サボテンや多肉植物も、自生地では周辺に住む人々の生活のために利用されていたりします。例えば、Bowieaのように薬用植物としての利用は一般的ですが、Euphorbia pulvinataのように多岐にわたる日常的な便利グッズとして日々の生活に溶け込んでいるものもあります。サボテンはその利用が活発で、ペヨーテやサン・ペドロの幻覚作用をシャーマニズムに利用したり、果実を収穫するだけではなく、枯れた柱サボテンの骨格を材として利用するなど様々な利用方法があります。このように、地域ごとに様々な植物を利用して人々は生活しているのです。本日はアフリカ大陸東岸のタンザニアにある、ザンジバル諸島の1つであるペンバ島におけるアロエの利用方法について見ていきましょう。参照とするのは、Salim Khamis Saidらの2023年の論文、『The uses and management of an endemic and endangered species of Aloe pembana in Pemba Island of Zanzibar』です。

ペンバ島のアロエ
ペンバ島(Pemba Island)は、タンザニア本土から役割56キロメートル離れており、40万人ほどの人口があります。ペンバ島にはAloe pembanaと言うペンバ島固有のアロエが自生しています。しかし、保全は行われておらず、絶滅する可能性があります。
海水面の上昇により海岸の侵食が激化し、A. pembanaの海岸沿いの岩場に生えるものが失われています。また、気候変動により降水量の減少や熱波、干ばつなどの異常現象が頻発し、A. pembanaを弱らせています。


人為的な問題
しかし、Aloe pembanaの最大の脅威は人間の活動です。それは、農業開拓や伝統医学のための採取であり、将来の世代のための保全は行われていないため、絶滅の危機に瀕しています。
調査では回答者の97%がA. pembanaを伝統医学に使用していると回答しました。

葉の利用
A. pembanaを外用薬あるいは内服薬として利用する場合、いくつかの調剤方法があります。
主な方法は、A. pembanaの葉を細く切り、煮込んでから冷まします。患者はこの汁を1日3回、伝統医の指示に従って飲みます。A. pembanaの葉は、煮込むか3時間以上水に浸しておく場合もありますが、煮ると苦みが軽減されると言われています。この処方では、マラリア、腹痛、月経、中絶、糖尿病、血圧、ヘルニア、便秘、インポテンツ、出産時の鎮痛などのために使用されます。
A. pembanaの葉を叩いたりすり潰したものを、患部に1日2回、これを1週間から3週間塗布すると、徐々に症状が緩和します。主に炎症の治療に使用されます。また、A. pembanaの葉の樹液を、そのままあるいはココナッツオイルと混ぜてボディーローションとして皮膚病の治療に用いることができます。


花の利用
A. pembanaの花は、コクシジウム症、ニューカッスル病、アスペルギルス症、さらには感染性の気管支炎などのニワトリの急性熱帯病の治療に使用されています。A.pembanaの花を水に浸し、その水をニワトリに飲ませます。

アロエとジェンダー
男女に共通したA. pembanaの利用目的は、腹痛、血圧、便秘、糖尿病、解毒、マラリア、皮膚病、腫れ、潰瘍の治療でした。また、男性はヘルニアやインポテンツ、女性は月経や出産時の痛みに対して使用されています。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
実に様々な用途にアロエが利用されていることが分かります。実際の薬としての有効性は分かりませんが、生活の中にこれだけ浸透しているからですから、ペンバ島民にとっては重要な植物であることは間違いありません。また、Aloe pembanaと言うより、アロエ自体の効能からして、いくつかの効能は期待できそうではあります。しかし、この手の野生植物の薬効については、あくまで薬草的なポジションですから、劇的な効果は期待すべきではありません。
さて、論文でも指摘されていましたが、葉を採取する時に古い下の葉から取ればまだ良いのですが、新しい葉も無選別に採取してしまっているため、植物へのダメージが強いようです。
Aloe pembanaは島の固有種であり、他に存在しない稀有なアロエです。現在の野放図な利用を続けていれば、やがて絶滅してしまうでしょう。これだけその利用が一般的なら、Bowieaや矢毒キリンのように家の周りで栽培して、必要量を賄う方が良さそうです。果たしてこの貴重なアロエは、将来的な絶滅を避けることが出来るのでしょうか? 


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