タイトルだけ見ると熱狂的な烏羽玉ファンの話かと勘違いしてしまいますが、残念ながら今回は異なります。烏羽玉はPeyoteと呼ばれ、宗教的に古くから利用されてきました。Peyoteにはメスカリンと言う幻覚成分が入っているからです。Peyoteの利用はその合法性を巡って、米国ではあれやこれやといったいざこざがありましたが、過去に記事にしたことがあります。さて、日本では烏羽玉の栽培や販売は違法ではありませんが、その成分自体は違法です。しかし、海外では烏羽玉自体が違法だったりします。と言うことで、今回は烏羽玉の幻覚作用に関する話です。ご紹介するのは、Cengiz CENGiSiZらの2016年の論文、『Mescaline abuse via peyote cactus: the first case report in Turkey』です。トルコで初めてのPeyoteの乱用に関するものです。

ある症例
症例は18歳男性患者によるものでした。患者は大麻使用のために3ヶ月の保護観察処分となり、外来病院で治療を受けていました。しかし、患者は強い不安、パニック発作、幻視の症状を訴えて入院しました。患者には活性炭の投与と腸洗浄が施され、抗不安薬が使用されました。

Peyoteの摂取
患者の状態が安定してから、詳しいアンケートを実施しました。すると、保護観察所が実施している大麻の尿検査に引っかからないように、Peyoteを摂取したと語りました。患者はシリアから持ち込んだPeyoteを粉末にして、お茶にして煎じたり巻煙草にして摂取していました。その後、インターネットで購入するようになり、Peyoteを噛んで使い始めました。
これら、トルコにおけるPeyoteを介した初めてののメスカリン乱用です。Peyoteは米国南西部とメキシコ原産地で、収穫出来るサイズに育つまでに20年程度かかる可能性があります。しかし、トルコは原産地から遠く離れ、Peyoteの栽培にも適しておらず、その使用は考えにくい薬物と言えます。

Peyoteの作用
Peyoteの誤用があった場合、激しいめまい、嘔吐、瞳孔拡張、心拍上昇、血圧上昇、激しい発汗、発熱、頭痛、筋肉の弛緩などに悩まされる可能性があります。ほとんどの場合、幻視の症状が認められます。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
トルコでまさかの烏羽玉を摂取して中毒に陥る患者が出現しました。インターネットから入手したとありますが、様々な違法薬物がインターネットを介して取引されていることが分かります。もはや、物理的距離など意味をなさない時代です。なお、論文中ではシリアの内戦と関連付けられていました。曰く、シリアの内戦により大量の難民がトルコに移住し、若者同士の交流により薬物が広まったと推測しています。これは何もシリアから違法薬物が入って来たと言うことではなく、シリアとトルコの違法薬物に興味があったり違法薬物を摂取している若者たちが、交流することにより情報が交換されたと言うことなのでしょう。

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Lophophora williamsii
『Hallucinogenic plants』(1976年)より。


さて、日本では烏羽玉の栽培や販売は違法ではありません。しかし、国内の烏羽玉の成分を調べた論文では、烏羽玉や大型烏羽玉、子吹き烏羽玉からはメスカリンが検出されました。要するに、国内の烏羽玉にも幻覚成分は含まれているのです(※翠冠玉や銀冠玉からはメスカリンは検出されず)。しかし、その量が多いのか少ないのかはよく分かりません。どうもメスカリンは生長に伴い蓄積していくものらしく、ある程度大型にならないと利用には適さないようです。メスカリンが蓄積していない烏羽玉はただ苦いだけとも言われています。まあ、麻薬は駄目だよと言うことだけではなく、伝統的な利用法を知らない我々日本人は手を出さない方が良いのは間違いありません。トルコのこの若者のように病院に担ぎ込まれて、腸内洗浄される羽目に陥るかも知れませんからね。


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