植物は様々な環境に適応して分布しています。一地点にしか生えない植物ばかりではなく、大抵の植物はある程度の広さの地理的分布を持っています。しかし、必ずしも分布域が均一な環境とは限りません。当然ながら、植物はそれぞれの環境にある程度は適応していることが想定されます。本日はサボテンの環境適応の一端を調査した、Karen Baukらの2016年の論文、『Germination characteristic of Gymnocalycium monvillei (Cactaceae) along its entire altitudinal range』をご紹介しましょう。

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Gymnocalycium monvillei
Gymnocalycium multiflorumとして記載。
『Adissonia』(1918年)より


Gymnocalycium monvilleiは、アルゼンチンのCordoba山脈に固有のサボテンで、非常に広い高度分布を持ちます。過去に低地のG. monvilleiが調査され、発芽率は40%と低く、発芽にあまり光やは必要としていないようです。しかし、G. monvilleiは標高1900m付近に多く、それより高い(〜2200m)やより低い(〜800m)では減少していきます。高度により日照、温度、土壌の水分量などに重大な違いがあり、種子の発芽に影響を与える可能性があります。
G. monviするの自生地の平均温度は高高度で10.3℃、低高度で16.5℃でした。暖かい月の平均気温は、高高度で15℃、低高度で24℃でした。標高1900mを超えると雪が降ります。
G. monvilleiは1〜7個の果実をつけ、200〜4000個の種子を作ります。著者らは5つの標高に生える同じサイズ(10cm)のG. monvilleiから種子を採取しました。各高度から20個体を選びました。
種子は採取から1年後に播種されました。温度は25℃と32℃で試験しました。また、種子の発芽に光が必要かも確認しました。

種子は32℃よりも25℃でより発芽率が高いことが、すべての高度で確認されました。熱阻害を受けている可能性があります。
25℃の発芽率は、最も標高が高い2230mが80%を超え非常に高く、1940mで70%以上、1555mで60%以上、1250mで約20%でした。しかし、878mでは50%以上でした。著者らは、より寒い場所では種子の熟成が遅く、長い熟成期間が種子の品質にプラスの影響を与えた可能性があるということです。
種子の発芽には光が必要であることが分かりました。1250〜2230mではほぼ同じ結果でしたが、878mだけは発芽率が低下しました。


以上が論文の簡単な要約です。
最もG. monvilleiが多い標高1900m付近から採取された種子のポテンシャルが高いことが期待されましたが、結果は異なりました。意外にも最も標高が高い地点の種子が高かったのです。実際の自生地では冬の寒さなどの、論文では試験していないパラメーターの影響もあるのかも知れません。ただ、高い標高の種子ほど発芽率が高いのは、種子の品質に関係があるのかも知れません。また、不思議なことに最も標高が低い878m地点の種子だけは、全体の傾向に従っていません。これは、種子の品質ではなく、G. monviが低地に適応して進化したからかも知れません。もしかしたら、G. monvilleiは低地の集団と1250m以上の集団の2つが、遺伝的に隔離されているのかも知れません。種子の光に対する発芽率も低地だけは異なります。これは、何やら気になりますね。


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