サボテンはリプサリスを除き新世界の原産です。しかし、サボテンは世界中の乾燥地で侵略的外来種として猛威を振るっています。特にウチワサボテンは茎節が外れやすく、外れた茎節から発根し定着してしまうため爆発的に増えてしまいます。さらに、駆除するにも茎節の外れやすさから、なかなか根絶が難しいようです。私も鶴仙園でTephrocactus articulatusを入手し育てていることから、この種は外来種としてはどのような存在であるのか気になり調べてみました。本日、ご紹介するのは、Thabiso M. Mokotjomelaらの2024年の論文、『Assessing success in attempts to eradicate an emerging invader plants: Tephrocactus articulatus (Pffeiff.) Backeb. in arid areas of South Africa』です。


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Tephrocactus articulatus (Pfeiff.) Backeb. ,1953


インベーダー植物
外来種や侵略的外来種(invader plants)は、生物多様性の損失や経済的な損失を引きおこします。南アフリカではサボテンの侵入が継続的な問題となっています。南アフリカは35のサボテンの分類群が記録された、世界で2番目に侵入が多い国です。南アフリカには200種以上のサボテンが、様々な目的で導入されてきました。サボテンは一般的に極端な環境に耐性が高く繁殖力も高いことから、南アフリカではほとんどのサボテンが大規模な密集した群落を形成し、牧草地の質を低下させています。1940年代にはOpuntia ficus-indicaの侵入により、南アフリカでは90ヘクタール以上が放棄されました。


松ぼっくりサボテンの侵入
Tephrocactus articulatusはアルゼンチン原産の松ぼっくりサボテン(Pine cone cactus)として知られ、観葉植物として園芸貿易により1953年に南アフリカに導入されました。T. articulatusは高さ30cm以上となり、古い節から新しい節が生えてきます。翼のあるコルク質の種子と、茎節による栄養繁殖により増えます。脱落した茎節は、風により短距離を移動し、水により長距離の散布が容易になされます。近年の研究では、南アフリカのごみ捨て場が、T. articulatusを散布していることが示唆されています。


悪影響
T. articulatusが侵入することによる悪影響として、在来の生物多様性の消失や、住民の生活への脅威、社会経済的な損失の増加などがあります。これは、T. articulatusが密生した茂みを作り、在来種と競合してしまうせいです。南アフリカでは、T. articulatusは北ケープ州、自由州、東ケープ州、西ケープ州の、多くの小さな町や農業地帯で記録されています。T. articulatusはオーストラリアにも侵入し、牧草地の質と量を損なっています。


葉面散布法
サボテンの侵入に対して、南アフリカでは葉面散布法が一般的です。南アフリカでは、Opuntia ficus-indicaやOpuntia aurantiacaの侵入を防ぐために機械的な方法を適用しましたが、効果は限定的だったため化学的な方法が導入されました。非選択性の浸透移行性除草剤であるGarlon 430 ECを2%スプレーオイルとして使用した場合、スペインのCylindropuntia pallidaを100%根絶しました。しかし、南アフリカのクルーガー国立公園のOpuntia strictaの大規模な侵入に対して限定的な効果しか得られず、費用がかかりすぎることもありました。にもかかわらず、南アフリカではT. articulatusの新たな個体群に対して、Garlon 430 ECを使用した葉面散布法が行われています。しかし、その有効性の評価は行われていません。


駆除の効果
南アフリカのT. articulatusの駆除が行われた16箇所を調査し、除去の前後で75%以上の個体群の抑制を示した場合を有効と見なしました。調査の結果、葉面散布法は調査した16箇所のすべてでT. articulatusの個体群を大幅に抑制しました。しかし、4箇所では除草剤のは望ましい有意性を示しませんでした。除去された場所の面積と、効果的に駆除されたT. articulatusの相対数には有意な負の相関があり、広い場所では駆除率が比較的低いものでした。


評価
葉面散布法はほとんどの場所でT. articulatusの個体数を大幅に抑制しました。除草剤が機械的や駆除方法より効果的であるという以前の報告を補完するものです。南アフリカなおけるT. articulatusの根絶は、サボテン侵入の世界的なホットスポットとなっているため非常に重要です。今回の調査では100%の根絶はなされませんでしたが、植生に隠れた小さな個体が見落とされた可能性があります。同様のケースは、クルーガー国立公園のOpuntia strictaの駆除でも報告されています。これは、定期的なフォローアップにより回避出来るものの、その場所が再び侵食されるリスクを示しています。さらに、外来種は増加しており、それらを管理するためにリソースを割く必要があります。それが、防除の制限要因となる可能性があります。


最後に
以上が論文の簡単な要約です。
南アフリカに侵入した侵略的外来種であるTephrocactus articulatusの防除には、機械的な方法より除草剤の方が効果的であるという結果でした。機械的な方法では、砕いたりしても茎節がばらけるため、落ちた茎節から発根してしまうのでしょう。使われた除草剤は浸透移行性ですから、まんべんなく薬剤がかからなくても全体に効果があるのでしょう。しかし、結局のところ、目視で探し出して人力で駆除することは変わらないわけで、必ず見落とが発生します。これは仕方がないことです。監視を継続し、繰り返し防除するしかありません。

しかし、ごみ捨て場から逸出するという話は初めて聞きました。根がない茎節でも増えるウチワサボテンならではですね。また、このように乾燥地では、ウチワサボテンに限らず、アガヴェやユーフォルビアなども野生化してしまいます。カナリア諸島では庭からの逸出によりアガヴェは野生化しています。在来種への影響が気になります。さらに、オーストラリアでは外来種が気軽に郵便でやり取りされており、国内で外来種が拡散する様子を示しているという論文を読んだことがあります。



カナリア諸島の野生化したアガヴェについては以下をご参照ください。


オーストラリアの外来種の取引の様子については以下をご参照ください。


さて、外来植物の駆除では、機械的なものと、化学的なものが示されました。しかし、植物の害虫、つまりは天敵を放つという手もあります。やはり、南アフリカにおけるサボテンの防除を試みたことがあり、過去に記事にしています。これはこれで有効ではあるものの、適切な天敵の探索は簡単ではないことが分かります。逸出は簡単ですが、その解決は簡単には出来ず、時間とお金を浪費する、本当に頭の痛い問題ですね。


最後に、論文では気候変動の予測パターンから、外来種の増減を推測していますが、今回は割愛させていただきました。興味がお有りな方は論文そのものをあたってみてください。



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