なんでも、スペインには野生化したアロエが生えているそうです。当然、外来種ということになります。今まではAloe feroxであると言われてきたそうですが、実は違うのではないかという話があります。それはPere Aymerich & Jordi Lopez-Pujolの2023年の論文、『On the presence of Aloe × caesia Salm-Dyck and A. ferox Mill. in the eartern Iberian Peninsula』です。早速、内容を見てみましょう。
野良アロエの報告
スペインのイベリア半島東部にAloe feroxと思われるアロエが野生化しています。著者らはこのアロエがAloe × caesiaではないかと考えています。Aloe ×caesiaとは、A. feroxとA. arborescensの自然交雑種で、分布が重なる地域で自然発生します。外観はかなり多様性があるようです。A. ×caesiaは地中海地域では園芸用に使用されてきましたが、地中海地域で栽培されるのはA. feroxによく似た姿のものです。ただし、A. feroxのように単幹ではなく、A. arborescensのように複数のロゼットからなります。そのため、密集した集団を作ります。A. × caesiaの花はクリーム-オレンジ色/赤色の2色からなり、A. feroxのようなオレンジ/赤色の単色ではありません。
Aloe × caesia
Aloe fulgensとして記載。
『Hortus botanicus panormitanus』(1889年)より
地中海地域のアロエ
A. × caesiaは、サルデーニャ島では長い間外来植物として知られ、シチリア島では帰化植物と見なされています。南フランスの地中海沿岸のフレンチ・リヴィエラでは、庭から逸出したA. × caesiaが比較的一般的になっています。データベースではA. × caesiaが地中海諸国の大部分で「導入された」としていますが、これは明らかに栽培植物のことを指しています。「Flora iberica Gremes」(2013)では、「Flora Europaea」(1980)でイベリア北東部からの報告があるものの、それが本当に庭からの逸出であるかを疑っています。「Flora Europaea」では、南東フランスまたは北スペインの海岸沿いにA. × caesia、A. spectabilis、A. maculataが見つかると書いています。しかし、この記述は北東イベリアではなく、プロヴァンスで知られていたアロエに由来しているだけかも知れません。
イベリア半島のA. × caesiaの確実な最初のデータは、2017年にAlacant/Alicanteで確認された繁殖個体です。これは、実際にこの区画の所有者により投棄された植物が由来であることが確認されています。他にも確認されていますが、投棄あるいは古い庭の跡地かも知れません。
Aloe × caesia vs. Aloe ferox
A. × caesiaは報告は数年前ですが、以前から見つかっていましたが、誤ってA. feroxとして識別された可能性があります。イベリア半島ではA. feroxの報告は、バルセロナ(2008)、Vinaros(2017)、Reus(2019)だけです。しかし、これらが本当にA. feroxであるか確認されておらず、逆にA. × caesiaである可能性を示唆する証拠があります。
Vinarosの個体は2つのロゼットが接近して育っているため、複数のロゼットからなる1個体である可能性があります。しかし、花序は13〜14本の枝からなり、A. × caesiaにもA. feroxにも該当しない特徴です。また、残念ながら他の2つの報告は画像がないため、詳細を調査しました。
2000年以降、バルセロナの都市部にあるMontjuicの丘では、小さな半帰化集団があります。これは、多くのアロエを含む多肉植物のコレクションがある市立庭園に由来しているようです。一見してA. feroxを彷彿とさせます。ロゼットの密集する傾向がありますが、孤立したものもあります。しかし、著者らはおそらく、これらはA. × caesiaであろうとしています。Montjuicの丘のアロエは急斜面に生えるため、はっきりと確認出来ませんでした。また、A. feroxは自家受粉しないため、種子繁殖している可能性があるMontjuicの丘のアロエには該当しません。また、A. feroxはタイヨウチョウにより受粉する鳥媒花であり、地中海では受粉しません。ただし、ミツバチにより受粉する可能性はあります。また、多くのアーチ型の葉には辺縁歯がありますが、これはA. × caesiaでは一般的がA. feroxでは見られません。
ReusのA. feroxについては2014年に撮影された画像がありましたが、葉はA. × caesiaの特徴である下向きのアーチ型の葉が見られます。この集団は2023年ではなくなっていました。
現在までの情報からはAloe feroxは確認されず、Aloe × caesiaである可能性が高いと言えます。
以上が論文の簡単な要約です。
どうやら地中海地域では、A. × caesiaは園芸的に一般的なようです。ですから、園芸植物の逸出が帰化したアロエが由来なのは共通しているようですね。
日本ではAloe arborescensが昔から好まれていて、一部は逸出して野生化していますが、大抵は種子繁殖しているものは見たことがありません。それは、1個体のみの逸出ばかりで、付近に受粉可能な個体がないからでしょう。まあ、適切な花粉媒介者がいないような気もしますから、個体が複数でも難しく思えます。何と言っても、開花は主に冬ですから、昆虫もいません。沖縄などの暖地ではどうなのか分かりませんが…
ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村
にほんブログ村
野良アロエの報告
スペインのイベリア半島東部にAloe feroxと思われるアロエが野生化しています。著者らはこのアロエがAloe × caesiaではないかと考えています。Aloe ×caesiaとは、A. feroxとA. arborescensの自然交雑種で、分布が重なる地域で自然発生します。外観はかなり多様性があるようです。A. ×caesiaは地中海地域では園芸用に使用されてきましたが、地中海地域で栽培されるのはA. feroxによく似た姿のものです。ただし、A. feroxのように単幹ではなく、A. arborescensのように複数のロゼットからなります。そのため、密集した集団を作ります。A. × caesiaの花はクリーム-オレンジ色/赤色の2色からなり、A. feroxのようなオレンジ/赤色の単色ではありません。
Aloe × caesia
Aloe fulgensとして記載。
『Hortus botanicus panormitanus』(1889年)より
地中海地域のアロエ
A. × caesiaは、サルデーニャ島では長い間外来植物として知られ、シチリア島では帰化植物と見なされています。南フランスの地中海沿岸のフレンチ・リヴィエラでは、庭から逸出したA. × caesiaが比較的一般的になっています。データベースではA. × caesiaが地中海諸国の大部分で「導入された」としていますが、これは明らかに栽培植物のことを指しています。「Flora iberica Gremes」(2013)では、「Flora Europaea」(1980)でイベリア北東部からの報告があるものの、それが本当に庭からの逸出であるかを疑っています。「Flora Europaea」では、南東フランスまたは北スペインの海岸沿いにA. × caesia、A. spectabilis、A. maculataが見つかると書いています。しかし、この記述は北東イベリアではなく、プロヴァンスで知られていたアロエに由来しているだけかも知れません。
イベリア半島のA. × caesiaの確実な最初のデータは、2017年にAlacant/Alicanteで確認された繁殖個体です。これは、実際にこの区画の所有者により投棄された植物が由来であることが確認されています。他にも確認されていますが、投棄あるいは古い庭の跡地かも知れません。
Aloe × caesia vs. Aloe ferox
A. × caesiaは報告は数年前ですが、以前から見つかっていましたが、誤ってA. feroxとして識別された可能性があります。イベリア半島ではA. feroxの報告は、バルセロナ(2008)、Vinaros(2017)、Reus(2019)だけです。しかし、これらが本当にA. feroxであるか確認されておらず、逆にA. × caesiaである可能性を示唆する証拠があります。
Vinarosの個体は2つのロゼットが接近して育っているため、複数のロゼットからなる1個体である可能性があります。しかし、花序は13〜14本の枝からなり、A. × caesiaにもA. feroxにも該当しない特徴です。また、残念ながら他の2つの報告は画像がないため、詳細を調査しました。
2000年以降、バルセロナの都市部にあるMontjuicの丘では、小さな半帰化集団があります。これは、多くのアロエを含む多肉植物のコレクションがある市立庭園に由来しているようです。一見してA. feroxを彷彿とさせます。ロゼットの密集する傾向がありますが、孤立したものもあります。しかし、著者らはおそらく、これらはA. × caesiaであろうとしています。Montjuicの丘のアロエは急斜面に生えるため、はっきりと確認出来ませんでした。また、A. feroxは自家受粉しないため、種子繁殖している可能性があるMontjuicの丘のアロエには該当しません。また、A. feroxはタイヨウチョウにより受粉する鳥媒花であり、地中海では受粉しません。ただし、ミツバチにより受粉する可能性はあります。また、多くのアーチ型の葉には辺縁歯がありますが、これはA. × caesiaでは一般的がA. feroxでは見られません。
ReusのA. feroxについては2014年に撮影された画像がありましたが、葉はA. × caesiaの特徴である下向きのアーチ型の葉が見られます。この集団は2023年ではなくなっていました。
現在までの情報からはAloe feroxは確認されず、Aloe × caesiaである可能性が高いと言えます。
以上が論文の簡単な要約です。
どうやら地中海地域では、A. × caesiaは園芸的に一般的なようです。ですから、園芸植物の逸出が帰化したアロエが由来なのは共通しているようですね。
日本ではAloe arborescensが昔から好まれていて、一部は逸出して野生化していますが、大抵は種子繁殖しているものは見たことがありません。それは、1個体のみの逸出ばかりで、付近に受粉可能な個体がないからでしょう。まあ、適切な花粉媒介者がいないような気もしますから、個体が複数でも難しく思えます。何と言っても、開花は主に冬ですから、昆虫もいません。沖縄などの暖地ではどうなのか分かりませんが…
ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村
にほんブログ村
コメント