アロエは高さ5mを越える巨大なものから、株全体が数センチメートルしかない小型なものまで、そのサイズは様々です。しかし、その種類は大型種は少なく小型種は多くあり多様化していることがうかがえます。では、小型であることが進化を促進したのでしょうか? 本日はそんなアロエのサイズと多様性について調査したFlorian C. Boucherらの2020年の論文、『Diversification rate vs. diversification density: Decoupled consequence of plant height for diversification of Alooideae in time and space』をご紹介します。
多様化率と多様化密度
生物多様性はその空間分布では非常に不均一です。生物の種類はホットスポットと呼ばれる非常に生物の多様性が高い地域に集中し、それ以外では比較的少ないと言われます。このホットスポットの起源に関する進化的説明は、伝統的に種の多様化の時間的要素を強調してきました。つまり、多様化とは単位時間あたりの種分化率の上昇や、絶滅率の低下により表されて来ました。しかし、南アフリカのケープ地域の一部では、種が長期間に渡り蓄積し、多様化は適度な速さであるにも関わらず、種は非常に豊富です。ホットスポットの特徴は多様化率の上昇だけではなく、特定地域の種の蓄積と増加に関連するかも知れません。ですから、この論文では時間による多様化と空間による多様化の類似点と違いを探ります。一般的に単位時間あたりの多様化を多様化率と呼びますが、新たに単位面積あたりの多様化を多様化密度と呼ぶことにします。
近年、サイズ、特に植物の背の高さが多様化に与える影響が議論されており、一般的に小型の植物は種分化率が高く絶滅率も低いとされています。これらは単位時間あたりの種分化として議論されますが、単位面積あたりの種分化にもよく当てはまります。小型の植物は分散距離が短いため、大型の植物より狭い面積で地理的隔離が起きやすく、より高い種分化密度となる可能性があります。
アロエ類とは?
論文ではアロエ類を用いて、植物のサイズと多様化密度について研究しました。ここでいうアロエ類とは、Aloe属とそこから分離したAloidendron属、Aloiampelos属、Aristaloe属、Gonialoe属、Kumara属、さらにHaworthia属とそこから分離したHaworthiopsis属、Tulista属、加えてGasteria属とAstroloba属が含まれます。
著者らはアロエ類のうち204種の遺伝子を解析し、系統関係を類推しました。遺伝子を調べた種のサイズを調べ、そのサイズにより単位面積あたりの種が蓄積する傾向があるかどうか、つまりは草丈が多様化密度と相関するかをテストしました。
アロエ類の草丈は小型のものが多く、より小型の種へ進化する傾向があります。計算上のアロエ類の最適な草丈は8cmでした。なぜ、小型化するのか、その理由の推測は困難です。一般的に植物の背の高さは、太陽光をめぐる植物同士の競争に関連します。しかし、乾燥地においては太陽光をめぐる競争は最小限か、まったくない可能性があります。さらに、背の高い植物、特に樹木は、干ばつのストレスを受けやすいとされます。小型種はくぼみなどに生えることにより、ストレスを緩和出来るかも知れません。多くのアロエ類は植物同士の競争や草食動物から、あるいは火災から逃れるために、岩の割れ目などでも育ちます。
結論としては、アロエ類の小型種が優勢な傾向は、小型化する系統の多様化が加速されたのではなく、より小型化する方向へ進化する傾向の結果であるということです。
多様化率は上昇しない
草丈が多様化率に与える影響を2種類の検定により解析しましたが、アロエ類は草丈の低下とともに多様化率を高めるということの証拠を示しませんでした。この結果からは、草丈以外の要因も関係する可能性を排除出来ません。著者らは、調査した204種類が不十分である可能性も指摘しています。
アロエ類の多様化の歴史は2つの代表例があります。1つは、小型種を多く含むHaworthia属におこり、草丈の低下が多様化の加速に関連していました。しかし、最も劇的な多様化率の上昇は、Aloe属のどちらかといえば草丈の高いグループでおきました。その理由は明らかではありませんが、Aloe属はアロエ類の中で唯一アフリカ南部以外に分散し、マダガスカルやアラビア半島にまで分布します。広範囲の分散が草丈の低下よりも重要な要素として多様化率を刺激したと考えられます。
多様化密度は上昇する
アロエ類の草丈は多様化率に影響しませんが、多様化密度はアロエ類の草丈と関連することが分かりました。多様化密度の上昇は、地域全体の遺伝子流動が容易に阻害されるため、生息地の局所的な適応がおこります。小型であることで、生息数が多く密度が高くなり、種分化しやすくなります。
南アフリカは地球上で最も植物が多様化した地域の1つで、フィンボス、草原、砂漠、森林を含みます。ケープのフィンボスはホットスポットであると認識されています。また、カルー植物相(冬季降雨砂漠植物相)は、フィンボスほどの種類はありませんが、単位面積あたりの種とその固有性が異常に高くなっています。そして、カルー植物相には多くの小型多肉植物が生息しています。このカルー植物相の単位面積あたりの多様性は、まさにアロエ類の草丈と多様化密度の関係を物語ります。
著者らはアロエ類だけではなく、他の植物でも調査が必要であるとしています。例えば、Cotyledon、Crassula、Pelargonium、ハマミズナ科(メセン類)なども、多様化密度の研究に適しています。
以上が論文の簡単な要約です。
記事を書いている私自身、妙に分かりにくい論文だとは思いました。多様化率というのは単位時間あたりの多様化と言いますが、よく分かりませんね。アロエ類の遺伝子を解析すると、その変異の度合いから分岐年代が分かります。つまり、調査した204種類のアロエ類が、いつの時代にどの種が種分化したかが計算可能なのです。ですから、今回の論文ではアロエ類の多様化は、短い時間に急激に進化した訳ではないということです。むしろ、アロエ類は種が長く保存され、小型種は絶滅率が低下しているというのです。
まあ、なんのこっちや分からんという方も多いかも知れませんが、申し訳ないのでが私自身これ以上は上手く説明出来ません。ひたすらにややこしい論文を直接読んでいただくしかありませんね。
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多様化率と多様化密度
生物多様性はその空間分布では非常に不均一です。生物の種類はホットスポットと呼ばれる非常に生物の多様性が高い地域に集中し、それ以外では比較的少ないと言われます。このホットスポットの起源に関する進化的説明は、伝統的に種の多様化の時間的要素を強調してきました。つまり、多様化とは単位時間あたりの種分化率の上昇や、絶滅率の低下により表されて来ました。しかし、南アフリカのケープ地域の一部では、種が長期間に渡り蓄積し、多様化は適度な速さであるにも関わらず、種は非常に豊富です。ホットスポットの特徴は多様化率の上昇だけではなく、特定地域の種の蓄積と増加に関連するかも知れません。ですから、この論文では時間による多様化と空間による多様化の類似点と違いを探ります。一般的に単位時間あたりの多様化を多様化率と呼びますが、新たに単位面積あたりの多様化を多様化密度と呼ぶことにします。
近年、サイズ、特に植物の背の高さが多様化に与える影響が議論されており、一般的に小型の植物は種分化率が高く絶滅率も低いとされています。これらは単位時間あたりの種分化として議論されますが、単位面積あたりの種分化にもよく当てはまります。小型の植物は分散距離が短いため、大型の植物より狭い面積で地理的隔離が起きやすく、より高い種分化密度となる可能性があります。
アロエ類とは?
論文ではアロエ類を用いて、植物のサイズと多様化密度について研究しました。ここでいうアロエ類とは、Aloe属とそこから分離したAloidendron属、Aloiampelos属、Aristaloe属、Gonialoe属、Kumara属、さらにHaworthia属とそこから分離したHaworthiopsis属、Tulista属、加えてGasteria属とAstroloba属が含まれます。
著者らはアロエ類のうち204種の遺伝子を解析し、系統関係を類推しました。遺伝子を調べた種のサイズを調べ、そのサイズにより単位面積あたりの種が蓄積する傾向があるかどうか、つまりは草丈が多様化密度と相関するかをテストしました。
アロエ類の草丈は小型のものが多く、より小型の種へ進化する傾向があります。計算上のアロエ類の最適な草丈は8cmでした。なぜ、小型化するのか、その理由の推測は困難です。一般的に植物の背の高さは、太陽光をめぐる植物同士の競争に関連します。しかし、乾燥地においては太陽光をめぐる競争は最小限か、まったくない可能性があります。さらに、背の高い植物、特に樹木は、干ばつのストレスを受けやすいとされます。小型種はくぼみなどに生えることにより、ストレスを緩和出来るかも知れません。多くのアロエ類は植物同士の競争や草食動物から、あるいは火災から逃れるために、岩の割れ目などでも育ちます。
結論としては、アロエ類の小型種が優勢な傾向は、小型化する系統の多様化が加速されたのではなく、より小型化する方向へ進化する傾向の結果であるということです。
多様化率は上昇しない
草丈が多様化率に与える影響を2種類の検定により解析しましたが、アロエ類は草丈の低下とともに多様化率を高めるということの証拠を示しませんでした。この結果からは、草丈以外の要因も関係する可能性を排除出来ません。著者らは、調査した204種類が不十分である可能性も指摘しています。
アロエ類の多様化の歴史は2つの代表例があります。1つは、小型種を多く含むHaworthia属におこり、草丈の低下が多様化の加速に関連していました。しかし、最も劇的な多様化率の上昇は、Aloe属のどちらかといえば草丈の高いグループでおきました。その理由は明らかではありませんが、Aloe属はアロエ類の中で唯一アフリカ南部以外に分散し、マダガスカルやアラビア半島にまで分布します。広範囲の分散が草丈の低下よりも重要な要素として多様化率を刺激したと考えられます。
多様化密度は上昇する
アロエ類の草丈は多様化率に影響しませんが、多様化密度はアロエ類の草丈と関連することが分かりました。多様化密度の上昇は、地域全体の遺伝子流動が容易に阻害されるため、生息地の局所的な適応がおこります。小型であることで、生息数が多く密度が高くなり、種分化しやすくなります。
南アフリカは地球上で最も植物が多様化した地域の1つで、フィンボス、草原、砂漠、森林を含みます。ケープのフィンボスはホットスポットであると認識されています。また、カルー植物相(冬季降雨砂漠植物相)は、フィンボスほどの種類はありませんが、単位面積あたりの種とその固有性が異常に高くなっています。そして、カルー植物相には多くの小型多肉植物が生息しています。このカルー植物相の単位面積あたりの多様性は、まさにアロエ類の草丈と多様化密度の関係を物語ります。
著者らはアロエ類だけではなく、他の植物でも調査が必要であるとしています。例えば、Cotyledon、Crassula、Pelargonium、ハマミズナ科(メセン類)なども、多様化密度の研究に適しています。
以上が論文の簡単な要約です。
記事を書いている私自身、妙に分かりにくい論文だとは思いました。多様化率というのは単位時間あたりの多様化と言いますが、よく分かりませんね。アロエ類の遺伝子を解析すると、その変異の度合いから分岐年代が分かります。つまり、調査した204種類のアロエ類が、いつの時代にどの種が種分化したかが計算可能なのです。ですから、今回の論文ではアロエ類の多様化は、短い時間に急激に進化した訳ではないということです。むしろ、アロエ類は種が長く保存され、小型種は絶滅率が低下しているというのです。
まあ、なんのこっちや分からんという方も多いかも知れませんが、申し訳ないのでが私自身これ以上は上手く説明出来ません。ひたすらにややこしい論文を直接読んでいただくしかありませんね。
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