去年の神田神保町古本まつりで、植物関係の本をちょろっと何冊か購入しました。最近は思うように読書時間が取れないのですが、ようやく1冊読んだので軽くご紹介しようとかと思います。本日ご紹介するのは、W. Veevers-Carterの1984年の著作の日本語版である、『熱帯多雨林の植物誌』(平凡社、1986年)です。

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扱われる熱帯多雨林はマレーシアとインドネシアです。様々な熱帯植物が語られますが、いわゆる観葉植物の類ではないので、あまり一般的ではないものもあります。私が個人的に興味があるアリ植物や着生植物、つる植物の話もあり、大変面白く読みました。神代植物公園や板橋区立熱帯環境植物館で見たフタバガキ科植物やらジャックフルーツも登場します。こういう本を読んでいると植物園をより楽しむことが出来ます。

内容的には植生や繁殖システムと言った生態学、果実や材の利用から産業利用まで、学術的な発見の経緯、大航海時代の香辛料のためのヨーロッパ諸国同士のイザコザから東南アジアの歴史までと実に幅広いものです。
個人的に大航海時代については気になっており、何冊か本を読んでいますから、それらも絡めて背景を少し補足しましょう。まず、大航海時代はキリスト教の布教も行われましたが、その原動力は香辛料にあります。多くの香辛料は熱帯地方の原産です。その輸送はアラブ商人などを経て陸路で運ばれ、地中海貿易でヨーロッパ中に運ばれました。その香辛料交易を直に行おうとしたのが、大航海時代の目的です。その結果、香辛料交易のルートが変わってしまったため、地中海貿易の重要な港があるイタリアは、交易量が下火になってしまいます。また、香辛料交易の話では、よく取り上げられるのは胡椒ですが、本書ではチョウジとナツメグにそれぞれ1つの章が与えられています。

さて、本書の原版は1984年の出版ですから40年前の古い本ではあります。しかし、悲しいかな、すでにこの時点で様々な熱帯植物について、「すでに〜でしか見られない」と言う文言が付いてしまっています。世界野生生物基金のマレーシア委員会会長が序文を寄せていますが、短期的な利益のために失われる熱帯林を嘆き、本書を熱帯林を知り関心を持つ切っ掛けになって欲しいとの思いが語られます。本書が出版されてから40年が経ちましたが、状況は改善したのでしょうか? しかし、残念ながら、聞こえてくる声は悲観的なものばかりです。熱帯植物が、先進国の植物園の温室でしか見られないと言うような未来だけはあっては欲しくないものですね。


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