Pereskia属はサボテンらしからぬ姿のサボテンで、通常の樹木状で葉があり、全体的に特に多肉質ではありません。ただ、強い棘と美しい花がサボテンとの繋がりを感じさせます。Pereskiaは一般的には杢キリンだとかコノハサボテンと呼ばれますが、サボテン愛好家にもあまり人気はなさそうです。
さて、このPereskiaはサボテン科の進化を考える上で重要とされます。というのも、サボテンは本来は多肉質ではなく、Pereskiaのような多肉植物ではない姿から多肉質に進化したと考えられるからです。
そんなPereskiaはどうも単系統ではないと考えられているようです。2013年にPereskiaは単系統ではないという考えが示され、新属Leunenbergeriaが提唱されました。そこら辺の事情をまとめたJoel Lodeの2019年の論文、『Leunenbergeria, a new genus in Cactaceae』をご紹介しましょう。しかし、新種どころではなく、新属とは驚かされます。

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Leunenbergeria autumnalis(左右)
『The Cactaceae』(1919年)より。Pereskia tititachaとして記載。


PereskiaはSchumann(1890)とBuxbaum(1969)によりサボテン科の最も祖先的な分類群と考えられました。2002年のNyffelerの分析でも、Pereskiaはサボテン科の基底であることは示されましたが、単系統ではないとされました。2005年のButterworth & Wallaceの分子解析では、Pereskiaは単系統ではなく側系統群であることが示されました。2005年にEdwardsらは、Pereskiaの遺伝子解析を行いました。Pereskiaでは唯一コスタリカに分布するP. lychnidifloraと、Pereskia属のタイプ種であるP. aculeataとは、Pereskia属を分けなければならないレベルで遺伝的に距離がありました。2005年のCrozierの分子研究では、Pereskia属は急速に分岐した可能性を指摘しました。2007年にMarlon Machadoは、形態学的および解剖学的な特徴から、Pereskiaは2つのグループに分割出来るとしました。2008年にButterworth & Edwardsは、Pereskiaが側系統群であることを確認しましたが、GorelickはPereskiaの側系統の中に、Maihuenia、ウチワサボテン亜科、カクタス亜科が埋め込まれてしまっており、混乱し続けていることを指摘しました。

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Leunenbergeria zinniiflora(右)
『The Cactaceae』(1919年)より。Pereskia zinniaefloraとして記載。

そして、2008年のNyffelerらと2010年のNyffeler & Eggliは、Pereskiaは南アメリカ北部からメキシコまでの北部クレードと、ブラジル南部から南方の熱帯および亜熱帯南アメリカの南部クレードに分けることが出来ることを示しました。南部クレードは樹皮の形成が遅れており、茎に気孔があります。北部クレードは樹皮が早く形成され茎に気孔があります。

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Leunenbergeria gamacho
『The Cactaceae』(1919年)より。Pereskia gamachoとして記載。


以上が論文の簡単な要約です。
論文中の用語ですが、単系統とは系統的な子孫からなるまとまりがあるグループです。側系統とは簡単に言えばまとまりのないグループです。論文ではPereskiaを2分割しました。名前のなかった南部クレードには、著者が2013年にLeunenbergeria属を提唱しました。属名はPereskiaの著名な研究者であったLeunenbergerから来ているようです。
また、本文中に「Pereskiaの側系統の中に、Maihuenia、ウチワサボテン亜科、カクタス亜科が埋め込まれてしまっており…」とありますが、分かりにくいため簡単に説明します。例えば、2005年のEdwardsの『Basal cactus phylogeny: implications of Pereskia (Cactaceae) paraphyly for transition to the cactus life form』では、以下のような分子系統が示されました。

              ┏━カクタス亜科
          ┏┫
    ┃┗━Maihuenia
      ┏┫
      ┃┗━━
ウチワサボテン亜科
  ┏┫     
  ┃┗━━
Pereskia
  ┫
  ┗━━━
Leunenbergeria

カクタス亜科は柱サボテンや玉サボテンを含む巨大なグループです。見方としては、カクタス亜科とMaihueniaは姉妹群で、カクタス亜科+Maihueniaとウチワサボテン亜科は姉妹群、それらとPereskiaは姉妹群なのです。つまり、カクタス亜科からPereskiaまでを一塊と捉えることも可能なため、そのような表現となっているのです。

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Leunenbergeria zinniiflora
『The Cactaceae』(1919年)より。Pereskia cubensisとして記載。


Pereskiaから独立してLeunenbergeriaとなったのは8種類です。以下に示します。
①L. aureiflora
②L. bleo
③L. gamacho
④L. lychnidiflora
⑤L. marcanoi
⑥L. portulacifolia
⑦L. quisqueyana
⑧L. zinniiflora


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