サボテンや多肉植物を沢山育てていると温室が欲しくなります。しかし、真夏の温室は地獄のような暑さになってしまいます。あまりにも暑いとサボテンですら生理障害がおきると言われますが、実際のところはどうなんでしょうか? 言われているのは野生のサボテンなので、熱波やら強烈な日照やら干ばつやらもあるわけで、気温上昇だけが原因ではないような気もします。中々そこら辺の良い論文はまだ見つかっていませんが、代わりに熱々になった蒸し風呂のような温室で、サボテンへの影響を研究した日本人による論文を見つけました。本日は、そのToshihide NAGANOらの1980年の論文、『Temperacture of Cacpi Grown in the Cactus-house in Aichi Prefecture』をご紹介します。
温度は植物にとっても重要で、分布を制限する要因です。光合成や様々な酵素活性、原形質流動などのいくつかの生理学的プロセスは42〜45℃を超える温度では分解し始めるため、高等植物はこれより低い温度で生存します。強い日照ストレスを受けた植物の葉は外気温より温度が高くなります。例えば、葉の温度がモーリタニアのPhoenix dactyliferaで53.3℃、スペインのLonicera implexaで47.7℃、米国のOpuntia sp.で45.0℃、ブラジルはCaatingaのOpuntia inamoenaで45.0℃、広島のLiliodendron tulipiferia(ユリノキ)で50.4℃が測定されています。
この研究は愛知県大口市のサボテンハウスで1978年と1979年に実施されました。名古屋近郊では湿度の高い温室で栽培されたサボテンは、中央アメリカで栽培されるサボテンの2〜3倍の成長率があります。
研究は8月に実施されましたが、外気温が32〜33℃の時に温室内は52〜55℃に達しました。実際に測定された最高温度は、Gymnocalycium mihanovichiiの57.3℃でした。これは、過去に報告された無傷な高等植物の最高温度です。他にも、Gymnocalycium denudatum var. paraguayseが55.6℃、Astrophytum asteriasが56.0℃、Echinocactus grusoniiが54.5℃、Ferocactus flavovirensが54.5℃、Mammillaria angularisで57.0℃を記録しました。50℃を超える温度でも、Hamatocactus setispinus var. orcuttiiやG. denudatum var. paraguayseなどは花を咲かせました。つまり、厳しい環境下でもサボテンハウスのサボテンは、正常な生理活性を保持しているように思われます。
以上が論文の簡単な要約です。
温室栽培している方は、50℃なんて普通に超えるし、当たり前のことのように思われるかも知れません。しかし、当たり前のことも正確に記録し公表されることに意味があります。
しかし、40年以上前の論文ですから、学名がよくわからないものや、今と名前が、変わってしまっているものもあります。Echinocactus grusonii(金鯱)が、2014年にKroenleinia属としてEchinocactus属から独立したことは有名ですが、Hamatocactus属がThelocactus属に吸収されて消滅したことはあまり知られていないかも知れません。また、論文に出て来るMammillaria angulariaはM. compressaの異名となっています。あと、G. denudatum var. paraguayeは一体何者なんでしょうか? 現在のG. paraguayenseのことなのでしょうか? よくわかりません。
さて、この論文は1980年のもので、実際の測定は1970年代末です。当時と比較すると、近年の気温の方が高いでしょうから、温室の温度もさらに上がりそうです。外気温が33〜34℃の時にとありますが、私の住む街も、すでに今年は39℃を超える日もありました。異常な暑さが続きますが、多肉植物も参ってしまいそうですね。
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温度は植物にとっても重要で、分布を制限する要因です。光合成や様々な酵素活性、原形質流動などのいくつかの生理学的プロセスは42〜45℃を超える温度では分解し始めるため、高等植物はこれより低い温度で生存します。強い日照ストレスを受けた植物の葉は外気温より温度が高くなります。例えば、葉の温度がモーリタニアのPhoenix dactyliferaで53.3℃、スペインのLonicera implexaで47.7℃、米国のOpuntia sp.で45.0℃、ブラジルはCaatingaのOpuntia inamoenaで45.0℃、広島のLiliodendron tulipiferia(ユリノキ)で50.4℃が測定されています。
この研究は愛知県大口市のサボテンハウスで1978年と1979年に実施されました。名古屋近郊では湿度の高い温室で栽培されたサボテンは、中央アメリカで栽培されるサボテンの2〜3倍の成長率があります。
研究は8月に実施されましたが、外気温が32〜33℃の時に温室内は52〜55℃に達しました。実際に測定された最高温度は、Gymnocalycium mihanovichiiの57.3℃でした。これは、過去に報告された無傷な高等植物の最高温度です。他にも、Gymnocalycium denudatum var. paraguayseが55.6℃、Astrophytum asteriasが56.0℃、Echinocactus grusoniiが54.5℃、Ferocactus flavovirensが54.5℃、Mammillaria angularisで57.0℃を記録しました。50℃を超える温度でも、Hamatocactus setispinus var. orcuttiiやG. denudatum var. paraguayseなどは花を咲かせました。つまり、厳しい環境下でもサボテンハウスのサボテンは、正常な生理活性を保持しているように思われます。
以上が論文の簡単な要約です。
温室栽培している方は、50℃なんて普通に超えるし、当たり前のことのように思われるかも知れません。しかし、当たり前のことも正確に記録し公表されることに意味があります。
しかし、40年以上前の論文ですから、学名がよくわからないものや、今と名前が、変わってしまっているものもあります。Echinocactus grusonii(金鯱)が、2014年にKroenleinia属としてEchinocactus属から独立したことは有名ですが、Hamatocactus属がThelocactus属に吸収されて消滅したことはあまり知られていないかも知れません。また、論文に出て来るMammillaria angulariaはM. compressaの異名となっています。あと、G. denudatum var. paraguayeは一体何者なんでしょうか? 現在のG. paraguayenseのことなのでしょうか? よくわかりません。
さて、この論文は1980年のもので、実際の測定は1970年代末です。当時と比較すると、近年の気温の方が高いでしょうから、温室の温度もさらに上がりそうです。外気温が33〜34℃の時にとありますが、私の住む街も、すでに今年は39℃を超える日もありました。異常な暑さが続きますが、多肉植物も参ってしまいそうですね。
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