Astrophytum属は白点が特徴のサボテンです。現在4種類、あるいは6種類あるとされていますが、その分類には問題もあるとされています。1つは白鸞鳳玉は独立種であるかです。白鸞鳳玉は鸞鳳玉A. myriostigmaの亜種、つまりA. myriostigma subsp. coahuliensisとされたり、単純にA. myriostigmaの同種であるとする見解もあり、独立種であるA. coahulienseとされることもあります。もう1つは新種であるA. caput-medusaeは、2002年に記載されたときは新属Digitostigmaに分類されましたが、A. caput-medusaeは本当にAstrophytumなのでしょうか?
という訳で、本日はAstrophytumの分類に挑んだAlejandra Vazquez-Loboらの2015年の論文、『Phylogeny and biogeographic history of Astrophytum (Cactaceae)』の内容を少しだけご紹介しましょう

著者らは遺伝子解析によりAstrophytumの分子系統を解明しました。その前に、Astrophytumは、A. myriostigma(鸞鳳玉)とA. ornatum(般若)からなるAstrophytum亜属と、A. asterias(兜丸)とA. capricorne(瑞鳳玉)、およびA. coahuliense(白鸞鳳玉)からなるNeoastrophytum亜属、A. caput-medusaeからなるStigmatodactylus亜属からなるとする意見があります。この分類は花の形態からなされたものです。
さて、では遺伝子解析の結果を見てみましょう。

         ┏━━A. asterias
           ┏┫
           ┃┗━━A. capricorne
       ┏┫
       ┃┗━━━A. coahuliense
   ┏┫
   ┃┗━━━━A. caput-medusae 
   ┫ 
   ┃    ┏━━━A. myriostigma
   ┗━┫
           ┗━━━A. ornatum


驚くべきことに、花の形態からの分類がかなり正確であることが分かりました。はっきりしたことは、A. myriostigmaとA. coahulienseはまったく近縁ではなく、別種であるということです。面白いことに、近縁であるA. myriostigmaとA. ornatumはメキシコ南部の原産で、産地的にも他とは分けられるということです。次にA. caput-medusaeは明らかにAstrophytum属に含まれるということです。Astrophytum属であったとしても形態がまったく異なるので、他の種類とは離れて孤立していそうなものですが、A. asteriasとA. capricorne、A. coahulienseと近縁で1つのグループを形成しています。要するに、Astrophytumは2つのグループからなるということが明らかになったのです。

実際の論文の内容は、Astrophytumの種類が分岐した年代を推測し、地理的分布と気候変動から進化について考察しています。しかし、今回私が知りたい主題ではないため、割愛させていただきます。論文の内容はここまでですが、せっかくなのでAstrophytumの歴史について簡単な解説をして締めましょう。

Astrophytumは、サボテンの研究で知られるフランスの植物学者、Charles Antoinie Lemaire(1800-1871)により命名されました。1839年に命名された、Astrophytum Lem.です。この時、LemaireはAstrophytum myriostigma Lem.を新種として命名しました。しかし、A. myriostigmaが一番早くに命名されたのではなく、Astrophytumの命名前から他の種類は発見されていました。Astrophytumの命名前でしたから、初めはEchinocactusとして命名されていました。一番、命名が早いのは、1828年に命名されたEchinocactus ornatus DC.、つまり現在のAstrophytum ornatum (DC.) Britton & Roseです。1828年の命名でした。しかし、1922年にはAstrophytumとされました。実はこの1922年のBritton & RoseによるAstrophytumへの移動は重要で、Astrophytum capricorne (A. Dietr.) Britton & Roseもこの時にAstrophytumとなりました。ちなみに、A. capricorneは、1851年にEchinocactus capricornis A. Dietr.として初めて命名されています。つぎに、1845年にEchinocactus asterias Zucc.が命名されました。現在のAstrophytum asterias (Zucc.) Lem.です。1868年にLemaireがAstrophytumへ移動させました。ここまでは、19世紀の命名でしたが20世紀に入ります。1927年の命名されたEchinocactus myriostigma subsp. coahuliensis H. Moeller、現在のAstrophytum coahuliense (H. Moeller) Kanferです。1932年にAstrophytumへ移動させました。同年には、Astrophytum myriostigma  subsp. coahuliense (H. Moeller) Kanferも提唱されていました。さらに時代は流れて、21世紀によもやの新種が発見されます。2002年に命名されたDigitostigma caput-medusae Velazco & Nevarezです。2003年にAstrophytum caput-medusae (Velazco & Nevarez) D. R. Huntという意見がありましたが、2015年のVazquez-Loboらの論文によりこれが正しいことが確認されました。


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