今年の1月に開催されたビッグバザールにて、Puna bonnieaeという丸っこい形の小型のウチワサボテンを入手しました。たまたまですが、Puna bonnieaeが記載された時の論文を読んだので記事にします。David J. Ferguson & Roberto Kieslingの1997年の論文、『PUNA BONNIEAE (CACTACEAE), A NEW SPECIES FROM ARGENTINA』を見ていきます。


事の始まり
1990年1月から2月にかけて、David FergusonとSean Hogan、Bonnie Brunkowによるアルゼンチン旅行の際に、Catamarc州で未記載のサボテンが発見されました。発見したのはBonnieでした。DavidはTephrocactusの幼苗だと思いましたが、SeanとDavidが正体が分からないLobiviaを観察中に、Bonnieは後のPuna bonnieaeの開花株を見つけました。新種であることは一目瞭然でした。やがて、種子や果実も見つかり、ウチワサボテン亜科に属するPuna属の新種であることを確信しました。


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Puna bonnieae


しかし中々見つからない
1994年2月初旬に、再びDavidが調査のために現地を訪れましたが、数時間に渡る探索の結果、見つかったのはわずかに2個体でした。どちらも約1cmの土に埋もれており、うち1個体は斜面の侵食によりわずかに露出していたものです。非常に乾燥した時期で、株は収縮して地表から見えなくなっていました。最初の訪問時に見つけることが出来たのは、ほぼすべての株は開花しており、遠くからでも確認出来たからでしょう。花がなければ株が地表に露出していても、気がつくことは不可能でした。


タイプ標本の採取
Roberto Kieslingもその後、さらに3回に渡り同じ地域を訪れました。1994年11月には、Omar FerrariとSillvio Meglioliと共に行った調査ではタイプ標本が採取されました。同年12月には、栽培個体が開花した際にホロタイプが作成されました。2回目の訪問では全く見つけることが出来ませんでしたが、3回目の訪問では新たな株が発見されました。


日和見開花植物
この植物は春から初夏にかけて、降雨をきっかけに開花することが分かっています。11月から2月にかけての幅広い期間で開花が確認されています。果実は開花後、約4〜5週で成熟します。成熟した果実と蕾が同時に見られたことから、時々の良い時期を選んで咲くタイプ(bloomer、日和見開花植物)であり、1シーズンに2回開花し得ることを示唆します。逆に1993年から1994年にかけてのように、全く開花しない年もあると考えられます。


プナ属の成立
Puna属はKiesling(1982)により初めて記載されました。当初、プナ属には2種しか知られていませんでした。属のタイプであるPuna clavarioidesはアルゼンチンに自生し広く栽培されており、Puna subterranceはアルゼンチンおよびボリビアに分布します。
この2種の分類学的な経緯は複雑で、AustrocylindropuntiaやCumlopuntia、Cylidropuntia、Maihueniopsis、Opuntia、Tephrocactusといった属の間を転々と変遷しました。しかし、Punaはこれらの属とは明らかに異なり、独自の特徴を持つグループです。



Puna bonnieaeの特徴
Puna属は地中植物(geophytic)であり、土壌表面よりかなり深い位置に肥大した根を持ちます。茎は積み重なる節(segments)により構成されます。新しい節は土壌の表面やその近くにありますが、古い節は季節毎に地下に引き込まれていきます。

休眠期には植物体は土壌の表面から下に収縮するため、1年の大半は地中に埋もれて見えなくなることもあります。植物体が生長すると根も引き込まれるようで、植物体全体は徐々に下方に移動します。成熟した株では、3つ以上の節が露出していますが、それよりはるかに多くの節が地中に埋もれています。

葉は微小な披針形で、茎に密着しており早期に脱落します。芒刺(glochids)は通常は見られません。刺は短くて細く、1つの刺座(areole)から数本生え、すべて同じ形で茎に密着します。

花は典型的なウチワサボテン亜科の形態で、前のシーズンに出来た節の側面から発生し、通常は1つの節あたり1〜2個の花が咲きます。また、まれに新しい節から花が咲くこともあります。花托の刺座は退化していて刺はなく、毛や剛毛があります。これは、ケレウス亜科(=カクタス亜科)では一般的ですが、ウチワサボテン亜科では特異な形質です。

果実は成熟すると通常はくすんだ赤色か橙褐色となり、果皮は薄く多肉質で、果肉は水分を多く含み水のような質感です。やがて果実ら乾燥し、摩耗や外的な衝撃により裂開します。種子は雫型で硬質、淡黄褐色から褐色の仮種皮(aril)に覆われます。仮種皮は簡単に削り取ることができます。


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芒刺はありません。


類縁関係
Puna属の類縁関係を確実に定義することは難しいのですが、もっとも有力な候補はPterocactusです。栄養器官の形態が似ているものの、Pterocactusは明瞭な小刺や中刺を持ちます。
Tephrocactusも類似しますが、深く窪んだ袋状の刺座や、不規則に裂開する乾果、さらに仮種皮が異なります。Tephrocactusの仮種皮は、内部に開口した網目状の構造を持ちます。
Maihueniopsisは、果実や種子はPunaと類似しますが、疣は境界が不明瞭で、やや細長い形状をしています。大きな刺座から多数の芒刺と、通常はよく発達した中刺を持ちます。



名前
この植物は、発見者であるBonnie Brunkowに因んで命名されました。特にヨーロッパでは、「Puna rugosa」(nom.nud.)という名前で流通していることもあります。


最後に
以上が論文の簡単な要約です。
個人的にはこのような発見の経緯は、なかなか見当たらないので面白く感じます。しかし、地中に隠れて普段は見つけることが難しいということに驚きます。このことは、強光、高温、乾燥に対する適応と考えられます。しかし、古い節は地中に引き込まれるというということは、乾燥するから結果的に縮んでいるのではなく、地中に隠れる戦略となっているのでしょう。
さて、Puna属は著者の1人であるKieslingが提案した属ですが、3種が記載されました。それは、P. bonnieae、P. clavarioides、P. subterraneaの3種でしたが、遺伝子解析によりPuna属自体が解体されました。現在は、それぞれTephrocactus bonnieae、Maihueniopsis clavarioides、Cumulopuntia subterraneaとされています。論文の中でも類似を指摘されているTephrocactusやMaihueniopsisに分類されているのは、著者の学術レベルの高さを感じますね。
最後に学名と異名について示しておきましょう。

★Puna bonnieae D. J. Ferguson & R. Kiesling, sp. nov.
 First published in Cact. Succ. J. (Los Angeles) 69: 290 (1997)

★Maihueniopsis bonnieae (D.J.Ferguson & R.Kiesling) E.F.Anderson
 First published in Cact. Succ. J. (Los Angeles) 71: 325 (1999)

★Opuntia bonnieae (D.J.Ferguson & R.Kiesling) Halda & Janeba
 First published in Cactaceae (Bratislava) 9: 160 (1999)

★Tephrocactus bonnieae (D.J.Ferguson & R.Kiesling) Stuppy
 First published in Kew Bull. 56: 1005 (2001)


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