昨日は日本で入手した烏羽玉(Lophophora williamsii)の遺伝子と幻覚成分を分析した論文をご紹介しました。本日は烏羽玉の原産地における、烏羽玉と兜丸との意外な逸話をご紹介します。それは、Martin Terryらの2007年の論文、『A Tale of Two Cacti-The Complex Relationship between Peyote (Lophophora williamsii) and Endangered Star Cactus (Astrophytum asterias).』です。
兜丸は絶滅危惧種
一般に兜丸(Astrophytum asterias)はStar cactusと呼ばれ、米国テキサス州南部やメキシコのタマウリパス州に固有の絶滅危惧種のサボテンで、テキサス州では3つの個体群で4000個体未満しか自生していません。兜丸はコレクターに大変な人気があり、個体数が少なく採取の脅威が高いことから、米国では1993年に絶滅危惧種とされています。また、CITESの附属書Iに記載されており国際取引は禁止されています。しかし、種子から容易に育てられるにも関わらず、野生植物の採取が行われています。
さて、烏羽玉(Lophophora williamsii)と希少な兜丸の分布はテキサス州南部のリオグランデ川下流域とタマウリパス州北部で重複します。このことが、思わぬ問題を引き起こしていると言うのです。
ペヨーテの利用
烏羽玉は原産地ではペヨーテと呼ばれていますが、一般的にペヨーテは麻薬取締局およびテキサス州公安局により規制されています。しかし、ペヨーテ信仰を持つアメリカ先住民教会(NAC)に対してはその利用を許可しており、認可された業者のみがペヨーテを扱うことができます。伝統的なペヨーテの採取方法は、地際から切断し根を残します。このことにより、地上部分が復活する可能性があります。
兜丸の混入
認可された業者は事業所のペヨーテ・ガーデンでペヨーテを栽培していますが、どういう訳か兜丸も混じっており、ペヨーテを購入した客にお土産として配られています。客は兜丸を栽培しますが、採取時に根が痛むことからいずれ枯れてしまいます。認可業者が兜丸を積極的に集めることはなく、地元の人たちが採取したペヨーテを買い取りますが、その時に混入するようです。1年に採取されるペヨーテが200万個体とされていますが、もしそのうちの0.1%が混入した兜丸だった場合、年間2000個体の兜丸が失われることになります。非常に個体数を減らしている兜丸には大変なダメージです。
以上が論文の簡単な要約です。
栽培される兜丸は烏羽玉にあまり似ていませんが、野生個体は少し似ている場合もあるようです。自生地の烏羽玉や兜丸は地面に半分埋まっており、頭だけが見えていたりします。また、栽培される兜丸は園芸的に選抜されていますが、野生の兜丸は白点も少なく土埃で汚れており、一見して見間違います。論文に示された自生地の写真では中々見分け辛い場合もあることが分かります。採取時にはわかりそうなものですが、いちいち仕分けたりはしないのでしょう。
さて、このように意外なことで兜丸が、ある意味とばっちりを受けてしまっていることが分かりました。しかし、宗教的儀式が関係し、しかも混入が原因ですから、これは中々解決が難しい問題かも知れません。
ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村
にほんブログ村
兜丸は絶滅危惧種
一般に兜丸(Astrophytum asterias)はStar cactusと呼ばれ、米国テキサス州南部やメキシコのタマウリパス州に固有の絶滅危惧種のサボテンで、テキサス州では3つの個体群で4000個体未満しか自生していません。兜丸はコレクターに大変な人気があり、個体数が少なく採取の脅威が高いことから、米国では1993年に絶滅危惧種とされています。また、CITESの附属書Iに記載されており国際取引は禁止されています。しかし、種子から容易に育てられるにも関わらず、野生植物の採取が行われています。
さて、烏羽玉(Lophophora williamsii)と希少な兜丸の分布はテキサス州南部のリオグランデ川下流域とタマウリパス州北部で重複します。このことが、思わぬ問題を引き起こしていると言うのです。
ペヨーテの利用
烏羽玉は原産地ではペヨーテと呼ばれていますが、一般的にペヨーテは麻薬取締局およびテキサス州公安局により規制されています。しかし、ペヨーテ信仰を持つアメリカ先住民教会(NAC)に対してはその利用を許可しており、認可された業者のみがペヨーテを扱うことができます。伝統的なペヨーテの採取方法は、地際から切断し根を残します。このことにより、地上部分が復活する可能性があります。
兜丸の混入
認可された業者は事業所のペヨーテ・ガーデンでペヨーテを栽培していますが、どういう訳か兜丸も混じっており、ペヨーテを購入した客にお土産として配られています。客は兜丸を栽培しますが、採取時に根が痛むことからいずれ枯れてしまいます。認可業者が兜丸を積極的に集めることはなく、地元の人たちが採取したペヨーテを買い取りますが、その時に混入するようです。1年に採取されるペヨーテが200万個体とされていますが、もしそのうちの0.1%が混入した兜丸だった場合、年間2000個体の兜丸が失われることになります。非常に個体数を減らしている兜丸には大変なダメージです。
以上が論文の簡単な要約です。
栽培される兜丸は烏羽玉にあまり似ていませんが、野生個体は少し似ている場合もあるようです。自生地の烏羽玉や兜丸は地面に半分埋まっており、頭だけが見えていたりします。また、栽培される兜丸は園芸的に選抜されていますが、野生の兜丸は白点も少なく土埃で汚れており、一見して見間違います。論文に示された自生地の写真では中々見分け辛い場合もあることが分かります。採取時にはわかりそうなものですが、いちいち仕分けたりはしないのでしょう。
さて、このように意外なことで兜丸が、ある意味とばっちりを受けてしまっていることが分かりました。しかし、宗教的儀式が関係し、しかも混入が原因ですから、これは中々解決が難しい問題かも知れません。
ブログランキング参加中です。
クリックしていただけますと嬉しく思います。
にほんブログ村
にほんブログ村
コメント