2日続けて烏羽玉ネタで記事を書きましたが、何と今日も烏羽玉ネタです。本日は烏羽玉の学名である、Lophophora williamsiiに関するお話しです。本日、ご紹介するのはAnton Hoferの2021年の論文、『Proposal to conserve the name Echinocactus williamsii Lem. ex Salm-Dyck (Lophophora williamsii) against E. williamsianum Lem. (Cactaceae)』です。
論文はほぼ解説はないため、最初に簡単に烏羽玉の学名についてお話しします。烏羽玉の学名は、1894年に命名されたLophophora williamsii (Lem. ex Salm-Dyck) J. M. Coult.ですが、初めて命名された時はEchinocactusでした。と言うより、L. williamsiiが命名された時にLophophora属が誕生したのです。現在の学名の元になったのは、1845年に命名されたEchinocactus williamsii Lem. ex Salm-Dyckです。学名は「属名+種小名」が基本ですが、その後に命名者(正式に記載した人)がついたほうが正式な形です。この場合、Lem.とかSalm-Dyckは命名者の略された名前です。Lem.はLemaireのことですが、E. williamsiiは始めLemaireが命名したものの、内容に不足があったのかSalm-DyckがLemaireを引用して詳しく説明したので、Lem. ex Salm-Dyckとなったのでしょう。最終的には、J. M. CoultがE. williamsiiをLophophora属としたため、Lophophora williamsii (Lem. ex Salm-Dyck) J. M. Coultとなったのです。属名が変わると引用される前の学名の命名者を( )で表します。前置きが長くなりましたが、内容を見てみましょう。
Prince Joseph Salm-Reifferscheidt-Dyckは、1845年にEchinocactus williamsiiについて説明しました。Salm-Dyckはフランスのサボテン業者と非常に良好な関係を築いており、Freres Cels社からE. williamsiiを購入したようです。Celsによる種の説明がない場合、Salm-Dyckはラテン語とドイツ語の完全な説明でE. williamsiiを有効に公開しました。1894年にJohn M. CoulterはEchinocactus williamsii Lem. ex Salm-Dyckをオリジナルとして引用し、Lophophora J. M. Coultを樹立しました。この学名は科学者やアマチュアまで、世界中で受け入れられています。Lophophoraにはアルカロイドを含むため、Lophophora williamsiiの名前は世界中の薬物法に記載されています。
しかし、Salm-Dyckの命名の2年前にEchinocactus williamsianum Lem.が1843年に公表されています。しかし、後のLemaireはSalm-Dyckの公開したE. williamsiiを使用しています。E. williamsianumの名前は170年に渡り見過ごされてきており、キュー王立植物園のデータベースにも記載がありません(2021年当時)。
ここでは、Echinocactus williamsii Lem. ex Salm-Dyckを、国際命名規約のArt14.2に従い、Echinocactus williamsianum Lem.に対して保存することを提案します。提案が受け入れられない時は、一般的に流通した名前を、これまで知られていなかった名前に変える必要があり、世界中の薬物法の記載された名前も変えなくてはなりません。
以上が論文の簡単な要約です。
少し分かりにくい話ですが、命名が早い名前が優先されると言う「先取権の原理」に関する話です。内容は知られていなかったE. williamsianumと言う学名が存在していたため、E. williamsiiが廃棄されてしまうのを防ごうと言う提案でした。まだLophophoraではなくEchinocactusとなっていますから、現在の学名には関係がないように思われるかも知れませんが、実は関係があるのです。なぜなら、属名を変更する場合、どの学名を変更するのかを明らかにするために、旧・学名と記載年などを引用する必要があるからです。E. williamsiiが廃棄されてしまうと、E. williamsiiを引用して命名されたL. williamsiiも自動的に廃棄されてしまうのです。ですから、著者はまったく使用されてこなかった、と言うか知られてすらいなかった名前は廃棄して、今まで使用されてきた名前を保存しましょうと提案したのです。我々趣味家もこの提案には賛成でしょう。やはり、私も親しみのある名前が良いような気がします。
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論文はほぼ解説はないため、最初に簡単に烏羽玉の学名についてお話しします。烏羽玉の学名は、1894年に命名されたLophophora williamsii (Lem. ex Salm-Dyck) J. M. Coult.ですが、初めて命名された時はEchinocactusでした。と言うより、L. williamsiiが命名された時にLophophora属が誕生したのです。現在の学名の元になったのは、1845年に命名されたEchinocactus williamsii Lem. ex Salm-Dyckです。学名は「属名+種小名」が基本ですが、その後に命名者(正式に記載した人)がついたほうが正式な形です。この場合、Lem.とかSalm-Dyckは命名者の略された名前です。Lem.はLemaireのことですが、E. williamsiiは始めLemaireが命名したものの、内容に不足があったのかSalm-DyckがLemaireを引用して詳しく説明したので、Lem. ex Salm-Dyckとなったのでしょう。最終的には、J. M. CoultがE. williamsiiをLophophora属としたため、Lophophora williamsii (Lem. ex Salm-Dyck) J. M. Coultとなったのです。属名が変わると引用される前の学名の命名者を( )で表します。前置きが長くなりましたが、内容を見てみましょう。
Prince Joseph Salm-Reifferscheidt-Dyckは、1845年にEchinocactus williamsiiについて説明しました。Salm-Dyckはフランスのサボテン業者と非常に良好な関係を築いており、Freres Cels社からE. williamsiiを購入したようです。Celsによる種の説明がない場合、Salm-Dyckはラテン語とドイツ語の完全な説明でE. williamsiiを有効に公開しました。1894年にJohn M. CoulterはEchinocactus williamsii Lem. ex Salm-Dyckをオリジナルとして引用し、Lophophora J. M. Coultを樹立しました。この学名は科学者やアマチュアまで、世界中で受け入れられています。Lophophoraにはアルカロイドを含むため、Lophophora williamsiiの名前は世界中の薬物法に記載されています。
しかし、Salm-Dyckの命名の2年前にEchinocactus williamsianum Lem.が1843年に公表されています。しかし、後のLemaireはSalm-Dyckの公開したE. williamsiiを使用しています。E. williamsianumの名前は170年に渡り見過ごされてきており、キュー王立植物園のデータベースにも記載がありません(2021年当時)。
ここでは、Echinocactus williamsii Lem. ex Salm-Dyckを、国際命名規約のArt14.2に従い、Echinocactus williamsianum Lem.に対して保存することを提案します。提案が受け入れられない時は、一般的に流通した名前を、これまで知られていなかった名前に変える必要があり、世界中の薬物法の記載された名前も変えなくてはなりません。
以上が論文の簡単な要約です。
少し分かりにくい話ですが、命名が早い名前が優先されると言う「先取権の原理」に関する話です。内容は知られていなかったE. williamsianumと言う学名が存在していたため、E. williamsiiが廃棄されてしまうのを防ごうと言う提案でした。まだLophophoraではなくEchinocactusとなっていますから、現在の学名には関係がないように思われるかも知れませんが、実は関係があるのです。なぜなら、属名を変更する場合、どの学名を変更するのかを明らかにするために、旧・学名と記載年などを引用する必要があるからです。E. williamsiiが廃棄されてしまうと、E. williamsiiを引用して命名されたL. williamsiiも自動的に廃棄されてしまうのです。ですから、著者はまったく使用されてこなかった、と言うか知られてすらいなかった名前は廃棄して、今まで使用されてきた名前を保存しましょうと提案したのです。我々趣味家もこの提案には賛成でしょう。やはり、私も親しみのある名前が良いような気がします。
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