CITESとは、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」のことです。CITESの附属書に記載された動植物は国際的な取引に制限があり、しその国際的な取引は禁止あるいは許可が必要です。昨日はCITESの基本的な理念についてご紹介しました。しかし、その本当の評価は理念ではなく現実的な運営とその結果に求められます。本日はそんなCITESの現実についての事例を調査したPatrick O. Waeberらの2023年の論文、『Gaps in CITES policy undermine conservation of threatened species by providing loopholes for illegal trade』をご紹介したいと思います。
莫大な利益
Rose wood(紫檀)やEbony(黒檀)はその独特の材の色から高級木材として珍重されており、いくつかの科からとれます。その希少性と美しさから、種類を無視して品質のみを基準に取引されます。主にアフリカおよびアジア諸国から輸出され、ゾウやサイ、大型のネコ科動物を合わせたよりも巨大な利益をもたらします。紫檀などの違法取引は年間700億〜1710億米ドルを生み出し、麻薬や武器、および人身売買と同じ規模の利益があり、犯罪シンジケートにより密輸されています。
違法取引が罰せられない
CITESは184か国の締結国が参加する政府間の国際協定です。北朝鮮と南スーダンだけが締結していません。
さて、2014年にシンガポールはマダガスカルから違法に輸出された5000万米ドル相当の紫檀の丸太29434本を押収しました。これは、CITES保護種に対する過去最大の押収でした。さらに、ケニアとスリランカは同様の押収を行い、合計8069本の紫檀の丸太を押収しました。
シンガポールとケニアでは、複数の栽培と上訴にも関わらず、裁判所は違法取引をした荷送人に紫檀の返還をするという判決を下しました。これらの国内裁判所は、CITESについてあまり理解していないようです。また、CITESがこれらが違法な手段で輸出され、附属書IIにより保護されているという通知を発行したのは、裁判が終了し判決が下った後でした。さらに、スリランカの関税は、2022年に押収した紫檀の販売について入札しました。
ロンダリングされる禁輸植物
このような取引が制御されないまま放置されると、多くの種が絶滅に追いやられてしまいます。犯罪グループは、CITESの決定と国内法との矛盾や、関係国のCITES勧告に対する実行能力、および政治的、経済的利益などを含む、政策-能力-起訴のギャップをついてきます。CITESとマダガスカルの禁輸措置に違反した丸太の輸出と押収品の管理の不備は、合法的な転売を通じて違法取引された丸太の(出所の)洗浄を可能とします。
CITESは実効性皆無
CITESの附属書に記載された種は押収されますが、国際的な押収が増加しているにも関わらず起訴される違法取引業者はほとんどいません。さらに、押収物を販売してしまうと、新たな需要を生み出し、より多くの違法取引を助長する可能性があります。CITESは2016年に違反に取引されて材料に関するガイダンスを発行しました。CITESは違法取引に対処するために、2019年にタスクフォースを設立し、持続可能な割り当て量と目録を焦点に当て、高価値の木材の非有害性調査結果(NDF)を確立するためのガイダンスを提供しました。
CoP19は見て見ぬふり
2022年にパナマで開催されたCITES締結国会議(CoP19)は、シンガポール、ケニア、スリランカで押収された4万本の紫檀に関して一切の行動を示さず、押収した国の国内問題であるとして見て見ぬふりをしました。押収後の措置をしなければ、違法な紫檀は中国へ送られるでしょう。マダガスカルに備蓄されている数千本の紫檀と黒檀の丸太もCoP19で議論されましたが、管理の強化は指示されたものの、持続可能な貿易を確保するための具体的な行動への措置は削除されました。
違法取引に対処するための提案
紫檀と黒檀は絶滅の危機に瀕しており、中国の需要を減らすか取引を完全に停止する必要があります。著者らは紫檀と黒檀の違法取引に対して3つの対策を提案します。
①押収物の管理
CITESのタスクフォースが開始した作業を拡大し、CITESの記載種の保管、遺伝子のサンプリング、押収物の処分まで含めるべきです。
②押収物の処分
違法取引の押収物を販売することは、違法採取物を合法な材料に変換してしまうことになりかねません。押収物は原産地の科学者と連携して、種ごとにNDFを準備する必要があります。さらに、当事者が取得調査評価を実施し、違法に輸出された木材を合法化しなようにする必要かあります。
③科学に基づく監視
マダガスカルの紫檀と黒檀の監視と追跡が進んでいます。野生の樹木の状態が評価されています。また、リアルタイムの監視システム技術も開発されています。しかし、まだ情報が不足しており、NDFを策定出来ていません。
以上が論文の簡単な要約です。
状況は思う以上に深刻で、せっかく締結したCITESが機能していないことは明らかです。違法取引の規模の大きさから個人レベルではなく、大規模な犯罪グループの存在が想定されます。しかし、CITESはそのような犯罪グループに対しまったくの無力です。CITES締結国会議(CoP)も非常に無責任ですが、あるいは政治的な力学が働いているのかも知れません。紫檀などの高級木材は莫大な金を産むため、マダガスカルでは大統領選の年は材の違法取引が活発化するなど、政治権力との関係性も不透明です。正直、現状を鑑みれば解決は不可能ではないでしょうか。最後の著者らの提案も割と曖昧ですが、これは違法取引された材料を押収した国の国内問題となっている現状から、CITES側に権利を移す狙いもうかがえます。しかし、残念なからCoPの態度からして、このような提案が認められる可能性はあまり期待出来ないかも知れません。
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莫大な利益
Rose wood(紫檀)やEbony(黒檀)はその独特の材の色から高級木材として珍重されており、いくつかの科からとれます。その希少性と美しさから、種類を無視して品質のみを基準に取引されます。主にアフリカおよびアジア諸国から輸出され、ゾウやサイ、大型のネコ科動物を合わせたよりも巨大な利益をもたらします。紫檀などの違法取引は年間700億〜1710億米ドルを生み出し、麻薬や武器、および人身売買と同じ規模の利益があり、犯罪シンジケートにより密輸されています。
違法取引が罰せられない
CITESは184か国の締結国が参加する政府間の国際協定です。北朝鮮と南スーダンだけが締結していません。
さて、2014年にシンガポールはマダガスカルから違法に輸出された5000万米ドル相当の紫檀の丸太29434本を押収しました。これは、CITES保護種に対する過去最大の押収でした。さらに、ケニアとスリランカは同様の押収を行い、合計8069本の紫檀の丸太を押収しました。
シンガポールとケニアでは、複数の栽培と上訴にも関わらず、裁判所は違法取引をした荷送人に紫檀の返還をするという判決を下しました。これらの国内裁判所は、CITESについてあまり理解していないようです。また、CITESがこれらが違法な手段で輸出され、附属書IIにより保護されているという通知を発行したのは、裁判が終了し判決が下った後でした。さらに、スリランカの関税は、2022年に押収した紫檀の販売について入札しました。
ロンダリングされる禁輸植物
このような取引が制御されないまま放置されると、多くの種が絶滅に追いやられてしまいます。犯罪グループは、CITESの決定と国内法との矛盾や、関係国のCITES勧告に対する実行能力、および政治的、経済的利益などを含む、政策-能力-起訴のギャップをついてきます。CITESとマダガスカルの禁輸措置に違反した丸太の輸出と押収品の管理の不備は、合法的な転売を通じて違法取引された丸太の(出所の)洗浄を可能とします。
CITESは実効性皆無
CITESの附属書に記載された種は押収されますが、国際的な押収が増加しているにも関わらず起訴される違法取引業者はほとんどいません。さらに、押収物を販売してしまうと、新たな需要を生み出し、より多くの違法取引を助長する可能性があります。CITESは2016年に違反に取引されて材料に関するガイダンスを発行しました。CITESは違法取引に対処するために、2019年にタスクフォースを設立し、持続可能な割り当て量と目録を焦点に当て、高価値の木材の非有害性調査結果(NDF)を確立するためのガイダンスを提供しました。
CoP19は見て見ぬふり
2022年にパナマで開催されたCITES締結国会議(CoP19)は、シンガポール、ケニア、スリランカで押収された4万本の紫檀に関して一切の行動を示さず、押収した国の国内問題であるとして見て見ぬふりをしました。押収後の措置をしなければ、違法な紫檀は中国へ送られるでしょう。マダガスカルに備蓄されている数千本の紫檀と黒檀の丸太もCoP19で議論されましたが、管理の強化は指示されたものの、持続可能な貿易を確保するための具体的な行動への措置は削除されました。
違法取引に対処するための提案
紫檀と黒檀は絶滅の危機に瀕しており、中国の需要を減らすか取引を完全に停止する必要があります。著者らは紫檀と黒檀の違法取引に対して3つの対策を提案します。
①押収物の管理
CITESのタスクフォースが開始した作業を拡大し、CITESの記載種の保管、遺伝子のサンプリング、押収物の処分まで含めるべきです。
②押収物の処分
違法取引の押収物を販売することは、違法採取物を合法な材料に変換してしまうことになりかねません。押収物は原産地の科学者と連携して、種ごとにNDFを準備する必要があります。さらに、当事者が取得調査評価を実施し、違法に輸出された木材を合法化しなようにする必要かあります。
③科学に基づく監視
マダガスカルの紫檀と黒檀の監視と追跡が進んでいます。野生の樹木の状態が評価されています。また、リアルタイムの監視システム技術も開発されています。しかし、まだ情報が不足しており、NDFを策定出来ていません。
以上が論文の簡単な要約です。
状況は思う以上に深刻で、せっかく締結したCITESが機能していないことは明らかです。違法取引の規模の大きさから個人レベルではなく、大規模な犯罪グループの存在が想定されます。しかし、CITESはそのような犯罪グループに対しまったくの無力です。CITES締結国会議(CoP)も非常に無責任ですが、あるいは政治的な力学が働いているのかも知れません。紫檀などの高級木材は莫大な金を産むため、マダガスカルでは大統領選の年は材の違法取引が活発化するなど、政治権力との関係性も不透明です。正直、現状を鑑みれば解決は不可能ではないでしょうか。最後の著者らの提案も割と曖昧ですが、これは違法取引された材料を押収した国の国内問題となっている現状から、CITES側に権利を移す狙いもうかがえます。しかし、残念なからCoPの態度からして、このような提案が認められる可能性はあまり期待出来ないかも知れません。
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