鈴木正彦・末光隆志 / 著、『「利他」の生物学 適者生存を超える進化のドラマ』(中公新書)が刊行されました。生物は利己的であるというのは基本的なことですが、共生関係など利他的な戦略は、ただ利己的であるよりも生存に有利であったりします。そんな、共生関係について生物界を広く見渡し紹介した1冊です。内容的には植物だけではありませんが、植物も扱われており、以外と本では触れられない話が多いように思われます。内容について、植物関連部分の概要だけ少しご紹介します。
①細胞内共生説
ミトコンドリアや葉緑体は元来は細菌であったという細胞内共生説は、1970年のリン・マーグリスの『真核生物の起源』にまで遡ります。すぐに認められたわけではなく、中々受け入れられなかったとはいえ、細胞内共生説について学術レベルの内容を一般書籍で解説した本はあまりなかったと言えます。葉緑体の誕生は植物の誕生でもあるわけですから、生物の進化の歴史では非常に重要なイベントです。マーグリスの時代より研究は進んでいますから、最新の情報を得ることが出来ます。
②虫媒花と昆虫の進化
当ブログでも、サボテンや多肉植物と花粉媒介者の関係についての論文をいくつかご紹介してきました。しかし、論文は狭い範囲の的を絞った話でしたから、その基本的な有り様についてはわかりませんでした。本書では、様々な実例を挙げて花粉媒介の有り様を解説しています。共進化やアリ植物を始めとした、植物と昆虫の関係性を広く解説しており勉強になります。
③菌根菌と植物の関係
野生の植物は菌類と共生関係を結んでいるものが非常に多く、乾燥地に生えるサボテンや多肉植物も例外ではありません。私も何度か記事にしたことがあります。根粒菌の話だけではなく、蘭菌の話やアーバスキュラー菌の話もあり、植物と菌類の共生関係の基本的な部分を学ぶことが出来ます。
内容的には動物や菌類の話も沢山あります。しかし、このように植物だけを分けないという書き方は少し珍しいですね。研究者は基本的に1分野に突出するため、広く扱うのは中々難しいように思われます。本書は2人の専門が異なる研究者の共著で、お互いに内容を補っています。読んでいて感じたのは、植物もまた生物界の一部分に過ぎないのだという当たり前のものでした。しかし、基本的に生物学の一般書籍は、動物は動物、植物は植物に絞って書かれがちですから、その当たり前の意識が薄れがちです。私などはサボテンや多肉植物の論文に前のめりで入り込んでいるため、そのことをついつい忘れがちです。一度立ち止まって、広く見回してみるのも必要なことだと思いなしました。おすすめします。
ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村
にほんブログ村
①細胞内共生説
ミトコンドリアや葉緑体は元来は細菌であったという細胞内共生説は、1970年のリン・マーグリスの『真核生物の起源』にまで遡ります。すぐに認められたわけではなく、中々受け入れられなかったとはいえ、細胞内共生説について学術レベルの内容を一般書籍で解説した本はあまりなかったと言えます。葉緑体の誕生は植物の誕生でもあるわけですから、生物の進化の歴史では非常に重要なイベントです。マーグリスの時代より研究は進んでいますから、最新の情報を得ることが出来ます。
②虫媒花と昆虫の進化
当ブログでも、サボテンや多肉植物と花粉媒介者の関係についての論文をいくつかご紹介してきました。しかし、論文は狭い範囲の的を絞った話でしたから、その基本的な有り様についてはわかりませんでした。本書では、様々な実例を挙げて花粉媒介の有り様を解説しています。共進化やアリ植物を始めとした、植物と昆虫の関係性を広く解説しており勉強になります。
③菌根菌と植物の関係
野生の植物は菌類と共生関係を結んでいるものが非常に多く、乾燥地に生えるサボテンや多肉植物も例外ではありません。私も何度か記事にしたことがあります。根粒菌の話だけではなく、蘭菌の話やアーバスキュラー菌の話もあり、植物と菌類の共生関係の基本的な部分を学ぶことが出来ます。
内容的には動物や菌類の話も沢山あります。しかし、このように植物だけを分けないという書き方は少し珍しいですね。研究者は基本的に1分野に突出するため、広く扱うのは中々難しいように思われます。本書は2人の専門が異なる研究者の共著で、お互いに内容を補っています。読んでいて感じたのは、植物もまた生物界の一部分に過ぎないのだという当たり前のものでした。しかし、基本的に生物学の一般書籍は、動物は動物、植物は植物に絞って書かれがちですから、その当たり前の意識が薄れがちです。私などはサボテンや多肉植物の論文に前のめりで入り込んでいるため、そのことをついつい忘れがちです。一度立ち止まって、広く見回してみるのも必要なことだと思いなしました。おすすめします。
ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村
にほんブログ村
コメント