フロリダの代表的な蘇鉄と言えば、Zamia floridaです。しかし、フロリダナは実はZamia integrifoliaで、フロリダナは異名であるという話をたびたびしてきました。
さて、最近フロリダナ改めインテグリフォリアの学名を確認したところ、なんとインテグリフォリアが5変種に再分類されていることに気が付きました。ということで、本日ご紹介するのはDaniel B. Wardの2016年の論文、『Key to the flora of Florida - 32, Zamia (Zamiaceae)』です。フロリダに分布するザミアを分類しています。
フロリダのザミア
現在、フロリダには2種類のザミアが分布しています。1つはZamia furfuraceaで、南フロリダでは玄関先や庭に植栽され、「Cardboard Palm」(段ボールヤシ)と呼ばれている外来種です。栽培個体ではないZ. furfuraceaは2000年頃に初めて確認されました。もう1つは様々な時期に複数の学名がつけられており、Zamia pumila、Zamia integrifolia、Zamia floridanaの名前があります。

Zamia furfuracea
ザミアの歴史
ザミアは17世紀から認識され、17世紀末からオランダで、おそらくはヨーロッパの他の地域でも、栽培されてきました。現在の国際植物命名規約 (I.C.B.N)に基づく学名は、1762年にCarl von Linneにより命名されたZamia pumilaでした。しかし、von Linneのもとに標本はなく、ライデンとアムステルダムで栽培された植物に関する記憶とメモ、他の著者の記述しかありませんでした。von Linneは種自体については、「pumila」あるいは「矮性(dwarf.)」という説明しかしませんでしたが、von Linneがオランダにいた時に知っていた大きな蘇鉄と比較したことは間違いありません。その大きな蘇鉄をvon LinneはZamia frondibus pennatis(1937)と命名し、Linne filius(Linneの息子)はZamia furfuraceaと命名しました。
Z. pumilaという名前は、個人の解釈により様々に使われてきました。1908年にEckenwalderがZ. pumilaを「伝統的に知られている一般的な西インド諸島の蘇鉄」と定義しました。このことにより、西インド諸島の蘇鉄は単一の種ということになってしまいました。タイプはJan Commelijn(1697)の図版により、細長い卵形の先細りの小葉を持つ植物で、先端は鋭く葉縁には間隔の広い鋸歯があるとしています。
しかし、Commelijnの図版に対応する標本は稀で、北米の植物標本館(オンラインによる)では見つかりませんでした。イギリスのキューガーデンにはZ. pumilaと特定される古い標本がありますが、ライデン植物園からきたようです。この標本はCommelijnの図版と特徴がよく一致します。Commelijnは「Insulae Hispaniolae」(ドミニカ共和国、ハイチ)からきたと述べています。しかし、現在西インド諸島からはそのような特徴の蘇鉄は知られていません。しかし、Eckenwalderによりタイプに指定されたCommelijnの図版は、既知の植物の形態学的な実在により確認されており、フロリダで知られているあらゆる植物とも異なるため、Zamia pumilaという名前は適用不可能です。
インテグリフォリアとフロリダナ
Z. pumilaのタイプがフロリダが起源ではないことは明らかですが、Zamia integrifoliaとZamia floridanaはフロリダの標本に基づいて分類されています。1789年に命名されたZ. integrifoliaはフロリダ半島で栽培された植物に基づき、1868年に命名されたZ. floridanaはフロリダ半島の西海岸で収集された標本に基づいています。この2つのタイプ標本は非常に似ているため、両者の間に違いを見いだせず、単一の種を示しているとされました。
フロリダの蘇鉄に使われる名前には論争があり、先取権の原理により命名がより早いZ. integrifoliaが優先されるように見えます。しかし、Z. integrifoliaはLinne filiusが既存の利用可能な名前であるZ. pumilaを同義語として引用したため、現代の規定においては誤りであると考えられました。命名規約は同義語として引用された古い名前が、新しい分類群に使用されるべきであった場合、新しい名前は不要であり不当と規定しています。さらに、発表時に違法であった名前は、特別な措置がない限りは後に合法とはならないと規定しています。
ただし、命名規約は常設の委員会に訴えることで、規則を無効とすることを許可しています。分類学者であるD. W. Stevenson & J. L. Reveal(2011)は、種子植物特別委員会に請願しZ. integrifoliaという名前を保存するように求めました。その正当性は、Z. integrifoliaはZ. floridanaより頻繁に使用されており、その名前を保存することにより安定性が確保出来るというものでした。委員会は請願を支持し、Z. integrifoliaが正しい名前となりました。

Zamia integrifolia
インテグリフォリアの多様性
フロリダで観察されるZ. integrifolia sensu lato(広義のインテグリフォリア)には、分類学上の注目を集めるほどの多様性があります。J. K. Small(1933)は、フロリダの蘇鉄をZ. integrifolia sensu stricto(狭義のインテグリフォリア)、Z. angustifolia、Z. silvicola、Z. umbrosaの4種に分けました。
Z. angustifolia(1789)は正当な名前で、バハマ諸島や西インド諸島の蘇鉄に正しく適応されています。しかし、SmallはZ. integrifoliaをフロリダの蘇鉄に使用してしまいました。Z. angustifoliaのコーンは短く尖った頂端を持つ暗褐色から黒色のコーンを持ち、対するZ. integrifoliaは頂端か切形か鈍く赤褐色のコーンを持ちます。Smallはコーンを観察しないで識別したようです。Z. angustifoliaと識別出来る蘇鉄は、フロリダでは知られていません。
著者は観察結果から、形態学的変異は集団内では一貫していることを確信しました。中間種も見られますが、集団全体の大部分は、数個の明確に異なる形態型に割り当てることが出来ます。これらのグループは変種として認識されます。
①変種インテグリフォリア
Zamia integrifolia var. integrifolia
Z. integrifoliaの典型は、1789年にLinne filiusが使用したタイプに基づいているいます。使用した資料(生きた植物)は、26枚の小葉と雄花を持つ1枚の葉で表されています。小葉の幅は狭く約8mmで、一様にわずかにヘラ状です。この形状は広く普及しているフロリダのザミアでは稀です。
キューガーデンの植物の正確な起源は記録されていませんが、推測することは出来ます。入植者のAndrew Turnbullにより、1767年にザミアがCharlestonのアレクサンダー・ガーデンに、後にキューガーデンのAitonに寄贈されました。Turnbullに馴染み深いSt. Augustine近郊は長年に渡る撹乱により植生は痕跡もありません。しかし、New Smyrnaのすぐ西にあるTurnbullが農奴を使って藍を育てていた畑の近くには、薄い砂地の森がありザミアが現在も繁茂しています。この植物はZ. integrifolia var. integrifoliaのtopotype(同地基準標本)として役に立つかも知れません。
②変種ウンブロサ
Zamia integrifolia var. umbrosa
(J. K. Small) D. B. Ward, comb. nov.
Zamia umbrosa(1921)はフロリダの蘇鉄に命名された正当な名前です。この名前は一般的に無視されるか、Z. integrifoliaの異名とされてきました。
植物のコレクターが、フロリダに2つのザミアが存在することに気がついたのは20世紀初頭でした。H. J. Webber(1901)によると、1つは「フロリダ半島南部」と記載されたZ. floridanaで、もう1つは「フロリダ半島中部、特に東海岸」のZ. pumilaでした。これらは小葉の幅で区別され、3〜7mmと8〜16mmでした。明らかにWebberの分類は、現在のZ. integrifoliaとZ. umbrosaを表しています。
S. J. Newell(1989)による葉の測定による研究では、フロリダのザミアは5つの集団があるとしています。Z. umbrosaの判別は、小葉の先端と突起にあります。突起は「teeth」(歯)または「callous bumps」(角質隆起)と呼ばれています。しかし、この「teeth」は、被子植物で見られる構造とは異なり、葉脈が突出した先端部です。葉脈が葉軸がから出て葉身に入ると、葉脈同士は接続しなくなり葉縁まで平行に続きます。
③変種ブロオメイ
Zamia integrifolia var. broomei
D . B. Ward, var. nov.
野生で時々見られるZ. integrifoliaは、より普及している典型的なタイプの半分程度の幅が狭い小葉が特徴です。このタイプは、フロリダ半島北西部のDixie、Gilchrist、Levy、Alachuaの各郡のSuwannee川下流域でよく見られます。幅の狭い小葉をまばらに生やすこのタイプは、栽培されることは稀です。
④変種フロリダナ
Zamia integrifolia var. floridana
(A. DC.) D. B. Ward, comb. et stat. nov.
フロリダ半島西部ではvar. integrifoliaとは異なる特徴を持つ、おそらく生息地が異なるタイプが見つかりました。より大きな球果を持ち、長さ18cm、直径8cmに達します。このような球果を持つ個体群は、ネイティブ・アメリカンの作った貝塚でのみ発見されています。典型的なZ. integrifoliaが砂地に生えるのとは対照的です。
このタイプを収集したGilbert Hulseは1830年代初頭に、フロリダ半島西海岸のTampa湾の先端にあるFort Brookeに駐在していました。Fort Brookeは牡蠣などの殻からなる広大な貝塚がありました。HulseはJohn Torreyに送った植物について、「カキ殻のベットの上」で発見されたと述べています。
しかし、フロリダ湾岸沿いに巨大な貝塚を築いたCalusa族が、西インド諸島からフロリダでは見られない品種を持ち込んだ可能性を否定するのは困難です。Calusa族はフロリダと西インド諸島の間で交易を行っていました。
この大きな球果を持つタイプに新しい名前をつけるよりも、同じであるかは不明ですが、由来のわかる名前を残し変種floridanaとする方が望ましいと思われます。
⑤変種シルビコラ
Zamia integrifolia var. silvicola
(J. K. Small) D. B. Ward, comb. et stat. nov.
Zamia silvicola (1926)は正当な名前ですが、フロリダの蘇鉄に適用されるかは不明です。Smallは正確な出典を明らかとせずにこの種を記述し、Eckenwalderはシトラス郡の「Spanish Mound」(現在のCrystal River考古学州立公園)のコレクションをホロタイプとして特定しました。しかし、Smallは「フロリダでもっとも丈夫なザミア」と述べ、それは長さ12〜17cmと比較的長く、10〜15mmと幅が広い小葉を持ちます。このSmallの説明に一致する植物は野生でも栽培下でも知られています。
最後に
以上が論文の簡単な要約です。
論文はフロリダ半島のザミアの判別を目的としています。フロリダにはインテグリフォリア=フロリダナとフルフラケアという2種類のザミアが見られます。フルフラケアはメキシコ原産で栽培品の逸出ですから、本来の野生のザミアはインテグリフォリア=フロリダナだけということになります。しかし、著者は観察から、フロリダのザミアがいくつかの変種に分けられると主張しています。しかし、外見的特徴や分布からの推察であり、将来的な分子系統解析による確認が望ましいような気がします。また、変種フロリダナが記載されましたが、必ずしも今までZ. floridanaと呼ばれてきたザミアを示しているとは限らないようです。
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フロリダのザミア
現在、フロリダには2種類のザミアが分布しています。1つはZamia furfuraceaで、南フロリダでは玄関先や庭に植栽され、「Cardboard Palm」(段ボールヤシ)と呼ばれている外来種です。栽培個体ではないZ. furfuraceaは2000年頃に初めて確認されました。もう1つは様々な時期に複数の学名がつけられており、Zamia pumila、Zamia integrifolia、Zamia floridanaの名前があります。

Zamia furfuracea
ザミアの歴史
ザミアは17世紀から認識され、17世紀末からオランダで、おそらくはヨーロッパの他の地域でも、栽培されてきました。現在の国際植物命名規約 (I.C.B.N)に基づく学名は、1762年にCarl von Linneにより命名されたZamia pumilaでした。しかし、von Linneのもとに標本はなく、ライデンとアムステルダムで栽培された植物に関する記憶とメモ、他の著者の記述しかありませんでした。von Linneは種自体については、「pumila」あるいは「矮性(dwarf.)」という説明しかしませんでしたが、von Linneがオランダにいた時に知っていた大きな蘇鉄と比較したことは間違いありません。その大きな蘇鉄をvon LinneはZamia frondibus pennatis(1937)と命名し、Linne filius(Linneの息子)はZamia furfuraceaと命名しました。
Z. pumilaという名前は、個人の解釈により様々に使われてきました。1908年にEckenwalderがZ. pumilaを「伝統的に知られている一般的な西インド諸島の蘇鉄」と定義しました。このことにより、西インド諸島の蘇鉄は単一の種ということになってしまいました。タイプはJan Commelijn(1697)の図版により、細長い卵形の先細りの小葉を持つ植物で、先端は鋭く葉縁には間隔の広い鋸歯があるとしています。
しかし、Commelijnの図版に対応する標本は稀で、北米の植物標本館(オンラインによる)では見つかりませんでした。イギリスのキューガーデンにはZ. pumilaと特定される古い標本がありますが、ライデン植物園からきたようです。この標本はCommelijnの図版と特徴がよく一致します。Commelijnは「Insulae Hispaniolae」(ドミニカ共和国、ハイチ)からきたと述べています。しかし、現在西インド諸島からはそのような特徴の蘇鉄は知られていません。しかし、Eckenwalderによりタイプに指定されたCommelijnの図版は、既知の植物の形態学的な実在により確認されており、フロリダで知られているあらゆる植物とも異なるため、Zamia pumilaという名前は適用不可能です。
インテグリフォリアとフロリダナ
Z. pumilaのタイプがフロリダが起源ではないことは明らかですが、Zamia integrifoliaとZamia floridanaはフロリダの標本に基づいて分類されています。1789年に命名されたZ. integrifoliaはフロリダ半島で栽培された植物に基づき、1868年に命名されたZ. floridanaはフロリダ半島の西海岸で収集された標本に基づいています。この2つのタイプ標本は非常に似ているため、両者の間に違いを見いだせず、単一の種を示しているとされました。
フロリダの蘇鉄に使われる名前には論争があり、先取権の原理により命名がより早いZ. integrifoliaが優先されるように見えます。しかし、Z. integrifoliaはLinne filiusが既存の利用可能な名前であるZ. pumilaを同義語として引用したため、現代の規定においては誤りであると考えられました。命名規約は同義語として引用された古い名前が、新しい分類群に使用されるべきであった場合、新しい名前は不要であり不当と規定しています。さらに、発表時に違法であった名前は、特別な措置がない限りは後に合法とはならないと規定しています。
ただし、命名規約は常設の委員会に訴えることで、規則を無効とすることを許可しています。分類学者であるD. W. Stevenson & J. L. Reveal(2011)は、種子植物特別委員会に請願しZ. integrifoliaという名前を保存するように求めました。その正当性は、Z. integrifoliaはZ. floridanaより頻繁に使用されており、その名前を保存することにより安定性が確保出来るというものでした。委員会は請願を支持し、Z. integrifoliaが正しい名前となりました。

Zamia integrifolia
インテグリフォリアの多様性
フロリダで観察されるZ. integrifolia sensu lato(広義のインテグリフォリア)には、分類学上の注目を集めるほどの多様性があります。J. K. Small(1933)は、フロリダの蘇鉄をZ. integrifolia sensu stricto(狭義のインテグリフォリア)、Z. angustifolia、Z. silvicola、Z. umbrosaの4種に分けました。
Z. angustifolia(1789)は正当な名前で、バハマ諸島や西インド諸島の蘇鉄に正しく適応されています。しかし、SmallはZ. integrifoliaをフロリダの蘇鉄に使用してしまいました。Z. angustifoliaのコーンは短く尖った頂端を持つ暗褐色から黒色のコーンを持ち、対するZ. integrifoliaは頂端か切形か鈍く赤褐色のコーンを持ちます。Smallはコーンを観察しないで識別したようです。Z. angustifoliaと識別出来る蘇鉄は、フロリダでは知られていません。
著者は観察結果から、形態学的変異は集団内では一貫していることを確信しました。中間種も見られますが、集団全体の大部分は、数個の明確に異なる形態型に割り当てることが出来ます。これらのグループは変種として認識されます。
①変種インテグリフォリア
Zamia integrifolia var. integrifolia
Z. integrifoliaの典型は、1789年にLinne filiusが使用したタイプに基づいているいます。使用した資料(生きた植物)は、26枚の小葉と雄花を持つ1枚の葉で表されています。小葉の幅は狭く約8mmで、一様にわずかにヘラ状です。この形状は広く普及しているフロリダのザミアでは稀です。
キューガーデンの植物の正確な起源は記録されていませんが、推測することは出来ます。入植者のAndrew Turnbullにより、1767年にザミアがCharlestonのアレクサンダー・ガーデンに、後にキューガーデンのAitonに寄贈されました。Turnbullに馴染み深いSt. Augustine近郊は長年に渡る撹乱により植生は痕跡もありません。しかし、New Smyrnaのすぐ西にあるTurnbullが農奴を使って藍を育てていた畑の近くには、薄い砂地の森がありザミアが現在も繁茂しています。この植物はZ. integrifolia var. integrifoliaのtopotype(同地基準標本)として役に立つかも知れません。
②変種ウンブロサ
Zamia integrifolia var. umbrosa
(J. K. Small) D. B. Ward, comb. nov.
Zamia umbrosa(1921)はフロリダの蘇鉄に命名された正当な名前です。この名前は一般的に無視されるか、Z. integrifoliaの異名とされてきました。
植物のコレクターが、フロリダに2つのザミアが存在することに気がついたのは20世紀初頭でした。H. J. Webber(1901)によると、1つは「フロリダ半島南部」と記載されたZ. floridanaで、もう1つは「フロリダ半島中部、特に東海岸」のZ. pumilaでした。これらは小葉の幅で区別され、3〜7mmと8〜16mmでした。明らかにWebberの分類は、現在のZ. integrifoliaとZ. umbrosaを表しています。
S. J. Newell(1989)による葉の測定による研究では、フロリダのザミアは5つの集団があるとしています。Z. umbrosaの判別は、小葉の先端と突起にあります。突起は「teeth」(歯)または「callous bumps」(角質隆起)と呼ばれています。しかし、この「teeth」は、被子植物で見られる構造とは異なり、葉脈が突出した先端部です。葉脈が葉軸がから出て葉身に入ると、葉脈同士は接続しなくなり葉縁まで平行に続きます。
③変種ブロオメイ
Zamia integrifolia var. broomei
D . B. Ward, var. nov.
野生で時々見られるZ. integrifoliaは、より普及している典型的なタイプの半分程度の幅が狭い小葉が特徴です。このタイプは、フロリダ半島北西部のDixie、Gilchrist、Levy、Alachuaの各郡のSuwannee川下流域でよく見られます。幅の狭い小葉をまばらに生やすこのタイプは、栽培されることは稀です。
④変種フロリダナ
Zamia integrifolia var. floridana
(A. DC.) D. B. Ward, comb. et stat. nov.
フロリダ半島西部ではvar. integrifoliaとは異なる特徴を持つ、おそらく生息地が異なるタイプが見つかりました。より大きな球果を持ち、長さ18cm、直径8cmに達します。このような球果を持つ個体群は、ネイティブ・アメリカンの作った貝塚でのみ発見されています。典型的なZ. integrifoliaが砂地に生えるのとは対照的です。
このタイプを収集したGilbert Hulseは1830年代初頭に、フロリダ半島西海岸のTampa湾の先端にあるFort Brookeに駐在していました。Fort Brookeは牡蠣などの殻からなる広大な貝塚がありました。HulseはJohn Torreyに送った植物について、「カキ殻のベットの上」で発見されたと述べています。
しかし、フロリダ湾岸沿いに巨大な貝塚を築いたCalusa族が、西インド諸島からフロリダでは見られない品種を持ち込んだ可能性を否定するのは困難です。Calusa族はフロリダと西インド諸島の間で交易を行っていました。
この大きな球果を持つタイプに新しい名前をつけるよりも、同じであるかは不明ですが、由来のわかる名前を残し変種floridanaとする方が望ましいと思われます。
⑤変種シルビコラ
Zamia integrifolia var. silvicola
(J. K. Small) D. B. Ward, comb. et stat. nov.
Zamia silvicola (1926)は正当な名前ですが、フロリダの蘇鉄に適用されるかは不明です。Smallは正確な出典を明らかとせずにこの種を記述し、Eckenwalderはシトラス郡の「Spanish Mound」(現在のCrystal River考古学州立公園)のコレクションをホロタイプとして特定しました。しかし、Smallは「フロリダでもっとも丈夫なザミア」と述べ、それは長さ12〜17cmと比較的長く、10〜15mmと幅が広い小葉を持ちます。このSmallの説明に一致する植物は野生でも栽培下でも知られています。
最後に
以上が論文の簡単な要約です。
論文はフロリダ半島のザミアの判別を目的としています。フロリダにはインテグリフォリア=フロリダナとフルフラケアという2種類のザミアが見られます。フルフラケアはメキシコ原産で栽培品の逸出ですから、本来の野生のザミアはインテグリフォリア=フロリダナだけということになります。しかし、著者は観察から、フロリダのザミアがいくつかの変種に分けられると主張しています。しかし、外見的特徴や分布からの推察であり、将来的な分子系統解析による確認が望ましいような気がします。また、変種フロリダナが記載されましたが、必ずしも今までZ. floridanaと呼ばれてきたザミアを示しているとは限らないようです。
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