マダガスカルは様々な動植物の宝庫で、非常に多くの固有種が知られています。特にユーフォルビア属の多様性には目を見張るものがあり、非常に沢山の種類の花キリンはマダガスカル原産のユーフォルビアの代表です。しかし、マダガスカルには花キリン以外のユーフォルビアも沢山ありますが、森林地帯に生える樹木型のユーフォルビアはあまり知名度がなく育てている人もあまりいないでしょう。本日はそんな非多肉植物のユーフォルビアの分類を提案したThomas Haevermansの2006年の論文、『Taxnomy of the Euphorbia pyrifolia clade』をご紹介します。

Euphorbia L.は2 番目に大きな属であり、約2000種類が知られています。しかし、1862年のBoisser以降は世界的な改訂はなく、それ以降は園芸的に重要な多肉植物のグループを扱ったものばかりです。非多肉植物あるいは半多肉植物は、「ユーフォルビア学者」(Euphorbiologists)からは無視されており、Euphorbia hedyotoidesに近い分類群の大部分もそうです。E. hedyotoidesの仲間は非公式な「Euphorbia pyrifolia group」を形成し、コレクションされる有名な種類もごくわずかです。このグループはマスカレン諸島とマダガスカルに固有です。このグループの多くは記載されておらず、この論文は命名上の知識と問題を整理するよい機会です。

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Euphorbia bongolavensis

このグループは、新しく芽の根元には葉がないかほとんどなく、葉は枝の先端に集まります。翌年、節間が極端に減少した短枝になり花を咲かせます。新しい芽は脇芽によります。このグループの生長を、Rauh(1992)は「hedyotoides型分岐」と呼んでいます。
葉は通常は落葉性で、E. elliotii以外の葉は多肉質ではありません。花は様々な形態を取ります。
このグループは、狭義のsection Denisophorbiaで、花キリン仲間(section Denisophorbia)の姉妹群です。

最後にpyrifoliaグループの一覧を示します。
1, E. abotii Baker, 1894
2, E. ankaranae Leandri, 1945
3, E. aprica Baill., 1886
4, E. betacea Baill., 1886
5, E. boivinii Boiss., 1849
 ・E. boivinii v. boivinii
 ・E. boivinii v. minor Leandri, 1945
 ・E. boivinii v. oreades Leandri, 1945
6, E. bongolavensis Rauh, 1993
7, E. elliotii Leandri, 1945
8, E. erythroxyloides Baker, 1883
9, E. hedyotoides N. E. Br., 1911
  =E. decaryiana Croizat., 1934
10, E. mahabobokensis Rauh, nom inv., 1995
11, E. mangorensis Leandri, 1945
12, E. martinae Rauh, 1999
13, E. physoclada Boiss., 1860
14, E. pyrifolia Lam., 1796
  =E. gracilipes Baill., 1861
15, E. rangovalensis Leandri, 1945
  =E. castillonii Lavranos, 2002
16, E. umbraculiformis Rauh, nom nud., 1994
17, E. zakamenae Leandri, 1945

以上が論文の簡単な要約です。
このpyrifoliaグループはsection Denisophorbiaの一部をなすようですが、section Denisophorbia自体は遺伝子解析によりsection Deuterocalliに近縁であることが判明しています。section Deuterocalliは、E. alluaudiiやE. cedrorumなどを含む、緑色の棒状のユーフォルビアです。そして、section Denisophorbiaとsection Deuterocalliは、花キリンの仲間であるsection Goniostemaに近縁です。3つのグループは外見こそまったく異なりますが、マダガスカル原産であり起源が同じ植物であることが分かります。
しかし、このタイプのユーフォルビアは、基本的に見かけませんし、しかも分類や命名は遅れているようです。この仲間は、現在どうなっているのでしょうか? おそらくは種類は増えていそうですが、簡単には確認出来なさそうです。なにか、まとめてくれている良い論文が出てくれていると助かるのですが…


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