Weberbauerocereusはペルーとボリビア原産の中型の柱サボテンです。なにやら、このWeberbauerocereusはHaageocereusの異名であるという意見もあるそうです。しかし、その意見に対して反対し、Weberbauerocereusの名前を保存する提案が提出されています。それは、Paul Hoxey & Nigel Taylorの2020年の論文、『Proposal to conserve the name Weberbauerocereus (Cactaceae) with a conserved type』です。一体、どのような経緯があるのでしょうか?

ただし、論文は基本情報を知っている前提で書かれているようで、説明がないので非常に分かりにくくなっています。私が情報を追加しつつ解説します。
Weberbauerocereus Backeb.は1942年にBackebergにより命名されました。その時にBackebergが記載した種が、Weberbauerocereus fascicularis (Meyen) Backeb.でした。 問題はここからです。
1980年にE. Ritterは、W. fascicularisの前身である、1833年に命名されたCereus fascicularis Meyen、あるいは1934年に命名されたCactus fascicularis (Meyen) Meyenについて、これはWeberbauerocereusではなくHaageocereusを指していたのではないかという指摘をしました。つまり、Haageocereus Backeb.は1933年の命名でありWeberbauerocereusより命名が早いため、Weberbauerocereusという属自体が無効となってしまいます。W. fascicularisも使えないということになります。
著者のうちHoxeyは2020年に、Meyenのペルーでの足取りを追い、Ritterと同じ結論に達しました。Cereus fascicularisとはHaageocereusを指しています。F. Ritterは1981年にCereus fascicularisをHaageocereus fascicularis (Meyen) F. Ritterと命名しました。ただ、Meyenの説明には混同が見られ、幼体のBrowningia candelaris (Meyen) Britton & Roseを含んでいるようです。
さて、
Cereus fascicularis Meyenをタイプとして利用することは出来ません。そのため、Weberbauerocereusを説明するためには使用出来なくなりました。しかし、Weberbauerocereus Backeb.は過去70年間に渡りサボテンに関する文献で一貫して使用されており、サボテン愛好家や植物園のラベルや植物標本のデータベース、サボテン業者のカタログなどでも使われて来ました。もし、Weberbauerocereusが保存されない場合、新しい名前をつける必要があります。

以上が論文の簡単な要約です。
しかし、相当に噛み砕いて情報を加味しましたが、それでも分かりにくい内容です。簡単にまとめると、Weberbauerocereusは始めて命名された時にHaageocereusをタイプ標本として説明してしまったため正当性がなくなり、Haageocereusの異名となってしまう可能性があったということです。そこで、著者らはWeberbauero属をこのまま存続させて使用することを提案しているのです。現在では、Weberbauerocereusは著者らの提案通り存続しており、Haageocereusとは別属として独立しています。

さらに情報を追加すると、Weberbauerocereusの新しいタイプは、1956年(publ. 1957)に命名されたWeberbauerocereus weberbaueri (K. Schum. ex Vaupel) Backeb.です。これは、1913年に命名されたCereus weberbaueri K. Schum. ex Vaupelから来ているようです。1987年にはHaageocereus weberbaueri (K. Schum. ex Vaupel) D. R. Huntも命名されていますが、認められておりません。ちなみに、1879年にはCereus fascicularis K. Schum.という命名もありましたが、これはMeyenの命名したC. fascicularisと同名なため除外された学名です。

最後に現在認められているWeberbauerocereus属8種類と、Weberbauerocereus属の名前がつけられたことがある異名を記して終わります。

Weberbauerocereus Backeb.
①W. albus
②W. cephalomacrostibas
③W. churinensis
④W. cuzcoensis
⑤W. madidiensis
⑥W. rauhii
⑦W. weberbaueri
⑧W. winterianus

異名(→現在の学名)
①W. fascicularis
 →Haageocereus fascicularis
②W. horridispinus
    →W. weberbaueri
③W. johnsonii
    →W. winterianus
④W. longicomus
 →W. albus
⑤W. seyboldianus
 →W. weberbaueri
⑥W. torataensis
 →W. weberbaueri


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