サボテンはリプサリスなど一部を除き、南北アメリカ大陸およびその周囲の島嶼部に分布します。しかし、サボテンは乾燥地に良く適応した植物であるため、世界中の乾燥地域に侵入し外来種として猛威を振るっています。もちろん、これは初めは人間が移動させたものですが、競争がないことや天敵がいないなど有利な環境であっという間に増殖して手に負えなくなってしまったのです。砂漠の緑化になるような気もしますが、競合する元来自生していた他の植物やそれらを頼って生きている他の生物にとっては、サボテンはある種の災害のようなものです。
さて、現実問題として外来サボテンを駆除しようと言う動きはありますが、あまり上手くいってはおりません。特にウチワサボテンは厄介で、トゲがあるため重機で駆除したりします。しかし、節がバラけてしまい、バラけた節が根を張って直ぐに再生してしまいます。では一体どうしたら良いのでしょうか?

本日はアフリカに侵入したサボテンの駆除を目指した、I. D. Patersonらの2011年の論文、『Biological control of Cactaceae in South Africa』をご紹介します。如何なる成果が得られたのでしょうか。

①Pererkia aculeata
Pererkia aculeataはよく発達した葉と木質の茎と枝を持つ原始的な匍匐性サボテンです。P. aculeataは中央アメリカとカリブ海地域の一部、並びにブラジル南東部とアルゼンチン北部に自生します。

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Pererkia aculeata
『The Cactaceae I』(1919年)より。
Pererkia pereskiaとして記載。

アフリカへの侵入
1858年に南アフリカのケープタウン植物園で初めて記録され、ケープタウン周辺とGauteng州、Mpumalanga州、Limpopo州に帰化しました。また、東ケープ州とKwaZulu-Natal州の東海岸沿いにも帰化し、非常に侵入性が高く森林や海岸植生に豊富に生息しています。P. aculeataは繁殖しすぎて、固有の植生を消滅させています。1983年には農業資源保護法により雑草に指定され、2004年の生物多様性法により侵略的外来植物とされています。

防除方法
P. aculeataは在来の植生に絡み合って育つため、機械的に除去することは困難です。さらに、P. aculeataは千切れた破片からも再生するため、これは有効な方法ではありません。よって、生物学的防除がP. aculeataを防除する唯一の、経済的に実行可能かつ持続可能な方法です。

ハムシの放出
Phenrica gueriniと言うハムシの仲間を天敵として、KwaZulu-Natalでは少数を放出しましたが、P. aculeataの目立つ減少は見られませんでした。最近、より多くのハムシが放出されたことにより、KwaZulu-Natalの一部ではハムシが定着しました。

新たな天敵の発見
1984年から2007年までに、P. aculeataの自生地であるブラジル南部やアルゼンチン北部、ベネズエラ、ドミニカ共和国で8回の現地調査が実施されました。調査中に43種の昆虫がP. aculeata上で発見され、この内6種は一般的に見かけました。
・Loxomorpha cambogialisや、未記載種のPorphyrosela sp.と言う蛾は、宿主範囲が広く他の植物にも影響があるため使用出来ませんでした。
・Maracayia chlorisalisと言う蛾は非常に有効な天敵ですが、ドラゴン・フルーツが採れるHylocereusの害虫です。ドラゴン・フルーツはアフリカでも有望な新作物であり、この蛾の導入は利益相反を引き起こす可能性があります。しかし、効果が期待出来る天敵です。
・未記載のハチが発見されましたが、類似した幼虫が他の植物でも観察されたため、確認が必要です。
・Bruchophagus sp.と言うハバチは虫瘤を作りますが、必ずしもP. aculeataに強いダメージを与えているわけではないようです。
・ゾウムシの幼虫がブラジルで見つかりましたが、成虫が同定されておらず、宿主範囲も不明です。

今後
発見されたP. aculeataの天敵を採取し研究する必要があります。同時に新たな天敵の探索も行われる必要があります。また、南アフリカで栽培されるドラゴン・フルーツに対するM. chlorisalisの影響も調査するべきでしょう。また、一部地域ではP. gueriniが定着し、P. aculeataに対する大規模な被害が発生しています。P. guerini放出の評価を行う必要があります。


②Opuntia stricta
南アフリカにおけるOpuntia strictaの生物学的防除では、蛾とカイガラムシにより個体数を抑制することに成功しています。

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Opuntia stricta(左上)
『The Cactaceae I』(1919年)より。


コチニールカイガラムシ
クルーガー国立公園では、O. strictaのバイオマスが、Dactylopius opuntiae(コチニールカイガラムシ)の放出から6年で約90%減少しました。それ以来、サボテンの生息数は低いままです。ただ、雨が多い年にはコチニールカイガラムシは減少し、一時的にO. strictaは増加しました。しかし、コチニールカイガラムシは、サボテンの個体数を減らすだけではなく、平均サイズの大幅な減少を引き起こし、2005年以降はO. strictaの結実が見られませんでした。よって、O. strictaはコチニールカイガラムシにより完全に封じ込めることが出来ます。


③Cylindropuntia fulgida
Cylindropuntia fulgida var. fulgidaは、直立しよく枝分かれしたサボテンです。末枝は簡単に外れ、通る動物や人の服に付着します。果実のアレオーレから新しい花を咲かせるため、連結した果実が形成されます。この種はアリゾナ州のソノラ砂漠や、シナロア州ソノラ、バハ・カリフォルニア北部に自生します。一般には「chain-fruit cholla」あるいは「jumping cholla」と呼ばれています。

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Cylindropuntia fulgida
『The Cactaceae I』(1919年)より。
Opuntia fulgidaとして記載。


chain-fruit chollaの蔓延
chain-fruit chollaは、少なくとも1940年代には南アフリカに観賞用として輸入されました。現在は牧草地や自然保護区にも侵入し、家畜や小型アンテロープ、その他の小型哺乳類や鳥に至るまでに危害を与えています。時としてそれらの動物の死を招くこともあります。北ケープ州のダグラス周辺やLimpopo州などで蔓延しています。
農務省の補助金による防除は1970年代後半から実施されていますが、あまり成果がありません。侵入が多い特に価値の低い土地では、かかる費用は法外に高くなります。

分類上の疑義
このサボテンは分類上の混乱がおきており、最適な天敵の探索や使用を妨げています。長年に渡りC. rosea(=C. pallida)とされてきましたし、それ以前はC. tunicataと混同されてきました。
C. roseaにつくDactylopius tomentosusと言うカイガラムシを放出したものの、小型の植物を枯らすことはありましたが、大型の植物には効果はありませんでした。この時、このサボテンの正体について若干の疑問が生じたため、メキシコや米国のサボテンの分類学者と協議した結果、C. fulgida var. fulgidaであることが確認されました。これは、ダグラス近郊では化学物質による防除が行われていたため、連結する特徴的な果実が見られなかったからです。しかし、ジンバブエ近くでは管理されていないサボテンがあり、特徴的な連結する果実が確認されました。また、ダグラス近郊の古い写真からも、その連結する果実が確認されています。


生物型の違い
D. tomentosusを調査し、C. fulgida var. fulgida、C. fulgida var. mamillata、C. chollaから採取しました。コチニールカイガラムシは異なる生物型を持つものがあります。生物型の違いにより、成熟にかかる時間などが異なります。C. chollaから採取した「cholla」タイプが一番上手く定着しました。
「cholla」タイプのカイガラムシはダグラス近郊の農場で大規模なや放出されました。しかし、サボテンに対する被害は予想されたほどではありませんでした。カイガラムシの大量飼育中にC. imbricataにつくカイガラムシが混入した可能性があるため、新たに「cholla」タイプのカイガラムシを採取し、大量飼育が開始されました。


効果あり
2008年には大量放出され、4ヶ月後には大量のカイガラムシが定着し、サボテンの枝は落ちて小さいサボテンは枯死しました。放出場所から最大5mまでの拡散が確認されました。2009年には多くのサボテンが枯れ、その地域でカイガラムシがいないサボテンを見つかることは困難となりました。2010年にはカイガラムシは87ヘクタールを拡散しました。小さいサボテンは枯死し、大型のサボテンも枝が枯れ落ちました。現在、除草剤を撒く代わりにカイガラムシの散布が行われることが決定されました。C. fulgida var. fulgidaは完全に制御されていると考えられます。


④Cereus jamacaru
「queen of the night cactus」として知られるCereus jamacaru(ヤマカル柱)は、コナカイガラムシの仲間であるHypogeococcus pungensと、幼虫が茎に穿孔するカミキリムシの仲間であるNealcidion cereicolaを生物学的防除として利用しました。これらは、Harrisia martinii由来ですが、C. jamacaruに直ぐに定着しました。

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Cereus jamacaru
『The Cactaceae II』(1920年)より。


天敵の効果
カミキリムシは少数の場所でしか定着しませんでしたが、個体数が多くなると非常に効果的です。サボテンの構造組織が弱くなり植物全体が倒れたりします。
コナカイガラムシは南アフリカのC. jamacaruの分布域全体に広がり、ほとんどの地域では生物学的防除として効果的です。このコナカイガラムシは植物の異常生長を引き起こし、特に茎の先端が腫れてしまいます。節間が短くなりトゲの間隔が狭くなり、シュートが細くねじれながら増殖します。このコナカイガラムシに寄生された植物は、何れ枯れてしまいます。若い個体は開花するサイズに達する前に枯れますが、高さ数メートルになってからコナカイガラムシに寄生されると、枯れるまで最大4年かかる場合もあります。しかし、コナカイガラムシは蕾に集まるため、果実の生産量は著しく減少します。



最後に
以上が論文の簡単な要約です。
天敵を利用した生物学的防除は、思いの外効果的なようです。すべての植物には、その植物に特有の害虫がいると言う発想による外来サボテンの防除が目指されています。しかし、Pererkiaのように適切な害虫の選定段階のものもあります。コチニールカイガラムシのように実績のある害虫とは異なり、他の植物に対する悪影響も考慮する必要があります。
また、論文に取り上げられた例では、非常に上手くいっていますが、これからは少し注意が必要な場面も考えられます。これはマダガスカルの例なのですが、ウチワサボテンが蔓延してしまったことから、害虫のカイガラムシを放出しました。ウチワサボテンはほぼ壊滅状態になりましたが、ウチワサボテンが減少したためカイガラムシも減少しいなくなってしまいました。やがて、害虫がいなくなったことでウチワサボテンは再増殖をしてしまったのです。この話の教訓は、害虫を温存しておいて、外来植物が減少してきた時に害虫の再散布による追い打ちをかける必要があると言うことです。また、外来植物の再増殖に備える体制も必要です。常に監視し必要ならば介入すべきです。今後の外来サボテンの同行は注視していきたいですね。


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