近年、遺伝子解析が植物にも適応され、サボテンも盛んに解析が行われています。そのため、サボテンの分類は大幅な改訂が進んでいます。
本日は、まず2000年にAlexander B. Doweldによるサボテンの名前に関する2つの提案をご紹介します。その後、その提案がどうなっているかを提示して終わりたいと思います。では、まず2つの提案から見ていきましょう。
『Proposal to conserve the name Brasilicactus against Acanthocephala (Cactaceae)』
C. Backenbergは、定義が曖昧なNotocactusからいくつかの種を分離し、1938年にAcanthocephala Backeb.を設立しました。しかし、数年後にAcanthocephalaが、1842年に命名されたAcanthocephalus Karelin & Kirilov(キク科植物)の同音異義語であることに気が付きました。そのため、Backenbergは1941年にAcanthocephala Backeb.をBrasilicactus Backeb.に置き換えました。そして、一般的なのはBrasilicactusの方で、サボテンの研究者やサボテン愛好家の間で使用されました。
最新の命名規則を照らし合わせると、AcanthocephalaはAcanthocephalusの同音異義語とは見なされず、Brasilicactusは異名となります。AcanthocephalaとAcanthocephalusは異なる分類群に属し、分布もまったく異なり、混同される可能性は低いでしょう。しかし、1938年以降のサボテン研究ではAcanthocephalaは使用されておらず、受け入れられていません。著者は、Brasilicactusから使用歴が皆無なAcanthocephalaに命名を変更することを回避し、現在のBrasilicactusを保存してはどうかと提案しています。
以上が1つめの提案の内容です。この論文の趣旨は、BackenbergがAcanthocephalaとAcanthocephalusを同音異義語として、Acanthocephalaを退けたものの、新しい命名規則では同音異義語とは見なされないため、にわかに廃棄されたはずのAcanthocephalaが正当な学名として復活してしまうことを避けようとするものです。
『Proposal to conserve the name Eriocactus against Eriocephala (Cactaceae)』
C. Backenbergは、1938年にEriocephala Backeb.を命名しましたが、1753年に命名されたEriocephalus L.(キク科)の同音異義語と考えたため、1941年にEriocactus Backeb.としました。
後は基本的に上の提案と同じです。命名規則により使用されていないEriocephalaが復活してしまうため、Eriocactusの名前を保存しましょうという提案です。
さて、このように、命名規則を厳密に適応すると、かつて廃棄されたはずの名前が浮かび上がってしまい、慣れ親しんだ名前が廃棄されてしまいます。ですから、AcanthocephalaとEriocephalaではなく、BrasilicactusとEriocactusをこれからも使用したいということです。
では、現在のBrasilicactusやEriocactusの学名はどうなっているのでしょうか? AcanthocephalaやEriocephalaに取って代わられてしまったのでしょうか?
ここからは、キュー王立植物園のデータベースを参照にします。それによると、現在はBrasilicactusもEriocactusも使用されておりません。では、Acanthocephala、Eriocephalaとなったかと言うとそれも間違いで、BrasilicactusもEriocactusもParodiaに吸収されてしまいました。いや、それどころではありません。現在のParodiaには、Notocactus、Brasilicactus、Eriocactus、Malacocarpusといった属が吸収されました。割と新しく(1999〜2000年)命名されたBoliricactus、Peronocactus、RitterocactusもParodiaに吸収されました。BrasilicactusやEriocactusの名前を保存しようという働きも虚しく、すべてはParodiaになってしまいました。これが残念な結果であるかは分かりませんが、慣れ親しんだ名前が使われなくなるのは悲しいことです。しかし、これからもサボテンの再編成は進行し、名前も次々と変わってしまうのでしょう。昔ながらのサボテン好きな私は、慣れるのに時間がかかりそうです。
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『Proposal to conserve the name Brasilicactus against Acanthocephala (Cactaceae)』
C. Backenbergは、定義が曖昧なNotocactusからいくつかの種を分離し、1938年にAcanthocephala Backeb.を設立しました。しかし、数年後にAcanthocephalaが、1842年に命名されたAcanthocephalus Karelin & Kirilov(キク科植物)の同音異義語であることに気が付きました。そのため、Backenbergは1941年にAcanthocephala Backeb.をBrasilicactus Backeb.に置き換えました。そして、一般的なのはBrasilicactusの方で、サボテンの研究者やサボテン愛好家の間で使用されました。
最新の命名規則を照らし合わせると、AcanthocephalaはAcanthocephalusの同音異義語とは見なされず、Brasilicactusは異名となります。AcanthocephalaとAcanthocephalusは異なる分類群に属し、分布もまったく異なり、混同される可能性は低いでしょう。しかし、1938年以降のサボテン研究ではAcanthocephalaは使用されておらず、受け入れられていません。著者は、Brasilicactusから使用歴が皆無なAcanthocephalaに命名を変更することを回避し、現在のBrasilicactusを保存してはどうかと提案しています。
以上が1つめの提案の内容です。この論文の趣旨は、BackenbergがAcanthocephalaとAcanthocephalusを同音異義語として、Acanthocephalaを退けたものの、新しい命名規則では同音異義語とは見なされないため、にわかに廃棄されたはずのAcanthocephalaが正当な学名として復活してしまうことを避けようとするものです。
『Proposal to conserve the name Eriocactus against Eriocephala (Cactaceae)』
C. Backenbergは、1938年にEriocephala Backeb.を命名しましたが、1753年に命名されたEriocephalus L.(キク科)の同音異義語と考えたため、1941年にEriocactus Backeb.としました。
後は基本的に上の提案と同じです。命名規則により使用されていないEriocephalaが復活してしまうため、Eriocactusの名前を保存しましょうという提案です。
さて、このように、命名規則を厳密に適応すると、かつて廃棄されたはずの名前が浮かび上がってしまい、慣れ親しんだ名前が廃棄されてしまいます。ですから、AcanthocephalaとEriocephalaではなく、BrasilicactusとEriocactusをこれからも使用したいということです。
では、現在のBrasilicactusやEriocactusの学名はどうなっているのでしょうか? AcanthocephalaやEriocephalaに取って代わられてしまったのでしょうか?
ここからは、キュー王立植物園のデータベースを参照にします。それによると、現在はBrasilicactusもEriocactusも使用されておりません。では、Acanthocephala、Eriocephalaとなったかと言うとそれも間違いで、BrasilicactusもEriocactusもParodiaに吸収されてしまいました。いや、それどころではありません。現在のParodiaには、Notocactus、Brasilicactus、Eriocactus、Malacocarpusといった属が吸収されました。割と新しく(1999〜2000年)命名されたBoliricactus、Peronocactus、RitterocactusもParodiaに吸収されました。BrasilicactusやEriocactusの名前を保存しようという働きも虚しく、すべてはParodiaになってしまいました。これが残念な結果であるかは分かりませんが、慣れ親しんだ名前が使われなくなるのは悲しいことです。しかし、これからもサボテンの再編成は進行し、名前も次々と変わってしまうのでしょう。昔ながらのサボテン好きな私は、慣れるのに時間がかかりそうです。
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