ナース植物(nurse plants)と言う言葉があります。砂漠などの乾燥地では、何も遮るものがない場所ではなく、他の植物の陰で実生や小型の植物は育つのではないかという考え方です。日陰を提供する植物を看護する植物=ナース植物と呼ぶ訳です。この、ナース植物と言う言葉自体は、いくつかの論文では主題ではありませんでしたが見かけていました。ですから、ナース植物について調べた論文を探してみました。と言う訳で、本日はそんなナース植物とサボテンの関係を調査した、Enrique Juradoらの2013年の論文、『Are nurse plants always necessary for succulent plants? Observation in northeastern Mexico, including endangered and threatened species』をご紹介します。
メキシコ北東部のTamaulipas州BurgosのTamaulipan thornscrub(米国南部とメキシコ北東部の砂漠と低木林からなる地域)で、4種類のサボテン、Ariocarpus retusus、Astrophytum asterias、Mammillaria heyderi、Sclerocactus scheeriと、リュウゼツラン科植物のManfreda longifloraを調査しました。さらに、細長い円筒形の枝を支えるために物理的にナース植物を必要としている可能性があるCylindropuntia leptocaulisと、ナース植物を必要としていないように見えるEchinocactus texensisも調査しました。
主な植生は、Cordia boissieri、Forestiera angustifolia、Guaiacum angustifolium、Bernardia myricaefolia、Karwainskia humboldtiana、Prosopis laevigata、Sideroxylon lanuginosum、Acasia farnesianaなどの低木が生えます。
結果として、ナース植物の下でより頻繁に見られたのはManfledaだけでした。EchinocactusとSclerocactusはナース植物の下以外でよく見られました。他のサボテンはナース植物の下でもそれ以外でも見られました。Manfledaは100個体のうちAcasia rigidulaの下に49個体、Cordia boissieriの下に48個体、残り3個体も他のナース植物の下で見つかりました。A. rigidulaは植生の5%、C. boissieriは14%を占めるに過ぎないため、Manfledaとの強い関係性を疑わせます。
さて、以上の結果からは、サボテンは必ずしもナース植物を必要としていないことが分かります。リュウゼツラン科のAgaveでは、ナース植物が非常に重要であることがすでに判明しています。ですから、Manfledaもまたナース植物を必要としています(※)。
しかし、DurangoのCanon de Fernandez州立公園における過去の調査ではProsopis(マメ科の樹木)の下で3種類のサボテンが生育していることが分かっています。州立公園の降水量は著者らの調査地の1/3でした。著者らはより厳しい環境において、ナース植物が有効に働くと考えました。このProsopisは一般的なナース植物ですが、著者らの調査地でも自生するにも限らず、ナース植物ではありませんでした。
(※) Manfledaは現在ではAgaveに吸収されました。つまり、Manfleda longiflora=Agave longiflora。
以上が論文の簡単な要約です。
一般的にナース植物は、遮光したり温度を低下させたり、土壌の水分の蒸発を緩やかにしたり、草食動物から保護します。この論文の場合は、砂漠の中では水分が多い環境であることから、ナース植物の役割は遮光かも知れません。しかし、サボテンはナース植物の保護がなくても問題はないようです。しかし、Manfledaはサボテンよりも多肉植物として高度化しておらず、より乾燥に敏感な様子が受け取れます。また、より乾燥が厳しい環境ではサボテンでもナース植物が必要なようです。そもそも、砂漠では実生が育てるほどの水分が、サボテンがある程度育って自立出来るまで続く環境ばかりではないことは、なんとなく分かります。また、柱サボテンや大型玉サボテンなどでは、育つにつれ小型のナース植物をやがて圧迫して枯らしてしまうかも知れません。その場合、ナース植物があったかどうかは分からないでしょう。このように、ナース植物の研究は、まだまだ発展途上なようです。他にも良い論文があればまたご紹介したいと思います。
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主な植生は、Cordia boissieri、Forestiera angustifolia、Guaiacum angustifolium、Bernardia myricaefolia、Karwainskia humboldtiana、Prosopis laevigata、Sideroxylon lanuginosum、Acasia farnesianaなどの低木が生えます。
結果として、ナース植物の下でより頻繁に見られたのはManfledaだけでした。EchinocactusとSclerocactusはナース植物の下以外でよく見られました。他のサボテンはナース植物の下でもそれ以外でも見られました。Manfledaは100個体のうちAcasia rigidulaの下に49個体、Cordia boissieriの下に48個体、残り3個体も他のナース植物の下で見つかりました。A. rigidulaは植生の5%、C. boissieriは14%を占めるに過ぎないため、Manfledaとの強い関係性を疑わせます。
さて、以上の結果からは、サボテンは必ずしもナース植物を必要としていないことが分かります。リュウゼツラン科のAgaveでは、ナース植物が非常に重要であることがすでに判明しています。ですから、Manfledaもまたナース植物を必要としています(※)。
しかし、DurangoのCanon de Fernandez州立公園における過去の調査ではProsopis(マメ科の樹木)の下で3種類のサボテンが生育していることが分かっています。州立公園の降水量は著者らの調査地の1/3でした。著者らはより厳しい環境において、ナース植物が有効に働くと考えました。このProsopisは一般的なナース植物ですが、著者らの調査地でも自生するにも限らず、ナース植物ではありませんでした。
(※) Manfledaは現在ではAgaveに吸収されました。つまり、Manfleda longiflora=Agave longiflora。
以上が論文の簡単な要約です。
一般的にナース植物は、遮光したり温度を低下させたり、土壌の水分の蒸発を緩やかにしたり、草食動物から保護します。この論文の場合は、砂漠の中では水分が多い環境であることから、ナース植物の役割は遮光かも知れません。しかし、サボテンはナース植物の保護がなくても問題はないようです。しかし、Manfledaはサボテンよりも多肉植物として高度化しておらず、より乾燥に敏感な様子が受け取れます。また、より乾燥が厳しい環境ではサボテンでもナース植物が必要なようです。そもそも、砂漠では実生が育てるほどの水分が、サボテンがある程度育って自立出来るまで続く環境ばかりではないことは、なんとなく分かります。また、柱サボテンや大型玉サボテンなどでは、育つにつれ小型のナース植物をやがて圧迫して枯らしてしまうかも知れません。その場合、ナース植物があったかどうかは分からないでしょう。このように、ナース植物の研究は、まだまだ発展途上なようです。他にも良い論文があればまたご紹介したいと思います。
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