AgaveはサボテンやOcotilloと共にメキシコの砂漠を代表する植物です。近年、日本ではAgaveが大変な人気で、観賞用に栽培されています。しかし、Agaveの利用と言えば、繊維をとるためにプランテーションで産業的に栽培されたり、テキーラの原料として畑で栽培される方が物量的には多いでしょう。このテキーラの原料となるのは、Agaveの樹液には糖分が含まれているためアルコール発酵させることが出来るからです。テキーラは醸造された酒を蒸留して、アルコール分を高くした蒸留酒です。しかし、Agaveの樹液から作られた酒は、昔から一般でも作られていたようです。南米ではトウモロコシ酒などが家庭で作られており、旅行記などを読むと度々出て来るのである程度は知っていましたが、Agaveの酒については情報があまりなく、よくわからないままでした。そこで、何か良い論文はないかと調べたところ、Agaveからとったアガヴェシロップの利用について書かれた論文を見つけました。それは、Rizwan Yargatti & Arti Muleyの2022年の論文、『Agave syrup as a replacement for sucrose: An exploratory review』です。内容はAgaveの酒についてだけのものではありませんが、利用方法の1つとして酒についても言及があったので、本日はこの論文をご紹介しましょう。
アガヴェは古くから利用されてきた
Agaveという用語は、「輝かしく立派なこと」を意味するギリシャ語に由来します。ヒスパニック以前の人々は「Metl」と呼び、スペイン人は「Maneuy」と呼んでいました。かつて、カリフォルニアのインディアンは、野菜が不足しがちな春には、Agaveが食事の45%に達したと考古学的には考えられています。
紀元前7000年〜西暦1500年の359ものcoprolite(糞石)に関する研究や、遺跡の調査によりAgaveが利用されてきたことが分かりました。アステカ文明(紀元前1300年)は、Agaveの茎から樹液(Agumiel)を使用して、pulqueという粘性のあるビールを作っていました。蒸留はメキシコ中北部を植民地化したスペイン人により導入され、現在はよりアルコール含有量が高いTequila、Miscal Bcanora、Siscalが製造されています。
遺跡からはAgaveの柔らかい部位、花茎や葉の根元などが食用とされました。硬い葉からは繊維を取りました。また、Agaveから搾り取られたシロップや、種子を焼いてから砕いて粉末にしてトルティーヤを作りました。
スペイン人襲来
15世紀と16世紀にスペイン人が襲来し、Agaveの消費と栽培が拡大しました。スペイン人は先住民にAgaveの栽培を強要しました。また、スペイン人はフィリピン人労働者を連れてきて、Agaveから蒸留酒を作りました。Agaveの消費量の拡大の一方、甘味料としての利用は、17世紀のサトウキビの導入により減少しました。
アガヴェシロップの作り方
アガヴェシロップの生産に必要な成熟度になるためには、最低でも6年はAgaveを育てなければなりません。収穫したAgaveは芯以外を取り除き、繊維を粉砕してジュースを取り、濾してカスを除きます。自然に加水分解をおこして、徐々に80℃まで温度が上がります。その後、ジュースは精製され、90℃の真空蒸発により余分な水分が除かれます。収穫されたAgaveの約10%がアガヴェシロップの製造に使用されます。
メキシコ政府はアガヴェシロップに対していくつかの法律を制定しましたが、これは主に品質などについてのもので、Agaveの種類に指定はありません。しかし、実際に利用されるAgaveは、A. tequilana、A. americana、A. potatorum、A. salminiana、A. atrovirensなどです。
アガヴェシロップの分析
様々な形で私たちは砂糖=ショ糖を摂取しています。ショ糖はお菓子やデザート、飲料の製造などに広く使用されていますが、ショ糖の大量摂取は肥満や糖尿病など様々な病気の原因にもなります。論文ではAgaveからとられたアガヴェシロップを健康的な糖分としての可能性を調査しました。
まずは、アガヴェに含まれる糖分を分析しました。A. tequilanaは、果糖(フルクトース)が71〜92 %、ブドウ糖(グルコース)が4〜15%、ショ糖(スクロース)が4%、イノシトールとマンニトールが0.31〜0.43%でした。A. salmianaは、果糖が70%以上、ブドウ糖が、25%以上、ショ糖が2%以上、イノシトールとマンニトールが0.02〜2.54%でした。
アガヴェシロップの効能
アガヴェシロップは低GI、抗酸化作用、抗菌作用により需要が高まっています。考えられる効果として、プロバイオティクスによる腸内環境の改善、抗酸化作用やミネラルの吸収、抗糖尿病、ガンの阻害作用などが挙げられています。
アガヴェネクターの代謝効果に関する研究が、若いマウスに対して行われました。アガヴェネクターとは、A. salmianaの樹液から採取される天然甘味料です。離乳34日目からアガヴェシロップおよびショ糖を与え、体重や血糖値、血中インスリン値、脂質量をモニタリングしました。結果として、アガヴェネクターは体重調節や血糖値改善、インスリン恒常性を支持しました。
Agaveは果糖が重合したフルクタンが含まれます。水溶性食物繊維として近年注目されます。アガヴェシロップはラットの体重低下に効果があり、肝臓IL-16(※)レベルの低下が観察されました。
(※) 肝臓障害を引き起こすサイトカイン。
アガヴェシロップでデザートを
論文ではアガヴェシロップを利用した料理が提案されています。詳細は省きますが、主にお菓子やデザートのショ糖をアガヴェシロップで代替、あるいは栄誉補助食品やフルクタンによるアガヴェ繊維などを利用しています。チョコレートやカップケーキ、アイスクリームなどに利用されたこともあるようです。
欠点は?
最後にアガヴェの欠点についてですが、果糖の大量摂取は銅代謝を妨げ、尿酸値の上昇などがあるとされます。また、比較的安価なコーンシロップの混入が懸念されます。
以上が論文の簡単な要約です。
論文中に出て来る低GIは近年注目されていますね。曰く、血糖値の上昇を緩やかにするのだとか言われているようです。また、水溶性食物繊維など、アガヴェシロップは健康に寄与する可能性が分かりました。ただし、とり過ぎも問題のようですから、その全てにおいてではなく、一部の食品についてアガヴェシロップが代替出来れば良いのでしょう。
今回の内容はどう考えても、野生のAgaveの話ではなく、栽培されたものの産業利用の話です。しかし、これはこれで問題があり、海外に導入されたAgaveのプランテーションを作るために土地が開発され、環境蛾破壊されていることから、あまり簡単に考えない方が良いとは思います。まあ、今回はメキシコ国内での話でしょうから、そこまでの問題ではないのでしょう。将来的にアガヴェシロップが世界中に流通していくのでしょうか?
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アガヴェは古くから利用されてきた
Agaveという用語は、「輝かしく立派なこと」を意味するギリシャ語に由来します。ヒスパニック以前の人々は「Metl」と呼び、スペイン人は「Maneuy」と呼んでいました。かつて、カリフォルニアのインディアンは、野菜が不足しがちな春には、Agaveが食事の45%に達したと考古学的には考えられています。
紀元前7000年〜西暦1500年の359ものcoprolite(糞石)に関する研究や、遺跡の調査によりAgaveが利用されてきたことが分かりました。アステカ文明(紀元前1300年)は、Agaveの茎から樹液(Agumiel)を使用して、pulqueという粘性のあるビールを作っていました。蒸留はメキシコ中北部を植民地化したスペイン人により導入され、現在はよりアルコール含有量が高いTequila、Miscal Bcanora、Siscalが製造されています。
遺跡からはAgaveの柔らかい部位、花茎や葉の根元などが食用とされました。硬い葉からは繊維を取りました。また、Agaveから搾り取られたシロップや、種子を焼いてから砕いて粉末にしてトルティーヤを作りました。
スペイン人襲来
15世紀と16世紀にスペイン人が襲来し、Agaveの消費と栽培が拡大しました。スペイン人は先住民にAgaveの栽培を強要しました。また、スペイン人はフィリピン人労働者を連れてきて、Agaveから蒸留酒を作りました。Agaveの消費量の拡大の一方、甘味料としての利用は、17世紀のサトウキビの導入により減少しました。
アガヴェシロップの作り方
アガヴェシロップの生産に必要な成熟度になるためには、最低でも6年はAgaveを育てなければなりません。収穫したAgaveは芯以外を取り除き、繊維を粉砕してジュースを取り、濾してカスを除きます。自然に加水分解をおこして、徐々に80℃まで温度が上がります。その後、ジュースは精製され、90℃の真空蒸発により余分な水分が除かれます。収穫されたAgaveの約10%がアガヴェシロップの製造に使用されます。
メキシコ政府はアガヴェシロップに対していくつかの法律を制定しましたが、これは主に品質などについてのもので、Agaveの種類に指定はありません。しかし、実際に利用されるAgaveは、A. tequilana、A. americana、A. potatorum、A. salminiana、A. atrovirensなどです。
アガヴェシロップの分析
様々な形で私たちは砂糖=ショ糖を摂取しています。ショ糖はお菓子やデザート、飲料の製造などに広く使用されていますが、ショ糖の大量摂取は肥満や糖尿病など様々な病気の原因にもなります。論文ではAgaveからとられたアガヴェシロップを健康的な糖分としての可能性を調査しました。
まずは、アガヴェに含まれる糖分を分析しました。A. tequilanaは、果糖(フルクトース)が71〜92 %、ブドウ糖(グルコース)が4〜15%、ショ糖(スクロース)が4%、イノシトールとマンニトールが0.31〜0.43%でした。A. salmianaは、果糖が70%以上、ブドウ糖が、25%以上、ショ糖が2%以上、イノシトールとマンニトールが0.02〜2.54%でした。
アガヴェシロップの効能
アガヴェシロップは低GI、抗酸化作用、抗菌作用により需要が高まっています。考えられる効果として、プロバイオティクスによる腸内環境の改善、抗酸化作用やミネラルの吸収、抗糖尿病、ガンの阻害作用などが挙げられています。
アガヴェネクターの代謝効果に関する研究が、若いマウスに対して行われました。アガヴェネクターとは、A. salmianaの樹液から採取される天然甘味料です。離乳34日目からアガヴェシロップおよびショ糖を与え、体重や血糖値、血中インスリン値、脂質量をモニタリングしました。結果として、アガヴェネクターは体重調節や血糖値改善、インスリン恒常性を支持しました。
Agaveは果糖が重合したフルクタンが含まれます。水溶性食物繊維として近年注目されます。アガヴェシロップはラットの体重低下に効果があり、肝臓IL-16(※)レベルの低下が観察されました。
(※) 肝臓障害を引き起こすサイトカイン。
アガヴェシロップでデザートを
論文ではアガヴェシロップを利用した料理が提案されています。詳細は省きますが、主にお菓子やデザートのショ糖をアガヴェシロップで代替、あるいは栄誉補助食品やフルクタンによるアガヴェ繊維などを利用しています。チョコレートやカップケーキ、アイスクリームなどに利用されたこともあるようです。
欠点は?
最後にアガヴェの欠点についてですが、果糖の大量摂取は銅代謝を妨げ、尿酸値の上昇などがあるとされます。また、比較的安価なコーンシロップの混入が懸念されます。
以上が論文の簡単な要約です。
論文中に出て来る低GIは近年注目されていますね。曰く、血糖値の上昇を緩やかにするのだとか言われているようです。また、水溶性食物繊維など、アガヴェシロップは健康に寄与する可能性が分かりました。ただし、とり過ぎも問題のようですから、その全てにおいてではなく、一部の食品についてアガヴェシロップが代替出来れば良いのでしょう。
今回の内容はどう考えても、野生のAgaveの話ではなく、栽培されたものの産業利用の話です。しかし、これはこれで問題があり、海外に導入されたAgaveのプランテーションを作るために土地が開発され、環境蛾破壊されていることから、あまり簡単に考えない方が良いとは思います。まあ、今回はメキシコ国内での話でしょうから、そこまでの問題ではないのでしょう。将来的にアガヴェシロップが世界中に流通していくのでしょうか?
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