先週の日曜日に、木更津駅前で開催された木更津Cactus & Succulentフェアに行ってきたわけですが、Euphorbia pedroiというポルトガル原産のユーフォルビアを購入しました。Euphorbia pedroiはマカロネシアのユーフォルビアと近縁で、この仲間ではヨーロッパ大陸唯一の種ということです。いったいどのような植物なのでしょうか。Mario Boireioらの2012年の論文、『Seed proeuction and pre-dispersal reproductive losses in narrow endemic Euphorbia pedroi (Euphorbiaceae)』を参照に見ていきます。


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Euphorbia pedroi Molero & Rovira, 1997


狭域固有種Euphorbia pedroiの特徴
Euphorbia pedroiはポルトガル西部の海岸沿いに、3つの個体群に限定された狭域固有種(narrow endemic)です。分布は年間を通じて定期的に発生する霧と、強風、高い日射量にさらされる南向きの岩壁の斜面に限定されます。高さ約2m、幅2m以上に達する落葉性で亜多肉質の乾燥地植物です。多年生の雌雄同株で、マカロネシアの樹木状ユーフォルビア(dendroid spurges)に類似し、Euphorbia lamarckii complexに含まれます。
毎年、成植物は頂部に房状に並んだ杯状花序(cyathia)を形成します。杯状花序は3裂片の子房を持つ単一の雌花とその周囲にあるいくつかの雄花からなりますが、一部の杯状花序は雄花だけからなります。


Euphorbia pedroiを食害する昆虫
開花期には様々な昆虫が訪花します。しかし、他の昆虫はE. pedroiの繁殖に悪影響を及ぼします。Euphorbia特有の蛾であるAcroclita subsequana(ハマキガの仲間)の幼虫は、蕾の中で成長し杯状花序全体を破壊します。果実の成熟期には、ユーフォルビアに特有の種子バチ(seed-wasps)であるEurytoma fumipennisが成熟した果実に産卵します。3種類のカメムシ、Cydnus aterrimts(ツチカメムシ属)、Spilostethus pandurus(コマダラナガカメムシ属)、Dolycoris baccarum(ブチヒゲカメムシ、カメムシ属)が、E. pedroiの果実に穴を空けている様子が観察されました。また、アリは果実に穴を空け、種子を損傷させます。


調査方法
研究は3つの個体群のうちの2か所、AzoiaとAresで実施されました。E. pedroiは崖や岩壁の岩の割れ目に生えます。生息地は海岸線のごく短い区間に断続的に分布しています。2002年の開花期初めに各集団から無作為に選んだ25個体のE. pedroiにタグをつけ、3月の開花期と7月の結実期に定期的に訪れました。花序の総数、子房のない杯状花序の数、結実しなかった子房と果実の数、蛾の幼虫により損傷を受けた杯状花序の数を記録しました。また、成熟果実を定期的に採取しました。果実から種子を採取し、個体ごとに100個の無作為に選んだ種子を実体顕微鏡下で観察しました。


花と果実数は樹冠の直径に相関する
2つの地域において、杯状花序と果実の生産には有意な差は見られませんでした。樹冠の直径が大きいほど、杯状花序と果実数が多くなりました。樹冠の直径以外の植物の背の高さや幹の直径には一貫した傾向は見られませんでした。また、Aresの個体(137.2±37.1cm)はAzoiaの個体(98.2±22.7cm)より背が高い傾向が見られましたが、樹冠の直径に有意差はありませんでした。


種子食性昆虫による食害
Aresでは平均88.0%、Azoiaでは平均96.0%の個体が、蛾の幼虫による被害を受けていました。種子を食害する昆虫は、それぞれE. pedroiに異なる影響を与えています。
カメムシ類により被害は種子バチによる被害よりも低い割合であり、植物の損失も軽微でした。C. aterrimtsは観察された中でももっとも一般的なカメムシでしたが、かつては種子の中に育つ種子バチの幼虫を捕食するとされたこともありましたが、実際には様々な植物の種子を食べる種子食性昆虫です。
種子バチはE. pedroiに大きな影響を与えました。E. pedroiの種子生産が少ない年には種子バチの影響が大きく、種子生産が多い年には影響が小さくなりました。中には85%以上の被害がある個体もありました。



狭域固有種は種子食性昆虫に脆弱か?
一般的に狭域固有種は種子食性昆虫の食害に対し脆弱とされ、実際にエジプト、リビア原産のマメ科植物であるEbenus armitageiは異常な種子食により個体群の生存が脅かされました(Hagazy & Eesa, 1991)。しかし、その考えに対し異議もあります(Lavergne et.al., 2004)。本研究では、種子食のレベルは高いものの、生存の深刻な脅威とはならないようです。E. pedroiは長寿命の多年生植物であり、季節ごとの種子生産パターンの変動を利用して、種子食者の攻撃を免れる種子を作っている可能性があります。また、種子散布前の種子食害から免れる種子は、他の狭域固有種と比較すると比較的多く、過去に報告されている広域に分布する同属の植物と同程度です。


最後に
以上が論文の簡単な要約です。
Euphorbia pedroiは、かなり高い割合で種子食性昆虫による食害を受けていることが分かります。E. pedroi自体が生息地が限られている狭域固有種であり、食害のレベルによっては個体群の縮小を招きかねません。しかし、それでもE. pedroiが特別に高い割合種子食害を受けているわけではないと結論付けられています。狭域固有種は種子食性昆虫に対して脆弱であるかという議論において、E. pedroiは当てはまらないようです。とはいえ、これはあくまでも一例であり、これをもって狭域固有種が種子食性昆虫に脆弱ではないとは言えないでしょう。狭域固有種と言っても、一年生/多年生、種子生産の時期、種子数、乾燥地/湿潤地、種子食性昆虫の種類、などなどあまりにもパラメータが多いのため、それぞれの違いによる影響を調べない限りははっきりとしたことは言えないかも知れませんね。



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