先日、オザキフラワーパークにてCycas debaoensisを購入しました。以前から、BBでラフレシアリサーチさんがたまに持ってきていたのは知っていたのですが、他に欲しい多肉植物が沢山あったので購入は見送ってきました。しかし、10月にヨネヤマプランテイションのイベントでC. debaoensisが沢山並んでいるのを見て、どうにも気になるものの、悩んだ挙げ句、結局は購入しませんでした。しかししかし、ついにオザキフラワーパークで我慢出来ませんでした。というわけで、早速情報を集めてみましたが、あまり有用そうな情報は見当たりませんでした。そこで、C. debaoensisの論文を漁って見ることにしました。
ということで、本日はLUO Wenhuaらの2014年の論文、『Ex situ conservation of Cycas debaoensis: a rare and endangered plant』をご紹介します。何とこの論文は中国語で書かれたものです。というか、C. debaoensisが中国原産のためか、中国語の論文がほとんどでした。漢字だと『珍稀瀕危植物徳保蘇鉄迁地保护研究』ですかね? 本文は簡体字ですがよくわからないので、これで合ってるかは不明です。ちなみに、中国語はわからないので、機械翻訳ですから内容に関してはやや不安ではあります。

中国のソテツ
中国にはCycas属のソテツが38種類あります。いずれも、国家第一級重点保護野生植物に指定されています。C. debaoensisは広西チワン族自治区南部に自生する中国の固有種で、二分性で羽状に分かれた美しい葉を持ち高い装飾性があります。深刻な人為的介入や密猟により、その野生個体の数は大幅に減少しており、保護のための効果的な対策が喫緊となっています。

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Cycas debaoensis

C. debaoensisの故郷
C. debaoensisの原産地は、広西チワン族自治区徳宝県から約30km離れた福平郷福平村近くの石灰岩の斜面です。分布地域は南亜熱帯モンスーン気候に属し、年間平均気温19.5℃、最低気温マイナス2.6℃、最高気温37.0℃です。年間降水量は1461mmで、夏と秋に集中し、冬と春は乾季となります。土壌は石灰岩が風化して出来た土壌で、中性から弱アルカリ性を示します。森林は近隣の村人が放牧や薪の伐採に利用しており、植生は二次的な矮性低木が優勢で、C. debaoensisは植生の中では優勢な種の1つです。植生は乾生性の低木と草本で、樹種の多様性は小さいようです。
生息域外保護区として、桂林市の南の郊外、燕山鎮にある桂林植物園内にもあります。中部亜熱帯モンスーン気候に属し、年間平均気温は19.2℃、最も寒い1月の平均気温は8.4℃、最も暑い7月の平均気温は28.4℃でした。また、最高気温は40℃になり、冬には霜が降りることもあります。土壌はpH4.7〜5.6の酸性の赤土からなります。

最適な種子の保管方法
2010年に広西チワン族自治区徳宝県福平郷上平屯の野生ソテツ個体群から、200個を超える選別した種子を収集しました。収集した種子は外皮を剥ぎ、5% 過マンガン酸カリウム溶液で消毒し、水洗いしました。
C. debaoensisの種子は成熟しても胚は完全に発達しておらず後熟し、約6ヶ月休眠します。種子は①乾燥(常温)、②冷蔵(5℃)、③湿った砂の3条件で6ヶ月以上保管し、70%遮光下で温室内の苗床に播種しました。
①種子を常温保管した場合、保管期間が90日以内ならば発芽率に差は見られず、120日を超えると発芽率は約50%に低下しました。
②種子を冷蔵保管した場合、保管期間が90日以内ならば発芽率に差は見られず、120日を超えると発芽率は約60%に低下しました。
③種子を湿った砂に保管した場合、保管期間が150日以内ならば発芽率に差は見られず、発芽率は約80%でした。

C. debaoensisの生長
C. debaoensisの生長は遅く、現地調査では何十年も育った植物でも、茎は高さ50cmに満たないことが分かっています。栽培された8年生植物の高さの平均は15.2cm、直径の平均は17.2cmで、高さの年平均生長は1.9cmです。草丈と直径の生長のピークは樹齢4年目から6年目で、年平均生長は高さ3.0cm、幅3.8cmでした。その後の生長は鈍化します。
樹齢8年生のC. debaoensisは、一株あたりの葉の数は平均8枚で、葉の長さは平均302.6cmでした。小葉の長さは平均26.3cmで、枚数の平均は740枚でした。
桂林植物園のC. debaoensisでは、新芽が5〜6月、まれに7月に出ます。新芽の展開には約40日かかります。9月に花が咲き始め、11月中旬から下旬に果実は成熟します。また、原産地と比べると、開花期は1〜2ヶ月遅れ、種子の成熟期は1ヶ月遅れます。これは、場所による積算温度の違いが関係している可能性があります。

C. debaoensisの適応性
C. debaoensisは湿潤な環境に適していますが、乾燥耐性が高く乾燥した石灰岩の環境でもよく育ちます。土壌適応力が高く酸性土壌の桂林植物園でも正常に育ちます。桂林植物園においても開花・結実し、生育や葉色も原産地より優れています。C. debaoensisは耐寒性もあり、マイナス3℃〜マイナス1℃の低温下でも目立った凍害は発生しませんでした。

C. debaoensisの受粉
C. debaoensisの雄花の成熟期は雌花より5〜10日早いため、人工受粉を利用した方が結実量を増やすことが出来ます。雄花が成熟したら花粉を袋に集め、4℃前後の冷蔵庫で保管します。雌花が成熟したら、花粉を取り出し室温に10分以上放置した後に、ブラシで人工受粉します。人工受粉では1株の植物から生産される種子は、250個を超えることもあり、野生の植物より40%以上も多くなります。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
近年、にわかに流通し始めたCycas debaoensisという蘇鉄の原産地の情報や育て方、増やし方などについての論文でした。原産地では希少な植物のようで、中国では国家により保護されているようです。希少種であるからには、原産地や生態を詳しく調査するのは当たり前のことですが、ここでは一歩進んで人工受粉や種子の保管についても言及しています。原産地の保護と繁殖方法の確立、さらには地域の人々に対し保護について説明し理解してもらい、場合によっては協力していただければ最良です。まあ、ここまで行くにはかなりの時間と手間がかかりますから、簡単にはいかないでしょう。しかし、この論文のような研究は種の保護に対する端緒としてとても重要なものです。
「原産地や生態を詳しく調査するのは当たり前のことですが」などと調子の良いことを言いましたが、残念ながら植物は動物と比較すると人気がなく、予算すらまともに下りず、絶滅危惧種であっても調査すらされていない場合が多いのが現状です。この植物を軽視する傾向は、植物の自生地の破壊や絶滅に拍車をかけていますが、改善される見込みはありません。莫大な予算が下りている大型哺乳類であっても、生息する環境に植物がなければ存続出来ないことは明らかです。種単体ではなく、生態や環境を含んだ総合的な保護が必要とされているのではないでしょうか。


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