過去のサボテンの遺伝子解析の結果をまとめたPablo C. Guerreroらの2018年の論文、『Phylogenetic Relationship and Evolutionary Trends in the Cactus Family』を参照として、サボテン科植物の系統関係を見ています。本日で最後になります。
サボテン科の進化と分子系統①
サボテン科の進化と分子系統②
Core Cactoideae II
Core Cactoideae IIの分子系統を以下に示します。詳細を見てみましょう。
┏━Pachycerinae
┏┫
┃┃┏Stenocerinae
┏┫┗┫
┃┃ ┗Echinocereus
┃┃
┃┣━━Leptocereusなど
┃┃
┃┗━━Hylocereeae
┫
┣━━━Coryocactus
┃
┣━━━Eulychnia, Austrocactus
┃
┗━━━Pfeiffera
Nyctocereus serpentinus(左)
Stenocereus dumortieri(右上)
Eulychnia iquiquensis
パキケレウスの仲間
Pachycerinaeはパキケレウスの仲間です。ここでは、PachycereusとStenocereus、Echinocereusを分けていますが、これらはすべてPachycereenaeとしてまとめられていたりします。ここでは、Salvador Ariasらの2005年の論文を参考に見ていきます。論文ではPachycereinaeとEchinocereeae + Stenocereinaeと言う2つのグループに大別しています。まずはPachycereinaeの分子系統を示します。AはPachycereusとCarnegiaeからなります。BはLophocereusとMarshallocereus、Pterocereusからなります。CはPeniocereus、DはNyctocereus、EはCephalocereusとNeobuxbaumia、FはLemaireocereusからなります。
┏A
┏┫
┃┗B
┏┫
┃┗━C
┏┫
┃┗━━D
┏┫
┃┗━━━E
┫
┗━━━━F
Pachycereus militaris
Pachycereus chrysomallusとして記載。
Peniocereus greggi
Cephalocereus macrocephalus
エキノケレウスの仲間
次にEchinocereeae + Stenocereinaeを見てみます。同じくSalvador Ariasらの2005年の論文を参考に見ていきます。論文ではEchinocereus + Stenocereus + Myrtillcactusが、Pachycereusの姉妹群となっています。
┏━━Pachycereus
┏┫
┃┃┏━Echinocereus
┃┗┫
┫ ┃┏Stenocereus
┃ ┗┫
┃ ┗Myrtillocactus
┃
┗━━━Pseudoacanthocereus
Myrtillocactus
Echinocereus poselgeri
Wilcoxia poselgeriとして記載。
レプトケレウスの仲間
Core Cactoideae IIの分子系統では、「Leptocereusなど」と書きましたが、論文ではLeptocereus、Dendrocereus、Armatocereus、Neoraimondia、Pseudoacanthocereusと書かれていました。さて、Salvador Ariasらの2005年の論文では、Pseudoacanthocereusはパキケレウスやエキノケレウスの姉妹群で、LeptocereusとArmatocereus、Neoraimondiaは1つのグループで、Pseudoacanthocereusに近い仲間です。
ヒロケレウスの仲間
Hylocereeaeは論文ではHylocereus、Selenicereus、Acanthocereus、Disocactusが含まれています。さて、ここでもSalvador Ariasらの2005年の論文を見ていきます。分子系統を見ると、不思議なことにAcanthocereusとPeniocereusが入り乱れています。ちなみに、Acanthocereus①には2種類、Acanthocereus②には3種類、Peniocereus①には10種類、Acanthocereus②には1種類を含みます。実はPeniocereusは上の「パキケレウスの仲間」でも登場しています。パキケレウスの近縁のPeniocereusは2系統あり、1つは分子系統のCにあたるものでこれが正統なPeniocereusです。もう1つは分子系統のDにあたるもので、現在はNyctocereusとなっています。さて、肝心の「ヒロケレウスの仲間」に現れたPeniocereusですが、これは「パキケレウスの仲間」のPeniocereusとは遺伝的に異なるため、Peniocereusから分離されます。さらに、Acanthocereusとも遺伝的に区別出来ないため、Peniocereus①とPeniocereus②はAcanthocereusに吸収されました。また、分子系統ではSelenicereusとHylocereusは非常に近縁ですが、現在HylocereusはSelenicereusに統合されています。
┏━Acanthocereus①
┏┫
┃┗━Peniocereus①
┏┫
┃┃┏━Acanthocereus②
┃┗┫
┃ ┗━Peniocereus②
┫
┃┏━━Disocactus
┗┫
┃┏━Weberocereus
┗┫
┃┏Selenicereus
┗┫
┗Hylocereus
Acanthocereus tetragona
Disocactus speciosus(上、下)
Heliocereus speciosa、Heliocereus elegantissimusとして記載。
Harrisia portoricensis(中)
Selenicereus ocamponis
=Hylocereus ocampoins
最後に
3回に分けて記事にしてきました。元の論文の分子系統はかなり大雑把なので、ある程度は補完する情報を追加しました。しかし、流石に種まで書き込むことはできなかったので、属レベルで表記させていただきました。
本日の記事なのですが、実はトラブルがありました。属名が変更されたりすることはよくあることですから、事前にある程度は下調べをします。私は主にキュー王立植物園のデータベースを参照とするのですが、今回はそれが出来ていません。と言うのも、この記事を書いているのは昨日なのですが、昨日はキュー王立植物園にアクセス出来ませんでした。どうやら、サーバーが落ちているようです。仕方がないので、信頼性は落ちますが、GBIF(地球規模生物多様性情報機構)で学名を確認しました。しかし、GBIFは情報が古かったりしますから、本当は使いたくなかったのですけどね。後ほど訂正するかも知れませんが、ご容赦のほどお願いします。
ところで、未だスッキリしない部分やあやふやな部分もそれなりにあります。そもそも、私が調査した論文のチョイスがどれほど妥当であったかは分かりません。本来ならば、複数の論文の情報を総合的に判断すべきなのでしょう。しかし、そこはただのドシロウトの悲しいところで、時間も知識も能力も足りていないため、なかなか難しいところです。それでも、また内容を補完するような、あるいは新しい論文が見つかりましたら、懲りずにまたご紹介出来ればと考えております。
ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村
にほんブログ村
サボテン科の進化と分子系統①
サボテン科の進化と分子系統②
Core Cactoideae II
Core Cactoideae IIの分子系統を以下に示します。詳細を見てみましょう。
┏━Pachycerinae
┏┫
┃┃┏Stenocerinae
┏┫┗┫
┃┃ ┗Echinocereus
┃┃
┃┣━━Leptocereusなど
┃┃
┃┗━━Hylocereeae
┫
┣━━━Coryocactus
┃
┣━━━Eulychnia, Austrocactus
┃
┗━━━Pfeiffera
Nyctocereus serpentinus(左)
Stenocereus dumortieri(右上)
Eulychnia iquiquensis
パキケレウスの仲間
Pachycerinaeはパキケレウスの仲間です。ここでは、PachycereusとStenocereus、Echinocereusを分けていますが、これらはすべてPachycereenaeとしてまとめられていたりします。ここでは、Salvador Ariasらの2005年の論文を参考に見ていきます。論文ではPachycereinaeとEchinocereeae + Stenocereinaeと言う2つのグループに大別しています。まずはPachycereinaeの分子系統を示します。AはPachycereusとCarnegiaeからなります。BはLophocereusとMarshallocereus、Pterocereusからなります。CはPeniocereus、DはNyctocereus、EはCephalocereusとNeobuxbaumia、FはLemaireocereusからなります。
┏A
┏┫
┃┗B
┏┫
┃┗━C
┏┫
┃┗━━D
┏┫
┃┗━━━E
┫
┗━━━━F
Pachycereus militaris
Pachycereus chrysomallusとして記載。
Peniocereus greggi
Cephalocereus macrocephalus
エキノケレウスの仲間
次にEchinocereeae + Stenocereinaeを見てみます。同じくSalvador Ariasらの2005年の論文を参考に見ていきます。論文ではEchinocereus + Stenocereus + Myrtillcactusが、Pachycereusの姉妹群となっています。
┏━━Pachycereus
┏┫
┃┃┏━Echinocereus
┃┗┫
┫ ┃┏Stenocereus
┃ ┗┫
┃ ┗Myrtillocactus
┃
┗━━━Pseudoacanthocereus
Myrtillocactus
Echinocereus poselgeri
Wilcoxia poselgeriとして記載。
レプトケレウスの仲間
Core Cactoideae IIの分子系統では、「Leptocereusなど」と書きましたが、論文ではLeptocereus、Dendrocereus、Armatocereus、Neoraimondia、Pseudoacanthocereusと書かれていました。さて、Salvador Ariasらの2005年の論文では、Pseudoacanthocereusはパキケレウスやエキノケレウスの姉妹群で、LeptocereusとArmatocereus、Neoraimondiaは1つのグループで、Pseudoacanthocereusに近い仲間です。
ヒロケレウスの仲間
Hylocereeaeは論文ではHylocereus、Selenicereus、Acanthocereus、Disocactusが含まれています。さて、ここでもSalvador Ariasらの2005年の論文を見ていきます。分子系統を見ると、不思議なことにAcanthocereusとPeniocereusが入り乱れています。ちなみに、Acanthocereus①には2種類、Acanthocereus②には3種類、Peniocereus①には10種類、Acanthocereus②には1種類を含みます。実はPeniocereusは上の「パキケレウスの仲間」でも登場しています。パキケレウスの近縁のPeniocereusは2系統あり、1つは分子系統のCにあたるものでこれが正統なPeniocereusです。もう1つは分子系統のDにあたるもので、現在はNyctocereusとなっています。さて、肝心の「ヒロケレウスの仲間」に現れたPeniocereusですが、これは「パキケレウスの仲間」のPeniocereusとは遺伝的に異なるため、Peniocereusから分離されます。さらに、Acanthocereusとも遺伝的に区別出来ないため、Peniocereus①とPeniocereus②はAcanthocereusに吸収されました。また、分子系統ではSelenicereusとHylocereusは非常に近縁ですが、現在HylocereusはSelenicereusに統合されています。
┏━Acanthocereus①
┏┫
┃┗━Peniocereus①
┏┫
┃┃┏━Acanthocereus②
┃┗┫
┃ ┗━Peniocereus②
┫
┃┏━━Disocactus
┗┫
┃┏━Weberocereus
┗┫
┃┏Selenicereus
┗┫
┗Hylocereus
Acanthocereus tetragona
Disocactus speciosus(上、下)
Heliocereus speciosa、Heliocereus elegantissimusとして記載。
Harrisia portoricensis(中)
Selenicereus ocamponis
=Hylocereus ocampoins
最後に
3回に分けて記事にしてきました。元の論文の分子系統はかなり大雑把なので、ある程度は補完する情報を追加しました。しかし、流石に種まで書き込むことはできなかったので、属レベルで表記させていただきました。
本日の記事なのですが、実はトラブルがありました。属名が変更されたりすることはよくあることですから、事前にある程度は下調べをします。私は主にキュー王立植物園のデータベースを参照とするのですが、今回はそれが出来ていません。と言うのも、この記事を書いているのは昨日なのですが、昨日はキュー王立植物園にアクセス出来ませんでした。どうやら、サーバーが落ちているようです。仕方がないので、信頼性は落ちますが、GBIF(地球規模生物多様性情報機構)で学名を確認しました。しかし、GBIFは情報が古かったりしますから、本当は使いたくなかったのですけどね。後ほど訂正するかも知れませんが、ご容赦のほどお願いします。
ところで、未だスッキリしない部分やあやふやな部分もそれなりにあります。そもそも、私が調査した論文のチョイスがどれほど妥当であったかは分かりません。本来ならば、複数の論文の情報を総合的に判断すべきなのでしょう。しかし、そこはただのドシロウトの悲しいところで、時間も知識も能力も足りていないため、なかなか難しいところです。それでも、また内容を補完するような、あるいは新しい論文が見つかりましたら、懲りずにまたご紹介出来ればと考えております。
ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村
にほんブログ村
コメント
コメント一覧 (2)
とうとう大好きな森林の分類記事で大喜びです
最推しのDeamia testudoとStrophocactus wittiiは
現在SelenicereusとEchinocereusの
グループに含まれるそうなのですが、
今回の分類は意外でした
本当にありがとうございます
植物おじさん
がしました