ユーフォルビアは世界中に分布し、雑草だったり樹木だったり、あるいは多肉植物や塊根植物だったりと非常に多様性があります。しかし、傷つけると乳液が出るという特徴は共通します。さて、ユーフォルビアの乳液は大なり小なり毒性がありますが、その高い生理活性を薬として利用出来ないかという試みは、近年でも盛んに行われています。ヨーロッパ原産の草本種が使われることが多いのですが、日本ではミドリサンゴあるいはミルクブッシュと呼ばれるEuphorbia tirucalliもよく使われます。これは、E. tirucalliが世界中で帰化しており、各地で実際に利用されていることも関係があるのでしょう。しかし、さらに調べると、意外にもEuphorbia neriifoliaという多肉植物について、その利用が様々に研究されていることに気が付きました。ちょうど、E. neriifoliaについて整理した論文を見つけましたので、ご紹介しましょう。それは、Chinmayi Upadhyaya & Sathish Sの2017年の論文、『A Review on Euphorbia neriifolia Plant』です。

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『Species Plantarum』(1753年)の表紙
植物の学名の歴史はここから始まりました。この書籍においてEuphorbia neriifolia L.が記載されました。つまり、最初に現在の命名システムを適応して命名された最初のユーフォルビアの1つがE. neriifoliaなのです。


Euphorbia neriifoliaの特徴
Euphorbia neriifoliaは南アジア原産の多肉植物で、インドトウダイグサの木(Indian spurge tree)などと呼ばれます。インドのデカン半島全体に見られ、乾燥した岩の多い丘陵地帯で良く見かけます。現在はインド、スリランカ、ミャンマー、バングラディシュ、タイ、ボルネオを除くマレーシア地域で地元住民により栽培され帰化しています。
E. neriifoliaは直立したトゲのある多肉植物です。枝分かれした低木で、高さ2〜6m、あるいはそれ以上に育つこともあります。モンスーンの時期を除いて、1年の大半は葉がありませんが、葉は通常10〜18cmと大きく30cmに達することもあります。

一般的にユーフォルビアの乳液は有毒であり、皮膚に水疱を引き起こしたり、目に入ると重度の浮腫を引き起こす可能性があります。また、ユーフォルビアの葉や根は漁に魚毒としつ利用されることもあります。乳液が付いてしまったら、流水で洗い流すことが有効です。

伝統的な用途
古代のvaidhya(アーユルヴェーダの医師)は、E. neriifoliaの乳液を利用しました。耳痛、肝臓、脾臓、梅毒、水疱瘡、ハンセン病などに使用されました。
E. neriifoliaの乳液はアーユルヴェーダにおいて喘息の薬とされており、乳液と蜂蜜の混合液は喘息薬として家庭薬として利用されています。また、ギー(バターオイルの1種)と乳液を混ぜ、梅毒、内臓閉塞、長期間続く熱帯による脾臓と肝臓の肥大に対して与えられます。バターとともに使えば、潰瘍や疥癬、腺腫脹の化膿防止になります。マルゴサ油(インドセンダンからとれる油)と混合したものはリウマチに使用されます。
黒胡椒と混ぜた根はサソリ刺されや蛇咬傷に、内外から使用されます。茎は灰で焼かれ、蜂蜜とホウ砂を含む飲み物は去痰に使用されます。

薬学的な用途
下剤や駆風剤(ガス抜き)として使用し、食欲を改善し、腹部のトラブル、気管支炎、腫瘍、白斑、痔、炎症、脾臓の肥大、貧血、潰瘍、発熱、慢性呼吸疾患に有用です。
ある研究ではE. neriifoliaの葉の抽出物は、免疫を刺激し、強力な鎮痛剤、抗炎症剤、軽度をCNS(中枢神経)抑制剤、創傷治癒活性があることが分かりました。
乳液は関節炎に対する経口の有効性と安全性を確認しました。
E. neriifolia抽出物をモルモットの創傷治癒活性について評価したところ、コラーゲンおよびDNA量の増加を示し、上皮および血管の増加を示しました。

最後に
以上が論文の簡単な要約です。
E. neriifoliaはインドでは伝統的にアーユルヴェーダで利用されてきたようです。近年では薬理学的な研究も行われています。しかし、E. neriifoliaはインド以外でも広く南アジア周辺でも栽培されていると言います。単純にインドのアーユルヴェーダの知識が伝わっただけなのか、それぞれの場所により固有の利用方法が発達したのか気になります。
また、論文中の毒性の話はあくまでユーフォルビア全般の話であり、E. neriifoliaの毒性ではないことも気になります。書かれている毒性は、アフリカ原産の柱サボテン状のユーフォルビアについての症状だろうとは思います。様々に利用されていた経緯から、その毒性についても知りたいところです。
E. neriifoliaは伝統医学により利用されて来ましたが、科学的な研究はそれほど進んでいないような印象は受けます。将来的には薬学的作用も詳しく解析されるでしょう。


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