生物には何かに擬態するものもいます。とは言え、擬態と言っても様々な種類があります。分かりやすい例では、目立たないように環境に擬態(隠蔽擬態)することは一般的です。それは捕食者の目を逃れるだけではなく、環境に溶け込んで待ち伏せ型の狩りをする捕食者(攻撃擬態)もいます。複雑な擬態としては、有毒生物に似た姿となり捕食を免れるベイツ型擬態や、毒や不味などの捕食者に対し不快となるような特徴を共通した生物群が互いに似た姿をとることをミュラー型擬態と呼びます。ミュラー型擬態において似た姿をとる生物群を、擬態環(mimicry rings)と呼びます。さて、本日はトゲを持つサボテンなどの植物が、ミュラー型擬態を行っている可能性を指摘した、Simcha Lev-Yadunの2009年の論文、『Mullerian mimicry in aposematic spiny plants』をご紹介しましょう。
トゲは警告する
警告色とは、有毒あるいは危険な、不快な要素を持つ生物が、他の動物に視覚的にそれを知らせる現象です。警告色の進化は、敵が警告色の視覚シグナルを、危険である、損害を生じる、または関わることに利益がないことと関連付け、獲物として回避する能力に基づきます。警告色を持つ動物の典型的な色合いは、黄色、オレンジ色、赤色、紫色、褐色、黒色、白色の組み合わせです。多くのトゲのある植物は、防御構造であるトゲが通常はカラフルであり目立つため、それが警告色であることが提案されています。
ミュラー型擬態
視覚的に警告を示すトゲを有する植物は、ミュラー型擬態の擬態環を形成することを提唱します。擬態環の存在を考察するには、類似したシグナルと、捕食者や植物に対する草食動物の縄張りの重複の2つの要素が必要です。
ミュラー型擬態は旧世界と新世界にあり、サボテン科、リュウゼツラン(Agave)属、アロエ属、ユーフォルビア属、白いトゲを持つアカシアなどが良く研究されています。これらの植物には非常に強い形態学的類似性が見られます。サボテンには共通する2種類のトゲの目立ち方があります。1つは色鮮やかなトゲ、もう1つは茎のトゲに伴う白い斑点や、白色あるいは色鮮やかな縞模様です。これらの警告色は、アガヴェ、アロエ、ユーフォルビアのトゲにも顕著に見られます。このうち、アガヴェやアロエ、ユーフォルビアには有毒のものが含まれ、これらの種はミュラー型擬態の擬態環を形成する可能性があることを示唆します。
4つの擬態環
分布域が重複し、少なくとも一部の草食動物と分布を共有する一部のグループはミュラー型擬態の擬態環を形成します。
1つ目は北米の広い地域で分布域が重複する、サボテンとアガヴェによるものです。2つ目はアフリカのアロエやユーフォルビア、そして非常に目立つ白いトゲのアカシアによるものです。3つ目はオハイオ州南東部のトゲのある植物に共通する警告色に見られます。4つ目は近東に分布するトゲのあるキク科植物で、共通する黄色のトゲを持つ29種が発見されています。この黄色のトゲを持つ植物の一部は南ヨーロッパにも分布することから、ミュラー型擬態の擬態環は南ヨーロッパでも広く見られることは明らかです。
これらのことから、ミュラー型擬態の擬態環は植物にとって一般的であり、研究されていない多くのトゲを持つ植物もミュラー型擬態を形成している可能性が高いと結論付けました。このような擬態環は類似した色や臭気を持つ有毒植物でも形成される可能性があります。
最後に
以上が論文の簡単な要約です。
最近、続けてトゲの警告色についての論考をご紹介しています。サボテンやユーフォルビアの新しいトゲは派手で目立ちますが、わざわざコストをかけて色素を作っている以上は、何らかの利点がある可能性が高いでしょう。さて、そうなると、問題はミュラー型擬態です。共通して派手な目立つトゲを持つ植物群は、草食動物に対して警告色としての作用が強化される可能性があります。鮮やかなトゲを種や分類群の違いに関わらず、草食動物が鮮やかなトゲをリスクとして避ける傾向があるのならば似ていることにも意味が出てきます。1種ではなく、複数の種において共通する草食動物にネガティブな要素があれば、草食動物の教育効果も高いのでしょう。
トゲのある植は沢山ありますが、必ずしもそれらがミュラー型擬態であるわけではないでしょう。しかし、北米のサボテンやアフリカのユーフォルビアは、同じ分布域に共通する要素がある植物が集中しているのは、なかなかに面白い事実ですね。
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警告色とは、有毒あるいは危険な、不快な要素を持つ生物が、他の動物に視覚的にそれを知らせる現象です。警告色の進化は、敵が警告色の視覚シグナルを、危険である、損害を生じる、または関わることに利益がないことと関連付け、獲物として回避する能力に基づきます。警告色を持つ動物の典型的な色合いは、黄色、オレンジ色、赤色、紫色、褐色、黒色、白色の組み合わせです。多くのトゲのある植物は、防御構造であるトゲが通常はカラフルであり目立つため、それが警告色であることが提案されています。
ミュラー型擬態
視覚的に警告を示すトゲを有する植物は、ミュラー型擬態の擬態環を形成することを提唱します。擬態環の存在を考察するには、類似したシグナルと、捕食者や植物に対する草食動物の縄張りの重複の2つの要素が必要です。
ミュラー型擬態は旧世界と新世界にあり、サボテン科、リュウゼツラン(Agave)属、アロエ属、ユーフォルビア属、白いトゲを持つアカシアなどが良く研究されています。これらの植物には非常に強い形態学的類似性が見られます。サボテンには共通する2種類のトゲの目立ち方があります。1つは色鮮やかなトゲ、もう1つは茎のトゲに伴う白い斑点や、白色あるいは色鮮やかな縞模様です。これらの警告色は、アガヴェ、アロエ、ユーフォルビアのトゲにも顕著に見られます。このうち、アガヴェやアロエ、ユーフォルビアには有毒のものが含まれ、これらの種はミュラー型擬態の擬態環を形成する可能性があることを示唆します。
4つの擬態環
分布域が重複し、少なくとも一部の草食動物と分布を共有する一部のグループはミュラー型擬態の擬態環を形成します。
1つ目は北米の広い地域で分布域が重複する、サボテンとアガヴェによるものです。2つ目はアフリカのアロエやユーフォルビア、そして非常に目立つ白いトゲのアカシアによるものです。3つ目はオハイオ州南東部のトゲのある植物に共通する警告色に見られます。4つ目は近東に分布するトゲのあるキク科植物で、共通する黄色のトゲを持つ29種が発見されています。この黄色のトゲを持つ植物の一部は南ヨーロッパにも分布することから、ミュラー型擬態の擬態環は南ヨーロッパでも広く見られることは明らかです。
これらのことから、ミュラー型擬態の擬態環は植物にとって一般的であり、研究されていない多くのトゲを持つ植物もミュラー型擬態を形成している可能性が高いと結論付けました。このような擬態環は類似した色や臭気を持つ有毒植物でも形成される可能性があります。
最後に
以上が論文の簡単な要約です。
最近、続けてトゲの警告色についての論考をご紹介しています。サボテンやユーフォルビアの新しいトゲは派手で目立ちますが、わざわざコストをかけて色素を作っている以上は、何らかの利点がある可能性が高いでしょう。さて、そうなると、問題はミュラー型擬態です。共通して派手な目立つトゲを持つ植物群は、草食動物に対して警告色としての作用が強化される可能性があります。鮮やかなトゲを種や分類群の違いに関わらず、草食動物が鮮やかなトゲをリスクとして避ける傾向があるのならば似ていることにも意味が出てきます。1種ではなく、複数の種において共通する草食動物にネガティブな要素があれば、草食動物の教育効果も高いのでしょう。
トゲのある植は沢山ありますが、必ずしもそれらがミュラー型擬態であるわけではないでしょう。しかし、北米のサボテンやアフリカのユーフォルビアは、同じ分布域に共通する要素がある植物が集中しているのは、なかなかに面白い事実ですね。
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