さて、サボテン科全体を分子系統により分類した論文の続きです。引き続きJurriaan M. de Vosらの2025年の論文、「Phylogenomics and classification of Cactaceae based on hundreds of nuclear genes」をご紹介します。
まずは、サボテン科の大まかな分子系統を示します。
本日はMaihuenia亜科とBlossfeldia亜科、さらにCactus亜科の一部を扱います。
┏Leuenbergerioideae
┏┫
┃┗Pereskioideae
┃
┃┏Opuntioideae
┃┃
┗┫┏Maihuenioideae
┃┃
┗┫┏Blossfeldioideae
┗┫
┗Cactoideae
④Maihuenia亜科
含まれる属: Maihuenia
多肉質の主根を持つ矮性低木で、大きく平らなクッション状の茎を形成します。多肉質でやや分節した円柱状の茎を持ちます。顕著な長命の円柱状の葉を持ちます。
アルゼンチン南部とチリにのみ分布する2種のMaihueniaは、塊根はPereskia humboldtiiとよく類似します。茎の表皮には気孔は少なく、直ぐに樹皮に変わります。茎と葉には粘液質が豊富に含まれ、「派生した南部のPereskia」と解釈されています。
⑤Blossfeldia亜科
含まれる属: Blossfeldia
単独で扁平化した小型の、あるいは互いに重なり合い密集したクッション状となります。目に見える葉はなく、痕跡程度まで縮小し、アレオーレは短く目立たないフェルト状の毛が数本生える程度となっています。
Nyffeler(2002)によると、「真の」サボテン=Cactoideaeの多様性全体の姉妹群です。系統的に孤立していることは、すべての研究において裏付けられています。他のサボテンと比較すると、特徴の組み合わせが独特で、単型属であるBlossfeldiaを単属亜科に分類することが正当化されます。

Blossfeldia liliputana
JSS、サボテン・多肉植物展(2025年10月)
⑥Cactus亜科(※1)
※1: Rhipsalidoideae、Cereoideae、Calymmanthioideaeを含む。
矮性から小型、大型の低木から樹木状で、単独で分岐しないものや枝分かれして樹冠を持つものもあります。稀に大きな塊茎を持つものや、湿潤な森林地帯では半着生となるものもあります。葉は顕微鏡的な痕跡まで縮小し、アレオーレを持ちます。花のサイズは侍様々で、直径40cmに達するものもあります。花は昼行性または夜行性です。
これは「真の」サボテンであり、目立った葉を持たない球形から円柱形で、サボテンの生育形態の多様性のすべてを含みます。Cactoideae(Cactus亜科)は伝統的にCereoideaeという誤った名称で知られていました。Blossfeldiaを除けば、Cactus亜科の範囲は異論なく分類されてきましたが、やがて分子系統によりBlossfeldiaは除外されました。Cactus亜科の初期に分岐したLymanbensoniaとCopiapoaは系統学的な位置が長らく不明で、Nyffeler & Eggli(2007)により「孤児」と表現されました。
Cactus亜科の分子系統(連レベル)
本日はLymanbensonia連とCopiapoa連を扱います。
┏Lymanbensonieae
┏┫
┃┗Copiapoeae
┃
┫┏Cacteae
┃┃
┗┫┏Phyllocacteae
┃┃
┗┫ ┏Fraileeae
┃┏┫
┃┃┗Rhipsalideae
┗┫
┃┏Notocacteae
┗┫
┗Cereeae
★Lymanbensonia連(※2)
含まれる属: Calymmanthium、Lymanbensonia(※3)
※2: Calymmantheaeを含む。※3: Acanthorhipsalisを含む。
高さ8mに達する小高木、あるいは着生で広がり垂れ下がります。茎は扁平または3〜4 本の細い翼状の鋸歯があります。
Buxbaum(1969)はCalymmanthiumを亜科の中でもっとも原始的な属の1つと解釈しました。(解析した)遺伝子が少ないWallace(2002)の分子生物学的研究でも裏付けられ、CalymmanthiumをCactus亜科の他のすべての属の姉妹群としました。Calymmanthiumを発見したRitter(1981)は、Calymmanthiumを特殊化した高度な系統と見なしていました。Korotkovaら(2010)は、AcanthorhipsalisまたはPfeifferaに分類されていた4種を、単型属Calymmanthiumの姉妹群として発見しました。したがって、Lymanbensoniaは独立した属として分類されるべきです。
★Copiapoa連
含まれる属: Copiapoa(※4)
※4: Pilocopiapoaを含む。
球形から短円柱形の単独からクッション状の低木。一部は地下に塊茎を持ち、地上部は小さく草食動物の捕食時に脱落します。茎は節で分かれていません。花は昼行性で黄色で、稀にピンク色を帯びます。果実は成熟すると乾燥し上部が開きます。
約30種からなるこの謎めいた属は、すべてチリ中部から北部にかけてアタカマ山脈西端および海岸線とコルディリェラ山脈沿岸部に固有です。Copiapoaの分類は長らく論争の的になってきました。頂端付近に黄色い花を沢山咲かせることから、伝統的にNotocactusに分類されてきました。しかし、すべての分子生物学的研究では、CopiapoaをNotocactus連に分類することは誤りであることを示しています。Copiapoaは解析により多様で、未分類の孤児種として扱われていました。本研究では、Cactus亜科の中ではCopiapoa連は孤立しています。まだ完全に解明されていない位置付けを強調するために独自の単属種としました。

Copiapoa cinerea
春の多肉植物・サボテン展示会、川口緑地センター樹里庵(2025年4月)

Copiapoa dealbata
神代植物公園(2022年5月)
最後に
昨日に引き続き最新のサボテン科の分子系統を見ています。本日扱ったMaihueniaは2種、Blossfeldiaは1種と、小さな属ですが、それぞれが亜科を担っています。それだけ、独特で遺伝的に異なるということがわかります。さらに、Cactus亜科のLymanbensonia連とCopiapoa連についても解説されました。Lymanbensonia連のLymanbensoniaは5種、Calymmanthiumは1種からなる小さな分類群ですが、いずれも一般的に馴染みがあるサボテンではありません。逆にCopiapoa連のCopiapoaは有名ですが、昔から分類学者を悩ませてきたサボテンです。独自性が高いことから、ほとんどのCactus亜科の姉妹群となる配置となっています。
記事を書くのに思ったより時間がかかり、続けてすべて書くのは難しいので、続きはまた来週となります。
ちなみに、本論文は案を提唱している段階ですので、現在認められている分類ではないことに注意が必要です。今回扱った範囲の現在の属分類を一応お示しして終わります。
Blossfeldia(1種)
Calymmanthium(1種、Diploperianthiumを含む)、Lymanbensonia(5種)、Acanthorhipsalis(→Lepismiumに含まれる)
Copiapoa(39種、Pilocopiapoaを含む)
ブログランキング参加中です。
下のにほんブログ村のバナーをクリックしていただけますと嬉しく思います。

にほんブログ村

にほんブログ村
まずは、サボテン科の大まかな分子系統を示します。
本日はMaihuenia亜科とBlossfeldia亜科、さらにCactus亜科の一部を扱います。
┏Leuenbergerioideae
┏┫
┃┗Pereskioideae
┃
┃┏Opuntioideae
┃┃
┗┫┏Maihuenioideae
┃┃
┗┫┏Blossfeldioideae
┗┫
┗Cactoideae
④Maihuenia亜科
含まれる属: Maihuenia
多肉質の主根を持つ矮性低木で、大きく平らなクッション状の茎を形成します。多肉質でやや分節した円柱状の茎を持ちます。顕著な長命の円柱状の葉を持ちます。
アルゼンチン南部とチリにのみ分布する2種のMaihueniaは、塊根はPereskia humboldtiiとよく類似します。茎の表皮には気孔は少なく、直ぐに樹皮に変わります。茎と葉には粘液質が豊富に含まれ、「派生した南部のPereskia」と解釈されています。
⑤Blossfeldia亜科
含まれる属: Blossfeldia
単独で扁平化した小型の、あるいは互いに重なり合い密集したクッション状となります。目に見える葉はなく、痕跡程度まで縮小し、アレオーレは短く目立たないフェルト状の毛が数本生える程度となっています。
Nyffeler(2002)によると、「真の」サボテン=Cactoideaeの多様性全体の姉妹群です。系統的に孤立していることは、すべての研究において裏付けられています。他のサボテンと比較すると、特徴の組み合わせが独特で、単型属であるBlossfeldiaを単属亜科に分類することが正当化されます。

Blossfeldia liliputana
JSS、サボテン・多肉植物展(2025年10月)
⑥Cactus亜科(※1)
※1: Rhipsalidoideae、Cereoideae、Calymmanthioideaeを含む。
矮性から小型、大型の低木から樹木状で、単独で分岐しないものや枝分かれして樹冠を持つものもあります。稀に大きな塊茎を持つものや、湿潤な森林地帯では半着生となるものもあります。葉は顕微鏡的な痕跡まで縮小し、アレオーレを持ちます。花のサイズは侍様々で、直径40cmに達するものもあります。花は昼行性または夜行性です。
これは「真の」サボテンであり、目立った葉を持たない球形から円柱形で、サボテンの生育形態の多様性のすべてを含みます。Cactoideae(Cactus亜科)は伝統的にCereoideaeという誤った名称で知られていました。Blossfeldiaを除けば、Cactus亜科の範囲は異論なく分類されてきましたが、やがて分子系統によりBlossfeldiaは除外されました。Cactus亜科の初期に分岐したLymanbensoniaとCopiapoaは系統学的な位置が長らく不明で、Nyffeler & Eggli(2007)により「孤児」と表現されました。
Cactus亜科の分子系統(連レベル)
本日はLymanbensonia連とCopiapoa連を扱います。
┏Lymanbensonieae
┏┫
┃┗Copiapoeae
┃
┫┏Cacteae
┃┃
┗┫┏Phyllocacteae
┃┃
┗┫ ┏Fraileeae
┃┏┫
┃┃┗Rhipsalideae
┗┫
┃┏Notocacteae
┗┫
┗Cereeae
★Lymanbensonia連(※2)
含まれる属: Calymmanthium、Lymanbensonia(※3)
※2: Calymmantheaeを含む。※3: Acanthorhipsalisを含む。
高さ8mに達する小高木、あるいは着生で広がり垂れ下がります。茎は扁平または3〜4 本の細い翼状の鋸歯があります。
Buxbaum(1969)はCalymmanthiumを亜科の中でもっとも原始的な属の1つと解釈しました。(解析した)遺伝子が少ないWallace(2002)の分子生物学的研究でも裏付けられ、CalymmanthiumをCactus亜科の他のすべての属の姉妹群としました。Calymmanthiumを発見したRitter(1981)は、Calymmanthiumを特殊化した高度な系統と見なしていました。Korotkovaら(2010)は、AcanthorhipsalisまたはPfeifferaに分類されていた4種を、単型属Calymmanthiumの姉妹群として発見しました。したがって、Lymanbensoniaは独立した属として分類されるべきです。
★Copiapoa連
含まれる属: Copiapoa(※4)
※4: Pilocopiapoaを含む。
球形から短円柱形の単独からクッション状の低木。一部は地下に塊茎を持ち、地上部は小さく草食動物の捕食時に脱落します。茎は節で分かれていません。花は昼行性で黄色で、稀にピンク色を帯びます。果実は成熟すると乾燥し上部が開きます。
約30種からなるこの謎めいた属は、すべてチリ中部から北部にかけてアタカマ山脈西端および海岸線とコルディリェラ山脈沿岸部に固有です。Copiapoaの分類は長らく論争の的になってきました。頂端付近に黄色い花を沢山咲かせることから、伝統的にNotocactusに分類されてきました。しかし、すべての分子生物学的研究では、CopiapoaをNotocactus連に分類することは誤りであることを示しています。Copiapoaは解析により多様で、未分類の孤児種として扱われていました。本研究では、Cactus亜科の中ではCopiapoa連は孤立しています。まだ完全に解明されていない位置付けを強調するために独自の単属種としました。

Copiapoa cinerea
春の多肉植物・サボテン展示会、川口緑地センター樹里庵(2025年4月)

Copiapoa dealbata
神代植物公園(2022年5月)
最後に
昨日に引き続き最新のサボテン科の分子系統を見ています。本日扱ったMaihueniaは2種、Blossfeldiaは1種と、小さな属ですが、それぞれが亜科を担っています。それだけ、独特で遺伝的に異なるということがわかります。さらに、Cactus亜科のLymanbensonia連とCopiapoa連についても解説されました。Lymanbensonia連のLymanbensoniaは5種、Calymmanthiumは1種からなる小さな分類群ですが、いずれも一般的に馴染みがあるサボテンではありません。逆にCopiapoa連のCopiapoaは有名ですが、昔から分類学者を悩ませてきたサボテンです。独自性が高いことから、ほとんどのCactus亜科の姉妹群となる配置となっています。
記事を書くのに思ったより時間がかかり、続けてすべて書くのは難しいので、続きはまた来週となります。
ちなみに、本論文は案を提唱している段階ですので、現在認められている分類ではないことに注意が必要です。今回扱った範囲の現在の属分類を一応お示しして終わります。
Blossfeldia(1種)
Calymmanthium(1種、Diploperianthiumを含む)、Lymanbensonia(5種)、Acanthorhipsalis(→Lepismiumに含まれる)
Copiapoa(39種、Pilocopiapoaを含む)
ブログランキング参加中です。
下のにほんブログ村のバナーをクリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村
にほんブログ村

コメント