菊水(Strombocactus disciformis)は生長が遅く、どちらかといえば地味な渋いサボテンです。希少なサボテンですが、最近ではそれなりに実生苗が流通しそれほど珍しくないように思えます。しかし、国際的にはどうやら違法取引が蔓延しているようです。サボテンは違法採取や違法取引は非常に蔓延していると言われますが、摘発されたというニュース以外ではその実態に触れることは中々ありません。サボテンの違法取引は現在どうなっているのでしょうか? 今回は菊水を例にサボテンの違法取引の一端について調査したVania R. Olmis-Lau & Maria C. Mandujanoの2016年論文、『An open door for illegal trade: online sales of Strombocactus disciformis (Cactaceae)』をご紹介します。

菊水
菊水 Strombocactus disciformis

Strombocactus disciformisはIUCN(国際自然保護連合)により脆弱種として指定されているメキシコの固有種で、CITESの附属書Iに指定され国際取引が禁止されています。その自生地はわずか10箇所であり、過剰な違法採取により個体数が減少しています。メキシコのレッドリストにも絶滅危惧種とされ、種子の採取であっても許可が必要で、野生植物の商業取引は許可されていません。

近年の植物の取引はオンラインが主体となっており、簡単に世界中の植物を購入出来ます。インターネットの普及により行なわれる商取引は、絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引において重大な懸念事項となっています。
サボテンはCITESにより、Pereskia、Pereskiopsis、Quiabentia以外のサボテンは、附属書Iあるいは附属書IIに記載されており、国際取引には許可が必要です。附属書Iに記載されたサボテンは国際取引は禁止されており、人工繁殖した個体は取引可能です。しかし、その場合でも附属書II相当の扱いとなり、輸出許可が必要です。人工的に生産された雑種は証明書があれば取引でき、その雑種の種子や花なども取引可能です。しかし、附属書Iの種類の種子の取引にはCITESの許可が必要です。これは、メキシコから輸出されるすべてのサボテンの種子にも当てはまります。


著者らはスペイン語、英語、フランス語、ドイツ語でウェブサイト上のStrombocactusの販売について調査しました。結果としてストロンボカクタスの個体あるいは種子のいずれかを販売している32のオンラインストアを見つけました。そのうち、CITES認定苗床から入手し必要書類を提供すると述べているのは、Duben Kaktus、Seeds Cactus、B & T World Seeds、Kakteen-Haage、Uhlig-Kakteen、Mesa Gardenの6つだけでした。
5つのストアはCITESの文書は輸出に必要だが責任は負わないとしており、4つのストアはEU外に輸出しないのでCITESは免除されていると述べ、12のストアは植物あるいは種子による繁殖であると主張しています。
eBay、Amazon、Mercadolibreなどの大手オンラインストアやオークションサイトでは、24個体が見つかりましたが、eBayではCITES認定の植物を販売しているのはDuben Kaktusだけでした。
一部のオンラインストアではCITES文書が提供されており、その割合はドイツで17%、チェコ共和国では25%、フランスでは33%、イタリアでは50%でした。
種子はオンライン取引が盛んで、大抵は100粒未満ですが、一部のストアでは500〜1000粒の種子を販売していました。また、一部の民間ウェブサイトでは電子メールのやり取りにより、野生植物の種子の採取が公然と行なわれていました。

ほとんどのオンラインストアは、CITES文書なしで植物の国際取引を行っており、違法取引の可能性があります。eBayでは植物や種子の取引の禁止および制限品目のリストに基づき販売品目を報告するオプションがありますが、これは病害虫や雑草の蔓延を防ぐことを目的としています。この国際取引の方針は売り手が国際貿易法を認識することを期待し、法律が尊重されない場合は販売品目が削除される可能性があると警告してます。しかし、このような決まりはあるものの、現実には運用されていません。
これらのオンラインストアのほとんどは、CITESの附属書Iに記載されている他のサボテン(50種類近い)も販売されています。

以上が論文の簡単な要約です。
サボテンの売買も昔のようなカタログ販売ではなく、現在はウェブサイト上でのオンライン取引が主流です。しかし、そのインターネットの自由さが逆に違法取引の温床になっている様子が分かります。昨今のネット犯罪の蔓延とその摘発や監視の難しさは、様々なニュースで皆様もご存知のことと思います。中々こういったネット上の違法行為は決まりがあったとしても、運用する上では現実的には有効な規制は難しいでしょう。もし、このような状態が続くならば、今後国際的な大型オンラインストアでのサボテンの販売自体が禁止される可能性も出て来るでしょう。もし、そうなったとしても、電子メールなどによる個人取引に移行するだけかも知れません。しかし、いわゆる地下に潜った状態となり、一般的な多くの目に触れなくなるため、違法取引業者の旨味は減じるでしょう。
国際的な監視は重要ですが、監視を重くするということはその分だけ人と金がかかる訳ですから、簡単には解決しない問題です。著者らもこの問題は私たちが自問しなければならないと言うように、規制だけでは解決困難です。これは違法採取者や違法取引業者、オンラインストアだけの問題だけではなく、サボテン愛好家のモラルが問われているのだと私は感じましたが、皆様はどう思われたでしょうか?



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