高度に多肉質となる多肉植物と言えばサボテンやユーフォルビアが代表的ですが、現在はキョウチクトウ科に含まれることとなった旧・ガガイモ科植物もサボテン様の外見となるものがあります。現状、私はコレクションという意味合いではあまり興味がないのですが、その存在自体は気になります。というわけで、本日は旧・ガガイモ科の中からスタペリアを取り上げましょう。参照とするのは、Colin C. Walkerの2020年の記事、『Stapelia engleriana the "iceberg" species from southern Africa』です。著者が育てているStapelia englerianaについて解説しています。

Stapeliaについて
スタペリア属はアフリカに28種類があります。アンゴラ南部、ザンビア南部、モザンビークにも分布しますが、特にナミビアと南アフリカ、ボツワナ、ジンバブエは多様性が高くなっています。広く分布する種もありますが、ほとんどは非常に限られた地域に自生します。
スタペリアの特徴は、多肉質な4稜の茎を持ち、普通は直立し、細かい毛が生えていますが稀に毛がないものもあります。スタペリアの花は直径2cmのS. similisから、巨大なS. giganteaまであります。S. giganteaの中には最大40cmに達する巨大な花を咲かせるものもあり、すべての顕花植物の中でも大きな部類です。

Stapelia englerianaの履歴
Stapelia englerianaは、ドイツのコレクターであるRudolf Schlecher(1872-1925)が、ベルリンのDahlemにある植物園・博物館で見つけた生きた植物に基づいて初めて記述されました。S. englerianaの名前は、当時の館長であるAdorf Englerに捧げたものです。Schlecherはアフリカを広く旅しましたが、野生のS. englerianaを採取していないようです。現在、S. englerianaは南アフリカの西ケープ州に広く分布していることが知られています。

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Stapelia engleriana
『The Flowering plants of South Africa』(1932)より。


Stapelia englerianaの特徴
S. englerianaは開花していない時でも、確実に判別出来る特徴的な種です。茎はかなり太く断面は短い結節のある4角形です。この植物に特有なのは、茎が匍匐性から根茎性であることです。この特徴は同じ旧・ガガイモ科のStapeliopsis saxatilisにのみ見られます。この特徴から、著者は「iceberg」(氷山)のスタペリアと表現しました。これは、植物の大部分が地下に隠されているという意味です。花もスタペリアの中では特有です。花は直径2cmと小型ですが、下向きの花の裂片が折り畳まれているため、ボタンのように見えます。このような特徴の花の花粉媒介者は何者で、どのように受粉するのか気になりますが、今のところ文献上では不明です。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
スタペリアと言えば、星型の奇妙な毒々しい花が特徴です。しかし、S. englerianaは花弁が反り返り、スタペリアの中でも独特の花を咲かせます。著者が言うように、この独特の形状は受粉に何らかの影響があるのでしょうか? そもそも、スタペリアの基本的な受粉様式も私は知らないので、少しずつ調べていきたいと思います。

最後にS. englerianaの名前の変遷に触れておきましょう。1905年に初めて命名された名前がStapelia engleriana Schltr.でした。1982年にはTromotriche engleriana (Schltr.) L. C. Leach、2017年にCeropegia engleriana (Schltr.) Bruynsという名前も提案されています。


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