植物は程度の差はあれど、そのほとんどが有毒です。なぜならば、植物は動けないため、昆虫やカビなどの外敵と戦うために有毒な化学物質を作るからです。そのため、野生の植物は苦味や渋味が強いことが一般的です。一部の植物は幻覚作用を持ち、大麻やケシ、コカノキなどが知られています。そして、それらの植物は宗教的儀式などで古代から使用されてきました。この幻覚作用をもたらす物質もまた、害虫に対するものであるとされるものがあります。
さて、前置きが長くなりましたが、本日は幻覚作用で有名なペヨーテ(Lophophnra williamsii)、日本では烏羽玉の名前で知られるサボテンの話題です。参照とするのは、S. Sreeremyaの2019年の論文、『Spineless Cactus as Hallucinogen』です。難解さがまったくない割りと気軽な内容ですから、さらっと読んでましょう。
ペヨーテとは?
Lophophora williamsiiは「peyote」あるいは「peyotl」として知られるサボテンの1種で、メキシコ中部から米国のテキサス北部の砂漠に自生します。伝統的な利用は古く、5700年以上に渡りインフルエンザや関節痛、歯痛、腸疾患、糖尿病、蛇やサソリの毒、皮膚病、失明、神経衰弱、ヒステリー、喘息の治療に広く利用されてきました。ペヨーテはメスカリンの幻覚作用により、ネイティブ・アメリカン教会の儀式でも使用されています。
※ネイティブ・アメリカン教会(アメリカ先住民教会)とペヨーテの関係については以下の過去記事をご参照下さい。
その利用
ペヨーテは米国では宗教的目的以外では禁止されていますが、英国では生体、あるいは乾燥した植物が合法的に販売されています。主に生、あるいは乾燥した植物をカプセルやお茶として摂取されます。ペヨーテの摂取でほとんどの使用者が経験するのは、幻覚、意識と知覚の変化、「呼吸圧」や筋肉の緊張などの身体的反応、苦味による吐き気や嘔吐です。
使用方法を詳しく見てみましょう。根から切り離された「ボタン」(peyote button)を乾燥させます。ボタンは噛むか、水に浸して液体を摂取することもできます。ボタンは粉末に挽いて、大麻やタバコなどの葉と一緒に吸うこともあります。
成分のメスカリンは、粉末や錠剤、カプセル、あるいは液体として経口摂取されます。使用者は300〜600mg(ボタン3〜6個分)を摂取します。効果は投与後、1〜3時間以内に現れ、10〜12時間で徐々に消えていきます。
メスカリンはサイズ、環境、来期感、性格、薬物使用歴により、使用者間で異なる知覚、認知、感情を生み出します。メスカリンの唯一の長期的効果は、妄想性統合失調症に類似した長期精神病状態です。
身体的影響
①しびれ、緊張、不安、反射神経の急速化、筋肉の痙攣と脱力、運動協調障害、めまい、震え、瞳孔の拡大。
②血圧と心拍数の上昇。
③激しい吐き気と暴力。
④食欲不振。
⑤体温の上昇と発汗。
⑥悪寒と発汗。
心理的影響
①鮮明な心象とぼやけた歪んた視界。
②共感覚。音楽を見たり、色を聞いたりする。
③空間と時間の知覚の変化。
④喜び、高揚感、パニック、極度の不安、恐怖。
⑤身体感覚の歪み。体が重く感じたり、無重力感がある。
⑥感覚の強調。より明るい色彩、より鮮明な視覚、増強された聴覚、際立つ味覚。
⑦集中や注意力の維持。集中や思考の困難。
⑧現実感の喪失、過去の経験と現在の融合。
⑨些細な考えや経験、物への執着。
最後に
以上が論文の簡単な要約です。
過去の情報をまとめた非常に読みやすい論文でした。ペヨーテを摂取した時の詳しい状態が述べられています。ペヨーテの使用による副作用や後遺症についてはよくわかっていません。これは副作用や後遺症が少ないからではなく、一般的に流通しているドラッグより流通量や患者数が少なく、研究されることも稀だからでしょう。大抵の向精神薬は何らかの副作用や後遺症がありますから、ペヨーテもまた何かしらの副作用や後遺症があるはずです。ネイティブ・アメリカン教会もペヨーテを使用していますが、使い方も慣れているでしょうし、麻薬中毒患者のように常習していない儀式的な使用だからそれほどの問題は起きないのかも知れません。使い方を誤れば怖いのは、ペヨーテもその他のドラッグと同じです。以下の過去記事では、ペヨーテにより急性中毒により救急搬送された例を取り上げています。
日本ではペヨーテの成分であるメスカリンは違法ですが、植物自体は違法ではありません。園芸目的で一般的に栽培されています。いくら栽培されているとは言え、大量生産されているわくではありませんから、継続的な摂取は非常に困難でしょう。まあ、日本で危険をおかしてまでペヨーテを摂取しようとする人はいないでしょう。
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さて、前置きが長くなりましたが、本日は幻覚作用で有名なペヨーテ(Lophophnra williamsii)、日本では烏羽玉の名前で知られるサボテンの話題です。参照とするのは、S. Sreeremyaの2019年の論文、『Spineless Cactus as Hallucinogen』です。難解さがまったくない割りと気軽な内容ですから、さらっと読んでましょう。
ペヨーテとは?
Lophophora williamsiiは「peyote」あるいは「peyotl」として知られるサボテンの1種で、メキシコ中部から米国のテキサス北部の砂漠に自生します。伝統的な利用は古く、5700年以上に渡りインフルエンザや関節痛、歯痛、腸疾患、糖尿病、蛇やサソリの毒、皮膚病、失明、神経衰弱、ヒステリー、喘息の治療に広く利用されてきました。ペヨーテはメスカリンの幻覚作用により、ネイティブ・アメリカン教会の儀式でも使用されています。
※ネイティブ・アメリカン教会(アメリカ先住民教会)とペヨーテの関係については以下の過去記事をご参照下さい。
その利用
ペヨーテは米国では宗教的目的以外では禁止されていますが、英国では生体、あるいは乾燥した植物が合法的に販売されています。主に生、あるいは乾燥した植物をカプセルやお茶として摂取されます。ペヨーテの摂取でほとんどの使用者が経験するのは、幻覚、意識と知覚の変化、「呼吸圧」や筋肉の緊張などの身体的反応、苦味による吐き気や嘔吐です。
使用方法を詳しく見てみましょう。根から切り離された「ボタン」(peyote button)を乾燥させます。ボタンは噛むか、水に浸して液体を摂取することもできます。ボタンは粉末に挽いて、大麻やタバコなどの葉と一緒に吸うこともあります。
成分のメスカリンは、粉末や錠剤、カプセル、あるいは液体として経口摂取されます。使用者は300〜600mg(ボタン3〜6個分)を摂取します。効果は投与後、1〜3時間以内に現れ、10〜12時間で徐々に消えていきます。
メスカリンはサイズ、環境、来期感、性格、薬物使用歴により、使用者間で異なる知覚、認知、感情を生み出します。メスカリンの唯一の長期的効果は、妄想性統合失調症に類似した長期精神病状態です。
身体的影響
①しびれ、緊張、不安、反射神経の急速化、筋肉の痙攣と脱力、運動協調障害、めまい、震え、瞳孔の拡大。
②血圧と心拍数の上昇。
③激しい吐き気と暴力。
④食欲不振。
⑤体温の上昇と発汗。
⑥悪寒と発汗。
心理的影響
①鮮明な心象とぼやけた歪んた視界。
②共感覚。音楽を見たり、色を聞いたりする。
③空間と時間の知覚の変化。
④喜び、高揚感、パニック、極度の不安、恐怖。
⑤身体感覚の歪み。体が重く感じたり、無重力感がある。
⑥感覚の強調。より明るい色彩、より鮮明な視覚、増強された聴覚、際立つ味覚。
⑦集中や注意力の維持。集中や思考の困難。
⑧現実感の喪失、過去の経験と現在の融合。
⑨些細な考えや経験、物への執着。
最後に
以上が論文の簡単な要約です。
過去の情報をまとめた非常に読みやすい論文でした。ペヨーテを摂取した時の詳しい状態が述べられています。ペヨーテの使用による副作用や後遺症についてはよくわかっていません。これは副作用や後遺症が少ないからではなく、一般的に流通しているドラッグより流通量や患者数が少なく、研究されることも稀だからでしょう。大抵の向精神薬は何らかの副作用や後遺症がありますから、ペヨーテもまた何かしらの副作用や後遺症があるはずです。ネイティブ・アメリカン教会もペヨーテを使用していますが、使い方も慣れているでしょうし、麻薬中毒患者のように常習していない儀式的な使用だからそれほどの問題は起きないのかも知れません。使い方を誤れば怖いのは、ペヨーテもその他のドラッグと同じです。以下の過去記事では、ペヨーテにより急性中毒により救急搬送された例を取り上げています。
日本ではペヨーテの成分であるメスカリンは違法ですが、植物自体は違法ではありません。園芸目的で一般的に栽培されています。いくら栽培されているとは言え、大量生産されているわくではありませんから、継続的な摂取は非常に困難でしょう。まあ、日本で危険をおかしてまでペヨーテを摂取しようとする人はいないでしょう。
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