先週はサボテンやアガヴェ、アロエ、ユーフォルビアの色のついたトゲが、草食動物に対する警告色として働いているという論文をご紹介しました。本日は同じ著者によりトゲの色の変化に関する論文を見ていきます。それは、Simcha Lev-Yadun & Gidi Ne'emanの2006年の論文、『Color changes in old aposematic thorns, spines, and prickles』です。
トゲの警告色については、以下リンクをご参照下さい。
トゲの変化とコスト
保護器官の成熟に伴いトゲの色は変化し、目立たなくなります。例えばバラ属の植物では、枝が若く緑色の時は、黄色やオレンジ色、赤色、褐色、黒色のトゲは目立ちます。しかし、枝が緑色から褐色あるいは灰色に変わると、トゲは元の色を喪失し目立たなくなります。
このようなトゲの色の変化は一般的ですが、必須ではありません。薄い着色層が一時的であるのは、必要なのはより少ない資源であるため、トゲへの着色に対する投資の削減となります。トゲを長期間に渡りカラフルに保つためにはその分だけコストがかかります。単純にトゲを構成する素材が最初からカラフルであるという考え方もありますが、トゲは変色してもトゲの機能を失いませんし、そもそも着色層はトゲの鋭さに寄与しません。

Euphorbia poissoniiの赤く美しいトゲも、やがて退色し目立たなくなります。
色の変化は適応的
植物が有色器官を生み出すためのコストには3種類あります。
①色素合成のための資源割り当ての必要性。
②光合成と生産性の低下。
③目立つ事による草食動物の誘引。
しかし、トゲの色の変化は適応的であり、何らかの利点をもたらしているはずです。防御対象の器官の生長や成熟に伴い、草食動物に対する脆弱性は低下します。このような、防御コストの低減は一般的です。例えば、アカシアなどの木本は、低い位置の枝のトゲは高い位置のトゲよりも長くなります。また、幼木のみ大きなトゲがあり、成熟するとトゲを失うものもあります。さらに、草食動物の食害後にトゲのサイズと数が増加することも知られています。
これらのトゲの色の変化は、広範囲な分類学的分布を示すことから、この形質は裸子植物と被子植物の両方で、おそらく視覚指向性を持つ草食動物による淘汰に応じ、繰り返し進化してきたことを示唆しています。
最後に
以上が論文の簡単な要約です。
論文で主張されていることは実にシンプルで、要するに古いトゲが変色して元のカラフルな色彩を失うのは、理に適っているというだけの話です。カラフルな色彩を維持するためには、トゲの形成後も色素を合成して補充し続ける必要があります。カラフルなトゲは警告色として草食動物にアピールすることを考えたら、カラフルなトゲの維持にも意味があるような気もしてしまいます。しかし、変色したトゲは古い幹や枝にあるわけですから、木質化していて硬く葉もないか少ないでしょう。守るべき新しい枝先には生長点があり新しい葉がつきますから、カラフルなトゲで警告を発することに意味があります。古いトゲのカラフルな色彩を維持するためにもコストがかかりますから、新しいトゲだけにコストを割くのは合理的でしょう。
そういえば、サボテンでも若い苗のうちはトゲが強く、生長するとトゲが弱くなるものもありますね。これは、草食動物の食害を受けやすいうちは強いトゲで防御し、草食動物の食害を受けにくいサイズになったらコストがかかるトゲに資源を割かなくなるということでしょう。
トゲの運用にはコストがかかり、それは食害に対するリスクとベネフィットとの関係により、最適化されて進化してきたのでしょう。
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トゲの変化とコスト
保護器官の成熟に伴いトゲの色は変化し、目立たなくなります。例えばバラ属の植物では、枝が若く緑色の時は、黄色やオレンジ色、赤色、褐色、黒色のトゲは目立ちます。しかし、枝が緑色から褐色あるいは灰色に変わると、トゲは元の色を喪失し目立たなくなります。
このようなトゲの色の変化は一般的ですが、必須ではありません。薄い着色層が一時的であるのは、必要なのはより少ない資源であるため、トゲへの着色に対する投資の削減となります。トゲを長期間に渡りカラフルに保つためにはその分だけコストがかかります。単純にトゲを構成する素材が最初からカラフルであるという考え方もありますが、トゲは変色してもトゲの機能を失いませんし、そもそも着色層はトゲの鋭さに寄与しません。

Euphorbia poissoniiの赤く美しいトゲも、やがて退色し目立たなくなります。
色の変化は適応的
植物が有色器官を生み出すためのコストには3種類あります。
①色素合成のための資源割り当ての必要性。
②光合成と生産性の低下。
③目立つ事による草食動物の誘引。
しかし、トゲの色の変化は適応的であり、何らかの利点をもたらしているはずです。防御対象の器官の生長や成熟に伴い、草食動物に対する脆弱性は低下します。このような、防御コストの低減は一般的です。例えば、アカシアなどの木本は、低い位置の枝のトゲは高い位置のトゲよりも長くなります。また、幼木のみ大きなトゲがあり、成熟するとトゲを失うものもあります。さらに、草食動物の食害後にトゲのサイズと数が増加することも知られています。
これらのトゲの色の変化は、広範囲な分類学的分布を示すことから、この形質は裸子植物と被子植物の両方で、おそらく視覚指向性を持つ草食動物による淘汰に応じ、繰り返し進化してきたことを示唆しています。
最後に
以上が論文の簡単な要約です。
論文で主張されていることは実にシンプルで、要するに古いトゲが変色して元のカラフルな色彩を失うのは、理に適っているというだけの話です。カラフルな色彩を維持するためには、トゲの形成後も色素を合成して補充し続ける必要があります。カラフルなトゲは警告色として草食動物にアピールすることを考えたら、カラフルなトゲの維持にも意味があるような気もしてしまいます。しかし、変色したトゲは古い幹や枝にあるわけですから、木質化していて硬く葉もないか少ないでしょう。守るべき新しい枝先には生長点があり新しい葉がつきますから、カラフルなトゲで警告を発することに意味があります。古いトゲのカラフルな色彩を維持するためにもコストがかかりますから、新しいトゲだけにコストを割くのは合理的でしょう。
そういえば、サボテンでも若い苗のうちはトゲが強く、生長するとトゲが弱くなるものもありますね。これは、草食動物の食害を受けやすいうちは強いトゲで防御し、草食動物の食害を受けにくいサイズになったらコストがかかるトゲに資源を割かなくなるということでしょう。
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