多肉植物と周囲の環境、特に他の生物との関係が気になっています。なかなかそのような論文は少なく、あっても大抵は受粉に関する話ばかりです。まあ、それも悪くはないのですが、他に何かないかと最近は意識的に探したりしています。
最近、サボテンでは柱サボテンの論文を2つ取り上げましたから、今回も柱サボテンを取り上げます。本日は、Julya Pires Souzaらの2025年の論文、『Increased fruit production in Cipocereus minensis (Cactaceae) associated with termite nests (Isoptera: Termitidae) in Campo Repestre (Brazilian altitude grassland)』をご紹介しましょう。
Campo Repestre地域
調査地域であるCampo Repestreはブラジルの高地草原生態系です。標高900mを越える岩礁草原は、岩の露頭と多様な植生のモザイク、季節により変化する気候、栄養に乏しく保水力の低い土壌を特徴としています。
Meridional Espinhaco山脈のCampo Repestreに固有の円柱状のサボテンであるCipocereus minensisは、人間を含む様々な生物の栄養価の高い食料源となっています。C. minensisは乾季に開花し雨季に結実することが示唆されていました。しかし、近年の長期に渡るモニタリングにより、開花期間や時期は不規則で、開花期はしばしば乾季に集中し、1〜5ヶ月続くことが明らかとなりました。Campo Repestreでは、C. minensisはシロアリの巣に囲まれて生育する様子が観察されています。
調査結果
シロアリの巣がC. minensisに与える影響を調査するため、94週に渡り62本のサボテン、うちシロアリの巣があるものは31本を対象に毎週調査しました。
調査の結果、C. minensisは年間を通じて開花・結実しました。開花は4〜8月の乾季に顕著でしたが、年2〜3回のピークが観察されました。シロアリの巣の有無による季節性の違いはありませんでしたが、シロアリの巣があった場合は508花でシロアリの巣がない場合の231花より花芽が沢山つきました。また、シロアリの巣がない場合の方が開花が集中する傾向が見られ、シロアリの巣がある場合は持続的に開花しました。果実の結実は、3月の調査ではシロアリの巣がある場合には17個見られ巣がない場合には1個しか見られませんでした。5月の調査では、結実はシロアリの巣がある場合には12個見られ、巣がない場合には1個しか見られませんでした。
GLMMs解析の結果では、シロアリの巣がある場合にはサボテンの生産量が多いだけではなく、基質の違いが気温の変動などが影響を与えることが示されました。降水量と平均気温は、シロアリの巣がない場合の方が強く果実の生産量や花芽の数に悪影響を及ぼしていました。
シロアリの巣の影響
①換気システム
気候の変動や極端な低温・高温にあっても、シロアリの巣があるサボテンは、共存することから恩恵を受けている可能性があります。これは、シロアリの巣の微気候制御システムによるものと考えられます。例えば
サバンナの大規模なシロアリのコロニーでは、複雑な表面構造があり空気の循環を介した複雑で効率的な換気システムを備えています。
②栄養条件
巣の土壌や採餌通路などには水分と栄養のホットスポットが形成されます。シロアリの巣は種類により、一般的に温度と水分は安定しており、サボテンに有益であると考えられます。
シロアリは土壌の性質を大きく変化させることが判明しています。物質の分解過程において、シロアリは有機物と無機物を摂取し栄養循環を促進します。シロアリの集団は炭素や窒素、リン、カリウムの循環を媒介します。また、窒素と炭素の固定を促進し、土壌の多孔性や密度、通気性、透水性を高めます。シロアリの巣はサボテンの発芽と生長のための栄養豊富な場所を作り、巣の内外には高濃度の窒素や炭素、粘土、交換性陽イオンが存在します。
Campo Repestreの土壌は栄養に乏しく、特に珪岩地域では土壌は岩石上に白砂層が重なり、酸性でアルミニウムが飽和しています。土壌はカリウム、カルシウム、マグネシウム、交換性陽イオンなどの必須栄養素の含有量が非常に低く、特に窒素やリンが欠乏し、保水力がありません。このような栄養に乏しく乾燥した土壌を持つ植生では、シロアリとその巣から恩恵を受けていると考えられます。
最後に
以上が論文の簡単な要約です。
シロアリの巣がある場所に生えるCipocereus minensisは、花が多く結実も多いという結果でした。明らかにシロアリがサボテンに影響を及ぼしています。しかし、論文で述べられた微気候制御や栄養に関する影響は一般的なシロアリの巣に関する知見であり、Cipocereus minensisに関するものではありません。私も関係があると考えますが、実際に栄養などについての調査は必要でしょう。
さて、サボテンはシロアリの巣と共存しがちなようですが、その理由はなんでしょうか。もちろん、シロアリの巣は栄養や水分が豊富だからなんですが、その場合は栄養や水分があるから発芽が良く実生が生存しやすいのでしょう。しかし、サボテンが生えていることにより本来は砂質で貧弱な土壌が、根により固定されるためシロアリが巣を作りやすいという可能性はないでしょうか。まあ、必ずしもどちらだけということではなく、両方の可能性があっても良いような気もします。サボテンが一方的に利するだけの片利共生か、互いに利がある相利共生なのか気になるところです。
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Campo Repestre地域
調査地域であるCampo Repestreはブラジルの高地草原生態系です。標高900mを越える岩礁草原は、岩の露頭と多様な植生のモザイク、季節により変化する気候、栄養に乏しく保水力の低い土壌を特徴としています。
Meridional Espinhaco山脈のCampo Repestreに固有の円柱状のサボテンであるCipocereus minensisは、人間を含む様々な生物の栄養価の高い食料源となっています。C. minensisは乾季に開花し雨季に結実することが示唆されていました。しかし、近年の長期に渡るモニタリングにより、開花期間や時期は不規則で、開花期はしばしば乾季に集中し、1〜5ヶ月続くことが明らかとなりました。Campo Repestreでは、C. minensisはシロアリの巣に囲まれて生育する様子が観察されています。
調査結果
シロアリの巣がC. minensisに与える影響を調査するため、94週に渡り62本のサボテン、うちシロアリの巣があるものは31本を対象に毎週調査しました。
調査の結果、C. minensisは年間を通じて開花・結実しました。開花は4〜8月の乾季に顕著でしたが、年2〜3回のピークが観察されました。シロアリの巣の有無による季節性の違いはありませんでしたが、シロアリの巣があった場合は508花でシロアリの巣がない場合の231花より花芽が沢山つきました。また、シロアリの巣がない場合の方が開花が集中する傾向が見られ、シロアリの巣がある場合は持続的に開花しました。果実の結実は、3月の調査ではシロアリの巣がある場合には17個見られ巣がない場合には1個しか見られませんでした。5月の調査では、結実はシロアリの巣がある場合には12個見られ、巣がない場合には1個しか見られませんでした。
GLMMs解析の結果では、シロアリの巣がある場合にはサボテンの生産量が多いだけではなく、基質の違いが気温の変動などが影響を与えることが示されました。降水量と平均気温は、シロアリの巣がない場合の方が強く果実の生産量や花芽の数に悪影響を及ぼしていました。
シロアリの巣の影響
①換気システム
気候の変動や極端な低温・高温にあっても、シロアリの巣があるサボテンは、共存することから恩恵を受けている可能性があります。これは、シロアリの巣の微気候制御システムによるものと考えられます。例えば
サバンナの大規模なシロアリのコロニーでは、複雑な表面構造があり空気の循環を介した複雑で効率的な換気システムを備えています。
②栄養条件
巣の土壌や採餌通路などには水分と栄養のホットスポットが形成されます。シロアリの巣は種類により、一般的に温度と水分は安定しており、サボテンに有益であると考えられます。
シロアリは土壌の性質を大きく変化させることが判明しています。物質の分解過程において、シロアリは有機物と無機物を摂取し栄養循環を促進します。シロアリの集団は炭素や窒素、リン、カリウムの循環を媒介します。また、窒素と炭素の固定を促進し、土壌の多孔性や密度、通気性、透水性を高めます。シロアリの巣はサボテンの発芽と生長のための栄養豊富な場所を作り、巣の内外には高濃度の窒素や炭素、粘土、交換性陽イオンが存在します。
Campo Repestreの土壌は栄養に乏しく、特に珪岩地域では土壌は岩石上に白砂層が重なり、酸性でアルミニウムが飽和しています。土壌はカリウム、カルシウム、マグネシウム、交換性陽イオンなどの必須栄養素の含有量が非常に低く、特に窒素やリンが欠乏し、保水力がありません。このような栄養に乏しく乾燥した土壌を持つ植生では、シロアリとその巣から恩恵を受けていると考えられます。
最後に
以上が論文の簡単な要約です。
シロアリの巣がある場所に生えるCipocereus minensisは、花が多く結実も多いという結果でした。明らかにシロアリがサボテンに影響を及ぼしています。しかし、論文で述べられた微気候制御や栄養に関する影響は一般的なシロアリの巣に関する知見であり、Cipocereus minensisに関するものではありません。私も関係があると考えますが、実際に栄養などについての調査は必要でしょう。
さて、サボテンはシロアリの巣と共存しがちなようですが、その理由はなんでしょうか。もちろん、シロアリの巣は栄養や水分が豊富だからなんですが、その場合は栄養や水分があるから発芽が良く実生が生存しやすいのでしょう。しかし、サボテンが生えていることにより本来は砂質で貧弱な土壌が、根により固定されるためシロアリが巣を作りやすいという可能性はないでしょうか。まあ、必ずしもどちらだけということではなく、両方の可能性があっても良いような気もします。サボテンが一方的に利するだけの片利共生か、互いに利がある相利共生なのか気になるところです。
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