Welwitschia mirabilisという砂漠に生える植物がありますが、奇想天外という名前でも知られています。葉が2枚しかなくその2枚が伸び続ける奇妙な生態をしています。非常に長命と言われますが草本であるため、年輪がなく確かな樹齢は分かっていませんでした。しかし、Sarah L. Martinらの2026年の論文、『Determining vertical growth patterns and tissues and maximum age using radiocarbon dating in the long-lived Namib Desert plant Welwitschiamirabilis』において、なんとWelwitschiaの樹齢の計測を試みています。早速見ていきましょう。

Welwitschia mirabilis Hook.f.
神代植物公園(2026年3月)
Welwitschia mirabilis
Welwitschia mirabilis Hook.f.は、ナミビア中央部からアンゴラ南部にかけて分布するナミブ砂漠固有の、「生きた化石」(living fossil)と呼ばれる裸子植物です。Welwitschiaは決して落葉せず、植物の中でもっとも長寿命の葉を持ちます。通常の茎ではなく塊茎を持ち、真の枝を持たないことから無頭植物(acephalous plant)と呼ばれます。
Welwitschiaの生長
シュートの頂端は周囲にある塊茎組織(caudex tissue)に徐々に覆われていき、頂端分裂組織は発芽後まもなく死滅します。基底分裂組織は塊茎を取り囲んで2枚の葉と生殖器官を形成します。頂端分裂組織が死滅すると垂直方向への生長は停止し、葉の側方への拡大が起こります。

Welwitschia mirabilis Hook.f.
筑波実験植物園(2025年12月)

Welwitschiaの花
筑波実験植物園(2025年12月)
Welwitschiaの年齢
Welwitschiaは非常に生長が遅いことが知られています。1960年にHerreは南アフリカでWelwitschiaの14C年代測定を行い、サンプルの年齢を約500〜600歳と仮定しました。さらに、ナミブ砂漠の最大の個体は約2000歳であると推定しました。これは、仮定にも関わらず神話的な事実として流布されてしまいました。
Crane & Griffin(1970)は、14C年代測定によるWelwitschiaの年齢を920±20年と報告しました。しかし、標本のサンプリングの詳細は説明されていません。今までWelwitschiaの年齢を決定する目的の研究は、サンプリング方法が不明であり、もっとも古い組織が解析されたのかは不明です。
Welwitschiaは年輪(growth rings)を発達させないため、年輪年代測定法による年代測定は出来ません。しかし、塊茎には繊維状のコルク質があり、木部と師部の維管束が存在し、硬化した皮層に包まれているため、年代測定のためのコアを採取することは出来ます。
サンプリング
Namib-Naukluft国立公園にあるGobabeb Namib研究所から東へ14kmにある、Kuiseb川に向かう渓谷で調査しました。調査地のWelwitschiaは約165個体あり、大きさや年齢は様々で、もっとも南に位置する個体群です。この場所のWelwitschiaは1988年以来モニタリングされており、特定の個体は葉の生長と生殖状態を確認するために毎月訪問されていました。2017年10月の鉄砲水により、岩のある地形であったため、根が一部露出しました。また、家畜の馬がこの個体群の葉を食べていました。その後、馬が根を踏みつけたことにより根が損傷しまったようで、ついに切断されてしまいました。このことが、この中型の個体の枯死につながったようです。
枯死したWelwitschiaを掘り出しました。主根は断層に沿って片岩層を貫通しており、根が切断された場所までの長さは468cmでした。残るの根は掘り起こされませんでした。葉の基部の周囲は226cmで、葉は112.4cmと113.8cmでした。外側塊茎組織(outer caudex tissue)と呼ばれる外層から、コルクボーラーを用いてコルク質をサンプリングしました。
14C年代測定
2つの葉片の間の窪みの塊茎組織は80±19年と若い年代で、西暦1680〜1950年という14C年代測定の特に不正確な年代に相当します。外側の塊茎層の年代は、83±17〜529±10年でした。皮層組織の年代は531±20年でした。外側の塊茎組織がもっとも古い年代を示すことは、他の多年生植物の外側の茎組織と同じく保護組織として機能します。茎の中央部で死んだ分裂組織が急速にコルク化して、薄い外表皮と厚い皮層を形成し、茎の太さが増すにつれて順次堆積していきます。重要なことは、生きた植物を傷つけることなく、採取可能なもっとも古い組織を特定することです。
生長速度
Welwitschiaの独特の形態と極めて遅い生長、さらには14C年代測定の不確実性から、標準的な樹木生長速度式は使用出来ません。Welwitschiaのサイズは乾季と雨季で顕著に変動せず、生長は時間とともにほぼ連続的で安定しているように見えます。OxCal(14C年代測定の解析、校正するためのソフトウェア)を用いて、サンプルの年代モデルを計算しました。モデルに基づくと、垂直方向への生長は西暦1780年頃に約0.47mm/年から0.67mm/年にわずかに増加しました。その後、1840年頃に生長は遅くなりましたが、西暦1680〜1950年の期間のサンプルサイズが限られていることや、放射線炭素年代の不確実性によるものである可能性があります。
最後に
以上が論文の簡単な要約です。
Welwitschiaはその生長の遅さからも非常に長命な植物であることが分かります。しかし、2000歳というのは推測で、実際に確認されたのは920±20年までです。しかし、この年代測定もサンプルの詳細が不明であり、Welwitschiaの年代測定法のスタンダードにはなり得ません。この論文ではその点を重視しており、サンプリングした場所により測定された年代が異なることを確認しています。さらに、既に死んだ組織からなる塊茎の外側がもっとも古いという結果からは、Welwitschiaの生きた組織を傷つけないで測定が可能という非常に都合の良い成果をあげています。今回は中型の個体でしたが、今後はより大型の個体で樹齢を確認することが出来ます。果たしてWelwitschiaは流布されている説の通り2000歳なのでしょうか。とても気になります。今後の展開に期待しましょう。
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Welwitschia mirabilis Hook.f.
神代植物公園(2026年3月)
Welwitschia mirabilis
Welwitschia mirabilis Hook.f.は、ナミビア中央部からアンゴラ南部にかけて分布するナミブ砂漠固有の、「生きた化石」(living fossil)と呼ばれる裸子植物です。Welwitschiaは決して落葉せず、植物の中でもっとも長寿命の葉を持ちます。通常の茎ではなく塊茎を持ち、真の枝を持たないことから無頭植物(acephalous plant)と呼ばれます。
Welwitschiaの生長
シュートの頂端は周囲にある塊茎組織(caudex tissue)に徐々に覆われていき、頂端分裂組織は発芽後まもなく死滅します。基底分裂組織は塊茎を取り囲んで2枚の葉と生殖器官を形成します。頂端分裂組織が死滅すると垂直方向への生長は停止し、葉の側方への拡大が起こります。

Welwitschia mirabilis Hook.f.
筑波実験植物園(2025年12月)

Welwitschiaの花
筑波実験植物園(2025年12月)
Welwitschiaの年齢
Welwitschiaは非常に生長が遅いことが知られています。1960年にHerreは南アフリカでWelwitschiaの14C年代測定を行い、サンプルの年齢を約500〜600歳と仮定しました。さらに、ナミブ砂漠の最大の個体は約2000歳であると推定しました。これは、仮定にも関わらず神話的な事実として流布されてしまいました。
Crane & Griffin(1970)は、14C年代測定によるWelwitschiaの年齢を920±20年と報告しました。しかし、標本のサンプリングの詳細は説明されていません。今までWelwitschiaの年齢を決定する目的の研究は、サンプリング方法が不明であり、もっとも古い組織が解析されたのかは不明です。
Welwitschiaは年輪(growth rings)を発達させないため、年輪年代測定法による年代測定は出来ません。しかし、塊茎には繊維状のコルク質があり、木部と師部の維管束が存在し、硬化した皮層に包まれているため、年代測定のためのコアを採取することは出来ます。
サンプリング
Namib-Naukluft国立公園にあるGobabeb Namib研究所から東へ14kmにある、Kuiseb川に向かう渓谷で調査しました。調査地のWelwitschiaは約165個体あり、大きさや年齢は様々で、もっとも南に位置する個体群です。この場所のWelwitschiaは1988年以来モニタリングされており、特定の個体は葉の生長と生殖状態を確認するために毎月訪問されていました。2017年10月の鉄砲水により、岩のある地形であったため、根が一部露出しました。また、家畜の馬がこの個体群の葉を食べていました。その後、馬が根を踏みつけたことにより根が損傷しまったようで、ついに切断されてしまいました。このことが、この中型の個体の枯死につながったようです。
枯死したWelwitschiaを掘り出しました。主根は断層に沿って片岩層を貫通しており、根が切断された場所までの長さは468cmでした。残るの根は掘り起こされませんでした。葉の基部の周囲は226cmで、葉は112.4cmと113.8cmでした。外側塊茎組織(outer caudex tissue)と呼ばれる外層から、コルクボーラーを用いてコルク質をサンプリングしました。
14C年代測定
2つの葉片の間の窪みの塊茎組織は80±19年と若い年代で、西暦1680〜1950年という14C年代測定の特に不正確な年代に相当します。外側の塊茎層の年代は、83±17〜529±10年でした。皮層組織の年代は531±20年でした。外側の塊茎組織がもっとも古い年代を示すことは、他の多年生植物の外側の茎組織と同じく保護組織として機能します。茎の中央部で死んだ分裂組織が急速にコルク化して、薄い外表皮と厚い皮層を形成し、茎の太さが増すにつれて順次堆積していきます。重要なことは、生きた植物を傷つけることなく、採取可能なもっとも古い組織を特定することです。
生長速度
Welwitschiaの独特の形態と極めて遅い生長、さらには14C年代測定の不確実性から、標準的な樹木生長速度式は使用出来ません。Welwitschiaのサイズは乾季と雨季で顕著に変動せず、生長は時間とともにほぼ連続的で安定しているように見えます。OxCal(14C年代測定の解析、校正するためのソフトウェア)を用いて、サンプルの年代モデルを計算しました。モデルに基づくと、垂直方向への生長は西暦1780年頃に約0.47mm/年から0.67mm/年にわずかに増加しました。その後、1840年頃に生長は遅くなりましたが、西暦1680〜1950年の期間のサンプルサイズが限られていることや、放射線炭素年代の不確実性によるものである可能性があります。
最後に
以上が論文の簡単な要約です。
Welwitschiaはその生長の遅さからも非常に長命な植物であることが分かります。しかし、2000歳というのは推測で、実際に確認されたのは920±20年までです。しかし、この年代測定もサンプルの詳細が不明であり、Welwitschiaの年代測定法のスタンダードにはなり得ません。この論文ではその点を重視しており、サンプリングした場所により測定された年代が異なることを確認しています。さらに、既に死んだ組織からなる塊茎の外側がもっとも古いという結果からは、Welwitschiaの生きた組織を傷つけないで測定が可能という非常に都合の良い成果をあげています。今回は中型の個体でしたが、今後はより大型の個体で樹齢を確認することが出来ます。果たしてWelwitschiaは流布されている説の通り2000歳なのでしょうか。とても気になります。今後の展開に期待しましょう。
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