久々ですが新刊案内です。植物関係ではありませんが、私個人の長年の疑問に答える良書が出版されたので記事にしたいと思います。それが、2024年4月に刊行された小林憲正 / 著、『生命と非生命のあいだ 地球で「奇跡」は起きたのか』(講談社ブルーバックス)です。これは簡単に言うならば、生命の起源と地球外生命体に関する本です。しかし、地球外生命体と言ってもオカルト的なものではありません。あくまでも、科学的な話です。
さて、私が気になっていたのは、生命が誕生する確率の話でした。生命の誕生は恐ろしく低い確率であり、地球上の生命誕生は奇跡であるとよく言われていたものです。しかし、個人的にはおかしな話だと感じていました。なぜなら、生命誕生の確率と言ってはいるものの、それは実際には地球上で現在の生命が誕生する確率に過ぎないからです。同じように聞こえますが、生命の形は必ずしも地球型である必要はなく、構成成分などは異なっていても良いわけです。この議論の最大の問題は、我々が地球型生命しか知らないと言うことです。そのため、地球外生命体の話でも、何故か地球型の生命が地球外に存在するのかと言う、非常に狭く限定的な議論しか出来ません。しかし、本書では恐ろしく射程の広い議論が展開されております。
また、私が驚いたのは、アミノ酸生成の簡単さです。長らく原始地球を想定したアミノ酸生成は難しいと考えられていましたが、ミラーの放電実験によりアミノ酸の生成が可能であることが示されました。ところが、後にミラーの想定した原始大気は誤りであることが分かりました。ですから、振り出しに戻ったような気がしていました。しかし、ミラーの放電実験の後にも、様々な組成で原始大気からのアミノ酸生成実験は世界中で行われていたのです。その結果と言えば、様々な組成の混合気体でもアミノ酸はあっさりと合成されているのです。さらに、雷を想定した放電だけではなく、陽子線などの様々なエネルギーによってもアミノ酸が出来てしまうと言うのです。これは大変な驚きでした。思うに複数要因でアミノ酸は生成され、しかもその組成が変わってもアミノ酸は生成されうることが示されたのですから。
中心議題ではない部分ばかりをほじ繰り返してばかりで申し訳ないので、本書のキモについても少し述べさせていただきます。1つは化学進化の解説とRNAワールド仮説に対する疑問、そしてがらくたワールド仮説の提唱です。核酸とタンパク質のジレンマは、RNAが触媒作用を持つリボザイムの発見により解決したかに見えました。しかし、肝心のRNAの生成は困難であることが分かりました。著者は化学進化に着目します。アミノ酸生成により生体に使用されない大量のアミノ酸が生成されます。著者はこの「がらくた」を含んだ生成物の世界=がらくたワールドがアップデートされて生命に繋がったと考えています。この仮説は0→1でなはなく、中途段階を想定しています。著者はスペクトラムと表現していますね。
さて、長々とよく分からない感想をぐだぐだ述べて来ましたが、とにかく面白い本でした。私の感想以外の部分、例えば宇宙探査の話もありますし、生命の起源を巡る議論もあります。生命の始まりや地球外生命を考えるならば、逆に生命とはそもそも何者なのかを考えなければなりません。私は仮定の生命から生物を知ると言う逆説的な経験をしました。生物をより理解する契機として本書をお勧めします。
ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村
にほんブログ村
さて、私が気になっていたのは、生命が誕生する確率の話でした。生命の誕生は恐ろしく低い確率であり、地球上の生命誕生は奇跡であるとよく言われていたものです。しかし、個人的にはおかしな話だと感じていました。なぜなら、生命誕生の確率と言ってはいるものの、それは実際には地球上で現在の生命が誕生する確率に過ぎないからです。同じように聞こえますが、生命の形は必ずしも地球型である必要はなく、構成成分などは異なっていても良いわけです。この議論の最大の問題は、我々が地球型生命しか知らないと言うことです。そのため、地球外生命体の話でも、何故か地球型の生命が地球外に存在するのかと言う、非常に狭く限定的な議論しか出来ません。しかし、本書では恐ろしく射程の広い議論が展開されております。
また、私が驚いたのは、アミノ酸生成の簡単さです。長らく原始地球を想定したアミノ酸生成は難しいと考えられていましたが、ミラーの放電実験によりアミノ酸の生成が可能であることが示されました。ところが、後にミラーの想定した原始大気は誤りであることが分かりました。ですから、振り出しに戻ったような気がしていました。しかし、ミラーの放電実験の後にも、様々な組成で原始大気からのアミノ酸生成実験は世界中で行われていたのです。その結果と言えば、様々な組成の混合気体でもアミノ酸はあっさりと合成されているのです。さらに、雷を想定した放電だけではなく、陽子線などの様々なエネルギーによってもアミノ酸が出来てしまうと言うのです。これは大変な驚きでした。思うに複数要因でアミノ酸は生成され、しかもその組成が変わってもアミノ酸は生成されうることが示されたのですから。
中心議題ではない部分ばかりをほじ繰り返してばかりで申し訳ないので、本書のキモについても少し述べさせていただきます。1つは化学進化の解説とRNAワールド仮説に対する疑問、そしてがらくたワールド仮説の提唱です。核酸とタンパク質のジレンマは、RNAが触媒作用を持つリボザイムの発見により解決したかに見えました。しかし、肝心のRNAの生成は困難であることが分かりました。著者は化学進化に着目します。アミノ酸生成により生体に使用されない大量のアミノ酸が生成されます。著者はこの「がらくた」を含んだ生成物の世界=がらくたワールドがアップデートされて生命に繋がったと考えています。この仮説は0→1でなはなく、中途段階を想定しています。著者はスペクトラムと表現していますね。
さて、長々とよく分からない感想をぐだぐだ述べて来ましたが、とにかく面白い本でした。私の感想以外の部分、例えば宇宙探査の話もありますし、生命の起源を巡る議論もあります。生命の始まりや地球外生命を考えるならば、逆に生命とはそもそも何者なのかを考えなければなりません。私は仮定の生命から生物を知ると言う逆説的な経験をしました。生物をより理解する契機として本書をお勧めします。
ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村
にほんブログ村
コメント