今年はあちこちの植物園に行きました。植物園では普段は見かけない珍しい植物が沢山見られますが、それだけではなく普及種であっても巨大に育っていることがありたびたび驚かされます。そんな中、巨大に育つカランコエであるKalanchoe beharensisを東京農業大学のバイオリウム温室で見ました。見上げる高さまで育っており、その巨大さとベンケイソウ科とは思えない威容に驚かされました。というわけで、気になったのて少し調べてみることにしました。
エケベリアやセダムに代表されるベンケイソウ科の植物は一般的には小型で、有茎で木質化するTylecodonや金のなる木(Crassula ovata)などもせいぜい小低木止まりです。しかし、カランコエは人の背丈を越える高さに育つものもあります。セイロンベンケイ(Kalanchoe pinnata)のようにひょろひょろと伸びるものもありますが、K. beharensisのように樹木化するものは珍しいのではないでしょうか。さて、本日はColin Charles Walkerの2021年の記事である、『Kalanchoe beharensis』を見ていきましょう。

Kalanchoe beharensis
東京農業大学バイオリウム(2025年10月)
ベハレンシスの分類
Kalanchoe beharensis(以下、ベハレンシス)はカランコエ属の最大種で、高さは約3mに達します。ベハレンシスは真に樹木状と見なせる数少ないカランコエの1つです。花は直立するか広がり垂れ下がりません。
ベハレンシスはカランコエ亜属(subgene. Kalanchoe)に属します。Boiteau & Allorge-Boiteau(1995)は、非公式群であるLanigeraeに分類し、含まれる14種の中には大型となるものもあります。このグループにはタイプの異なる花を持つものもあり、2つのサブグループの1つは明確な壺型(urceolate)の花冠を持ちます。その花冠の節は縮小し萼片は肉質で著しく縮小しています。植物は無毛、または鏃状あるいは星状の毛を持ちます。2つ目のサブグループは、花冠の裂片が発達し壺型にはならず、萼片は発達し3つに分かれます。このサブグループにベハレンシスは含まれます。近縁種と考えられるのはK. dinklagei(=K. brevisdpala)で、頂花序を持つベハレンシスとは異なり側花序を持ちます。ベハレンシスはマダガスカル南部に自生します。種を名前の由来はBeharaです。

Kalanchoe beharensis
神代植物公園(2022年5月)
ベハレンシスの多様性
ベハレンシスは多様な形態を持ち非常に変異に富んでいます。しかし、それらは正式に記載されたことはありません。ベハレンシスには有効に公表されたことのない2つの名前があります。K. beharensis 'var. aureo-aeneus' H. Jacobsenは、葉の表裏が短い金褐色の毛に覆われます。一方、K. beharensis 'var. subnuda' H. Jacobsenは、葉の裏側にはまばらに毛がありますが、表側はほぼ無毛です。
南アフリカで栽培されるベハレンシスは驚くほど特徴が均一です。薄緑から灰白色の葉は両面がビロード状です。葉の基部の「翼」(※1)は、葉が葉柄に付着する点を遥かに超えて伸びます。南アフリカで栽培されるベハレンシスは強健で、温暖な気候の東部のいくつかの場所で帰化しています。ベハレンシスの樹皮は樹脂質で、葉が落ちた跡には顕著な「spikes」があります。
(※1) 葉の先端と反対側の葉の根元に翼状の張り出しがあり、まるでアロイドの葉のように見えます。
ベハレンシスはK. millotiiとの交配によりK. × hummeliaeが作出されています。K. × hummeliaeは南アフリカの庭園で見られるベハレンシスよりも小型で、生育形態や葉、花は中間的です。

ベハレンシスの幹
東京農業大学バイオリウム(2025年10月)
ベハレンシスの栽培
ベハレンシスは南半球では6月から9月にかけて開花し、その最盛期は7月です。ベハレンシスは自己和合性で自家受精し、非常に微細な塵のような種子を大量に生産します。大量の種子生産に加え、種子は容易に発芽し生存能力も高く、さらに落ちた葉からも芽が出る能力が南アフリカに定着した一因となっています。
ベハレンシスは乾燥に非常に強く、栽培も容易で人気があります。陰鬱な冬に巨大な花序が出て、赤紫色の縞模様のある花を多数咲かせます。土壌は選びません。しかし、ベハレンシスは対霜性が低く、霜が降りなくても寒波により葉や枝を酷く損傷することがあります。繁殖は種子や幹の挿し木、枝挿しによります。また、葉からも簡単に発根します。葉は土中に埋めないで、土の上に置くだけで発根します。
最後に
以上が記事の簡単な要約です。
多肉植物は植物の中でも奇妙なものが多く、特にサボテンやユーフォルビアはその多様なあり方に魅力されてきました。しかし、似た雰囲気のものが多いと思っていたカランコエに、これだけの多様性が存在することに驚きました。植物園における新鮮な驚きが契機ですが、このように調べてみるとさらに興味が湧いてきます。知識を得た上で見れば植物はまた違って見えるに違いありません。
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エケベリアやセダムに代表されるベンケイソウ科の植物は一般的には小型で、有茎で木質化するTylecodonや金のなる木(Crassula ovata)などもせいぜい小低木止まりです。しかし、カランコエは人の背丈を越える高さに育つものもあります。セイロンベンケイ(Kalanchoe pinnata)のようにひょろひょろと伸びるものもありますが、K. beharensisのように樹木化するものは珍しいのではないでしょうか。さて、本日はColin Charles Walkerの2021年の記事である、『Kalanchoe beharensis』を見ていきましょう。

Kalanchoe beharensis
東京農業大学バイオリウム(2025年10月)
ベハレンシスの分類
Kalanchoe beharensis(以下、ベハレンシス)はカランコエ属の最大種で、高さは約3mに達します。ベハレンシスは真に樹木状と見なせる数少ないカランコエの1つです。花は直立するか広がり垂れ下がりません。
ベハレンシスはカランコエ亜属(subgene. Kalanchoe)に属します。Boiteau & Allorge-Boiteau(1995)は、非公式群であるLanigeraeに分類し、含まれる14種の中には大型となるものもあります。このグループにはタイプの異なる花を持つものもあり、2つのサブグループの1つは明確な壺型(urceolate)の花冠を持ちます。その花冠の節は縮小し萼片は肉質で著しく縮小しています。植物は無毛、または鏃状あるいは星状の毛を持ちます。2つ目のサブグループは、花冠の裂片が発達し壺型にはならず、萼片は発達し3つに分かれます。このサブグループにベハレンシスは含まれます。近縁種と考えられるのはK. dinklagei(=K. brevisdpala)で、頂花序を持つベハレンシスとは異なり側花序を持ちます。ベハレンシスはマダガスカル南部に自生します。種を名前の由来はBeharaです。

Kalanchoe beharensis
神代植物公園(2022年5月)
ベハレンシスの多様性
ベハレンシスは多様な形態を持ち非常に変異に富んでいます。しかし、それらは正式に記載されたことはありません。ベハレンシスには有効に公表されたことのない2つの名前があります。K. beharensis 'var. aureo-aeneus' H. Jacobsenは、葉の表裏が短い金褐色の毛に覆われます。一方、K. beharensis 'var. subnuda' H. Jacobsenは、葉の裏側にはまばらに毛がありますが、表側はほぼ無毛です。
南アフリカで栽培されるベハレンシスは驚くほど特徴が均一です。薄緑から灰白色の葉は両面がビロード状です。葉の基部の「翼」(※1)は、葉が葉柄に付着する点を遥かに超えて伸びます。南アフリカで栽培されるベハレンシスは強健で、温暖な気候の東部のいくつかの場所で帰化しています。ベハレンシスの樹皮は樹脂質で、葉が落ちた跡には顕著な「spikes」があります。
(※1) 葉の先端と反対側の葉の根元に翼状の張り出しがあり、まるでアロイドの葉のように見えます。
ベハレンシスはK. millotiiとの交配によりK. × hummeliaeが作出されています。K. × hummeliaeは南アフリカの庭園で見られるベハレンシスよりも小型で、生育形態や葉、花は中間的です。

ベハレンシスの幹
東京農業大学バイオリウム(2025年10月)
ベハレンシスの栽培
ベハレンシスは南半球では6月から9月にかけて開花し、その最盛期は7月です。ベハレンシスは自己和合性で自家受精し、非常に微細な塵のような種子を大量に生産します。大量の種子生産に加え、種子は容易に発芽し生存能力も高く、さらに落ちた葉からも芽が出る能力が南アフリカに定着した一因となっています。
ベハレンシスは乾燥に非常に強く、栽培も容易で人気があります。陰鬱な冬に巨大な花序が出て、赤紫色の縞模様のある花を多数咲かせます。土壌は選びません。しかし、ベハレンシスは対霜性が低く、霜が降りなくても寒波により葉や枝を酷く損傷することがあります。繁殖は種子や幹の挿し木、枝挿しによります。また、葉からも簡単に発根します。葉は土中に埋めないで、土の上に置くだけで発根します。
最後に
以上が記事の簡単な要約です。
多肉植物は植物の中でも奇妙なものが多く、特にサボテンやユーフォルビアはその多様なあり方に魅力されてきました。しかし、似た雰囲気のものが多いと思っていたカランコエに、これだけの多様性が存在することに驚きました。植物園における新鮮な驚きが契機ですが、このように調べてみるとさらに興味が湧いてきます。知識を得た上で見れば植物はまた違って見えるに違いありません。
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