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カテゴリ: サボテン

私たちは日常的に植物を栽培していますが、それはあくまでも園芸的なものであり、ついつい栽培される植物でも自然の中では生態系の一部をなすということを忘れがちです。特に原産地が遠く植生や気候が著しく異なる多肉植物は、その自然な生態はなかなか想像しにくいのではないでしょうか。本日は竜神木(Myrtillocactus geometrizans)に展開される生態系を見てみましょう。参考とするのは、Alicia Callejas-Chaveroらの2023年の論文、『Herbivory in Myrtillocactus geometrizans (Cactaceae): Do Parasitoids Provide Indirect Defense or a Direct Advantage?』です。


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Myrtillocactus geometrizans(右)
中央はMarginatocereus marginatus、左はPilosocereus palmeri=P. leucocephalus
筑波実験植物園にて(2025年12月)


植物と害虫の相互作用
近年まで、植物と昆虫の関係に関する研究は直接的な関係である、植物と植食者、植物と花粉媒介者、植物と種子散布者などの関係に焦点を当ててきました。しかし、植物と昆虫との相互作用をより包括的に捉え、捕食者や寄生者、重寄生者、分解者、さらには競争者も考慮に入れる必要があります。

植物の植食者に対する反応は複雑で、被食から逃れる、あるいは防御する、耐えるなどがあります。間接的な防御としては、草食動物の天敵(捕食者、寄生者、病原体)を引き寄せたり、天敵に報酬や隠れ家を提供することがあります。植物は草食動物を誘因する揮発性の化合物(HIPV)を放出することで、草食動物の天敵を引き寄せることはよく知られています。

CespedesはMyrtillocactus geometrizansの昆虫に対する耐性の高さは、トリペルテンとステロールにより説明可能であることを指摘しました。これらの化合物は、Lamaireocereus chichipeやMyrtillocactus cochal、Myrtillocactus schenckii、Myrtillocactus eichlamiiからも単離されています。これらの化合物は、室内実験でツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)やミルワーム(Tenebrio molitor)といった害虫の防除に効果がありました。しかし、M. geometrizansの植食者に対して同じ効果があるのか、さらには植食者の天敵を引き寄せる作用があるかは不明です。


竜神木をめぐる生態系
M. geometrizansの害虫である軟カイガラムシ(Toumeyella martinezae)は、別種のカイガラムシ(Opuntiaspis philococcus)と競合関係があります。さらに、カイガラムシには少なくとも2種の寄生者が存在し、寄生蜂であるMexidalgus toumeyellusを調査しました。また、カイガラムシはアリ(Liometopum apiculatum)とは共生関係を結んでいます。アリはカイガラムシの世話をすることで、代わりに餌となる甘露を与えます。カイガラムシが大量発生すると、植物に付着した過剰な甘露がカビを増殖させ、短期間で植物を枯死させます。


カイガラムシの有無による影響
M. geometrizans(以下、サボテン)のカイガラムシの有無を比較しました。カイガラムシがない場合は、カイガラムシがある場合と比べてサボテンの枝は平均2倍生長しました。蕾や開花数はカイガラムシがいない場合に有意に多くなりました。しかし、成熟した果実数や果実の大きさ、種子の発芽率には有意差はありませんでした。種子や実生のサイズは、カイガラムシがいない方が大きいことが確認されました。


蟻・カイガラムシ・寄生蜂の関係
研究開始から2カ月間は、蟻のいるサボテンといないサボテンでは、寄生蜂に寄生されたカイガラムシの割合は約15%で同程度でした。しかし、蟻がいない場合は寄生されたカイガラムシは平均25%に達し、蟻がいる場合は寄生されたカイガラムシは平均10%まで減少しました。

カイガラムシは口器による穿刺とそれに伴う栄養の搾取と壊死という直接的な影響と、病原体の伝播や汚染などの間接的な影響があります。カイガラムシはサボテンの生長や繁殖、実生の生育に影響を及ぼし、サボテンの適応度を著しく低下させます。M. geometrizansはカイガラムシの個体数が少ない場合にはある程度の抵抗性と耐性を示しますが、カイガラムシの個体数が増えるとその悪影響が顕著となります。

寄生蜂が宿主の位置を特定し産卵するために、視覚や嗅覚などん利用します。さらに、HIPVの量は植食者の密度に依存しています。植食者の密度が大きくなると植物の被害も増大し、寄生蜂が検知できる揮発性化合物の放出量も増加します。この寄生蜂を誘引する化合物は未だに特定されていませんが、散在するカイガラムシの位置を特定するのに十分なことは明らかです。

蟻はカイガラムシの個体群の急激な生長を促進するため、逆に寄生蜂にとってより魅力的なものとなっています。しかし、蟻はカイガラムシの上を巡回し、寄生蜂の産卵を防いでいます。蟻は他の植食者から植物を守ることで植物に恩恵をもたらす可能性がありますが、カイガラムシの保護は植物や植物に関係する他の生物に間接的に悪影響を及ぼします。カイガラムシの増加は過剰な甘露による煤病の増殖により、サボテンの茎を覆い光合成を阻害します。カイガラムシの大量発生によりM. geometrizansは数年で枯死します。これが、調査地域のM. geometrizansの枯死する主要な要因となっています。

植物と寄生蜂の関係は相利共生関係と言えます。しかし、蟻がいる場合は寄生率が大きく下がるため、植物はわずかな利益しか得られず、寄生蜂は引き続き利益を得ることが出来るため、片利共生関係に近くなります。そのため、植物と天敵の相利共生関係を表す「敵の敵は味方」(my enemy's enemy is friend)という表現は当てはまりません。


最後に
以上が論文の簡単な要約です。
蟻と甘露をもたらすアブラムシやカイガラムシの関係はよく知られており、昔から研究されています。寄生蜂や寄生蝿の研究も行われていますが、内部寄生であるため観察だけでは済まないことと、種類が膨大なため研究はまだまだのように思います。寄生蜂や寄生蝿は実は膨大な種類があり、1種の昆虫に1種以上の寄生昆虫がいるとまで言われています。さて、サボテンとサボテンに関わる三者の関係はというと非常に複雑になります。サボテンとカイガラムシの関係、カイガラムシと蟻の関係、蟻と寄生蜂の関係、寄生蜂とサボテンの関係、サボテンと蟻の関係、寄生蜂とカイガラムシの関係がありますからね。このような複雑な生態関係を解明した研究は稀な気がします。大変、勉強になりました。今後もサボテンや多肉植物に関する生態学的研究を取り上げていきたいと思います。


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植物の中にはサボテンやバラなど、トゲを持つものが沢山あります。この植物のトゲは、基本的には外敵から身を守るための防御として働きます。サボテンやユーフォルビアなど多肉植物にはトゲを持つものが多く、私も植物のトゲに関するいくつかの論文をご紹介してきました。例えば、トゲには遮光や温度調整の役割、さらには寄生植物に抵抗する働きもあるとされています。他にも多肉植物の派手な色合いのトゲは、警告色として働き草食動物に対する忌避効果が考えられます。しかし、トゲがシンボリックで目立つことが、ネガティブに働くこともあるようです。本日、ご紹介するのはKevin D. Kohlらの2015年の論文、『Evolutionary irony: evidence that 'defensive' plant spines act as a proximate cue to attract a mammalian herbivore』です。


トゲは防御に有効か?
多くの植物は、草食動物による食害を防ぐために防御機構を発達させています。しかし、植物のトゲが草食動物に対する防御としての有効性を検証した多くの検証では、一貫性のない結果となっています。
この曖昧な結果は、草食動物の対抗適応(counter-adaptation)であると考えられます。
著者らはサボテンを専門に食べるwhite-throated woodrat(Neotoma albigula、以下ウッドラット)で潜在的な対抗適応を検証しました。



サボテンが主食
ユタ州キャッスルバレーに生息するウッドラットの毛に含まれる安定同位体を分析したところ、生息地に生える他の植物と一致せず、ウチワサボテン(Opuntia macrorhiza × Opuntia polycantha)と一致しました。キャッスルバレーに生息するウッドラットはウチワサボテンを主食としていることが分かりました。


飼育下における嗜好性
野生で捕獲され飼育下にあるウッドラットにトゲのあるウチワサボテンと、トゲを切除したウチワサボテンを与えたところ、8匹中7匹はトゲのあるウチワサボテンを巣に持ち帰りました。持ち帰らなかった1匹は、トゲのあるサボテンを置いた場所に巣を作ってしまったためです。また、ウッドラットはサボテンのトゲを切り取り、ほとんどの部位を食べることが出来ました。
また、飼育下で生まれた2個体のウッドラットも、トゲのあるウチワサボテンを巣に持ち帰りました。飼育下で生まれたウッドラットもまたサボテンのトゲを切り取る行動を示しました。


トゲが目印
サボテンのトゲの防御としての有効性を検証しましたが、ウッドラットの行動適応によりトゲには効果がないことが分かりました。興味深いことに、ウッドラットはトゲのないサボテンよりトゲのあるサボテンを好んでいます。サボテンはトゲのあるものはないものよりタンパク質含有率が高く繊維含有率が低いことが分かっています。これらのことから、トゲがウッドラットを引き付けるための手掛かりとして機能しているように見えます。


トゲの対抗適応
ウッドラットはトゲの防御を克服するために、サボテンのトゲを切り取るという独特の行動を示しました。しかし、同属のN. lepidaはトゲを切り取る行動は示さず、トゲのない部位を齧るだけでした。そして、飼育下で生まれたウッドラットもトゲを切り取ったため、この行動は生得的なものであると考えられます。
サボテンの分析結果から、トゲのあるサボテンはシュウ酸濃度が高いことが分かりました。しかし、ウッドラットはシュウ酸が9%も含まれる餌でも悪影響なく摂餌出来るため、サボテンの1.3〜1.5%の濃度のシュウ酸濃度は、行動を決める重大な要因ではないと考えられます。
ウッドラットはトゲを除去したサボテンよりトゲあるサボテンを好みましたが、このトゲを除去したサボテンはトゲのあるサボテンと同じものであり、その栄養価に違いはありません。ウッドラットはある程度の栄養価の違い、すなわち「栄養的知恵」(nutritional wisdom)を持っています。よって、採餌においては「経験則」仮説によるものと考えられます。例えば、捕食者は獲物の栄養価を調べることは出来ませんが、代わりに大きな獲物=収益性の高い獲物として、獲物のサイズを指標にしています。同様に草食動物は、大きさな色などの目に見える指標を持って選択することがあります。ウッドラットは、繊維質が少なく栄養価が高い可能性が高いトゲのあるサボテンを経験則により選択していると考えられます。



最後に
以上が論文の簡単な要約です。
ウッドラットがより栄養価が高いトゲのあるサボテンを選択しているという話でした。ウッドラットもニオイや見た目から栄養価を判断する能力は持っていますが、トゲのあるサボテンの方が栄養価が高いという経験則から、わざわざ調べないという合理的な判断で行動しているのです。特にネズミのような小型の動物は、餌を探したり採取するのは危険が伴う行為で、なるべく素早く済まして巣に帰る方が良いということになります。実際にウッドラットはサボテンを切り取り巣に持ち帰って食べます。ゆっくり餌を調べることが出来ない場合、つまり素早く餌を探さなくてはならない時に、当てずっぽうで採取した餌が栄養価が高かったり低かったりするより、トゲがある=栄養価が高いという指標があれば、素早く栄養価が高い餌を採取することが出来るのです。
対抗適応(counter-adaptation)という言葉が出てきましたが、これは毒を持つ植物に対しその毒に耐性を獲得した昆虫の例などがよく知られています。植食者が対抗適応を獲得していると、植物の物理防御や化学防御に効果がないように見えてしまいます。ですから、トゲのような植物の物理防御を調査した場合に、植物の周囲の環境に住む植食者は対抗適応を有している可能性がありますから、トゲの効果はいまいちはっきりしないものとなります。しかし、サボテンのトゲは様々な植食者に対する物理防御として働きますから、1種の植食者の対抗適応だけでその効果を測るべきではないでしょう。
まったく、生物の生態は恐ろしく複雑で、その関係性を知るだけでもこのような難しさがあります。サボテンの他の生物との関わりを含めた生態は、一般的にはあまり知られていないように思われます。これからも、そのような論文をご紹介していければと考えております。




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サボテン科全体を分子系統により分類した論文の続きです。引き続きJurriaan M. de Vosらの2025年の論文、「Phylogenomics and classification of Cactaceae based on hundreds of nuclear genes」をご紹介します。昨日はCereus連のUebelmannia亜連、Aylostera亜連、Rebutia亜連、Gymnocalycium亜連について記事にしました。本日はCereus連のTrichocereus亜連を見ていきます。


Cactus亜科の分子系統(連レベル)
本日はCereus連の続きを扱います。

 ┏Lymanbensonieae
┏┫
┃┗Copiapoeae

┫┏Cacteae
┃┃
┗┫┏Phyllocacteae
    ┃┃
    ┗┫    ┏Fraileeae 
        ┃┏┫
        ┃┃┗Rhipsalideae
        ┗┫
            ┃┏Notocacteae
            ┗┫
                ┗Cereeae


Cereus連の分子系統(亜連レベル)
本日はTrichocereus亜連を扱います。
 
┏Aylosterinae

┫┏Rebutiinae
┃┃
┃┃    ┏Gymnocalyciinae
┗┫┏┫
    ┃┃┗Cereinae
    ┗┫   
        ┃┏Reicheocactinae
        ┗┫
            ┗Trichocereinae


☆Trichocereus亜連(※1)
※1: Borzicactinae、Echinopsidinae、Eriocereinae、Acanthocalyciinaeを含む。
 
Trichocereus亜連は系統学的に基底群と3つの非公式群からなります。この系統は強い支持があるわけではありませんが、その構成は一貫しています。
Trichocereus亜連はカリブ海地域やフロリダにも分布するHarrisia以外は、完全に南米に分布します。小型で球形のものから、柱サボテン状まで多様性があります。花の形態も極めて不安定です。Trichocereus亜連は過去に行われた分類により境地に立たされました。それは、多数の分離種を認める一方で、広義のCleistocactusや広義のEchinopsisといったごく少数の属のみを認めるものでした。このアプローチは不十分で、Schlumberger & Renner(2012)による詳細なサンプリングによる解析でも、Trichocereus亜連の全体に適応出来る解決策はまだ見つかっていません。AcanthocalyciumとDenmozaを別属とするAnderson(2001, 2005)や、Denmozaのみを認めるHuntら(2006)が提唱する広義のEchinopsisの概念は、著者らの系統により支持されているクレード1とほぼ一致します。しかし、Anderson(2002, 2005)やHuntら(2006)が提唱する広義のCleistocactusの概念はまったく受け容れられず、著者らの系統ではクレード2とクレード3に散在します。伝統的に認められている多数の属が多系統であるという状況は、繰り返された平行進化による特徴の類似により、北米のCactus亜連に状況が近いものがあります。


Trichocereus亜連の分類の大部分は、弱く支持されているに過ぎませんが、地理的に比較的一貫性がある3つのクレードの姉妹系統を区別することが出来ます。この支持の弱さはSchlumberger & Renner(2012)による詳細なサンプリングによる調査で示された内容は反映していますが、その系統関係は著者らの結果と共有しているのは一部に過ぎません。特にHarrisiaやWeberbauerocereus、広義のEchinopsisを構成する系統群では配置が異なります。Schlumberger & Renner(2012)によると、WeberbauerocereusはVatricania + 狭義のCleistocactusの姉妹群で、Harrisia + Leucosteleは狭義のEchinopsisの姉妹群でした。Arthrocereusはこれらの姉妹群としています。Franckら(2013)はArthrocereusの明確な位置を見つけられませんでした。Romeiro-Britoら(2022)はArthrocereusをHarrisiaとTrichocereus亜連の残りすべての系統群の姉妹群としましたが支持は弱く矛盾する証拠があるため、さらなる研究が必要です。しかし、HarrisiaとArthrocereusは初期に分岐した系統群であり、Romeiro-Britoら(2023)でも単系統です。Leucosteleの分類も未解決で、Schlumberger & Renner(2012)ではCleistocactus-Echinopsisクレードにおいて、LeucosteleをHarrisiaの姉妹群としていますが、Franckら(2013)では単系統を形成しませんでした。また、Romeiro-Britoら(2023)はLeucosteleをEchinopsisクレードにおいて、Soehrensia formosaの姉妹群てしています。以上のような不確実性を考慮し著者らは暫定的にLeucosteleをTrichocereus亜連の初期分岐系統群に位置付けました。

LeucosteleとReicheocactusを除外した広義のEchinopsisは、Schlumberger & Renner(2012)において2つの主要なクレードに広がっています。これらのすべてが単系統のクレード1として裏付けられた著者らの結果と対照的です。しかし、すべての属が非常に近縁であり、属間雑種が人工的に作られていることからも、Trichocereus亜連にいくつかの非公式群が存在するという著者らの見解は過大評価すべきではありません。これらの雑種は異なる属を含んでいても稔性があり、それらの雑種からさらなる複雑な雑種を作ることが出来ます。そのため、Trichocereus亜連全体を便宜上「Echinopsis comparium」と呼ぶことも出来ます。


①初期分岐系統群
含まれる属: Arthrocereus(※2)、Harrisia(※3)、Leucostele(※4)、Weberbauerocereus

※2: Chapadocereusを含む。※3: Brasiliharisia、Eriocereus、Estevesiaを含む。※4: 暫定的な分類。

┏Reicheocactus亜連
┃ 初期分岐系統群
┫┏Harrisia tortuosa
┃┃ (=Eriocereus tortuosus)
┃┃
┗┫┏Weberobauerocereus
    ┃┃           weberbaueri
    ┗┫┏クレード1
        ┃┃
        ┗┫┏クレード2
            ┗┫
                ┗クレード3

生物地理的に言うならば、この分類群は謎に包まれています。Eriocereusを含むHarrisiaは、アルゼンチン、ボリビア、パラグアイ、ブラジル北西部に散在し、さらにはカリブ海、北はフロリダまで分布します。一方、Weberbauerocereusはペルーのアンデス山脈西部斜面にのみ分布します。Romeiro-Britoら(2023)はブラジル北東部に分布するH. adscendensが、パラグアイやボリビア、アルゼンチンに分布する2種の姉妹群であることを明らかとしました。Franckら(2013)の系統によると、カリブ海に分布する種は単一の系統を形成し、H. adscendensの姉妹群であるとしました。最近記載された単型のEstevesiaは、中央ブラジルの狭い地域の固有種で、Harrisiaと全体的に類似し種子の特徴も共有するため、暫定的にHarrisiaに含めました。

②クレード1(※5)
含まれる属: Acanthocalycium、Denmoza、Echinopsis(狭義、※6)、Setiechiopsis

※5: 広義のEchinopsis=Echinopsis Clade。※6: Acantholobivia、Chamaecereus、Helianthocereus、Lobivia、Pseudolobivia、Soehrensia、狭義のTrichocereusを含む。

    ┏Setiechiopsis mirabilis
┏┫        (=Echinopsis mirabilis)
┃┗Acanthocalycium spiniflorum
┃            (=Echinopsis spiniflora)
┫┏Denmoza rhodacantha
┃┃ 
┗┫┏Lobivia tegeleriana
    ┃┃(=Echinopsis tegeleriana)
    ┃┃(=Acantholobivia tegeleriana)
    ┗┫┏Echinopsis eyriesii
        ┃┃
        ┗┫┏Trichocereus macrogonus
            ┗┫ (=Echinopsis macrogona)
                ┃┏Chamaecereus silvestrii
                ┗┫ (=Echinopsis chamaecereus)
                    ┗Soehrensia bruchii
                        (=Echinopsis bruchii)
                                  

このクレードの多様性の大部分は、広義のEchinopsisに属します。ごく少数の種を除き完全に東アンデスに固有です。以前の分派のほとんどは、生育形態と開花時期や花の色や形態、受粉シンドロームなどの花の特徴の組み合わせにより定義されてきました。Acanthocalycium、Denmoza、SetiechiopsisはSchlumberger & Renner(2012)な系統では、裏付けの乏しいDenmozaクレードを構成していました。SetiechiopsisはDenmozaとAcanthocalycium(Echinopsis leucanthaを含む)の姉妹属とされていますが、著者らのAcanthocalyciumとSetiechiopsisがDenmozaとその他のEchinopsisクレードの姉妹属とするよく支持された系統とは異なります。著者らのサンプリングは単純化されています。Schlumberger & Renner(2012)が示した広義のEchinopsisの種間の複雑な関係は、クレード1がどのように多様化したのかまだ明確に分かっていません。

DSC_0585
Echinopsis rhodotricha
=Acanthocalycium rhodotrichum
神代植物公園(2023年5月)



③クレード2(※7)
含まれる属: Cephalocleistocactus、Cleistocactus(狭義、※8)、Cremnocereus、Samaipaticereus、Vatricania、Winterocereus(※9)、Yungasocereus


※7: East Andean Clade=Cleistocactus Clade。※8: Bolivicereus、Seticleistocactusを含む。※9:= Hilddwintera
 
┏Cleistocactus baumannii
┃     
┫┏Vatricania guentheri
┃┃
┃┃    ┏Samaipaticereus
┗┫┏┫      corroanus
    ┃┃┗Cleistocactus winteri
    ┃┃ (=Winterocereus aureispinus)
    ┗┫┏Yungasocereus
        ┃┃         inquisiviensis
        ┗┫┏Cleistocactus tarijensis
            ┗┫(=Cephalocleistocactus
                ┃                   tarijensis)
                ┗Cleistocactus 
                                 chrysocephalus
               (=Cephalocleistocactus
                               chrysocephalus)                       


Trichocereus亜連の他のすべての系統群とは対照的に、クレード2は全体的な形態や地理的な特徴が均一です。すべての種は円柱状で肋(rib)があり、東アンデスに分布し、ボリビアのアンデス山脈の麓の低地が中心です。ちなみに、Cleistocactusはアルゼンチン北部まで分布します。不可解にもクレード2のほとんどは種が乏しいか単型です。クレード3に分類されるBorzicactusをCleistocactusから除外した場合でも、多系統とされてしまいます。タイプ種であるCleistocactus baumanniiはクレード2の残りすべてと姉妹種であり、C. baumanniiと近縁とされるCleistocactus tarijensisはCephalocleistocactusの姉妹種として別の系統群とされます。Romeiro-Britoら(2023)は分類を合理化し、Samaipaticereus、Vatricania、Yungasocereusを含む拡張された広義のCleistocactusを提案しています。しかし、クレード2の不確実性を考慮するとこの提案は時期尚早であり、より詳細なサンプリングによる評価がされるまで分離の維持を推奨します。

Vatricaniaは長らくEspostoaの異名と見なされてきましたが、Schlumberger & Renner(2012)により初めて狭義のCleistocactusの直系に属することが確認されました。
近年記載されたボリビア原産の単型であるCremnocereusは、ごく狭い地域に2つの分布が知られています。狭義のCleistocactusといくつかの特徴を共有するだけではなく、花はコウモリ媒(chiropterophilous)であることからOreocereusとも異なります。著者らの分類はまったく暫定的なものです。


④クレード3(※10)
含まれる属: Borzicactus(※11)、Espostoa(※12)、Haageocereus(※13)、Lasiocereus、Matucana(※14)、Mila、Oreocereus(※15)、Oroya、Pygmaeocereus、Rauhocereus(?)

※10: Western Andean and High Andean Clade、Oreocereus Clade。※11: Borzicactellaを含む。※12: Pseudoespostoa、Thrixanthocereusを含む。※13: Loxanthocereus、Peruvocereusを含む。※14: Eomatucana、Submatucanaを含む。Anholoniopsis、Perucactusを含む? ※15: Arequipa、Morawetziaを含む。
 
┏Oreocereus pseudofossulatus

┃    ┏Espostoa blossfeldiorum
┫┏┫(=Thrixanthocereus blossfeldiorum)
┃┃┃┏Lasiocereus rupicola
┃┃┗┫
┃┃    ┗Espostoa lanata
┃┃
┗┫┏Haageocereus
    ┃┃       pseudomelanostele
    ┃┃
    ┗┫    ┏Borzicactus
        ┃┏┫     ventimigliae
        ┃┃┗Matucana haynei
        ┗┫
            ┃┏Matucana madisoniorum
            ┗┫ (=Anhaloniopsis madisoniorum)
                ┗Oroya peruviana


クレード3の系統は支持が低いものの、例外的にThrixanthocereusがLasiocereus + Espostoaの姉妹群を形成するクレードは完全に支持されています。2種からなるLasiocereusはペルー北部のRio Maranon流域の狭い地域の固有種です。Ritter(1981)はLasiocereusをTrichocereus亜連に分類しましたが、Nyffeler & Eggli(2010)はRebutia亜連の初期分岐系統の側系統としました。また、Schlumberger & Renner(2012)はLasiocereus fulvusを(Browningia + Sulcorebutia) + (Rebutia + Aylostera)の姉妹群としましたが支持は低いものでした。属のタイプであるLasiocereus rupicolaを狭義のEspostoaの姉妹群とする配置は、新しく裏付けがあります。ペルー北部の原産で共通する形態や花の構造は一致していますが、Lasiocereusは花座(Cephalium)を持ちません。興味深いことに、LasiocereusとThrixanthocereus(=Espostoa)が近縁であることは、Ritter(1981)により既に仮定されていました。

単型のRauhocereusは、Schlumberger & Renner(2012)がEspostoa lanataの姉妹種であることを発見したためクレード3に含めています。

著者らのデータでは上記のクレード3の属以外の類縁関係については、これ以上の結論は出せません。Schlumberger & Renner(2012)はやや詳細にサンプリングしており、MatucanaやBorzicactusは多系統であることが示されています。著者らの解析でも、M. madisoniorumがOroyaの近くで分離されており、多系統である可能性が示されています。

251011100111170
Espostoa ritteri
=Espostoa lanata subsp. lanata
東京農業大学バイオリウム(2025年10月)



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Matucana aureiflora
JSS、サボテン・多肉植物展(2025年10月)



最後に
以上が論文の簡単な要約です。
近年の遺伝情報に基づく分類では、特にMammillariaの仲間とTrichocereusの仲間が大きな改変に見舞われました。今回取り上げたTrichocereus亜連は、少し前までTrichocereusやRebutia、LobiviaあたりはすべてEchinopsisに統合されてしまいました。その後行われた分子系統においては、肥大化したEchinopsisにまとまりが見られないことから、再分割され現在に至ります。しかし、今回の論文は以前の論文とは必ずしも系統分類が一致せず、系統の分岐の支持も低いものでした。おそらく、急激に種分化したため解析が難しいのでしょう。それでも、著者らは自然分布も考慮に入れているのは新しい観点です。一般的に分布を拡大し移動しながら種分化しますから、進化の経路を考えた場合は自然分布も根拠の1つでしょう。

長々と続いたサボテン科の分類の記事は本日で終了です。2025年に発表されたばかりの最新の研究成果となります。新しく分かったことや、近年の他の分子系統の結果を再確認し裏付けるものもありました。しかし、今回の論文はサボテン科全体の解析のため、沢山の属は解析していますが、各属あたりの種数は少ないものです。どうしても属内分類はこの論文では分かりません。ある属が単系統ではなく多系統である可能性は、さらなる詳細なサンプリングによる解析でなければ分かりません。ですから、これからもサボテン科の分類について、新たな論文が出ましたら記事にしていきたいと考えております。



ちなみに、本論文は案を提唱している段階ですので、現在認められている分類ではないことに注意が必要です。今回扱った範囲の現在の属分類を一応お示しします。

Arthrocereus(4種、Chapadocereusを含む)、Harrisia(18種、Brasiliharisia、Eriocereus、Erythrocereus、Roseocereus)、Leucostele(13種)、Weberbauerocereus(8種、Meyeniaを含む)
Estevesia(→Cereus)

Acanthocalycium(5種)、Denmoza(→Echinopsis)、Echinopsis(21種、Andenea、Aureilobivia、Cosmantha、× Cosmopsis、Denmoza、Echinonyctanthus、Hymenorebutia、Pilopsis、Salpingolobivia、× Salpingolobiviopsisを含む)、Setiechiopsis(1種、Acanthopetalus)
Acantholobivia(→Lobivia)、Chamaecereus(5種)、Helianthocereus(→Soehrensia)、Lobivia(31種、Acanthanthus、Acantholobivia、Cinnabarinea、Furiolobivia、Hymenorebulobivia、Lobiviopsis、Mesechinopsis、Neolobivia、Pseudolobivia、Scoparebutiaを含む)、Pseudolobivia(→Lobivia)、Soehrensia(24種、Helianthocereus、Megalobiviaを含む)、Trichocereus(4種)

Cephalocleistocactus(→Cleistocactus)、Cleistocactus(30種、Akersia、Bolivicereus、Borzicactella、Cephalocleistocactus、Cleistocereus、Clistanthocereus、Hildewintera、Maritimocereus、Samaipaticereus、Seticleistocactus、Varticania、Winteria、Winterocereus、Yungasocereusを含む)、Cremnocereus(1種)、Samaipaticereus(→Cleistocactus)、Vatricania(→Cleistocactus)、Winterocereus(→Cleistocactus)、Yungasocereus(→Cleistocactus)

Borzicactus(10種、Seticereusを含む)、Espostoa(11種、Binghamia、Pseudoespostoa、Thrixanthocereusを含む)、Haageocereus(7種、Floresia、Haageocactus、Peruvocereusを含む)、Lasiocereus(2種)、Matucana(25種、Anhaloniopsis、Eomatucana、Oroya、Perucactusを含む)、Mila(1種)、Oreocereus(8種、Arequipa、Arequipopsis、Moraquipa、Morawetzia、Submatucanaを含む)、Oroya(→Matucana)、Pygmaeocereus(3種)、Rauhocereus(1種)
Loxanthocereus(12種)


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サボテン科全体を分子系統により分類した論文の続きです。引き続きJurriaan M. de Vosらの2025年の論文、「Phylogenomics and classification of Cactaceae based on hundreds of nuclear genes」をご紹介します。昨日はCereus連のUebelmannia亜連、Aylostera亜連、Rebutia亜連、Gymnocalycium亜連について記事にしました。本日はCereus連の残りの、Cereus亜連とReicheocactus亜連を見ていきます。


Cactus亜科の分子系統(連レベル)
本日はCereus連の続きを扱います。

 ┏Lymanbensonieae
┏┫
┃┗Copiapoeae

┫┏Cacteae
┃┃
┗┫┏Phyllocacteae
    ┃┃
    ┗┫    ┏Fraileeae 
        ┃┏┫
        ┃┃┗Rhipsalideae
        ┗┫
            ┃┏Notocacteae
            ┗┫
                ┗Cereeae


Cereus連の分子系統(亜連レベル)
本日はUebelmannia亜連とCereus亜連、Reicheocactus亜連を扱います。
 
┏Aylosterinae

┫┏Rebutiinae
┃┃
┃┃    ┏Gymnocalyciinae
┗┫┏┫
    ┃┃┗Cereinae
    ┗┫   
        ┃┏Reicheocactinae
        ┗┫
            ┗Trichocereinae


☆Cereus亜連(※1)
※1: Discocactus亜連、Melocactus亜連、Pilosocereus亜連を含む。

南米東部と北東部にほぼ限定された系統群です。ただし、カリブ海地域や中米、メキシコ、フロリダにも分布するものもあります。Cereus亜連の多様性の大部分はブラジル北東部に見られる属により構成されます。いくつかの属には花座(Cephalium)が見られます。CoelocephalocereusやEspostoopsis、Facheiroa、広義のMicranthocereusの花座は側面にあり、DiscocactusやMelocactusは先端、ArrojadoaやStephanocereusは環状につきます。
Cereus亜連のサンプリングは不十分です。解析結果の不確実性や不十分な支持は、急速に多様化した結果であることを示唆します。著者らの結果に、Romeiro-Britoら(2023)のデータを散りばめました。よって、Cereus亜連は未解決なクレードから構成されており、明確な境界があり種の多い非公式なクレードを復元しています。

①初期に分岐した群
含まれる属: Brasilicereus(※2)、Cereus(※3)、Cipocereus(※4)、Facheiroa(※5)、Leocereus、Praecereus、Stetsonia

※2: Bragaiaを含む。※3: Mirabella、Subpilocereusを含む。Serrulatocereusを含む? ※4: Floribundaを含まない。※5: Zehntnerellaを含む。

┏Praecereus euchlorus

┫┏Stetsonia coryne
┃┃
┃┃    ┏Cereus fricii
┗┫┏┫ (=Subpilocereus fricii)
    ┃┃┃┏Cereus hexagonus
    ┃┃┗┫
    ┃┃    ┗Cereus jamacaru
    ┗┫   
        ┃     ┏Leocereus bahiensis
        ┃┏ ┫
        ┃┃ ┗Facheiroa ulei
        ┗┫
            ┃┏Brasilicereus phaecanthus
            ┗┫  
                ┗非公式系統群
                

系統的に基底的な群で、Cereusクレード、Facheiroaクレード、Romeiro-Britoら(2023)のStetsoniaとPraecereusに相当します。PraecereusとStetsoniaがこの群の初期分岐に位置付けられていることは花序の構造と一致します。しかし、正確な位置は不明です。著者らのデータと異なり、Francoら(2017)やRomeiro-Britoら(2022, 2023)は、StetsoniaをCereus亜連の残りの属の姉妹群としています。Romeiro-Britoら(2016)の系統分類において、PraecereusはCereus属の2種とクレードを形成しています。しかし、Francoら(2017)やRomeiro-Britoら(2022)では、PraecereusをCereusおよびCipocereusの姉妹群としています。一方、Fantinatiら(2021)は、PraecereusがCereusに深く関係することを示しています。Cereus属の関係性は以前として大部分が未解決であり、カリブ海地域原産の2種のCereusは、Romeiro-Britoら(2023)のデータでは単系統ですが、Francoら(2017)のデータでは単系統ではありません。

Cipocereusの配置も未解決です。Francoら(2017)は、CipocereusをMirabellaの姉妹種とし、さらにPraecereusやCereusを含む他の系統群の姉妹種としました。対照的にAmaralら(2021)とRomeiro-Britoら(2023)は、PraecereusとCipocereusがCereusの連続した姉妹種としており、Romeiro-Britoら(2022)では使用したデータの違いによりCipocereusがCereusに埋め込まれているかMirabellaの姉妹種であるかという矛盾した結果を示しました。後者についてはFantinatiら(2021)でも見られ、これらを合わせるとCipocereusとPraecereusを含むより広いCereusを主張出来る可能性があります。

本研究に見られるLeocereusとFacheiroaの近縁性は、Schlumberger & Renner(2012)により初めて確認されました。この近縁性は花序の構造にも反映されており、周皮には多数の鱗片が密集し、しばしば豊富なフェルト層を有します。歴史的にはBarthlott & Hunt(1993)やTaylor & Zappi(2004)により、Trichocereus亜連に分類されていました。これは、Trichocereus亜連の周皮に毛があることによります。また、Fantinatiら(2021)はLeocereusをBrasiliの姉妹としており、Romeiro-Britoら(2022)はLeocereusは解析していないものFacheiroaをBrasilicereusの姉妹としています。著者らのデータでは、BrasilicereusはFacheiroa + Leocereusのクレードに属しませんが、Cereus亜連の残り(非合法群)と姉妹であるとしましたが根拠は薄いものです。

Romeiro-Britoら(2023)のサンプルにはBragaia estevesiiも含まれています。Bragaiaは形態学的にはBrasilicereusと区別することは困難です。Facheiroa系統群を、狭義のBrasilicereus + (Bragaia + (Facheiroa + Leocereus))とし、側系統となる広義のBrasilicereusを解決するためにBragaiaとBrasilicereus、Leocereusを拡張されたFacheiroaに含めることを提案しました。しかし、形態学的な顕著な違いなどを考慮して、これは時期尚早であると著者らは考えます。

241201101646609
Cereus repandus
夢の島熱帯植物館(2024年12月)



②非公式系統群【Melocactus亜連 + Pilocereus亜連】
含まれる属: Arrojadoa(※6)、Coelocephalocereus(※7)、Discocactus、Espostoopsis、Floribunda、Lagenosocereus、Melocactus、Micranthocereus(※8)、Pierrebraunia、Pilosocereus、Siccobaccatus、Stephanocereus、Xiquexique(※9)

※6: Arrojadoopsisを含む。※7: Buiningia、Mariottiaを含む。※8: Austrocephalocereus、Viridicereusを含む。※9: Caerulocereusを含む?

┏Micranthocereus polyanthus
┫           
┃┏Espostoopsis dybowskii
┃┃
┗┫    ┏Coelocephalocereus aureus
    ┃┏┫ (=Buiningia)
    ┃┃┗Coelocephalocereus
    ┃┃              fluminensis
    ┗┫
        ┃    ┏Discocactus zehntneri
        ┃┏┫          
        ┃┃┗Melocactus oreas
        ┗┫              
            ┃    ┏Xiquexique gounellei
            ┃┏┫(=Pilosocereus gounellei)
            ┃┃┃ 
            ┃┃┗Pilosocereus
            ┗┫           leucocephalus
                ┃
                ┃┏Arrojadoa pusilliflora
                ┗┫ (=Floribunda pusilliflora)
                    ┃ (=Cipocereus pusilliflorus)
                    ┃┏Stephanocereus
                    ┗┫            leucostele
                        ┗Arrojadoa rhodantha


ブラジル北東部原産のEspostoopsisはEspostoaとの表面的な類似により、以前はTrichocereus亜連に含まれると考えられてきました。 著者らの非公式系統群の中では、もっとも初期の分岐枝の中にあります。Schlumberger &  Renner(2012)はEspostoopsisをMicranthocereus densiflorusの姉妹種としましたが、ブラジルにおけるサンプリングは不十分なものでした。初期に分岐した系統群は解析ごとに異なります。著者らのデータでは、狭義のMicranthocereusはCereus亜連の非公式系統群の残りすべての属の姉妹属としましたが、Romeiro-Britoら(2023)はEspostoopsisが狭義のMicranthocereusと残りの属の姉妹属としました。高い支持がなく正当性にかけるため、この系統群には正式な命名をせず、非公式系統群とします。

広義のCoelocephalocereus、すなわちBuiningiaは完全に支持されており、Romeiro-Britoら(2023)もこれを確認しています。DiscocactusとMelocactusとの関係も同様です。両者は通常は分岐せず頂端に花座を持ちます。Discocactusは夜行性でスズメガ媒(sphingophilous)で、Melocactusは昼行性で鳥媒(ornithophilous)です。

StephanocereusとArrojadoaの密接な関係性は、輪状の花座が共通することからも言えます。また、Stephanocereusは夜行性でコウモリ媒(chiropterophilous)、Arrojadoaは昼行性、または薄明薄暮性で鳥媒です。著者らはFloribunda pusilliflora(一般的にはCipocereus)をArrojadoa-Stephanocereusクレードの姉妹種と位置付けましたが、これはRomeiro-Britoら(2023)やFantinatiら(2021)においても確認されています。Romeiro-Britoら(2023)のサンプルの種類が多い解析では、Pierrebraunia bahiensisとStephanocereus luetzelburgiiは、Micranthocereus violaciflorusと共にArrojadoa-Stephanocereusクレードの構成種とされました。Floribunda、Pierrebraunia、Lagenosocereusは花座を形成しませんが、Micranthocereus violaciflorusは側頭に花座を形成し、StephanocereusとArrojadoaは断続的に環状に花座を形成します。Romeiro-Britoら(2023)は大胆にもこれらすべてを拡張されたArrojadoaに含めています。分析されたMicranthocereus violaciflorus以外のすべての系統群が完全に支持されたため、Floribunda + ((Pierrebraunia) + (Lagenosocereus + Stephanocereus) + Arrojadoaと認識した方が進化の分岐をより適切に表すことが出来るとしています。このLagenosocereusとPierrebrauniaの配置は、Fantinatiら(2021)により発見されました。Micranthocereus violaciflorusについては、当面は未解決な孤児として扱う方が最善であり、Guiggi(2024)による単型属Viridicereusとして分離するのは時期尚早です。

広義のPilocereusとMicranthocereusは、Cereus亜連のブラジル原産種に焦点を当てた複数の研究により注目を集めています。Calventeら(2017)やLavorら(2019, 2000)、Fantinatiら(2021)では、Pilosocereusから分離されたXiquexiqueが狭義のPilosocereusとは異なる十分に裏付けられた系統群であることを発見しました。これは、Romeiro-Britoら(2022, 2023)による詳細な研究によっても裏付けられています。さらに、Xiquexiqueを除くPilosocereusはP. bohlei(=X. bohlei)を除いた場合には単系統になります。Romeiro-Britoら(2023)ではP. bohleiはXiquexiqueの姉妹種であるとしていますが、裏付けは限られています。Fantinatiら(2021)やRomeiro-Britoら(2022, 2023)はMicranthocereusを多系統群としました。基準種であるM. polyanthusとその他のAustrocephalocereusを含む数種は、Xiquexiqueの姉妹系統群を形成します。Fantinatiら(2021)はCoelocephalocereus goebelianusの姉妹系統としてM. aurei-azureusを発見しました。Romeiro-Britoら(2023)はMicranthocereusの顕著な多系統性を明らかとしています。MicranthocereusはXiquexiqueの姉妹種ですが、以前はSiccobaccatusとして分離されていた種がCoelocephalocereusの姉妹種とされていました。SiccobaccatusはCoelocephalocereus goebelianusと形態は似ていますが、茎の組織が乾燥させても崩れないという解剖学的な構造が異なります。よって、著者らはこの差異に注目し分離属を認めます。

過去の複数の研究では、ブラジルのBahia中央の狭い地域の固有種であるPilosocereus aureispinusが残りすべての同属の分類群の姉妹種であり、ブラジル国外に分布するPilosocereusはブラジル東部に分布するPilosocereus chrysosteleを姉妹種として狭義のPilosocereusに属し、単一の系統群を形成します。

250427094030938
Melocactus matanzanus
春の多肉植物・サボテン展示会、川口緑地センター樹里庵(2025年4月)



240622110008482
Melocactus bahiensis
筑波実験植物園(2024年6月)


240622105951880
Melocactus zehntneri
筑波実験植物園(2024年6月)


☆Reicheocactus亜連
含まれる属: Reicheocactus


矮性の球形から短い円筒形で、節はなく通常は単生です。塊茎状の主根を持ち、多数の密集した低い肋があります。櫛歯状で弱いトゲがあります。花は昼行性で、外果皮の鱗片には豊富な綿毛と毛があります。

アルゼンチン中部のアンデス山脈東部の斜面に分布するReicheocactusがTrichocereus亜連の姉妹群であり孤立しているという見解は、Schlumberger & Renner(2012)により初めて指摘され十分な裏付けがあります。本研究もこれを裏付けています。単属の亜連を形成しその孤立した位置付けが強調されます。Reicheocactus famatimensisは、長年に渡りEchinopsis densispina やEriosyce odieriに誤認されてきました。


最後に
以上が論文の簡単な要約です。
本日の中心はCereus亜連でした。系統図を見ればおわかりの通り、非常に複雑で入り組んでいます。解析は不十分であり、著者らも正式な分類は時期尚早と考えています。さて、このグループは、基本的に柱サボテンにより形成されますが、DiscocactusやMelocactusなど球形のものも含まれます。また、Cephaliumと呼ばれる特徴的な花座を持つものもいくつかありますが、基本的にMelocactusくらいしか見たことがありません。あまり一般的ではない属が多いように思われます。
Reicheocactusは1種で亜連を形成します。かつては、RebutiaやLobiviaてされてきましたが、現在ではReicheocactus famatinensisとなっています。しかし、柱サボテン状でもなく肋ではなく結節(イボ)からなる見た目は、分類学的な位置を見るととても不思議です。
さて、長々と続いたサボテンの最新分類についての記事も次回で最後です。分類が混乱して名前がコロコロ変わったTrichocereus亜連の分類となります。


ちなみに、本論文は案を提唱している段階ですので、現在認められている分類ではないことに注意が必要です。今回扱った範囲の現在の属分類を一応お示しします。

Brasilicereus(→Facheiroa)、Cereus(29種、Cirinosum、Estevesia、Mirabella、Piptanthocereus、Praepilocereus、Subpilocereusを含む)、Cipocereus(5種)、Facheiroa(8種、Bragaia、Brasilicereus、Leocereus、Zehntnerellaを含む)、Leocereus(→Facheiroa)、Praecereus(2種、Monvillea、× Prilleaを含む)、Stetsonia(1種)、Serrulatocereus(1種)

Arrojadoa(14種、Arrojadoopsis、Floribunda、Lagenosocereus、Pierrebraunia、Stephanocereus、Viridicereusを含む)、Coelocephalocereus(9種、Buiningia、Mariottia、Siccobaccausを含む)、Discocactus(15種、Neodiscocactusを含む)、Espostoopsis(1種、Gerocephalusを含む)、Floribunda(→Arrojadoa)、Lagenosocereus(→Arrojadoa)、Melocactus(48種)、Micranthocereus(10 種、Austrocephalocereusを含む)、Pierrebraunia(→Arrojadoa)、Pilosocereus(56種、Pseudopilocereusを含む)、Siccobaccatus(→Coelocephalocereus)、Stephanocereus(→Arrojadoa)、Xiquexique(3種、Caerulocereusを含む)

Reicheocactus(1種)


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サボテン科全体を分子系統により分類した論文の続きです。引き続きJurriaan M. de Vosらの2025年の論文、「Phylogenomics and classification of Cactaceae based on hundreds of nuclear genes」をご紹介します。本日はCactus亜科Cereus連の解説と、Cereus亜連のUebelmannia亜連とAylostera亜連、Rebutia亜連、Gymnocalycium亜連を見ていきます。


Cactus亜科の分子系統(連レベル)
本日はCereus連を扱います。

 ┏Lymanbensonieae
┏┫
┃┗Copiapoeae

┫┏Cacteae
┃┃
┗┫┏Phyllocacteae
    ┃┃
    ┗┫    ┏Fraileeae 
        ┃┏┫
        ┃┃┗Rhipsalideae
        ┗┫
            ┃┏Notocacteae
            ┗┫
                ┗Cereeae



★Cereus連(※1)
※1: Melocacteae、Harrisieae、Trichocereeae、Brownningieae、Echinopsideae、Acanthocalycieaeをを含む。


Cereus連の分子系統(亜連レベル)
本日はUebelmannia亜連とAylostera亜連、Rebutia亜連、Gymnocalycium亜連を扱います。
 
Aylosterinae

┫┏Rebutiinae
┃┃
┃┃    ┏Gymnocalyciinae
┗┫┏┫
    ┃┃┗Cereinae
    ┗┫   
        ┃┏Reicheocactinae
        ┗┫
            ┗Trichocereinae



ごく稀に着生(Echinopsis arboricola)する、小型で球形の単生から群生、あるいは象徴的な柱状や燭台状まで多種多様です。多くの場合、頭状部が明確に変化し(Cephalium)、花は多様です。

Cereus連は分布がほぼ南米に限定されている単系統のクレードです。CereusやHarrisa 、Melocactus、Pilosocereusの中のごく少数の種が中米やメキシコ、カリブ海地域、米国のフロリダまで広がっています。
Cereus連の種の多様性の大部分は、Cereus亜連とTrichocereus亜連に属します。形態は多様で、矮性の孤立した球形のものから柱サボテンまで連続しています。いくつかの系統では生殖する茎部分(Cephalia)が顕著です。ブラジル原産のCereus亜連では先端あるいは環状のCephaliumが見られ、Cereus亜連やTrichocereus亜連のいくつかの系統では側方にCephaliumが見られます。側方のCephaliumは、MicranthocereusやEspostoaの形態学上の「鍵」である特徴として、繰り返し使用されてきました。しかし、それらは平行進化によるものでしかありません。


著者らのデータでは、Cereus連の最初の分岐はAylostera亜連です。次に分岐するRebutia亜連は謎を抱えており、不確定なものです。これは、円柱状や枝分かれした樹木状のBrowningiaや、小型で球形のRebutiaやWeingartiaといった極端な多様性が関係していると考えられます。

Uebelmanniaはブラジル北東部カンポ・ルペストレ植生に生えます。UebelmanniaはそのタイプであるU. gutmiferaが顕著なゴム道(gum duct)を有する特異的な茎を持ちます。
著者らは解析していませんが、Silvaら(2020)やZappiら(2024)はUebelmanniaをCereus連の早期の分岐における単属のクレードと位置付けており、その根拠とする論文がいくつかあります。歴史的にUebelmanniaは、Barthlott & Hunt(1993)はNotocactus連に、Taylor & Zappi(2004)はTrichocereus連に分類されてきました。

種数が豊富なCereus亜連とTrichocereus亜連は、従来の分類では単一属の最古のクレードのパターンを共有します。Cereus亜連のGymnocalyciumをGymnocalycium亜連とし、Trichocereus亜連のReicheocactusをReicheocactus亜連とすることを提案します。


☆Uebelmannia亜連
含まれる属: Uebelmannia


属のタイプであるU. gutmiferaは黄色の花や球形な姿から、当初はParodiaとして記載されました。分布はブラジルのミナス・ジェライス州中心部に限定されます。


☆Aylostera亜連
含まれる属: Aylostera(※2)

※2: Digitorebutia、Mediolobiviaを含む。


Aylostera亜連、Rebutia亜連の分子系統
 
  Aylostera亜連
    ┏Aylostera einstenii
    ┃    (=Rebutia einstenii)
┏┫┏Aylostera pygmaea
┃┗┫(=Digitorebutia haagei)
┃    ┗Aylostera(Rebutia)fiebrigii
┃          (=Rebutia fiebrigii)
┃      Rebutia亜連
┃    ┏Rebutia minuscula

┫┏┫
┃┃┃┏Browningia candelaris
┃┃┗┫
┃┃    ┃┏Weingartia fidana
┃┃    ┗┫
┃┃        ┃┏Weingartia steinbachii
┃┃        ┗┫(=Sulcorebutia steinbachii)
┃┃            ┃┏Weingartia
┃┃            ┗┫   neocumingii
┃┃                ┗Weingartia neocumingii
┃┃                         subsp. pulquinensis
┃┃                   (=Gymnorebutia pulquinensis)     

┃┃    ┏Gymnocalycium亜連
┗┫┏┫
    ┃┃┗Cereus亜連
    ┗┫   
        ┃┏Reicheocactus亜連
        ┗┫
            ┗Trichocereus亜連

広義のRebutiaの多様性は、Ritzら(2007)により明らかとされており、Mostiら(2011)やRitzら(2016)により裏付けられています。広義のRebutiaとは、Anderson(2001, 2005)ではAylosteraやDigitorebutia、Mediolobiviaを含み、Huntら(2006)ではCintiaやWeingartiaを含むものでした。AylosteraとRebutiaを別の属として認識することは、Aylosteraは6〜8花粉片で狭義のRebutiaは3花粉片であるという花粉の形態の違いと整合性があります。

AylosteraはRitzら(2016)により詳細に研究されており、Aylosteraに合致する3系統群に分けられます。2つの系統はDigitorebutiaとMediolobiviaに相当します。ちなみに、著者らはA. einsteiniiを解析しましたが、Ritzらはこれを属のタイプであるA. aureifloraの異名と見なしました。この結果は著者らの分析により裏付けられています。広義のAylosteraは、Mediolobivia(A. einsteinii) + (狭義のAylostera + Digitorebutia)という分岐となりましたが、サンプル数が多いRitzら(2016)では(Mediolobivia + Aylostera) + Digitorebutiaとされています。


☆Rebutia亜連(※3)
含まれる属: Browningia(※4)、Rebutia(狭義)、Weingartia(※5)

※3: Browningiinaeを含む。※4: Azureocereus、Gymnanthocereus、Gymnocereusを含むが、Leptocereus亜連のCastellanosiaを含まない。※5: Cintia、Gymnorebutia、Sulcorebutiaを含む。

狭義のRebutia、Browningia、WeingartiaからなるRebutia亜連は、もっとも謎めいた系統群です。Lendelら(2006)とRitzら(2007)の暫定的なデータにより初めて明らかとなりましたが、Schlumpberger & Renner(2012)の系統にも見られます。

RebutiaとWeingartiaの矮性で球形の形態と、Browningiaの枝分かれした樹木状の形態との間の相違点は極めて顕著です。著者らの系統やRitzら(2007)の系統の支持が低いのは、BrowningiaがRebutiaやWeingartiaに対し長く孤立して進化したためであると考えられます。GymnanthocereusやAzureocereus、Gymnocereusを含む解析が行われることを期待します。また、Schlumberger + Renner(2012)は、Lasiocereus fulvusをBrowningia-Rebutia-Weingartiaクレードの姉妹種としましたが、著者らは属のタイプであるL. fulvusをTrichocereusに属する種であると特定しました。

広義のWeingartiaの単系統性は、Browningia-Rebutia-Weingartiaクレードの姉妹種としています。これは、Ritzら(2007)やMostiら(2011)の研究とは対照的に、著者らのデータでは裏付けられています。


250427094037626
Rebutia perplexa
春の多肉植物・サボテン展示会、川口緑地センター樹里庵(2025年4月)



☆Gymnocalycium亜連
含まれる属: Gymnocalycium(※6)

※6: Brachycalyciumを含む。

Gymnocalyciumはブラジル南部やウルグアイからパラグアイ、ボリビア、南部はパタゴニア地方までアルゼンチンに至る、南米東部の平野およびアンデス山脈斜面に分布します。近年の研究ではGymnocalyciumは単系統であることは一致していますが、属の内部の分類はそれぞれ異なります。また、GymnocalyciumのCereus連内の位置付けは依然として議論が続いています。Ritzら(2007)はGymnocalyciumをTrichocereus亜連の姉妹群としましたが、その根拠は薄いとしています。GymnocalyciumはCereus連の中でも非常に孤立しているため、単属の亜連であるGymnocalycium亜連を提案します。

250831170801616
Gymnocalycium friedrichii LB 2178


250721135142299
Gymnocalycium spegazzinii subsp. cardenasianum


最後に
以上が論文の簡単な要約です。
本日はウエベルマンニア(ユーベルマニア)亜連、アイロステラ亜連、レブチア亜連、ギムノカリキウム亜連についてでした。
ウエベルマンニアは外見的な特異性そのままに、分離された亜連としています。しかし、著者らはサンプリングしていないため、分子系統にはありません。
レブチアは分離されてわずか3種からなる小属です。遺伝的に2群に分けられるため、片方はアイロステラになりました。しかも、2属に分けられるだけではなく、亜連レベルで異なるという見解には驚かされます。
ギムノカリキウムはまとまりのある単系統群です。属内分類もある程度は傾向が解析されています。以前、当該論文を記事にしたことがありますので、そちらもご参照下さい。



ちなみに、本論文は案を提唱している段階ですので、現在認められている分類ではないことに注意が必要です。今回扱った範囲の現在の属分類を一応お示しします。

Uebelmannia(4種)

Aylostera(27種、Cylindrorebutia、Digitorebutia、Echinolobivia、Echinorebutia、Mediolobivia、Rebulobivia、Setirebutiaを含む)

Browningia(11種、Azureocereus、Gymnanthocereus、Gymnocereusを含む)、Rebutia(3種、Eurebutiaを含む)、Weingartia(34種、Neogymnantha、Spegazzinia、Bridgesia、Cintia、Gymnantha、Gymnorebutia、Sulcorebutiaを含む)

Gymnocalycium(67種、Brachycalyciumを含む)



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サボテン科全体を分子系統により分類した論文の続きです。引き続きJurriaan M. de Vosらの2025年の論文、「Phylogenomics and classification of Cactaceae based on hundreds of nuclear genes」をご紹介します。本日はCactus亜科のFrailea連、Rhipsalis連、Notocactus連を見ていきます。


Cactus亜科の分子系統(連レベル)
本日はFrailea連、Rhipsalis連、Notocactus連を扱います。

 ┏Lymanbensonieae
┏┫
┃┗Copiapoeae

┫┏Cacteae
┃┃
┗┫┏Phyllocacteae
    ┃┃
    ┗┫    ┏Fraileeae 
        ┃┏┫
        ┃┃┗Rhipsalideae
        ┗┫
            ┃┏Notocacteae
            ┗┫
                ┗Cereeae


★Frailea連
含まれる属: Frailea

ブラジル南部、ウルグアイ、パラグアイ、ボリビア、アルゼンチン北部などの南米東部の、低地の岩場から砂質の草原に自生します。体は埋まる場合と埋まらない場合があります。
Fraileaが孤立下位置付けにあることは、以前から知られており、Nyffeler & Eggli(2010a)は孤児としています。Rhipsalis連の姉妹群に位置付けられていますが、極めて謎めいています。その根拠は限られ、支持も乏しいものでした。


241019164926369
Frailea castanea


Frailea連とRhipsalis連の分子系統

┏Frailea chiquitana

┫┏Rhipsalidopsis rosea
┃┃ (=Hatiola rosea)
┗┫┏Lepismium cruciforme
    ┃┃
    ┗┫┏Schlumbergera
        ┃┃    russelliana
        ┗┫┏Hatiora salicornioides
            ┃┃
            ┗┫┏Rhipsalis baccifera
                ┗┫
                    ┗Rhipsalis teres



★Rhipsalis連
含まれる属: Hatiora(※1)、Lepismium(※2)、Rhipsalidopsis、Rhipsalis(※3)、Schlumbergera(※4)

※1: Rhipsalidopsisを含まない。※2: Acanthocereus、Pfeifferaを含まない。※3: Erythrorhipsalisを含まない。※4: PseudozygocactusとZygocactusを含む。

着生性または稀に岩生性の矮性低木。分節する茎は広がるか垂れ下がり、茎は円錐形または扁平な枝状です。トゲは弱く、時に微細な毛状突起に退縮しています。花は昼行性です。

Rhipsalis連は5属からなる着生性の単系統群です。主に南米に分布しますが、RhipsalisはR. bacciferaがアフリカ、マダガスカル、スリランカまで分布します。広義のHatioraはCalventeら(2011a)やKorotkovaら(2011)と同様に、著者らの解析でも単系統ではありません。また、Rhipsalidopsis(イースターカクタス)は、平らな枝分かれした茎と、赤色からピンク色までの花を持つ種として明確に区別されるべきですが、Hatioraには円錐形でしばしば棍棒状の茎と黄色またはピンク色の花を持つ種を含みます。Hatiora epiphylloidesはかつてPseudozygocactusとして分離されましたが、Calventeら(2011a)やKorotkovaら(2011)により、Schlumbergeraに組み込まれていることが発見されました。しかし、茎の形状はRhipsalis連全体に渡り不安定で、Calventeら(2011a)は円錐形と扁平の茎の遷移を複数回発見しています。

著者らの系統は上記と矛盾していますが、Rhipsalis連の初期の分岐点の支持は弱いものです。著者らはRhipsalidopsisとLepismiumを、Schlumbergera + (Hatiora + Rhipsalis)の連続した姉妹群としましたが、Calventeら(2011a)はRhipsalidopsisをSchlumbergeraの姉妹群としています。Korotkovaら(2011)はH. epiphylloidesを含むSchlumbergeraとHatioraを、Rhipsalidopsis + (Lepismium + Rhipsalis)の連続した姉妹群としています。上述の改定されたLepismiumとRhipsalisは、近年のすべての研究において単系統されており、淡い色の半透明の花を咲かせます。

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Hatiora salicornoides
東京農業大学バイオリウム(2025年1月)


★Notocactus連(※5)
含まれる属: Eriosyce(※6)、Neowerdermannia、Parodia(※7)、Yavia

※5: Parodieaeを含む。※6: Diaguita、Guerreroa、Horridocactus、Islaya、Neoporteria、Neotanahashi、Pyrrhocactus、Rimacactus、Thelocephalaを含む。※7: Acanthocephala、Brasiliparodia、Eriocephala、Notocactus、Wigginsiaを含む。

Notocactus連の分子系統

  ┏Eriosyce aurata
 ┏┫
 ┃┗Eriosyce islayensis
┏┫       (=Islaya islayaensis )
┃┃┏Eriosyce strausiana
┃┗┫ (=Pyrrhocactus strausianus)
┃ ┗Eriosyce subgibbosa
┫        (=Neoporteria subgibbosa)
┃    ┏Yavia cryptocarpa
┃┏┫
┃┃┗Neowerdermannia
┃┃            vorwerkii
┃┃ ┏Parodia schumanniana
┗┫┏┫(=Eriocactus schumannianus)
    ┃┃┗ Parodia haselbergii
    ┗┫   (=Brasilicactus graessneri)
        ┃┏Parodia microsperma
        ┗┫
            ┃┏Parodia erinaceus
            ┗┫ (=Wigginsia sellowii)
                ┗Parodia ottonis
                        (=Notocactus ottonis)

   

分布は南米に限定されます。球形で矮性から中型で、茎に節はなく花は昼行性です。ブラジル南部のサンタカリーナ高地からアルゼンチン南部と中部、アンデス山脈の高地とチリ中部からペルー中部の乾燥した海岸まで分布します。

著者らの研究では広義のEriosyceが同定されました。それは、Islayaを含む狭義のEriosyceと、HorridocactusとPyrrhocactusを含むNeoporteriaから構成されると推定され、Barcenasら(2011)やHernandez-Hernandezら(2011)による解析、さらにGuerroら(2019)により広義のEriosyceの詳細なサンプリングによる研究と一致します。Eriosyceは西アンデスと東アンデスで繰り返し分離した、複雑な生物地理的な歴史を持つ可能性が高いようです。Guerroら(2019)によると、アルゼンチンに残る分類群であるE. strausiana(Pyrrhocactus)などは、広義のEriosyceの残りのクレードの中に埋もれているとしています。しかし、不可解なことに、チリ北部原産のE. lauiを他の3属により形成されるクレードの一部として、YaviaとNeowerdermanniaの姉妹種としました。これは、単型のRimacactusの分離を裏付けています。アルゼンチン原産のYaviaと、アルゼンチンとボリビア、ペルー、チリ北部原産のNeowerdermanniaは、アンデス山脈の高地に分布しますが、Rimacactusの分布はチリ北部の西アンデスの斜面に限られます。

NotocactusやWigginsiaを含む広義のParodiaは、単系統であることが確認されています。しかし、Acanthocephala (=Brasilicactus)は、分布はブラジル南部に限定され、Eriocephala(=Eriocactus)はブラジル南部やパラグアイ、アルゼンチン北東部に限定され、その分類は十分な裏付けがありません。本研究では確認していないBrasiliparodiaも、同様にブラジル南部に限定して分布します。これらの分類群は分布域が狭く、湿潤な気候の岩場に限定して生息します。これらは、すべてのNotocactus、Wigginsia、狭義のParodiaの、祖先的な孤立した遺存種である可能性があります。


250427094015643
Parodia scopa
=Notocactus rudibuenekeri

春の多肉植物・サボテン展示会、川口緑地センター樹里庵(2025年4月)


最後に
以上が論文の簡単な要約です。
Fraileaは1属で1つの連(tribe)となっています。Rhipsalis連の姉妹群とされましたが、分類上の位置はややあやふやなもので、さらなる裏付けが必要です。
Rhipsalis連は着生サボテンが多く特異的な外見のものが多く見られます。Lepismiumなどは一見してPhyllocactus連のHylocereus亜連に属するEpiphyllumなどによく似ています。おそらく、生態学的なニッチの傾向が類似しているため収斂したのでしょう。

Notocactus連は近年、分類が大きく変わった分類群です。NeoporteriaやIslayaがEriosyceに吸収されました。しかし、最大の出来事はParodiaの拡大でしょう。NotocactusやParodia、Wigginsia、Eriocactus、Brasilicactusが分離出来ないことが明らかとなったのです。結果、そのすべてがParodiaとなり、命名上のルールにより巨大なParodiaが誕生しました。これらのことは著者らも再確認しており、概ね正しいと言えるでしょう。


ちなみに、本論文は案を提唱している段階ですので、現在認められている分類ではないことに注意が必要です。今回扱った範囲の現在の属分類を一応お示しします。

Frailea(19種)

Hatiora(3種、Epiphyllopsisを含む)、Lepismium(7種、Acanthorhipsalis、Nothorhipsalis、Ophiorhipsalisを含む)、Rhipsalidopsis(2種)、Rhipsalis(45種、Cassytha、Erythrorhipsalis、Hariota、Hylorhipsalisを含む)、Schlumbergera(7種、Epiphyllanthus、Epiphyllum Pfeiff.、Pseudozygocactus、× Rhipsaphyllopsis、× Schlumbergeranthus、× Schlumbergopsis、Zygocactus、Zygocereusを含む)

※1: Rhipsalidopsisを含まない。※2: Acanthocereus、Pfeifferaを含まない。※3: Erythrorhipsalisを含まない。※

Eriosyce(64種、Chilenia、Chileniopsis、Chileocactus、Chileorebutia、Chiliorebutia、Delaetia、Diaguita、Dracocactus、Euporteria、Friesia、Guerreroa、Hildmannia、Horridocactus、Islaya、Neochilenia、Neomapuchea、Neoporteria、Neotanahashia、Nichelia、Pyrrhocactus、Rodentiophila 、Thelocephalaを含む)、Neowerdermannia(2種)、Parodia(75種、Hickenia、Microspermia、Neohickenia、Acanthocephala、Bolivicactus、Brasilicactus、Brasiliparodia、Brasilocactus、Chrysocactus、Dactylanthocactus、Eriocactus、Eriocephala、Malacocarpus、Notocactus、Peronocactus、Ritterocactus、Sericocactus、Wigginsiaを含む)、Yavia(1種)、Rimacactus(1種)



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サボテン科全体を分子系統により分類した論文の続きです。引き続きJurriaan M. de Vosらの2025年の論文、「Phylogenomics and classification of Cactaceae based on hundreds of nuclear genes」をご紹介します。本日はCactus亜科のPhyllocactus連を見ていきます。Phyllocactus連は森林性サボテンで、熱帯林に分布ししばしば着生しますが、本日扱うEchinocereus亜連は主に大型の柱サボテンからなります。


Cactus亜科の分子系統(連レベル)
本日はPhyllocactus連を扱います。

 ┏Lymanbensonieae
┏┫
┃┗Copiapoeae

┫┏Cacteae
┃┃
┗┫┏Phyllocacteae
    ┃┃
    ┗┫    ┏Fraileeae 
        ┃┏┫
        ┃┃┗Rhipsalideae
        ┗┫
            ┃┏Notocacteae
            ┗┫
                ┗Cereeae


Phyllocactus連の分子系統(亜連レベル)
前回はCorryocactus亜連、Leptocereus亜連、Hylocereus亜連についてでしたが、今回は残りのEchinocereus亜連についてです。

┏Corryocactinae

┫┏Leptocereinae
┃┃
┗┫┏Hylocereinae
    ┗┫
        ┗Echinocereinae



☆Echinocereus亜連(※1)
※1: Nyctocereine、Cephalocereinan、Myrtillocactinae、Pachycereinae、Pterocereinae、Stenocereinae、Selenicereinaeを含む。

Echinocereus亜連の分子系統

         ①初期に分岐した系統
┏Nyctocereus serpentinus
┃     (=Peniocereus serpentinus)
┃          
┫┏Echinocereus viridiflorus
┃┃
┗┫┏Deamia testudo
    ┗┫   (=Selenicereus testudo)
        ┃┏Lemaireocereus hollianus
        ┃┃   (=Pachycereus hollianus)
  ┃┃  ②クレード1
        ┗┫  ┏Stenocereus
   ┃  ┃      thurberi
            ┃    ┏┫┏Stenocereus standleyi
   ┃ ┃┗┫(=Ritterocereus standleyi)
   ┃ ┃ ┗Morangaya pensilis
            ┃┏┫       (=Echinocereus pensilis)        
            ┃┃┃┏Isolatocereus dumortieri
            ┗┫┗┫ (=Stenocereus dumortieri)
       ┃ ┃┏Escontria chiotilla
                ┃    ┗┫    
                ┃        ┃┏Myrtillocactus
                ┃        ┗┫    geometrizans
                ┃            ┗Polaskia chichipe
                ┃  ③クレード2
                ┃    ┏Bergerocactus emoryi
                ┃    ┃
                ┃┏┫┏Cephalocereus polylophus
                ┃┃┗┫ (=Neobuxbaumia polylopha)
                ┃┃    ┗Cephalocereus
                ┗┫                    senilis
     ┃ ┏Mitrocereus militaris
                    ┃┏┫ (=Backebergia militaris)
                    ┃┃┗Marshallocereus aragonii
                    ┃┃      (=Stenocereus aragonii)       
                    ┗┫
                        ┃┏Carnegiea gigantea
                        ┃┃
                        ┗┫
                            ┃┏Lophocereus marginatus
                            ┗┫(=Marginatocereus 
                                ┃       marginatus)
                                ┃(=Pachycereus)
                                ┗Lophocereus schottii
                                (=Pachycereus schottii)

多稜で矮性から中型の低木、あるいは燭台状の枝分かれした高木。単独の円柱状か、稀に(半)着生で全長にわたり根を張るDeamiaもあります。茎は通常は節がなく、夜行性の大きな花を咲かせます。しばしば、コウモリ媒(chiropterophilous)です。
Echinocereus亜連はほぼ完全に北米と中米に分布する柱サボテンのグループで、多様性の中心はメキシコにあります。小型のEchinocereusから、巨大な樹木状のCephalocereusやPachycereus、Carnegieaなど多岐にわたります。広義のPachycereus、広義のPeniocereus、広義のStenocereusは明らかに多系統で、複数の系統群にまたがることもあります。本研究においては、Nyctocereusの位置付けに関して、Franco-Estradeら(2021)による最新の研究とかなり異なります。Echinocereus亜連に関する理解は依然として不十分で、これはCactus亜連の状況とほぼ同様です。Echinocereus亜連は明確に単系統ですが、内部の分類は十分に解明されていません。著者らのデータに基づくと、3つのクレードとその姉妹群である種数が少ない系統がありますが、十分な裏付けが不足しているため、これらのグループには名前を付けていません。


①初期に分岐した系統

含まれる属: Deamia(※2)、Echinocereus(狭義、※3)、Lemaireocereus、Nyctocereus(※4)

※2: 以前はHylocereus連のSelenicereusに含まれていた。※3: Wilcoxiaを含み、Morangayaを含まない。※4: 以前はPeniocereusに含まれていた。

EchinocereusはE. pensilisを除いた場合に単系統で、明確にWilcoxiaを含みます。Echinocereusはほぼすべての種で、花芽が表皮を突き破って出てくることで有名です。
狭義のNyctocereus(Cullmannia、Neoevansiaを含む)は、Franco-Estradeら(2021)の系統分類に基づいています。NyctocereusはPachycereusグループ(クレード3相当)の姉妹群とされています。著者らの解析では、Nyctocereusは他のすべてのEchinocereus亜連の姉妹群でした。なお、広義のPeniocereusの多系統性はBarcenasら(2011)により初めて指摘されました。
Lemaireocereusは以前は広義のPachycereusに含まれていました。Lemaireocereusは残りの北米の柱サボテンの姉妹群として孤立した位置にあることは、Ariasら(2003)とArias & Terrazas(2006)により指摘され、著者らのデータとFranco-Estradeら(2021)により裏付けられます。


②クレード1

含まれる属: Escontria、Isolatocereus、Myrtillocactus、Polaskia(※5)、Stenocereus(※6)

※5: Heliabravoaを含む。※6: Griseocereus、Hertrichocereus、Machaerocereus、Morangaya(以前はEchinocereus)、Rathbunia、Ritterocereusを含み、Marshallocereus(→クレード2)を含まない。

Echinocereus(Morangaya) pensilisはバハ・カリフォルニア産で、おそらく鳥媒花で、その正しい位置付けは議論の的となっています。Pradoら(2010)やBarcenasら(2011)、および著者らのデータでは、Stenocereus、Escontria、Machaerocereus、Polaskiaを含む系統群に分類されます。Sanchezら(2014)とFranco-Estradeら(2021)も同様です。Sanchezら(2018)はMorangayaをStenocereus(Rathbunia) alamosensisの姉妹群としており、花は鳥媒花で果実の特徴も共有しています。著者らの系統樹において、Morangayaを認めるとStenocactusは側系統となり、Ritterocereusは別の系統とせざるを得なくなります。Echinocereus (Morangaya) pensilisの位置付けをStenocereusに位置付けるためには、新たな組み合わせが必要となります。著者らはEchinocereus (Morangaya) pensilisを、Stenocereus pensilisとする提案を行いました。

PolaskiaはそのタイプであるP. chichipeについて、Myrtillocactusの姉妹群としての十分な裏付けを得ることが出来ました。これは、Franco-Estradeら(2021)の結果を反映しています。P. chende(Heliabravoa)は、Franco-Estradeら(2021)により、Escontriaの姉妹群とされています。EscontriaとPolaskiaの近縁性は、その自然交雑種である× Polascontriaの存在によっても裏付けられます。

Anderson(2001、2005)やHuntら(2006)が用いた分類におけるStenocereusは、古くからゴルディアスの結び目のようで、時代と共に分離されていきました。著者らの解析にはStenocereusのタイプであるS. stellatusは含まれませんが、S. thurberiはAriasら(2005)により準多系統のStenocereusの一部とされています。著者らが解析した広義のStenocereusの分離群であるIsolatocereus、Marshallocereus、Ritterocereusは配置が相反しているため、Anderson(2001、2005)やHernandez-Ledesmaら(2015)により限定された広義のStenocereusの概念は、極めて多系統的で維持は不可能です。Marshallocereusはこのクレードですらなく、Stenocereus yunckderiと共にクレード2に属します。解決策は見つかっておらず、このクレードに含まれる属は暫定的なものです。

240922101130480
Stenocereus(Ritterocereus) pruinosus
新宿御苑(2024年9月)


③クレード2
含まれる属: Backebergia(※7)、Bergerocactus、Carnegiea、Cephalocereus(※8)、Lophocereus(※7)、Marginatocereus(※7)、Marshallocereus(※9)、Pachycereus(狭義、※10)、Pterocereus

※7: Pachycereusに含まれていた。※8: Neobuxbaumia、Neodawsonia、Pseudomitrocereusを含む。※9: クレード1のStenocereusに含まれる。※10: Lemaireocereus、Lophocereus、Marginatocereus、Marshallocereus、Pterocereusを含まない。

Neobuxbaumia(Pseudomitrocereus、Mitrocereus fulvicepsを含む)は、著者らの系統樹ではCephalocereusの姉妹群として示されており、これは過去の研究と一致します。過去の研究はすべて単系統のクレードに混じったCephalocereusとNeobuxbaumiaの種を発見したため、NeobuxbaumiaはCephalocereusとされます。著者らの系統樹においては、広義のCephalocereus(メキシコ中部原産)をBergerocactus(カリフォルニア州南西部およびバハ・カリフォルニア北西部)の姉妹群とする、生物地理的に謎めいた位置付けとしましたが、Franco-Estradeら(2021)においても同様の結果が得られています。

広義のPachycereusである亜系統群は、広義のPachycereusは、Marshallocereus(旧・Stenocereus)、単型のCarnegieaからなり、過去の研究結果と一致します。

240622105935223
Pachycereus pringlei
筑波実験植物園(2024年6月)


DSC_1244
Carnegiea gigantea
神代植物公園(2022年5月)



最後に
以上が論文の簡単な要約です。
本日はEchinocereus亜連についてでした。柱サボテンには三角柱や金紐の仲間と近縁な主に北米に分布するEchinocereus・Pachycereus系と、MelocactusやEchinopsisなどに近縁な主に南米やカリブ海地域に分布するCereus・Trichocereus系の2つがあります。共に柱状になりますが、互いに関係なく似た姿に収斂したということなのでしょう。ただ、Echinocereus亜連の内部の分類については、まだ不確かな部分があるようです。



ちなみに、本論文は案を提唱している段階ですので、現在認められている分類ではないことに注意が必要です。今回扱った範囲の現在の属分類を一応お示しします。

Deamia(4種)、Echinocereus(84種、Wilcoxiaを含む)、Lemaireocereus(2種)、Nyctocereus(1種)

Escontria(1種)、Isolatocereus(1種)、Myrtillocactus(4種、Myrtillocereusを含む)、Polaskia(2種、Chichipia、Heliabravoaを含む)、Stenocereus(22種、Neolemaireocereus、Glandulicereus、Griseocactus、Griseocereus、Hertrichocereus、Machaerocereus、Neogriseocereus、Nigellicereus、Rathbunia、× Rittellicereus、Ritterocereusを含む)、Morangaya(1種)

Backebergia(→Mitrocereusに含まれる、1種)、Bergerocactus(1種)、Carnegiea(1種)、Cephalocereus(13種、Pilocereus、Cephalophorus、Haseltonia、Neobuxbaumia、Neodawsonia、Pseudomitrocereus、Rooksbyaを含む)、Lophocereus(3種、Marginatocereusを含む)、Marginatocereus(→Lophocereusに含まれる)、Marshallocereus(1種)、Pachycereus(5種、Anisocereus、Tribulariaを含む)、Pterocereus(1種)


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サボテン科全体を分子系統により分類した論文の続きです。引き続きJurriaan M. de Vosらの2025年の論文、「Phylogenomics and classification of Cactaceae based on hundreds of nuclear genes」をご紹介します。本日はCactus亜科のPhyllocactus連を見ていきます。Phyllocactus連は森林性サボテンで、熱帯林に分布ししばしば着生します。クジャクサボテンや月下美人、三角柱や金紐などのヒモサボテンが有名です。Echinocereus亜連は次回に扱います。


Cactus亜科の分子系統(連レベル)
本日はPhyllocactus連を扱います。

 ┏Lymanbensonieae
┏┫
┃┗Copiapoeae

┫┏Cacteae
┃┃
┗┫┏Phyllocacteae
    ┃┃
    ┗┫    ┏Fraileeae 
        ┃┏┫
        ┃┃┗Rhipsalideae
        ┗┫
            ┃┏Notocacteae
            ┗┫
                ┗Cereeae


★Phyllocactus連(※1)
※1: Echinocereeae、Hylocereeae、Leptocereeae、Pachycereeae、Monvilleeae、Peniocereeaeを含む。

Phyllocactus連の分子系統(亜連レベル)

Corryocactinae

┫┏Leptocereinae
┃┃
┗┫┏Hylocereinae
    ┗┫
        ┗Echinocereinae


Phyllocactus連は長らくHylocereus連(2001, 2005)の名前で知られていましたが、Phyllocactus連(1845)が優先されます。初期の分岐のいくつかは支持が乏しいのですが、多様なPhyllocactus連の複雑な関係性を強調するために4亜連を認めます。Phyllocactus連は多数の独立した着生が見られます。従来型の肋(rib)がある直立した茎から、垂れ下がる葉のような形態まで見られます。


☆Corryocactus亜連(※2)
含まれる属: Austrocactus、Brachycereus、Corryocactus(※3)、Eulychnia、Jasminocereus、Neoraimondia(※4)、Pfeiffera(※5)、Strophocactus(※6)

※2: Pfeifferinae、Eulychniinaeを含む。※3: Erdisia、Eulychnocactusを含む。※4: Neocardenasiaを含む。※5: 狭義のAchanthorhipsalisとBolivihanburyaを含み、Lepismium p.p.とLymanbensoniaを含まない。※6: Pseudoacanthocereusを含む。以前はSelenicereusに含まれていた。

Corryocactus亜連の分子系統

 ┏Pfeiffera ianthothele
┏┫(=Lepismium ianthothele)
┃┗Pfeiffera miyagawae
┃    (=Lepismium miyagawae)
┃    ┏Eulychnia acida
┫┏┫
┃┃┗Austrocactus spiniflorus
┃┃
┃┃    ┏Corryocactus squarrosus
┗┫┏┫(=Erdisia squarrosa)
    ┃┃┃┏Corryocactus brevistylus
    ┃┃┗┫
    ┃┃    ┗Corryocactus melanotrichus
    ┗┫     (=Erdisia melanotricha)  
        ┃┏Strophocactus brasiliensis
        ┃┃  (=Pseudoacanthocereus  
        ┗┫         brasiliensis)
            ┃┏Leptocereus亜連
            ┗┫
    ┃┏Hylocereus亜連
                ┗┫
                    ┗Echinocereus亜連


チリ沿岸やパタゴニアのステップ地帯、湿潤なアマゾンの森林に生息する。地上性または着生性で、小型の低木から樹木状まであります。茎は通常は分節し、肋(rib)がありトゲがあるものから平らでやや細い枝を持つものまで多様です。花は非常に変異が多く、昼行性から夜行性で、通常はトゲのある果皮を持ちます。

他のすべてのPhyllocactus連の姉妹群はPfeifferaですが、分類学上の複雑な歴史があります。伝統的にPfeifferaは、着生あるいは岩生のP. ianthotheleと、短い肋がありトゲのある茎を持つ類似したいくつかの分類群に限定されてきました。Barthlott & Taylor(1995)は、PfeifferaをLepismiumに含めました。しかし、Nyffeler(2000)はこの説が妥当ではないことを示し、Huntら(2006)はPfeifferaを独立した属として認めました。Korotkovaら(2010)は、Pfeifferaは多系統であり、一部はLymanbensoniaやLepismiumとして分離されるべきであることを示しました。現在のPfeifferaは、肋骨状のトゲのある柱サボテン状(cereoid)の茎から平行な跛行(cladodia)まで、形態的に連続しています。

Pseudoacanthocereusの2種、P. brasiliensisとP. sicariguensisは分子系統では分離して出現します。かつてはAchanthocereusに分類されていましたが、この2種の種子は非常に大きく共通する特徴を持ちます。PseudoacanthocereusがEchinocereus亜連ではなく、Corryocactus亜連を含む祖先種の一部と位置付けられていることは、Korotkovaら(2017)による分子系統により初めて明らかとなりました。その系統樹では、PseudoacanthocereusはNeoraimondiaおよびLeptocereus亜連の姉妹群として記載されています。また、不思議なことに、StrophocactusのタイプであるS. wittiiがPseudoacanthocereusに組み込まれていることを発見しました。
StrophocactusはAnderson(2001, 2005)などによりSelenicereusの異名として扱われてきました。Huntら(2006)は、Strophocactusを3種、S. wittii、S. testudo(Deamia testudo)、S.chontalensis(Nyctocereus chontalensis)からなる属として認めました。しかし、現在はD. testudoとN. chontalensisがEchinocereus亜連のDeamiaとして認識されていることから、表面的な類似が生じた平行進化の好例です。Pseudoacanthocereusは命名上の優先権を持つStrophocactusに分類するのが望ましい解決策であると思われます。

Neoraimondiaの2種はおそらく同属ではありません。ペルーのアンデス山脈西斜面に分布するN.
arequipensisは、Nyffeler(2002)によるとLeptocereus亜連の一部です。一方、Hernandez-Hernandezら(2011)やKorotkovaら(2017)は、ボリビアのアンデス山脈東斜面に分布するN. herzogiana(=Neocardenasia)をPseudoacanthocereusの姉妹群としています。両種は多数の花を咲かせるアレオーレを持ち、わずかな解剖学的差異しかありません。

BrachycereusとJasminocereusの分類は暫定的なものです。分子生物学的な研究のために採取されたことは著者らの知る限りありません。Barthlott & Hunt(1993)は両者をTrichocereus連とし、Endler & Buxbaum(1958)はBrachycereusをEchinocereus連に分類し後にHylocereus連に、JasminocereusはCereus連に分類しました。


☆Leptocereus亜連
含まれる属: Armatocereus、Castellanosia、Leptocereus(※7)

※7: Dendrocereus、Neoabbottiaを含む。

Leptocereus亜連の分子系統

┏Castellanosia caineana
┃(=Browningia caineana)
┫┏Armatocereus laetus
┃┃(=Lemaireocereus laetus)
┗┫┏Leptocereus quadricostatus
    ┗┫
        ┗Leptocereus nudiflorus
            (=Dendrocereus nudiflorus)


地上性で円柱状の、主に枝分かれの多い低木から高木。茎には節と肋があります。花は夜行性で、Castellanosia以外は外果皮にはトゲがあります。

Leptocereus亜連は、Nyffeler(2002)およびHernandez-Hernandezら(2011)において、漠然と記載されていましたが、支持度は低いものでした。本研究においては、高い支持度を得ています。Leptocereus亜連は形態的にも地理的にも異質です。LeptocereusとArmatocereusの周皮は多数のアレオーレがあり通常は密にトゲが生えていますが、Dendrocereusの周皮はトゲは生えているもののアレオーレの位置が緩く、Castellanosiaの周皮は完全にトゲがありません。地理的には3属は非連続的で、以前はBrowningiaに含まれていたCastellanosiaはボリビアの低地産で、Armatocereusは南米北西部のコロンビア、エクアドル、ペルー産て、Leptocereusはカリブ海地域に分布します。また、Barriosら(2020)は、DendrocereusがLeptocereusに含まれることを示しました。


☆Hylocereus亜連(※8)
含まれる属: Acanthocereus(※9)、Aporocactus、Disocactus(※10)、Epiphyllum(※11)、Hylocereus(※12)、Kimnachia、Pseudorhipsalis(※13)、Selenicereus(※14)、Weberocereus(※15)

※8: Epiphyllinae、Disocactinae、Heliocereinae、Weberocereinae、Achanthocereinaeを含む。※9: Monvillea、Peniocereusを含む。※10: Bonifazia、Chiapasia、Nopalxochiaを含み、Aporocactusを含まない。※11: Marnieraを含む。※12: Wilmatteaを含む。※13: Wittocactus=Wittiaを含む。※14: Cryptocereus、Werckleocereusを含み、Deamia(→Echinocereus亜連)、Strophocactus(→Corryocactus亜連)を含まない。※15: Eccremocactusを含み、Werckleocereusを含まない。

Hylocereus亜連の分子系統

 ┏Acanthocereus tetragonus
┏┫
┃┗Acanthocereus cuixmalensis
┃     (=Peniocereus cuixmalensis)
┫┏Weberocereus frohningiorum
┃┃
┃┃        ┏Selenicereus guatemalensis
┃┃    ┏┫(=Hylocereus guatemalensis)
┃┃    ┃┗Selenicereus undatus
┃┃    ┃     (=Hylocereus undatus)
┗┫┏┫┏Selenicereus grandiflorus
    ┃┃┗┫
    ┃┃    ┗Selenicereus tonduzii
    ┗┫         (=Werckleocereus tonduzii)
        ┃         (=Weberocereus tonduzii)
        ┃┏Epiphyllum phyllanthus
        ┃┃
        ┗┫┏Pseudorhipsalis acuminata
            ┃┃(=Pseudorhipsalis horichii)
            ┗┫┏Aporocactus flagelliformis
                ┗┫ (=Disocactus flagelliformis)  
                    ┗Disocactus biformis

斜上または登攀性の肋がある茎を持つ低木が、斜上あるいは匍匐、垂下する茎を持つ半着生から着生植物。茎は節の有無に関わらず肋があり、扁平で枝分かれします。主にメソアメリカ、カリブ海地域および南米北部の熱帯湿潤な地域に分布します。その多くは夜行性でしばしば大きな花を咲かせ、通常はスズメガ媒(sphingophilous)です。
Hylocereus亜連の形態の多様性は驚異的で、従来型の多数の肋がある柱サボテン状(Acanthocereus、Aporocactus、Selenicereus)から、肋が少ない柱サボテン状および斜上するツタ植物(Hylocereus)、平らな茎を持つ低木(Weberocereus frohningiorum、Epiphyllum、Disocactus)まで、あらゆる形態が見られます。また、Hylocereus亜連は栽培において容易に属間雑種が出来ることが知られています。Acanthocereusを除くHylocereus亜連は「Epiphyllum comparium」とも呼ばれ、様々な交雑種に、数十もの学名がついています。

本研究におけるデータでは、HylocereusとSelenicereusを含む亜系統、「hylocereoid clade」(Korotkovaら, 2017)に関しては完全な解明はされません。2属は伝統的に果皮と果実の特徴により区別されてきました。Hylocereusの果皮と果実は鱗状でトゲがなく、Selenicereusの果皮と果実は鱗状ではなく多少なりともトゲがあります。Hernandez-Hernandezら(2011)の非常に少ないサンプルによる解析ではHylocereusとSelenicereusはそれぞれが単系統であり姉妹群であることが示され、Cruzら(2016)はこれらを未解決な多分岐群と見なしました。しかし、Plumeら(2023)やKorotkovaら(2017)による広範囲なサンプルによる解析では、Selenicereus(以前はWerckleocereusとして分離されていたWeberocereusを含むが、Deamiaは含まない)は、Hylocereusの末端系統群に対する側系統群であることが特定されました。それらすべてを広義のSelenicereus(Deamiaは除く)に統合する提案があります。現状ではその提案は時期尚早であると思われます。Deamiaの除外以外は、Echinocereus亜連の基底段階の一部として明示されており、著者らのデータによっても裏付けられています。

狭義のWeberocereus(Werckleocereusを除く)は、Korotkovaら(2017)による解析で比較的よく裏付けられた単系統群です。

PseudorhipsalisはCruzら(2016)により狭義のEpiphyllumの姉妹群とされましたが、Korotkovaら(2017)においては多系統である事が示され、ほとんどの種はEpiphyllum + Disocactusの姉妹群とされています。一方でP. ramulosa(Kimnachia)は、Epiphyllum + Disocactusと多系統を形成します。

Disocactusの分類は長年の問題領域となっています。Anderson(2001, 2005)やHuntら(2006)が用いた広域な範囲はBarthlott(1991)にまで遡ります。Barthlottは茎と花の特徴の組み合わせにより、AporocactusやHeliocereus、Nopalxochiaなどを含めました。この分類では、柱サボテン状のトゲが沢山ある茎を持つものから、トゲの有無に関わらず扁平な枝まで、通常は着生植物として生育する一連のサボテン全体を含んでいました。Cruzら(2016)やKorotkovaら(2017)、Rosas-Reinholdら(2022)は、これらの広義のDisocactusの単系統性に疑問を呈しました。さらに、Aporocactusが独立した系統であること、またはAcanthocereusや残りのHylocereusの位置が未解決であるとしました。Cruzら(2016)やKorotkovaら(2017)は、Epiphyllumの一部、例えばよく知られているE. crenatumがDisocactusとクラスターを形成することを明らかとしており、形態に基づくHylocereus亜連の同定をさらに複雑にしています。しかし、集晶(crystal druses)の有無やクチクラの厚さといった解剖学的形質は、狭義のSelenicereusとWeberocereusを除くすべての属で類縁関係を示します。また、Hylocereus亜連は、Epiphyllum chrysocardiumやWeberocereus imitans、Disocactus anguliger、Selenicereus anthonyanusにおいて、シダの葉を思わせる切り込みのある茎が、平行進化したことは注目します。

AcanthocereusはかつてCorryocactus亜連に分類されていました。しかし、著者らの系統樹では残りのHylocereus亜連と姉妹群であることが確認されており、Korotkovaら(2017)の結果を裏付けています。PeniocereusはAriasら(2005)により多系統であることが示されており、PseudoacanthocereusはAcanthocereusに対応する系統群の一部です。


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クジャクサボテン Epiphyllum cv.
東京都薬用植物園(2025年5月)



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ドラゴンフルーツ
Hylocereus undatus=Selenicereus undatus

新宿御苑(2024年9月)


最後に
以上が論文の簡単な要約です。
本日はPhyllocactus連についてでした。今回はたった3亜連についてだけなのに解説はやたらに長いものでした。これは、Phyllocactus連に含まれる種が、分類学上ややこしいものが多いからでしょう。着生したり扁平だったり紐状だったりという特徴は、Rhipsalis連でも見られる特徴です。しかし、この共通点は似た環境で似た生態であることから、形態的に収斂しただけにも思えます。さらに、Phyllocactus連の内部分類も、はっきりしない部分があるように思えます。本論文では解析していない属もありますから、今後に期待しましょう。次回はPhyllocactus連の残りのEchinocereus亜連についてですが、また来週となります。

ちなみに、本論文は案を提唱している段階ですので、現在認められている分類ではないことに注意が必要です。今回扱った範囲の現在の属分類を一応お示しします。

Austrocactus(11種)、Brachycereus(1種)、Corryocactus(15種、Corryocereus、Erdisia、Eulychnocactusを含む)、Eulychnia(9種、Philippicereusを含む)、Jasminocereus(1種)、Neoraimondia(2種、Neocardenasiaを含む)、Pfeiffera(6種、Bolivihanburyaを含む)、Strophocactus(4種、Strophocereus、Pseudoacanthocereusを含む)

Armatocereus(7種)、Castellanosia(1種)、Leptocereus(19種、Dendrocereus、Neoabbottiaを含む)

Acanthocereus(17種)、Aporocactus(2種)、Disocactus(18種、Aporocereus、Bonifazia、Chiapasia、Disisocactus、Disisorhipsalis、Heliocereus、Lobeira、Mediocactus、Mediocereus、Nopalxochia、Pseudonopalxochia、Trochilocactus)、Epiphyllum(10種、Athrophyllum、Phyllocereus、Marniera、Phyllocactus)、Hylocereus(→Selenicereusに含まれる)、Kimnachia(1種)、Pseudorhipsalis(5種、Wittia、Wittiocactusを含む)、Selenicereus(32種、Cereaster、Chiapasophyllum、Cladoblasia、Cryptocereus、Hylocereus、Werckleocereus、Wilmattea)、Weberocereus(6種、Eccremocactus、Eccremocereus)、Monvillea(→Praecereusに含まれる)、Peniocereus(8種、Cullmannia、Neoevansiaを含む)


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サボテン科全体を分子系統により分類した論文の続きです。引き続きJurriaan M. de Vosらの2025年の論文、「Phylogenomics and classification of Cactaceae based on hundreds of nuclear genes」をご紹介します。
本日はCactus亜科のCactus連を見ていきます。Cactus連は、有星類やEchinocactusにAztekiumやGeohintoniaを含むEchinocactus亜連と、FerocactusやThelocactus、Kroenleinia(金鯱)、Stenocactus (Echinofossulocactus)を含むFerocactus亜連、Mammillaria科代表するイボサボテンからなるCactus亜連からなります。



Cactus亜科の分子系統(連レベル)
本日はCactus連を扱います。

 ┏Lymanbensonieae
┏┫
┃┗Copiapoeae

┫┏Cacteae
┃┃
┗┫┏Phyllocacteae
    ┃┃
    ┗┫    ┏Fraileeae 
        ┃┏┫
        ┃┃┗Rhipsalideae
        ┗┫
            ┃┏Notocacteae
            ┗┫
                ┗Cereeae



★Cactus連(※1)
※1: EchinocacteaeとMammillarieaeを含む。

球形から短円筒形で、単独からクッション状となります。茎に節はなく、結節(疣)または稀に肋(稜、rib)を持ちます。稀に地下茎が肥大したり、多肉質な主根を持つものもあります。
Cactus連は純粋に北米に分布する系統で、中米と南米北部にはごく少数の例外(MammillariaやEscobariaなど)が見られます。よって、北米の球形サボテンの多様性は、Cactus連の放散による結果です。Cactus連はCactus亜科の祖先系統であるという立場は、Walkerら(2018)により裏付けられています。本解析では、Ferocactus亜連およびCactus亜連(「Core Cacteae」と言われていた)の姉妹群として、側系統にEchinocactus亜連を分類しますが、その支持は低いものです。


✩Echinocactus亜連(※2)
含まれる属: Astrophytum(※3)、Aztekium、Echinocactus(※4)、Geohintonia、Sclerocactus(※5)

※2: Astrophytinae、Sclerocactonaeを含む。※3: Digitostigmaを含む。※4: Homalocephalaを含み、Kroenleiniaを含まない。※5: Ancistrocactus、Echinomastus、Papyrocactusを含み、Glandulicactusを含まない。

Echinocactus亜連の分子系統
    ┏Aztekium ritteri
┏┫    
┃┗Geohintonia mexicana

┃    ┏Sclerocactus scheeri
┃    ┃(=Ancistrocactus scheeri)
┃┏┫┏Sclerocactus spinosior
┃┃┗┫
┃┃    ┗Sclerocactus whipplei
┃┃
┃┃    ┏Echinocactus platyacanthus
┗┫┏┫
    ┃┃┗Astrophytum myriostigma
    ┃┃
    ┗┫┏Ferocactus亜連
        ┗┫
            ┗Cactus亜連


Echinocactus亜連は、3つのサブクレードからなる側系統群です、複数の属が非単系統なので複雑です。Ferocactus亜連とCactus亜連の姉妹群です。すべての研究において、Geohintonia + Aztekiumのクレードは他のグループの姉妹群です。また、Echinocactus + AstrophytumとSclerocactusは、Ferocactus亜連やMammilloidクレードの姉妹群であることは意見が一致しています。Echinocactusは単系統ではなく、「Golden Barrel」ことEchinocactus grusonii(金鯱)はEchinocactusから区別され、Ferocactusクレードと近縁で単型のKroenleiniaとして分離されました。さらに、Vargas-Lunaら(2018)は、HomalocephalaがAstrophytum + 狭義のEchinocactusの姉妹群とされるため、Homalocephalaの分離を提案しています。広義のSclerocactusも多系統で、狭義のSclerocactus (AncistrocactusとEchinomastusを含む)とFerocactus系統のGlandulicactusは区別されます。


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Echinocactus horizonthalonius
春の多肉植物・サボテン展示会、川口緑地センター樹里庵(2025年4月)



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Astrophytum myriostigma
神代植物公園(2022年5月)



✩Ferocactus亜連(※6)
含まれる属: Ferocactus(※7)、Glandulicactus、Kroenleinia、Leuchtenbergia、Stenocactus、Thelocactus(※8)

※6: Thelocactinaeを含む。※7: Bisnagaを含む。 ※8: Hamatocactus、Torreycactusを含む。

この系統群は、Leuchtenbergia以外では明瞭な縦溝に特徴付けられます。本研究ではFerocactusはThelocactusと同格でした。かなり複雑で部分的に解明が不十分です。Ferocactusは極めて側系統的です。含まれる属の近縁性は、属間雑種が得られることにより証明されています。この系統群は便宜的に「Ferocactus comparium」と呼び、複数の独立した属に分割するのではなく、これらの属を広義のFerocactusとして統合することを検討するべきでしょう。

Ferocactus亜連の分子系統

    ┏Stenocactus obvallatus
┏┫ 
┃┃┏Leuchtenbergia principis
┃┗┫
┃ ┗Ferocactus uncinatus
┃        (=Glandulicactus uncinatus)
┃         (=Sclerocactus uncinatus)
┃┏Ferocactus wislizeni
┃┃
┗┫┏Ferocactus haematacanthus
    ┃┃
    ┗┫┏Thelocactus hexaedrophorus
        ┗┫
            ┗Thelocactus rinconensis
                (=Thelocactus freudenbergeri)



250118111818094
Kroenleinia grusonii
東京農業大学バイオリウム(2025年1月)


250118111744104
Leuchtenbergia principis
東京農業大学バイオリウム(2025年1月)



250427093954321
Thelocactus hexaedrophorus var. fossulatus
春の多肉植物・サボテン展示会、川口緑地センター樹里庵(2025年4月)



250224100603017~2
Ferocactus stainesii
神代植物公園(2025年2月)



✩Cactus亜連(※9)
含まれる属: Acharagma 、Ariocarpus(※10)、Cochemiea(※11)、Coryphantha(※12)、Cumarinia、Epithelantha、Escobaria、Kadenicarpus(※13)、Lophophora、Mammillaria(※14)、Mammilloydia、Neolloydia、Obregonia、Oehmea、Ortegocactus、Pediocactus(※15)、Pelecyphora(※16)、Rapicactus(※17)、Strombocactus(※18)、Turbinicarpus(※19)

※9: Coryphanthinae、Bravocactinae、Pediocactinae、Turbinicarpinae、Cochemieinad、Epithelanthinae、Escobariinae、Pelecyphorinae、Mammillariinaeを含む。※10: Neogomesia、Roseocactusを含む。※11: Bartschella、Chilita、Phellospermaを含む。※12: Escobrittonia、Lepidocoryphanthaを含む。※13: 狭義のTurbinicarpusを除く。※14: Dolichothele、Escobariopsis、Leptocladodia、Mammillopsisを含み、MammilloydiaとOehmea、Cochemieaを含まない。本研究では解析していないCryptocarpocactus、Fimbriatocactus、Klainzia、Porfiria、Pseudomammillaria、Solisiaについては暫定的にMammillaria に含める。※15: Navajoa、Puebloa、Utahiaを含む。※16: Encephalocarpusを含む。※17: Lodiaを含む。※18: Chichimecactusを含む。※19: Gymnocactus、Normanbokeaを含み、KadenicarpusとRapicactusを含まない。

Cactus亜連の分子系統

    ┏Ariocarpus retusus
┏┫ 
┃┃┏Strombocactus disciformis
┃┃┃
┃┗┫┏Turbinicarpus
┃ ┗┫         schmiedickeanus
┃        ┗Kadenicarpus horripilus
┃            (=Gymnocactus horripilus)
┃    ┏Lophophora williamsii
┃┏┫
┃┃┃┏Acharagma roseanum
┃┃┗┫
┃┃    ┗Rapicactus subterraneus
┃┃     (=Turbinicarpus subterraneus)
┃┃   
┗┫┏Mammillaria mammillaris
    ┃┃
    ┃┃    ┏Cochemiea conoidea
    ┗┫┏┫(=Neolloydia conoidea)
        ┃┃┗Coryphantha sulcata
        ┗┫
            ┃┏Mammillaria candida
            ┃┃(=Mammilloydia candida)
            ┗┫┏Pelecyphora macromeris
                ┃┃(=Lepidocoryphantha
                ┗┫        macromeris)
                    ┃(=Coryphantha
                    ┃         macromeris)
                    ┗Pelecyphora aselliformis


これは、Butterworthら(2002)による「mammilloid clade」で、北米の放散の大部分を含みます。縦肋(longitudinal ribs)ではなく、明確な結節(疣、tubercles)を特徴としています。
本研究の標本抽出法では系統群の多様性の全体像は明らかにはなりませんが、広義のTurbinicarpus、広義のCoryphantha、広義のMammillariaは単系統ではないことが過去の報告により示されています。
Epithelanthaの位置付けは研究により異なります。「mammilloid clade」全体の姉妹群であったり、狭義のTurbinicarpusを含むクレードの近祖的な位置付けだったり、狭義のTurbinicarpusの姉妹群となっていたりします。
Pediocactusは過去にP. simpsoniiのみが分析されており、「mammilloid clade」全体の姉妹群とされましたが、かつては大きく異なる分類体系に属していたことも考慮すると、現在の状況では暫定的な分類と見なすべきでしょう。

「mammilloid clade」の残りの系統群の姉妹群となる1つ目の亜系統群は、Ariocarpus、Strombocactus、狭義のTurbinicarpusです。Vazquez-Sanchezら(2013)によると、Turbinicarpusの一部はKadenicarpusとして分離されます。Barcenasら(2021)によると、Strombocactus corregidoraeは単型のChichimecactusとして分離されるべきであるとしています。

2番目の亜系統群は、Lophophora + Acharagma + Rapicactusからなります。Hernandez-Hernandezら(2011)やVazquez-Sanchezら(2013)によると、ObregoniaはLophophoraの姉妹群としています。広義のTurbinicarpusとRapicactusの分離は、Vazquez-Sanchezら(2013)により初めて支持され、後に生息環境の好みの違いや幹の解剖学的特徴からも提唱されます。

3つ目の亜系統群は、「mammilloid clade」の残りすべての属を含み、顕著なのは二型性のアレオーレを持つことです。これは、トゲの形成部と花の形成部が空間的に分離されており、EscobariaやNeolloydia、Ortegocactus、Pelecyphoraに存在します。広義のMammilliaの非単系統性は初期の分子系統でも確認されており、CochemieaがMammillaria節のAncistracanthae やPhellosperma、狭義のMammillariaのいくつかとクラスターを形成し、NeolloydiaやOrtegocactusともクラスターを形成しています。このことにより、広義のCochemieaが狭義のMammillariaより分離されました。これは、その後の研究でも確認されていますが、NeolloydiaとOrtegocactusの位置は異なります。広義のCoryphanthaから単型的に分離するCumariniaも、狭義のMammillariaや広義のCoryphanthaを含む系統と同列に位置付けられています。最新の「mammilloid clade」の解析であるSanchezら(2022)やChincoya ら(2023)においては、NeolloydiaやOrtegocactusを広義のCochemieaの連続した姉妹群としました。広義のCochemieaは狭義のCoryphantha + Escobaria系統群の姉妹群です。ちなみに、CoryphanthaはLepidocoryphanthaを除外した場合にのみ単系統となります。EscobariaはLepidocoryphanthaと形態がまったく異なるPelecyphoraを包含した場合は単系統となります。Sanchezら(2022)はこれらの要素を含めPelecyphoraを再定義しましたが、近年の分子系統では部分的にしか支持されず、サンプルに不足があります。サンプルはより多くの系統を含める必要があります。なぜなら、全体的に極めて多系統的であり、見られる特徴は並行して繰り返し進化して来たように見えるからです。
Mammillaria sphacelataは、以前は孤立した系統とは考えられていませんでした。Butterworthら(2004)によると、狭義のMammillariaの基底近くのクレードの一部として示されました。一方、Breslinら(2021)によると、広義のCoryphantha + 広義のCochemieaの姉妹群として示されました。Sanchezら(2022)やChincoyaら(2023)では、狭義のMammillariaの一部ではなく、Mammillaria(Oehmea) beneckeiと同じクレードとしています。この時、Mammilloydia + Mammillaria albiflora、およびOehmea + Mammillaria sphacelataは、狭義のMammillariaの連続した姉妹群です。同様にCoryphantha macromeris (Lepidocoryphanthaのタイプ)が組み込まれたため、Breslinら(2021)とは大きく異なる系統となりました。

謎めいたクレードとして、Chincoyaら(2023)の示す「クレード4」があります。これは、Mammillaria theresaeやM.barbata、M. wrightiiから構成され、Neolloydia、Ortegocactus、広義のCochemieaの姉妹群として現れました。Breslinら(2021)はM. wrightiiを別属とし、Neolloydiaの姉妹群としました。この意外な分類と低い支持を考慮すると、BreslinらのEscobariaを広義のCoryphanthaに含めNeolloydiaとOrtegocactusをCochemieaに含める大胆な分類、あるいはSanchezらのEscobariaをPelecyphoraに含める分類は時期尚早であると判断し、上記の分類を提案します。



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Epitherantha bokei
春の多肉植物・サボテン展示会、川口緑地センター樹里庵(2025年4月)



250427094045440
Escobaria leei
現在はPelecyphora sneedii subp. sneediiの異名
春の多肉植物・サボテン展示会、川口緑地センター樹里庵(2025年4月)



250427093914964
Mammillaria humboldtii
春の多肉植物・サボテン展示会、川口緑地センター樹里庵(2025年4月)



250427093902963
Ariocarpus furfuraceus
春の多肉植物・サボテン展示会、川口緑地センター樹里庵(2025年4月)


最後に
以上が論文の簡単な要約となります。
今回はカクタス連についてでしたが、まあわかりにくい話です。特にマミラリアの仲間はややこしいですね。この論文は1属のサンプルが1種か2種、かつ解析していない属もあり、属内分類が不確定なマミラリア系統の解析には向いておりません。論文内では暫定的に分類していますが、おそらく分離されるか統合されるかという部分については、ただの予想なのでそれほどの信頼性はないと思います。この論文の重要性は、サボテン科の各分類群間の関係性だと思いますから、各論については今後のさらなる研究を期待したいところです。しかし、マミラリア系統は種か多くかなり混乱しているため、今後分類が大きく変わる可能性があります。今もかなり変わりましたが、現在は過渡期と言ったところでしょうか。


ちなみに、本論文は案を提唱している段階ですので、現在認められている分類ではないことに注意が必要です。今回扱った範囲の現在の属分類を一応お示しします。
調べてみて少し驚いたのですが、縮玉などの非常に多くの稜を持つサボテンは昔はEchinofossulocactusと呼ばれていましたが、近年ではStenocactusに変わりました。しかし、EchinofossulocactusはEchinocactusに含まれるというのが最近の見解のようです。これは、縮玉などがEchinocactusになったわけではなく、EchinofossulocactusがStenocactusの異名ではなくEchinocactusの異名となったというだけの話です。Echinofossulocactusが命名時にEchinocactusやFerocactus、さらにはAstrophytumまで含んだ雑多な分類群だったからでしょう。

Astrophytum(6種、Digitostigma、Maierocactusを含む)、Aztekium(2種)、Echinocactus(2種、Brittonrosea、Echinofossulocactus、Efossus、Emorycactus、Meyerocactusを含む)、Geohintonia(1種)、Sclerocactus(27種、Ancistrocactus、Coloradoa、Echinomastus、Papyrocactus、Roseia、Toumeya、Utahiaを含む)、Homalocephala(3種)

Ferocactus(30種、Bisnaga、Brittonia、Glandulicactus、Parrycactusを含む※7)、Glandulicactus(→Ferocactus)、Kroenleinia(1種)、Leuchtenbergia(1種)、Stenocactus(9種)、Thelocactus(13種、Hamatocactus、Napina、Thelomastus、Torreycactusを含む)

Acharagma(3種) 、Ariocarpus(7種、Anhalonium、Neogomesia、Roseocactus、Stromatocactusを含む)、Cochemiea(40種、Fimbriatocactus、Neolloydia、Ortegocactusを含む)、Coryphantha(43種、Escobrittonia、Glanduliferaを含む)、Cumarinia(1種)、Epithelantha(10種、Cephalomamillariaを含む)、Escobaria(→Pelecyphora)、Kadenicarpus(3種、Bravocactusを含む)、Lophophora(4種、Peyotlを含む)、Mammillaria(147種、Bartschella、Cactus、Chilita、Cryptocarpocactus、Dolichothele、Ebnerella、Escobariopsis、Haagea、Krainzia、Lactomamillaria、Leptocladia、Leptocladodia、Mamillopsis、Mammariella、Mammilloydia、Melocactus Boehm.、Neomammillaria、Oehmea、Phellosperma、Porfiria、Pseudomammillaria、Solisia)、Mammilloydia(→Mammillaria)、Neolloydia(→Cochemiea)、Obregonia(1種)、Oehmea(→Mammillaria)、Ortegocactus(→Cochemiea)、Pediocactus(4種、Navajoa、Neonavajoa、Pilocanthus、Puebloaを含む)、Pelecyphora(21種、Cochiseia、Encephalocarpus、Escobaria、Escobesseya、Escocoryphantha、Fobea、Lepidocoryphantha、Neobesseyaを含む)、Rapicactus(5種)、Strombocactus(1種)、Turbinicarpus(14種、Gymnocactus、Lodia、Normanbokea、Pseudosolisiaを含む)、Utahia(→Sclerocactus)、Chichimecactus(1種)、Fimbriatocactus(→Cochemiea)


さて、実は私のブログでも、論文内で根拠とされている論文をいくつかご紹介しています。論文内の各論はややこしいので、それぞれの根拠論文を個別に読んだ方が分かりやすいでしょう。ということで、過去の記事のリンクを貼っておきます。ご参照下さい。


EchinocactusやFerocactusについて

Mammilloid cladeについて


StrombocactusからのChichimecactusの分離について


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さて、サボテン科全体を分子系統により分類した論文の続きです。引き続きJurriaan M. de Vosらの2025年の論文、「Phylogenomics and classification of Cactaceae based on hundreds of nuclear genes」をご紹介します。


まずは、サボテン科の大まかな分子系統を示します。
本日はMaihuenia亜科とBlossfeldia亜科、さらにCactus亜科の一部を扱います。

    ┏Leuenbergerioideae
┏┫    
┃┗Pereskioideae

┃┏Opuntioideae
┃┃
┗┫┏Maihuenioideae
    ┃┃
    ┗┫┏Blossfeldioideae
        ┗┫
            ┗Cactoideae


④Maihuenia亜科
含まれる属: Maihuenia
多肉質の主根を持つ矮性低木で、大きく平らなクッション状の茎を形成します。多肉質でやや分節した円柱状の茎を持ちます。顕著な長命の円柱状の葉を持ちます。
アルゼンチン南部とチリにのみ分布する2種のMaihueniaは、塊根はPereskia humboldtiiとよく類似します。茎の表皮には気孔は少なく、直ぐに樹皮に変わります。茎と葉には粘液質が豊富に含まれ、「派生した南部のPereskia」と解釈されています。


⑤Blossfeldia亜科
含まれる属: Blossfeldia
単独で扁平化した小型の、あるいは互いに重なり合い密集したクッション状となります。目に見える葉はなく、痕跡程度まで縮小し、アレオーレは短く目立たないフェルト状の毛が数本生える程度となっています。
Nyffeler(2002)によると、「真の」サボテン=Cactoideaeの多様性全体の姉妹群です。系統的に孤立していることは、すべての研究において裏付けられています。他のサボテンと比較すると、特徴の組み合わせが独特で、単型属であるBlossfeldiaを単属亜科に分類することが正当化されます。

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Blossfeldia liliputana 
JSS、サボテン・多肉植物展(2025年10月)


⑥Cactus亜科(※1)
※1: Rhipsalidoideae、Cereoideae、Calymmanthioideaeを含む。
矮性から小型、大型の低木から樹木状で、単独で分岐しないものや枝分かれして樹冠を持つものもあります。稀に大きな塊茎を持つものや、湿潤な森林地帯では半着生となるものもあります。葉は顕微鏡的な痕跡まで縮小し、アレオーレを持ちます。花のサイズは侍様々で、直径40cmに達するものもあります。花は昼行性または夜行性です。
これは「真の」サボテンであり、目立った葉を持たない球形から円柱形で、サボテンの生育形態の多様性のすべてを含みます。Cactoideae(Cactus亜科)は伝統的にCereoideaeという誤った名称で知られていました。Blossfeldiaを除けば、Cactus亜科の範囲は異論なく分類されてきましたが、やがて分子系統によりBlossfeldiaは除外されました。Cactus亜科の初期に分岐したLymanbensoniaとCopiapoaは系統学的な位置が長らく不明で、Nyffeler & Eggli(2007)により「孤児」と表現されました。

Cactus亜科の分子系統(連レベル)
本日はLymanbensonia連とCopiapoa連を扱います。

 ┏Lymanbensonieae
┏┫
┃┗Copiapoeae

┫┏Cacteae
┃┃
┗┫┏Phyllocacteae
    ┃

    ┗┫    ┏Fraileeae 
        ┃┏┫
        ┃┃┗Rhipsalideae
        ┗┫
            ┃┏Notocacteae
            ┗┫
                ┗Cereeae



★Lymanbensonia連(※2)
含まれる属: Calymmanthium、Lymanbensonia(※3)

※2: Calymmantheaeを含む。※3: Acanthorhipsalisを含む。

高さ8mに達する小高木、あるいは着生で広がり垂れ下がります。茎は扁平または3〜4 本の細い翼状の鋸歯があります。
Buxbaum(1969)はCalymmanthiumを亜科の中でもっとも原始的な属の1つと解釈しました。(解析した)遺伝子が少ないWallace(2002)の分子生物学的研究でも裏付けられ、CalymmanthiumをCactus亜科の他のすべての属の姉妹群としました。Calymmanthiumを発見したRitter(1981)は、Calymmanthiumを特殊化した高度な系統と見なしていました。Korotkovaら(2010)は、AcanthorhipsalisまたはPfeifferaに分類されていた4種を、単型属Calymmanthiumの姉妹群として発見しました。したがって、Lymanbensoniaは独立した属として分類されるべきです。



★Copiapoa連
含まれる属: Copiapoa(※4)

※4: Pilocopiapoaを含む。

球形から短円柱形の単独からクッション状の低木。一部は地下に塊茎を持ち、地上部は小さく草食動物の捕食時に脱落します。茎は節で分かれていません。花は昼行性で黄色で、稀にピンク色を帯びます。果実は成熟すると乾燥し上部が開きます。
約30種からなるこの謎めいた属は、すべてチリ中部から北部にかけてアタカマ山脈西端および海岸線とコルディリェラ山脈沿岸部に固有です。Copiapoaの分類は長らく論争の的になってきました。頂端付近に黄色い花を沢山咲かせることから、伝統的にNotocactusに分類されてきました。しかし、すべての分子生物学的研究では、CopiapoaをNotocactus連に分類することは誤りであることを示しています。Copiapoaは解析により多様で、未分類の孤児種として扱われていました。本研究では、Cactus亜科の中ではCopiapoa連は孤立しています。まだ完全に解明されていない位置付けを強調するために独自の単属種としました。


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Copiapoa cinerea
春の多肉植物・サボテン展示会、川口緑地センター樹里庵(2025年4月)



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Copiapoa dealbata
神代植物公園(2022年5月)


最後に
昨日に引き続き最新のサボテン科の分子系統を見ています。本日扱ったMaihueniaは2種、Blossfeldiaは1種と、小さな属ですが、それぞれが亜科を担っています。それだけ、独特で遺伝的に異なるということがわかります。さらに、Cactus亜科のLymanbensonia連とCopiapoa連についても解説されました。Lymanbensonia連のLymanbensoniaは5種、Calymmanthiumは1種からなる小さな分類群ですが、いずれも一般的に馴染みがあるサボテンではありません。逆にCopiapoa連のCopiapoaは有名ですが、昔から分類学者を悩ませてきたサボテンです。独自性が高いことから、ほとんどのCactus亜科の姉妹群となる配置となっています。
記事を書くのに思ったより時間がかかり、続けてすべて書くのは難しいので、続きはまた来週となります。


ちなみに、本論文は案を提唱している段階ですので、現在認められている分類ではないことに注意が必要です。今回扱った範囲の現在の属分類を一応お示しして終わります。

Blossfeldia(1種)
Calymmanthium(1種、Diploperianthiumを含む)、Lymanbensonia(5種)、Acanthorhipsalis(→Lepismiumに含まれる)
Copiapoa(39種、Pilocopiapoaを含む)



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サボテンはその高い多様性にも関わらず、すべての種がサボテン科に分類されますが、その分類に関しては紆余曲折ありました。しかし、近年の遺伝子工学の発展により、サボテンに関しても遺伝子の違いを根拠とした分子系統が盛んに行われる様になりました。私もそれらの論文を読んでは、その都度ポツポツと記事にしてきましたが、ついには調子に乗ってサボテン科の分類についてまとめた記事を書いたりもしました。しかし、私のしたことは既存の論文の内容をツギハギしただのパッチワークに過ぎず、継ぎ目が怪しくなってしまうものでした。どうしても、論文の年代により解析の精度が異なるだとか、扱うサンプルの妥当性だとか、そこら辺は考慮していないというか、私の力量ではそもそも出来なかったのです。ややモヤモヤしてはいましたが、何と新たにサボテン科全体を分子系統により分類した論文が出たのです。というわけで、本日はJurriaan M. de Vosらの2025年の論文、「Phylogenomics and classification of Cactaceae based on hundreds of nuclear genes」をご紹介します。


分子系統分類
170種、属分類の90%を種の遺伝子を分子系統解析しました。サボテン科という分類の境界は安定していますが、その内部分類はDNA時代以前も以後も不安定なものでした。まず、サボテン科は形態が多様であり、しばしば直感的に「傾向」(trends)として認識されてきており、より極端な形態に向かう傾向があるとされました。しかし、分子生物学的な研究により、かつて分類に用いられた多くの形質は高い相同性を示すことが明らかとなりつつあります。形態とDNAの不一致は、形態学的収斂と並行性の高さを示す証拠であり、種間関係や進化の理解を難しくしています。良い例の1つはAstrophypumで、A. caputmedusaeは細長い疣(tubercles、結節)を持ち、他4種は稜(rib)を持ちます。また、Leuchtenbergiaは長い疣を持ちますが、稜を持つStenocactusやFerocactusと近縁です。さらに、伝統的にFerocactus(広義)とされてきた種は、形態的には一貫性があるにも関わらず、比較的大きな分子的な多様性を示します。
サボテン科の分類が不安定なもう1つの理由は、分子的に急速な放散を示すことです。サボテン科は若いグループで種の多様性が高く、すべての植物の中でも科レベルの多様率は上位5位に入ります。この急速な放散の結果、種間のDNAの分岐は非常に低く、分子系統では成功と失敗が混在します。

【解説】
この部分はわかりにくいため、少し解説します。これはサボテンの分類の難しさについての話です。1つは形態が似ていても遺伝的に近縁とは限らず、遺伝的に近縁であっても形態が似ているとは限らないということです。2つ目は、サボテン科は割りと新しい時代に急速に種分化したため、遺伝子解析をした時に上手く解析出来ない場合もあるということです。


  
サボテン科の分子系統
サボテン科の分子系統の根元にあるのは、Leuenbergeria亜科とPereskia亜科です。この2亜科は似ていますが、茎は木質化し葉は多肉質ではないなど、想定されるサボテン科の原始的な姿を表しているように見えます。しかし、高度に派生した分類群と考えられていたMaihueniaやBlossfeldiaは、考えられていたよりもサボテン科の基部系統に近かかったため、低木状あるいは樹木状であることがサボテン科の祖先であるという考えに疑問を投げかけます。また、サボテン科に近縁な他の科も、主に小型の草本で構成されており、多肉質な主根を持つことが多いも理由の1つです。

【解説】
論文中では他にも系統解析の妥当性などを議論していますが、割りと難解かつ分子遺伝学や解析プログラムの話など、あまり私の興味を惹かない話題でしたので割愛します。気になる方は論文をご確認下さい。ということで、以下にサボテン科の分子系統を示します。
まずはサボテン科の分子系統と、各亜科の解説を見ていきます。


サボテン科の分子系統(亜科レベル)

    ┏Leuenbergerioideae
┏┫    
┃┗Pereskioideae

┃┏Opuntioideae
┃┃
┗┫┏Maihuenioideae
    ┃┃
    ┗┫┏Blosfeldioideae
        ┗┫
            ┗Cactoideae

    

①Leuenbergeria亜科
含まれる属: Leuenbergeria
低木から高木で、幹はわずかに多肉質かまったく多肉質ではありません。トゲのあるアレオーレを持ちます。茎には気孔がなく、早期に周皮(periderm)が形成されて表皮(epidermis)は急速に消失します。葉は時にやや多肉質で羽状脈があり、落葉性です。
Leuenbergeriaは伝統的にPereskiaに含まれてきましたが、分子系統学的研究により2012年に記載されました。差異は2002年より指摘されてきましたが、近年の大規模な研究でも概ね同様の結果を得ています。Leuenbergeriaはブラジル原産のL. aureifloraを除き、主にカリブ海に分布します。



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Leuenbergeria guamacho
筑波実験植物園(2024年6月)



②Pereskia亜科(狭義)
まれる属: Pereskia(※1)
※1: Rhodocactusを含む。Leuenbergeriaを含まない。
低木から高木で、幹はほぼ多肉質ではありません。トゲのあるアレオーレを持ちます。P. aculeata以外では周皮の形成は遅れ、茎には気孔があります。葉は時に多肉質で羽状脈があり、落葉性です。Leuenbergeriaを含まない狭義のPereskiaは、完全に南米の原産です。


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Pereskia aculeata
筑波実験植物園(2024年6月)


③Opuntia亜科(※2)
※2: Pereskiopsis亜科を含む。
矮性から大型の低木から高木。茎は分節し、円筒形または扁平で、トゲのあるアレオーレを持ちます。葉は円錐形で退化しており短命ですが、QuiabentiaやPereskiopsisでは扁平で平行脈があり、わずかに多肉質で長命です。球果を持ち、種子は比較的大型です。
本データは、過去の報告と同様にOpuntia亜科が単系統であることを明確に示しています。3つのサブクレードについて認めたが、互いの関係は完全には明らかとなっていません。著者らはCylindropuntia連をより狭い範囲に限定し、南米原産の種の大部分をPterocactus連として認めました。


Opuntia亜科の分子系統(連、属レベル)
3つの連(tribe)に分けられます。

          Tribe Opuntieae
    ┏Salmonopuntia salmiana
    ┃
    ┃    ┏Airampoa soehrensii

┏┫┏┫
┃┃┗Opuntia ficus-indica
┃┗┫
┃    
┃┏Tacinga funalis
┃    ┗┫
┃        ┗Brasiliopuntia brasiliensis
┃       Tribe Cylindropuntieae
┃        ┏Micropuntia pulchella
┃    ┏┫      (=Grusonia pulchella)
┃    ┃┗Pereskiopsis porteri
┃┏┫
┃┃┃
┏Cylindropuntia imbricata
┃┗┫
┃┃    
┃┏Grusonia bradtiana
┃┃    ┗┫
┃┃        
┃┏Grusonia clavata
┃┃        ┗┫(=Corynopuntia clavata)
┃┃            ┗Grusonia marenae
┃┃              (=Marenopuntia marenae)
┃┃    Tribe Pterocacteae
┗┫┏Maihuenopsis glomerata
    ┃┃
    ┗┫┏Pterocactus tuberosus
  ┃┃
  ┃
┃ ┏Tephrocactus articulatus
        ┗┫┏┫
            ┃
┃┗Tephrocactus verschaffeltii
   ┃┃    (=Banfiopuntia verschaffeltii)
            ┗┫ ┏Austrocylindropuntia
                ┃    ┃     lagopus
                ┃┏┫(=Punotia lagopus)
    ┃┃┗Austrocylindropuntia
                ┗┫           exaltata

                    ┃┏Cumulopuntia sphaerica
                    ┗┫(=Sphaeropuntia 
                        ┃       sphaerica)
                        ┗Cumulopuntia
                                    boliviana



★Opuntia連
含まれる属: Brasiliopuntia、Consolea、Opuntia(※3)、Miqueliopuntia、Salmonopuntia(※4 )、Tacinga、Airampoa(※5)

※3: Nopaleaを含む。狭義。※4: =Salmiopuntia、Mortolopuntiaを含む。※5: =Tunilla

矮性低木から高木。幹や樹冠が明瞭に区別出来ることは稀で、茎は分節し円錐形あるいは扁平です。葉は短命で退化しています。

伝統的に単型のSalmonopuntiaは、2つの亜系統に分類される残りの属の姉妹群です。1つ目の亜系統はAirampoa(南米アンデス)とOpuntia(カナダ南部からアルゼンチン中部)からなり、扁平化した枝を持ちます。2つ目の亜系統は、南米東部(主にブラジル)に限定され、TacingaとBrasiliopuntiaからなります。この両者は花糸の基部に毛があります。Brasiliopuntiaは、樹木のような構造を持ち、円柱状の分節しない主幹を形成し、枝は分節し円柱状からやや扁平まで様々です。Tacingaは中間型で、ブラジル東部およびカリブ海諸島という謎めいた分離した分布を示しますが、これはLeuenbergeriaやPseudocanthocerus(=Strophocactus)も同様の傾向があります。

本研究ではチリ原産で全体が円柱状のMiqueliopuntiaと、カリブ海諸島原産で成体は円柱状の主幹を持つConsoleaを解析していません。Consoleaを広義のOpuntiaに含める意見もありますが、狭義のOpuntiaとは明確に異なります。Consoleaは倍数体種のみ知られ、系統解析ではTacinga+Brasiliopuntia+Opuntiaの姉妹群であることは判明しています。Nopaleaは鳥媒花(ornithophilous flower)であるため、伝統的に分離されてきました。しかし、遺伝的には狭義のOpuntiaに含まれることが明らかとなっています。



240622105400540
Opuntia tuna
筑波実験植物園(2024年6月)


★Cylindropuntia連(※6)
含まれる属: Cylindropuntia、Grusonia(※7)、Micropuntia、Pereskiopsis、Quiabentia

※6: Pereskiopsis連を含む。※7CorynopuntiaとMarenopuntiaを含み、Micropuntiaを含まない。

矮性から大型の低木で、稀に地下に塊茎を持ちます。茎は円錐形で節があり、稀に節がないものもあります。葉はわずかに多肉質あるいはやや多肉質で、平らで平行脈があり長命です。
Nyffeler & Eggli(2010)によりCylindropuntia連に分類された南米原産の属は、独立しPterocactus連に分類します。このことにより、Cylindropuntia連は節のある円錐形の茎を持つ、ほぼ北米原産の系統群となります。
広義のGrusoniaは支持されず、単一型で米国のモハーベ砂漠に分布するMicropuntiaを分離します。逆にCorynopuntiaとMarenopuntiaをGrusoniaに含めることが妥当であることが分かりました。不可解なことに、Micropuntiaはメキシコとグアテマラ原産のPereskiopsisと姉妹群です。Majureら(2019, 2023)によると、南米原産のQuiabentiaとPereskiopsis、Micropuntiaは、残りのCylindropuntia連(広義のGrusonia + Cylindropuntia)の姉妹群であることを特定しています。
QuiabentiaとPereskiopsisは、節のない主茎と扁平で平行脈を持つ多肉質の葉を持ちます。また、これらの葉は、Pereskiaの葉とは相同性がありません。



250118111659374
Pereskiopsis diguetii
東京農業大学バイオリウム(2025年1月)



★Pterocactus連(※8)
含まれる属: Austrocylindropuntia(※9)、Cumulopuntia(※10)、Maihueniopsis(※11)、Pterocactus、Tephrocactus(※12) 

※8: Tephrocactus連、Austrocylindropuntia連を含む。※9: AndinopuntiaとPunotiaを含む。※10: Sphaeropuntiaを含む。※11: Punaを含む。※12: Banfiopuntiaを含み、Pseudotephrocactusを含まない。

矮性低木で、肥大した主根または多肉質の塊茎を持つ。しばしばコンパクトなクッションを形成します。茎には節があり円錐形です。葉は円錐形で短命です。
Austrocylindropuntia連とTephrocactus連を含みます。最近、系統分類の論文で使用されるTephrocactus連より、Pterocactus連の方が命名上の優先権があります。Maihueniopsisは他属の姉妹群で、次にPterocactusと残りの属が続きます。この2属の支持は低く議論の余地がありますが、過去の論文の解析結果とまったく同じです。
最近分離された単型属であるPunotiaは非常に高い裏付けによりAustrocylindropuntiaの姉妹群です。過去の報告ではAustrocylindropuntia + Cumulopuntiaの姉妹群とされましたが、裏付けに乏しくデータも限られています。かつてAustrocylindropuntiaに分類されていた単型のBanfiopuntiaは、Tephrocactusの初期分岐段階の一部として示されており、Sphaeropuntiaとして分離された種はCumulopuntiaに属します。


DSC_0587
Pterocactus tuberosus
神代植物公園(2023年5月)



250224100148426
Tephrocactus articulatus
筑波実験植物園(2025年2月)



最後に
以上が論文の簡単な要約です。記事が長くなったので、本日は3亜科のみです。記事はまだまだ続きます。
さて、以前サボテンの分類を記事にしましたが、大まかな分類ではそれほどの違いはなさそうです。過去記事は以下になります。






今回の記事のポイントの1つは、Leuenbergeriaでしょう。Pereskiaとの違いは以前から指摘されてきましたが、伝統的に樹木状のサボテンとしてまとめられてきました。しかし、近年Leuenbergeriaをより原始的な特徴を持つ分類群としてPereskiaから独立する意見が立ち続けに出されました。今回ご紹介した論文においてもその正当性が確認されています。外見はPereskiaと似ていますが、論文ではLeuenbergeriaは亜科レベルで異なる分類群であるとしています。


Leuenbergeriaの分離を提案した論文の記事はこちら。


今回の記事のメインはOpuntia亜科=ウチワサボテン亜科でしょう。私自身がウチワサボテンに疎いため、その分類を調べたことがありませんでした。しかし、論文では3つの群に綺麗に分かれており、かなり整理された感じがします。論文では解析していない属もあるため、完全なものではありませんが、基本的にはこの分子系統がこれからの研究の基調となっていくのではないでしょうか。

ちなみに、本論文は案を提唱している段階ですので、現在認められている分類ではないことに注意が必要です。今回扱った範囲の現在の属分類を一応お示しして終わります。

Leuenbergeria(8種)、Pereskia(10種、Carpophillus、Peirescia、Rhodocactusを含む)

Brasiliopuntia(1種、Mortolopuntiaを含む)、Consolea(8種)、Opuntia(152種.Cactodendron、Chaffeyopuntia、Clavarioidia、Ficindica、Nopal、Nopalea、Phyllarthus、Platyopuntia、Plutonopuntia、Subulatopuntia、Tunasを含む)、Miqueliopuntia(1種)、Salmonopuntia(2種、Salmiopuntiaを含む )、Tacinga(12種)、Airampoa(4種、Tunillaを含む)
Cylindropuntia(41種)、Grusonia(19種、CorynopuntiaとMarenopuntiaを含む)、Micropuntia(1種)、Pereskiopsis(6種)、Quiabentia(2種)
Austrocylindropuntia(7種、Andinopuntia、Banfiopuntia、Peruviopuntia、Pseudotephrocactus、Trichopuntiaを含む)、Cumulopuntia(14種、Sphaeropuntiaを含む)、Maihueniopsis(20種、Punaを含む)、Pterocactus(10種)、Tephrocactus(12種、Pseudomaihueniopsis、Ursopuntia、Weberiopuntiaを含む)、 Punotia(1種)



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さて、毎年恒例のサボテンの新種の記事です。去年は8月に記事をあげましたが、論文が出たばかりでまだ新種として認定されていないものもありました。ということで、去年の記事を振り返ります。現在ではどうなっていますでしょうか。また、あれからの1年間で新たに発表された新種のサボテンはあるのでしょうか。以下、去年の記事のコピーです。変わった部分は【追記】としています。いくつかの新種には画像リンクを貼りました。あと、スペルミスをいくつか修正しました。


1753年にCarl von LinneがサボテンをCactus属と命名した時には、すでにヨーロッパでもサボテンが栽培されていました。それから、沢山のサボテンが命名されてきましたが、未だに新種のサボテンが見つかっています。最近見つかったサボテンはなんだろうかと思って、少し調べてみました。と言っても、すべての新種を調べた訳ではなく、検索してすぐに出てきたものだけです。しかし、それでも2010年以降に限っても、それなりの種類は見つかりました。主に論文のAbstractだけをサラッと読んだだけですから、あまり詳しい内容は分かりません。ですから、簡単に見ていきましょう。


2011年
★メキシコのTamaulipas州からマミラリアの新種、Mammillaria cielensisが記載されました。しかし、現在はM. zubleraeの異名となっています、


2012年
★アルゼンチンのブエノスアイレス州からウチワサボテンの新種、Opuntia ventanensisが記載されました。しかし、現在ではOpuntia fragilisの異名とされています。


2013年
★ペルー南部からボルジカクタスの新種、Borzicactus hoxeyiが記載されました。しかし、2014年にLoxanthocereus属になり、Loxanthocereus hoxeyiとなりました。
https://www.inaturalist.org/taxa/1516322-Loxanthocereus-hoxeyi


2014年
★ペルー北部からエスポストアの新種、Espostoa cremnophilaが記載されました。
★メキシコのオアハカ州からウェベロケレウスの新種、
Weberocereus alliodorusが記載されました。2018年にSelenicereus alliodorusとする意見もありましたが、認められておりません。【追記】Selenicereus alliodorusとする意見は、現在認められています。
★メキシコのタマウリパス州からマミラリアの新種、
Mammillaria huntianaが記載されました。しかし、現在ではM. roseoalbaの異名とされています。
★メキシコのZacatecasからオプンチアの新種、Opuntia gallegianaが記載されました。
★米国のアリゾナ州からオプンチアの新種、Opuntia diploursinaが記載されました。
https://www.inaturalist.org/taxa/630897-Opuntia-diploursina
★米国のカリフォルニア州からキリンドロプンティアの新種、Cylindropuntia chuckwallensisが記載されました。
https://www.inaturalist.org/taxa/474848-Cylindropuntia-chuckwallensis
★ブラジルのリオデジャネイロ州からリプサリスの新種、Rhipsalis flagelliformisが記載されました。
https://www.inaturalist.org/taxa/1536806-Rhipsalis-flagelliformis


2015年
★アルゼンチンのコルドバ州からギムノカリキウムの新種、Gymnocalycium campestreが記載されました。
https://inaturalist.nz/taxa/1576558-Gymnocalycium-campestre
★メキシコ中央部でツルビニカルプスの新種、Turbinicarpus heliaeが記載されました。 しかし、2021年にKadenicarpus属になり、Kadenicarpus heliaeとされています。
https://www.inaturalist.org/taxa/525908-Turbinicarpus-heliae
★メキシコ中部からオプンチアの新種、Opuntia delafuentianaが記載されました。
★メキシコのバハ・カリフォルニア州で、7種類のウチワサボテンの新種が記載されました。それは、Opuntia clarkiorumCylindropuntia libertadensisCylindropuntia waltoniorumCylindropuntia cedrosensisCylindropuntia alcahes var. gigantensisCylindropuntia alcahes var. mcgilliiCylindropuntia ganderi var. catavinensisです。このうち、3つの変種は2019年に新種を記載した著者自身により亜種に変更されています。
【追記】メキシコのベラクルス州からオプンチアの新種、Opuntia perotensisが記載されました。
https://www.inaturalist.org/taxa/563695-Opuntia-perotensis
【追記】メキシコからオプンチアの新種、Opuntia leiascheinvarianaが説明されました。しかし、現在ではO. ficus-indicaのsynonymとされています。


2017年
★エルサルバドルでディソカクタスの新種、Disocactus salvadorensisが記載されました。
★メキシコのCoahuila州からウチワサボテンの新種、
Corynopuntia deinacanthaCorynopuntia halophilaが記載されました。しかし、2018年に2種類ともGrusonia属になり、Grusonia deinacanthaGrusonia halophilaとされています。実は、Corynopuntia属は消滅し、すべてGrusonia属となっています。
ドミニカ共和国南西部のPedernales州からレプトケレウスの新種、Leptocereus demissusが記載されました。
https://www.inaturalist.org/taxa/1259634-Leptocereus-demissus
★ハイチからケレウスの新種、Cereus haitiensisが説明されました。しかし、この名前は非合法名(nom. illeg.)とされ、認められませんでした。これは、1926年にすでにC. haitiensisが命名されていたため、名前が重複してしまうことからと考えられます。ちなみに、現在ではSerrulatocereus serruliflorusの異名となっています。


2018年
★メソアメリカ地域からデアミアの新種、Deamia montalvoaeが記載されました。
★メキシコのオアハカ州からテロカクタスの新種、
Thelocactus tepelmemensisが記載されました。
★メキシコ原産のStenocereus griseus複合体から、Stenocereus huastecorumが分離されました。しかし、未だに未記載種となっています。【追記】現在、S. huastecorumはThe International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants 2025.により新種として記載されています。
https://www.inaturalist.org/taxa/638321-Stenocereus-huastecorum
★キューバ西部のPinar del Rio州のカルスト石灰岩の崖からレプトケレウスの新種、Leptocereus assurgens var. albellusLeptocereus chrysotyriusが記載されました。L. assurgens var. albellusは、2020年にL. assurgens subsp. albellusとなっています。また、同じく2020年にL. albellusとする意見もありました。同じく2020年にL. chrysotyriusはL. assurgens subsp. chrysotyriusとされました。


2019年
★メキシコ南部からケファロケレウスの新種、Cephalocereus parvispinusが記載されました。
https://inaturalist.ca/taxa/1133501-Cephalocereus-parvispinus
★メキシコのヌエボレオン州からツルビニカルプスの新種、
Turbinicarpus boedekerianusが記載されました。
https://uk.inaturalist.org/taxa/858375-Turbinicarpus-boedekerianus
【追記】チリのアタカマ地方からエウリクニアの新種、Eulychnia vallenarensisが記載されました。E. acidaに類似します。2020年にPhilippicereus vallenarensisとする意見もありましたが認められておりません。 
https://www.inaturalist.org/taxa/1151173-Eulychnia-vallenarensis


2020年
★ペルーからリマンベンソニアの新種、Lymanbensonia choquequiraensisが記載されました。
https://uk.inaturalist.org/taxa/1346314-Lymanbensonia-choquequiraensis
★メキシコのハリスコ州からアカントケレウスの新種、Acanthocereus paradoxusが記載されました。
https://www.inaturalist.org/taxa/1148417-Acanthocereus-paradoxus
★メキシコのシナロアからコケミエアの新種、Cochemiea thomasiiが記載されました。2021年にMammillaria thomasiiとする意見もありましたが、認められておりません。
https://www.inaturalist.org/taxa/1038794-Cochemiea-thomasii
★メキシコからマミラリアの新種、Mammillaria breviplumosaが記載されました。しかし、現在ではM. sanchez-mejoradae subsp. breviplumosaの異名とされています。
★分類が曖昧だったEchinocereus pulchellus複合体が整理され、
Echinocereus acanthosetusEchinocereus sharpiiが新種として分離されました。
★ドミニカ共和国のアンティル諸島原産のLeptocereus weingartianus複合体から、新種のLeptocereus velozianusが分離されました。また、2021年にNeoabbottia velozianaとする意見もありましたが認められておりません。
https://inaturalist.ca/taxa/1589319-Leptocereus-velozianus


2021年
★メキシコのハリスコ州南部からアカントケレウスの新種、Acanthocereus atropurpureusが記載されました。
https://www.inaturalist.org/taxa/1291103-Acanthocereus-atropurpureus
★メキシコのバハ・カリフォルニア半島からウチワサボテンの新種、Opuntia sierralagunensisOpuntia caboensisが記載されました。
★ドミニカ共和国やハイチに自生するPilosocereusはP. polygonusとされてきましたが、新種のPilosocereus brevispinusPilosocereus excelsusPilosocereus samanensisに分解されました。【追記】P. brevispinusは2022年にP. polygonus subsp. brevispinusとする意見がありますが、認められておりません。


2022年
★ニカラグアからデアミアの新種、Deamia funisが記載されました。
https://www.inaturalist.org/taxa/1435132-Deamia-funis
★メキシコのサン・ルイス・ポトシ州からマミラリアの新種、Mammillaria morentinianaが記載されました。
https://www.inaturalist.org/taxa/1433006-Mammillaria-morentiniana
★分類が曖昧だったMammillaria fittkaui複合体を分析し、ハリスコ州原産のMammillaria arreolaeを新種として記載されました。
https://uk.inaturalist.org/taxa/1427658-Mammillaria-arreolae/browse_photos
メキシコのBajioからステノカクタスの自然交雑種であるStenocactus × irregularisが記載されました。
https://www.inaturalist.org/taxa/1608519-Stenocactus---irregularis


2023年
★ペルーからウチワサボテンの新種、Cumulopuntia mollispinaが記載されました。【追記】2024年にSphaeropuntia mollispina、およびSphaeropuntia sphaerica f. mollispinaとする意見がありますが、認められておりません。
★ブラジルからパロディアの新種、Parodia flavaが説明されました。まだ未記載種のようです。
★ブラジルのリオグランデ・ド・スル州西部からパロディアの新種、Parodia hofackerianaが記載されました。【追記】2023年にNotocactus hofackerianus、2024年にNotocactus mueller-melchersii subsp. hofackerianusとする意見もありましたが認められておりません。ちなみに、NotocactusはParodiaに吸収され、属としては消滅しました。
https://phytotaxa.mapress.com/pt/article/view/phytotaxa.598.4.2
★ホンジュラスのCelaque山国立公園からアカントセレウスの新種、Acanthocereus lempirensisが記載されました。
https://uk.inaturalist.org/taxa/1491587-Acanthocereus-lempirensis
★ブラジル東部の半乾燥地からタキンガの新種、Tacinga paiaiaが説明されました。まだ未記載種のようです。【追記】T. paiaiaはThe International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants 2025.により新種として記載されました。
★メキシコのGuanajuatoからマミラリアの新種、Mammillaria monochrysacanthaが記載されました。
https://www.inaturalist.org/taxa/1500362-Mammillaria-monochrysacantha
★ケレウス属の遺伝子を解析し、ブラジルのミナスジェライス州とバイーア州原産のCereus ingensと、ブラジル北部原産のCereus gerardiが分離されました。しかし、まだ未記載種のようです。【追記】C. ingensとC. gerardiはThe International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants 2025.により新種として記載されました。
https://mexico.inaturalist.org/taxa/1624208-Cereus-gerardi


2024年
2024年に公表された新種はまだ未記載のものもあります。
★ブラジル北東部のCeara州からタキンガの新種、Tacinga mirimが説明されました。いままで、より大型のT. palmadoraと混同されてきました。
【追記】T. mirimはThe International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants 2025.により新種として記載されました。
★コロラド州西部からスクレロカクタスの新種、Sclerocactus dawsoniaeが説明されました。S. glaucusより小型でトゲが少なく、遺伝的にも異なります。【追記】S. dawsoniaeはThe International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants 2025.により新種として記載されました。https://guatemala.inaturalist.org/taxa/1551384-Sclerocactus-dawsoniae
★メキシコのBajio地域からマミラリアの新種、Mammillaria ariasiiが説明されました。M. hahnianaに似ています。
【追記】M. arasiiはThe International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants 2025.により新種として記載されました。https://www.inaturalist.org/taxa/1543654-Mammillaria-ariasii/browse_photos
★メキシコのSan Luis Potosi州からオプンチアの新種、Opuntia fortanelliが説明されました。
【追記】O. fortanelliはThe International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants 2025.により新種として記載されました。
https://www.inaturalist.org/taxa/1538864-Opuntia-fortanelli
【追記】ユーベルマニア属の分子系統解析により、Uebelmannia nudaが分離されました。ブラジルのGerais州の原産で、遺伝的にはU. pectiniferaに近縁です。半地下生など珍しい特徴を持ちます。【追記】U. nudaはThe International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants 2025.により新種として記載されました。https://www.cactuspro.com/forum/read.php?1,921125
【追記】ブラジルのミナスジェライス州からコレオケファロケレウスの新種、Coleocephalocereus superbusが説明されました。マゼンダ色の花を咲かせます。しかし、まだ新種としての記載がありません。
https://inaturalist.nz/taxa/1557126-Coleocephalocereus-superbus
【追記】メキシコのシナロア州からオプンチアの新種、Opuntia erucaが記載されました。
https://www.inaturalist.org/taxa/1589864-Opuntia-eruca


2025年
2025年に発表された新種は、まだ正式な記載はされておりません。来年、The International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants 2026により正式に記載されることになります。
【追記】メキシコからマミラリアの新種、Mammillaria scoriaが説明されました。
https://polibotanica.mx/index.php/polibotanica/article/view/1241
【追記】チリのアタカマ地方からエリオシケの新種、Eriosyce tuberculosaが説明されました。
【追記】メキシコのサン・ルイス・ポトシ州からグルソニアの新種、Grusonia pulvinataが説明されました。
【追記】コスタリカからセレニケレウスの新種、Selenicereus haberiが説明されました。


最後に
以上が調べた限りの最近の新種のサボテンです。検索が不十分だったのでいくつか追加しました。また、去年の8月以降、最低でも6種類の新種が発表されています。いまだに新種が発見されることに驚きます。地中に埋まるように育つEriosyce tuberculosaや、超小型のマミラリアであるMammillaria scoriaなどは園芸的に面白そうです。
さて、今年に発表された種は、これから検証されて、将来的に正式にデータベースに記載されていく可能性があります。せっかく調べたのですから、毎年チェックしていきたいですね。



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私はサボテンやユーフォルビアなどトゲのある植物を沢山育てていますから、時としてうっかり刺されてしまうこともあります。花キリンの木質のトゲやサボテンの太いトゲならば刺さっても穴が開くだけですが、細かいトゲは途中で折れて皮膚の中に残ってしまうこともあります。私は特に化膿したという経験もありませんが、場合によっては化膿してしまうこともあるのかも知れません。さて、本日は植物のトゲに刺されてしまうことによる感染症についての話題です。参照とするのは、Simcha Lev-Yudun & Malka Halpernの2019年の論文、『Extended phenotype in action. Two possible roles for silica needles in plants: not just injuring herbivores but also inserting pathogens into their tissues』です。


トゲによる感染症とは?
植物のトゲは視覚的に警戒を喚起し草食動物が忌避する可能性があります。さらに、Halpernらは鋭利な構造を持つトゲには病原性の細菌が生息しており、そのことが草食動物から身を守る上で特別な役割りを果たしている可能性を発見しました。
イスラエルのナツメヤシの農園では、労働者の間でトゲの刺し傷に由来する細菌感染症が頻繁に発生しており、重篤なため治癒が非常に困難です。多くの農園で数百万本のトゲを電動ノコギリですべて切除する、大変費用のかかる作業が必要となりました。


トゲにいる病原菌
ナツメヤシ(デーツ、Phoenix dactylifera)の下葉から出るトゲや、common hawthorn(サンザシの仲間、Crataegus aronia)のトゲ、トゲのある低木であるthorny burnet(Sarcopoterium spinosum)とmanna tree(Alhagi graecorum)のトゲを採取し、細菌の検出を行いました。結果として、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、炭疽菌(Bacillis anthracis)、パントエア菌(Pantaea agglomerans)など、病原性が高い細菌が特定されました。
ウェルシュ菌はガス壊疽と呼ばれる筋肉の壊死を引き起こすことから、食肉細菌(flesh-eater)として知られます。炭疽菌は炭疽病を引き起こし、家畜や野生動物、そして人間にとっても急性で致命的な感染症として悪名高いものです。破傷風菌(Clostridium tetani)は破傷風を引き起こし、人間と他の動物にとって深刻な病気となります。米国やエチオピア、トルコなどの多くの国で、トゲによる障害が破傷風を引き起こしています。
また、植物のトゲによる損傷により引き起こされる化膿性炎症は、細菌だけではなく病原性真菌によっても引き起こされることを発見しました。皮下真菌症を引き起こす皮膚糸状菌は皮膚を貫通出来ませんが、トゲにより皮下組織に侵入します。



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Euphorbia lophogonaの翼状の刺塊。


トゲの病原性細菌叢
特定の植物や植物器官の表面には、微生物の生存の可能性を低下させたり上昇させたりする、化学的あるいは構造が存在する可能性があります。微生物は植物表面のバイオフィルム内で増殖します。バイオフィルムとは付着した細菌の集合体で、細菌が分泌する粘着性多糖類に囲まれています。バイオフィルムの基質内には嫌気性細菌が存在可能な無酸素状態の空隙など、様々な異なる微小環境が存在する可能性があります。Halpernらの研究結果を考慮するならば、好気性細菌だけではなく嫌気性細菌もバイオフィルム内に存在していることは明らかです。また、Halpernらの研究では、ワシントンヤシ(Washingtonia filifera)において、色鮮やかなトゲと、葉では細菌叢の構成に大きな違いがありました。


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Gymnocalycium pungensの刺は非常に鋭く皮膚を簡単に貫通します。


延長された表現型 Extended Phenotype
「延長された表現型」(拡張された表現型)とは、Dawkinsにより導入された概念です。動物の行動はその行動をとる動物の体内にある遺伝子があるかないかに関わらず、あるいは表現型が体外で発現しているか否かに関わらず、遺伝子の存在を最大化する傾向があります。例えば、Rothschildは有毒な警告色を持つ昆虫が有毒植物に集まることにより、植物のaposematism(警告するシグナル)な香りが強まり、場合によってはaposematismな色彩も強まることを説明しました。この例では、aposematismな装置は植物の部位に基づき作られたものではなく、有毒昆虫により作られた「延長された表現型」でした。
植物が微生物により草食動物から守られる場合、それは延長された表現型であると言えます。様々な病原性微生物が草食動物に感染することにより、植物は防御的な利益を得ます。このことは植物自身の延長された表現型であるだけではありません。病原性微生物は増殖と拡散のために植物を利用していることになります。植物は微生物による防御を、微生物は感染する草食動物に感染する機会を、それぞれが享受することが出来る相利共生的なシステムです。


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Aloe spectabilisの刺は派手な警告色で草食動物に己の危険性をアピールします。


同時嗅覚警告作用
細菌が感染した植物で、同時嗅覚警告作用(警告のための不快な臭いなど。simultaneous olfactory aposematism)が関与しているかは検討されてきませんでした。また、病原性微生物のバイオフィルムが誘引物質を放出することにより草食動物が訪れて病原性微生物に感染し、結果的に草食動物が減少し植物に利益をもたらす可能性もあります。
微生物の臭いに関する例では、以下のような報告があります。セイヨウハコヤナギ(Populus nigra)に感染したポプラさび病菌は、草食動物が誘引されるような香りを減少させ、草食動物の嗜好に影響を与えます。トウモロコシに感染したトウモロコシ萎黄斑ウイルスが、ウイルスを媒介するタバココナジラミを誘引する揮発性物質を放出していることが明らかとなっています。さらに、カリフォルニアの野生植物の花蜜に生息する微生物が花蜜の揮発性成分の組成を変え、花を訪れる蜂の誘引力に影響を与えることが判明しています。これらの事例から、トゲのある植物の表面に生息する微生物が、草食動物に影響を与える可能性を示唆します。


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Dasylirion seratifoliumの恐ろしい逆刺。長い葉は触れたものに絡みつきます。


最後に
以上が論文の簡単な要約です。
野生植物のトゲには様々な病原性微生物が生息しており、トゲに刺された草食動物に感染をもたらすであろうという驚きの内容でした。恐ろしい話ではありますが、流石に我々の身近な植物のトゲにはこれほど重大な病原性細菌はいなそうです。しかし、何らかの細菌は存在するでしょうから、植物のトゲに刺されたら患部の洗浄と消毒はやはり行った方が良いでしょう。放置した場合には患部が化膿するかも知れません。あと、皮膚にいる糸状菌が植物のトゲで体内に挿入されるという話は盲点でした。これは、糸状菌だけではなく皮膚の常在菌も挿入されることになりますから、免疫力が落ちている時は要注意かも知れませんね。
また、「延長された表現型」の概念はわかりにくいのですが、これは植物自身の有する毒やトゲなどの防御機構から範囲を拡張し、植物自身ではない微生物が防御機構に関与しているということです。外部を利用していることを以て「延長された」と言っているわけです。
さて、実は論文ではシリカ針の議論がされていましたが、割愛させていただきました。シリカ針とは植物の葉や茎に見られる珪酸質の毛のような微細な針で、キュウリの茎やオクラの実など、様々な身近な植物に見られるものです。論文のタイトルにも「
silica needles in plants」とあるからには、新規に提案された重要なものなのでしょう。しかし、論文中で検証されているわけではなく、細菌を検出したのは通常のトゲであってシリカ針ではありません。この論文では可能性を示唆しているだけです。いずれ、何らかの報告がなされるでしょうから、またその時に詳細をご紹介しましょう。


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生物には何かに擬態するものもいます。とは言え、擬態と言っても様々な種類があります。分かりやすい例では、目立たないように環境に擬態(隠蔽擬態)することは一般的です。それは捕食者の目を逃れるだけではなく、環境に溶け込んで待ち伏せ型の狩りをする捕食者(攻撃擬態)もいます。複雑な擬態としては、有毒生物に似た姿となり捕食を免れるベイツ型擬態や、毒や不味などの捕食者に対し不快となるような特徴を共通した生物群が互いに似た姿をとることをミュラー型擬態と呼びます。ミュラー型擬態において似た姿をとる生物群を、擬態環(mimicry rings)と呼びます。さて、本日はトゲを持つサボテンなどの植物が、ミュラー型擬態を行っている可能性を指摘した、Simcha Lev-Yadunの2009年の論文、『Mullerian mimicry in aposematic spiny plants』をご紹介しましょう。


トゲは警告する
警告色とは、有毒あるいは危険な、不快な要素を持つ生物が、他の動物に視覚的にそれを知らせる現象です。警告色の進化は、敵が警告色の視覚シグナルを、危険である、損害を生じる、または関わることに利益がないことと関連付け、獲物として回避する能力に基づきます。警告色を持つ動物の典型的な色合いは、黄色、オレンジ色、赤色、紫色、褐色、黒色、白色の組み合わせです。多くのトゲのある植物は、防御構造であるトゲが通常はカラフルであり目立つため、それが警告色であることが提案されています。


ミュラー型擬態
視覚的に警告を示すトゲを有する植物は、ミュラー型擬態の擬態環を形成することを提唱します。擬態環の存在を考察するには、類似したシグナルと、捕食者や植物に対する草食動物の縄張りの重複の2つの要素が必要です。
ミュラー型擬態は旧世界と新世界にあり、サボテン科、リュウゼツラン(Agave)属、アロエ属、ユーフォルビア属、白いトゲを持つアカシアなどが良く研究されています。これらの植物には非常に強い形態学的類似性が見られます。サボテンには共通する2種類のトゲの目立ち方があります。1つは色鮮やかなトゲ、もう1つは茎のトゲに伴う白い斑点や、白色あるいは色鮮やかな縞模様です。これらの警告色は、アガヴェ、アロエ、ユーフォルビアのトゲにも顕著に見られます。このうち、アガヴェやアロエ、ユーフォルビアには有毒のものが含まれ、これらの種はミュラー型擬態の擬態環を形成する可能性があることを示唆します。


4つの擬態環
分布域が重複し、少なくとも一部の草食動物と分布を共有する一部のグループはミュラー型擬態の擬態環を形成します。
1つ目は北米の広い地域で分布域が重複する、サボテンとアガヴェによるものです。2つ目はアフリカのアロエやユーフォルビア、そして非常に目立つ白いトゲのアカシアによるものです。3つ目はオハイオ州南東部のトゲのある植物に共通する警告色に見られます。4つ目は近東に分布するトゲのあるキク科植物で、共通する黄色のトゲを持つ29種が発見されています。この黄色のトゲを持つ植物の一部は南ヨーロッパにも分布することから、ミュラー型擬態の擬態環は南ヨーロッパでも広く見られることは明らかです。
これらのことから、ミュラー型擬態の擬態環は植物にとって一般的であり、研究されていない多くのトゲを持つ植物もミュラー型擬態を形成している可能性が高いと結論付けました。このような擬態環は類似した色や臭気を持つ有毒植物でも形成される可能性があります。


最後に
以上が論文の簡単な要約です。
最近、続けてトゲの警告色についての論考をご紹介しています。サボテンやユーフォルビアの新しいトゲは派手で目立ちますが、わざわざコストをかけて色素を作っている以上は、何らかの利点がある可能性が高いでしょう。さて、そうなると、問題はミュラー型擬態です。共通して派手な目立つトゲを持つ植物群は、草食動物に対して警告色としての作用が強化される可能性があります。鮮やかなトゲを種や分類群の違いに関わらず、草食動物が鮮やかなトゲをリスクとして避ける傾向があるのならば似ていることにも意味が出てきます。1種ではなく、複数の種において共通する草食動物にネガティブな要素があれば、草食動物の教育効果も高いのでしょう。
トゲのある植は沢山ありますが、必ずしもそれらがミュラー型擬態であるわけではないでしょう。しかし、北米のサボテンやアフリカのユーフォルビアは、同じ分布域に共通する要素がある植物が集中しているのは、なかなかに面白い事実ですね。



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先週はサボテンやアガヴェ、アロエ、ユーフォルビアの色のついたトゲが、草食動物に対する警告色として働いているという論文をご紹介しました。本日は同じ著者によりトゲの色の変化に関する論文を見ていきます。それは、Simcha Lev-Yadun & Gidi Ne'emanの2006年の論文、『Color changes in old aposematic thorns, spines, and prickles』です。


トゲの警告色については、以下リンクをご参照下さい。


トゲの変化とコスト
保護器官の成熟に伴いトゲの色は変化し、目立たなくなります。例えばバラ属の植物では、枝が若く緑色の時は、黄色やオレンジ色、赤色、褐色、黒色のトゲは目立ちます。しかし、枝が緑色から褐色あるいは灰色に変わると、トゲは元の色を喪失し目立たなくなります。
このようなトゲの色の変化は一般的ですが、必須ではありません。薄い着色層が一時的であるのは、必要なのはより少ない資源であるため、トゲへの着色に対する投資の削減となります。トゲを長期間に渡りカラフルに保つためにはその分だけコストがかかります。単純にトゲを構成する素材が最初からカラフルであるという考え方もありますが、トゲは変色してもトゲの機能を失いませんし、そもそも着色層はトゲの鋭さに寄与しません。



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Euphorbia poissoniiの赤く美しいトゲも、やがて退色し目立たなくなります。


色の変化は適応的
植物が有色器官を生み出すためのコストには3種類あります。
①色素合成のための資源割り当ての必要性。
②光合成と生産性の低下。
③目立つ事による草食動物の誘引。
しかし、トゲの色の変化は適応的であり、何らかの利点をもたらしているはずです。防御対象の器官の生長や成熟に伴い、草食動物に対する脆弱性は低下します。このような、防御コストの低減は一般的です。例えば、アカシアなどの木本は、低い位置の枝のトゲは高い位置のトゲよりも長くなります。また、幼木のみ大きなトゲがあり、成熟するとトゲを失うものもあります。さらに、草食動物の食害後にトゲのサイズと数が増加することも知られています。
これらのトゲの色の変化は、広範囲な分類学的分布を示すことから、この形質は裸子植物と被子植物の両方で、おそらく視覚指向性を持つ草食動物による淘汰に応じ、繰り返し進化してきたことを示唆しています。



最後に
以上が論文の簡単な要約です。
論文で主張されていることは実にシンプルで、要するに古いトゲが変色して元のカラフルな色彩を失うのは、理に適っているというだけの話です。カラフルな色彩を維持するためには、トゲの形成後も色素を合成して補充し続ける必要があります。カラフルなトゲは警告色として草食動物にアピールすることを考えたら、カラフルなトゲの維持にも意味があるような気もしてしまいます。しかし、変色したトゲは古い幹や枝にあるわけですから、木質化していて硬く葉もないか少ないでしょう。守るべき新しい枝先には生長点があり新しい葉がつきますから、カラフルなトゲで警告を発することに意味があります。古いトゲのカラフルな色彩を維持するためにもコストがかかりますから、新しいトゲだけにコストを割くのは合理的でしょう。
そういえば、サボテンでも若い苗のうちはトゲが強く、生長するとトゲが弱くなるものもありますね。これは、草食動物の食害を受けやすいうちは強いトゲで防御し、草食動物の食害を受けにくいサイズになったらコストがかかるトゲに資源を割かなくなるということでしょう。
トゲの運用にはコストがかかり、それは食害に対するリスクとベネフィットとの関係により、最適化されて進化してきたのでしょう。


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サボテンや多肉植物の共通点と言えば、乾燥地への適応やその結果としての多肉質な葉や茎、塊茎や塊根があります。さらに、不思議と乾燥地にはトゲで武装した植物が多いような気がします。新大陸の代表はサボテンですが、AgaveやFouquieria、Dyckiaにもトゲがあります。アフリカにはサボテン様のEuphorbiaやPachypodium、Aloe、Alluaudiaなどがあります。恐らく水分が少ない乾燥地では、水分を豊富に含む多肉植物は優れた餌でしょう。ですから、草食動物からの食害を防ぐために、トゲで武装したり毒を溜め込んだりするのでしょう。
さて、多肉植物好きとしては、サボテンや多肉植物のトゲは気になる存在です。それは研究者も同様で、サボテンのトゲについては幾つもの論文が出ています。私もサボテンのトゲの機能についての研究や、トゲを介した霧の水分の集積の論文について、過去に記事にしています。しかし、トゲそのものや草食動物との関係について考察したものはありませんでした。そこで、本日は植物のトゲそのものが動物に対して警告を発している可能性を指摘したSimcha Lev-Yadunの2001年の論文、『Aposematic (Warning) Coloration Associated with Thorns in Higher Plants』をご紹介しましょう。


植物は警告するか?
動物ではよく知られた現象である警告色は、植物ではほとんど注目されてきませんでした。橙色や黄色、白地に黒い模様などの動物は、捕食者にとって危険な存在です。それは、捕食者がその色を不快な性質と関連付けて学習するからです。しかし、植物の目立つトゲの役割りについては報告がありません。植物の警告色については、シロツメクサ(Trifolium repens)を食べるヒツジが、白紋のある葉より無紋の葉を好むことを明らかとした報告(Cahn & Harper, 1976)があるくらいです。


サボテンのトゲの様々な色
サボテン科の多くの種においてカラフルなトゲが見られ、その多くは多色です。通常のトゲ(thorn)は褐色、黄色、赤色、白色、灰色、ピンク色、黒色、黄褐色です。
Benson(1982)は174種のサボテンをリストアップしました。そのうち、80.5%にあたる140種が色のついたトゲを持ち、33.9%にあたる59種が色のついた芒刺(glochid)を持つとしています。トゲが1色であるのは8種、2色は39種、3色は48種、4色は24種、5色は14種、6色は5種、7色は2種でした。芒刺は、褐色もものが13種、赤色が7種、黄色が28種、黄褐色が10種、灰色が1種でした。
Preston-Mafham(1994)は973種のサボテンを掲載しており、そのうち862種には白い模様が、6種には褐色/黒色の模様がありました。トゲはカラフルな縞模様や白い縞模様により目立つことはよくあります。


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刈穂玉(Ferocactus gracilis)
刈穂玉の鮮烈な紅色の強刺。
筑波実験植物園にて(2025年2月)。



アガヴェのトゲの様々な色
アガヴェ属(Agave)の葉には、尖端にトゲがあるもの(※)と、葉縁に鋸歯があるものの2種類のトゲがあります。多くのアガヴェの葉には、鋸歯に加えてトゲや鋸歯の視認性を高める縞模様があります。葉縁の鋸歯は褐色、赤みがかった色、灰色、黒色、白色、黄色のいずれかでした。
Gentry(1982)は194種のアガヴェをリストアップしました。そのうち、112種が葉の頂端にトゲを持ち、86種は葉縁にトゲを持っていました。47種は葉縁に縞模様がありました。



(※) 葉の尖端にのみトゲがある吹上のようなアガヴェは、Echinoagaveとして独立しアガヴェから分離されました。


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Agave utahensis var. eborispina
ウタヘンシス変種エボリスピナの飴色の強刺。
神代植物公園の多肉植物展示にて(2022年5月)。


アロエのトゲの様々な色
アロエ属(Aloe)のトゲは、白色、赤色、黒色、黄色など色彩豊かです。多くのアロエは白色の模様を持ち、多くの種は色彩豊かです。Reynolds(1969)は137種のアロエを取り上げており、そのうち133種は葉縁にトゲを持っています。さらに、94種には色のついたトゲを持ち、37種は葉縁に白色のトゲを持っていました。13種は葉縁にトゲはあるものの葉に白色の斑点はなく、50種には葉に葉縁に色のついたトゲがあり白色の斑点を持ち、3種には葉に白色の斑点はあるものの葉縁にトゲはなく、42種には葉縁に色のついたトゲはあるものの葉に白色の斑点はなく、2種には葉縁に色のついたトゲを持ち葉には色のついた斑点を持ちます。


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Aloe flutteana
白色のトゲと斑点がよく目立ちます。


ユーフォルビアのトゲの様々な色
ユーフォルビアは色鮮やかなトゲや、トゲな付随する白色や白っぽい斑点、あるいは白色の模様は一般的です。Sajeva
& Costanzo(1994)は80種のユーフォルビアをリストアップしており、そのうちの60%にあたる48種が色のついたトゲを有しています。13種はトゲの縁に白色の模様を持ち、9種はトゲの縁に他の色の模様があります。



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Euphorbia 
ユーフォルビアはこのような斑が全体的に入るものも珍しくありません。


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Euphorbia poissonii
ユーフォルビアの新トゲは鮮やかな赤色のものは一般的です。



トゲの色はベネフィットするか?
植物のトゲの色彩や模様は広範囲に見られ、おそらくは中立的あるいはランダムな現象ではありません。動物の警告色と同様に適応的価値があると著者は考えます。
目立つトゲは草食動物がその記号を記憶し、その記号を有した植物を避ける傾向があるため、植物にとって警告色は有益であると考えられます。目立つトゲの生成と維持にかかるコストが、草食動物の食害の減少のコストより低いならば、そのような突然変異の選択に有利に働きます。草食動物が警告色を示す個体を避けて警告色がない個体を食べるならば、警告色のある個体とそうではない個体との間の競争が減少します。
色鮮やかなトゲや模様を生み出すにはコストがかかりますが、それが複数の目的を果たす場合はそのコストは低減するでしょう。例えば、サボテンで白い毛やフェルトが日中の極端な温度変化を制御し生長点を保護する役割りを果たしています。
生物学的なシグナル伝達の評価は複雑です。植物の鮮やかな色が非警告的な記号を果たしている場合、例えば花粉媒介者や果実食動物へのサインであったり、植物の温度低下などにも利用されているからです。したがって、植物の色やトゲはそれを有することを示すだけではなく、「注意を向けている」を示すことも出来ます。警告色は植物を食べる草食動物により維持されます。



最後に
以上が論文の簡単な要約です。
この論文はトゲの色についての調査結果を参照しているだけで、実際にそれが草食動物に対して如何なる作用を及ぼすのかについては明らかではありません。あくまでも仮説であり、実証する必要があります。しかし、考え方としては面白く、わざわざコストをかけている以上は何らかの効果がある可能性は高いでしょう。
さて、著者である
Simcha Lev-Yadunの植物の警告色に関する一連の論文は面白いので、しばらくは年代順にご紹介する予定です。


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今年の1月に東京農業大学のバイオリウムという施設に行って参りました。沢山の植物が見られましたが、何気なくリプサリスが開花していました。リプサリスは小型の着生サボテンですが、その小さな花を見た時に花粉媒介者が気になりました。たぶん虫媒花、まあ蜜蜂だろうとは思いました。しかし、所詮は私の憶測などは意味がありませんから、調べてみることにしました。
というわけで、本日はリプサリスの花粉媒介者を調べたCristiane Martins & Leandro Freitasの2018年の論文、『Functional specialization and phenotypic generalization in the pollination system of an epiphytic cactus』をご紹介しましょう。その前に簡単に用語を解説しておきます。生態学にはジェネラリストとスペシャリストという概念があります。植物の受粉に関する場合なら、ジェネラリストは様々な花粉媒介者の訪問を受けて受粉する植物や、様々な種類の花を訪問する花粉媒介者を指します。スペシャリストは特定の花粉媒介者に対して特殊化した花を持つ植物や、特定の植物に特化した花粉媒介者がそれにあたります。


ジェネラリストはスペシャリストに向かうか?
受粉システムがスペシャリストに向かう傾向があるという見解がありますが、ジェネラリストが一般的であるという研究から異議を唱えられてきました。植物と花粉媒介者の相互作用は、植物と花粉媒介者の一対一の関係による絶対的スペシャリストという極端の場合から、特定の花粉媒介者に依存しない条件的ジェネラリストまで勾配があるという理解に至っております。

サボテンの受粉生物学と着生サボテン
サボテン科には約1500種が含まれ、その花序や受粉システムも多岐に渡ります。サボテンの受粉には、蜂や蝶、蛾、コウモリ、ハチドリなど、様々な動物と関係を結んでいます。サボテン科のほとんどは他家受粉であり、有性生殖のために花粉媒介者に依存しています。
「サボテン」と聞くと砂漠や半乾燥地帯の柱サボテンを思い浮かべますが、新熱帯の湿潤林では着生サボテンが重要な構成要素となっています。着生サボテンはサボテン科の約10%を占め、ヒロケレウス連(Hylocereeae)とリプサリス連(Rhipsalideae)に限定されています。着生サボテンの受粉生物学に関する知識は乏しく、逸話的な報告や、Weberocereus tunillaのコウモリによる受粉(Tschapka et.al. 1999)に限られています。

リプサリスについて
リプサリスは37種から構成され、86%がブラジルの固有種です。リプサリスには3つの亜属、Rhipsalis、Erytrorhipsalis、Calamorhipsalisからなります。Rhipsalis neves-armondiiはブラジルの太平洋岸森林に生息するCalamorhipsalis亜属の着生種で、花はリプサリスで最大ですが長さ2cm未満です。果実は紫色の液果で様々な鳥を引き寄せます。

R. neves-armondiiの調査
この研究は、2014年の3月と4月に、ブラジル南東部のSerra dos Orgaos国立公園(PARNASO)の大西洋岸森林の標高約1000mの残存地において実施されました。PARNASOはリプサリスの多様性がもっとも高く少なくとも18種類が確認されている大西洋岸森林の中にあります。気候は熱帯性中温帯で、夏は穏やかで、冬の乾季は短いものです。R. neves-armondiiの開花は雨季の終わりの3月と4月におこり、周囲で確認された10種類のリプサリスのうちこの時期に咲いたのはR. neves-armondiiだけでした。

Rhipsalis neves-armondiiの花(外部リンク、rhipsalis.com)
https://www.rhipsalis.com/species/neves-armondii.htm

花粉媒介者
R. neves-armondiiの花を訪れたのは主に蜂で、3科14種の蜂が確認されました。R. neves-armondiiの花にはアンドレニアエ科、ミツバチ科、ハナバチ科の蜂が訪花したため、ジェネラリストによる受粉システムが示唆されます。R. neves-armondiiの花の表現型は花粉や蜜に容易にアクセス出来るため、様々な花粉媒介者が収集可能であると考えた場合はジェネラリストとして分類されます。しかし、その訪問頻度はそれを裏付けているわけではありません。柱頭と葯に触れたのは3種類の在来性の小型ハチとセイヨウミツバチ(Apis millifera)のみで、その訪問頻度の高さから少数種類のハチに依存しており、生態的、機能的に特殊化を伴う受粉システムを示しています。花の資源にアクセスするための障壁がないことが、ジェネラリストとしての指標ではない可能性を示唆しています。

自家受粉
花にネットをかけて花粉媒介者から断絶したり、人工的に自家受粉させたりしましたが、R. neves-armondiiは自家不稔性で絶対的他家受粉でした。人工的な自家受粉による種子は、無視できるほど少ないものでした。ネットをかけた自発的な自家受粉では種子は出来ませんでした。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
自家受粉しないための仕組みとして、例えば雄蕊と雌蕊の高さが違う(雌雄離熟)、雄蕊より雌蕊の成熟時期が異なる(雌雄異熟)、雄花と雌花がある(雌雄異花)など様々な段階があります。しかし、R. neves-armondiiの花は雄蕊も雌花も短く、両性花であり、雌雄同熟です。非常に単純な形態の花ですから、形態学的な自家受粉の回避ではないようです。内部に何かしらの仕組みがあるのでしょう。

メインのジェネラリストとスペシャリストの話はわかりにくいのですが、この場合は絶対的ではないためどうしても相対的な説明になってしまうからでしょう。絶対的なスペシャリストでは、花の形状が特殊化し特定の花粉媒介者しか訪問出来ません。対するR. neves-armondiiの花はあまりにも一般的な形状です。サイズや日中に開花することから、蜂をターゲットにしていることは分かりやすい話です。ただし、一般的な形状であるからこそ、受粉に関与しない、あるいは非効率的な花粉媒介者も訪問することになります。論文を読む限りは、絶対的ではないもののスペシャリストの傾向はあるようですが、特殊化していないがゆえにスペシャリストであることがマスクされてしまっているのかも知れませんね。


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植物は程度の差はあれど、そのほとんどが有毒です。なぜならば、植物は動けないため、昆虫やカビなどの外敵と戦うために有毒な化学物質を作るからです。そのため、野生の植物は苦味や渋味が強いことが一般的です。一部の植物は幻覚作用を持ち、大麻やケシ、コカノキなどが知られています。そして、それらの植物は宗教的儀式などで古代から使用されてきました。この幻覚作用をもたらす物質もまた、害虫に対するものであるとされるものがあります。
さて、前置きが長くなりましたが、本日は幻覚作用で有名なペヨーテ(Lophophnra williamsii)、日本では烏羽玉の名前で知られるサボテンの話題です。参照とするのは、S. Sreeremyaの2019年の論文、『Spineless Cactus as Hallucinogen』です。難解さがまったくない割りと気軽な内容ですから、さらっと読んでましょう。

ペヨーテとは?
Lophophora williamsiiは「peyote」あるいは「peyotl」として知られるサボテンの1種で、メキシコ中部から米国のテキサス北部の砂漠に自生します。伝統的な利用は古く、5700年以上に渡りインフルエンザや関節痛、歯痛、腸疾患、糖尿病、蛇やサソリの毒、皮膚病、失明、神経衰弱、ヒステリー、喘息の治療に広く利用されてきました。ペヨーテはメスカリンの幻覚作用により、ネイティブ・アメリカン教会の儀式でも使用されています。

※ネイティブ・アメリカン教会(アメリカ先住民教会)とペヨーテの関係については以下の過去記事をご参照下さい。

その利用
ペヨーテは米国では宗教的目的以外では禁止されていますが、英国では生体、あるいは乾燥した植物が合法的に販売されています。主に生、あるいは乾燥した植物をカプセルやお茶として摂取されます。ペヨーテの摂取でほとんどの使用者が経験するのは、幻覚、意識と知覚の変化、「呼吸圧」や筋肉の緊張などの身体的反応、苦味による吐き気や嘔吐です。
使用方法を詳しく見てみましょう。根から切り離された「ボタン」(peyote button)を乾燥させます。ボタンは噛むか、水に浸して液体を摂取することもできます。ボタンは粉末に挽いて、大麻やタバコなどの葉と一緒に吸うこともあります。
成分のメスカリンは、粉末や錠剤、カプセル、あるいは液体として経口摂取されます。使用者は300〜600mg(ボタン3〜6個分)を摂取します。効果は投与後、1〜3時間以内に現れ、10〜12時間で徐々に消えていきます。
メスカリンはサイズ、環境、来期感、性格、薬物使用歴により、使用者間で異なる知覚、認知、感情を生み出します。メスカリンの唯一の長期的効果は、妄想性統合失調症に類似した長期精神病状態です。

身体的影響
①しびれ、緊張、不安、反射神経の急速化、筋肉の痙攣と脱力、運動協調障害、めまい、震え、瞳孔の拡大。
②血圧と心拍数の上昇。
③激しい吐き気と暴力。
④食欲不振。
⑤体温の上昇と発汗。
⑥悪寒と発汗。

心理的影響
①鮮明な心象とぼやけた歪んた視界。
②共感覚。音楽を見たり、色を聞いたりする。
③空間と時間の知覚の変化。
④喜び、高揚感、パニック、極度の不安、恐怖。
⑤身体感覚の歪み。体が重く感じたり、無重力感がある。
⑥感覚の強調。より明るい色彩、より鮮明な視覚、増強された聴覚、際立つ味覚。
⑦集中や注意力の維持。集中や思考の困難。
⑧現実感の喪失、過去の経験と現在の融合。
⑨些細な考えや経験、物への執着。


最後に
以上が論文の簡単な要約です。
過去の情報をまとめた非常に読みやすい論文でした。ペヨーテを摂取した時の詳しい状態が述べられています。ペヨーテの使用による副作用や後遺症についてはよくわかっていません。これは副作用や後遺症が少ないからではなく、一般的に流通しているドラッグより流通量や患者数が少なく、研究されることも稀だからでしょう。大抵の向精神薬は何らかの副作用や後遺症がありますから、ペヨーテもまた何かしらの副作用や後遺症があるはずです。ネイティブ・アメリカン教会もペヨーテを使用していますが、使い方も慣れているでしょうし、麻薬中毒患者のように常習していない儀式的な使用だからそれほどの問題は起きないのかも知れません。使い方を誤れば怖いのは、ペヨーテもその他のドラッグと同じです。以下の過去記事では、ペヨーテにより急性中毒により救急搬送された例を取り上げています。



日本ではペヨーテの成分であるメスカリンは違法ですが、植物自体は違法ではありません。園芸目的で一般的に栽培されています。いくら栽培されているとは言え、大量生産されているわくではありませんから、継続的な摂取は非常に困難でしょう。まあ、日本で危険をおかしてまでペヨーテを摂取しようとする人はいないでしょう。


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サボテンの中でも小型で着生するリプサリスは特殊な存在です。サボテンは基本的に南北アメリカ大陸の原産ですが、リプサリスはそれすら逸脱していますから、サボテンの進化や生態を考える上でも面白い存在です。
さて、今年の1月に東京農業大学のバイオリウムに行った際、リプサリスやハティオラが吊り鉢で吊るされていました。しかし、皆よく似ており、一見しただけでその分類が厄介なことは容易に察せられます。さらに言うならば、リプサリスの進化や近縁属との関係が気になります。ということで、リプサリスについて少し調べて見ました。本日はその分類について見ていきましょう。参照とするのは、Alice Calventeらの2011年の論文、『Molecular phylogeny of tribe Rhipsalideae (Cactaceae) and taxonomic implications for Schlumbergera and Hatiora』です。リプサリスとその近縁属を遺伝子解析による分子系統を示しています。

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Rhipsalis

リプサリスの旧分類
サボテン亜科内の分類は長年にわたり大幅な変更がなされており、リプサリス連(Rhipsalideae)にも影響を及ぼしています。リプサリス連とヒロケレウス連(Hylocereeae)には絶対着生サボテンが含まれるため、密接に関係していると考えられてきました。そのため、リプサリス連だったいくつかの属がヒロケレウス連の属に統合されたため、属レベルの分類に不確実性が生じてしまいました。いくつかの属はその分類をめぐり議論となっています。ここで、過去の代表的なリプサリスの分類を見ていきます。

①Britton and Rose(1923)
すべての着生サボテンを、玉サボテンや柱サボテンとともにケレウス族(Cereeae)としました。リプサリス亜族(Rhipsalidanae)にはErythrorhipsalis、Rhipsalidopsis、Pfeiffera、Acanthorhipsalis、Pseudorhipsalis、Lepismium、Hatiora、Rhipsalisが含まれ、エピフィルム亜族(Epiphyllanae)にはZygocactus、Epighyllanthus、Schlumbergera、Epiphyllum、Disocactus、Chiapasia、Eccremocactus、Nopalxochia、Wittiaが含まれます。

②Buxbaum(1970)
リプサリスの仲間を、NyctocerinaeやHylocereina、Epiphyllinae、Disocactinaeと共にヒロケレウス族(Hylocereeae)に配置しました。リプサリス亜族をPfeifferae(Pfeiffera、Acanthorhipsalis)、Schlumbergerae(Erythrorhipsalis、Hatiora、Rhipsalidopsis、Schlumbergera、Zygocactus)、Rhipsales(Rhipsalis、Lepismium)に分割しました。

③Barthlott and Taylor(1995)
Rhipsalis属(Rhipsalis亜属、Erythrorhipsalis亜属、Calamorhipsalis亜属、Epallagogonium亜属、Phyllarthrorhipsalis亜属)、Hatiora属(Hatiora亜属、Rhipsalidopsis亜属)、Schlumbergera属、Lepismium属(Lepismium亜属、Pfeiffera亜属、Ophiorhipsalis亜属、Acanthorhipsalis亜属、Lymanbensonia亜属、Houlletia亜属)からなります。


④Doweld(2001)
Rhipsalidanaeを2つの亜族で分けます。

RhipsalidinaeはNothorhipsalis(=Houlletia)、Lepismium、Erythrorhipsalis、Rhipsalis(Calamorhipsalis亜属、Phyllarthrorhipsalis亜属、Cereorhipsalis亜属、Rhipsalis亜属)、Hatioraからなります。
RhipsalidopsidinaeはEpiphyllanthus、Rhipsalidopsis、Epiphyllopsis、Rhipsaphyllopsisからかなります。
さらに、Barthlott and Taylor(1995)によりRhipsalideaeに分類されていたいくつかの仲間をHylocereeaeに移動し、3亜属に分けました。それは、Pfeifferinae(Pfeiffra、Acanthorhipsalis、Lymanbensonia)、Schlumbergerinae(Schlumbergera、Schlumbergopsis、Pseudozygocactus、Schlumbergeranthus、Schlumberphyllum、Schlumsocactus)、Hylorhipsalidinae(Ophiorhipsalis、Hylorhipsalis)です。

⑤Huntら(2006)
Barthlott and Taylor(1995)と同じ分類を採用しましたが、Lepismium亜属のPfeiffraやAcanthorhipsalis、Lymanbensonia、さらにはHoulletiaの一部をRhipsalideaeから除外しました。

⑥Nyffeler(2002)
サボテン科全体の分子系統(Nyffeler, 2002)では、RhipsalideaeとHylocereeaeは分けられることが示唆されました。この枠組みは。Hylocereeaeの近縁種として出現したPfeiffra(Acanthorhipsalisを含む)を除き、Barthlott and Taylor(1995)によるRhipsalideaeの構成を裏付けています。

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Hatiora

分子系統による分類
分子系統による分類では、Rhipsalideaeの単系統性が裏付けられました。また、これらの属分類はHuntら(2006)の分類と概ね一致しています。違いは側系統が示唆されていたHatioraとSchlumbergeraです。かつてRhipsalidopsisに含まれていたHatiora①はSchlumbergeraに移され(※1)、HatioraはHatiora②の3種類に縮小されます。
 
━━Calymmanthium substerile

┣━━━Pfeiffra

┃  ┏Hatiora①
┃    ┏┫
┃ 
┃┗Schlumbergera
┫    
   
┃    ┣━Hatiora②

┃┏┫
┃┗━Lepismium
┗┫
 ┗━━Rhipsalis

※1 ) ハティオラ①(H. rosea、H. gaertneri)は現在ではRhipsalidopsisに相当します。スクラムベルゲラにはHatiora epiphylloidesが含まれますが、現在ではSchlumbergera luteaとされています。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
リプサリスやハティオラ、スクラムベルゲラ(シュルンベルゲラ)、レピスミウムの遺伝子解析を分子系統しました。この論文以前は外見的特徴による分類であり、分子系統もサボテン科全体の分類を明らかとするためのものでした。各属の関係性が明らかとなっただけではなく、リプサリスの属内分類も明らかとしています。
リプサリスは主に5群からなるようです。分子系統の根元にある起源的な「floccosa group」は、R. dissimilis、R. floccosa、R. trigonaからなります。次に分岐したのはCalamorhipsalis亜属で、R. puniceodiscus、R. neves-armondiiからなります。次に3つの群に分岐しています。1つはR. paradoxa、2つ目はErythrorhipsalis亜属でR. cereuscula、R. pulchra、R. pilocarpa、R. clavataからなります。3つ目は「Core Rhipsalis」でR. lindbergiana、R. olivifera、R. crispata、R. micrantha、R. elliptica、R. russellii、R. cereoides、R. pachyptera、R. teres、R.

baccifera、R. mesembryanthemoidesからなります。とはいえ、全種類を解析したわけではないでしょう。属内分類はまだすべてが明らかになったとは言えないかも知れませんね。


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植物は自生地に住む人々と無関係に存在するのではなく、常に関わり合いながら存在してきました。特にその地域を象徴するような植物には、民族学的な関係の歴史や伝説があるものです。本日は「cardon」こと、Trichocereus atacamensisを取りあげます。一般に「cardon」と言えばメキシコに自生するPachycereus plingreiを指しますが、アルゼンチンのある地域では「cardon」と言えばTrichocereus atacamensisを指すということです。T. atacamensisの自生地における伝承をみてみます。ということで、参照とするのはMaria F. Barbarich & Marie E. Suarezの2018年の論文、『LOS GUARDIANES SILENCIOSOS DE LA QUEBRADA DE HUMAHUACA: ETNOBOTANICA DEL "CARDON" (TRCHOCEREUS ATACAMENSIS, CACTACEAE) ENTRE POBLADORES ORIGINARIOS EN DEPARTAMENTO TILCARA, JUJUY, ARGENTINA』です。

Humahuaca渓谷の自然と民族
「cardon」あるいは「pasacana」と呼ばれる柱サボテン、Trichocereus atacamensis(Echinopsis atacamensis)はアンデス地方の原産で、アルゼンチン北西部、ボリビア南西部、チリ北部を含むprepuna州に限定されます。アルゼンチンのJujuy州にあるHumahuaca渓谷では「cardon」は特徴的な要素で、東西の山脈により形成される南北に走る狭い回廊により構成されます。この地域は多様な民族があり、スペイン人が到着する数十年前にはインカ帝国の南端の一部でした。Humahuaca渓谷は草原と低木が優勢で、点在する低木と豊富な柱サボテンからなります。Jujuy州ではKolla族に属していると認識している人々は、先住民族の52.5%を占めています。

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Trichocereus pasacana
『The Cactaceae II』(1920)より。
T. pasacana=Leucostele atacamensis ssp. pasacana

Humahuaca渓谷のカルドン
Kolla族の協力者たちは、「cardon」という言葉を様々な意味で使用しました。「cardon」とはこの州に生息する直立あるいは燭台状の茎を持ち、大型の3種類の柱サボテンを指します。つまり、Trichocereus atacamensis、Trichocereus tarijensis 、Trichocereus terschekiiです。T. tarijensisは「cardon poco」、あるいは「poco」、「poco-poco」、T. terschekiiは「cardon de los valles」あるいは「pocoto」と呼ばれます。また、同様の生態や形態を持つ他の小型種を「cardonctions」と呼んでいます。逆にTrichocereus schickendgntziiやOreocereus trolliiは固有名詞がありません。地元住民は3種類のカルドンを明確に区別しています。T. atacamensisは直立しており、その大きさにより区別され、花が白いことからより優れているとされます。T. tarijensisはよりサイズが小さく赤い花を咲かせます。T. terschekiiは様々な場所で育ち、より多くの枝を持ちます。住民たちはT. atacamensisのトゲはより太く長いと述べています。また、標高や気候条件の違う産地ごとに特徴に違いが見られることを認識していました。

カルドンの物語
「cardon」には、人間の起源を持つという物語があります。その物語の大まかな概要は以下の如くです。Humahuaca族の王女とTukma(Tukman)の族長が恋に落ち、しかしそれはHumahuacaの社会には受け入れられませんでした。その時、族長は王女を探すために軍隊とともにHumahuaca渓谷にいました。しかし、呪いにより彼らは棒に変えられてしまい、その棒からcardonが芽生え聖地の守護者となり、その花の美しさは聖地の愛の美しさを表しています。
物語には複数のバリエーションがあり、呪いは王女の部族が族長に対して抱いていた憎しみから生じたという主張や、不適切な恋愛に対するPachamama (アンデスの古い神話の女神)からの罰であると主張する人もいます。また、これは呪いではなく、敵対した関係の中で、主人公たちを長命の植物に変えることにより、その愛を永続させることが出来たのだと信じている人もいます。さらに、改宗中に族長が王女を抱きしめたために、王女は花に族長はcardonの体になり、彼らの子供が渓谷のcardonになったという話もあります。族長が登場しない話もあります。それは、王女とその民が征服軍の脅威にさらされ、その土地から逃れPachamamaが、王女らをcardonに変えて守ったという話もあります。王女は年に1度だけ美しい花の姿で現れて世界を見つめます。


聖域の守護者
地元住民の語る物語の中でcardonは象徴的な役割を果たしています。太古の昔から今日に至るまで、その守護者としての役割は「antigales」など、神聖さを持つ場所で強調されます。「antigales」は先祖が住んでいた集落で、現在は遺跡がありその子孫たちにとって非常に重要です。この守護者としての主導的な神話や聖域だけにとどまりません。アルゼンチンからの独立のための戦いでcardonが重要であったと地元住民は誇らしげに語ります。

カルドンと自然
cardonはまだ幼植物の頃は、「churquis」(Prosopsis sp.、マメ科の樹木)や「airampos」(Opuntia spp.、ウチワサボテン)、または岩により守られます。逆にcardonは動物に隠れ場所を提供します。「choschori」(Octodontomys gliroides、マウンテン・デグー)のようなげっ歯類は巣穴を作り、果実を食べ、場合によっては茎も食べます。鳥も枝や枝と枝の間に巣を作ります。鳥はcardonの種子を運び、害虫を食べるため肯定的に捉えられています。家畜もcardonに関連しています。食糧や水が足りていない時には、ヤギやヒツジが小さなcardonを食べます。
cardon蛾(Cactoblastis bucyrus)は幼虫がcardonを食べる蛾で、過去20年で大幅に増加しています。都市化や大気汚染、農薬の使用の増加により鳥が減少によるものです。地元住民はcardonの健康状態は環境の状態を反映していると考えています。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
cardonは地元住民にとって馴染み深い植物であると同時に、自分たちの出自や信仰に関わる重要かつシンボリックな植物です。記事で紹介した他にも、異なるバージョンの物語もあり、大変興味深いフォークロアでした。多肉植物は人と関わりながら文化となっている例もありますから、今後も多肉植物との関わりについても調べてもいきたいと考えております。
最後に蛇足ですが、Trichocereus atacamensisの学名が変更されているようですから少し触れておきます。2012年にT. atacamensisは意外にもLeucosteleに移されました。さらに、2021年に亜種であるL. atacamensis ssp. pasacanaが命名されています。


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当ブログでは多肉植物の分類についてもぼちぼち記事にしていますが、近年では遺伝子解析を用いた分子系統による分類が当たり前となっています。サボテンもまた盛んに遺伝子解析がなされており、サボテンの属分類はだいぶ様変わりしました。さて、マミラリアだのパロディアだのと分類の記事を書いていましたが、私の好きなギムノカリキウムについては記事を書いていないことに気が付きました。論文自体は数年前に読んでいて、たまに引っ張り出しては参考にしていましたが、今更ですが記事にしておこうという次第です。
さて、本日ご紹介するのはPablo H. Demaioらの2011年の論文、『Molecular phylogeny of Gymnocalycium (Cactaceae): Assessment of alternative infrageneric systems, a new subgenus, and trends in the evolution of the genus』です。割りと有名な論文ですから、あるいは皆さんご存知かも知れませんが、お暇であればしばしお付き合い下さい。

ギムノカリキウム属とは?
Gymnocalycium Pfeiff. ex Mittlerは、球状の生長パターンと、トゲがない花托を持つ昼行性の花を特徴とする、約50種からなる属です。パタゴニア南部を除くボリビア南部、パラグアイ南西部及び北部、ブラジル南部、ウルグアイ、アルゼンチンに分布します。
Gymnocalyciumは栽培しやすく開花も早いため、サボテン愛好家の間でも人気のある属の1つです。分類群の新しい記述は個人の収集家や栽培家により行われてきたため、小さな形態的な差異を過度に強調し新しい分類群として記述する傾向があります。そのため、異名が増加しており、安定した属内の分類システムが必要となりました。

ギムノカリキウム属の分類の歴史
ギムノカリキウム属の属内分類の最初の試みはFrič(1935)によるもので、種子の形質にもとづいて5つのグループからなるシステムを発表しました。しかし、このシステムは非公式で有効に記載されませんでした。

Frič, 1935
1, Ovatiseminae
2, Macroseminae
3, Trichomoseminae
4, Microseminae
5, Muscoseminae

Schütz(1968)はFričの基準に従い、5つの亜属からなる有効なシステムを発表しました。

Schütz, 1968
1, Gymnocalycium
  =Ovatiseminae Schütz, nom illeg.
2, Macroseminae Schütz
3, Trichomoseminae Schütz
4, Microseminae Schütz
5, Muscoseminae Schütz

Buxbaum(1968)は、ギムノカリキウムの列(series)、亜列(subseries)を公表しました。また、他にもBackeberg(1941, 1958)やIto(1950, 1957)、Pazout(1964)などは、茎と花の形態に基づき属内分類群を提案しましたが、無効であると判断されています。

Schütz(1968)の分類体系は、Till & Hesse(1985)及びMetzing(1992)により修正され、Till(2001)及びTill et al.(2008)が果実と花、種子の特徴に基づく新しい体系が発表されるまで、ほぼ30年間に渡り研究者や趣味家に広く受け入れられてきました。Tillの分類体系はSchützとは大きく異なりますが、どちらが自然な分類を反映しているのか判断する決定的な証拠はありませんでした。

分子系統解析
ギムノカリキウム属内分類における論争は、形態に基づく方法では分類体系の解決が困難であることを示しています。しかし、形態学的な情報と遺伝子情報を組み合わせて利用したなら、安定した分類が出来ます。

  ┏━Gymnocalycium
  ┃
  ┣━Trichomosemineum
 ┏┫
┏┫┗━Macrosemineum
┃┃
┃┗━━Scabrosemineum

┃┏━━Muscosemineum
┣┫
┃┗━━Pirisemineum

┗━━━Microsemineum

Microsemineum亜属
G. saglionis

Microsemineumはギムノカリキウムの中でもっとも早く分岐した分類群であることが示唆されます。特徴は茎は大型で、果実は色鮮やかかつジューシーで甘いため、鳥などの脊椎動物を引き寄せます。果実の特徴はPirisemineum亜属と似ています。ジューシーな果実はギムノカリキウム属を含むBCT系統群の多くの属、TrichocereusやStetsonia、Echinopsisと共通します。
G. saglionisはアルゼンチン北西部の山脈に自生します。ギムノカリキウム属の分子系統の基底にあるため、ギムノカリキウムの祖先はアルゼンチン北西部とボリビア南部の山岳地帯が起源であると考えられます。

Pirisemineum亜属+Muscosemineum亜属
Pirisemineum亜属
G. pflanzii ssp. pflanzii, G. pflanzii ssp. zegarrae, G. chacoense
Muscosemineum亜属
G. marsoneri ssp. marsoneri, G. marsoneri ssp. megatae, G. eurypleurum, G. schickendantzii ssp. schickendantzii, G. mihanovichii, G. anisitsii ssp. damsii

Pirisemineum亜属とMuscosemineum亜属は、分布域がアルゼンチン中央部まで広がるG. schickendantziiを除き、ほとんどの種はアルゼンチン北部、ボリビア南部、パラグアイ西部のグラン・チャコ森林に生息します。Pirisemineum亜属はジューシーな果実とムール貝のような形の種子を特徴としています。果実はMicrosemineum亜属と似ていますが、主にアリにより散布されます。

Scabrosemineum亜属
G. hossei, G. glaucum ssp. glaucum, G. glaucum ssp. ferrarii, G. castellasonii ssp. castellasonii, G. castellasonii ssp. ferocius, G. oenanthemum, G. bayrianum, G. monvillei, G. ritterianum, G. mostii ssp. valnicekianum, G. mostii ssp. mostii, G. horridispinum ssp. horridispinum, G. horridispinum ssp. achirasense, G. rhodanthemum, G. spegazzinii

このグループは広義(sensu lato)のMicrosemineum亜属で、Schütz(1968)より分類されました。Tillら(2008)はMicrosemineum亜属のSection Saglionia(節)に、Microsemineum亜節を分類しました。しかし、分子系統では分離されたグループを作っています。そのため、著者らはGymnocalycium subgen. Scabrosemineum Demaio, Barfusr, R. Kiesling and Chiapella, subgen. nov.を新亜属として記載しました。このグループのほとんどが、アルゼンチン中西部の山岳地帯の温帯亜湿潤気候に分布します。自生地は背の高い草むらが優勢で、岩の露頭が点在します。

Macrosemineum亜属
G. denudatum, G. horstii ssp. horstii, G. paraguayense, G. hyptiacanthum ssp. netrelianum, G. hyptiacanthum ssp. uruguayense, G. mesopotamicum, G. reductum ssp. leeanum

従来、Macrosemineum亜属(Macrosemineum亜節)に分類されていた種は分子系統では単系統とは見なされません。ブラジル南部に分布するG. horstiiとG. denudatumは、Trichomosemineum亜属やGymnocalycium亜属と姉妹関係にあり、まとまりがあります。解析方法によっては、G. hypticanthumはGymnocalycium亜属とされる場合もあります。Kiesling(1980)は、G. mesopotamicumの種子がTrichomosemineum亜属とG. hypticanthumの中間形態を示すことを指摘しました。分子系統でもG. mesopotamicumの位置はTrichomosemineum亜属と密接な関係があることを裏付けています。
Macrosemineum亜属のほとんどの種は形態的に類似しており、地理的に分布は限定されています。分布は、ウルグアイ、南中央パラグアイ、ブラジル南部、アルゼンチン東部の、岩の露頭などに自生します。

Trichomosemineum亜属
G. bodenbenderianum, G. quehlianum

Trichomosemineum亜属は、アルゼンチン西部から中央部の山岳地帯と乾燥した谷間に生息しまTrichomosemineum亜属の命名はSchütz(1968)によるものですが、Buxbaum(1968)はSeries Quehliana(列)、Tillら(2008)はMicrosemineum亜属、Section Saglionia(節)、Subsection Pilesperma(亜節)に分類しました。分子系統はこれらのグループを支持しており、形態学的な過去の研究内容とも一致します。ただし、Tillら(2008)のPilespermaの位置は一致していません。

Gymnocalycium亜属
G. bruchii, G. calochlorum, G. baldianum var. baldianum, G. schroederianum, G. robustum, G. gibbosum ssp. gibbosum, G. fischeri, G. kieslingii, stringlianum, G. uebelmannianum, G. andreae, G. reductum ssp. reductum, G. erinaceum, G. amerhauseri

Gymnocalycium亜属は、ほとんどが中央アルゼンチンの山岳地帯に自生し、他にはパタゴニア北部、アルゼンチン東部、ウルグアイ西部に少数の種が分断されて自生します。すべての種は、Schütz(1968)、Till(2001)、Tillら(2008)のGymnocalycium亜属に相当します。ただし、Tillら(2008)のさらなる分類は現在のところ支持されません。過去10年間に発見されたギムノカリキウム属の新種はほとんどがこのグループに属し、形態学的に非常に類似しています。分子系統でもほとんどの配列が同じであり、顕著な均質性を示しました。この解像度の低さは既存のDNA配列データによる解決は難しい可能性があります。これは、急速に新しい時代に種が放散したことを反映しているのかも知れません。

ギムノカリキウムの形態学
Nyffeler(2005)が説明したBCT clade(※1)の祖先分類群は、おそらくbarrel cacti(Ferocactus, Echinocactus)でした。BCT cladeのGymnocalycium属の祖先は、おそらく樽状(Barrel)の生長形態か球状で単独の生長形態であることが示唆されます。G. saglionisはこの属唯一の樽状生長形態を持つ種であり、おそらくはGymnocalycium属の祖先に似ています。他の種はサイズが徐々に縮小し、球状となる傾向を示します。円柱状あるいは樽状のサボテンの分布は低温により厳しく制限されていますが、球状のサボテンは寒さに強いようです。Gymnocalycium属のサイズが小さくなったのは、温暖な気候からより涼しい条件下へ適応した結果かも知れません。
かぶら状の根は水とデンプンの貯蔵に関係しています。かぶら状の根は高度の脱水に耐える能力があり、干ばつ時の水分損失を防ぎます。特にTrichomosemineum亜属とGymnocalycium亜属は、独特な多肉質の根を発達させる傾向があります。
基底系統であるMicrosemineum亜属、Pirisemineum亜属、Muscosemineum亜属は種子が小さく、果実はジューシーで色鮮やかです。この特徴は、endozoochory(※2)と関連があります。Macrosemineum亜属、Trichomosemineum亜属、Gymnocalycium亜属は乾燥した緑色の果実を持ち、これはアリ散布(myrmecochory)と関連があります。また、これらのグループは種子が大きいものもありますが、このような種子は散布されにくいものの発芽など活発な苗木を生み出す可能性があります。

※1 ) BCT caldeは、主に柱サボテンからなる巨大なグループです。UebelmanniaやCereus、BrowningiaなどからなるCereeaeと、EchinopsisやHarrisia、Oreocereus、Matucana、GymnocalyciumなどからなるTrichocereeaeからなります。

※2 ) endozoochoryとは、果実が動物に食べられて体内で種子が運搬されること。被食散布される。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
注意事項としては、各亜属に書かれた学名は、論文が書かれた2011年当時のものであるため現在とは異なる部分があるかもしれません。また、書かれた学名は研究に用いた種を指しているだけで、すべての種を調査しているわけではありません。
さて、一応はギムノカリキウム属内の分類が科学的になされたわけですが、論文がやや古いためより精度の高い解析が望まれます。今回は割愛しましたが、論文では種ごとの関係まで解析されています。ただし、特にGymnocalycium亜属などは種ごとの関係性はあまり上手く解析出来ていないようです。おそらく、分散しながら急速に進化したため、既存の方法では上手くいかないのでしょう。さらなる研究が待たれます。


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植物の名前は混乱しているものが多く、1つの植物に沢山の異名があることは珍しいことではありません。古い時代に記載された種では、そもそもそれが何を指していたのかがよくわからないケースもあります。これは、国際命名規約が整備される前のもので必要な情報が足りていなかったり、古いため記述された標本が戦争などで失われてしまい現存しないなど、種の判別のために必要な情報が不足しているためです。多肉植物の記載された時の情報を知りたいため、古い時代の記述を調べることがありますが、図譜はなく標本の指定もなく、ラテン語による2〜3行の簡素な特徴の説明があるだけだったりします。このように、古い時代の記述は混乱しており、それが何を指しているのかは植物学者が丹念に調査しないとわからないものばかりです。ですから、古い記述が実はある植物を指していたことが判明し、より古いというか先に命名された名前に修正されることも珍しくありません。
ということで、本日は命名に関する内容ということで、Detlev Metzing & Roberto Kieslingの2007年の論文、『Winterocereus (Cactaceae) is the corred name for Hildewintera』をご紹介します。

Hildewinteraの歴史
Borzicactus族は球状から円柱状になるサボテンのグループで、ボリビア、ペルー、アルゼンチンに分布し、主に鳥媒花です。その中で、二重花被という特徴を持つものが、1962年にWinteria aureispina F. Ritterとして記載されました。しかし、これは1784年に記載されたWintera Murrayと同名(parahomonymy)、1878年に記載されたWinteria Saccardoと同名(Homonymy)であるため、属名を変更する必要がありました。
1966年にWinterocereus Backebergと、それより3〜4ヶ月早くHildewintera F. ritterに変更する提案がなされました。(先取権により)Hildewinteraとなり、その妥当性については疑問視されたことはありませんでした。

Hildewinteraは非合法
2003年にHildewinteraの新種が記載された論文が出されました。その論文に対するコメントとして、W. Greuter(私信)はING(Index Nominum Genericorum)において、Hildewinteraの項目に「タイプ種に対する不完全な参照」が記されていることを気が付かせてくれました。
著者らはRitter(1966)による学名への参照のページ番号が省略されているため、「完全かつ直接的」ではなかったことを見逃していました。これは属名にも当てはまり、よってHildewinteraは有効に公表されなかった(not validly published)ことが判明しました。その結果、Backeberg(1966)が公表したWinteriocereusは、規約の要件をすべてみたし、もっとも古い利用可能な名前です。Rowley(1968)による索引への記載により、Hildewinteraは有効に公表されましたが、そこでもWinteriocereus Backeberg 1966が異名として記載されているため、Hildewinteraは非合法名です。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
特に疑問もなく一般的に使用されてきたHildewinteraが実は有効に公表されていない非合法名であり、これを有効に公表されているWinterocereusとしましょうという提案でした。しかし、現在はWinterocereusはCleistocactus Lem.に吸収されてしまいました。著者らもCleistocactusに含める意見については承知しており、別属とすべきであることを改めて主張していますが、結局のところCleistocactusに統廃合されつしまったわけで、この論文の提案を無駄ではないかと思われるかも知れません。とはいえ、この論文は分類学的に意味があり、特定の分類群の命名に対する正しい知識を与えてくれます。ですから、データベース上でもこの論文の知見は活用されており、将来の分類学に対する有効な資料となっています。例えば、キュー王立植物園のデータベースでCleistocactusを見てみましょう。

Cleistocactus Lem., 1861.
Heterotypic Synonyms
Winteria F. Ritter, 1962, nom illeg.
Winterocereus Backeb., 1966.
Hildewintera F. Ritter ex G. D. Rowley, nom illeg.

以上のように、論文の知見が活用されています。WinteriaやHildewinteraが非合法名であることや、HildewinteraがRowleyにより再び記載されたことなどです。また、将来的にCleistocactusの再編が行われる可能性もあるため、その時にこの論文は重大な意味を持つことになるかも知れません。


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烏羽玉の仲間、つまりはペヨーテは幻覚作用を持つアルカロイドを含み、アメリカでは先住民が宗教的な意味合いで古くから利用してきました。南米ではTrichocereusの仲間をSan Pedroと呼び、やはりその幻覚作用を利用してきました。しかし、San Pedroはペヨーテほど一般的ではないせいか、あまり良い論文を見つけ出せずにいましたが、ようやく見つけ出せたので記事にします。
本日ご紹介するのは、Marlene Dobkinの1968年の論文、『Trichocereus pachanoi -A Mescaline Cactus Used in Folk Healing in Peru』です。ペルーの民間療法を調査した民族学的な研究です。言い訳になりますが、論文の出版が1968年と非常に古く、文字が掠れてよく読めない部分が多々ありましたので、内容的に不正確な訳があるやもしれないということはご了承いただきたいところです。

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San Pedro (Trichocereus pachanoi) at Cataluco, near Huancabamba.
「Botanical Museum leaflets, Harvard University v.29」(1983年)


魔術的治療の調査
著者は1967年の夏に、リマの北約500マイルにある沿岸のメスティソの村で調査を行いました。Lambayeque県にある小さな農業コミュニティでは、100人以上の男性と3人の女性が、Trichocereus pachanoiの使用により病気の診断と治療に取り組んでいます。著者は病気に対する信念体系と、薬物と魔術について調査しました。

魔術的な治療
ペルーの沿岸農民は病気について、その経験則的な病因は認識しているものの、病気の根本原因を超自然的なものとしています。なので、経験的な治療は評価されていますが、魔術や祈祷が優先しあくまでも補助的なものです。病気の原因は聖地や墓、遺跡から発せられる蒸気や空気によると信じられます。
医療施設やバランスの取れた食事がなく、衛生設備も劣悪なため、病気からくる不安を抱えた住民は民間療法士(folk healer)であるmesaに相談します。夜通しの治療の儀式で、療法士と患者はSan Pedroで作った薬を飲みます。薬の作用がある間に療法士は病気の原因を占い、病人に投与する薬草を処方します。患者は村内だけではなく、友人や親戚から紹介され、遠く離れた地域からも訪れます。

処方
すべての療法士は治療の儀式でTrichocereus pachanoiを利用しますが、添加物や儀式にはバリエーションがあります。療法士の中には、下剤作用と不眠効果を高めるCondorillo(Lycopodium sp.、ヒカゲノカズラ類)、Misha(Datura arborea、キダチチョウセンアサガオ)、Hornamo(未確認)を加える場合もあります。ある療法士によると、Mishaは特に衰弱している患者に大量に与えると死に至る可能性があるということです。San Pedroとその添加物は吐気および激しい嘔吐を引き起こしますが、これは病人から不純物を取り除き浄化させるために重要であると考えられています。療法士は患者の体の大きさや病気の性質、罹患期間の長さに基づいて投薬量を決定します。一般的にサボテンは細かく切り刻まれ、水に入れてエッセンスだけが残るまで数時間煮られます。治癒の力は療法士が使用する物質に宿ると信じられています。

儀式
以下は著者がVallesecoで観察したある治療儀式の様子です。
バスで4時間ほど離れた町から3人の患者がやって来ました。儀式は夜間に行われ、人工的な照明は一切使われませんでした。
助手を務める治療師の弟子は、タバコと水の混合物を嗅ぎタバコとして吸い込みました。治療師はスペイン語で主の祈りに始まる、かなりメロディアスで心地良いな歌を歌い始めました。その後は、ラテン語とケチュア語の混じる自然な詩が続きました。歌にはガラガラの役目を果たすヒョウタンによるリズミカルな伴奏がありました。約1時間の歌唱の後に、San Pedroのエッセンスがカップに注がれ、その効果を高めるためにカップは石や剣、磨かれた棒により軽く叩かれました。
時折、患者と治療師、助手は外に出て催吐作用のある薬を吐き出しました。聖母マリアと神に祈りを捧げながら、さらに歌は続きました。時折、歌は治療師が病人に与えるであろう助けを朗読しました。患者は順番に立ち上がり、助手は装飾のある剣を患者の足の間に置き、患者に柄をつかませました。助手は嗅ぎタバコとして鼻にタバコをくわえ、剣を患者の体のあちこちに、十字を描くように擦り付けられました。
治療師は患者の症状とその問題について話し合い、完了すると歌を再開しました。やがて、助手が立ち上がり、空中に水を撒き、剣で空気を切り、「悪霊」(evil spirits)を追い払いました。別のタイミングで治療師は磨かれた石のいくつかを擦り合わせ、夜の暗闇の中に火花を飛ばしました。夜が明け、最後に一連の歌が歌われ儀式は終了しました。


その解釈
治療師たちはサボテンの効果が続くと、患者を苦しめている病気の性質についての洞察が得られると主張しています。石(herbal stone)を打つことで刺激されるビジョンは治療師たちの誇りであり、処方のための情報源です。治療師たちは病気を取り除く象徴として、病人にかける何らかの物体、あるいは小さなモルモット(cuye)を使用します。
治療師たちが用いる儀式の多くはローマ・カトリックの信仰と融合しており、実際の儀式にもカトリックの典礼がそのまま取り込まれています。カトリック教徒が多数を占めるこの土地では、馴染みのあるラテン語の祈りも唱えられます。祈りは様々なカトリックの聖人に向けられ、病人のためにとりなしてくれるように懇願されます。


最後に
以上が論文の簡単な要約です。
普段あまり読まない内容ですから、割りと新鮮な気分で読めました。しかし、San Pedroは激しい嘔吐を伴うため、その使用は極めて宗教的な目的に限定せざる得ないようにも思われます。ペヨーテはドラッグとして法的に規制されている国もありますが、San Pedroはどうでしょうか? 抽出成分ならいざ知らず、サボテンを食べたり煮出した汁を飲んだけでは、ただただ苦しいだけでしょう。やはり、その豪華で美しい花を楽しむのが一番ですよね。


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トリコケレウスには幻覚作用があり、古来よりシャーマンが儀式に使用してきたと言われています。その成分や効果、あるいは使用について調べていたのですが、思わぬ論文を見つけました。それは、Cristian Corioらの2013年の論文、『An alkaloid fraction extracted from the cactus Trichocereus terscheckii affects fitness in the cactophilic fly Drosophila buzzatii (Diptera: Drosophilidae)』です。私はトリコケレウスは何故そのような成分を有しているのかは考えたことがありませんでしたが、論文では実験によりその謎を考察しています。

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Trichocereus terscheckii
『The Cactaceae II』(1920)より。

好サボテン性害虫
南米の好サボテン性のショウジョウバエであるDrosophila buzzatiiは、ウチワサボテンの腐った枝葉に好んで卵を産みますが、CereusやEchinopsisといった柱サボテンかにも見られます。しかし、柱サボテンで飼育したハエは、生存率の低下や、サイズの小型化、発育に時間がかかるなどの特徴が見られました。ウチワサボテンと異なり柱サボテンはアルカロイドや中鎖脂肪酸、ステロールジオール、トリテルペン配糖体などの毒性化合物を生成します。
ショウジョウバエはアルゼンチンのSan Juan州で、発酵させたバナナを用いて集められました。採取地ではD. buzzatiiが繁殖し、主にOpuntia sulphureaの腐った茎につきます。次いでT. terscheckiiにもつきます。

Trichocereus terscheckiiのアルカロイド
Trichocereus terscheckiiの化学的性質については、ほとんど知られていません。そこで、T. terscheckiiの抽出物の、好サボテン性ショウジョウバエのDrosophila buzzatiiへの影響を調べました。
T. terscheckiiはショウジョウバエの採取地で採取され、成分を分析しました。分析すると
T. terscheckiiの組織には、≒0.33mg/gのアルカロイドが含まれていました。これは、T. terscheckiiには0.25〜1.2%のアルカロイドが含まれている可能性を示した過去の研究内容と一致します。

アルカロイドの影響
T. terscheckiiの成分をアルカロイドと非アルカロイドに分離し、サボテンに含まれる濃度に調製し、D. buzzatiiに与えました。T. terscheckii由来成分を与えていないコントロールと比較すると、T. terscheckiiのアルカロイドを与えたショウジョウバエの生存率は低くなりました。また、T. terscheckiiの非アルカロイド成分を与えたショウジョウバエは、コントロールより生存率が高くなりました。また、幼虫の生存率には違いが見られず、生存率の差は蛹になって以降に生じているようです。
ショウジョウバエの羽を分析したところ、アルカロイドを与えたハエの多くは羽の展開に失敗したか、異常な羽脈パターンを示しました。また、アルカロイドを与えたハエは羽が小型化していました。


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Trichocereus terscheckiiの花と果実

最後に
ウチワサボテンの害虫であるDrosophila buzzatiiに対するTrichocereus terscheckiiの影響は、幼虫の成長遅延と生存率の低下でした。蛹化後に生存率が下がることから、羽化に失敗していることが考えられます。羽の小型化や異常からも、T. terscheckiiはD. buzzatiiの適した餌ではないのでしょう。ただし、ショウジョウバエの生存率が下がると言っても、それは蛹化後なのですからハエの幼虫が育ちきった後の話です。ハエは周囲のウチワサボテンからやって来ますから、生存率が低下しても食害が減少するようには思えません。ハエがT. terscheckiiを好まず産卵数が少ないなどの現象があるかなど、T. terscheckiiに有利な適応であると言えるのかを確認する必要があるかも知れません。

さて、これは蛇足なのですが、最後に少しだけ
T. terscheckiiについての話をします。他の柱サボテンと同様に、はじめに記載された時はCereusでした。1837年のことです。次いで、1920年にBritton & RoseによりTrichocereusとされました。おそらく一番使用されてきた名前でしょう。その後、TrichocereusやLobiviaをEchinopsisに統合すると言う動きがあり、T. terscheckiiも1974年にはEchinopsisとされました。しかし、近年の遺伝子解析技術により、巨大化したEchinopsis属は外見的な特徴が似ているだけで、近縁ではないものも含んだ雑多なグループであることが明らかとなったのです。肥大化したEchinopsisは徹底的に分解され、わずか20種類の小属におさまりました。T. terscheckiiも2012年にLeucosteleに分類されました。


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サボテンも生物である以上は繁殖する必要があり、そのために花を咲かせます。しかし、一口にサボテンと言ってもその繁殖戦略は様々で、花粉媒介者も昆虫だけではなくハチドリやコウモリにより受粉するサボテンもあります。当ブログでは度々サボテンの受粉様式=受粉生物学をご紹介してきました。参照とするのは、Bruno Henrique dos Santos Ferreiraらの2020年の論文、『Flowering and pollination ecology of Cleistocactus baumannii (Cactaceae) in the Brazilian Chaco: pollinator dependence and floral larceny』です。本日の主役はブラジルとその周囲に分布するヒモ状のサボテン、Cleistocactus baumanniiです。

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Cleistocactus baumannii(右)
筒状の花に注目。
『The Cactaceae II』(1920年)より。


C. baumanniiは鳥媒?
サボテンはブラジルのCaatingaやChaco植生の重要な要素の1つです。サボテン科の中でも、南米のサボテンでは様々な系統で鳥媒が想定されています。Cleistocactusは鳥による受粉に極端に特化した例として挙げられますが、それは花の特徴から推測されたものでした。Cleistocactusの受粉の評価は2016年(Gorostiague & Ortega-Baes, 2016)に行われ、C. baumanniiはハチドリによってのみ受粉し、C. smaradigoflorusはハチドリとミツバチにより受粉する可能性が示されました。
C. baumanniiはアルゼンチンやブラジルでは、アオムネヒメエメラルドハチドリ(Chlorostilbon lucidus)だけが花粉媒介者であると考えられています。しかし、花を訪問する昆虫による盗蜜の影響を調査する必要があります。


盗蜜
盗蜜者(nectar robbers)は、受粉せずに花の資源(花蜜や花粉)を集める花への訪問者ですが、花を噛んだりして傷付けるなどイリーガルな方法を用います。この花の損傷は、本来の花粉媒介者の行動や、花粉の飛散距離に影響を及ぼし、結実や種子数、種子の発芽率を低下させる可能性があります。しかし、盗蜜により蜜が減少するため、本来の花粉媒介者が訪れなければならない花の数が増えるため、他家受粉が促進される可能性もあります。
花への訪問者は次のように分類されます。
①潜在的な花粉媒介者(potential pollinators)
②非花粉媒介者(non-pollinators)
③泥棒(thieves)
④強盗(robbers)
泥棒は花粉や柱頭に触れることなく、花に損傷を与えない訪問者を指します。強盗は花に損傷を与える訪問者でこれを一次強盗、一次強盗のつけた傷口を利用する訪問者を二次強盗としました。


C. baumanniiの開花
C. baumanniiは円柱柱状のサボテンで、約1.5mの枝分かれした枝を持ちますが、他の植物に支えられている場合はより高くなることもあります。明るいオレンジがかった赤い花を沢山咲かせます。研究地域ではC. baumanniiは雨期に激しく開花します。花は両性花で、昼行性、匂いはありません。花は自家不稔で、自家不和合性です。花筒の長さは平均48.19mm、直径の平均は9.25mmでした。花は1年を通じて開花し続けます。
C. baumanniiの花の寿命は約48時間です。午前6時には花冠と葯は既に開いているものの、柱頭はまだ受容性はありません。つまり、開花開始時には花は機能的に雄蕊的です。午前8時から柱頭は一部が受容状態となります。午前10時頃には葯に花粉はほとんどなくなり、翌日まで雌性期です。翌日の午後には柱頭は萎れはじめ、翌日には完全に閉じます。
C. baumanniiの花は葯と柱頭が同じ高さで並び、雌雄離熟(herkogamy)ではありません。柱頭が受容前に花粉が放出されることから部分的雄性先熟で、自家受粉を減らし柱頭が詰まるのを防ぐと考えられます。

花への訪問者
ブラジルのChacoにおいて、C. baumanniiの花には5種のハチ、2種のアリ、1種のチョウ、1種のハチドリ(C. lucidus)が訪れました。この内、ハチドリと2種のハチは頻繁に訪花し、ほとんどの月で見られました。
観察すると、ハチドリは花の前でホバリングし、クチバシを花筒に入れて、クチバシ上部と頭が葯と柱頭に接触させて採蜜していました。採蜜は2秒間続き、1つの植物につき1つの花だけを採蜜しました。
3種のハチは花粉を集めるために葯に着地し、葯と柱頭に接触しましたが、基本的に花粉泥棒でした。さらに、Xylocopa splendulaというハチは、すべての訪花で花筒に口器を突き刺して盗蜜しました。このハチは同じ植物の別の花を訪れるため、主要な蜜泥棒です。X. splendulaの残した穴には、他の種類のハチやアリが訪れ、二次的な蜜泥棒となっていました。また、このような盗蜜を受けた花は、柱頭に付着した花粉が少ないことが分かりました。さらに、X. splendulaは自家受粉と隣花受粉(geitonogamy)を促進し柱頭を詰まらせ、盗蜜により有効な花粉媒介者であるハチドリの訪問を減らしている可能性があります。


最後に
以上が論文の簡単な要約です。
観察によりC. baumanniiの花の花粉媒介者はハチドリであることが確認されました。さらに、ハチは有効な花粉媒介者ではなく、それどころか花粉泥棒であり蜜泥棒でもあると判明しました。自家受粉や同じ植物個体の別の花からの受粉を受ける隣花受粉も、ハチにより引き起こされ、蜜の減少によりハチドリの訪花も減ってしまいいいことがありません。論文中で柱頭が詰まると言っているのは、柱頭に沢山の自家受粉、あるいは隣花受粉してしまうと、花粉から花粉管が花柱に伸びて行きますが自家受粉はしないので受粉はせず、後に他家受粉の花粉がついても花粉管を伸ばす隙間がないということでしょう。
まとめると、
本来ならば植物の受粉が期待さるハチが、受粉を阻害する要因になっている可能性があるのです。植物と昆虫との関係も非常に複雑です。今後もサボテンや多肉植物の受粉生物学を見つけ次第取り上げていくつもりです。


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去年の8月にサボテンの新種について調べた記事をあげました。論文が出たばかりで、まだ新種として認定されていないものもありました。ということで、去年の記事を振り返ります。現在ではどうなっていますでしょうか。また、あれからの1年間で新たに発表された新種のサボテンはあるのでしょうか。以下、去年の記事のコピーです。変わった部分は【追記】としています。いくつかの新種には画像リンクを貼りました。

1753年にCarl von LinneがサボテンをCactus属と命名した時には、すでにヨーロッパでもサボテンが栽培されていました。それから、沢山のサボテンが命名されてきましたが、未だに新種のサボテンが見つかっています。最近見つかったサボテンはなんだろうかと思って、少し調べてみました。と言っても、すべての新種を調べた訳ではなく、検索してすぐに出てきたものだけです。しかし、それでも2010年以降に限っても、それなりの種類は見つかりました。主に論文のAbstractだけをサラッと読んだだけですから、あまり詳しい内容は分かりません。ですから、簡単に見ていきましょう。

2011年
【追記】メキシコのTamaulipas州からマミラリアの新種、Mammillaria cielensisが記載されました。しかし、現在はM. zubleraeの異名となっています、

2012年
★アルゼンチンのブエノスアイレス州からウチワサボテンの新種、Opuntia ventanensisが記載されました。しかし、現在ではOpuntia fragilisの異名とされています。

2013年
★ペルー南部からボルジカクタスの新種、Borzicactus hoxeyiが記載されました。しかし、2014年にLoxanthocereus属になり、Loxanthocereus hoxeyiとなりました。

2014年
★ペルー北部からエスポストアの新種、Espostoa cremnophilaが記載されました。
★メキシコのオアハカ州からウェベロケレウスの新種、
Weberocereus alliodorusが記載されました。【追記】2018年にSelenicereus alliodorusとする意見もありましたが、認められておりません。
★メキシコのタマウリパス州からマミラリアの新種、
Mammillaria huntianaが記載されました。しかし、現在ではM. roseoalbaの異名とされています。
【追記】メキシコのZacatecasからオプンチアの新種、Opuntia gallegianaが記載されました。
【追記】米国のアリゾナ州からオプンチアの新種、Opuntia diploursinaが記載されました。
【追記】米国のカリフォルニア州からキリンドロプンティアの新種、Cylindropuntia chuckwallensisが記載されました。
【追記】ブラジルのリオデジャネイロ州からリプサリスの新種、Rhipsalis flagelliformisが記載されました。


2015年
★アルゼンチンのコルドバ州からギムノカリキウムの新種、Gymnocalycium campestreが記載されました。
https://identify.plantnet.org/k-world-flora/species/Gymnocalycium%20campestre%20%C5%98epka/data
★メキシコ中央部でツルビニカルプスの新種、
Turbinicarpus heliaeが記載されました。 しかし、2021年にKadenicarpus属になり、Kadenicarpus heliaeとされています。
【追記】メキシコ中部からオプンチアの新種、Opuntia delafuentinaが記載されました。
【追記】メキシコのバハ・カリフォルニア州で、7種類のウチワサボテンの新種が記載されました。それは、Opuntia clarkiorumCylinderopuntia libertadensis
Cylinderopuntia waltoniorumCylinderopuntia cedrosensisCylinderopuntia alcahes var. gigantensisCylinderopuntia alcahes var. mcgilliiCylinderopuntia ganderi var. catavinensisです。このうち、3つの変種は2019年に新種を記載した著者自身により亜種に変更されています。

2017年
★エルサルバドルでディソカクタスの新種、Disocactus salvadorensisが記載されました。
★メキシコのCoahuila州からウチワサボテンの新種、
Corynopuntia deinacanthaCorynopuntia halophilaが記載されました。しかし、2018年に2種類ともGrusonia属になり、Grusonia deinacanthaGrusonia halophilaとされています。実は、Corynopuntia属は消滅し、すべてGrusonia属となっています。
【追記】ドミニカ共和国南西部のPedernales州からレプトケレウスの新種、Leptocereus demissusが記載されました。
【追記】ハイチからケレウスの新種、Cereus haitiensisが説明されました。しかし、この名前は非合法名(nom. illeg.)とされ、認められませんでした。これは、1926年にすでにC. haitiensisが命名されていたため、名前が重複してしまうことからと考えられます。ちなみに、現在ではSerrulatocereus serruliflorusの異名となっています。


2018年
★メソアメリカ地域からデアミアの新種、Deamia montalvoaeが記載されました。
★メキシコのオアハカ州からテロカクタスの新種、
Thelocactus tepelmemensisが記載されました。
https://www.thelocactus.cactus-mall.com/Species_Files/tepelmemensis.html
【追記】メキシコ原産のStenocereus griseus複合体から、Stenocereus huastecorumが分離されました。しかし、未だに未記載種となっています。
【追記】キューバ西部のPinar del Rio州のカルスト石灰岩の崖からレプトケレウスの新種、Leptocereus assurgens var. albellusLeptocereus chrysotyriusが記載されました。L. 
assurgens var. albellusは、2020年にL. assurgens subsp. albellusとなっています。また、同じく2020年にL. albellusとする意見もありました。同じく2020年にL. chrysotyriusはL. assurgens subsp. chrysotyriusとされました。

2019年
★メキシコ南部からケファロケレウスの新種、Cephalocereus parvispinusが記載されました。
https://inaturalist.ca/taxa/1133501-Cephalocereus-parvispinus
★メキシコのヌエボレオン州からツルビニカルプスの新種、
Turbinicarpus boedekerianusが記載されました。
https://uk.inaturalist.org/taxa/858375-Turbinicarpus-boedekerianus

2020年
★ペルーからリマンベンソニアの新種、Lymanbensonia choquequiraensisが記載されました。
★メキシコのハリスコ州からアカントケレウスの新種、
Acanthocereus paradoxusが記載されました。
★メキシコのシナロアからコケミエアの新種、
Cochemiea thomasiiが記載されました。【追記】2021年にMammillaria thomasiiとする意見もありましたが、認められておりません。
★メキシコからマミラリアの新種、
Mammillaria breviplumosaが記載されました。しかし、現在ではM. sanchez-mejoradae subsp. breviplumosaの異名とされています。
★分類が曖昧だったEchinocereus pulchellus複合体が整理され、
Echinocereus acanthosetusEchinocereus sharpiiが新種として分離されました。
【追記】ドミニカ共和国のアンティル諸島原産のLeptocereus weingartianus複合体から、新種のLeptocereus velozianusが分離されました。また、2021年にNeoabbottia velozianaとする意見もありましたが認められておりません。


2021年
★メキシコのハリスコ州南部からアカントケレウスの新種、Acanthocereus atropurpureusが記載されました。
★メキシコのバハ・カリフォルニア半島からウチワサボテンの新種、Opuntia sierralagunensisOpuntia caboensisが記載されました。
★ドミニカ共和国やハイチに自生するPilosocereusはP. polygonusとされてきましたが、新種のPilosocereus brevispinusPilosocereus excelsusPilosocereus samanensisに分解されました。

2022年
★ニカラグアからデアミアの新種、Deamia funisが記載されました。
★メキシコのサン・ルイス・ポトシ州からマミラリアの新種、Mammillaria morentinianaが説明されました。しかし、キュー王立植物園のデータベースにはまだ記載がありません。新種であるか否か、正式に審査されるのはこれからのようです。【追記】現在、M. morentianaはThe International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants 2024.により新種として認定されました。
https://www.inaturalist.org/taxa/1433006-Mammillaria-morentiniana
★分類が曖昧だったMammillaria fittkaui複合体を分析し、ハリスコ州原産のMammillaria arreolaeを新種として説明しました。しかし、こちらもまだキュー王立植物園に記載はありません。【追記】現在、M. arreolataはThe International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants 2024.により新種として認定されました。
https://uk.inaturalist.org/taxa/1427658-Mammillaria-arreolae/browse_photos
【追記】メキシコのBajioからステノカクタスの自然交雑種であるStenocactus × irregularisが記載されました。

2023年
★ペルーからウチワサボテンの新種、Cumulopuntia mollispinaが説明されました。【追記】現在、C. mollispimaはThe International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants 2024.により新種として認定されました。
★ブラジルからパロディアの新種、Parodia flavaが説明されました。【追記】まだ未記載種のようです。
★ブラジルのリオグランデ・ド・スル州西部からパロディアの新種、Parodia hofackerianaが説明されました。【追記】現在、P. hofackerianaはThe International Plant Names Index and World Checklist of Vascular Plants 2024.により新種として認定されました。また、2023年にNotocactus hofackerianusとする意見もありましたが認められておりません。ちなみに、NotocactusはParodiaに吸収され、属としては消滅しました。
【追記】ホンジュラスのCelaque山国立公園からアカントセレウスの新種、Acanthocereus lempirensisが記載されました。
https://uk.inaturalist.org/taxa/1491587-Acanthocereus-lempirensis
【追記】ブラジル東部の半乾燥地からタキンガの新種、Tacinga
 paiaiaが説明されました。まだ、未記載種のようです。
【追記】メキシコのGuanajuatoからマミラリアの新種、Mammillaria monochrysacanthaが記載されました。
https://www.inaturalist.org/taxa/1500362-Mammillaria-monochrysacantha
【追記】ケレウス属の遺伝子を解析し、ブラジルのミナスジェライス州とバイーア州原産のCereus ingensと、ブラジル北部原産のCereus gerardiが分離されました。しかし、まだ未記載種のようです。

2024年
2024年に公表された新種は、まだ未記載種となっています。これから、審査されることになります。
【追記】ブラジル北東部のCeara州からタキンガの新種、Tacinga mirimが説明されました。いままで、より大型のT. palmadoraと混同されてきました。
【追記】コロラド州西部からスクレロカクタスの新種、Sclerocactus dawsoniaeが説明されました。S. glaucusより小型でトゲが少なく、遺伝的にも異なります。
https://guatemala.inaturalist.org/taxa/1551384-Sclerocactus-dawsoniae
【追記】メキシコのBajio地域からマミラリアの新種、Mammillaria ariasiiが説明されました。M. hahnianaに似ています。
https://www.inaturalist.org/taxa/1543654-Mammillaria-ariasii/browse_photos
【追記】メキシコのSan Luis Potosi州からオプンチアの新種、Opuntia fortanelliが説明されました。
【追記】ユーベルマニア属の分子系統解析により、Ubelmannia nudaが分離されました。ブラジルのGerais州の原産で、遺伝的にはU. pectiniferaに近縁です。半地下生など珍しい特徴を持ちます。
https://www.cactuspro.com/forum/read.php?1,921125

最後に
以上が調べた限りの最近の新種のサボテンです。検索が不十分だったのでいくつか追加しました。また、2024年にも、8月までで既に5種類もの新種のサボテンが発表されています。しかし、まだ確認段階で正式に認められるのは来年以後になるでしょう。園芸的に見るならば、ユーベルマニアの新種はかなりインパクトが大きく感じます。今後、園芸市場に出回るでしょうか?
さて、今年に発表された種は、これから検証されて、将来的に正式にデータベースに記載されていく可能性があります。せっかく調べたのですから、これからは毎年チェックしていきたいですね。



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本日はちょっと変わったサボテンの論文を見つけましたので、ご紹介します。それは、N. B. Englishらの2021年の論文、『Age-growth relationships, temperature sensitivity and palaeclimate-archive potential of the threatened Altiplano cactus Echinopsis atacamensis』です。ボリビアに自生する絶滅危惧種である柱サボテン、Echinopsis atacamensis var. pasacanaについて様々な視点から研究を行っています。

pasacanaについて
南部Altiplanoでは、長寿の柱サボテンであるpasacana=Echinopsis atacamensis var. pasacanaが自生します。南Altiplanoのpasacanaは海抜2000〜4000mの、寒く(年間平均気温-0.6〜16.4℃)、乾燥した(年間降水量200mm)生息地に適応しており、地元の木材としての価値もあり絶滅危惧あるいは準絶滅危惧種と考えられています。
サボテンの生長に関して、従来は写真撮影や測定を繰り返し数年〜数十年にわたり行われてきました。しかし、pasacanaの自生地は遠隔地にあるため調査は困難で、その生態などについてほとんど知られておりません。

240810002243009~2
Trichocereus pasacana
「The Cactaceae」(1922)より。


棘に刻まれた過去
著者らが開発したサボテンのトゲの放射性炭素同位体の測定手法により、1950年代以降のサボテンの樹齢を正確に判定することが出来ます。また、トゲの中の酸素同位体比はサボテンの茎の水分量と関係します。サボテンの茎の水分の貯蔵は、温度や降水量の変化に反応します。サボテンのトゲは降雨と旱魃による茎の膨張と収縮を記録しています。従って、サボテンのトゲは生長中の気候変動を反映しているのです。

pasacanaの樹齢
ボリビアのウユニ塩湖にあるPescado島に自生する2個体のpasacanaのトゲを解析しました。1個体は約70年にわたり年平均5.8cm生長し、もう1個体は約50年にわたり年平均8.3cm生長しました。Pescado島でもっとも背が高いpasacanaは高さ8.3mでしたが、計算上ではその樹齢は308〜430年と推定されます。また、生長率から生存曲線を描くと、1993年、1965年、1943年、1904年、1862年付近で生存率はピークとなっていました。

Altiplanoの過去
pasacanaのトゲの酸素同位体と放射性炭素同位体の比を測定すると、1953年〜2011年の間の変動は41.6〜62.5%と極端でした。しかし、降水量はその間に約6%の変動しかありませんでした。北米の柱サボテンでは、酸素同位体比は降水量と相関します。しかし、Altiplanoでは南米夏季モンスーン(SAMS)により、水の供給は安定しています。サボテンはCAM植物ですが、水分の蒸発を抑えるために夜間に気孔を開きます。そのため、蒸散は主に夜間に起こり、蒸散速度は夜間の気温と蒸気圧差により制御されます。標高約4000mの夜間の気温は冷涼ですから、気温のわずかな上昇が蒸気圧差に影響を与えます。そのため、夜間気温の高い年には、茎の水分が蒸発しトゲの酸素同位体比が上昇します。

最古のサボテン記録
この研究では462本のpasacanaの高さを測定しましたが、pasacanaが154cm、つまり約50〜60歳に達すると急激に死亡率が低下することが分かりました。降水量の増加や低気温が長く続いたり、深刻な旱魃がなかったりした場合に、新しい実生の加入が起きると考えられます。人口統計学的には、pasacanaは成熟するのに、つまりは腕が追加されるのに約100〜150年かかり、北米の柱サボテンより生長は遅いことが分かりました。また、約400歳に達する非常に長寿なサボテンで、これまでに推定された最古の記録となります。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
樹木の放射性炭素同位体による年代測定は盛んに行われていますが、年輪を作らないサボテンの放射性炭素同位体による年代測定は初めて聞きました。トゲは確かに作られた時の環境に影響を受けていますから、言われてみれば納得です。
しかし、推定年齢はなんと400歳に達する可能性があると言うことに驚きます。巨大な柱サボテンであるSaguaro(弁慶柱)などは、あまり背が高くなると倒れるイメージでしたから、樹木のような長寿は予想だにしていませんでした。
さて、論文では古代の海洋気候などと関連付けた壮大な考察が続きますが、そこら辺は私の専門外と言うか、あまり興味がないので割愛させていただきました。
最後になりますが、pasacanaの学名の変遷を簡単におさらいしましょう。Echinopsis atacamensis var. pasacanaは、2021年にLeucostele atacamensis subsp. pasacanaとなっています。このpasacanaの歴史は、1885年のPilosocereus pasacanusから始まり、1894年のCephalocereus pasacanus、1920年のTrichocereus pasacana、1959年のHelianthocereus pasacanus、1974年のEchinopsis pasacana、1980年のTrichocereus atacamensis var. pasacanus、1996年のEchinopsis atacamensis subsp. pasacana、2012年のTrichocereus atacamensis subsp. pasacanusなど沢山の異名があります。複数種だと思われていたのではなく、どの分類群に該当するのかはっきりしなかったようですね。



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サボテンが水を蓄えて多肉質な面白い姿をしているのは、当然ながら乾燥地の厳しい環境に適応した結果です。しかし、環境の厳しさとサボテンに種ごとの特徴との関係性は、あまり詳しくは分かっていないようです。そこで、6種類のギムノカリキウムについて、それぞれの自生地の降水量と形態的な特徴との関係を調査した論文をご紹介しましょう。それは、Solana B. Perottiらの2022年の論文、『Biomass Partitioning and Morphoanatomical Traits of Six Gymnocalycium (Cactaceae) Species Occurring along a Preciptatiom Gradient』です。

ギムノカリキウム属と降水量勾配
ギムノカリキウム属は南アメリカ南部原産のサボテンで、約50種が含まれます。アルゼンチン北西部の山岳地帯にもっとも豊富に生息しています。この地域は気候が非常に不均一で、湿潤した環境から非常に乾燥した環境まで様々な生態系があります。本研究の目的は、降水量勾配に沿って分布する6種のサボテンが、バイオマス分配(茎や根、トゲなどのどこに資源をどの程度分配するか)と、形態・組織学的な特徴の点でどのように異なるのかを分析することです。

生息地域の環境
調査はアルゼンチンのCatamarca州において実施されました。乾燥地帯としてMonte ecoregionから、G. pugionacanthumとG. marianaeを採取しました。半乾燥地帯としてSan Fernando del Valle de Catamarca市近郊から、G. stellatumとG. hybopleurumを採取しました。亜湿潤地帯としてEl Rodeoから、G. oenanthemumとG. baldianumを採取しました。
この乾燥地帯は年間平均降水量は380mmで平均気温は16.3℃、半乾燥地帯の年間平均降水量は460mmで平均気温は19.7℃、亜湿潤地域の
年間平均降水量は500mmで平均気温は17.4℃でした。
属下分類は、乾燥地帯のG. 
pugionacanthumはScabrosemineum亜属、G. marianaeはGymnocalycium亜属で、半乾燥地帯のG. stellatumはTrichomosemiuneum亜属、G. hybopleurumはScabrosemineum亜属で、亜湿潤地帯のG. oenanthemumはScabrosemineum亜属、G. baldianumはGymnocalycium亜属です。

形態学的な特徴
もっとも乾燥した地域に分布するG. pugionacanthumは、非常に粗くて長く太いトゲを持ち、地下茎がもっとも長いと言う特徴がありました。さらに、乾燥地に分布するG. marianaeは高い密度のアレオーレとトゲを持っていました。
半乾燥地に分布する
G. hybopleurumは、全長のほぼ半分に達する長さの紡錘根(napiform root)を持ち、中程度の密度のアレオーレ、多数の大きく幅広いトゲを持つものの、G. pugionacanthumやG. oenanthemumと比較すると少ないものでした。G. stellatumは稜(rib)がもっとも多く、地下茎は地上部の2倍に達し、トゲの数は少なく高密度のアレオーレを有していました。
G. oenanthemumは全長のほぼ半分に達する長さの主根を持ち、長くて幅広いトゲは数が多いものの、アレオーレの密度は低いものでした。G. baldianumも長い主根があり、地上部の方が短く、もっとも高密度のアレオーレを持っています。

環境とバイオマスの分配
以上のようにバイオマスをどこに振り分けるかは異なります。G. baldianumはトゲに対する割り当てが少なく、逆にG. pugionacanthumはより多く割り当てました。特に乾燥した環境に自生するG. pugionacanthumは、主根に多くを割り当てています。しかし、湿潤な環境に自生するG. baldianumは、乾燥した環境に自生するG. marinaeよりも、主根へより多くバイオマスを割り当てていました。

組織学的な特徴
表皮は種の間で、もっとも変化に富んだ組織でした。G. pugionacanthum、G. hybopleurum、G. oenanthemum、G. stellatumは、陥没した気孔と楕円形の肥厚またはクチクラの外縁を示しました。G. pugionacanthumやG. stellatumは大きなイボ状の突起、または乳頭状突起を示しますが、G. hybopleurumやG. oenanthemumはより小さいものでした。対照的に、G. marinaeやG. baldianumでは、気孔は表皮細胞と同レベルであり非常に豊富で、薄いクチクラと表皮を持っています。G. pugionacanthumは最高値の厚いクチクラと表皮、皮下組織を持ち気孔は陥没し、その特徴は乾燥した環境と一致します。

結論
著者らは環境と形態学特徴、あるいは組織学的特徴が関係していることを想定しました。しかし、実際には特徴は系統関係と関連があるように見えます。つまり、同じ亜属内の種は類似しているのです。
皮下組織の層数と細胞壁の厚さは、乾燥に対する形態と考えられています。そのため、G. pugionacanthumとG. stellatumがもっとも乾燥環境に適していると考えられます。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
著者らの想定した降水量と形態的特徴は、必ずしも相関はありませんでした。むしろ、系統関係が意味を持っているようです。これはなかなか意味深で、各種が各々で乾燥に耐えるべく進化したと言うより、各亜属が別々に乾燥に適応していった可能性を示唆するからです。
また、著者らは乾燥地帯に自生するG. pugionacanthumと、半乾燥地帯に自生するG. stellatumがもっとも乾燥に強い可能性を示しました。これはどう捉えたら良いのでしょうか。例えばですが、各種の自生地は、乾燥に耐えられる極限であるとは言えないとするのはどうでしょう。乾燥に対する耐性は、ある程度の幅があるはずです。ある一定以上の乾燥耐性があれば、割りと場所を選ばない可能性もあります。つまりは、単純に種分化する道筋で様々な環境と出会っただけで、様々な環境に出会ったからその環境に適応したわけではないと考えてはいかがでしょうか? G. pugionacanthumはその環境でもっとも上手くやれる能力があると言うだけのことです。まあ、これはただの思いつきに過ぎません。まだ、分からないことが沢山ありますから、様々な可能性がありそうです。今後の研究に期待しましょう。


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サボテンと言えば、何と言ってもそのトゲが特徴でしょう。トゲのない烏羽玉(Lophophora williamsii)や兜丸(Astrophytum asterias)などもありますが、もっとも原始的なPereskiaやLeuenbergeriaでもトゲがあるのですから、やはりサボテンはそのトゲなくして語れません。このさて、このサボテンのトゲは、やはり研究者も気になるようで、様々な角度から研究が行われています。サボテンのトゲの役割は身を守るためであろうことは直感的に分かりますが、どうもそれだけではないようです。と言うことで、本日はNayla Lujan Aliscioniらの2021年の論文、『Spine function in Cactaceae, a review』をご紹介しましょう。タイトルの通り、過去に行われたサボテンのトゲの研究を調べレビューしています。

棘の種類
サボテンは約1850種類と種数が豊富で、トゲの形態も多様性があります。棘のサイズもばらつきがあり、数mmから20cmまであります。棘は集合しているとより効果的に防御できます。棘のほとんどは針状で、断面は円形で、片側が平らになっていたり鉤状となる場合もあります。また、種により複数種の棘を持つものもあります。例えば、Oreocereus属には通常の防御棘と毛状の棘があります。刺座(アレオーレ)から生える棘の配置はパターンがあり、1つは櫛状の配置で棘は2列に並びすべて同じ大きさです。もう1つは、中心の棘、より長い棘、放射状の棘への分化です。

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Oreocereus celsianus
Pilocereus brunnowiiとして記載。
『The illustrated dictionary of gardening』(1895年)より


棘の機能
サボテンの棘の主たる機能、おそらくはより古いものは植食者に対する防御です。サボテン科は約3000万年前の地球規模の乾燥化に関連して誕生したと考えられています。乾燥した環境では、多肉質な組織は水源となります。そのような状況で、サボテンは物理的な防御として棘を発達させた可能性があります。
現在のサボテンの棘の機能の多様性は、サボテン科の進化的な放散により機能が増加したことをあらわれています。1986年にGibson & Nobelは、防御から体温調節、紫外線からの保護機能を提案しました。


文献探索
サボテンの棘の機能について書かれた論文を調査したところ、24件の研究が見つかり、39種のサボテンが分析されていました。これらの論文において、棘の機能は抗草食防御が5件、抗寄生植物防御が2件、栄養分散が3件、体温調節が11件、集水作用が4件でした。研究のうち9件は野外で実施され、8件は実験室で、7件は野外と実験室の両方で実施されました。
調査されたサボテンはそのほとんどが北米と中米(主に米国とメキシコ)で31種類にのぼり、南米では8種類に過ぎませんでした。南米には非常に過酷な、乾燥した砂漠から熱帯雨林、海抜0mから4000mを超える高さまで生息するサボテンが豊富に存在します。サボテン科はその棘が重要であるにも関わらず、棘の機能を理解するためのモデルとされたのはごく一部に過ぎません。


抗草食防御
草食動物に対する防御は、サボテン科の進化における棘の最初の機能である可能性が高いでしょう。しかし、その機能を分析した研究は少ししかありませんでした。2009年にNassar & Lev-Yadunは、ウチワサボテンの棘密度は、草食動物が食べやすい上部では高いことを発見しました。2018年にCrofts & Andersonは、サボテンの棘が草食獣の皮膚を突き刺すため、草食獣は棘の少ない新しい枝を好むことを観察しました。また、サボテンに限らず棘のある植物は、大型草食動物による採食に長期間さらされると、棘が増えることが知られています。

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ウチワサボテン(筑波実験植物園にて)

温度調節
1970年にGibbs & Pattenは、トゲが極端な高温から茎を保護し、日照のエネルギーの多くを反射および吸収していることを発見しました。2017年にDreznerは、温度が上がるとトゲの長さが長くなることを示しました。2002年のNobel & Bobichは、トゲの密度は高度が高いほど増加し、低温から茎を保護していることが分かりました。

霧収集システム
サボテンには効率的な霧収集システムを発達させたものがあります。水分はトゲの先端で凝集し、基部に移動して茎に入り貯蔵されます。いくつかの研究では、水分がトゲを伝い茎に取り込まれることが明らかとなっています。ただし、疎水性のトゲを持つ持つ種もあり、その場合は水分がトゲの表面で凝集することはありません。

抗寄生植物防御
チリにはTrichocereus chiloensisとEulychnia acidaに寄生するヤドリギである、Tristerix aphyllusが知られています。寄生植物の種子はサボテンを止まり木にする鳥の糞により散布されます。T. chiloensisは、鳥が止まり木として利用しにくくするために、大きなトゲを発達させました。現在、サボテンのヤドリギは他に知られておらず、抗寄生植物防御が確認されているのはこれだけです。

サボテンのヤドリギの画像(リンク)
https://chileanendemics.rbge.org.uk/taxa/tristerix-aphyllus-miers-ex-dc-barlow-wiens

栄養分散
ウチワサボテンの中には、トゲが動物の皮膚に引っかかり、動物の移動により分布を広げます。しかし、栄養分散の研究では、トゲを介した分散能力は示しましたが、分散そのものは評価されていません。

考えられる機能
実証されていない機能についても、いくつかの言及があります。2001年にAndersonは、トゲがカモフラージュとして機能し、草食動物から保護される可能性を提案しました。また、トゲは花粉媒介者に簡単に認識されるため、受粉の可能性が高まるかも知れません。

その他のトゲのトピック
資源割り当てと言う観点からトゲを分析した研究は、非常に少ないようです。トゲは光合成組織ではないため、コストがかかります。また、茎に陰を作ることから、光合成能力を低下させます。一部の種では、遮光作用として重要となるものもあります。

未解決なトゲのトピック
トゲがない、あるいはトゲが少ない種を分析した研究は見つかりませんでした。例えばLophophoraやAstrophytumはトゲが減少しています。Lophophoraはアルカロイドを蓄積しており、物理的防御と化学的防御のtrade-offの関係を示しています。

最後に
サボテンと言えば何と言ってもそのトゲが目立ちますが、意外にもその機能はまだ明らかとなっていない部分がまだまだあるようです。むしろ、良いトゲを出させるために心血を注いでいる趣味家の方が詳しい部分もありそうですね。それはそうと、今回の論文は末尾に「a review」とあります通り、過去の論文を探して概観したものです。私がまだ読んでいない面白そうな論文がいくつも取り上げられていましたから、機を見て記事にしたいと思います。


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サボテンの受粉システムは種により様々ですが、本日はアリオカルプス属に焦点を当てます。アリオカルプスの花は雌雄離熟、つまり柱頭と葯の位置が離れており、自家受粉しにくい構造になっています。では、アリオカルプスは自家不和合性なのでしょうか? と言うことで、本日はConcepcion Martinez-Peraltaらの2014年の論文、『Haw common is self-incompatibility across species of the herkogamous genus Ariocarpus?』をご紹介しましょう。

自殖を防ぐシステム
植物の有性生殖システムは花の様々な異系交配を促し、近交弱勢や適応度の低さなど自殖の悪影響を軽減すると考えられています。雌雄離熟(herkogamy)や雌雄異熟(dichogamy)は、性別を空間的・時間的に分離しますが、必ず自殖を防ぐことが出来るわけではありません。
自家不和合性(Self-incompatibility)は、自家花粉の遺伝的な認識と抑制が非常に効果的であり、もっとも効果的な自家受粉を防止するメカニズムです。少なくとも被子植物の約60%は、何らかのタイプの自家不和合性を備えています。もっとも一般的なタイプの自家不和合性は、配偶体自家不和合性(gametophytic self-
incompatibility)=GSIであり、認識は雌蕊と花粉管の相互作用によります。GSIでは花粉管の阻害が起きます。
近年、サボテンの生殖システムに関する研究は増加していますが、自家不和合性などの問題はほとんど注目されていません。自家不和合性が確認されているのは、Schlumbergera、Hatiora、Echinopsis、Hylocereus、およびSelenicereusの一部です。
自家不和合性から自家和合性に移行し自家受粉率が高まる現象は、被子植物の中でもよく見られます。これらの移行は、花粉媒介者や交配相手の不足により促進されます。

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Ariocarpus retusus
『The Cactaceae Vol. III』(1922年)より。


アリオカルプスの受粉試験
著者らは7種のアリオカルプスを、それぞれの自生地で受粉試験を行いました。成り行きに任せた自然受粉と、人工的に他家受粉あるいは自家受粉させた花を、48時間後に回収しました。同様に受粉から5〜6ヶ月後に果実を回収しました。
自然受粉あるいは人工的な他家受粉では子房に到達する花粉管が多く、自家受粉では柱頭の途中で花粉管は阻止されており、アリオカルプス属は自家不和合性であることが示されました。うち、6種類は子房にも花粉管が観察されたため、一部の遺伝子は自家和合性です。1種類は子房に自家受粉の花粉管が観察されませんでしたが、自家受粉でも果実は2%結実しました。A. kotschoubeyanusとA. agavoidesは子房に到達する自家受粉の花粉管の割合が高く、結実率も高いものでした。A. retususおよびA. trigonusは、子房に自家受粉の花粉管が到達する割合が低く、A. scaphirostrisは子房に自家受粉した花粉管はなく厳密な自家不和合性であることが分かりました。

自家不和合性から自家和合性へ
アリオカルプスでは、そのほとんどが自家不和合性であるものの、一部の遺伝子は自家受粉が可能であることが示されました。このパターンは疑似自家不和合性あるいは部分的自家不和合性として説明されます。これは、厳密な自家不和合性から自家和合性への移行を表している可能性もあります。自家和合性をもたらす突然変異は自然の集団でも比較的頻繁に起こるようです。進化論的観点からは、花粉や配偶者が制限されている環境では、部分的な自家和合性が発達する可能性があります。配偶者が少ない環境では種子が減少し、局所的な絶滅のリスクが高まるため、自家和合性が選択されるかも知れません。アリオカルプスの中でも、A. kotschoubeyanusは花粉制限されており、子房に到達する花粉管が多く、部分的自家不和合性が促進されている可能性があります。

最後に
アリオカルプスは基本的には自家不和合性であることが確認されました。自家受粉では花粉管が拒絶されるためですが、厳密な自家不和合性であるA. scaphirostris以外では稀に自家受粉により結実することもあるようです。さらに、A. kotschoubeyanusでは自家受粉による結実率が高く、自家不和合性から自家和合性への移行が起きている可能性があります。

さて、自家不和合性は植物では非常に一般的な性質です。なぜ、自家不和合性と言うシステムが選択されたのでしょうか。これは、「選択」と言う語感とは異なり植物が自身で選んだのではなく、自然選択により自家不和合性の方が有利だったのでより生き残ったと言うだけのことなのでしょう。他家受粉では、異なる遺伝子が混ざることにより遺伝子に多様性が生まれ、より環境や生存に適応的になります。それにより、様々な環境に適応するだけではなく、病原菌に対する耐性が異なる場合もよくあることです。しかし、厳しい環境に自生する植物では、水や栄養などの資源が不足するなど、他の植物では有利なシステムが不利になる、あるいはあまり意味がない場合もあります。本日ご紹介した論文では、A. 
kotschoubeyanusが受粉のシステムが変更される過程を観測しているのかも知れません。しかし、例えばOpuntia macrocentraは、自生地により自家不和合性の個体群と自家和合性の個体群が存在することが明らかとなっています。もしかしたら、アリオカルプスも個体群によっては、より進行した自家和合性への適応を持っていることも考えられます。まだサボテンの自家不和合性に関する研究は少ないようですが、これからの研究の進展を待ちたいと思います。


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植物の繁殖形式は種によって異なりますが、そのすべてが明らかとなっているわけではありません。例えば、園芸的に著名なサボテンですら、実際に調査されたのは極一部です。当ブログにおいても、サボテンの繁殖に関する論文はそれなりの数を取り上げて来ました。しかし、まだ取り上げていない論文が沢山あります。と言うことで、本日はチワワ砂漠に広く分布する紫色のウチワサボテン、Opuntia macrocentraについて見ていきましょう。参照するのは、L. Eder Ortiz-Martinezらの2022年の論文、『Variability in mating strategies in a widespread cactus in the Chihuahuan Desert』です。

繁殖戦略
サボテン科の中ではウチワサボテン属(Opuntia)が最も成功し広範囲に分布する属です。ウチワサボテンはクローン性と多様な有性生殖システムを持ち、高い繁殖能力と分散能力を兼ね備えています。しかし、ウチワサボテン属のうち、繁殖に関する研究がされているようはわずか15%に過ぎず、しかもそのほとんどは1つの個体群のみの結果に基づいています。
多くの植物で自殖あるいは異系交配率が、集団間で大きな変動を示す証拠が増えています。そのため、単一の集団の研究に基づいて繁殖システムを一般化することは問題があります。
花粉媒介者(pollinator)による受粉は、場合によっては不確実で非効率的となることもあります。花粉媒介者の訪問頻度の変化は、花粉媒介者が豊富な状況では異系交配による遺伝的変異が起き、花粉媒介者が貧弱な状況なら自家受粉による生殖の保証との間にtrade-offを引き起こし、植物の交配システムの変異を促進する可能性があります。
花粉の量的あるいは質的な制限は自家不和合性でより起きやすく、自家不和合性から自家和合性への進化などの生殖システムの変化につながる可能性があります。Ariocarpus kotschoubeyanus(黒牡丹)は、厳密な自家不和合性であるAriocarpus属の中で唯一の自家和合性種です。A. 
kotschoubeyanusの自家和合性の進化は、花粉の制限、個体群密度の高さ、花粉媒介者の少なさの相互作用により説明されます。

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Opuntia macrocentra(下)
花はapproach herkogamyではないことに注意。
『The fantastic clan. The cactus family.』(1932)より


紫色のウチワサボテン
紫色のウチワサボテン(purple prickly pear)と呼ばれるOpuntia macrocentraは、チワワ砂漠とソノラ砂漠に広く分布するサボテンです。研究にはチワワ砂漠内で708km離れた2つの個体群を観察しました。1つは米国ニューメキシコ州立大学チワワ砂漠放牧地研究センター(CR)内にあり、もう1つはメキシコのDurango州Mapimi生物圏保護区(MBR)内にあります。この2つの個体群は、個体数が均衡していることが明らかとなっています。
MBRの個体群は密度、種子生産、新規加入率(recruitment rate)が低くなっています。CR個体群は混合交配システムと自律的な自家受粉、花粉媒介者の多様性の低さ(2種の蜂)、花粉媒介者の訪問頻度の低さが特徴です。しかし、MBRのO. macrocentraの生殖システムは不明です。


花への訪問者
MBRのO. macrocentraは昼行性で、ほとんどの花は1日(9:00〜20:00)しか咲かず、12:00〜13:00の間に最も花が開きます。10%未満の花は19:00に開き、夜間は閉じて、翌14:00頃まで咲くものもありました。
O. macrocentraの中から32個体を選び、5日間にわたり開花中の花を訪れる花粉媒介者を調査しました。

22時間の観察中にO. macrocentraの花には、287回の訪問者がありました。訪れたのは、8種類のハチとチョウ、ハエでした。一般に訪問頻度が高いのは、12:00〜15:00の間でした。この内、Diadasia rinconisとLasioglossum sp.の2種類のミツバチは、O. macrocentraの花への訪問の約70%を占めており、花粉媒介者であると考えられました。D. 
rinconisは大量の花粉を付着させる行動が観察されており、主な花粉媒介者であると考えられます。D. rinconisはチワワ砂漠の少なくとも17種類のウチワサボテンの主な花粉媒介者で、このハチはウチワサボテンと共進化したと考えられています。

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Opuntia macrocentra
『Transaction of the Texas Academy opsis Science』(1929-1937)より


異なる交配システム
人工受粉の結果から、MBRのO. macrocentraは絶対的異系交配であり、自家受粉しない自家不和合性であることが示唆されました。自家和合性および自殖性のCRの個体群と異なる交配システムが存在することが明らかとなったのです。
MBRとCRの個体群では、花の特徴が一部異なります。さらに、MBRの花は1日以上開花するものもあります。これは、一部の自家不和合性のサボテンに見られる特徴で、不十分な受粉率によるリスクを最低限とし、交配の機会を増やします。
MBRの個体群には雌雄離熟(※1)が確認されました。これはCRの個体群には存在しません。MBRの個体群では、柱頭が花糸の2倍以上の長さがあり突き出しています。つまり、近接性雌性受粉(※2)です。


※1 ) 雌雄離熟(herkogamy)とは、柱頭と葯の位置が離れていること。
※2 ) 近接性雌性受粉(approach herkogamy)とは、柱頭が葯の高さより上にあること。花を訪問した昆虫は花粉に触れる前に柱頭に接触する。


最後に
以上が論文の簡単な要約です。
同種のウチワサボテンでも、異なる個体群では繁殖システムが異なることが示されました。確かに、過去に読んだ論文では、1つの地域に生える個体群のみを調査したものばかりでした。しかし、この論文を前提とすると、1つの地域の個体群で、その種を代表してよいものか怪しくなってきました。繁殖システムの調査は、純粋に生物学的な資料の積み重ねだけではなく、植物の保護を考える上でも重要です。自生地で減少しているサボテンや多肉植物についての、このような地道な研究が増えることを願っております。


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以前※欄でサボテンの根の様々な働きについて、ご指摘いただいたことがあります。実に有り難いことです。しかし、なるほどこれは面白いと思い少し論文を漁ってみました。すると、アリオカルプスの根の働きについて書かれた論文を見つけました。それは、Tadao Y. Garretらの2010年の論文、『Root Contraction Helps the "Living Rock" Cactus Ariocarpus fissuratus from Lethal High Temperatures when Growing in Rocky Soil』です。

砂漠の酷暑と植物
砂漠では直射日光が強く、土壌表面の温度は70℃を超えることもあります。サボテンなどのCAM植物は日中に気孔を閉じるため、蒸散による冷却も最小限です。Lithopsなどのように小型の多肉植物は、大部分が地下に埋まるものがあり、受ける温度は低下します。しかし、サボテンは土壌と同じ高さ高さでははるかに高温となるからです。

「生きた岩」
Ariocarpus fissuratusは「生きた岩」(Living Rock)と言うあだ名が示すように、地面と同じ高さに生えます。このような小さな植物は、特に隠蔽色の場合には草食動物に見つかりにくくなるかも知れません。また、地表より下に体の多くを配置すると、蒸散による水分の損失を減らすことが出来ます。また、植物が地表より下にあると、水分が地表より長く存在する可能性が高くなり、水分の吸収が改善されるかも知れません。

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Ariocarpus fissuratus
『The Cactaceae Vol. III』(1922)より。

収縮根
収縮根はアスパラガス科やリュウゼツラン科など、多くの多肉植物にあります。サボテンではLeuchtenbergia principisやLophophora williamsii、Neomammillaria macdougali、Pediocactusなどで報告されています。A. fissuratusはその生態から収縮根を持つことが推測されますが、明らかとはされていません。

A. fissuratusの場合
A. fissuratusを栽培すると、秋〜冬と夏に主に根の収縮により地中に引き込まれました。根の収縮は夏よりも秋〜冬に大きくなりました。晩冬に90日間水やりを減らした時に最も収縮しました。A. fissuratusの原産地の冬は1.2℃になりますが、実験に使用した温室の最低気温は約5℃でした。低温と乾燥の組み合わせは、収縮のきっかけとなります。

仮説
野外で育つA. fissuratusは、根の収縮により地表面と同じ高さになります。その理由を説明ですために、
つの仮説をたてました。すなわち、より低い位置にあることにより、①水分が良好、②気温がが良好、③隠蔽効果です。

①水分が良好
低い位置にあることにより、水分の損失を減らすことが出来るかを試験しました。しかし、地上に剥き出しであるか、地表面と水平であるかは、水分の損失に関係していませんでした。Lithosでは土壌に埋め込まれている場合の方が水分の損失は少なくなります。これは、Lithosでは根が湿った土壌にあり自由に蒸散していたのに対し、A. fissuratusは乾燥しておりおそらく気孔を閉じていたからからかも知れません。いずれにせよ、A. fissuratusの根の収縮は水分の損失とは無関係です。

②気温が良好
根の収縮により適した温度に出来るかを試験しました。まず低温ですが、冬に最大の根の収縮が起きたことから可能性があります。しかし、ほとんどの場合、植物自体の方が気温より低温であることが分かりました。A. fissuratusは茎に含まれる粘液が低温に耐えるために重要で、根の収縮は関係がないと考えられます。
高温に対する根の収縮の効果は、砂質の土壌で鉢栽培した場合には、根の収縮に利点はありませんでした。つまり、地表面と水平の場合の方が高い温度(60℃)を記録したのです。しかし、岩石質がある用土の場合、わずか(56.5℃)に温度が下がりました。砂質土壌に植えられたA. fissuratusは真夏の8日間の猛暑の後に全て枯死しましたが、岩石土壌の場合は全て生き残りました。野外のA. fissuratusは根の収縮と土壌の岩石の組み合わせにより、芽を致命的な高温に達するのを防ぐことができます。

③隠蔽効果
この仮説は検証していませんが、岩の多い土壌に埋め込まれる利点は明らかです。しかし、A. fissuratusは豊富な粘液を持ち、アルカロイドによる化学的防御がなされているため、根の収縮による隠蔽は防御手段として重要ではないかも知れません。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
以前、論文を読んでいた際、鉄甲丸(Euphorbia bupleurifolia)はその特徴的な茎は自生地では地下に埋もれて見えないと言うことを知りました。鉄甲丸は乾燥時には縮んで地中に引っ込むと言うことです。まあ、厳しい環境に耐えるための収斂進化なのでしょう。しかし、その期待される効果は同じではないかも知れません。
さて、論文では根の収縮は温度上昇を抑える働きがあることを明らかとしました。とは言え、対して変わっていないようにも思えます。著者らはA. fissuratusの細胞の半数が死亡する温度(半数致死温度)を実験で確かめており、低温ではマイナス10.2℃、高温では56.8℃でした。すると、岩石土壌ではわずか0.3℃ではありますが、半数致死温度に達していません。逆に砂質土壌では半数致死温度より3.2℃も高く、実際に枯死してしまいました。また、白っぽい明るい色合いの土壌では光を反射しますから、温度が下がります。自生地ではそのような効果もあるかも知れません。
多少の疑問もあります。論文では夏期に高温となる温室内で試験が行われました。しかし、実際の自生地では半数致死温度に達するような環境なのでしょうか? これは自生地で確かめないと分からないでしょう。重要なのは温度の低下だけではなく、根の収縮による引き込みにより、実際にA. fissuratusの生存にどの程度の影響を受けるのかです。もしかしたら、温度の低下は起きていても生存率の向上には寄与しないかも知れません。冬期により収縮することを鑑みれば、単純に水分がないから縮んだだけで、特に意味はない可能性もあります。何かが発見されると何かしらの意味を付加したくなりますが、必ずしも意味があるとは限りません。むしろ、A. fissuratusが縮む乾燥期に水分を求めている動物からの隠蔽効果が一番重要な気もします。


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岩場に生える植物は、乾燥や土壌の不足、それに伴う栄養素の欠乏など、大変厳しい環境に生きています。岩場は基本的に乾燥しますから、生える植物は多肉化するものも多く見られます。多肉植物の代表格であるサボテンも岩場に生えるものがあり、岩のわずかな割れ目に根を伸ばし、岩上に張り付くように生えます。このような生態が可能な理由は何なのでしょうか? 本日は、岩場に生えるMammillaria fraileanaに着目した、Blanca R. Lopez、Yoav Bashan、Macario Bacilioの2011年の論文、『Endophytic bacteria of Mammillaria fraileana, an endemic rock-colonizing cactus of the southern Sonora Desert』を見てみましょう。

先駆植物と内生細菌
Mammillaria fraileanaは、高さ10〜15cm、直径3cmになる細い円筒形のサボテンです。このサボテンはバハ・カリフォルニア半島南部の東海岸沿いの岩場でよく見られます。多くの個体は土壌がなくても岩の割れ目や岩の表面に生育します。
M. fraileanaが岩場に先駆的に定着するサボテンであると仮定するならば、窒素固定し岩を風化させることが出来る内生細菌を有しているはずです。内生細菌は、植物の根に住む細菌で、植物の生育を支えています。内生細菌は大気の窒素ガスを固定し、酸を放出して岩石を溶かします。このような内生細菌の窒素を固定し岩石を風化させる働きは、植物の生長と土壌形成を促進し、M. fraileanaのような先駆植物の定着を助けると考えられます。


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Mammillaria fraileana
2021年にマミラリアから分離され、Cochemiea fraileanaとなりました。


M. fraileanaの採取と内生細菌の確認
メキシコのバハ・カリフォルニア・スル州、La Paz市の北約2kmにある海岸平野に接する丘陵の尾根に生えるM. fraileanaを採取しました。気候は亜熱帯性で高温で乾燥しています。M. fraileanaが生える岩は、流紋デイサイトや流紋岩からなります。
採取したサボテンの根を消毒し、表面に付着した細菌を除去しました。根を観察すると内部に内生細菌が確認されました。また、種子の内部にも内生細菌が含まれていました。さらに、根から取り出した内生細菌を実生に接種することにより、実生の根に内生細菌の侵入を確認しました。

内生細菌の能力
窒素固定能力
根に含まれる窒素固定細菌は人工的に培養出来なかったため、切断された根の窒素固定能力を試験しました。培地成分を分析しM. fraileanaの根に含まれる内生細菌が窒素固定能力を持つことを確認しました。
リンの可溶化
根から取り出した内生細菌を難溶性の無機リンを含む培地に接種したところ、10の分離株のうち5株はリンを可溶化しました。
岩石の風化作用

粉砕した流紋デイサイトを含む培地に内生細菌を接種したところ、培地に含まれる岩石の小粒子が9%から403%に増加しました。これは岩石の風化を示しますが、培地の酸性化により起こると考えられます。接種1週間後の培地のpHは1.68〜1.86低下しました。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
乾燥した砂漠地帯の岩場と言う極限環境に生えるMammillaria fraileanaは、内生細菌との共生関係により環境に適応している可能性が示されました。岩場は栄養が不足しますが、窒素固定細菌の働きと、岩石を溶かして風化させリンを可溶化する細菌の働きにより栄養を確保しているのです。また、岩石の風化は土壌の形成を意味しますから、サボテンの生長とともに根域と土壌は増加することになります。岩場に生えるサボテンはただ乾燥に強いのではなく、微生物の力も借りて極限環境を生き抜いているのです。



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変わった見た目をしているドラゴンフルーツの果実を見かけるようになったのは、いつ頃のことだったでしょうか。20年くらい前はかなり珍しい果物だったような気がします。いつでもどこでも販売しているわけではありませんが、今ではドラゴンフルーツ自体はすごい珍しいものではなくなりました。沖縄でも栽培されているみたいですし、あまり見かけないのはあくまで需要と供給の話だからなのでしょう。

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Hylocereus undatus(上)

さて、そんなドラゴンフルーツですが、これはいわゆるサボテンの実ですが、ドラゴンフルーツは我々趣味家にとっては馴染み深いサボテンだったりします。なぜなら、ドラゴンフルーツとはいわゆる「三角柱」と呼ばれているサボテンのことだからです。葉緑体がない緋牡丹を三角柱に接ぎ木したものを皆様も見かけたことがあるはずです。まあ、三角柱は永久台木にはならず、寒さに弱く腐るのであまり台木としては人気がないかも知れません。
本日は原産地であるメキシコにおける、三角柱=ドラゴンフルーツの受粉に関する研究をご紹介したいと思います。それは、A. Valiente-Banuetらの2007年の論文、『Pollination biology of the hemiepiphytic cactus Hylocereus undatus in the Tehuacan Valley, Mexico』です。早速、見ていきましょう。

Hylocereus undatusとは?
メキシコ南部から中米北部に拡がるメソアメリカ文化では、サボテンが栽培されていました。メソアメリカ人が使用した118種類のサボテンのうち、約40種類は様々な程度で家畜化されており、現在でも先住民族により広く栽培されているものもあります。それらの中でも、半着生サボテンであるHylocereus undatusはその装飾的価値と食用となる果実のためにメキシコ全土で高く評価されています。H. undatusはメキシコ、西インド諸島、中米、南米北部の熱帯落葉樹林に自生します。また、カンボジア、コロンビア、エクアドル、グアテマラ、インドネシア、メキシコ、ニカラグア、ペルー、台湾、ベトナムで、果実生産のために栽培されており、近年ではオーストラリアやイスラエル、日本、ニュージーランド、フィリピン、スペイン、米国でも栽培されています。

Hylocereusの受粉生物学
H. undatusは作物としての重要性のため、園芸学的にあるいは生態生理学的に広く研究されています。HylocereusとSelenicereusの受粉生物学的研究のほとんどは、温室環境下で実施されています。それらの研究によると、花は夜行性で一晩だけ開花し、コウモリや大型のスズメガが訪れます。H. polyrhizusとH. costaricensisは自家不和合性であり、結実には他家受粉が必要です。過去の報告によると、H. undatusは自家受粉では自然と結実はせず、人工的に自家受粉させるとその結実率は50〜79.6%に低下します。ちなみに、他家受粉では100%結実します。一方、Selenicereus megalanthusは自家和合性があり、自然状態でも自家受粉し結実率は60〜73%、人工的に自家受粉させると結実率は100%でした。この2種類の受粉システムの違いは、自動自家受粉(自然状態での自家受粉)を妨げたり可能とする葯や柱頭の位置と形態の違いによるものでしょう。

実験方法
メキシコ中南部のTehuacan渓谷では、現地で「pitahaya」と呼ばれているH. undatusが広く栽培されており、地元の人々によると古くから栽培されてきた作物と言うことです。現在、pitahayaの果実の生産と商品化は重要な経済活動の一部です。pitahayaは茎の一部を樹木の根元に植えるだけで、家庭菜園で沢山の果実がとれます。この地域の果実生産は非常に効率的です。それは、地元の人々による植え付けによる遺伝的な影響のためか、単に自家不和合性があるためであるのかは不明です。
そこで、著者らはこの
Tehuacan渓谷で、果実における自家受粉の役割と、夜行性および昼行性の花粉媒介者の重要性を決定するために調査を実施しました。花を夜間だけあるいは日中だけ袋をかけ、花粉媒介者の訪問を制限しました。さらに、著者らの手による自家受粉させたものと、袋をかけず自由に受粉させたもの、常に袋をかけたものも試験しました。受粉した果実が成熟したら回収し、分析しました。

観察
調査地におけるH. undatusの花は約17時に開き始め、11時頃に閉じ始めました。分析した花のすべてから花蜜は検出されませんでした。花は長さ平均34.5cmで、花の先端部から蜜室までの長さは平均29.95cm、外径は平均13.6cmでした。
野外調査では3種類のコウモリが捕獲され、付着したH. undatusの花粉が調べられました。うち、2種類のコウモリは付着した花粉が豊富でした。日中にはミツバチの訪問が観察されましたが、夜間は昆虫は採取されませんでした。

結果
人工的に受粉させた自家受粉の場合は53.8%の結実率でしたが、常に袋がけした自家受粉の場合は100%の結実率でした。袋をかけない場合は100%結実しましたが、夜間だけ袋を外した場合は76.9%の結実率、日中だけ不安定を外した場合は46%の結実率でした。
人工的に受粉、あるいは袋がけした自家受粉で100%受粉したと言うことは、花粉媒介者がいなくても結実出来ると言うことです。これは、自家受粉では結実せず、人工的な自家受粉では結実率が下がるとしたWeiss et al. , 1994の結果とは異なります。イスラエルにおけるH. undatusの果実の商業生産に関する報告(1999, 2000)では、果実の生産には人工受粉が必要であるとしています。これらの違いはクローンの違いに起因する可能性があり、調査する価値があります。
Tehuacan渓谷のH. undatusの自家受粉する性質は、その商業生産にとっては重要です。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
この
Tehuacan渓谷のH. undatusの自家受粉する性質は、明らかにその果実の商業生産にとって福音となるでしょう。しかし、その性質の違い、おそらくはクローンの違いはですが、どのようにしてもたらされたのでしょうか。茎節を挿し木して増やすTehuacan渓谷の人々の長いH. undatus利用の過程で生まれたことは明らかかも知れませんが、あるいは選抜された過去が隠されているのかも知れませんね。
さて、
Tehuacan渓谷のクローンは自家受粉するため必ずしも花粉媒介者は必要ありませんが、一般的には人工受粉させるか花粉媒介者が必要です。今回の調査では夜間に花を訪れるコウモリが主たる花粉媒介者と比定されます。花蜜はないので花粉を食べに来ているのでしょう。また、H. undatusの花は夜間に開花しますが、明け方から11時位までは開いているため、ミツバチも訪れ受粉に寄与していることが分かります。果実の効率的な生産には自家受粉する性質は便利ですが、やはり他家受粉により多様な性質が現れることは、野生のH. undatusには必要なことでしょう。
最後に補足情報で終わりましょう。かつてドラゴンフルーツはHylocereus undatusなる学名で呼ばれておりましたが、近年Selenicereus undatusとなり、HylocereusはSelenicereusに吸収されてしまいました。これはHylocereusが遺伝的にSelenicereusと区別出来ないと言う研究成果に基づいています。



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植物は育てていると、稀に生長点が異常になる「帯化」が起きることがあります。これは石化とも呼ばれますが、サボテンでも綴化と呼ばれ珍重されています。さて、園芸的には帯化は肥料過多が原因なのではないかと言われているようですが、その実態はよく分かりません。帯化の直接の原因は生長点の異常ですが、その異常を引き起こす原因がよく分からないのです。以前、Gymnocalycium vatteriのトゲがアレオーレではない場所から出る突然変異の報告を読んだことがあります。その報告は写真がメインで、特に考察や原因の特定がないため、記事にはしませんでした。しかし、関連論文として、サボテンの生長の異常に関するものがあったため、今回ご紹介することにしました。それは、Vladimir A. Basiukの2013年の論文、『Teratopia in Cactaceae Family: The Effect to Temperature』です。

240518003009115~2
Ferocactus wiskizenii forma cristata
『Saguaroland Bulletin』(1954)より。

生長異常を起こすサボテン
著者の約350株のサボテンコレクションを詳しく調べ、どのような種類の生長異常が見られたかを要約しました。著者のサボテンの育成環境は、アルミニウム温室です。場所は北緯18.55°(※1)、標高は約1500mですから日射量は強いことが分かります。温室は遮光率70%のネットにより、特に午後の強い日射から守られます。日中の気温は高く軽く40℃を超え、これは夏でも冬でも起こります。また、温室のサイズが小さいことに加え、動物からサボテンを保護するために、入口は閉じ続けなければなりませんでした。小さな2つの窓は換気にはほとんど意味がありません。

※1 ) 著者はメキシコの大学に所属しています。

化学的、あるいは物理的な異常を誘発する試みは行われず、殺虫剤や肥料の過度の使用は控えられました。以上のことから、著者はサボテンに起こる生育異常を引き起こしているのは、高温の影響ではないかと考えています。

Case 1 稜の変異
約4年前にAstrophytum myriostigmaに出た2つの花芽は開花せず、数ヶ月後に不規則な形の新芽に変わりました。約1cmほどになったタイミングで切り取り、Opuntia compressaに継ぎました。その形状は1つは「複隆」、もう1つは「Lotusland」として知られるものと同じです。
悪い条件で花芽が子株に変換されることは珍しくありませんが、このような複雑な形態になることはほとんどありません。


Case 2 花芽から子株へ
Gymnocalycium baldianumで花芽が子株に変換されました。子株には萼片がありますが、次第にトゲのあるアレオーレが発達します。やがて、子株から花を咲かせました。しかし、中には新たに花芽を付けるのではなく、生長点がそのまま花芽に変化したものもありました。この場合、子株と花芽は一体化しており、はっきりした境界はありません。これは、子株が花芽に回帰し誤りを正そうとした例かも知れません。やがて開花しましたが、柱頭や雄しべの形態には異常が見られました。開花後も子株と一体化した花は落ちずに残りました。

Case 3 モンスト
Copiapoa tenuissimaやCopiapoa lauiのモンスト(monstrose)は古くから知られており、広く商品化されています。これらは接ぎ木により容易に増やせますが、通常のサボテンからどのように出現するのか観察した栽培家は非常に少数です。著者はモンストが一般的ではないEriosyce esmeraldanaでモンストの発生を観察しました。この個体は種子から育てられ、約26年経ちます。すでに2つの子株を作りましたが、3つ目は大量の羊毛状の毛に覆われて分頭を繰り返すようになりました。

Case 4 双結節
著者の育てているAriocarpus retususは、18年前に直径15cmくらいで入手しました。2007年までは異常は見られませんでしたが、それ以降は結節(疣)が2つあるいは3つに分かれています。これは、やがて例外ではなく規則となりました。

Case 5 綴化
Rebutia heliosaやRebutia rauschii、Parodia haselbergiiは生長点が帯化し始めました。

最後に
論文を読んでいて意外に思ったのは、これらの変異が遺伝的な突然変異ではないということです。綴化は物理的な生長点の障害だろうと考えていましたが、複隆やモンストも遺伝的なものではないのです。もちろん、遺伝的な変異でも突然変異体は誕生する可能性はありますから、そのすべてがそうであるとは限らないでしょう。しかし、論文のケースを見るにつけ、おそらくこのような変異体は物理的な障害の方が発生しやすいはずです。さらに、サボテンは接ぎ木により容易に増やせますから、一度変異が発生したならば無限に増やすことが出来ます。と言うことは、このような変異体を交配に用い、新たな変異体を作出することは難しいかも知れませんね。今回の論文は瓢箪から駒のような感じでしたが、サボテンの理解において意外と重要な観察がなされているように感じます。私のような趣味家にとっても非常に関心がある内容でした。


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近年、マミラリア属とその近縁属の遺伝子解析が行われ、マミラリア属とその近縁属は大幅な改訂と整理を受けることになりました。過去に記事にしていますから、詳細は以下のリンクをご参照下さい。

以前の記事の内容を簡単にまとめると、マミラリア属はまとまりがないグループで、まとまりのある単系統のマミラリア属以外のマミラリアは、オルテゴカクタスやネオロイディアと合わせてコケミエア(Cocphemiea)となりました。さらに、エスコバリアとエンケファロカルプス、さらにコリファンタの一部がペレキフォラに吸収されました。
さて、以上のようなマミラリアとその近縁属に近縁なグループとして、ラピカクタスやツルビニカルプス、エピテランサがあります。本日はこのあたりの最新の分類についての論文をご紹介しましょう。それは、Monserrat Vazquez-Sanchezらの2019年の論文、『Polyphyly of the iconic cactus genus Turbinicarpus (Cactaceae) and its generic circumscription』です。

ツルビニカルプスの歴史
①ツルビニカルプス
1937年にTurbinicarpusが新属として記載されました。Buxbaumによると、小型でほとんどが球形または円筒形、アレオーレは疣の先端にあり、短い筒を持つ白あるいはピンク色の花、そのほとんどが裸の果皮、先端が裂ける果実、1.0〜1.9mmで黒色で疣贅状の荒い種子を持つなどの特徴を上げました。

②ギムノカクタス
Turbinicarpusは1938年にBackebergにより分割され、その一部はGymnocactusとされました。BackebergはGymnocactusを、トゲが細かい、種子が軽い、疣が細かい、花はほとんどが紫色でそうでない場合はピンク色または白色であるとしました。Glass & Foster(1977)はTurbinicarpusとGymnocactusの違いに説得力はないと述べました。しかし、現在(2019年当時)でもGymnocactusは健在です。

③ラピカクタス
1942年にBuxbaum & Oehmeにより、GymnocactusからのRapicactusの分離が提案されました。Rapicactusはくびれのある太い根を持ちます。Luthy(2003)は、Rapicactusはその種子の形態に基づく必要があると主張しました。
2000年にMosco & ZanovelloによりTurbinicarpus mandragoraを分離することが提案されましたが採用されませんでした。しかし、Luthy(2001, 2002)による詳細な分類学的研究により、均一な分類群であることが示唆されました。Luthyによると、ガラス質の白っぽい針状のトゲ、種皮が部分的に凸型の「ドーム型または円錐形から乳首状」でありRapicarpusであるとしました。

④ノルマンボケア
1969年にKladiwa & Buxbaumは、Turbinicarpus valdezianusに因んでNormanbokeaと言う属名を提案しました。Bravo-Hollis & Sanchez-Mejarada(1991)は、NormanbokeaはThelocactusと密接な関係があると結論付けました。しかし、近年の分類学ではT. valdezianusはTurbinicarpusとされています。

⑤ブラヴォカクタスとカデニカルプス
1998年にDoweldは、Turbinicarpus horrispilusとTurbinicarpus pseudomacrocheleをそれぞれTurbinicarpusから分離するために、BravocactusとKadenicarpusを提案しました。しかし、後者は採用されていません。

⑥不安定なツルビニカルプス
Turbinicarpusの一部は、NeolloydiaやSclerocactusの一部として扱われたToumeya、およびPediocactusなど他属に移されました。

遺伝子解析
この論文では遺伝子解析による分子系統により、不安定なTurbinicarpusを分析しました。ツルビニカルプス属とされてきた種は大きく3つに分割出来ることが明らかとなりました。ここではツルビニカルプスと近縁属をA、B、Cの3グループに分けて見ていきます。

      ┏━━グループC
  ┏┫
  ┃┗━━グループB
  ┫
  ┗━━━グループA


グループA【Rapicactus・Acharagma】
Turbinicarpus beguinii、T. booleanus、T. mandragora、T. subterraneus、T. zaragozaeの5種類のツルビニカルプスは単系統で、Acharagmaと種子の特徴が共通する姉妹群です。この仲間はRapicactusとしてTurbinicarpusから分離されます。Rapicarpusは種子の微細な模様や、果実が側方で開裂し、果実の粘稠度、皮下組織の同心円状の晶洞の発生など、形態学的な共通点があります。また、このグループにはObregoniaやLophophoraが含まれます。
Buxbaum & Oehme(1942)はRapicactusとNeolloydiaを近縁としましたが、分子系統では支持されません。また、RapicactusにはPediocactusには関連していません


              ┏
━Lophophora
          ┏┫
          ┃┗━Obregonia
      ┏┫
      ┃┗━
━Acharagma
  ┏┫
  ┃┗━━━Turbinicarpus①
  ┫
  ┗━━━━グループB


グループB【Mammillaria・Cochemiea】
このグループにはTurbinicarpusは含まれないため、論文では解説されません。私が最新の情報に基づいて少し補足しましょう。
ここで解析されているCumariniaは、論文ではC. odorataと表記されていましたが、Coryphanthaから分離された種です。Neolloydia odorataとされたこともあります。MammillariaはM. lentaを解析しています。また、EscobariaはE. missouriensisとE. laredoi、PelecyphoraはP. aselliformis、NeolloydiaはN. conoideaが解析されています。しかし、現在ではEscobariaはPelecyphoraに吸収されました。OrtegocactusとNeolloydiaはCochemieaに吸収されました。ちなみに、ここでは登場しないEncephalocarpusもPeclecyphoraに吸収されています。

          ┏━━Cumarinia
      ┏┫
      ┃┗━━Mammillaria
      ┃
      ┃    ┏━Escobaria
  ┏┫┏┫
  ┃┃┃┗━Pelecyphora
  ┃┗┫
  ┃    ┗━━Ortegocactus
  ┫
  ┗━━━━Neolloydia


グループC【Turbinicarpus・Kadenicarpus】
Turbinicarpusは1936年にBackebergによりStrombocactusの亜属として命名されたことから始まりましたが、1937年にBuxbaum & Backebergにより独特した属Turbinicarpusとなり、T. schmedickeanusを属の基準種に指定しました。Turbinicarpusの基準種であるT. schmedickeanusは分子系統のTurbinicarpus③に含まれ、本来のTurbinicarpusはTurbinicarpus③で、Ariocarpusの姉妹群です。Turbinicarpus②には、T. horripilusとT. pseudomacrocheleからなります。Kadenicarpusに属する2種は、それぞれDoweldにより提案されたBravocactusとKadenicarpusのタイプです。このTurbinicarpus②をTurbinicarpusから分離し、Kadenicarpusを復活させました。Anderson(1986)は、形態学的特徴からKadenicarpusの2種をNeolloydiaに含めましたが、分子系統ではこの提案を支持しません。また、Kadenicarpusは、関係が深いとされたこともあるMammillariaやNeolloydia、Pediocactus、Thelocactusと近縁ではありません。
                  
              ┏━Turbinicarpus③
          ┏┫
          ┃┗━Ariocarpus
      ┏┫
      ┃┗━━Turbinicarpus②
  ┏┫
  ┃┗━━━Strombocactus
  ┫
  ┗━━━━Epithelantha


最後に
以上が論文の簡単な要約です。
論文では各属の分岐した年代や、分岐した地理的な拡散を推察していますが、長くなるため割愛させていただきました。
さて、論文ではRapicactusやKadenicarpusの復活を提案していますが、現在(2024年5月)ではそれぞれ独立した属として認められています。近年のツルビニカルプスの仲間の分類をまとめると以下のようになっています。論文の書かれた2019年当時は健在だったGymnocactusもTurbinicarpusに吸収されました。

Gymnocactus→Turbinicarpus
Normanbokea→Turbinicarpus
Bravocactus→Kadenicarpus
Ortegocactus→Cochemiea
Neolloydia→
Cochemiea
Escobaria→Pelecyphora
Encephalocarpus→Pelecyphora


ちなみに、あまり聞き慣れないAcharagmaは以下の3種からなります。ご参考までに。

Acharagma aguirreanum
 =Escobaria 
aguirreana
 =Gymnocactus 
aguirreanus
 =Thelocactus 
aguirreanus

Acharagma galeanense
 =Escobaria roseanum
                  ssp. 
galeanensis
 =Acharagma 
roseanum
                  ssp. galeanense

Acharagma roseanum
 =Escobaria 
roseana
 =Gymnocactus 
roseanus
 =Neolloydia 
roseana
 =Thelocactus 
roseanus
 =Echinocactus 
roseanus
 =Acharagma huasteca


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最近、某匿名掲示板をダラダラ見ていたら、サボテンが霧から水分を得るという仮説に対して、かなり否定的な論調が見受けられました。しかし、実際に色素液をアレオーレに滴下してからサボテンを輪切りにすると、アレオーレから吸収された色素がサボテン内の維管束に拡がる様子が観察出来ます。砂漠は日中と夜間の寒暖差が激しいので、夜間に霧が発生しますから、いわゆる夜露を吸収することは理にかなった生態です。霧を吸収するなら、某匿名掲示板では地面に染み込んだ霧を根から吸収した方がいいと言うような書き込みもありましたが、露は表土を濡らすだけで深く染み込むほどの量はありません。サボテンは深く根を張るものが多く、日中高温になり乾燥しますから露が染み込むほど浅い場所に細根は張らないでしょう。とは言え、すべてのサボテンが露を頼りにしているわけではないようです。露をキャッチするのはトゲで、トゲは表面の微細構造により露をアレオーレに運びます。しかし、サボテンによってはトゲの微細構造が露を運ぶのに適しておらず、露を利用していないと考えられるものもあります。
さて、前置きが長くなりましたが、今日はトゲを介した吸水の話をしましょう。以前も記事にしましたが、今回は異なる種類のサボテンを対象とした論文です。

以前の記事です。ご参照までに。
本日はYahya S. Masrahiの2020年の論文、『Glochids microstructure and dew harvesting ability in Opuntia stricta (Cactaceae)』をご紹介します。

霧と露
霧と露は空気中の過剰な水蒸気から発生し、水滴として凝縮する浮遊水のもっとも顕著な発生源です。液滴が浮遊する場合を霧と呼びます。霧は空気が露点以下に冷却されて水滴が結露することにより形成されます。多くの乾燥地域や半乾燥地域では、霧と露がその時の気候条件に応じて一定量の水源となります。干ばつが深刻な年には、霧が年間降水量を超えることもあります。そのような厳しい環境では、霧や露が重要な役割を果たします。

疎水性と親水性
個体表面上での液滴形成にとって重要なのは、三相境界で形成される接触角です。ちなみに三相境界とは、液体と蒸気の境界面が固体表面と接する場所のことです。接触角が90°未満の場合は親水性で、これは濡れが発生し広い領域を液滴が覆います。一方、接触角が90°を超えると疎水性となり濡れ性は低くなります。疎水性表面上の液滴はより球形になる傾向があり、小さな領域しか固体表面に触れません。

霧を集めるサボテン
サボテンの中でトゲ(spine)や芒刺(glochid)で霧や露を集めることが知られている種類はほとんどありません。トゲや特に芒刺は表面の微細構造が大きく異なります。結露は気温、湿度、表面の微細構造により制御されるため、結露を集める能力はサボテンのトゲの微細構造次第です。現在までにトゲが水分を集めることが確認されたサボテンはわずか数種類しかありません。

実験
芒刺を持つOpuntia strictaと言うウチワサボテンを実験に使用しました。O. strictaには、長さ10〜25mmのトゲと、微細な毛状突起である芒刺があります。サンプルはサウジアラビアでは侵略的外来種であるO. strictaを野外で採取し使用しました。トゲは表面に目立った構造はなく、ほとんど無毛で露の収集能力を示しませんでした。
芒刺は電子顕微鏡で表面構造を調べました。また、夜霧を想定した人工的な霧がある環境で、トゲと芒刺がついたアレオーレを置き、顕微鏡で液滴の形成を観察しました。


芒刺の微細構造
芒刺はアレオーレに約80本あり、長さは約5mmでした。芒刺の表面は逆向きの扁平で先の尖った突起に覆われていました。突起の先端はほぼ滑らかで、基部には微細な溝があり表面は先端よりも粗くなっていました。芒刺の先端部の頂角は9.25°前後で鋭く、突起の先端部の頂角は41.5°前後で弱く扇形でした。

液滴形成の過程
人工的な霧の中で芒刺の表面に水滴が堆積し始めます。まず、芒刺の先端部にコアが形成され、小さな液滴が芒刺の基部に移動しながら、他の液滴と合体して大きな液滴を形成します。直径約130mm以上となった液滴は芒刺の基部へ移動し合体します。
液滴が表面上を移動している時、液滴の接触角が最大(膨張)になる前進接触角と、最小(収縮)となる後退接触をからなります。芒刺では76.25°前後の前進接触角と、52.5°前後の後退接触角が明らかとなりました。実験で使用した芒刺は垂直か半垂直でしたが、液滴の堆積は水平方向の芒刺でも発生します。

ラプラス圧力勾配
芒刺と芒刺の突起は9.25〜41.5°の円錐頂角を持ちますが、このような形態は表面にラプラス圧力勾配を生じます。この時、基部よりも先端部でより強いラプラス圧力を持ちます。この差は円錐の先端部小さな半径と高い曲率、円錐の基部の大きな半径と低い曲率により生じます。これはラプラスの定理で表すことができます。
円錐に沿った先端部から基部までの間の液滴のラプラス圧力勾配は、液滴の臨界サイズである約130mmに達した場合、液滴の自発的な移動を引き起こす駆動力の1つです。

Wenzel状態
芒刺は基部に向かうにつれ顕著な溝があります。この特徴は芒刺の突起にもあり、基部に向かうほど増加します。これがWenzel状態であるならば、芒刺と芒刺の突起の表面の「粗さ」が基部に向かうほど増大することにより、錐体構造の先端から基部に向かう液滴の移動に推進力が生まれる可能性があります。

表面エネルギー勾配
表面エネルギー勾配の原理では、水滴は低い表面エネルギー(濡れ性が低い)から高い表面エネルギー(濡れ性が高い)まで、濡れ性の勾配に沿って移動する傾向があります。サボテンのトゲと芒刺はクチクラと石細胞により防水性がありますが、芒刺の基部にある毛状突起(アレオーレの毛のようなもの)は湿潤性があります。吸湿性の毛状突起は湿潤性が高く、芒刺と芒刺の突起の先端部は表面エネルギーが低くなります。この表面エネルギー勾配も液滴の移動を引き起こす駆動力の1つであると考えられます。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
水滴がトゲを伝ってアレオーレに向かって流れ落ちるだけならば、あまり濡れ性は関係ないと思われる方もおられるでしょう。しかし、濡れ性が低いと言うことは、蓮の葉の上の水滴が弾かれて転がるように、トゲに水滴は付着しないと言うことです。濡れ性が低い場合は、水滴は単純に重力により落下しますから、トゲを伝ってではなく垂直方向への自由落下により地面に落ちてしまいます。逆に濡れ性が高い場合は、トゲに水滴が付着し、表面の勾配により水滴は移動します。この時、水滴は単純に重力により落下しているわけではありません。特に水滴が出来る最初のコアは非常に小さな粒子なのですから、勾配がなければただ表面に貼り付くだけで移動しないでしょう。水平方向の芒刺にも水滴の移動が起こるのは、重力よりも表面の微細構造による勾配の力が影響しているからです。
さて、このように芒刺とアレオーレを介した霧からの水分吸収は理屈の上からも、観察した結果からも明らかです。しかし、その吸水量がサボテンの生存や生長にどれだけ貢献しているのかは、実はよく分かりません。論文の中では霧からの吸水が確認されたのは数種類とありますが、これは数種類しかないのではなくて、数種類しか調査されていないと言うことです。例えば、サボテンの種類ごとの生息環境と、霧からの吸水能力の有無を沢山の種類で確認出来た場合、間接的に霧からの吸水が環境に適応した結果であるかを考察出来るかも知れません。また、アレオーレからの吸水の影響を、栽培されたサボテンで試験することも出来るでしょう。根からの吸水とアレオーレからの吸水は、吸水力や吸水量以外にも違いがある可能性もあります。もし、その違いがサボテンの生育に深い関係があるのなら、サボテンの栽培方法にも新たな工夫が出来るかも知れませんね。


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ヒマワリの花は太陽の方向を向くと言われています。私の好きなギムノカリキウムの花は花茎が短く球体に貼り付くように咲きますから、花の向きなどは気にしたことはありませんでした。しかし、花はアレオーレから出ますが、すべての稜(rib)に万遍なく蕾がつくのでしょうか?
調べて見ると、柱サボテンに関してはいくつか論文が出ているようです。本日はその中でも割と有名な武倫柱(Pachycereus pringlei)の花の付き方を調査した、Clara Tinoco-Ojanguren & Francisco Molina-Freanerの2011年の論文、『Flower orientation in Pachycereus pringlei』をご紹介しましょう。

花のつく向き
柱サボテンの花は様々な位置で咲きます。花をつけるアレオーレは頂端や頂端下、あるいは側方にあります。また、Cephalium(※1)や疑似Cehalium(※2)を持つものもあります。Cephalocereus columna-trajaniでは、疑似Cephaliumは太陽の直射を避けています。しかし、温帯砂漠に生息する柱サボテンの中には、太陽に向かって花を咲かせるものもあります。Carnegiea giganteaなど頂端で開花する種では、花は東側あるいは南東の稜に形成されます。側方に花をつける主幹では、主に太陽の方角につきます。南米原産のTrichocereus chilensisでは花は北を向いています。
さて、このように柱サボテンでは花のつく位置に偏りがあります。Johnson(1924年)はC. giganteaの花は花の発育に適した温度になる時間が長い頂端の東側と南東側で発達すると主張しました。

※1 ) メロカクタスのように先端部に出来る羊毛と剛毛からなる構造。
※2 ) Pseudocephalium。CephalocereusやEspostoaに見られる茎の頂端付近にある毛状構造。

Pachycereus pringlei
Pachycereus pringleiはソノラ砂漠に固有の柱サボテンです。この地域で最大のサボテンで高さ15〜20mになり、稜(rib)は10〜15本で幹は直径1.5mに達します。成熟するまでは単幹で、成熟すると枝分かれし始めます。この種はバハ・カリフォルニアの大部分とカリフォルニア湾のほとんどの島に広く分布します。
P. pringleiの花芽は2月に出現し、3月下旬から6月上旬まで咲き続けます。花は主に幹の上部で咲きます。8.7〜10.2cmの白い花は日没直後に開花し、翌時の正午に閉じます。夜には花にコウモリが訪れ、日の出後出しは数種類の鳥やミツバチが訪れます。

測定結果
P. pringleiの花はその70〜77%が90度〜270度の方角に面した稜にありました。P. pringleiの花は主に東、南、西向きの稜につきました。東、南、西向きの稜は周辺温度より5〜8℃温度が上昇しましたが、北向きは周辺温度に近い温度でした。南向きの稜は日中の温度が25℃以上に保たれていました。
また、花の数は枝の長さと相関がありました。長さ1m未満の枝には花は咲かず、長さが1mを超える枝では、長さに依存して花がつきました、

考察
著者らは太陽光が二酸化炭素摂取と幹の温度に影響を与えたことが、P. pringleiの花のつき方の原因である可能性を指摘しています。北向きの稜の太陽光は制限される可能性が高く、炭素の増加は最小限となる可能性があります。柱サボテンでは、方角の異なる稜は炭素増加量に違いが発生することが知られています。よって、花を咲かせるためのアレオーレの誘導が炭水化物の蓄積に依存するならば、花を咲かせることを可能とするために十分な炭水化物を蓄積出来るのは北向き以外の方角の稜であると考えられます。Opuntia ficus-indicaでは、炭水化物の蓄積に加えて、温度周期が新しい器官の形成に影響を与えることが知られています。しかし、柱サボテンでは温度周期の影響は不明です。
また、人工照明を当てたり遮光処理をしたり、炭水化物の注入したりと、実験的に確認することも出来るかも知れません。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
花のつき方が日当たりと関係していると言う内容でした。しかし、この現象はすべてのサボテンで見られるわけではないようです。それでも、育てているサボテンの花のつき方と太陽光の向きについては、今後は気になってしうかも知れませんね。


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先日、ケファロケレウスは現在何種類あるのと言う記事を上げました。これはケファロケレウスを調べていた際のある種の副産物で、本来は本日の記事に入れ込むつもりでしたが、ボリューム的に無理なので独立した記事にしたと言う経緯があります。

さて、いくつかの論文をサッと斜め読みしましたが、研究者たちがケファロケレウスにどのような興味を抱いてきたのかが何となく分かりました。と言うわけで、本日はケファロケレウスの面白そうな論文を、私の好みでいくつかピックアップしてみました。簡単に概要のみをご紹介しましょう。

*ケファロケレウスの新種を発見*
2019年のSalvador Ariasらの2019年の論文、『A new species of Cephalocereus (Cactaceae) from southern Mexico』によると、メキシコはオアハカ州のMixtecan地域より、Cephalocereus parvispinusを新種として記載しました。C. parvispinusは高さ8メートルになり、樹枝状で15〜23本の稜(rib)を持ちます。花は長さ3.5〜4センチメートル、果皮にトゲはありません。暗赤色の果実は長さ1.7〜2.2センチメートルで果肉は白く、種子は約1.4×0.6mmで暗褐色でシワがあります。遺伝子解析によると、C. polyophusおよびC. euphorbioidesの姉妹種であることが示されました。

*ケファロケレウスの表皮には結晶がある
ケファロケレウスは表皮組織に結晶構造物があり、種により固有の性質を持つと言います。ここでは、Maria Luisa Barcenas- Arguelloらの2015年の論文、『The polymorphic weddellite crystals in three species of Cephalocereus (Cactaceae)』を見てみましょう。
メキシコのテワンテペク地峡に自生するC. apicicepharium、C. nizandensis、C. 
totolapensisの表皮に豊富ある角柱状の結晶を調査しました。種類により異なる水和度を持つウェッデル石を持つことが分かりました。結晶の形態の違いは含まれる元素の組成に関連している可能性があります。

*ケファロケレウスは土質により住み分ける*
同じ地域に生える3種類のケファロケレウスを調査した、Maria Luisa Barcenas- Arguelloらの2010年の論文、『Rock-Soil Preferences of Three (Cactaceae) Species of Tropical Dry Forests』を見てみましょう。
メキシコはテワンテペク地峡にて、岩石と土壌の成分と自生するケファロケレウスの種類を調査しました。Cephalocereus apicicephariumは丘の頂上から裏斜面までの石英を含む石灰岩の露頭でのみ育ち、C. nizandensisは丘の肩のメタ石灰岩(metalimestone)の露頭に育ちます。C. totolapensisは安山岩の酸性土壌を好み、丘の肩から斜面のシルト岩や雲母片麻岩でも育ちました。

*ケファロケレウスの自然交雑種*
雑種は不稔であると一般的には言われています。不稔とは種子が出来ない、つまり雑種は有性生殖出来ないと言うことです。しかし、サボテンでは自然交雑による雑種はよく起こることで、雑種にも種子が出来る場合もあるようです。さらに言えば、近年では雑種が進化の原動力の1つではないかと言う意見もあります。さて、そのような自然交雑を観察したGabriel Merinoらの2022年の論文、『Mating systems in a natural hybrid of Cephalocereus (Cactaceae) and comparative seed germination』を見てみましょう。
メキシコのTehuacan-Cuicatlan保護区では、C. columna-trajaniとC. tetetzo、さらには両者の雑種が共存しています。雑種の交配成功率は親よりも高く、種子は親よりも発芽率が高く雑種強勢であると解釈されました。雑種個体間の交配は雑種の生殖が成功した証拠です。雑種の不稔製が反証され、雑種は「進化の終点」を表すと言う見解に異議を唱えることが出来ます。


*なぜケファロケレウスは傾くのか?
Cephalocereus columna-trajaniは自生地では傾いて育つことが多いと言います。研究者たちも不思議に思ったようで、いくつかの論文が出ています。ここでは、Pedro Luis Valverdeらの2007年の論文、『Stem tilting, pseudocephalium orientation, and stem allometry in Cephalocereus columna-trajani along a short latitudinal gradient』を参照としましょう。
メキシコの
Tehuacan-Cuicatlan渓谷に沿った緯度勾配に従い5つの個体群をピックアップしました。サボテンの高さと直径、茎の傾斜角、pseudocephalium(頂端付近にある花が咲く毛状構造)の方角を調査しました。茎の北部ほどより高い傾斜角を持ち、pseudocephaliumの方角は一貫して北北西でした。また、南部の個体群ほど、直径に対してはるかに速く高さが増加することが分かりました。
分かりにくい話ですが、これは太陽の当たる角度とpseudocephaliumの関係を示しています。要するにpseudocephaliumを太陽に当てないようにしているわけです。さらに、Jose Alejandro Zavala-Hurtadoらの1998年の論文を見ると、茎が傾くことにより年間の遮光量が増加するとしています。しかし、その代わり枝分かれが不可能となり、傾斜が激しい個体ほど背の高さに制限があるでしょう。


*分子系統による分類
ケファロケレウス属内の系統関係はどうなっているのでしょうか。Hector J. Tapiaらの2023年の論文、『Phylogenetic and geographic diversification/differentiation as an evolutionary avenue in the genus Cephalocereus (Cactaceae) Evolutionary Avenue in Cephalocereus』を見てみましょう。遺伝子解析による分子系統です。
まず、C. apicicephalium〜C. scopariusのグループと、★〜C. parvispinusのグループに大別出来ます。さらに、後者のグループは★〜C. fulvicepsのグループと、C. euphorbioides〜C. parvispinusのグループに分けられます。ちなみに、★は沢山の種類が含まれるため、★だけでまとめました。

              ┏★
          ┏┫
          ┃┗C. sanchezmejoradae
      ┏┫
      ┃┗━C. fulviceps
      ┃       
      ┃    ┏C. euphorbioides
  ┏┫┏┫
  ┃┃┃┗C. polyophus
  ┃┗┫
  ┫    ┗━C. parvispinus
  ┃
  ┃        ┏C. apicicephalium
  ┃    ┏┫
  ┃    ┃┗C. nizandensis
  ┃┏┫
  ┃┃┗━C. totolapensis
  ┗┫
      ┗━━C. scoparius

           ┏━━C. mezcalaensis
           ┃
           ┃    ┏C. multiareolata
       ┏┫┏┫
       ┃┃┃┗C. nudus1
       ┃┗┫
   ┏┫    ┗━C. nudus2,3
   ┃┃
   ┃┗━━━C. macrocephalus
   ┃
  ★┫┏━━━C. tetetzo
   ┃┃
   ┗┫┏━━C. columna-trajani
       ┗┫
           ┗━━C. senilis


見ていただいた通りで特に解説はありませんが、少し補足します。
・現在、ケファロケレウス属は13種類が認められていますが、論文では16種類となっています。まあ、これは便宜上の分け方で、この分け方とすべきであると言うわけではありません。
・C. sanchezmejoradaeは現在ではC. novusの異名となっています。C. novusが論文に登場しないのは、C. novusが2022年にケファロケレウス属とされたため、研究段階ではケファロケレウスではなかったからでしょう。ただ、C. 
sanchezmejoradaeが本当にC. novusと同種であるかは再確認が必要でしょう。
・C. nizandensisとC. totolapensisは、C. apicicephaliumの異名とされています。分子系統では一塊となっており、非常に近縁であることは間違いがないようです。ただし、これら3種が同種か別種かは分子系統からは分かりません。
この3種類は表皮の結晶や自生する土壌は異なるため、別種なのでは? と言う気もします。しかし、遺伝的には非常に近縁ですから、あるいは亜種や変種くらいの立ち位置なのかも知れませんね。
・C. multiareolatusは現在ではC. mezcalaensisの異名とされています。しかし、分子系統ではC. nidusの3個体と区別出来ていません。C. mezcalaensis系統ではなくC. nidus系統であることは間違いないでしょう。
・C. nidusはかつてはC. tetetzo v. nudusとされてきましたから、C. tetetzoと近縁に思えます。しかし、C. nudusはC. tetetzoよりC. mezcalaensisに近縁です。


最後に
何となくケファロケレウスを調べて見ましたが、なかなか興味深い研究が沢山ありました。今回はいくつか見繕って記事にしましたが、まだまだ面白そうな研究はありました。論文はじっくり読むと大変ですが、サッと概要だけなら結構沢山読めます。サボテンは属が沢山ありますから、今後も不定期にボチボチ記事にしていきたいと思っております。


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最近、ケファロケレウスについて少し調べていたところ、まあ色々な種類が出てくるわけです。では、現在認められているケファロケレウスは何種類あるのでしょうか? と、その前にケファロケレウス属自体について見てみましょう。

ケファロケレウス属
ケファロケレウス属は、正確にはCephalocereus Pfeiff.で、1838年に命名されました。一般的にサボテンの学名はCactus L.から始まりましたから、最初は当時知られていたすべてのサボテンはカクタス属でした。ケファロケレウス属では唯一、Cactus senilis(=Cephalocereus senilis)が1824年の命名されています。次に柱サボテンはやがてCereus Mill.とされました。ケファロケレウスでは、1819年にCereus euphorbioides、1828年にCereus polyophus、1837年にCereus columna-trajani、1896年にCereus tetetzoが命名されています。また、ケファロケレウス属の同義語として、1839年に命名されたPilocereus Lem.があり、Pilocereus scopariusやPilocereus fulvicepsは最初はピロケレウス属として記載されました。しかし、ケファロケレウス属のほとんど種はCephalocereus Pfeiff. として初めて記載されています。1909年のBritton & Roseの書籍を見ると、ケファロケレウス属は非常に種類が多い分類群でした。しかし、現在のケファロケレウス属はわずか13種類に過ぎません。かつて、ケファロケレウス属とされた柱サボテンは、その多くが他の属となっています。特に1957年に命名されたPilosocereus Byles & G.D.Rowleyとして分離された種が目立ちます。ちなみに、ピロソケレウス属は上で出てきたピロケレウス属と似ていますが別ものです。

2種類の異名
ここで1つ解説します。見ていただいたら分かる通り異名が沢山ありますが、異名にも2種類あります。1つは、同種に異なる名前がつけれたり、別種とされていた種類が現在は同種とされたと言う場合、これをHeterotypic Synonymと呼びます。もう1つは、ある属から分離され新属となった場合や属名が変更された場合、これをHomotypic Synonymと呼びます。
また、異名は属名が様々ですから、以下のように属名を略しました。

Cac.=Cactus
Car.=Carnegiea
Cpc.=Cephalocereus
Cpp.=Cephalophorus
Cer.=Cereus
Ec.=Echinocactus
Eu.=Euporteria
H.=Haseltonia
L.=Lemaireocereus
Mel.=Melocactus
Mit.=Mitrocereus
Nbx.=Neobuxbaumia
Ndw.=
Neodawsonia
Pa.=Pachycereus
Pi.=Pilocereus
Ps.=Pseudomitrocereus
R.=Rooksbya

ケファロケレウス属一覧
①Cpc. apicicephalium E.Y.Dawson, 1948
Homotypic Synonyms
 Ndw. apicicephalium
   (E.Y.Dawson) Backb., 1949

Heterotypic Synonyms
 Cpc. nizandensis
   (Bravo & T.MacDoug.) Buxb., 1949

 Cpc. totolapensis
   (Bravo & T.MacDoug.) Buxb., 1965
           not validly publ.

 Ndw. apicicephalium ssp. totolapensis
   Guiggi, 2020

 Ndw. guengolensis Bravo, 1959
 Ndw. nana Bravo, 1959
 Ndw. nizandensis
   Bravo & T.M.MacDoug., 1959

 Ndw. totolapensis 
   Bravo & T.M.MacDoug., 1959
          no collection cited.


②Cpc. columna-trajani
   (Karw. ex Pfeiff.) K.Schum., 1897

Homotypic Synonyms
 Cpp. columna-trajani
   (Karw. ex Pfeiff.) Lem., 1838
 Cer. columna-trajani
   Kasw. ex Pfeiff., 1837
 H. columna-trajani
   (Karw. ex Pfeiff.) Backeb., 1960
 Mit. columna-trajani
   (Karw. ex Pfeiff.) E.Y.Dawson, 1948
 Pa. columna-trajani
   (Karw. ex Pfeiff.) Britton & Rose, 1909
 Pi. columna 
(Karw. ex Pfeiff.) Lem., 1839

Heterotypic Synonyms
 Cpc. columna
   (Walp.) K.Schum., 1894
    Cpc. hoppenstedii
   (J.N.Haage & E.Schmidt)
   K.Schum., 1894
    Cer. columna Walp., 1846
    Cer. hoppenstedtii
   (J.N.Haage & E.Schmidt)
   Mottet, 1898-1899

    Cer. lateribarbatus Lem., 1862
    H. hoppenstedtii
   (J.N.Haage & E.Schmidt)
   Backeb., 1951

    Mel. columna-trajani Pfeiff., 1837
          not validly publ.
    Pi. hoppenstedtii
   J.N.Haage & E.Schmidt, 1874
    Pi. lateralis F.A.C.Weber, 1898
    Pi. lateribarbatus
   Pfeiff. ex C.F.Forst. & Rumpler, 1885

③Cpc. euphorbioides (Haw.)
   Britton & Rose, 1920

Homotypic Synonyms
    Cac. euphorbioides (Haw.) Spreng., 1825
    Car. 
euphorbioides (Haw.) Backeb., 1944
    Cer. 
euphorbioides Haw., 1819
    L. 
euphorbioides (Haw.) Werderm., 1934
    Nbx. 
euphorbioides (Haw.) Buxb., 1954
    Pi. 
euphorbioides (Haw.) Rumpler, 1885
    R. 
euphorbioides (Haw.) Backeb., 1960

Heterotypic Synonyms
    Car. 
euphorbioides v. olfersii
   (Salm-Dyck) P.V.Heath, 1992
    Cer. olfersii Salm-Dyck, 1834
    Cer. oxygonus
   Salm-Dyck ex C.F.Forst., 1846
           nom illeg., 1846
    Ndw. 
euphorbioides v. olfersii
   (Salm-Dyck) Backeb., 1960
    R. 
euphorbioides v. olfersii
   (Salm-Dyck) Backeb., 1960

240421004538052~2
Cephalocereus euphorbioides

④Cpc. fulviceps
   (F.A.C.Weber ex K.Schum.)
   H.E.Moore, 1975

Homotypic Synonyms
    Car. fulviceps
   (F.A.C.Weber ex K.Schum.)
   P.V.Heath, 1992
    Cer. fulviceps 
   (F.A.C.Weber ex K.Schum.)
   A.Berger, 1905

    Mit. fulviceps
   (F.A.C.Weber ex K.Schum.)
   Backeb., 1960

    Pa. fulviceps 
   (F.A.C.Weber ex K.Schum.)
   D.R.Hunt, 1991

    Pi. fulviceps 
   F.A.C.Weber ex K.Schum., 1897
    Ps. fulviceps 
   (F.A.C.Weber ex K.Schum.)
   Bravo & Buxb., 1961


⑤Cpc. macrocephalus
   F.A.C.Weber ex K.Schum., 1897
Homotypic Synonyms
    Car. macrocephala
   (F.A.C.Weber ex K.Schum.)
   P.V.Heath, 1992

    Cer. macrocephalus 
   (F.A.C.Weber ex K.Schum.)
   A.Berger, 1905

    Nbx. macrocephala
   (F.A.C.Weber ex K.Schum.)
   E.Y.Dawson, 1952

    Pi. macrocephalus
   (F.A.C.Weber ex K.Schum.)
   F.A.C.Weber, 1898


Heterotypic Synonyms
    Cer. ruficeps
   (F.A.C.Weber) Vaupel, 1913
    Mit. ruficeps
   (F.A.C.Weber) Backeb., 1960
    Pa. ruficeps
   (F.A.C.Weber) Britton & Rose, 1920
    Pi. ruficeps 
F.A.C.Weber 1905

240330081841864~2
Cephalocereus macrocephalus

⑥Cpc. mezcalaensis Bravo, 1932
Homotypic Synonyms
    Car. mezcalaensis
   (Bravo) P.V.Heath, 1992
    Nbx. mezcalaensis
   (Bravo) Backeb., 1941
    Pi. mezcalaensis
   (Bravo) W.T.Marshall, 1941

Heterotypic Synonyms
    Car. mezcalaensis v. multiareolata
   (E.Y.Dawson) P.V.Heath, 1992
    Cpc. mezcalaensis v. 
multiareolata
   E.Y.Dawson. 1948
    Cpc. mezcalaensis v. rocustus
   E.Y.Dawson. 1948
    Cpc. multiareolatus 
(E.Y.Dawson)
   H.J.Tapia & S.Arias, 2017

    Nbx. 
mezcalaensis v. multiareolata
   (E.Y.Dawson) E.Y.Dawson, 1952
    Nbx. 
mezcalaensis v. rocusta
   (E.Y.Dawson) Backeb., 1951
    Nbx. multiareolata
   (E.Y.Dawson) Bravo, 1972

⑦Cpc. novus
   (P.V.Heath) M.H.J. van der, 2022

Homotypic Synonyms
    Car. nova P.V.Heath, 1992

Heterotypic Synonyms
    Car. laui P.V.Heath, 1992
    Cpc. sanchezmejoradae
   (A.B.Lau) 
H.J.Tapia & S.Arias, 2017
    Nbx. laui (P.V.Heath) D.R.Hunt, 1997
          not validly publ.
    Nbx. 
sanchezmejoradae A.B.Laui, 1994

⑧Cpc. nudus E.Y.Dawson, 1948
Homotypic Synonyms
    Car. tetetzo v. nuda
   (E.Y.Dawson) P.V.Heath, 1992
    Cpc. tetetzo v. nudus
   (E.Y.Dawson) E.Y.Dawson, 1952
    Nbx. tetetzo v. nuda
   (E.Y.Dawson) E.Y.Dawson, 1952

Heterotypic Synonyms
    Car. squamulosa
   (Scheinvar & Sanchez-Mej.)
   P.V.Heath, 1992
    Nbx. 
squamulosa
   Scheinvar & Sanchez-Mej., 1990


⑨Cpc. parvispinus S.Arias,
   H.J.Tapia & U.Guzman, 2019


⑩Cpc. polyophus
   (DC.) Britton & Rose, 1909

Homotypic Synonyms
    Car. polyopha (DC.) D.R.Hunt, 1988
    Car. polyopha (DC.) P.V.Heath, 1992
    Cer. polyophus DC., 1828
    Nbx. polyopha (DC.) Backeb., 1938
    Pi. polyophus (DC.) Salm-Dyck, 1845

240421004031041~2
Cephalocereus polyophus

⑪Cpc. scoparius
   (Poselg.)Britton & Rose, 1909

Homotypic Synonyms
    Car. scoparia (Poselg.) P.V.Heath, 1992
    Cer. scoparius (Poselg.) A.Berger, 1905
    Nbx. scoparia 
(Poselg.) Backeb., 1941
    Pi. scoparius 
Poselg., 1853

Heterotypic Synonyms
    L. setispinus E.Y.Dawson, 1948
    Pi. sterkmanii  K.Schum, 1897


⑫Cpc. senilis (Haw.) K.Schum., 1894
Homotypic Synonyms
    Cac. senilis Haw., 1824
    Cpp. senilis (Haw.) Lem., 1838
    Cer. senilis
   (Haw.) Salm-Dyck ex. DC., 1828
    Ec. senilis (Haw.) Beaton, 1839
    Eu. senilis (Haw.) Kreuz., 1941
    Pi. senilis (Haw.) Lem., 1839

Heterotypic Synonyms
    Cac. bradypus Lehm., 1826
    Cpc. senilis f. cristatus
   (Mathsson) P.V.Heath, 1992
    Cpc. senilis f. fasciatus
   P.V.Heath, 1992
    Cer. bradypus (Lehm.) Steud., 1840
    Ec. staplesiae Tate, 1840
    Mel. bradypus Lehm. ex Steud., 1841
           not validly publ.
    Pi. senilis crirtatus Mathsson, 1891
    Pi. williamsii
   Scheidw. ex C.F.Forst., 1846
            not validly publ.

⑬Cpc. tetetzo
   (F.A.C.Weber ex J.M.Coult.)
   Diguet, 1928

Homotypic Synonyms
    Car. tetetzo
   (F.A.C.Weber ex J.M.Coult.)
   P.V.Heath, 1992
    Cer. tetetzo
   F.A.C.Weber ex J.M.Coult., 1896
    Nbx. tetetzo
   (
F.A.C.Weber ex J.M.Coult.)
   Backeb., 1938
    Pa. tetetzo
   (
F.A.C.Weber ex J.M.Coult.)
   Ochot, 1922
    Pi. tetetzo
   (
F.A.C.Weber ex J.M.Coult.)
   F.A.C.Weber ex K.Schum.. 1897

Heterotypic Synonyms
    Pi. tetetzo v. cristata
   F.A.C.Weber, 1897

最後に
さて、ケファロケレウス属の近年の話題としては、まず2019年に新種Cephalocereus parvispinusが発見されたことが挙げられます。また、Carnegiea、あるいはNeobuxbaumiaとされてきた柱サボテンが2022年にケファロケレウス属に移されCephalocereus novusとされました。ちなみに、CephalocereusではなくCephalophorusと言う属名がありますが、一見して似ていますから、ご注意下さい。
ケファロケレウス属はそのほとんどが始めからケファロケレウス属でしたが、ケファロケレウスからの分離が提案されたものの、現在は認められていない属もあります。1838年に命名されたCephalophorus Lem.、1938年に命名されたNeobuxbaumia Backeb.、1949年に命名されたHaseltonia Backeb.、同じくNeodawsonia Backeb.、1960年に命名されたRooksbya (Backeb.) Backeb.、1961年に命名されたPseudomitrocereus Bravo & Buxb.あたりですね。また、Pilocereus Lem.はケファロケレウス属が命名された翌年に命名されていますから、これはケファロケレウス属からの分離ではなく、重複した命名かも知れません。



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ここ数年、コピアポアが人気なようでよく目にします。多肉植物のイベントではサボテンはすっかり日陰者であまり見かけませんが、必ずといっていいほどコピアポアはあったりします。さて、そんなコピアポアですが、分類学上の立ち位置は長らく不明でした。しかし、近年では遺伝子解析により大まかな立ち位置は判明しています。さて、そんなコピアポアですが、属内の分類はどうなっているのでしょうか? 本日はIsabel Larridonらの2015年の論文、『An integrative approach to understanding the evolution and diversity of Copiapoa (Cactaceae), a threatened endemic Chilean genus from the Atacama Desert』をご紹介しましょう。

コピアポアの履歴
Copiapoaは32種類と5亜種が含まれています(2015年時点)。30種類は4つの節(Section)と2つの亜節(Subsection)に分類されますが、2種類は未分類のままです。
さて、Copiapoaは1922年にBritton & Roseにより定義されました。つまり、球形または短い円筒形のトゲのあるサボテンで、昼行性の黄色い花を咲かせます。この時に、新属には6種類が含まれ、そのうち5種類はEchinocactusに分類されていた種でした。
1930年代から1980年代にかけて、Backeberg(1966)やRitter(1980)などの著者により新種が記載され、合計46種に達しました。しかし、それ以降の著者の多くは、種数の削減を提案しました。
これまでに発表された分類学的提案と種は、形態学的類似性に基づいています。ただし、サボテン科は重大な同型形質(Homoplasy)があるため問題があります。


240411013440009~2
Copiapoa cinerea

分子系統
遺伝子解析による分子系統では、大き4つに分けられます。Copiapoa属は全体としてはまとまりのあるグループで、単系統でした。分子系統と過去の分類の適合性が低いため、コピアポア属の分類を改訂する必要があります。
分子系統の根元にあるClade PilocopiapoaはC. solarisからなりますが、正式に記載されていないC. australisが近縁です。C. australisはC. humilisの最南端に生えるグループと考えられてきました。次にC. lauiが分岐します。C. lauiはC. hypogaeaの亜種とされることもありますが、C. hypogaeaはClade Copiapoaに含まれ、C. lauiとは近縁ではありません。次に分岐したのはClade Mammillopoaで、C. humilisからなります。論文では亜種humilis、亜種tenuissima、亜種tocopillana、亜種variispinataがまとまりのあるグループであることが分かりました。Clade EchinopoaはC. armata(=C. coquimbana var. armata)とC. fiedlerianaのグループと、C. coquimbanaとC. dealbashi、C. echinoidesを含むグループからなります。
また、コピアポア属のほとんどの種類はClade IIIに含まれます。Clade IIIは2つに分割できます。園芸的に有名なC. cinerea(黒王丸)はCinereiに含まれます。


                  ┏IIIb, Copiapoa
              ┏┫ 
              ┃┗IIIa, Cinerei
          ┏┫
          ┃┗━IV, Echinopoa
      ┏┫
      ┃┗━━II, Mammillopoa
  ┏┫
  ┃┗━━━C. laui
  ┫
  ┗━━━━I, Pilocopiapoa

240411013449850~2
Copiapoa coquimbana

Clade III
Clade IIIはC. longispinaとC. megarhiza以外はコピアポ渓谷の北に分布し、Clade IVはコピアポ渓谷の南に分布します。コピアポ渓谷は地理的な遺伝子流動の障壁として働いています。
Clade IIIaはHuntら(2006)の分類によると、C. cinereaとC. krainzianaが含まれ、C. giganteaはC. cinerea subsp. haseltonianaとしました。しかし、分子系統ではC. 
krainzianaはC. cinereaの中に含まれ、C. giganteaはC. cinereaと区別されます。
Clade IIIbは、まずC. longispina、C. megarhiza、C. conglomerateが分岐し、C. longistaminea〜C. derertorumのグループと、C. taltalensis〜*の2つのグループに分岐しました。*は、C. mollicula〜C. esmeraldianaのグループとC. grandiflora〜C. parvulaのグループに分岐しています。

  ┏━━━━━━C. longispina
  ┃
  ┫┏━━━━━C. megarhiza
  ┗┫
      ┃┏━━━━C. conglomerate
      ┗┫
          ┃    ┏━━C. longistaminea
          ┃┏┫
          ┃┃┃┏━C. rupestris
          ┃┃┗┫
          ┃┃    ┃┏C. aphanes
          ┃┃    ┗┫
          ┃┃        ┗C. desertorum
          ┗┫
              ┃┏━━C. taltalensis
              ┗┫
                  ┣━━C. serpentisulcata
                  ┃
                  ┣━━C. decorticans
                  ┃
                  ┃┏━C. cineraescens
                  ┗┫
                      ┗━*

     ┏━━━C. mollicula
 ┏┫
 ┃┃┏━━C. angustifolia
 ┃┗┫
 ┃    ┗━━C. esmeraldiana
*┫ 
 ┃┏━━━C. grandiflora
 ┗┫ 
     ┃┏━━C. montana
     ┃┃
     ┃┣━━C. calderana
     ┃┃
     ┃┣━━C. marginata
     ┗┫
         ┃┏━C. hypogaea
         ┗┫
             ┃┏C. atacamensis
             ┗┫
                 ┣C. leonensis
                 ┃ 
                 ┗C. parvula

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
コピアポア属内は分類は割と上手く出来ているようです。意外と重要なのが分類と地理的分布の関係で、論文では地理的な拡散と分類の関係を考察しています。それによると、コピアポア属の起源はペルー南部とチリの極北の間にあるとしています。また、コピアポア属は、外見的に類似しているからと言って必ずしも近縁であるとは限らず、生息環境に対する適応の結果として相似しているだけだと述べられていました。
このように、様々な角度からコピアポアが解析されましたが、まだ解明されていない謎も多いでしょう。そうであるならば、コピアポア研究はまだまだ続くはずです。その時にはまた論文をご紹介出来ればと考えております。


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過去のサボテンの遺伝子解析の結果をまとめたPablo C. Guerreroらの2018年の論文、『Phylogenetic Relationship and Evolutionary Trends in the Cactus Family』を参照として、サボテン科植物の系統関係を見ています。本日で最後になります。

サボテン科の進化と分子系統①
サボテン科の進化と分子系統②

Core Cactoideae II
Core Cactoideae IIの分子系統を以下に示します。詳細を見てみましょう。

        ┏━Pachycerinae
    ┏┫
    ┃┃┏Stenocerinae
┏┫┗┫
┃┃    ┗Echinocereus
┃┃
┃┣━━Leptocereusなど
┃┃
┃┗━━Hylocereeae
┫ 
┣━━━Coryocactus

┣━━━Eulychnia, Austrocactus
┃    
┗━━━Pfeiffera

240330082045256~2
Nyctocereus serpentinus(左)
Stenocereus dumortieri(右上)
Eulychnia iquiquensis


パキケレウスの仲間
Pachycerinaeはパキケレウスの仲間です。ここでは、PachycereusとStenocereus、Echinocereusを分けていますが、これらはすべてPachycereenaeとしてまとめられていたりします。ここでは、Salvador Ariasらの2005年の論文を参考に見ていきます。論文ではPachycereinaeとEchinocereeae + Stenocereinaeと言う2つのグループに大別しています。まずはPachycereinaeの分子系統を示します。AはPachycereusとCarnegiaeからなります。BはLophocereusとMarshallocereus、Pterocereusからなります。CはPeniocereus、DはNyctocereus、EはCephalocereusとNeobuxbaumia、FはLemaireocereusからなります。

                  ┏A
              ┏┫ 
              ┃┗B
          ┏┫
          ┃┗━C
      ┏┫
      ┃┗━━D
  ┏┫
  ┃┗━━━E
  ┫
  ┗━━━━F


240330081847811~2
Pachycereus militaris
Pachycereus chrysomallusとして記載。

240330081934192~2
Peniocereus greggi

240330081841864~2
Cephalocereus macrocephalus

エキノケレウスの仲間
次にEchinocereeae + Stenocereinaeを見てみます。同じくSalvador Ariasらの2005年の論文を参考に見ていきます。論文ではEchinocereus + Stenocereus + Myrtillcactusが、Pachycereusの姉妹群となっています。

   ┏━━Pachycereus
  ┏┫
  ┃┃┏━Echinocereus
  ┃┗┫
  ┫    ┃┏Stenocereus
  ┃    ┗┫
  ┃        ┗Myrtillocactus
  ┃
  ┗━━━Pseudoacanthocereus

240330082138987~2
Myrtillocactus

240330081903838~2
Echinocereus poselgeri
Wilcoxia poselgeriとして記載。


レプトケレウスの仲間
Core Cactoideae IIの分子系統では、「Leptocereusなど」と書きましたが、論文ではLeptocereus、Dendrocereus、Armatocereus、Neoraimondia、Pseudoacanthocereusと書かれていました。さて、Salvador Ariasらの2005年の論文では、Pseudoacanthocereusはパキケレウスやエキノケレウスの姉妹群で、LeptocereusとArmatocereus、Neoraimondiaは1つのグループで、Pseudoacanthocereusに近い仲間です。

ヒロケレウスの仲間
Hylocereeaeは論文ではHylocereus、Selenicereus、Acanthocereus、Disocactusが含まれています。さて、ここでもSalvador Ariasらの2005年の論文を見ていきます。分子系統を見ると、不思議なことにAcanthocereusとPeniocereusが入り乱れています。ちなみに、Acanthocereus①には2種類、Acanthocereus②には3種類、Peniocereus①には10種類、Acanthocereus②には1種類を含みます。実はPeniocereusは上の「パキケレウスの仲間」でも登場しています。パキケレウスの近縁のPeniocereusは2系統あり、1つは分子系統のCにあたるものでこれが正統なPeniocereusです。もう1つは分子系統のDにあたるもので、現在はNyctocereusとなっています。さて、肝心の「ヒロケレウスの仲間」に現れたPeniocereusですが、これは「パキケレウスの仲間」のPeniocereusとは遺伝的に異なるため、Peniocereusから分離されます。さらに、Acanthocereusとも遺伝的に区別出来ないため、Peniocereus①とPeniocereus②はAcanthocereusに吸収されました。また、分子系統ではSelenicereusとHylocereusは非常に近縁ですが、現在HylocereusはSelenicereusに統合されています。

          ┏━Acanthocereus①
      ┏┫
      ┃┗━Peniocereus①
  ┏┫
  ┃┃┏━Acanthocereus②
  ┃┗┫
  ┃    ┗━Peniocereus②
  ┫
  ┃┏━━Disocactus
  ┗┫
      ┃┏━Weberocereus
      ┗┫
          ┃┏Selenicereus
          ┗┫
              ┗Hylocereus

240330082109669~3
Acanthocereus tetragona

240330082116171~2
Disocactus speciosus(上、下)
Heliocereus speciosa、Heliocereus elegantissimusとして記載。
Harrisia portoricensis(中)


240330082145560~2
Selenicereus ocamponis
=Hylocereus ocampoins


最後に
3回に分けて記事にしてきました。元の論文の分子系統はかなり大雑把なので、ある程度は補完する情報を追加しました。しかし、流石に種まで書き込むことはできなかったので、属レベルで表記させていただきました。
本日の記事なのですが、実はトラブルがありました。属名が変更されたりすることはよくあることですから、事前にある程度は下調べをします。私は主にキュー王立植物園のデータベースを参照とするのですが、今回はそれが出来ていません。と言うのも、この記事を書いているのは昨日なのですが、昨日はキュー王立植物園にアクセス出来ませんでした。どうやら、サーバーが落ちているようです。仕方がないので、信頼性は落ちますが、GBIF(地球規模生物多様性情報機構)で学名を確認しました。しかし、GBIFは情報が古かったりしますから、本当は使いたくなかったのですけどね。後ほど訂正するかも知れませんが、ご容赦のほどお願いします。
ところで、未だスッキリしない部分やあやふやな部分もそれなりにあります。そもそも、私が調査した論文のチョイスがどれほど妥当であったかは分かりません。本来ならば、複数の論文の情報を総合的に判断すべきなのでしょう。しかし、そこはただのドシロウトの悲しいところで、時間も知識も能力も足りていないため、なかなか難しいところです。それでも、また内容を補完するような、あるいは新しい論文が見つかりましたら、懲りずにまたご紹介出来ればと考えております。


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過去のサボテンの遺伝子解析の結果をまとめたPablo C. Guerreroらの2018年の論文、『Phylogenetic Relationship and Evolutionary Trends in the Cactus Family』を参照として、サボテン科植物の系統関係を見ています。昨日は原始的なサボテンであるコノハサボテンやウチワサボテン、マイフエニアに加え、玉サボテンや柱サボテンを含むサボテン亜科の一部の系統関係をご紹介しました。本日はサボテン亜科の残り、Core Cactoideaeについて解説します。

サボテン科の進化と分子系統①は以下のリンクから。

                     ┏━━Core Cactoideae
                     ┃
                 ┏┫┏━Cacteae
                 ┃┗┫
                 ┃    ┃┏Aztekium
           ┃    ┗┫
             ┏┫        ┗Geohintonia
       ┃┃
             ┃┗━━━Blossfeldia
         ┏┫
         ┃┗━━━━Maihuenioideae
     ┏┫ 
     ┃┗━━━━━Opuntioideae
 ┏┫
 ┃┗━━━━━━Pereskioideae
 ┫
 ┗━━━━━━━Leunenbergerioideae


Core Cactoideae
Core CactoideaeはCore Cactoideae IとCore Cactoideae II、さらにCopiapoaやFraileaからなります。しかし、分子系統を見ると分岐していません。これは、上手く分離出来ていないためです。そのため、Core Cactoideae I・IIとCopiapoa、Calymmanthium、Fraileaの関係性はよく分かりません。しかし、おおよその立ち位置としては、おそらくこのあたりなのでしょう。
さて、ではCore Cactoideaeの内容を見てみましょう。

    ┏━━Core Cactoideae I
┏┫
┃┗━━Core Cactoideae II
┫ 
┣━━━Copiapoa

┣━━━Calymmanthium
┃    
┗━━━Frailea
 
Core Cactoideae I
Core Cactoideae Iは、Rhipsalidae、Core Notocacteae、BCT cladeからなります。BCT cladeとはCereeaeやTrichocereeaeからなる巨大なグループです。

      ┏━━BCT clade
  ┏┫
  ┃┗━━Core Notocacteae
  ┫
  ┗━━━Rhipsalidae

リプサリスの仲間
Rhipsalidaeは森林サボテンの仲間ですが、岩や樹木に着生するものがあります。Rhipsalidaeには、RhipsalisやLepismium、Hatiora、Schlumbergera、Rhipsalidopsisが含まれます。

230911215654071~2
Hatiola

230911221604543~2
Rhipsalis

230911220651285~2
Lepismium

ノトカクタスの仲間
Core NotocacteaeはParodiaやEriosyceの仲間です。 NotocacteaeはParodia、Eriosyce、Neowerdermannia、Yaviaからなります。
YaviaはY. cryptocarpaからなる2001年に記載された単形属ですが、Blossfeldiaとされたこともあります。
ParodiaやEriosyceは、まとめられる傾向があり、沢山の属が吸収合併されました。NotocactusやEriocactus、Brasilcactus、Malacocarpus、WigginsiaはすべてParodiaに吸収されてしまいました。また、NeoporteriaやNeochilenia、Islaya、Horridocactusは、すべてEriosyceに吸収されてしまいました。

トリコケレウスの仲間
BCT cladeは、Reto Nyffelerの2002年の論文やRolando T. Barcenasらの2011年の論文を見ると、主に柱サボテンからなるグループです。UebelmanniaやCereus、BrowningiaなどからなるCereeaeと、EchinopsisやHarrisia、Oreocereus、Matucana、GymnocalyciumなどからなるTrichocereeaeからなります。近年にその特徴の共通点からTrichocereusやLobiviaがEchinopsisに吸収され、Echinopsisは巨大化しました。しかし、Boris O. Schlumpberger & Susanna S. Reinnerの2012年の論文では、遺伝的にEchinopsisがTrichocereeaeの柱サボテンの中のあちこちに現れることを明らかにしました。つまり、巨大化したEchinopsisはまとまりがないグループだったのです。現在、このあたりは整理中といった雰囲気がありますが、多少は改訂されているようです。この論文では大きく4つに分けられています。
1つ目のグループはReicheocereusで、かつてはEchinopsisやLobiviaとされてきました。2つ目のグループは狭義のEchinopsisを含みます。Echinopsis、Cleistocereus、Harrisia、Leucosteleなどからなります。3つ目のグループはOreocereus、Mila、Oroya、Haageocereus、Rauhocereus、Matucana、Espostoa、Loxanthocereus、Borzicactusなどからなります。このグループはやや混乱しており、将来的に改訂される可能性もあります。4つ目のグループは旧Echinopsisですが、かつてのTrichocereusやLobiviaからなるグループです。Denmoza、Acanthocalycium、Trichocereus、Chamaecereus、Soehrensia、Lobiviaなどからなります。

230911222043822~2
Arrojadoa(右上)、Borzicactus(右下)、Stenocereus(左)

ケレウスの仲間
BCT cladeのCereeaeは基本的には柱サボテンです。2011年のRolando T. Barcenasの論文では、CereusとMicrothocereusは近縁ですが、Pilosocereus、Coleophalocereus、Uebermannia、Browningia、Stetosoniaは上手く互いの系統関係を解析出来ていません。CereinaeとRebutiinaeに分ける場合、RebutiaやGymnocalycium、Uebelmannia、Aylostera、Browningia、Stetosonia、WeingartiaなどはRebutiinaeに含まれるようです。この場合のCereinaeはCereusやMelocactus、Arrojadoa、Cipocereus、Pilosocereus、Leocereus、Coleocephalocereus、Micranthocereusなどからなります。ここで、Mariana R. Fantinatiらの2021年の論文を見てみましょう。この論文の分子系統を以下に示します。若干、解析が甘い部分もありますが、大まかな傾向は分かります。ただ、この論文ではRebutiinaeはUebelmannia以外は含まれていません。Gymnocalyciumなどは、TrichocereenaeとされたりRebutiinaeとされたり論文により立ち位置が違います。

                      ┏
Arrojadoa
                  ┏┫
                  ┃┗━
Stephanocereus
                  ┃                  
                  ┃┏━Melocactus
                  ┣┫
                  ┃┗━Discocactus
              ┏┫
              ┃┃┏━Pilosocereus
              ┃┣┫
              ┃┃┗━Coleocephalocereus
              ┃┃
              ┃┗━━Microthocereus1
              ┃
          ┏┫┏━━Microthocereus2
          ┃┗┫
          ┃    ┗━━Xiquexique
          ┃
          ┃    ┏━━Cipocereus
      ┏┫┏┫
      ┃┃┃┗━━Mirabella
  ┏┫┗┫
  ┃┃    ┗━━━Cereus
  ┃┃
  ┃┃┏━━━━Brasilicereus
  ┃┗┫
  ┃    ┗━━━━Leocereus
  ┫
  ┗━━━━━━Uebelmannia


230911214051537~2
Coleocephalocereus

230911214539161~2
Pilosocereus

レブチアの仲間
ここまで登場しなかったRebutiaやGymnocalycium、つまりRebutiinaeを見ていきます。RebutiinaeはRebutiaやGymnocalycium、Uebelmannia、Aylostera、Browningia、Stetosonia、Weingartiaなどからなるとされています。ここでは、Stefano Mostiらの2011年の論文を参加に見ていきます。見てお分かりのように、ケレウスの仲間が2つに分かれていたりさしますから、やや不確実かも知れません。しかし、そもそもこの論文は、Rebutiaを解析することを目的としていますから、まずはその点を見てみます。さて、この論文では、Rebutiaは2つに分けられるとしています。Rebutia①ではWeingartiaやSulcorebutia、Cintiaと入り乱れており、これらを区別することが出来ません。ですから、現在ではWeingartiaやSulcorebutia、CintiaはRebutiaに統合されました。また、Rebutia②は明らかにRebutia①と近縁ではありません。これは、Rebutiaに吸収されていたAylosteraで、現在ではRebutiaから分離されています。
さて、やや不確実な解析結果ではありますが、大まかな傾向は分かります。GymnocalyciumやAylosteraはトリコケレウスやケレウスの仲間と近縁であると言うことです。また、RebutiaとBrowningiaは姉妹群のようです。


          ┏━━Rebutia①
      ┏┫
      ┃┗━━Browningia
      ┃
  ┏┫        ┏Rebutia②
  ┃┃    ┏┫
  ┃┃    ┃┗Cereeae①
  ┃┃┏┫
  ┫┃┃┗━Gymnocalycium
  ┃┗┫
  ┃    ┗━━Trichocereeae
  ┃
  ┗━━━━Cereeae②

最後に
本日はサボテン亜科のCore Cactoideae Iをご紹介しました。Core Cactoideae Iは多くの柱サボテンを含む巨大なグループです。完全に解明されたわけではありませんが、大まかな分類は分かります。思うに、かつては形態学的な類似のみが分類の指標でした。そのため、外見的に共通点があるエキノプシスやトリコケレウス、ロビビアなどが統合されたこともあります。しかし、遺伝子工学の発達により、現在では遺伝子解析による分類が当たり前のように行われ認められております。そのため、巨大化したエキノプシスは解体されることになりました。

さて、明日はCore Cactoideae IIをご紹介します。これで、サボテン科の分類は最後です。PachycereusやHylocereusが登場します。


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サボテンはサボテン科(Cactaceae)に分類されますが、大変種類が多く非常に多様です。樹木状のサボテンに見えないサボテンであるPereskiaなどは原始的な特徴を残しているのだろうと何となく予想しますが、柱サボテンや玉サボテンの関係などはまったく分かりません。現在、サボテンの分類はどうなっているのでしょうか。ここでは、過去のサボテンの遺伝子解析の結果をまとめたPablo C. Guerreroらの2018年の論文、『Phylogenetic Relationship and Evolutionary Trends in the Cactus Family』を参照として見ていきます。ただし、大まかな分類が示されているだけなので、詳細は随時私の知っている論文から情報を追加しました。

分子系統
以下に示す分子系統を見てみます。一番根元にあるのは樹木状サボテンです。そこからOpuntioideae、(ウチワサボテン亜科)、Maihuenioideae(マイフエニア亜科)が順次分岐しました。オプンチア亜科とマイフエニア亜科以外は、Cactoideae(サボテン亜科)です。サボテン亜科は柱サボテンや玉サボテン、リプサリスやクジャクサボテンまで含む巨大なグループです。
さらにサボテン亜科は、Aztekium + Geohintonia + CacteaeとCore Cactoideaeに分かれます。ここからは、それぞれについて見てみましょう。

                     ┏━
Core Cactoideae
                     ┃
                 ┏┫┏━Cacteae
                 ┃┗┫
                 ┃    ┃┏Aztekium
           ┃    ┗┫
             ┏┫        ┗Geohintonia
       ┃┃
             ┃┗━━━Blossfeldia
         ┏┫

         ┃┗━━━━Maihuenioideae
     ┏┫ 
     ┃┗━━━━━Opuntioideae
 ┏┫
 ┃┗━━━━━━Pereskioideae
 ┫
 ┗━━━━━━Leuenbergerioideae 

樹木状サボテン(コノハサボテン)
樹木状サボテンは一般的にPereskiaとされてきましたが、Leuenbergeriaが分離されました。2属で1つのグループを形成しているのではなく、それぞれ単独のグループを形成します。それぞれ、Leuenbergerioideae(レウエンベルゲリア亜科)と、Pereskioideae(コノハサボテン亜科)に大別されます。
Joel Lodeの2019年の論文では、そのあたりについてよくまとめられています。Leuenbergeriaは茎気孔が発達せず比較的急速に樹皮を形成しますが、Pereskiaは茎気孔が発達し樹皮形成は緩やかです。Pereskiaは茎で光合成をして茎から二酸化炭素を取り込んでいるわけですから、サボテン科の多肉植物化の始まりが示されていると言えます。分布も異なりLeuenbergeriaはメキシコ以北、Pereskiaは南米原産です。
また、コノハサボテン亜科はPereskiaからRhodocactusに4種類が移されました。


231018043113470~2
Leuenbergeria zinniiflora

Opuntioideae
いわゆるウチワサボテンの仲間ですが、Cylindropuntieae、Opuntieae、Tephrocacteaeからなります。ウチワサボテンは分布が近い種類同士で自然交雑しており、絡まり合うように遺伝子が混ざっています。Xochitl Granados-Aguilarらの2021年の論文では、ウチワサボテンは複雑に絡み合うように交雑している網状進化の様子が示されています。ウチワサボテンの種類の多さや分布の広さ、その多様性は盛んにおきている自然交雑によるものなのかも知れません。CylinderopuntieaeにはPereskiopsisのような大きな葉を持つ古いタイプのサボテンを含みます。
Opuntieaeはウチワサボテンの中でもっとも多様で広範囲に分布するグループです。約230種類のうち、約200種類からなるOpuntia属は、カナダからアルゼンチンまで分布します。OpuntieaeにはTacingaやConsolea、Salmonopuntia、Miqueliopuntia、Brasiliopuntiaを含みます。
Cylindropuntieaeは約70種類からなり、一般的に「chollas」と呼ばれる仲間です。このグループは、Cylindropuntia、Corynopuntia、Grusonia、Micropuntia、Pereskiopsis、Quiabentiaからなります。PereskiopsisやQuiabentiaは葉が多いサボテンです。
TephrocacteaeはTephrocactusやAustrocylindropuntia、Cumulopuntia、Maihueniopsis、Peterocactus、Punotiaからなります。

240202231910199~2
Cylindropuntia fulgida

Maihuenioideae
マイフエニア亜科はチリ、アルゼンチンの寒冷で半乾燥したパタゴニアに生える低木で、2種類が知られています。MaihueniaはC3植物であり、気孔はアレオーレに限定されるなど、サボテンの典型的な特徴を持ちません。

Cacteae
論文ではCacteaeは以下の分子系統のように分類されています。アストロフィツムとエキノカクタスは非常に近縁で、フェロカクタスも近いですね。マミラリア類(Mammilloyd)とラピカクタス、ツルビニカルプス、エピテランサは近縁です。Cacteaeは、Aztekium + Geohintoniaと姉妹群です。

              ┏━Mammilloyd
          ┏┫
          ┃┗━Rapicactus
          ┃
      ┏┫┏━Turbinicarpus
      ┃┗┫
      ┃    ┗━Epithelantha
  ┏┫ 
  ┃┗━━━Ferocactus
  ┫
  ┗━━━━Astrophytum,
                      Echinocactus
                     
さて、まずはAstrophytumからFerocactusあたりを見ていきます。これは、Mario Daniel Vargas-Lunaらの2018年の論文を参照しましょう。やはりここでも、AstrophytumとEchinocactusは近縁です。ただし、Echinocactusは分割されHomalocephalaが復活しています。さらに、金鯱(E. grusonii)はKroenleinia属として独立しましたが、遺伝的にはFerocactusに含まれます。ちなみに、GlandulicactusはFerocactusへ、EchinomastusはSclerocactusに分類されているようです。

次にフェロカクタスとマミラリア類をつなぐグループを見ていきます。このグループは、Rolando T. Barcenasらの2011年の論文を参照とします。TurbinicarpusはAriocarpusと非常に近縁で、Strombocactusも近縁です。さらに、EpithelanthaとThelocactusは近縁です。他にも、RapicactusやPediocactus、Lophophoraも近縁です。

次にマミラリア類を見ていきます。このグループは、Cristian R. Cervantesらの2021年の論文を参照とします。マミラリアの仲間はMammillaria、Ortegocactus、Neolloydia、Coryphantha、Escobaria、Pelecyphora、Encephalocarpusあたりが含まれます。しかし、マミラリア属は再編され大きく変わりました。実は遺伝的に見るとこれらの属は種類により入れ子状となっており、属ごとにまとまっていません。ですから、改めて近縁なグループごとに分ける必要があったのです。
Coryphanthaは分割され一部はPelecyphoraに吸収されました。EscobariaやEncephalocarpusは消滅し、やはりPelecyphoraに吸収されました。本来のMammillaria属とPelecyphora属をつなぐグループはCochemieaとしてまとめられました。Cochemieaは、Mammillariaの一部とOrtegocactus、Neolloydiaを含みます。
現在ではEncephalocarpus strobiliformis(松毬玉)はPelecyphora strobiliformisへ、Ortegocactus
macdougalliiはCochemiea macdougalliiとなっています。ちなみに、一部のCoryphanthaがPelecyphoraになりましたが、C. viviparaやC. hesteriなどのEscobariaとされることもあった微妙なラインのものです。

また、いくつかの論文を見たところ、LeuchtenbergiaやSclerocactusはおそらくCacteaeですが、立ち位置は論文によりやや違いがあります。


最後に
まだ途中ですが、記事が長くなったので本日はここまでとしましょう。と言うわけで、明日に続きます。
しかし、球状のサボテンではBlossferdiaが原始的な位置にあったことに驚きました。また、マミラリアの仲間はかなり改訂が進んでいます。今後はEchinocactusやFerocactusの改訂があるかも知れません。このように、サボテンもその分類は急速に整理されつつあります。それは、ここ20年くらいの遺伝子工学の発展によるものです。とはいえ、まだすべてが解析されたわけではありませんから、まだ分からない部分もあります。しかし、それも時間の問題でしょう。これからは、サボテンの名前は大幅な改訂を受けるはずです。長い間親しんだ名前は変わってしまい、属レベルですら消滅を免れないでしょう。



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日本では「菊水」の名前でお馴染みのStrombocactus disciformisは渋いサボテンですが、今でも人気種です。今ではすっかり普及種となっていますから、育てておられる方も多いでしょう。
このS. disciformisの由来は古く、はじめて命名されたのは1828年のことで、Mammillaria disciformisと命名されましたが、1922年にストロンボカクタスになりました。1924年にはStrombocactus turbiniformis、1996年にはStrombocactus jarmilaeが命名されましたが、現在はS. disciformisの同種とされています。さらに、1996年にはStrombocactus pulcherrimusが命名されましたが、現在はS. disciformisの亜種であるsubsp. esperanzaeとされています。このように、ストロンボカクタスの新種は記載されるものの、異名扱いかせいぜい亜種とされてきました。ところが、2010年に待望の新種であるStrombocactus corregidoraeが記載されました。明らかに菊水とは別種でしたから、実に182年ぶりの新種でした。
さて、本日はこの新種のストロンボカクタスについての話です。参照とするのは、Rolando T. Barcenasらの2021年の論文、『Chichimecactus (Cactoideae, Cactaceae), a new genus based on molecular characterisation of highly endangered Strombocactus species』です。

分子系統
論文の分子系統を見てみましょう。
まず驚くのは、ツルビニカルプスが2つに分かれることです。よく見たらTurbinicarpus②は、RapicactusとされるT. beguinii、T. subterraneus、T. mandragoraの3種でした。本来のツルビニカルプスはTurbinicarpus①ですね。
次に、アリオカルプスとツルビニカルプスは近縁で、S. disciformisその2属と近縁でした。ちなみに、ssp. disciformisとssp. esperanzaeは遺伝的にはきれいに分離されています。本題のS. 
corregidoraeは、興味深いことにS. disciformisと近縁ではあるものの、思ったより距離があり、同属とするのは困難に見えます。

                      ┏Ariocarpus
                  ┏
      ┃┗Turbinicarpus①
              ┏┫
              ┃┗━Strombocactus
              ┃            disciformis
          ┏┫
          ┃┗━━Strombocactus
          ┃                corregidorae
          ┃
      ┏┫┏━━Epithelantha
      ┃┗┫
      ┃    ┗━━Thelocactus
  ┏┫ 
  ┃┗━━━━Lophophora
  ┫                   
  ┗━━━━━Turbinicarpus②

特徴
Strombocactus corregidoraeは、S. disciformisより長く(18〜21cm)、幅があり(8〜13cm)、やや縦長になります。以下に①S. corregidorae、②亜種disciformis、③亜種esperanzaeで、それぞれの特徴を示します。

        ①   ②    ③

最大サイズ(cm) 
21×13 12×9   4.5×3.5
トゲ      持続的 脱落   脱落
トゲの数                 3~5        1~5       1~2

トゲの長さ(cm) 1.8~3.5  1.5     0.8~1.1
種阜       無           有          有


以上のようにS. corregidoraeの特徴はまとめられます。特に脱落しにくいトゲや、種阜がないことはS. disciformisと比較した時に特徴的です。種阜(strophile)とはエライオソームの1種で、種子に栄養分がついており、アリは種阜目当てで種子を運搬します。

良い図版がなかったので、原産地の画像のリンクを貼っておきます。

Strombocactus disciformis ssp. disciformis

https://www.inaturalist.org/photos/349020628

Strombocactus disciformis ssp. esperanzae
https://www.inaturalist.org/photos/59472790

Chichimecactus corregidorae
https://www.inaturalist.org/photos/334800540
円筒形に育つ様子
https://www.inaturalist.org/photos/275414627

新属の提案
著者らは、米国南西部からメキシコ北部の乾燥地に住んでいたChichimeca族にちなみ、新属Chichimecactusを提案しました。そして、Strombocactus corregidoraeをChichimecactus corregidoraeとして配置しました。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
著者らは新属
Chichimecactusを提案しましたが、これは現在学術的に認められています。つまり、Strombocactus corregidoraeは正式にストロンボカクタスから分離されました。この論文は2021年の掲載ですから、実に最近のことでした。
さて、華々しく新属が記載されましたが、ストロンボカクタス待望の新種は幻に終わりました。結局、ストロンボカクタスは1属1種のままです。いつか、菊水以外のストロンボカクタスも発見される時が来るのでしょうか?


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2014年に金鯱(Echinocactus grusonii)がエキノカクタスから独立し、新属であるKroenleinia属に分類されました。つまり、Kroenleinia grusoniiです。しかし、2018年に行われたホマロケファラとエキノカクタス、フェロカクタスの遺伝的解析の結果では意外な事実が明らかとなっています。当該論文である2018年のMario Daniel vargas-Lunaらの『Homalocephala as a distinct genus in the Cacteae』を見てみましょう。参照とするのは分子系統だけで、以下の解説は私の考えなので悪しからず。

240317223044640~2
Homalocephala texensis
『The Cactaceae Vol.3』(1922年)より。


遺伝的解析
この論文は、ホマロケファラ(Homalocephala)の分類をはっきりさせることを目的としているようですが、近縁と考えられるエキノカクタスやフェロカクタスなどとの比較がなされています。
ホマロケファラ、つまり綾波(Homalocephala texensis)は、1842年にEchinocactus texensisと命名され、1922年に新設されたホマロケファラ属となり独立しました。しかし、現在はエキノカクタス属に戻されています。
下の分子系統を見ると、ホマロケファラはエキノカクタスから明確に分離されています。意外にもエキノカクタスはホマロケファラやフェロカクタスより、アストロフィツムに近縁であることが明らかとなりました。もし、ホマロケファラをエキノカクタスに含めると言うのならば、アストロフィツムもエキノカクタスに含める必要がありますが、あまりに非現実的です。やはり、エキノカクタスからのホマロケファラの分離が好ましいようです。


          ┏━━Astrophytum
      ┏┫
      ┃┗━━Echinocactus
  ┏┫ 
  ┃┗━━━Homalocephala
  ┫
  ┗━━━━Ferocactus

240317224257576~2
Echinocactus platyacanthus
The Cactaceae Vol.3』(1922年)より。
Echinocactus ingensとして記載。


エキノカクタスの解体
エキノカクタス属そのものの範囲も論文では異なります。この論文では、エキノカクタスに含まれるのはE. platyacanthus(広刺丸)とE. horizonthalonius(太平丸)だけです。E. parryi(神竜玉)やE. polycephalus ssp. polycephalus(大竜冠)、E. polycephalus ssp. xeranthemoides(竜女冠)はホマロケファラに含まれてしまいます。気になるE. grusonii(金鯱)はフェロカクタスに含まれることが明らかになっています。遺伝的に見ると、エキノカクタスはわずか2種類に縮小することになります。
また、論文では太平丸(E. horizonthalonius)は、ニコリー太平丸(ssp. nicholii)も調べていますが、ssp. horizonthaloniusとそれほど上手く分離出来ていません。外見上は異なっていても、遺伝的にはそれほどの違いはないと言うことかも知れません。ちなみに、現在ssp. nicholiiはssp. horizonthaloniusに含まれてしまいました。逆にssp. australisが2022年に新亜種として記載されています。

240317224234334~2
Echinocactus polycephalus ssp. xeranthemoides
The Cactaceae Vol.3』(1922年)より。
Echinocactus 
xeranthemoidesとして記載。

現在の分類
現在の学術分類では、この2018年の論文の成果は反映されていません。しかし、将来的には大きく整理されるかも知れません。とりあえず、キュー王立植物園のデータベースを見てみます。

①Echinocactus

1, E. × diabolicus
2, E. horizonthalonius
3, E. parryi
4, E. platyacanthus
5, E. polycephalus
6, E. texensis

E. × diabolicusは、2006年にE. horizonthaloniusの亜種として記載されましたが、これはE. horizonthaloniusとE. platyacanthusの自然交雑種であるとされました。そのため、2020年に交雑種であることを示す「×」がつけられました。
分子系統でエキノカクタスに含まれるのは、E. horizonthaloniusとE. platyacanthusだけです。残りの3種類はホマロケファラです。

②Kroenleinia
1, K. grusonii

金鯱は2014年にクロエンレイニア属とされましたが、分子系統ではフェロカクタスです。ちなみに、金鯱をフェロカクタスとする意見も2021年に提出されています。

DSC_0579
Kroenleinia grusonii

最後に
この論文ではホマロケファラの立ち位置を確定させるためのものですが、思わぬ結果が示されています。ホマロケファラはエキノカクタスから分離されますが、エキノカクタス自体が分解されることが明らかとなったのです。また、副産物でKroenleiniaがフェロカクタスであることも判明しました。しかし、ホマロケファラは、エキノカクタス→ホマロケファラ→エキノカクタスと来て、遺伝的にはホマロケファラと行ったり来たりしています。この論文の結果を持って最終的な回答となるのでしょうか。しばらくは経緯を見守りたいと思います。


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生物は基本的にトレード・オフです。例えば、卵は大きなものほど子供の生存率が高く、小さい卵ほど子供の生存率は低くなります。これは、生まれてくる子供のサイズが異なり、卵が大きいほど1匹の子供に使われる栄養が多いことが原因です。しかし、実際のところ、大きい卵は少なく産卵され、小さい卵は沢山産卵されます。これは、少数の生存率を上げるのか、生存率が低くても数を揃えるのかと言うトレード・オフの関係にあります。一見して生存率が高い方が有利な気もしますが、生存率が低くくても数が多ければ最終的には生き残ることが出来るため、どちら一方が優れているわけではありません。
生物はアレもコレもと言うわけにはいきません。大きい卵を沢山生めば良いような気もしますが、生物の利用出来る資源や産卵に振り分けられるエネルギーは有限です。仮に100の栄養があった時に、栄養50の卵を2つ生むのか(50×2=100)、栄養2の卵を50個生むのか(2×50=100)と言う選択肢はありますが、栄養50の卵を50個生むこと(50×50=2500)は出来ないのです。ニワトリが鶏卵を一度に何十個も産むことを考えたら、非現実的な意見であることが分かるでしょう。これを、一般的にトレード・オフと言います。アレもコレもではなく、アレかコレかを選ばなくてはなりません。
植物でも資源をどの程度振り分けるのかは問題となります。特に生長と繁殖のバランスは重要でしょう。例えば、生長を優先するのか、繁殖(開花)を優先させるのかです。本日はサボテンのトレード・オフを検証したM. A. Lorenzaniらの2024年の論文、『Growing or reproducing? Assessing the existence of a trade-off in the globose cactus Gymnocalycium monvillei』をご紹介しましょう。

植物のサイズと資源分配
サボテンにおいて、トレード・オフについては調べられていませんが、サイズと繁殖の関係を調べた研究は行われています。いくつかのサボテンではサイズが大きくなるほど種子の数が増えることが確認されています。例えば、Pterocereus gaumeriやStenocereus thunberi、Lophocereus schottii、Escobaria robbinsorum、Ferocactus wislizeni、Coryphantha werdermannii、Lophophora diffusaなどで確認されています。

Gymnocalycium monvillei
著者らはアルゼンチンのコルドバのGymnocalycium monvilleiを調査しました。調査地の標高は1600mで、年間平均気温は13.9℃、年間降水量は800mmでした。雨は9月から4月の温暖な時期に集中します。G. monvilleiは自家不和合性で、ミツバチにより受粉します。花は1〜10個で雌雄同体です。
著者らは、G. monvilleiが生長する時期である9月から4月の生長を測定し、生産された果実を数えました。


230829225644206~2
Gymnocalycium monvillei
Gymnocalycium multiflorumとして記載。
『Adissonia』(1918年)より。


サイズと種子を測定
G. monvilleiの直径は、2018年から2019年の1回目の調査では5.4〜17.9cm、2019年から2020年の2回目の調査では6.1〜17.9cmでした。生長率は0%〜27.8%で、25%は生長しませんでした。すべての個体は開花しましたが、1回目では5%、2回目では6.7%が種子を生産しませんでした。
G. monvilleiの直径は種子生産量および総種子重量に関係がありました。しかし、直径と平均種子重量には関係がありませんでした。さらに、生長と種子の数、平均重量、総重量とも関係がありませんでした。また、種子の平均発芽時間も直径や生長とは関係がありませんでした。


トレード・オフはない
結果として、G. monvilleiは生長と種子生産量の間にトレード・オフの関係はないことが分かりました。過去の報告では、植物の種類によりトレード・オフがある場合とない場合があります。サイズと種子量の相関は、Opuntia engelmanniiやMammillaria magnimamma、Harrisia portoricensis、Astrophytum ornatumで確認されています。Wigginsia sessilifloraはサイズの増加に伴い種子生産が減少すると言う報告もあります。サボテンでも種によりトレード・オフの関係があるものとないものがある可能性があります。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
G. monvilleiにおいては、生長と種子生産の間にトレード・オフの関係はありませんでした。個人的には個体ごとのコンディションに左右されているような気もしますが、はっきりしたことは言えません。ただ、あくまでも余力で賄えるだけの開花を行っているはずですから、やはりアレもコレもと言うわけには行かないのでしょう。
さて、論文中でWigginsiaの話がありましたが、過去に当ブログでも取り上げたことがあります。種子生産量は中型個体が多く、大型個体は種子生産が減少すると言う結果でした。ただし、大型個体の種子由来の実生ほど背が高いなど、異なる利点もあるようですから、単純に種子生産数だけで考えるべきではないのかも知れませんね。




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バハ・カリフォルニア半島はサボテンが非常に豊富なことで知られています。しかし、バハ・カリフォルニア沿岸に散在する小島にも、サボテンが沢山生えていることは、一般的にはあまり知られていないようです。さて、このような海洋に浮かぶ小島は、大抵は海鳥の繁殖地となっていることが多く、海鳥の糞が堆積しています。この蓄積して固まった鳥の糞を「グアノ」と呼び、かつては肥料の成分とするために、盛んにリン鉱石として採掘されました。と言うわけで、本日はこのグアノとサボテンの関係についてのお話です。本日、ご紹介しますのは、Benjamin T. Wilderらの2022年の論文、『Marine subsides produce cactus forests on desert islands』です。

グアノと鳥島
カリフォルニア湾には、オグロカモメやユウガアジサシ、アオアシカツオドリ、アメリカオオセグロカモメなどの海鳥が多く生息しています。場所によってはグアノが岩上に10cmも堆積しています。そのため、このような鳥島では、窒素やリンの濃度が高いため多くの植物は生えることが出来ないようで、植物の多様性は大幅に減少します。北アメリカ南西部では、エルニーニョやハリケーンにより降水量が多い年はグアノから窒素が流入し、土壌中の窒素は元の100倍に増加する可能性があります。しかし、カリフォルニア湾の鳥島では、サボテンが豊富で多様性が高くなっています。いくつかの島では、cardonと呼ばれるサボテンが高密度で生息します。cardonとはPachycereus pringleiのことで、カリフォルニア半島とソノラ本土のソノラ砂漠に広く分布する柱サボテンです。

240226012127846~2
Cardon
『Proceedings of the California Academy of Sciences』(1960-1968年)より。


同位体窒素の変動
グアノにはアンモニア態や硝酸態、あるいは尿酸の形で窒素が含まれます。これらは異なる速度で分解されます。窒素の原子量は14ですが、極わずかに原子量が15の同位体が存在します。グアノからはアンモニアが揮発し原子量14の窒素(14N)が多少失われるため、グアノは原子量15の同位体窒素(15N)の割合が増加します。自然環境下では、窒素同位体比が+25%を超えることは稀です。従って、植物そのものの15Nの割合を調べれば、グアノを栄養として取り込んだか否かが分かります。

鳥島のcardonは15N値が高い
San Pedro Martir島では、魚の15N値は平均+17.7%、海鳥の羽は平均19.7%でした。新鮮なグアノの15N値は平均14.8%でしたが、分解されて土壌中に残ったグアノの15N値は平均+32.4%に達しました。San Pedro Martir島のcardonは、15N値の平均は+30.3%でした。
また、鳥島ではないメキシコ湾の島の土壌の15N値は平均+15.0%、cardonでは+11.7%でした。バハ・カリフォルニア半島に生えるcardonの15N値は+8.13%、ソノラ本土に生えるcardonでは+11.2%でした。

鳥島の異様なサボテン密度
San Pedro Martir島のサボテン林の密度は、約2700本/haで、隣接する鳥島であるCholludo島では約23500本/haと言う桁違いに多くのcardonが生えています。バハ・カリフォルニアで約150本/ha、ソノラでは約60本/haですから、鳥島のサボテン密度は非常に高いものです。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
論文中のcardonとは
Pachycereus pringleiのことですが、日本では「武倫柱」の名前で知られている柱サボテンです。この論文では、武倫柱に対する鳥島のグアノの影響を調査しました。
鳥島であるSan Pedro Martir島の武倫柱の密度は1坪あたり0.9本、Cholludo島では1坪あたり8本にもなります。バハ・カリフォルニア半島の武倫柱は1坪あたり0.05本、ソノラ本土の
武倫柱は1坪あたり0.02本にしかなりませんから、いかにグアノが武倫柱の生育に影響を与えているかが分かります。
グアノに含まれる同位体窒素の割合により、
武倫柱はグアノ由来の窒素を大量に取り込んだことは明らかです。一般的に畑作では、肥料は与え過ぎると肥料焼けをおこして根をやられてしまうことが知られています。ですから、グアノの過剰な窒素やリン酸は植物には有害です。しかし、武倫柱は過剰な栄養素を取り込んで、異常な密度で生育することが出来るのです。


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エキノプシスは割と庶民的なサボテンで、短毛丸などは庭先に放置された鉢でも花を咲かせていたりします。さて、どうもエキノプシスと言えばそのようなイメージだったわけですが、神代植物公園の大温室に行った時に意外な事実に遭遇しました。益荒丸と言う巨大な柱サボテンが植えられており、ネームプレートには「Echinopsis rhodotricha」とありました。驚くべきことに、この巨大な柱サボテンがエキノプシスだったのです。

DSC_0585
益荒丸 Echinopsis rhodotricha
エキノプシスに見えませんが、ネームプレートにはそうありました。


いつの間にやら全部Echinopsis
また、トリコケレウス属を調べていた時に、いくつかの種類がエキノプシスとされたことがあることを知りました。これは一体どういうことなのでしょうか? まず、トリコケレウスがエキノプシスに含まれるとした考え方に対する、いくつかのサイトの説明を見てみましょう。

「問題は1974年にH. friedrichが、EchinopsisとTrichocereusは種子や花により区別出来る違いはなく、区別して分類すべきではないことを発見しました。そして、Echinopsisの方が(命名が)早いため、TrichocereusはEchinopsisに折り畳まれます。サン・ペドロ(=Trichocereus)をEchinopsisの一部には呼ぶことも正しいのでしょう。」

「1974年にH. FriedrichはTrichocereusとEchinopsisの花は同じ種類であると結論付けました。彼の主張では、子房と花管にトゲはないが毛があり、開放型あるいは散在型の蜜腺と、2連の雄しべがあると言うものでした。結論は、Echinopsisが古い属であると言う事実により、Trichocereusのすべての種はEchinopsisに再分類されました。」


遺伝子解析
以上のように、1974年にTrichocereusはEchinopsisの一部であると言う意見が出されました。もし、サイズ以外の違いがないのなら、それは正しい意見と言うことになります。では、外見上の違いではなく、遺伝的な違いはどうでしょうか? ここでは、Boris O. Schlumpberger & Susanna S. Reinnerの2012年の論文、『Molecular Phylogenetics of Echinopsis (Cactaceae): Polyphyly at all levels and convergent evolution of pollination modes and growth forms』を見てみましょう。内容は省略して、遺伝子解析の結果だけ見てみましょう。

遺伝子を解析して分子系統を作成しています。とりあえず、Echinopsisを含むグループは4つに大きく分けられるようです。ここでは仮にA、B、C、Dとしました。また、現在のキュー王立植物園のデータベースの情報も加えました。

          ┏━━D
      ┏┫
      ┃┗━━C
  ┏┫ 
  ┃┗━━━B
  ┫
  ┗━━━━A

グループA
グループAは、E. famatimensisとE. bonnieaeが含まれます。
実はグループBとグループDにもEchinopsisが含まれるため、グループAに含まれる種はEchinopsisとすべきではありません。この2種はかつてはLobiviaとされてきましたが、本来のLobiviaとも系統的に遠い種です。現在はReicheocactusに分類されています。


グループB
グループBは非常に複雑ですから、以下に分子系統を示します。

          ┏━━B4
      ┏┫
      ┃┗━━B3
  ┏┫ 
  ┃┗━━━B2
  ┫
  ┗━━━━B1

B1はArthrocereusです。

B2はCleistocactus(C. bmaumannii、C. smaragdiflorus)、Espostoa、Weberbauerocereus、Yungasocereus、Cephalocleistocactus、Samaipaticereusからなります。
ただし、現在はCephalocleistocactusはCleistocactusに吸収されました。また、B2に含まれるEspostoa(E. guentheri)はVatricaniaとなっています。

B3はHarrisiaと、E. terscheckii、E. atacamensisからなります。
B3に含まれるEchinopsisは、現在では
Leucosteleとされています。

B4はすべてEchinopsisです。E. tubiflora、E. aurea、E. oxygona、E. calochloa、E. densispina、E. haematantha、E. chrysantha、E. breviflora、E. jajoana、E. marsoneriからなります。かつてLobiviaとされたものが多いようです。

Echinopsisと呼ばれる種は、この時点でB3とB4に含まれています。属は近縁でまとまりのあるグループですから、B4のみをEchinopsisとするか、B3とB4を合わせてEchinopsisとするかしかありません。後者の場合、HarrisiaはEchinopsisに吸収されてしまいます。著者らは前者の立場です。つまり、B4に含まれる種のみをEchinopsisと考えるのです。また、Harrisiaは遺伝的にまとまりがありますから、Harrisia以外のB3に含まれるEchinopsisにも新たな名前が必要となります。著者の
SchlumpbergerはLeucosteleを提唱し、現在は認められています。

グループC
グループCはOreocereusの仲間です。Oreocereus、Pygmaeocereus、Mila、Oroya、Haageocereus、Rauhocereus、Matucanaが含まれます。ただし、B2に含まれていたCleistocactusやEspostoaも含みます。つまり、CleistocactusとEspostoaは近縁ではない種で構成されていたと言うことになります。また、グループCのCleistocactusとMatucanaは単系統ではなく、まとまりがありません。グループC全体の見直しが必要です。
現在、PygmaeocereusはHaageocereusに吸収されました。グループCに含まれているCleistocactusは、Loxanthocereus(C. sextonianus)やBorzicactus(C. sepium)となっています。CleistocactusはグループBに含まれる方を指します。しかし、これでも整理が中途に思えます。


グループD
グループDも非常に複雑です。

              ┏━D5
          ┏┫
          ┃┗━D4
      ┏┫
      ┃┗━
━D3
  ┏┫ 
  ┃┗━━━D2
  ┫
  ┗━━━━D1


D1はDenmozaとAcanthocalycium、E. mirabilis、E. leucanthaからなります。しかし、B4を本来のEchinopsisとした場合、D1に含まれる種はEchinopsisではありません。
現在、E. 
mirabilisはSetiechinopsisとなり、E. leucanthaはAcanthocalyciumとなっています。私が植物園で見た巨大なEchinopsisはD1に含まれ、現在はAcanthocalyciumとされています。

D2はE. pachanoiとE. lageniformisからなります。旧Trichocereusです。
現在、E. pachanoiはTrichocereus macrogonus var. pachanoiとなっています。E. lageniformisはTrichocereus bridgesiiと呼ばれていましたが、データベース上ではEchinopsisのままです。

D3のE. saltensisやE. chamaecereus、E. schreiteriは、かつてLobiviaとされたこともありますが、現在は著者によりChamaecereusとされています。また、E. formosaやE. warteri、E. huascha、E. strgona、E. rowleyi、E. lobivioides、E. bruchii、E. candidens、E. angelesiae、E. hahnianaは、LobiviaやTrichocereusとされたこともありますが、現在は著者によりSoehrensiaとされています。
D3は本来のEchinopsisとは近縁ではなく、Lobiviaの姉妹群です。

D4にはE. pereziensis、E. bridgesii、E. sucrensis、E. caineana、E. mamillosaが含まれます。D4は元よりEchinopsisとされて来ましたが、本来のEchinopsisとは近縁ではなく、著者によりLobiviaとされています。
D5にはE. rojasii、E. calorubra、E. obrepanda、E. calliantholiacina、E. coronata、E. pojoensis、E. callichroma、E oligotricha、E. boyuibensis、E. subdenudata、E. cardenasiana、E. ancistrophora、E. chrysochete、E. schieliana、E. maximiliana、E. tegeleriana、E. hertrichiana、E. arachnacantha、E. tiegeliana、E. pentlandii、E. cinnabarina、E. ferox、E. lateritia、E. pugionacantha、E. backebergii、E. tacaquirensis、E. yuquinaが含まれます。D5はもともとLobiviaとされてきたグループです。
D4はよくまとまったグループであるため、D4とD5を別属とすることも可能なような気もしますが、著者らは合わせてLobiviaとしています。


最後に
よく見てみると、Echinopsisとされる種は、他の柱サボテンの属のあちこちに散在することが分かります。つまり、現在Echinopsisと言われている種は、まとまりがない雑多な寄せ集めでしかないと言うことです。また、グループDはEchinopsisと近縁ではなく、外見的類似により統合されてしまったことは明らかです。明確にLobiviaやTrichocereusは分離可能です。一方で、あちこちに現れるEchinopsisは、著者により新属とされました。
論文はすべてのEchinopsisとされる種の遺伝子を確認したわけではありませんから、名前がないものも多いでしょう。さらに、この論文の結果がすべて分類学的に反映されているわけでもありません。しかし、形態学的な分類が難しいEchinopsisが、分けられることが明らかとなりました。消滅したTrichocereusも復活し、Echinopsisとよく似た近縁ではない種も独立し、Echinopsisは大幅に縮小しました。最盛期は100〜150種と目されていたEchinopsisも、今や20種しかありません。
せっかくですから一覧を示して終わります。

Echinopsis albispinosa
Echinopsis aurea
Echinopsis breviflora
Echinopsis calochlora
Echinopsis chalaensis
Echinopsis chrysantha
Echinopsis clavata
Echinopsis cuzcoensis
Echinopsis densispina
Echinopsis haematantha
Echinopsis jajoana
Echinopsis lageniformis
Echinopsis marsoneri
Echinopsis oligotricha
Echinopsis oxygona
Echinopsis rauschii
Echinopsis rojasii
Echinopsis tacaquirensis
Echinopsis torrefluminensis
Echinopsis werdermannii



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最近、トリコケレウスの誕生やその経緯について記事にしました。内容的にはSofia Albesiano & Roberto Kieslingの2012年の論文、『Identity and Neotypification of Cereus macrogonus, the Type Species of the Genus Trichocereus (Cactaceae)』を参照としました。しかし、この論文には続きがあり、Trichocereus peruvianusやTrichocereus pachanoiはTrichocereus macrogonusに含まれるというのです。一体どういうことなのか、内容を見て見ましょう。
ちなみに、トリコケレウスは、始めはケレウス属でトリコケレウス属とされ、最終的にエキノプシスとされました。ですから、同じ種でも複数の名前が出て来ますから、ご注意下さい。

Trichocereus macrogonus
=Cereus macrogonus
=Echinopsis macrogona

Trichocereus pachanoi
=Echinopsis pachanoi

Trichocereus peruvianus
=Cereus peruvianus
=Echinopsis peruviana

また、Trichocereusの命名の経緯を記事にしていますから、こちらを先に読んだ方が理解がしやすいと思います。


T. peruvianusとT. pachanoi
Britton & Rose(1920年)は、Trichocereus peruvianusとTrichocereus pachanoiという2種類の新種のトリコケレウスを記載しました。
T. macrogonusとT. peruvianusの密接な関係は、Backeberg & Knuth(1936年)を含む数人の著者により言及されていますが、Backebergの一部の著書ではこの意見を支持していません。Ritter(1981年)は、野外観察に基づきT. peruvianusをT. pachanoiの1種であることを提案しました。ただし、RitterはT. macrogonusには言及していません。
Madsen(1989年)は、E. pachanoiを詳細に説明し、T. peruvianusを異名として挙げています。この時のE. pachanoiの図は非常に明瞭で、その説明は、Cereus macrogonusを記載したSalm-DyckのC. macrogonusの説明と一致しています。


T. macrogonusとは?
Huntら(2006年)は、E. peruvianaとE. pachanoiを種として認識していましたが、E. macrogonaは「元の用途が不明または議論の余地がある名前」のカテゴリーにリストアップしました。Huntらによると、「E. macrogonaの現代の記述は、オリジナルから逸脱しており、その名前は誤って適用されている可能性がある」としています。しかし、その根拠は示されませんでした。もっともらしい仮説として、この判断がアマチュアの温室で栽培された植物を観察したものではないかというものです。つまり、栽培されている植物がSalm-Dyckの記述に対応していないだけではないかと言うのです。

トゲが異なると言う記述
トゲの有無とサイズが、T. peruvianusとT. pachanoiを区別する主な特徴であるとされています。しかし、T. pachanoiの最初の記述はタイプ標本で見られるように、トゲのないものから長さ1〜2cmで3〜7本まで多様性があります。Schultes & Hoffman(1979年)は、栽培されたT. pachanoiにはトゲはありませんが、野生条件下ではトゲが発達すると指摘しました。著者らも、T. pachanoiを比較的暗い場所から直射光が当たる場所に移動した際、同じ経験をしました。
標本や写真、参考文献、Britton & Roseの説明などを見ると、T. peruvianusは高さ2〜4m(最大5m)で、T. pachanoiは高さ3〜6m(最大7m)です。特徴を以下に示します。

T. macrogonus v. macrogonus
=T. peruvianus
古いアレオーレにもトゲは18〜20本あり、そのうち3〜4本はより強く頑丈で長さ約5cmになります。枝は直立あるいは斜上し、幹は太く直径16〜20cmになります。

240213214531251~3
Trichocereus peruvianus Britton & Rose
『The Cactaceae, II』(1920年)より。
T. peruvianusはこのBritton & Roseの著作において命名されました。


T. macrogonus v. pachanoi
=T. pachanoi
古いアレオーレにはトゲがないか少なく場合があり、3〜7本です。トゲは同じサイズで長さ約1〜2cmです。茎は直立し互いに平行になります。 茎は細く直径6〜11(〜15)cmとなります。

240213214523597~2
Trichocereus pachanoi Britton & Rose
『The Cactaceae, II』(1920年)より。
T. pachanoiはこのBritton & Roseの著作において命名されました。


T. macrogonusに含まれる
種が初めて記載された時の記述と、実際のTrichocereusを比較した結果、C. macrogonusはT. peruvianusと同種です。T. pachanoiは同種ではあるが、区別可能です。形態学的および遺伝的証拠による分類学的分析により、T. peruvianusとT. pachanoiとの間に密接な関係があることが確認されています(Albesiano & Terrazas, 2012年)。
一方でフィールドで植物を広く観察したRitter(1981年)やMadsen(1989年)が、それぞれT. peruvianusとT. pachanoiを認識していたことは注目に値します。これらは、別の2種ではなく、同一種内の変種としました。

T. macrogonusの履歴書
以上が論文の簡単な要約です。
初めてC. macrogonus=T. macrogonusを記載したSalm-Dyckの記述は、T. peruvianusの特徴とよく符合します。著者らはT. macrogonus=T. peruvianusであると主張します。さらに、T. pachanoiは形態学的にも遺伝的にもT. peruvianusと近縁ではあるものの、はっきりと判別出来ることからT. macrogonusの変種としました。ここで、T. macrogonusの異名についてまとめてみましょう。

T. macrogonus系
1850年 C. macrogonus
1909年 T. macrogonus
1920年 T. peruvianus
1931年 C. rosei
1956年 T. puquiensis
              (publ. 1957)
1957年 T. trichosus
1974年 E. macrogona
              E. peruviana
              E. puquiensis
              E. trichora
1981年 T. pachanoi f. peruvianus
              T. tacnaensis
1998年 E. peruviana ssp. puquiensis
2013年 T. macrogonus v. peruvianus
               (publ. 2012)
2014年 T. peruvianus ssp. puquiensis


T. pachanoi系
1920年 T. pachanoi
1931年 C. pachanoi
1956年 T. santaensis
              (publ. 1957)
1958年 T. schoenii
1974年 E. pachanoi
              E. santaensis
              E. schoenii
1981年 T. torataensis
2012年 T. macrogonus v. pachanoi
2022年 T. macrogonus ssp. sanpedro


現在の分類は著者らの主張通りとなっています。見てお分かりのように、エキノプシスに統合する動きがありました。現在はエキノプシスではなくトリコケレウスとされています。しかし、現在はトリコケレウス属自体が縮小しています。具体的には、T. macrogonus、T. spinibarbis、T. uyupampensis(=E. glauca=T. glaucus)のわずか3種類です。エキノプシスと言う肥大化したグループについても、気になっていますから、そのうち記事にする予定です。


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