本日は新刊案内です。「生物の科学・遺伝」という雑誌をたまに買っていますが、今回は植物に関係する内容でしたからご紹介します。今回の特集は材木育種に関する話です。あまり日常では触れることがない話題でしょう。ここでの課題は、日本中に植えられた杉や檜が引き起こす花粉症に対するものです。花粉症はもはや国民病と化しており、その対策は急務です。私も花粉症患者の1人として、見逃せない話題です。


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花粉症と免疫寛容
花粉症とは花粉に対する過剰な免疫がついてしまい、アレルゲンが体内に侵入すると免疫が過剰反応してしまい、様々な症状を引き起こすものです。最終的にはヒスタミンという物質が症状を引き起こすため、花粉症では抗ヒスタミン剤が処方されます。しかし、感作療法などアレルゲンを感作することによりアレルギーを緩和する方法もあります。感作療法はT-regというT細胞が活性化し過剰な免疫を抑制する仕組みで、免疫寛容と呼ばれています。このT-regによる免疫寛容の解明により、坂口志文博士が2025年のノーベル医学・生理学賞を受賞しました。このあたりの経緯についてまとめた記事と、2016年に本誌に掲載された坂口博士の記事が再掲されています。


無花粉品種と花粉症
杉による花粉症は日本国民の約4割が罹患するまさに国民病です。国も対策を取っており、森林総合研究所などが中心となり、花粉の少ない品種、さらには無花粉品種の開発を行なっています。この花粉ができない杉については、実は複数の理由によるものであることが判明しており、その研究結果についても説明されます。また、実は既に花粉の少ない品種についてはある程度の量産がなされており、既存の杉との置き換えが進行しています。花粉が少ないとはいえ、また杉を植えるのはどうかと思いますが、資源管理的な意味合いもあるのかも知れません。
さて、かつて植林された杉は既に30〜50年は経ち成木になっています。成木となると花粉を作る量が増えますから、成木を切って若い苗木に植え替えるだけでも花粉の飛散量は減少します。さらに、花粉の少ない品種ですから、格段に花粉は減少するでしょう。現在は花粉の少ない品種が量産され始めていますが、当然ながら無花粉の品種もこれからは増えていきますから、体制が整えば無花粉品種の生産比率が高くなるはずです。そうなれば、加速度的に飛散する花粉は減少していくでしょう


最後に
しかし、なぜばかばかしいほどの国土が植林された杉に覆われる羽目になったのでしょうか。それは、戦後復興のために木材が必要だったからでしょう。当時は木材の輸入が自由化されておらず、将来的な不足に備える必要があったと聞いた覚えがあります。しかし、現在は海外からの安い輸入材に太刀打ち出来ず、日本の杉は切れば切るほど赤字になる始末です。林業の高齢化もあり、植林された杉は放置され、管理されない山は荒れ放題のようです。植林された杉は自然林と異なり、管理することを前提として植林されているため、管理されないと荒廃してしまいます。生長に合わせて適度に間引きし、枝を伐って節を作らないようにするなど、なかなか手間がかかります。荒廃した杉林は地滑りを起こしやすく、土壌の保水性が弱いため流域の 川の水量が減少したりと問題があります。いずれにせよ、あまり放置してよい問題ではありません。
花粉の少ない品種や無花粉品種は増えていくとは思いますが、国有林ならともかく、私有林は勝手に置き換えることは出来ないでしょう。伐採するだけでも費用が高くつくため、国が主導して動かないとなかなか難しいとは思います。しかし、日本全国に植林された杉はあまりに膨大で、目立って杉花粉が減少するのは数十年後でしょう。私が生きている間に、不快な花粉症から解放されるというのは難しいかも知れません。


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