サボテンの外敵とはなんでしょうか? ほとんどのサボテンはトゲに覆われており、簡単には草食動物に食べられることはないでしょう。アフリカでは、トゲだらけのアカシアの枝をキリンが食べたり、やはりトゲだらけのユーフォルビアをサイが食べたりしています。しかし、アメリカ大陸には大型の草食動物は少なく、ある程度のサイズがあるのは、ヘラジカ、バイソン、リャマ、アルパカ、グアナコ、カピバラ、マーラくらいなものでしょうか。
サボテンの分布を考えると、可能性があるのはグアナコくらいかも知れませんが、サボテンをむしゃむしゃ食べられる感じはしません。ラクダはサボテンを食べたりするらしいので、ラクダの仲間であるグアナコは食べるかも知れません。ちなみに、ラクダは中央アジアの砂漠にフタコブラクダが、アフリカから中東にはヒトコブラクダが分布します。いずれにせよ、ラクダが食べるサボテンは野生化したもので、おそらくはウチワサボテンでしょう。流石にラクダでもFerocactusを食べることは難しいような気もします。
話が脱線しました。サボテンを食べる動物については後で論文をあたるとして、本日の話題はサボテンを食べる外来種が観察されたという論文についてです。その論文は、Felipe S. Carevic & Ermindo Barrientosの2022年の論文、『Efectos de la introduction de fauna aloctona (Canis familiaris) en ecosistenmas aridos: estudio de caso en cactaceae endemics』です。
チリ北部の固有の植物相では、外来動物の影響はあまり評価されていません。著者らはAtacama州のFreirinaにあるサボテン集団に対する外来動物の被害を評価しました。自生するサボテンのうち調査したのは、Copiapoa coquimbanaとEriosyce napina、Eriosyce subgibbosaの3種類です。この論文で問題とされる外来動物とは、まさかの野良犬です。何が起こっているのでしょうか。
Copiapoa coquimbana(下)
『The Cactaceae』(1922年)より。
著者らの観察により、驚くべきことに野良犬がサボテンを齧っていることが分かりました。もちろん、頭から齧りついたわけではなく、掘り返して根の方からサボテンの内側を上手く齧っているようです。3種類のサボテンでは、そのほとんどでC. coquimbanaが野良犬による被害を受けました。調査期間に被害を受けたサボテンは、VeranoではC. coquimbanaが12個体、E. napinaが3個体、E. subgibbosaが2個体、InviernoではC. coquimbanaが15個体、E. napinaが3個体、E. subgibbosaが2個体でした。
以前の研究では、Copiapoaは水分と糖分が他のサボテンよりも豊富であるとされており、水分の補給源としてより魅力的なのかも知れません。また、著者らはEriosyceは斜面や岩の隙間に生えるため、野良犬がアクセス出来ない可能性もあるとしています。
Eriosyce napina(右)
『The Cactaceae』(1922年)より、Malacocarpus napinaとして記載。
以上が論文の簡単な要約です。
犬がサボテンを齧るという思わぬ出来事が発見されたわけですが、それ以上にトゲをこのような形で克服していることにも驚きました。そして、当然ながら野良犬は野生のサボテンにかなりの悪影響を与える新しいファクターとなってしまいました。非常に残念なことです。ただし、サボテンの保護を考えた時に、このような地道な知見が役に立つはずですから、今後に繋げていけたら素晴らしいですね。
ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村
にほんブログ村
サボテンの分布を考えると、可能性があるのはグアナコくらいかも知れませんが、サボテンをむしゃむしゃ食べられる感じはしません。ラクダはサボテンを食べたりするらしいので、ラクダの仲間であるグアナコは食べるかも知れません。ちなみに、ラクダは中央アジアの砂漠にフタコブラクダが、アフリカから中東にはヒトコブラクダが分布します。いずれにせよ、ラクダが食べるサボテンは野生化したもので、おそらくはウチワサボテンでしょう。流石にラクダでもFerocactusを食べることは難しいような気もします。
話が脱線しました。サボテンを食べる動物については後で論文をあたるとして、本日の話題はサボテンを食べる外来種が観察されたという論文についてです。その論文は、Felipe S. Carevic & Ermindo Barrientosの2022年の論文、『Efectos de la introduction de fauna aloctona (Canis familiaris) en ecosistenmas aridos: estudio de caso en cactaceae endemics』です。
チリ北部の固有の植物相では、外来動物の影響はあまり評価されていません。著者らはAtacama州のFreirinaにあるサボテン集団に対する外来動物の被害を評価しました。自生するサボテンのうち調査したのは、Copiapoa coquimbanaとEriosyce napina、Eriosyce subgibbosaの3種類です。この論文で問題とされる外来動物とは、まさかの野良犬です。何が起こっているのでしょうか。
Copiapoa coquimbana(下)
『The Cactaceae』(1922年)より。
著者らの観察により、驚くべきことに野良犬がサボテンを齧っていることが分かりました。もちろん、頭から齧りついたわけではなく、掘り返して根の方からサボテンの内側を上手く齧っているようです。3種類のサボテンでは、そのほとんどでC. coquimbanaが野良犬による被害を受けました。調査期間に被害を受けたサボテンは、VeranoではC. coquimbanaが12個体、E. napinaが3個体、E. subgibbosaが2個体、InviernoではC. coquimbanaが15個体、E. napinaが3個体、E. subgibbosaが2個体でした。
以前の研究では、Copiapoaは水分と糖分が他のサボテンよりも豊富であるとされており、水分の補給源としてより魅力的なのかも知れません。また、著者らはEriosyceは斜面や岩の隙間に生えるため、野良犬がアクセス出来ない可能性もあるとしています。
Eriosyce napina(右)
『The Cactaceae』(1922年)より、Malacocarpus napinaとして記載。
以上が論文の簡単な要約です。
犬がサボテンを齧るという思わぬ出来事が発見されたわけですが、それ以上にトゲをこのような形で克服していることにも驚きました。そして、当然ながら野良犬は野生のサボテンにかなりの悪影響を与える新しいファクターとなってしまいました。非常に残念なことです。ただし、サボテンの保護を考えた時に、このような地道な知見が役に立つはずですから、今後に繋げていけたら素晴らしいですね。
ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村
にほんブログ村
コメント