業界ではソテツが新芽を吹くことを、"フラッシュ"と呼んで祝福するのです。
私の育てているソテツの中ではザミア・フルフラケアが、今年で一番早い初フラッシュが始まりました。


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4月30日。美しい黄金の毛に覆われた新芽。

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5月15日。ゆっくり展開中。

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ザミア・プミラZamia pumilaとザミア・フルフラケアZamia furfuraceaはよく混同されますが、国内で流通しているのはフルフラケアです。残念ながら、国内ではフルフラケアはプミラという誤った名札付きで売られることがほとんどです。海外の園芸サイトではプミラとフルフラケアの混同はほとんどないので、日本国内特有の事情のようです。古い園芸図鑑を見ると、いくつかの図鑑ではフルフラケアの同じ写真が使われていて、解説にプミラと書かれているため、国内の混乱の原因はこれが元なのではと疑っています。

フルフラケアの葉は幅が広く先端は鈍角で、葉は厚みがあり黄色から褐色の毛が生えています。プミラの葉は細長く先端は尖りますから見分けは簡単です。
実際の自生地の写真を見てみれば一目瞭然です。
こちらはメキシコで撮影されたフルフラケア。
https://www.gbif.org/ja/occurrence/3760045938
こちらはプエルトリコで撮影されたプミラ。
https://www.gbif.org/occurrence/3759066079
まったく似ていないのに、なんで混同されているのかわかりません。とても不思議です。
ちなみに下の写真は、神代植物公園のザミア・フルフラケアという名札付きのソテツ。
DSC_1126
Zamia furfuracea(神代植物公園の大温室)

ちなみに、図鑑やサイトなどに小葉の枚数が書いてありますが、これは昔のいい加減な図鑑からの引用なので種類の判別には使えません。だいたい似た感じなので、伝言ゲーム方式で伝えられてきた秘伝情報みたいなものなのでしょう。
実際に育ててみればわかりますが、ソテツは大きくなると葉が長くなり、小葉も増えていきます。育てていれば、確実に言われているより小葉の枚数を越えます。これは、プミラにもフルフラケアにも言えることです。何でも実際にやってみないとわからないことって、この情報化社会でもまだまだあるみたいですね。

そういえば、最近良く見るザミア・フロリダーナZamia floridanaも実は異名で、ザミア・インテグリフォリアZamia integrifoliaが正式な学名だったりします。いったいどういったことなんでしょうね。いい加減な感じがして、嫌になります。


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最近、ミニ多肉植物のコーナーで、様々な多肉植物とともにザミア・フロリダーナという海外原産のソテツの苗が売られているのを見ます。私も購入して育てていますが、よくよく調べてみると学名は様々な変遷を辿ってきたようです。

フロリダーナという名前は、1868年に命名されたZamia floridana A.DC.から始まりました。また、1791年に命名されたZamia angustifolia Jacq.の変種として、1878年に命名されたZamia angustifolia var. floridana (A.DC.) Regalとされたことがあります。パルミフォリウム属とされたこともありますが、フロリダヌムと語尾が変化しています。すなわち、1891年に命名されたPalmifolium floridanum (A.DC.) Kuntzeがあります。

さらに、フロリダーナ以外の種小名の場合もあります。1798年に命名されたZamia media Jacq.、1806年のZamia tenuis Willd.、1829年のZamia dentata Voigt、1921年のZamia umbrosa Small、1926年のZamia silvicola Small1932年のZamia subcoriacea H.L.Wendl. ex J.Schust.がありました。
これらは、現在ではフロリダーナと同種とされていますが、沢山の種にわかれていると考えられていたのかもしれません。さらに、1891年にKuntzeによりPalmifolium属とされました。すなわち、Palmifolium media (Jacq.) KuntzePalmifolium tenuis (Willd.) Kuntzeですが、Palmifolium属は現在は存在しない属名です。また、変わったところでは、1939年にはエンケファラルトス属とする、Encephalartos prunifer Sweetとする学名もありました。

ここからが本題です。私もフロリダーナという学名を当たり前のように使っていたのですが、これは上記のごとく1868年の命名です。学名は先に命名されたほうが優先というルールがありますが、フロリダーナ以外の学名のほうが早いことに気がつきます。上記で一番早いのは、1798年のザミアメディアです。では、ザミア・メディアが正式学名かというと、実はそれも違います。実は1789年Zamia integrifolia L.f.が命名されているのです。この、ザミア・インテグリフォリアが現在学術的に認められている正式な学名です。一番有名なフロリダーナは異名です。なぜ、フロリダーナのほうで定着してしまっているのかは、良くわかりません。しかし、園芸的な通称としてフロリダーナと呼ばれるのは構わないでしょうが、正式な学名はインテグリフォリアですから、間違わない様にしましょう。

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ザミア・インテグリフォリア
Zamia integrifolia


他のザミアについての記事はこちら。


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ソテツ(Cycas revoluta)は中国南東部から南西諸島を経て日本まで分布する、ソテツ科の植物です。日本では沖縄から宮崎県まで自生地があります。ソテツ類は熱帯から亜熱帯に生える南方系の植物なので、日本のソテツはかなり北方に生えるソテツ類と言えます。
しかし、栽培した場合は霜が降りて雪が多少降っても大丈夫なため、関東地方でも地植えで育ちます。古い民家の玄関先に背丈を越える立派なソテツが植えられていることも、珍しいことではありません。

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ソテツ

上の写真のソテツは、私が30年ほど育てている株です。購入時、茎が数cmで種子は着いていなかったのでカキコだったのでしょう。ずっと鉢栽培で、植えかえも限界まで行わないため、あまり大きくなりません。ソテツ類は地植えすると生長が早いというのは有名な話です。
見ての通り葉の痛みが激しいのですが、これは根詰まりによるものです。鉢が崩れて来るまで植えかえしなければこうなります。写真は植えかえ後なので、新しい葉はきれいです。


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茎部

傷んだ葉を取り除きました。ソテツは葉が完全に枯れるまで切らないほうがいいのですが、今回は仕方がないということで。

そう言えばソテツはCycas属ですが、一般にこれをサイカスと読んでいるみたいですね。Cycasの名前の元は、ギリシアの哲学者テオフラストスがエジプトのドームヤシにつけたギリシア語のkoikasが由来とのことです。なぜドームヤシの名前がソテツの名前に変わってしまったかはわかりません。さらに、このkoikasが書き間違えられて、kykasとなりCycasとして採用されたわけです。サイカスという読み方は、大元のkoikasから見た場合は正しいと言えなくもありません。

しかし、植物分類学ではラテン語読みが基本ですので、Cycasは「キカス」が正当な読み方です。ただ、キカスはやや間が抜けた感じがしますから、サイカスのほうが言いやすいし格好良いかんじです。まあ、Cをサ行読みはおかしいわけですけど。ca,ci,cu,ce,coは、サシスセソではなく、カキクケコなはずなんですけどね。何故か英語圏では、学名は英語ではないのに英語読みされたりします。英語読みは法則性がなくて初見では読めないので困ってしまいます。

他のソテツ類の記事はこちら。

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栄 喜久元






ザミアの種類

最近、海外のソテツが販売されているのを、園芸店で目にします。代表格はザミア(Zamia)という、北米産のソテツです。
ネット含め、国内で主に販売されているのは3種類。

プミラ(Z.pumila)
フロリダーナ(Z.floridana)
フルフラケア(Z.furfuracea)

ところが、この内プミラとフルフラケアの区別がつかないんです。フロリダーナは葉が細く全体に華奢なので、簡単に区別できるのですが、プミラとフルフラケアは葉の幅が広く肉厚で短い毛の様な繊維をまとっています。まったく同じ特徴です。

園芸店で最近見かける長田カクタスさんの小苗は、フロリダーナとフルフラケアという名で販売されています。じゃあ、プミラって何者?ということで、少し調べてみました。

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フロリダーナの苗

図鑑

山と溪谷社の『山溪カラー名鑑 観葉植物』(1991)では、プミラとフロリダーナが紹介されています。写真はプミラですが、これはフルフラケアと区別がつきません。 

小学舘の『園芸植物大事典』(1994)では、やはりプミラとフロリダーナで写真入りです。何とこのプミラの写真は山と溪谷社のものとまったく同じ写真じゃあないですか。やはり、区別はつきません。

ここまでプミラばかりで、フルフラケアが出てきません。逆にフルフラケアがわからない感じです。

平凡社の『世界有用植物事典』(1989)では、フルフラケアとフロリダーナが記載されております。写真はありませんが。はじめて出てきたフルフラケアは、ヒロハザミアという和名がついています。葉の幅が3.5cmと、確かにヒロハザミアの名前の通りです。

上の2冊はあまり特徴を記載しておりません。やはり、プミラが怪しい。

論文

新種の発見時には詳しい特徴が論文に記載されるはずです。なので、プミラとフルフラケアの記載された時の論文を探してみましたが、見つけられませんでした。
これは、ネットでヒットするのは、ネットが普及したあとの論文だけだからです。誰か親切な人がスキャナーで取り込んでPDF化してくれいればいいんですけどね。 

ちなみに、『Native cycad coontie』という論文では、プミラの写真が小さく掲載されておりましたが、葉は細長く日本では見たことがない形でした。ただし、写真が小さいので何とも言えない感じはまだあります。

海外のサイト

これは直接の証明にはなりませんが、英語のサイトはアメリカ人のみだけではなく世界中の人がアクセスします。要するに、日本以外がどうなっているのか気になるところです。

幾つかのサイトを見てみました。その結果、日本で販売されている葉の幅が広いザミアはフルフラケア、プミラは日本では見たことがないものでした。

『FLORA & FAUNA WEB』では特徴が細かく書かれています。
プミラ→a feathery like appearance、要するに鳥の羽の様に葉が並んでいるということです。 

フルフラケア→Leaflets are leathery, obovate to oblanceolate shaped, margin slighly toothed and covered in yellowish brown hairs.
葉は革のようで、細い卵型、黄色から茶色の毛に覆われいる。

どうでしょうか。日本で販売されているのは、プミラではなくフルフラケアの様な気がしてきましたね。

GBIF

Gbifというサイトに、大学、博物館、植物園の収集した植物標本が掲載されていることに気がつきました。普段は学名の確認のために利用しているので、今まで気が付きませんでした。
検索してみると、やはり日本で販売されているのはフルフラケアで、プミラはフロリダーナほどではないですが細長い葉がぎっしり並んでいます。海外の園芸サイトの説明の通りでした。

ちなみに標本は、スミソニアン博物館、フロリダ自然史博物館、テネシー大学植物園、ニューヨーク植物園の収集品で確認しました。

和名

国内の販売サイトでは、プミラ=ヒロハザミアとなっていますが、特徴からみても間違いです。ヒロハザミア=フルフラケアです。同様にプミラ=メキシコソテツも間違い。正しくは以下の通り。

プミラ→ヒメザミア
フルフラケア→ヒロハザミア、メキシコソテツ
フロリダーナ→フロリダザミア

結論

国内で販売されているザミアは、主にフロリダーナとフルフラケア。
葉の幅が広くて厚みがあり、葉の表面に毛が生えていればフルフラケア。
この混乱は日本国内だけの問題であることから、図鑑の写真が間違っており、そこから誤った名前が広がったのではないでしょうか。

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ヒロハザミア Zamia furfuracea

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