サボテンやアガヴェと言えば砂漠に生えているイメージですが、砂漠と言ってもサラサラした砂が舞う砂丘ばかりではありません。サボテンに限らず乾燥地に生える多肉植物が生えるのは、実際には硬く締まった土砂漠だったりします。乾燥の具合も様々で、うっすら草が生えるサバンナ/ステップ気候も見られます。そのため、砂漠では火災が発生することがあります。最近、Euphorbia mlanjeanaという多肉植物が沢山輸入されていますが、巨大なゴツゴツした塊から枝を伸ばす奇妙な姿をしています。これは度重なる火災で焼かれながらも、その都度再生して生き延びてきた証です。しかし、サボテンの自生地でも火災は発生するはずですが、サボテンを始めとした砂漠植物たちはどのように火災を対処しているのでしょうか? ということで、本日はDante Arturo Rodriguez-Trejoらの2019年の論文、『Plant responses to fire in a Mexican arid shrubland』をご紹介しましょう。

Echinocactus platycanthus
Echinocactus visnagaとして記載。
『Curtis's botanical magazine』(1851)より
研究はメキシコのPuebla州とOaxaca州にあるTehuacan-Cuicatlan生物圏保護区において行われました。保護区の低木林のうち最大面積はDasylirion lucidumを含むバラ色低木林て、調査地はこの中で行われました。斜面にはEchinocactus platyacanthusやAgave potatorumが生え、平野部には針葉樹(ビャクシン)であるJuniperus deppeanaが生えます。
保護区では火災はそれほど頻繁ではなく、2013年から2016年の間に報告されただけで26件の森林火災がありました。
調査地域で最も豊富なのはDasylirion lucidumで、100メートル四方に286本もありました。火災によりすべての個体が焦げており、すべての葉は焼けています。ロゼットの低い部分は平均0.6メートルでした。しかし、その生存率は97.7%に達しました。大きな個体ほど新しい葉をよく出しました。火事のあとでもよく開花し、火事に見舞われなかった個体との差はありませんでした。
Dasylirionの葉は可燃性は高いものの、早く燃え尽きるため火力は弱くなり、生長点は守られます。また、Dasylirionの茎はは肥厚環と呼ばれる形成層を有し、断熱作用があります。
調査地域では少ないJuniperus deppeanaは、100メートル四方に1.8本しかありませんでした。しかし、調査地域で最も背が高い植物でした。最大5.8メートルに達します。火災後、その25.5%が枯死しました。生き残った木のうち、55.2%は根元から新芽を出しました。
Juniperusの厚い樹皮は耐火性がありますが、乾燥により樹皮の生産は減少し薄くなります。
調査地域ではあまり見られないEchinocactus platyacanthusは、100メートル四方に2.1本ありました。しかし、調査地域で最も直径のある植物でした。最大の個体は高さ1.3メートルでした。火災後、4.8%が枯死しました。しかし生き残っているサボテンも活力はありませんでした。サボテンの高さの平均89.1%が壊死しました。
サボテンは水分が多く火に抵抗性があります。しかし、他の調査では、Ferocactus wislizeniiでは火災により棘が失われると、昆虫やネズミ、ウサギや家畜により食害され枯死することが知られています。また、棘は過度の過熱や霜害から生長点を保護する働きがあります。サボテンは棘の喪失がその後の生存率を左右します。
Agave potatorumは割と豊富で、100メートル四方に17.6本ありました。火災後、10%が枯死しました。生き残っているAgaveはすべて発芽し、新しい葉を出しました。
Agaveの葉の多肉質でクチクラ層が非常に厚いなどの特徴は、可燃性を低下させ耐火性を高めます。また、Agaveの古い葉は、火災から受ける熱から本体を守ります。
以上が論文の簡単な要約です。
乾燥地では火災が起きやすく、自生する植物も火災に適応した生態系を持ちます。Tehuacan-Cuicatlan生物圏保護区では、異なる分類群の4種類の植物を調査しましたが、すべてである程度火災に適応していることが分かりました。調査地ではDasylirionが優勢なのは、火災に対する強さも関係があるのかも知れませんね。
しかし、サボテンは割とダメージが強いようですが、これはサボテンの形も関係するような気もします。球状の玉サボテンではいくら大きくても、光合成する表面積の大半を焼かれてしまいます。枝を出すタイプでもありませんから、復活は中々難しそうです。これが柱サボテンならば、根元は木質化していきますから上部が無事ならば問題なさそうです。また、ウチワサボテンならば、茎が焼かれても新しい芽が沢山吹いて直ぐに復活可能かも知れません。サボテンの形状による耐火性の違いも気になります。何か良い論文がないか調べてみるつもりです。
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Echinocactus visnagaとして記載。
『Curtis's botanical magazine』(1851)より
研究はメキシコのPuebla州とOaxaca州にあるTehuacan-Cuicatlan生物圏保護区において行われました。保護区の低木林のうち最大面積はDasylirion lucidumを含むバラ色低木林て、調査地はこの中で行われました。斜面にはEchinocactus platyacanthusやAgave potatorumが生え、平野部には針葉樹(ビャクシン)であるJuniperus deppeanaが生えます。
保護区では火災はそれほど頻繁ではなく、2013年から2016年の間に報告されただけで26件の森林火災がありました。
調査地域で最も豊富なのはDasylirion lucidumで、100メートル四方に286本もありました。火災によりすべての個体が焦げており、すべての葉は焼けています。ロゼットの低い部分は平均0.6メートルでした。しかし、その生存率は97.7%に達しました。大きな個体ほど新しい葉をよく出しました。火事のあとでもよく開花し、火事に見舞われなかった個体との差はありませんでした。
Dasylirionの葉は可燃性は高いものの、早く燃え尽きるため火力は弱くなり、生長点は守られます。また、Dasylirionの茎はは肥厚環と呼ばれる形成層を有し、断熱作用があります。
調査地域では少ないJuniperus deppeanaは、100メートル四方に1.8本しかありませんでした。しかし、調査地域で最も背が高い植物でした。最大5.8メートルに達します。火災後、その25.5%が枯死しました。生き残った木のうち、55.2%は根元から新芽を出しました。
Juniperusの厚い樹皮は耐火性がありますが、乾燥により樹皮の生産は減少し薄くなります。
調査地域ではあまり見られないEchinocactus platyacanthusは、100メートル四方に2.1本ありました。しかし、調査地域で最も直径のある植物でした。最大の個体は高さ1.3メートルでした。火災後、4.8%が枯死しました。しかし生き残っているサボテンも活力はありませんでした。サボテンの高さの平均89.1%が壊死しました。
サボテンは水分が多く火に抵抗性があります。しかし、他の調査では、Ferocactus wislizeniiでは火災により棘が失われると、昆虫やネズミ、ウサギや家畜により食害され枯死することが知られています。また、棘は過度の過熱や霜害から生長点を保護する働きがあります。サボテンは棘の喪失がその後の生存率を左右します。
Agave potatorumは割と豊富で、100メートル四方に17.6本ありました。火災後、10%が枯死しました。生き残っているAgaveはすべて発芽し、新しい葉を出しました。
Agaveの葉の多肉質でクチクラ層が非常に厚いなどの特徴は、可燃性を低下させ耐火性を高めます。また、Agaveの古い葉は、火災から受ける熱から本体を守ります。
以上が論文の簡単な要約です。
乾燥地では火災が起きやすく、自生する植物も火災に適応した生態系を持ちます。Tehuacan-Cuicatlan生物圏保護区では、異なる分類群の4種類の植物を調査しましたが、すべてである程度火災に適応していることが分かりました。調査地ではDasylirionが優勢なのは、火災に対する強さも関係があるのかも知れませんね。
しかし、サボテンは割とダメージが強いようですが、これはサボテンの形も関係するような気もします。球状の玉サボテンではいくら大きくても、光合成する表面積の大半を焼かれてしまいます。枝を出すタイプでもありませんから、復活は中々難しそうです。これが柱サボテンならば、根元は木質化していきますから上部が無事ならば問題なさそうです。また、ウチワサボテンならば、茎が焼かれても新しい芽が沢山吹いて直ぐに復活可能かも知れません。サボテンの形状による耐火性の違いも気になります。何か良い論文がないか調べてみるつもりです。
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