野生の多肉植物は様々な原因で減少しており、絶滅が危惧されているものも珍しくありません。サボテンは種類も多く、そのうち絶滅危惧種もまた多いとされています。そんな野生のサボテンは今どうなっているのでしょうか? とりあえず、Barbara Goettschらの2015年の論文、『High proportion of cactus species threatened with extinction』をご紹介しましょう。

植物は調査不足
近い将来、多くの植物が絶滅の危機に瀕すると予測されています。しかし、動物と比較するとあまり調査がなされず、植物が直面するリスクの大きさとその性質は不明です。しかも、植物の絶滅の危機に対する評価は、ソテツや針葉樹、マングローブ、海草(海藻ではなくアマモなどの顕花植物)など、少数の植物群に偏よっています。そのため、推定30万種類のうち19374種、つまりわずか6%が評価されたに過ぎません。植物はデータが少なく、動物より人気がないため評価のための資金も足りていません。
この論文では、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストにカテゴリーされた最大の植物分類群であるサボテン科の評価を報告します。サボテンは最も絶滅の危機に瀕している分類群の1つです。著者らはサボテンの1480種類を評価しました。うち、2種類は情報不足で評価出来ませんでしたが、評価された1478種類のうち31%に絶滅の可能性あります。これは、すべての動植物群のうち5番目に高い絶滅の危機率で、ソテツ(63%)、両生類(41%)、針葉樹(34%)、サンゴ(33%)に次ぎます。

サボテンの豊富さと危機
サボテンの種類の豊富さのピークは、ブラジルのRio Grande do Sul州南部とウルグアイのArtigas北部のごく限られた地域にあります。また、この地域は絶滅の危機に瀕している種類のピークも示しています。その他のサボテンの絶滅の絶滅に瀕している比率の高い地域は、Queretaro州とSan Luis Potosi州、Tehuacan-Cuicatlan地域のOaxaca州とPuebla州、ブラジルのBahia州東部とMinas Gerais州北部、チリのAntofagasta南部、ウルグアイ東部にあります。

サボテンの脅威
農業および水産養殖への土地の転換、野生植物の採取、宅地および商業開発は、メキシコ北部やメソアメリカ、南アメリカ南部の大部分のサボテンにとって主たる脅威となっています。メキシコやカリブ海地域、バハ・カリフォルニア半島などの沿岸地域は、主に宅地開発や商業開発の影響を受けています。メキシコの太平洋岸とブラジル中央海岸に沿った地域では、農業開拓の影響を受けています。ペルーやチリの海岸沿いに分布するものは、コレクション目的の採取や材木用の伐採が影響を与えています。もちろん、これらのすべての要素の影響を受けているメキシコ中部やブラジル東部もあり、絶滅危惧種が集中しています。
絶滅危惧種のサボテンに与える脅威は、園芸用取引や個人によるコレクション目的の採取が47%、放牧用地としての開拓が31%、農地開拓が24%となっています。ブラジル東部と南部では牧畜と農地開拓により、それぞれ61種と46種に影響を及ぼしています。しかし、ブラジル南部の最大の脅威は、ユーカリのプランテーション開発か原因です。絶滅危惧種のParodia muricataを含む27種類が影響を受けています。ユーカリの落ち葉がサボテンを覆ってしまい、受粉や開花を阻害したり枯らしてしまいます。また、ブラジル東部では採石によりBahia州で15種、Minas Gerais州で19種が影響を受け、状況は悪化する一方です。これらの植物は土壌特異性で、Acanthocereus glazioviiやColeocephalocereus purpureusなどのブラジル原産種は鉱業に重要な鉄分が豊富な赤鉄鉱々床または残丘でのみ育ちます。最も危機的なのはArrojadoa marylaniaeで、白い石英岩上にのみ生えるため、その採掘により脅かされています。メキシコ中北部では脅威はブラジルと似ていますが、遊牧民の放牧も要因として追加されます。メキシコ北西部ではエビ養殖が砂漠に向けて拡大しており、Mammillaria bocensisやCorynopuntia reflexispinaなどが予想以上にダメージを受けています。

サボテンの利用
他の絶滅の危機に瀕している植物とサボテンの違いは、サボテンの57%の種が人々により利用されているということです。最も一般的な用途は観賞用で674種類が栽培され、コレクションのために野生の植物や種子が採取されます。また、サボテンは154種類は食用、および64種類は薬(家畜用を含む)にも利用されます。調査によると、保護地域と比較して保護されていない地域は、脆弱種や絶滅危惧種の割合が高いことが確認されました。また、栽培される絶滅危惧種のサボテンのうち、86%が野生植物由来であることが分かりました。それでも、1975年以来CITESによる規制や、国際市場で種子繁殖による植物が入手可能となり違法取引は減少しました。しかし、ペルーのようにCITESが施工されたばかりの国では、違法取引により脅威が蔓延しています。特に新種は違法採取されやすく、脅威にさらされます。例えば、Mammillaria luethyiの正確な産地は伏せられ、野生個体群の保護のために少数の専門家にのみ知られています。

データが足りない
絶滅のリスクを評価するためには、その種に対する十分な情報が必要です。サボテンはデータ不足とされた種類は、129種類(8.7%)もありました。他の植物では、針葉樹1%、ソテツ1%、マングローブ4%、海草12%となっています。
サボテンの場合、種の評価には約6時間かかり、人件費で167米ドルかかりました。1人で1年あたり約363種類を評価出来ます。従って、割合安価で評価は可能です。サボテン以外の植物も保全活動をするための評価が必要です。2020年までに記載されたすべての植物を評価するには、少なくとも157人のスタッフが5年間フルタイムで働くことにより達成出来ます。この場合、約4700万米ドルの費用が必要です。植物種のかなりの割合を評価することは不可能ではありません。


以上が論文の簡単な要約です。
この論文の趣旨は、ただサボテンの絶滅の危機を評価することだけではなく、その他の植物にも適応出来ることを示したということです。しかし、サボテンはその多くが危機的な状況にあるようです。開発による危機はそのキャスティング・ボードは自生地の国々にあるわけですから、我々趣味家にはどうにもならない問題です。しかし、違法採取や違法取引については、我々にも出来ることがあります。まあ、気をつけましょうという話です。しょっ引かれることは無いにしろ、犯罪に加担したくはありませんからね。



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